JP2010284845A - ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便かつ低コストで製造でき、透明性、屈曲性に優れる、抗菌性のガスバリア性フィルム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層を有するガスバリア性フィルムにおいて、前記抗菌材料が、無機抗菌剤であり、銀又は銀イオンを含有するものであり、前記抗菌材料及び前記ケイ素化合物を含有する層中の銀の含有量が、重量ベースで1〜100PPMであるガスバリアフィルム及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性のガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
近年、食品分野における安全性がより重要視されてきており、食品包装材料に対する要求性能も高まってきている。例えば、食品包装材料には、衛生面から、輸送、保管時において、湿気(水蒸気)や酸素の透過、細菌やカビ等の微生物類が及ぼす劣化を防ぐ機能が要求される。
従来、湿気や酸素等の透過を防ぐには、食品包装に、ガスバリア性を有するフィルムを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、硬質プラスチックシート、塩化ビニリデン系共重合樹脂層、無機金属化合物蒸着層が積層されてなるガスバリア性フィルムが、特許文献2には、ポリエステル系樹脂からなるベースフィルム上に、酸化物蒸着膜からなり、特定の熱収縮率を有するガスバリア性フィルムが記載されている。
しかしながら、無機金属化合物蒸着層を積層すると、透明性に劣り、中身の確認ができない等の問題がある。また、酸化物蒸着膜を用いると、屈曲性に乏しく、折り曲げたときにクラックが発生し、ガスバリア性能が低下する場合があるという問題があった。また、これらの膜形成には、物理蒸着法や、減圧プラズマ化学気相成長法等が用いられるため、コストがかかるという問題もあった。
一方、細菌やカビ等の微生物類による劣化を防ぐためには、通常、酸化防止剤や防腐剤などを食品に直接添加する方法、抗菌剤を含有したフィルムにより食品を包装する方法等が用いられている。
特開昭58−217344号公報 特開平10−305542号公報
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、簡便かつ低コストで製造でき、透明性、屈曲性に優れる、抗菌性のガスバリア性フィルム、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層を有するフィルムは、製造が簡便で、抗菌性、ガスバリア性、透明性、屈曲性の全てに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)のフィルムが提供される。
(1)抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層を有するガスバリア性フィルム。
(2)前記抗菌性材料が、無機系抗菌剤であることを特徴とする(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記抗菌性材料が、銀又は銀イオンを含有するものであることを特徴とする(2)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中の銀の含有量が、重量ベースで1〜100ppmであることを特徴とする(3)に記載のガスバリア性フィルム。
(5)抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、プラズマイオン注入法によりイオンが注入されて得られる層を有する(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(6)40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m2/day未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
本発明の第2によれば、下記(7)、(8)のガスバリア性フィルムの製造方法が提供される。
(7)抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層の表面部に、イオンを注入する工程を有する(1)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(8)前記イオンを注入する工程が、抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層を表面部に有する長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層にイオンを注入する工程であることを特徴とする(7)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
本発明のガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性と抗菌性を併せもち、さらに屈曲性、透明性にも優れる高機能性フィルムである。よって、食品、薬品等の包装材料や、フレキシブルなディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等の電子デバイス用部材(例えば太陽電池バックシート)等として好適に用いることができる。
本発明の製造方法によれば、優れた透明性、屈曲性を有する本発明の抗菌性ガスバリア性フィルムを、簡便かつ低コストで製造することができる。
本発明に使用するプラズマイオン注入装置の概略構成を示す図である。 本発明に使用するプラズマイオン注入装置の概略構成を示す図である。
以下、本発明を、1)ガスバリア性フィルム、及び2)ガスバリア性フィルムの製造方法に項分けして詳細に説明する。
1)ガスバリア性フィルム
本発明のガスバリア性フィルム(以下、「本発明のフィルム」ともいう。)は、抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層を有する。
本発明に用いる「抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層」を形成するケイ素系化合物としては、ケイ素を含有する高分子化合物であれば特に制約されない。具体的には、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリシラザン系化合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン系化合物は、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合して得られる化合物である。
ポリオルガノシロキサン系化合物の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。
例えば、前記直鎖状の主鎖構造としては下記式(a)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(b)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては下記式(c)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
Figure 2010284845
Figure 2010284845
Figure 2010284845
式中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等の非加水分解性基を表す。なお、式(a)の複数のRx、式(b)の複数のRy、及び式(c)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a)のRxが2つとも水素原子であることはない。
無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
前記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
ポリオルガノシロキサン系化合物としては、前記式(a)で表される直鎖状の化合物が好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、前記式(a)において2つのRxがともにメチル基の化合物であるポリジメチルシロキサンがより好ましい。
ポリオルガノシロキサン系化合物は、例えば、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
用いるシラン化合物は、目的とするポリオルガノシロキサン系化合物の構造に応じて適宜選択すればよい。好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラs−ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン系化合物の平均重合度(例えば、数平均重合度)は、通常10〜1,000程度である。
また、ポリオルガノシロキサン系化合物の重量平均分子量は、通常1,000〜100,000程度である。
ポリカルボシラン系化合物は、分子内の主鎖に、(-Si-C-)結合を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシラン系化合物としては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
Figure 2010284845
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
Rw、Rvのアルキル基、アリール基、アルケニル基としては、前記Rx等として例示したものと同様のものが挙げられる。
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
アリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
なお、Rのアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、式(d)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むものがさらに好ましい。
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン系化合物の重量平均分子量は、通常400〜12,000である。
ポリカルボシラン系化合物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、ポリシランの熱分解重合により製造する方法(特開昭51−126300号公報)、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位により製造する方法(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978)、クロロメチルトリクロロシランのグリニャール反応によりポリカルボシラン系化合物を得る方法(Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991)、ジシラシクロブタン類の開環重合により製造する方法(Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996)、ジメチルカルボシランとSiH基含有シランの構造単位を有する原料ポリマーに、塩基性触媒の存在下で水及び/又はアルコールを反応させることにより製造する方法(特開2006−117917号公報)、末端にトリメチルスズ等の有機金属基を有するカルボシランを、n−ブチルリチウム等の有機典型金属化合物を開始剤として重合反応させて製造する方法(特開2001−328991号公報)等が挙げられる。
ポリシラン系化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を有する高分子化合物である。かかるポリシラン系化合物としては、下記式(e)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
Figure 2010284845
式(e)中、Rq及びRrは、同一又は異なって、水素原子、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
Rq及びRrのアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数7〜20のアリールポキシ基が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基等の炭素数7〜20のアラルキルオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基等で置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基等が挙げられる。
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)、置換シリル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基等で置換された置換シリル基)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、本発明のより優れた効果が得られることから、前記式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基である繰り返し単位を含む化合物がより好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基である繰り返し単位を含む化合物がさらに好ましい。
ポリシラン系化合物の形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン系化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン系化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
ポリシラン系化合物の具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー;ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマ;等が挙げられる。
なお、ポリシラン系化合物については、詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)等に記載されている。本発明においては、これらの文献に記載されるポリシラン系化合物を用いることができる。
ポリシラン系化合物の平均重合度(例えば、数平均重合度)は、通常、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
また、ポリシラン系化合物の重量平均分子量は、300〜100,000、好ましくは400〜50,000、さらに好ましくは500〜30,000程度である。
ポリシラン系化合物の多くは公知物質であり、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報等)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)等)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)等)、特定の重合用金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮合させる方法(特開平4−334551号公報等)、ビフェニル等で架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)等)、環状シラン類の開環重合による方法等が挙げられる。
ポリシラザン系化合物としては、式(f)
Figure 2010284845
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
式(f)中、nは任意の自然数を表す。
Rm、Rp、Rtは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
前記アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、前記Rq等で例示したのと同様のものが挙げられる。
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
これらの中でも、Rm、Rp、Rtとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
前記式(f)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記式
Figure 2010284845
で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)
Figure 2010284845
〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は式(B)
Figure 2010284845
(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、式(C)
Figure 2010284845
で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。
有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rm’SiHNH)−(Rm’は、Rmと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。以下のRm’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rm’SiHNRt’)−(Rt’は、Rtと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rm’Rp’SiNH)−(Rp’は、Rpと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基アルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン、
Figure 2010284845
(v)下記式
Figure 2010284845
〔Rm’、Rp’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は下記式
Figure 2010284845
(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(D)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。
上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式
Figure 2010284845
(式中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、Rは、前述した、Rm、Rp、Rt、Rm’、Rp’、Rt’のいずれかの置換基を表す。)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン系化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH(NH))〕及び〔(SiHO〕(式中、j、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、
ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、
上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
なお、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
これらのケイ素系化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合わせて用いることができる。
本発明に用いる「抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層」中の、ケイ素系化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有する層が得られる観点から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましい。
本発明に用いる抗菌性材料としては、抗菌機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、抗菌性を有する金属、金属イオン又は金属化合物、抗菌性を有する金属、金属イオン又は金属化合物を担体に担持させたもの等の無機系抗菌剤;有機系抗菌剤;等が挙げられる。
抗菌性を有する金属としては、銀、水銀、鉛、銅、金、白金、チタン、ニッケル、亜鉛、カドミウム等が挙げられる。
金属イオンとしては上述した金属のイオンが挙げられる。
金属化合物としては、前記抗菌性を有する金属等の、酸化物、硫化物、硫酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。
抗菌性を有する金属、金属イオン又は金属化合物を担持させる担体としては、特に制限はないが、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のゼオライト類;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等の水酸化物又は含水酸化物;リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、アパタイト(リン灰石)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マンガン、リン酸鉄等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム等のチタン酸類;ハイドロタルサイト類等の塩基性塩や複合含水酸化物;モリブドリン酸アンモニウム等のヘテロポリリン酸類;ヘキサシアノ鉄(III)塩;ヘキサシアノ亜鉛;アルミナ;シリカ;ベントナイト;クレー;タルク;雲母;等が挙げられる。
これらの中でも、担持力が高いことから、ゼオライト類、金属酸化物、リン酸塩及びケイ酸塩が好ましい。
抗菌性を有する金属、金属イオン又は金属化合物を担持させる方法としては、従来公知の物理的吸着、化学的吸着、イオン交換、蒸着、表面薄膜形成、機械的担持方法等が挙げられる。
抗菌性を有する金属又は金属化合物を担体に担持させる場合、その担持量は、通常、0.5〜30重量%である。
有機系抗菌剤としては、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体;シクロフルアニド等のN−ハロアルキルチオ系化合物;10,10’−オキシビスフェノキサアルシン等のフェニルエーテル誘導体;セシルジメチルエチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩;2,3,5,6−テトラコロル−4−(メチルスルホニル)ピリジン等のスルホン誘導体;アミド類;トリアジン誘導体;トリアゾール誘導体;メチロール基含有化合物;活性ハロゲン含有化合物;活性化されたN−S結合含有化合物;イソチアゾロン系化合物;有機ヨウ素系化合物;ベンズイソチアゾロン系化合物;ピリチオン系化合物;ヒノキチオール、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、モウソウチク抽出物等の天然物系抗菌剤;等が挙げられる。
これらの抗菌剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、入手容易性、安全性、優れた抗菌性を有するガスバリア性フィルムが得られること等から、無機系抗菌剤が好ましく、金属、金属イオン又は金属化合物が好ましく、銀、銀イオン又は銀化合物がより好ましく、銀又は銀イオンが特に好ましい。
無機系抗菌剤は粒子状であることが好ましい。また、透明性を高くする観点からは、無機系抗菌剤の粒子径は、5〜1000nmが好ましい。
「抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層」(以下、「ケイ素系化合物等を含有する層」という。)中の抗菌性材料の含有量は、用いる抗菌性材料の種類により適宜決定すればよいが、例えば、銀を使用する場合、銀の含有量は、重量ベースで1〜100ppmであるのが好ましい。
本発明においては、ケイ素系化合物等を含有する層は、前記ケイ素系化合物及び抗菌性材料の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、ケイ素系化合物以外の高分子化合物、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
ケイ素系化合物等を含有する層を形成する方法としては、特に制約はなく、例えば、ケイ素系化合物の少なくとも1種、抗菌性材料の少なくとも1種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、適当な支持体の上に塗布し、得られた塗膜を乾燥して形成する方法が挙げられる。
なお、本発明においては、「ケイ素系化合物の少なくとも1種、抗菌性材料の少なくとも1種」として、例えば、特開平2005−2264号公報に記載された、シリコーン含有抗菌性樹脂を用いることもできる。
また、前記層形成用溶液として、市販の、抗菌材料を含むケイ素系化合物溶液をそのまま用いることも可能である。
前記支持体の素材は、形成するフィルムの目的に合致するものであれば特に制限されず、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
これらの中でも、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステルがより好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
支持体の厚みは特に限定されないが、通常5〜1000μm、好ましくは、10〜300μmである。
塗工装置としては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
得られた塗膜の乾燥、フィルムのガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱は80〜150℃で、数十秒から数十分行う。
形成されるケイ素系化合物等を含有する層の厚みは、特に制限されないが、通常20〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、ケイ素系化合物等を含有する層の厚みがナノオーダーであっても、充分なガスバリア性能を有するフィルムを得ることができる。
得られるケイ素系化合物等を含有する層には、イオンビーム照射法、プラズマイオン注入法などでイオンが注入され、ガスバリア性能が付与される。
イオンの注入量は、形成するフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するイオン注入層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
プラズマイオン注入は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ケイ素系化合物等を含有する層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ケイ素系化合物等を含有する層の表面部に注入して行うことができる。
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ケイ素系化合物等を含有する層の厚み、フィルムの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
本発明のフィルムは、ケイ素系化合物等を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層(以下、「ガスバリア層」ということがある。)の他に、他の層を含むものであってもよい。また、他の層は単層であっても、同種又は異種の2層以上であってもよい。他の層としては、前記支持体の他、例えば、無機薄膜層、導電体層、衝撃吸収層等が挙げられる。
無機薄膜層は、無機化合物の一種又は二種以上からなる層である。無機化合物としては、一般的に真空成膜可能で、ガスバリア性を有するもの、例えば無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機硫化物、これらの複合体である無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
無機薄膜層の厚みは、通常10nm〜1000nm、好ましくは20〜500nm、より好ましくは20〜100nmの範囲である。
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
導電体層の形成方法としては特に制限はない。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nm〜50μm、好ましくは20nm〜20μmである。
衝撃吸収層を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系材料等が挙げられる。
また、粘着剤、コート剤、封止剤等として市販されているものを使用することもでき、特に、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤が好ましい。
衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、前記ケイ素系化合物等を含有する層の形成方法と同様に、前記衝撃吸収層を形成する素材(粘着剤等)、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を、積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途、剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
本発明のフィルムが他の層を含む積層体である場合、ガスバリア層の配置位置は特に限定されないが最表層に設けられることが好ましい。また、ガスバリア層は1層でも複数層であってもよい。
本発明のフィルムが優れたガスバリア性を有していることは、本発明のフィルムの水蒸気透過率が小さいことから確認することができる。水蒸気透過率は、例えば、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、1g/m/day以下が好ましい。
なお、フィルムの水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
本発明のフィルムが優れた透明性を有していることは、本発明のフィルムの可視光透過率が高いことから確認することができる。可視光透過率は波長550nmにおける透過率であり、85%以上が好ましい。フィルムの可視光透過率は、公知の可視光透過率測定装置を使用して測定することができる。
本発明のフィルムが優れた屈曲性を有していることは、例えば、3mmφステンレスの棒にフィルムを巻き付け、上下に10往復させた後、光学顕微鏡(倍率2000倍)にて観察しても、クラックの発生が認められないことから確認することができる。
本発明のフィルムが抗菌性を有することは、例えば、JIS−Z2801に基づく抗菌性試験により確認することができる。
2)ガスバリア性フィルムの製造方法
本発明のフィルムの製造方法は、抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層の表面部に、イオンを注入する工程を有することを特徴とする。
本発明の製造方法においては、前記イオンを注入する工程が、抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層を表面部に有する長尺の積層体を一定方向に搬送しながら、前記抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層にイオンを注入する工程であるのが好ましい。
この製造方法によれば、例えば、長尺のフィルムを巻き出しロールから巻き出し、それを一定方向に搬送しながらイオンを注入し、巻き取りロールで巻き取ることができるので、イオンが注入されて得られるガスバリア性フィルムを連続的に製造することができる。
長尺のフィルムとしては、ケイ素系化合物等を含有する層のみでもよいし、他の層を含むものであってもよい。他の層としては、前述したのと同様のものが挙げられる。
フィルムの厚さは、巻き出し、巻き取り及び搬送の操作性の観点から、1μm〜500μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。
ケイ素系化合物等を含有する層にイオンを注入する方法は、特に限定されない。なかでも、前述したように、プラズマイオン注入法が特に好ましい。
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法が好ましい。
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、屈曲性、ガスバリア性を兼ね備えたガスバリア層を効率よく形成することができる。
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1kV〜−50kV、より好ましくは−1kV〜−30kV、特に好ましくは−5kV〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)ケイ素系化合物等を含有する層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001-26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
以下、前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、前記(γ)のプラズマイオン注入装置を備える連続的プラズマイオン注入装置の概要を示す図である。
図1(a)において、1aは、ケイ素系化合物等を含有する層を表面部に有する長尺のフィルム、11aはチャンバー、20aは油拡散ポンプ、3aはイオン注入される前のフィルム1aを送り出す巻き出しロール、5aはイオン注入されたフィルム1bをロール状に巻き取る巻取りロール、2aは高電圧印加回転キャン、6aはフィルムの送り出しロール、10aはガス導入口、7aは高電圧パルス電源、4はプラズマ放電用電極(外部電界)である。図1(b)は、前記高電圧印加回転キャン2aの斜視図であり、15は高電圧導入端子(フィードスルー)である。
図1に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム1aは、チャンバー11a内において、巻き出しロール3aから図1中矢印X方向に搬送され、高電圧印加回転キャン2aを通過して、巻き取りロール5aに巻き取られる。フィルム1bの巻取りの方法や、フィルム1aを搬送する方法等は特に制約はないが、本実施形態においては、高電圧印加回転キャン2aを一定速度で回転させることにより、フィルム1aの搬送を行っている。また、高電圧印加回転キャン2aの回転は、高電圧導入端子15の中心軸13をモーターにより回転させることにより行われる。
高電圧導入端子15、及びフィルム1aが接触する複数の送り出し用ロール6a等は絶縁体からなり、例えば、アルミナの表面をポリテトラフルオロエチレン等の樹脂で被覆して形成されている。また、高電圧印加回転キャン2aは導体からなり、例えば、ステンレスで形成することができる。
フィルム1aの搬送速度は適宜設定できる。フィルム1aが巻き出しロール3aから搬送され、巻き取りロール5aに巻き取られるまでの間にフィルム1aの表面部(ケイ素系化合物等を含有する層)にイオン注入され、所望のイオン注入層が形成されるだけの時間が確保される速度であれば、特に制約されない。フィルムの巻取り速度(搬送速度)は、印加電圧、装置規模等にもよるが、通常0.1〜3m/min、好ましくは0.2〜2.5m/minである。
まず、チャンバー11a内をロータリーポンプに接続された油拡散ポンプ20aにより排気して減圧とする。減圧度は、通常1×10−2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下である。
次に、ガス導入口10aよりチャンバー11a内に、窒素等のイオン注入用のガスを導入して、チャンバー11a内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。イオン注入する際の圧力(チャンバー11a内のプラズマガスの圧力)は、0.01〜1Paであるのが好ましい。なお、イオン注入用ガスはプラズマ生成ガスでもある。
次いで、プラズマ放電用電極4(外部電界)によりプラズマを発生させる。プラズマを発生させる方法としては、マイクロ波やRF等の高周波電力源等による公知の方法が挙げられる。
一方、高電圧導入端子15を介して高電圧印加回転キャン2aに接続されている高電圧パルス電源7aにより、負の高電圧パルス9aが印加される。高電圧印加回転キャン2aに負の高電圧パルスが印加されると、プラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2aの周囲のフィルムの表面に注入され(図1(a)中、矢印Y)、フィルム1bが得られる。
次に、図2に示す連続的プラズマイオン注入装置を使用して、ケイ素系化合物等を含有する層の表面部にイオン注入する方法を説明する。
図2に示す装置は、前記(δ)のプラズマイオン注入装置を備える。このプラズマイオン注入装置は、外部電界(すなわち、図1におけるプラズマ放電用電極4)を用いることなく印加する高電圧パルスによる電界のみでプラズマを発生させるものである。
図2に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム1cは、前記図1の装置と同様に高電圧印加回転キャン2bを回転させることによって巻き出しロール3bから図2中矢印X方向に搬送され、巻き取りロール5bに巻き取られる。
図2に示す連続的プラズマイオン注入装置による、前記フィルム1cのケイ素系化合物等を含有する層の表面部へのイオン注入は次のように行われる。
まず、図1に示すプラズマイオン注入装置と同様にしてチャンバー11b内にフィルム1cを設置し、チャンバー11b内をロータリーポンプに接続されている油拡散ポンプ20bにより排気して減圧とする。そこへ、ガス導入口10bよりチャンバー11b内に、窒素等のイオン注入用ガスを導入して、チャンバー11b内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。
イオン注入する際の圧力(チャンバー11b内のプラズマガスの圧力)は、10Pa以下、好ましくは0.01〜5Pa、より好ましくは0.01〜1Paである。
次に、フィルム1cを、図2中Xの方向に搬送させながら、高電圧導入端子(図示せず)を介して高電圧印加回転キャン2bに接続されている高電圧パルス電源7bから高電圧パルス9bを印加する。
高電圧印加回転キャン2bに負の高電圧が印加されると、高電圧印加回転キャン2bの周囲のフィルム1cに沿ってプラズマが発生し、そのプラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2bの周囲のフィルム1cの表面に注入される(図2中、矢印Y)。フィルム1cのケイ素系化合物等を含有する層の表面部にイオンが注入され、フィルム1dが得られる。
図2に示すプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、ケイ素系化合物等を含有する層の表面部に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にガスバリア性のイオン注入層が形成された本発明のフィルムを量産することができる。
上記のようにして得られる本発明のフィルムは、ガスバリア性、透明性、屈曲性、及び抗菌性のすべてに優れるので、食品、医薬品等の包装材料;タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等のディスプレイ部材;電子ペーパー;太陽電池用バックシート;等に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
用いたプラズマイオン注入装置、水蒸気透過率測定装置及び測定条件、可視光透過率測定装置及び測定条件、屈曲性試験方法、並びに抗菌性試験方法は以下の通りである。
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
(水蒸気透過率の測定)
透過率測定器:LYSSY社製、「L80−5000」
測定条件:相対湿度90%、40℃
(可視光透過率の測定)
紫外可視近赤外分光透過率計:島津製作所社製、「UV3600」
測定条件:波長550nm
(抗菌性試験)
JIS−Z2801に基づく抗菌性試験法に従い、直後と、35℃で24時間後の生菌数をそれぞれ測定した。
(屈曲性試験)
3mmφステンレスの棒にPETフィルム側が接するようにフィルムを巻き付け、上下に10往復させた後、光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−100)にて倍率2000倍で観察した。クラックの発生が観察される場合を有、観察されない場合を無、と評価した。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学社製、「PET38 T−100」、厚さ38μm。以下、「PETフィルム」という。)に、銀ナノ粒子を含むシラザンのターベン溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカSP140)をスピンコート法にて塗布し、120℃で1分間加熱してPETフィルム上に厚さ100nm(膜厚)の抗菌剤入りポリシラザン系化合物層(銀含有量:50ppm)を形成した。次に、該層の表面に、図2に示すプラズマイオン注入装置を用いて、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入してフィルム1を作製した。
スピンコートの条件を以下に示す。
溶液濃度:1%
回転数:3000rpm
回転時間:30sec
乾燥温度:120℃
乾燥時間:10min
プラズマイオン注入の条件を以下に示す。
・ガス(アルゴン)流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波 13.56MHz、印加電力 1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min
(実施例2)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えて窒素(N)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム2を作製した。
(実施例3)
実施例1で用いた「銀ナノ粒子を含むシラザンのターベン溶液」に代えて、銀ナノ粒子(東洋インキ製造社製、LIOMETAL)をポリオルガノシロキサンの固形分に対して0.005重量%含有させた、ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製、KS847H)の1.5%トルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム3を作製した。(銀含有量:75ppm)
(実施例4)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えて窒素(N)を用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルム4を作製した。
(実施例5)
実施例1で用いた「銀ナノ粒子を含むシラザンのターベン溶液」に代えて、イオン交換体であるゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)に抗菌性を有する銀イオンを安定的にイオン結合させた材料(シナネンゼオミック社製、ゼオミック)を用い、ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製、KS847H)の1.5%トルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム5を作製した。(銀含有量:50ppm)
(比較例1)
PETフィルムをそのままフィルム6とした。
(比較例2)
実施例1で用いた「銀ナノ粒子を含むシラザンのターベン溶液」に代えて、「銀ナノ粒子を含まないシラザンのキシレン溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカNL110A)」を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム7を作製した。
(比較例3)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えて窒素(N)を用いた以外は、比較例2と同様にしてフィルム8を作製した。
(比較例4)
PETフィルム上に、スパッタリング法により、厚さ50nmの窒化ケイ素(SiN)の膜を成膜し、フィルム9を作製した。
(比較例5)
実施例1において、プラズマイオン注入しない以外は、実施例1と同様にしてフィルム10を作製した。
実施例1〜5、比較例2,3で得られたフィルムのそれぞれについて、XPS(アルバックファイ社製、Quantum2000)を用いて、表面から10nm付近の元素分析測定を行うことにより、それぞれのイオンが注入されたことを確認した。
実施例1〜5、及び比較例1〜5で得られたフィルム1〜10について、水蒸気透過率の測定、可視光透過率の測定、屈曲試験及び抗菌性試験を行った。測定結果及び試験結果を下記第1表に示す。
Figure 2010284845
第1表から、実施例1〜5のフィルム1〜5は、水蒸気透過率が小さく、高いガスバリア性を有し、透明性、屈曲性に優れ、35℃で24時間放置した後の抗菌性にも優れていることがわかる。一方、比較例1のフィルム6はガスバリア性、抗菌性に劣り、比較例2,3のフィルム7,8は抗菌性に劣り、比較例4のフィルム9は屈曲性、抗菌性に劣り、比較例5のフィルム10はガスバリア性に劣っていることがわかる。
1a、1c・・・フィルム
1b、1d・・・ガスバリア性フィルム
2a、2b・・・回転キャン
3a、3b・・・巻き出しロール
4・・・プラズマ放電用電極
5a、5b・・・巻き取りロール
6a、6b・・・送り出し用ロール
7a、7b・・・パルス電源
9a、9b・・・高電圧パルス
10a、10b・・・ガス導入口
11a、11b・・・チャンバー
13・・・中心軸
15・・・高電圧導入端子
20a、20b・・・油拡散ポンプ

Claims (8)

  1. 抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、イオンが注入されて得られる層を有するガスバリア性フィルム。
  2. 前記抗菌性材料が、無機系抗菌剤であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記抗菌性材料が、銀又は銀イオンを含有するものであることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中の銀の含有量が、重量ベースで1〜100ppmであることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 抗菌性材料及びケイ素系化合物を含有する層中に、プラズマイオン注入法によりイオンが注入されて得られる層を有する請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  6. 40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1g/m2/day未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  7. 抗菌剤及びケイ素系化合物を含有する層の表面部に、イオンを注入する工程を有する請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  8. 前記イオンを注入する工程が、抗菌剤及びケイ素系化合物を含む層を表面部に有する長尺のフィルムを一定方向に搬送しながら、前記抗菌剤及びケイ素系化合物を含む層にイオンを注入する工程であることを特徴とする請求項7に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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