JP2010283359A - 希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末 - Google Patents

希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末 Download PDF

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【課題】Feリッチ相が大幅に減少し、良好な保磁力と優れた角形性を有し、還元拡散法で安価に製造しうる希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末を提供。
【解決手段】希土類元素と、Mnと、Nと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoからなり、希土類元素が22〜27重量%、Mnが7重量%以下、Nが3.5〜6.0重量%である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、特定の原料粉末を用いた特定の還元拡散法と特定の窒化条件で製造され、Th2Zn17型結晶構造を有する相とアモルファス相とを含有するとともに、それ以外に共存するFeリッチ相は、下記の式で表される粉末X回折における回折線の強度比(X)が10%以下になるまで低減していることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末によって提供する。
X=I(Fe)/Im
[式中、I(Fe)は、2θが44〜45°(Cu−Kα)に現れる回折線の強度であり、ImはTh2Zn17型結晶構造の回折線の中で最大の強度を表す]
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、Feリッチ相が大幅に低減し、良好な保磁力と優れた角形性を有し、還元拡散法で安価に製造しうる希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末に関する。
フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等が、自動車、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモータなどとして組み込まれ、使用されている。これら磁石は、主に焼結法で製造されるが、脆く、薄肉化しにくいため複雑形状への成形は困難であり、また焼結時に15〜20%も収縮するため、寸法精度を高められず、研磨等の後加工が必要で、用途面において大きな制約を受けている。
これに対し、ボンド磁石は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダとし、磁石粉末を充填して容易に製造できるため、新しい用途開拓が繰り広げられている。
これら樹脂バインダの中で、ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、280°Cを超える高い融点を有するとともに、有機酸や無機酸、強アルカリ、油脂、有機溶媒などに対する優れた耐薬品性も併せ持っている。そのためPPSをバインダとしたボンド磁石は、高い耐熱性や耐薬品性を必要とする用途に用いられている。
ここで磁石粉末がBaフェライトやSrフェライトなどのハードフェライトである場合には、磁気特性が最大エネルギー積で20kJ/m未満であり、それ以上の性能が必要である場合には希土類遷移金属系磁石粉末が用いられる。
希土類−遷移金属系磁石粉末としては、Sm−Co系磁石粉末、Nd−Fe−B系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末が知られており、Sm−Co系のSmTM17磁石粉末(TMはCo、Fe、Cu、Zr、Hfなど)や、Nd−Fe−B系のMQ磁石粉末(マグネクエンチインターナショナル製の等方性粉末)を用いたPPSボンド磁石が実用化されている。
Sm−Fe−N系のSmFe17磁石粉末を用いたPPSボンド磁石(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、高温で混練・成形されるため磁石粉末の保磁力や角形性が低下する問題がある。
また、PPS以外の良好な耐熱性と耐薬品性を有する樹脂バインダとして、芳香族系ポリアミドや液晶ポリマーが知られており、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドの混合物を樹脂バインダとした磁石が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これにより、固有保磁力8kOe(640kA/m)以上のボンド磁石が得られているが、磁石粉末の耐熱性が十分でないために、固有保磁力が16kOe(1280kA/m)レベルの原料粉末を使わざるを得ない。
課題となっているSmFe17磁石粉末の耐熱性を向上させるため、粉末表面をZnで処理すること(例えば、特許文献3参照)、また、粉末を燐酸化合物で処理すること(例えば、特許文献4、5参照)が提案されているが、その効果はまだ十分とはいえなかった。
一方、耐熱性に優れたSm−Fe−N系磁石粉末として、希土類元素と、鉄または鉄およびコバルトと、マンガンと、窒素からなる磁性材料が提案されている(例えば、特許文献6参照)。この磁性材料は、従来のSmFe17磁石粉末以上の過剰な窒素を合金粉末に導入して製造され、ピンニング型の磁化反転機構を示すとされている。また、その金属組織について、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する強磁性相の周りをN濃度の高い結晶格子の崩れた或いは崩れかけた部分が取り囲む、セルのような構造が生じ、そのセルの結晶粒子径が10〜200nmであることを開示している。
この特許文献6には、例えば飽和磁化134emu/g(134Am/kg)で固有保磁力4.1kOe(328kA/m)の磁石粉末や、飽和磁化が102emu/g(102Am/kg)で固有保磁力が9.3kOe(744kA/m)の粉末が記載されている。これらの粉末は、110°Cの温度に200時間さらした後も、初期値の98%以上の優れた保磁力を維持し、ここで得られた磁石粉末の粉末X線回折によれば、ThZn17型結晶構造の回折線に加えて、2θが44°(Cu−Kα)付近に比較的大きな回折線が見られるとしている。
また、K.Majimaらは、個々の粒子がSm(Fe、Mn)17化合物結晶相からなる磁石粉の金属組織について研究し、それが10〜30nmの微結晶粒の集合組織(セル状構造)を有しており、セル境界はアモルファス相であると報告している(非特許文献1参照)。そして、該アモルファス相においては、窒素とマンガン組成が結晶相に比べてかなり高いとしている。
さらに、希土類元素と、鉄または鉄およびコバルトと、マンガンと、窒素からなる磁性材料に、CuまたはBiの少なくとも一種を含有させることによって、その磁気特性を高めた磁石粉末が提案されており、例えば、飽和磁化12.5kG(1.25T)で保磁力9.1kOe(728kA/m)の粉末が得られるとされている(特許文献7参照)。
この特許文献7によれば、たとえ良好な飽和磁化と保磁力を有する磁石粉末が得られても、減磁曲線の角形性が悪く、また、高い磁気特性を再現性よく得ることが困難であった。さらに、窒素を導入する前の希土類−鉄−マンガン母合金粉末は、溶解法で製造されており、特に希土類元素がSmの場合には原料となる金属Smが高価であるため、コスト的にも問題があった。
また、希土類−鉄−マンガン系磁石では、母合金粉末を篩分級などにより粒度調整した後、さらに窒素を導入して得られた希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末に対しても粒度調整を行って初めて、高い保磁力が得られるため、製品収率が低いという点でも工業製品としてコスト的に問題があった。
前記特許文献6には、母合金の調製方法として還元拡散法(R/D法)も可能である旨が記載されている。還元拡散法による母合金は、溶解法に比べて安価に製造できる特長があるが、従来提案されていた希土類−鉄−母合金粉末を窒素ガス又はアンモニアで窒化する方法(特許文献8〜10参照)では、特許文献6に開示された情報によっても良好な性能、特に高い角形性の磁石粉末を再現よく、良好な収率で得ることが難しかった。
このような状況下、高い角形性の磁石粉末を再現よく、低コストかつ良好な収率で得ることができる方法の出現が切望されていた。
特開平03−160705号公報 特開2002−270419号公報 特開平09−190909号公報 特開2000−058312号公報 特開2002−008911号公報 特開平08−55712号公報 特開平11−135311号公報 特開平05−148517号公報 特開平05−279714号公報 特開平06−212342号公報 K.Majima;J.Appl.Phys.81(1997)p.4530−4532
本発明の目的は、このような状況に鑑み、Feリッチ相が大幅に低減し、良好な保磁力と優れた角形性を有し、還元拡散法で安価に製造しうる希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末を提供することにある。
本発明者らは、かかる従来の課題を解決するために、希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の高性能化について鋭意検討し、磁石原料粉末を還元拡散して冷却後に反応生成物を取り出し、湿式処理して得た希土類−鉄−マンガン系母合金粉末を窒化し、得られた希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組織を透過型電子顕微鏡で観察した結果、ThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相に加えて、粉末X線回折結果に対応すると思われるFeリッチな相が顕著に認められ、このFeリッチ相の影響で、減磁曲線の角形性が悪くなるか、また良好な飽和磁化と保磁力が得られても、高い磁気特性を再現性よく得られないことを究明し、還元拡散反応後の反応生成物を、引き続き不活性ガス雰囲気下で特定の温度以下に冷却後、湿式処理する前に窒化熱処理することで、Feリッチな相が実質的に存在せず、高い保磁力を有し減磁曲線の角形性が良好である磁石粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類元素と、Mnと、Nと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoからなり、希土類元素が22〜27重量%、Mnが7重量%以下、Nが3.5〜6.0重量%である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、粒径が10〜70μmの粉末が全体の80%以上を占める鉄粉末、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるマンガン粉末および/またはマンガン酸化物粉末、希土類酸化物粉末、コバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末からなる原料粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程、得られた混合物を不活性ガス雰囲気中で900〜1200°Cに加熱する工程、引き続き、得られた反応生成物を不活性ガス雰囲気中で300°C以下に冷却する工程、その後、雰囲気ガスを変えて、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合気流中で昇温し、350〜500°Cで反応生成物を窒化熱処理する工程、および得られた窒化熱処理物を水中に投入して湿式処理する工程を順次行って製造され、ThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相とを含有するとともに、それ以外に共存するFeリッチ相は、下記の式で表される粉末X回折における回折線の強度比(X)が10%以下になるまで低減していることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
X=I(Fe)/Im
[式中、I(Fe)は、2θが44〜45°(Cu−Kα)に現れる回折線の強度であり、ImはThZn17型結晶構造の回折線の中で最大の強度を表す]
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、回折線の強度比(X)が5%以下であることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、各成分元素の含有量は、希土類元素が23〜26重量%、Mnが2〜5重量%、Nが4.0〜5.5重量%であることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、Nの含有量が、4.0〜5.0重量%であることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、混合気流中のアンモニア分圧が0.4〜1.0であることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、窒化熱処理に要する時間が200〜600分であることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末が提供される。
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末は、粉末X線回折によってFeリッチ相が大幅に低減していることが確認され、窒素を十分な量含んでいるため、高い保磁力を有し、減磁曲線の角形性が良好で優れた磁気特性を有する。この磁石粉末の製造方法は、還元拡散後の反応生成物である希土類−鉄−マンガン系母合金を、不活性ガス雰囲気下で一旦特定の温度まで冷却後、雰囲気ガスを切り替えて昇温し特定条件で窒化することを特徴としており、容易かつ低コストで製造できる利点がある。
以下、本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末についてさらに詳しく説明する。
1.希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末は、希土類元素と、Mnと、Nと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoからなり、希土類元素が22〜27重量%、Mnが7重量%以下、Nが3.5〜6.0重量%であり、還元拡散による特定の製造方法で得られ、しかもThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相とを含有する希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、Feリッチ相が大幅に減少した希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末である。
この希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組成は、22〜27重量%の希土類元素と、7重量%以下のMnと、3.5〜6.0重量%のNと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoである。特に好ましいのは、23〜26重量%の希土類元素と、2〜5重量%以下のMnと、4.0〜5.0重量%のNと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoである磁石粉末である。
希土類元素としては、Smを希土類全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にするのが、高い保磁力を得るために必要である。希土類元素が22重量%未満であると、磁石粉末に未拡散の鉄(−コバルト)−マンガン相が残留するので、磁化と保磁力と角形性が低下する。また、希土類元素が27重量%を超えると、ThZn17型のSm(Fe、Mn)17化合物結晶相よりも希土類リッチの窒化物相が形成され、磁石粉末の磁化と角形性が低下する。
Mnは、保磁力を発現させるための必須元素であるが、7重量%を超えると磁石粉末の磁化が低下する。より好ましいMn量は2〜5重量%である。
N量は、3.5重量%未満では、微粉砕して保磁力を発現するタイプの合金になってしまい、角形性が不十分となるので、3.5重量%以上でなければならない。ただし、6.0重量%を超えると、磁石粉末中のアモルファス相が増加するとともに、ThZn17型結晶構造を持つSm(Fe、Mn)17化合物結晶相主相をアモルファス相が取り囲む形をとった個々のセル構造において、ThZn17型結晶構造を持つSm(Fe、Mn)17化合物結晶相のc軸が揃わなくなってくるため、磁化が低下する。より好ましいN量は、4.0〜5.0重量%である。
残部はFeであるが、その一部をCoで置換することができる。Feの20重量%以下をCoで置換するとキュリー温度が上昇し、磁化や磁化の温度係数を改善できる。
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組織を透過型電子顕微鏡で観察すると、ThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相のみからなり、Feリッチ相が大幅に低減されている。すなわち、Feリッチな相は、例えば図2において、楕円状の囲みで示した中の、幅が数10〜200nmの細長い部分に相当し、粉末X線回折による2θが44〜45°(Cu−Kα)の位置にブロードな回折線が現れることで確認されるが、本発明の磁石粉末では、この回折線の強度が極端に小さい。軟磁性を有するFeリッチ相が極めて少ないので、磁石粉末の磁気特性を低下させるおそれはない。
特に、本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末では、次式で示される粉末X線回折における回折線の強度比(X)が10%以下、好ましくは5%以下のものである。
X=I(Fe)/Im
[式中、I(Fe)は、2θが44〜45°(Cu−Kα)に現れる回折線の強度であり、ImはThZn17型結晶構造の回折線の中で最大の強度を表す]
なお、本発明において、最大の強度を有するThZn17型結晶構造の回折線は、通常(303)の面指数に対応するものである。
この回折線の強度比(X)が10%以下である磁石粉末は、高い保磁力と良好な減磁曲線の角形性を有する。このXの値が10%を超えたものは、内部にFeリッチ相が実質的に存在することを意味しており、磁石粉末の磁気特性が低下するので好ましくない。
2.希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の製造方法
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の製造方法は、(1)磁石原料粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合し、(2)得られた混合物を不活性ガス雰囲気中で900〜1200°Cに加熱して、磁石原料の酸化物粉末を金属に還元して合金化し、(3)引き続き、得られた反応生成物を不活性ガス雰囲気中で300°C以下に冷却し、(4)次に、雰囲気ガスを変えて、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合気流中で昇温し、350〜500°Cで窒化熱処理し、(5)得られた窒化熱処理物を水中に投入して湿式処理することにより製造される。
(1)磁石原料粉末の混合
本発明においては、希土類−鉄−マンガン系母合金粉末を還元拡散法で製造するために、磁石原料粉末として希土類酸化物粉末、鉄粉末、マンガン粉末および/またはマンガン酸化物粉末を用いる。
希土類酸化物粉末としては、特に制限されないが、Sm、Ge、Tb、およびCeから選ばれる少なくとも1種の元素、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbから選ばれる少なくとも1種の元素が含まれるものが好ましい。中でもSmが含まれるものは、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能となるので特に好ましい。Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にすることが高い保磁力を得るために好ましい。
鉄粉末としては、例えば還元鉄粉、ガスアトマイズ粉、水アトマイズ粉、電解鉄粉などが使用でき、必要に応じて最適な粒度になるように分級する。
ここで鉄粉末の30重量%までを鉄酸化物粉末として投入し、還元拡散反応の発熱量を調整することもできる。また、マンガン量の全部または一部を鉄−マンガン合金粉末の形で投入することもできる。
さらに、Feの20重量%以下をCoで置換した組成の希土類−鉄−コバルト−マンガン−窒素系磁石粉末を製造する場合には、Co源としてコバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末および/または鉄−コバルト−マンガン合金粉末を用いる。
なお、マンガンとコバルト源としては、得られる希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末中のMn組成の、粒子間ばらつきを小さくするために、酸化物粉末を使用するのが好ましく、また取り扱い時の発火に対する安全性からも酸化物が好ましい。
マンガン酸化物としては、たとえば酸化マンガンや二酸化マンガン、これらの混合物で、上記粒度を持つものが使用できる。また、コバルト酸化物としては、たとえば酸化第一コバルトや四三酸化コバルト、これらの混合物で、上記粒度を持つものが使用できる。
ここで、各磁石原料粉末は、粒径が10〜70μmの粉末が全体の80%以上を占める鉄粉末、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるマンガン粉末および/またはマンガン酸化物粉末、希土類酸化物粉末、コバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末とする
鉄粉末は、粒径10μm未満の粒子が多くなると、希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末粒子が多結晶体となり、得られた希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の磁化が低下しやすい。一方、粒径70μmを超えるものが多くなると、希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末中に希土類元素が拡散していない鉄部または鉄−マンガン部が多くなるとともに母合金粉末の粒径も大きくなり、窒素分布が不均一になって、得られた希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の角形性が低下しやすい。
これに対し、他の原料であるマンガン酸化物粉末、希土類酸化物粉末、コバルト酸化物粉末は、これらの中でもっとも多い希土類酸化物粉末でも組成が30重量%未満であることから、還元拡散反応時に、反応容器内部で上記鉄粉末の周りに均一に分布存在していることが望ましい。したがって、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるものであるとよい。粒径が0.1μm未満の粉末が多くなると、製造中に粉末が舞い上がり取り扱いにくくなる。また、10μmを超えるものが多くなると、還元拡散法で得られた希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末中のMn組成が粒子間でばらつきやすくなり、希土類元素が拡散していない鉄部または鉄(−コバルト)−マンガン部が多くなる。
ここで、鉄(−コバルト)−マンガン合金粉末については、粒径が10〜80μmの粉末が全体の80%以上を占めること、希土類酸化物粉末については、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるものが好ましい。粒径10μm未満のものが多くなると、希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粒子が多結晶体となり、得られた希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の磁化が低下する。一方、粒径80μmを超える粒子が多くなると、希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金中に希土類元素が拡散していない鉄部または鉄(−コバルト)−マンガン部が多くなるとともに、母合金粉末の粒径も大きくなり窒素分布が不均一になって、得られた希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の角形性が低下しやすい。
(2)還元拡散
本発明においては、次に上記の磁石原料粉末を不活性ガス雰囲気中、所定の温度で熱処理し、還元拡散法でThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄−マンガン系母合金粉末を製造する。
還元拡散法は、例えば特開昭61−295308号公報に記載されているように、希土類酸化物粉末と、他の金属の粉末と、Caなどの還元剤との混合物を、不活性ガス雰囲気中などで加熱した後、反応生成物を湿式処理して副生したCaOおよび残留Caなどの還元剤成分を除去することによって、直接合金粉末を得る方法である。
本発明では、鉄、マンガン、必要に応じてコバルトからなる磁石原料粉末と還元剤とを反応容器に投入し、加熱処理することによって、希土類酸化物と他の酸化物原料とを還元するとともに、還元された希土類元素等の金属元素を鉄粉末に拡散させてThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末を生成させる。
ここで各原料粉末は、それぞれの粉体特性差によって分離しないように均一に混合することが重要である。混合方法としては、たとえばリボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー、ボールミル、振動ミル、アトライター、ジェットミルなどが使用できる。
還元剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの水素化物などが使用でき、取り扱いの安全性とコストの点で、目開き4.00mm以下に篩い分級した粒状金属カルシウムが好ましい。還元剤は上記原料粉末と混合するか、カルシウム蒸気が原料粉末と接触しうるよう分離しておくが、混合して還元拡散させれば、反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができる。
磁石原料粉末や還元剤とともに、後の湿式処理工程において反応生成物の崩壊を促進させる添加剤を混合することも効果的である。崩壊促進剤としては、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩や酸化カルシウムなどを用いることができ、磁石原料粉末などと同時に均一に混合する。
熱処理温度は、900〜1200°Cの範囲とすることが望ましい。900°C未満では鉄粉末に対して、マンガン、希土類元素、コバルトの拡散が不均一となり、得られる希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下する。一方、1200°Cを超えると、生成する希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末が粒成長を起こすとともに互いに焼結するため、均一に窒化することが困難になり磁石粉末の残留磁束密度と角形性が低下する。
還元拡散反応で得られる生成物は、例えば、還元剤として金属カルシウムを用いた場合には、ThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末と酸化カルシウム、未反応の余剰の金属カルシウムなどからなる塊状の混合物である。さらに粒状金属カルシウムを原料粉末に混合して還元拡散反応させた場合には、多孔質の塊状混合物となっている。
これに対して、前記特許文献6などで採用されている溶解法は、希土類原料として希土類金属が用いられ、これは還元拡散法で用いられる希土類酸化物原料に比べて高価である。特に、希土類元素が、優れた磁気特性をもたらすSmの場合にその差は顕著である。また上記粒度調整で発生する不要な粉末は、製品収率を低下させ、粉末コストをさらに引き上げてしまう。また溶解法では、得られた合金中のαFe相などをなくすための均質化熱処理工程が必要になり、さらに窒素を導入する前に均質化熱処理した合金を粗粉砕する工程と、粗粉砕粉末を粒度調整する工程が必要になるので好ましくない。
(3)反応生成物の冷却
本発明では、還元拡散反応後の反応生成物に対して、雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、引き続き300°C以下、好ましくは250°C以下に冷却する。
冷却後の温度、すなわち、少なくともアンモニアと水素とを含有する窒化ガス(混合気流)を導入する温度が300°Cを超えると、反応生成物との窒化反応が急激に進んでしまい、Feリッチ相を増加させることがあるので、300°C以下とするのが望ましい。これは、300°Cを超える温度では、活性な反応生成物が急激に窒化されるためにThZn17型結晶構造を有する金属間化合物がFeリッチ相とSmNとに分解されるためであると推測される。
冷却後に、多孔質の塊状混合物(反応生成物)を湿式処理しないで次の窒化工程に移る。このとき反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末が酸化されて失活し、窒化の度合いをばらつかせるので、大気(酸素)に曝されることのないように窒化工程に持ち込むことが望ましい。
(4)窒化処理
窒化工程では、雰囲気ガスを不活性ガスから、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスに変えてから昇温し、反応生成物を特定温度に加熱する。窒化ガスとしては、少なくともアンモニアと水素とを含有していることが必要であり、反応をコントロールするためにアルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。
全気流圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.4〜1.0、好ましくは0.5〜0.8となるようにする。本発明では、アンモニア分圧が0.4未満であると、長時間かけても母合金粉末の窒化が進まず、窒素量を3.5重量%以上とすることができず、アモルファス相が十分形成されないため、磁石粉末の残留磁束密度と保磁力が低下する。
アンモニアと水素とを含有する混合気流を350〜500°C、好ましくは400〜480°Cに昇温し、母合金粉末を窒化熱処理する。温度が350°C未満であると、反応生成物中の希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末に3.5重量%以上の窒素を導入するのに長時間を要するので工業的優位性がなくなる。一方、500°Cを超えると磁石粉末の減磁曲線の角形性が低下するので好ましくない。
窒化熱処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、200〜600分、好ましくは、300〜550分とする。200分未満では、窒化が不十分になり、一方、600分を超えると窒化が進みすぎるので好ましくない。
前記した特許文献6によれば、「アンモニア分圧を0.1〜0.7の範囲に制御すれば、窒化効率が高い上に本発明の窒素量範囲全域の磁性材料を作製することができる」と記載され、「加熱温度は、母合金組成、窒化雰囲気によって異なるが、200〜650°Cの範囲で選ばれるのが望ましい」と記載されている。
ところが、このような条件の中には、良好な飽和磁化と保磁力が得られても、減磁曲線の角形性が悪くなる部分があり、また一定の条件で磁石粉末を製造しても高い磁気特性を再現性よく得ることができない。それは、Feリッチ相の存在が影響しているものと判断される。
このようなFeリッチ相と推定される、2θが44〜45°(Cu−Kα)に回折線を生じさせる相の生成を抑制するため、本発明では、還元拡散反応後の反応生成物を、不活性ガス雰囲気中で特定温度以下に冷却してから、雰囲気ガスをアンモニアと水素を含む窒化ガスに切り替えて昇温し、アンモニア分圧と加熱温度を特定して窒化するのである。
ところで、希土類−鉄(−コバルト)−窒素系磁石粉末の製造では、還元拡散の反応生成物に対して窒化処理する場合、特許文献8(特開平05−148517号公報)では、還元拡散の反応生成混合物を窒素雰囲気中において、300〜600°Cの温度に保持し、特許文献9(特開平05−279714号公報)では、窒素あるいはアンモニア雰囲気中で窒化処理し、得られた熱処理物を湿式処理している。しかし、このような窒素又はアンモニア雰囲気中の熱処理では、本発明の希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末を得ることはできない。
また、Mnを含まない合金を対象とした特許文献10(特開平06−212342号公報)の実施例では、還元拡散反応後に250°Cまで冷却し、水素ガスに切り替えて熱処理し、さらに窒素ガスに切り替えて500°Cまで昇温し窒化している。しかしながら、本発明の必須元素であるMnを含まないために、磁気特性が十分ではない上に、N量が3.3±0.1重量%と本発明のN量の下限値(3.5重量%)より小さくなっている。なお、常圧の窒素ガスで窒化した場合には、SmFe17においてxが高々3.3重量%の試料しか得られない。
本発明においては、窒化熱処理に引き続いて、さらに水素ガスおよび/または窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で合金粉末を熱処理することが望ましい。特に好ましいのは、水素ガスおよび/または窒素ガスおよび/またはアルゴンガスである。これにより、磁石粉末を構成する個々のセル内の窒素分布をさらに均一化することができ、角形性を向上させることができる。熱処理の保持時間は、30〜200分、好ましくは60〜150分である。
(5)湿式処理
最後に、本発明では、窒化処理後の反応生成物に含まれている還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を、湿式処理して希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末から分離除去する。
窒化終了後の磁石粉末に湿式処理を行うのは、前述したとおり、窒化する前に、反応生成物を湿式処理すると、この湿式処理過程で母合金表面が酸化されて窒化の度合いをばらつかせるからである。
窒化後に反応生成物を長期間大気中に放置すると、炭酸カルシウムなどの還元剤成分の炭酸化物が生成し除去しにくくなり、磁石粉末の磁化の低下が起こったり、配向不良によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された反応生成物は、反応器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのがよい。
湿式処理は、まず崩壊した生成物を水中に投入し、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)を除去するために、酢酸および/または塩酸を用いて酸洗浄する。このときの水溶液の水素イオン濃度はpH4〜7の範囲で実施するとよい。
上記処理終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末を得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
得られた磁石粉末の微細組織は、透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、HF−2200、および日本電子株式会社製、JEM−3010)で観察した。微細組織の結晶構造は、電子線回折パターンから判定した。一部では、エネルギー分散型X線解析(EDX)と電子エネルギー損失分析装置(EELS JEM−2100F/STEM)を用い、組織構造観察と組成分析を行った。また、粉末X線回折装置(Cu−Kα、理学電機株式会社製 Rotaflex RAD−rVB、マックサイエンス株式会社製 SUN SP/IPX)によって、磁石粉末のマクロの結晶構造を確認した。なお、I(Fe)/Imの算出にあたっては、バックグラウンドを除去した後に実施した。回折線の強度比Xが10%以下で、Feリッチ相の存在が無視しうる程度である場合を○、強度比Xが10%を超え、Feリッチ相の存在を無視しえない場合を×と評価した。
得られた磁石粉末の磁気特性は、最大印加磁界1200kA/mの振動試料型磁力計(東英工業株式会社製、VSM−3)で測定した。測定では、日本ボンド磁石工業協会ボンド磁石試験法ガイドブックBMG−2005に準じて、1600kA/mの配向磁界をかけて試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁してから評価した。
また、粉末のX線密度は、分析組成とThZn17型結晶構造の格子定数から算出し、この値で残留磁束密度Brを換算した。
(実施例1)
磁石原料粉末として、アトマイズ法で製造された、粒径が10〜70μmの粉末が全体の94%を占める鉄粉末(Fe純度99%)332gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の83%を占める二酸化マンガン粉末(MnO純度91%)30gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウム粉末(Sm純度99.5%)161gを秤量し、粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(Ca純度99%)100gをヘンシェルミキサーで混合した。
これをステンレススチール反応容器に挿入し、容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながら1190°Cまで昇温し、4時間保持し250°Cまで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスをアンモニア分圧が0.5のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて昇温し、430°Cで500分保持し、その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持し冷却した。
取り出した多孔質塊状の反応生成物を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。合金粉末を濾過後、エタノールで数回掛水洗浄し、40°Cで真空乾燥することによって、Sm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm23.8重量%、Mn3.7重量%、N5.4重量%、O0.15重量%、残部Feだった。
透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したところ、数10nm〜数100nmまでの結晶粒径を有する主相と、数nm〜数10nmの幅を有する線状の結晶粒界相とからなるセル状構造が観察され、電子線回折パターンは、スポットとハローからなっており、それぞれがThZn17型結晶構造を有する主相とアモルファス相である結晶粒界相とに対応していることが分かった。
また、EELSによってMn量とFe量を分析したところ、主相では、Mnが2.1原子%でFeが71.0原子%であり、MnとFeの合計量に対してMnが2.9%置換された組成であることが分かった。一方、アモルファス相では、Mnが6.0原子%でFeが59.8原子%であり、MnとFeの合計量に対してMnが9.1%置換された組成であることが分かった。
さらに粉末X線回折法により解析した結果、図1に示すようにThZn17型結晶構造と、2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは8.0%だった。
得られた磁石粉末の磁気特性を、最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計で評価したところ、Br=0.77T、Hc=1020kA/m、Hk=222kA/mだった。ここで、日本ボンド磁石工業協会のボンド磁石試験法ガイドブックBMG−2005に準じて、1600kA/mの配向磁界をかけて試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁してから評価した。
また、分析組成とThZn17型結晶構造の格子定数から算出された粉末のX線密度は7.66g/cmで、この値で残留磁束密度Brを換算した。Hcは保磁力である。またHkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化JがBrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。結果を表1に示す。
(実施例2)
還元拡散反応後、反応生成物を実施例1よりも低い35°Cまで炉内でArガスを流通しながら冷却したところで、Arガスをアンモニア分圧が0.5のアンモニア−水素混合ガスに切り替えてから再び昇温し、430°Cで480分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて120分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。取り出した多孔質塊状の反応生成物を実施例1と同様に湿式処理することによって、Sm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm23.7重量%、Mn3.7重量%、N5.1重量%、O0.14重量%、残部Feだった。
透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したところ、実施例1と同様のThZn17型結晶構造を有する主相とアモルファス相が観察された。さらに粉末X線回折法により解析した結果、図1に示すようにThZn17型結晶構造であり、2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは3.8%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.90T、Hc=948kA、Hk=275kA/mだった。結果を表1に示す。
(従来例1)
実施例1と同様に原料を混合し、Arガスを流しながら1190°Cまで昇温して4時間保持し、その後反応生成物を35°Cまで自然冷却して、多孔質塊状の反応生成物を反応容器から取り出した。
次に、この反応生成物を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返した。得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。合金粉末を濾過後、エタノールで数回掛水洗浄し、40°Cで真空乾燥することによって、Sm−Fe−Mn母合金粉末を得た。
この母合金粉末を、アンモニア分圧が0.5のアンモニア−水素混合ガス雰囲気中で昇温し、430°Cで500分保持し、その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持して熱処理し、室温まで冷却することによって、Sm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm24.4重量%、Mn3.7重量%、N4.7重量%、O0.17重量%、残部Feだった。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したところ、実施例1と同様のThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相が観察された他に、図2に示すような幅が数10〜200nmの細長い部分が認められた。この部分をエネルギー分散型X線解析(EDX)したところ、Feリッチな相であることが確認できた。さらに粉末X線回折法により解析した結果、図3に示すようにTh2Zn17型結晶構造の回折線に加えて、2θが44.7°(Cu−Kα)に図2のFeリッチ相に対応すると思われる明瞭な回折線が確認できた。このときI(Fe)/Imは11.5%だった。
得られた磁石粉末の磁気特性を、実施例1と同様に評価したところ、Br=0.98T、Hc=681kA/m、Hk=167kA/mだった。結果を表1に示す。
「評価」
実施例1を従来例1と比較すると、湿式処理前に窒化した実施例1の磁石粉末は2θが44〜45°(Cu−Kα)の回折線強度が小さく、保磁力と角形性が高いものとなっているのに対して、湿式処理後に窒化した従来例1ではFeリッチ相が形成され、磁気特性が悪化したことが分かる。
(従来例2)
従来例1と同様にして、母合金を35℃まで自然冷却してSm−Fe−Mn母合金粉末を得た。従来例1とは条件を変え、この母合金粉末をアンモニア分圧が0.5のアンモニア−水素混合ガス雰囲気中で昇温し、430°Cで550分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて120分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて、30分保持してから冷却することによって、Sm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm24.3重量%、Mn3.6重量%、N5.1重量%、O0.17重量%、残部Feだった。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したところ、従来例1と同様に、ThZn17型結晶構造を有する相、アモルファス相、Feリッチな相が認められた。さらに粉末X線回折法により解析した結果、図3に示すようにThZn17型結晶構造の回折線と2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線が確認できた。このときI(Fe)/Imは16.0%だった。
得られた磁石粉末の磁気特性を、実施例1と同様に評価したところ、Br=0.81T、Hc=952kA/m、Hk=143kA/mだった。結果を表1に示す。
「評価」
実施例2を従来例2と比較すると、窒化処理条件を調整して同等の窒素量となるようにし保磁力を揃えても、2θが44〜45°(Cu−Kα)の回折線強度が非常に小さい実施例2の磁石粉末は、従来例2よりも残留磁束密度と角形性が高いものとなっている。
(実施例3)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末363g、二酸化マンガン粉末33g、酸化サマリウム粉末174g、金属カルシウム粒104gと変え、Arガスを流しながら920°Cで6時間保持し還元拡散反応させた後、280°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.4のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度490°Cで450分窒化した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持し冷却した。
このようにして得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm22.9重量%、Mn3.8重量%、N4.0重量%、O0.09重量%、残部Feだった。
粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは1.8%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.95T、Hc=583kA、Hk=279kA/mだった。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末269g、二酸化マンガン粉末24g、酸化サマリウム粉末131g、金属カルシウム粒78gと変え、Arガスを流しながら1100°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、100°Cまで冷却してから、アンモニアガスに切り替えて(アンモニア分圧1.0)、温度360°Cで600分窒化した。その後同温度で水素ガスに切り替えて120分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
このようにして得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm26.1重量%、Mn3.4重量%、N5.3重量%、O0.14重量%、残部Feだった。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは7.0%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.72T、Hc=966kA、Hk=216kA/mだった。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末171g、二酸化マンガン粉末30g、酸化サマリウム粉末87g、金属カルシウム粒69gと変え、Arガスを流しながら1150°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、200°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.8のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度400°Cで550分窒化した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
このようにして得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.0重量%、Mn6.4重量%、N5.9重量%、O0.08重量%、残部Feだった。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは8.2%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.68T、Hc=780kA、Hk=191kA/mだった。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末332g、二酸化マンガン粉末30g、酸化サマリウム粉末161g、金属カルシウム粒100gと変え、Arガスを流しながら1150°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、40°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.4のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度430°Cで500分窒化した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
このようにして得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm25.0重量%、Mn3.8重量%、N3.8重量%、O0.27重量%、残部Feだった。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは6.1%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.95T、Hc=385kA、Hk=237kA/mだった。結果を表1に示す。
(実施例7)
窒化熱処理後に、水素ガスと窒素ガスによる熱処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.7重量%、Mn3.7重量%、N5.3重量%、O0.13重量%、残部Feだった。
粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは4.7%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.88T、Hc=968kA、Hk=251kA/mだった。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末242g、二酸化マンガン粉末24g、酸化サマリウム粉末131g、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の82%を占める酸化コバルト粉末(CoO純度99重量%)27g、金属カルシウム粒74gと変え、Arガスを流しながら1190°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、250°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.5のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度430°Cで600分窒化した。その後、同温度で水素ガスに切り替えて120分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
得られたSm−Fe−Co−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm24.0重量%、Co6.8重量%、Mn3.6重量%、N4.6重量%、O0.09重量%、残部Feだった。
粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造と2θが44〜45°(Cu−Kα)にごく弱い回折線を有する合金粉末であって、I(Fe)/Imは3.5%だった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.91T、Hc=792kA、Hk=288kA/mだった。結果を表1に示す。
(比較例1)
還元拡散反応後、350°Cまで冷却した時点で、Arガスをアンモニア−水素混合ガスに切り替えた以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.8重量%、Mn3.7重量%、N5.8重量%、O0.20重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.72T、Hc=1050kA、Hk=158kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度と角形性が低下した。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造の回折線と2θが44.7°(Cu−Kα)の明瞭な回折線が確認できた。このときI(Fe)/Imは13.4%だった。結果を表1に示す。
(比較例2)
還元拡散反応後、430°Cまで冷却した時点で、Arガスをアンモニア−水素混合ガスに切り替えた以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.6重量%、Mn3.7重量%、N6.3重量%、O0.22重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.60T、Hc=1130kA、Hk=121kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度と角形性が低下した。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造の回折線と2θが44.7°(Cu−Kα)の明瞭な回折線が確認できた。このときI(Fe)/Imは17.3%だった。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1、2に対し、原料粉末として二酸化マンガン粉末を配合せず、鉄粉末317g、酸化サマリウム粉末126g、金属カルシウム粒91gと配合量を変え、Arガスを流しながら1150°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、40°Cまで冷却してから、アンモニアガスに切り替えて(アンモニア分圧1.0)、温度450°Cで400分窒化した。その後同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
得られたSm−Fe−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm24.1重量%、N4.6重量%、O0.18重量%、残部Feだった。粉末X線回折では、ThZn17型結晶構造の回折線のみで、2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線は認められなかったが、実施例1と同様に磁気特性を評価したところ、Br=0.39T、Hc=183kA、Hk=44kA/mで、Mnを含有しないと実施例1に比べて残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下することが分かった。結果を表1に示す。
(比較例4)
窒化熱処理をアンモニア分圧0.35のアンモニア−水素混合ガスに切り替えた以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.9重量%、Mn3.8重量%、N3.4重量%、O0.13重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.47T、Hc=310kA、Hk=39kA/mで、実施例1に比べてNの含有量が少ないために、残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下した。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したが、ThZn17型結晶構造を有する単相であって、アモルファス相は認められなかった。結果を表1に示す。
(比較例5)
窒化ガスをアンモニアガス(アンモニア分圧1.0)とし、330°Cで加熱し、1440分保持した以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.9重量%、Mn3.7重量%、N2.9重量%、O0.09重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.44T、Hc=338kA、Hk=32kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下した。
窒化熱処理する温度が350°C未満であると、窒化時間をこれまでの2倍以上にしても十分な窒素が入らず、磁気特性が低くなることが分かる。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したが、ThZn17型結晶構造を有する単相であって、アモルファス相は認められなかった。結果を表1に示す。
(比較例6)
窒化ガスをアンモニア分圧0.4のアンモニア−水素混合ガスとし、420°Cに加熱し180分保持して行った以外は、実施例2と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.7重量%、Mn3.8重量%、N3.3重量%、O0.11重量%、残部Feだった。粉末X線回折では、ThZn17型結晶構造の回折線のみで、2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線は認められなかったが、実施例1と同様に磁気特性を評価したところ、Br=0.42T、Hc=274kA、Hk=72kA/mで、窒素量が3.5重量%未満では実施例2に比べてNの含有量が少ないために、残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下することが分かった。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したが、ThZn17型結晶構造を有する単相であって、アモルファス相は認められなかった。結果を表1に示す。
(比較例7)
還元拡散反応後、250°Cまで冷却した後に切り替えるガスを、窒素ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
この粉末組成は、Sm24.2重量%、Mn3.8重量%、N2.9重量%、O0.19重量%、残部Feだった。実施例1と同様に磁気特性を評価したところ、Br=0.38T、Hc=151kA/m、Hk=27kA/mだった。窒化が不十分なため大幅に磁気特性が悪化することが分かった。透過型電子顕微鏡で微細組織を観察したが、ThZn17型結晶構造を有する単相であって、アモルファス相は認められなかった。結果を表1に示す。
(比較例8)
窒化ガスをアンモニア分圧0.4のアンモニア−水素混合ガスとし、520°Cに加熱し400分保持した以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.6重量%、Mn3.6重量%、N5.8重量%、O0.11重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.75T、Hc=1083kA、Hk=137kA/mで、実施例1に比べて角形性が低下した。粉末X線回折法により解析した結果、ThZn17型結晶構造の回折線と2θが44.7°(Cu−Kα)の明瞭な回折線が確認できた。このときI(Fe)/Imは15.2%だった。
窒化熱処理する温度が500°Cを超えると、2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線が生成し、角形性が低下することが分かる。結果を表1に示す。
(参考例1)
還元拡散反応を880°Cで6時間保持することで行った以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.5重量%、Mn3.9重量%、N4.5重量%、O0.07重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.54T、Hc=512kA、Hk=43kA/mで実施例1に比べて残留磁束密度、保磁力、角形性が低下した。粉末を樹脂に埋め込んで断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉末中心付近にSmが十分拡散していない部分が認められた。結果を表1に示す。
(参考例2)
還元拡散反応を1230°Cで3時間保持することで行った以外は、実施例1と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.7重量%、Mn3.7重量%、N5.7重量%、O0.19重量%、残部Feだった。実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.69T、Hc=922kA、Hk=181kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度と角形性が低下した。粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、焼結して凝集した粉末が多く観察された。結果を表1に示す。
(参考例3)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末897g、二酸化マンガン粉末81g、酸化サマリウム粉末426g、金属カルシウム粒264gと変え、Arガスを流しながら1150°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、40°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.5のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度450°Cで500分窒化した。その後同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
このようにして得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm21.7重量%、Mn3.7重量%、N4.8重量%、O0.07重量%、残部Feだった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.61T、Hc=293kA、Hk=74kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下した。粉末を樹脂に埋め込んで断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉末中心付近にSmが十分拡散していない部分が認められた。結果を表1に示す。
(参考例4)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末897g、二酸化マンガン粉末81g、酸化サマリウム粉末534g、金属カルシウム粒313gと変えた以外は、比較例8と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を得た。
磁石粉末の化学分析組成は、Sm27.5重量%、Mn3.2重量%、N5.4重量%、O0.18重量%、残部Feだった。
得られた磁石粉末を実施例1と同様に、磁気特性を評価したところ、Br=0.55T、Hc=891kA、Hk=171kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度と角形性が低下した。結果を表1に示す。
(参考例5)
実施例1、2に対し、原料粉末の配合量を鉄粉末269g、二酸化マンガン粉末48g、酸化サマリウム粉末126g、金属カルシウム粒95gと変え、Arガスを流しながら1150°Cで4時間保持し還元拡散反応させた後、40°Cまで冷却してから、アンモニア分圧0.6のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、温度400°Cで420分窒化した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて30分保持してから冷却した。
得られたSm−Fe−Mn−N磁石粉末は、化学分析組成が、Sm24.3重量%、Mn7.3重量%、N5.8重量%、O0.23重量%、残部Feだった。粉末X線回折では、ThZn17型結晶構造の回折線のみで、2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線は認められなかったが、実施例1と同様に磁気特性を評価したところ、Br=0.51T、Hc=943kA、Hk=201kA/mで、実施例1に比べて残留磁束密度が低下した。結果を表1に示す。
(参考例6)
窒化ガスをアンモニア分圧0.8のアンモニア−水素混合ガスとし、450°Cに加熱し500分保持した以外は、実施例2と同様にしてSm−Fe−Mn−N磁石粉末を製造した。
得られた磁石粉末は、化学分析組成が、Sm23.5重量%、Mn3.6重量%、N6.2重量%、O0.09重量%、残部Feだった。粉末X線回折では、ThZn17型結晶構造の回折線のみで、2θが44.7°(Cu−Kα)の回折線は認められなかったが、実施例1と同様に磁気特性を評価したところ、Br=0.78T、Hc=803kA、Hk=120kA/mで、窒素量が6.0重量%を超えると実施例2に比べて残留磁束密度、保磁力と角形性が大幅に低下することが分かった。結果を表1に示す。
Figure 2010283359
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末は、従来の磁石粉末と異なり、Feリッチ相が大幅に減少し、しかも十分な窒素を含んでいるため、従来の粉末に比べて高い保磁力と角形性を有する。そのため、良好な耐熱性が要求されるボンド磁石用の粉末として利用でき、その工業的価値は極めて大きい。
本発明(実施例1および実施例2)によって得られるSm−Fe−Mn−N磁石粉末のX線回折図である。 従来方法(従来例1)によって製造されたSm−Fe−Mn−N磁石粉末の透過型電子顕微鏡写真(2−a)とEDXプロファイル(2−b)である。 従来方法(従来例1および従来例2)によって製造されたSm−Fe−Mn−N磁石粉末のX線回折図である。

Claims (6)

  1. 希土類元素と、Mnと、Nと、残部が実質的にFeまたはFeおよびCoからなり、希土類元素が22〜27重量%、Mnが7重量%以下、Nが3.5〜6.0重量%である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、
    粒径が10〜70μmの粉末が全体の80%以上を占める鉄粉末、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の80%以上を占めるマンガン粉末および/またはマンガン酸化物粉末、希土類酸化物粉末、コバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末からなる原料粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤粉末とを所定の割合で混合する工程、得られた混合物を不活性ガス雰囲気中で900〜1200°Cに加熱する工程、引き続き、得られた反応生成物を不活性ガス雰囲気中で300°C以下に冷却する工程、その後、雰囲気ガスを変えて、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合気流中で昇温し、350〜500°Cで反応生成物を窒化熱処理する工程、および得られた窒化熱処理物を水中に投入して湿式処理する工程を順次行って製造され、
    ThZn17型結晶構造を有する相とアモルファス相とを含有するとともに、それ以外に共存するFeリッチ相は、下記の式で表される粉末X回折における回折線の強度比(X)が10%以下になるまで低減していることを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
    X=I(Fe)/Im
    [式中、I(Fe)は、2θが44〜45°(Cu−Kα)に現れる回折線の強度であり、ImはThZn17型結晶構造の回折線の中で最大の強度を表す]
  2. 回折線の強度比(X)が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
  3. 各成分元素の含有量は、希土類元素が23〜26重量%、Mnが2〜5重量%、Nが4.0〜5.5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
  4. Nの含有量が、4.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項3に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
  5. 混合気流中のアンモニア分圧が0.4〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
  6. 窒化熱処理に要する時間が200〜600分であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
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