ところが、従来のクランプ電流計には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来のクランプ電流計では、切替えスイッチを「A」に切り替えたときに電流測定回路によって測定された電流が表示され、切替えスイッチを「V」に切り替えたときに電圧測定回路によって測定された電圧が表示され、切替えスイッチを「W」に切り替えたときに乗算回路によって測定された電力が表示される構成が採用されている。この場合、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者は、切替え操作を誤り、電流を測定すべきとき(測定した電流を表示させるべきとき)に切替えスイッチを「V」に切り替えたり、電圧を測定すべきとき(測定した電圧を表示させるべきとき)に切替えスイッチを「A」に切り替えたりすることがある。この際に、切替え操作の誤りに気付くことができない場合には、表示されている電圧値を電流値として誤って認識したり、表示されている電流値を電圧値として誤って認識したりする。また、誤操作に気付くことができたとしても、所望の測定値を表示させるために再び切替え操作を行う必要がある。このように、従来のクランプ電流計には、所望の測定値を表示させるために切替えスイッチの操作を要することに起因して、測定値の誤認識や、煩雑な再操作を要するという問題点がある。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、所望の測定値を正確かつ容易に表示させ得る測定装置を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定部と、クランプ型の電流センサと、測定用の接触子を介して入力される第1の入力電圧の有無を検出する電圧検出部とを備え、前記測定部が、前記第1の入力電圧の電圧を測定する電圧測定処理と、前記電流センサから入力された第2の入力電圧に基づいて電流を測定する電流測定処理と、前記接触子を流れる電流、および当該接触子を介して入力される第3の入力電圧のいずれか一方に基づいて抵抗を測定する抵抗測定処理とを実行可能に構成されると共に、測定開始が指示されたときに前記電流測定処理を開始し、当該電流測定処理によって前記電流が測定されず、かつ前記電圧検出部によって前記第1の入力電圧が検出されたときに前記電圧測定処理を開始し、当該電流測定処理によって前記電流が測定されず、かつ前記電圧検出部によって前記第1の入力電圧が検出されないときに前記抵抗測定処理を開始する。
また、請求項2記載の測定装置は、測定部と、クランプ型の電流センサとを備え、前記測定部が、測定用の接触子を介して入力される第1の入力電圧の電圧を測定する電圧測定処理と、前記電流センサから入力された第2の入力電圧に基づいて電流を測定する電流測定処理と、前記接触子を流れる電流、および当該接触子を介して入力される第3の入力電圧のいずれか一方に基づいて抵抗を測定する抵抗測定処理とを実行可能に構成されると共に、測定開始が指示されたときに前記電流測定処理を開始し、当該電流測定処理によって前記電流が測定されないときに前記電圧測定処理を開始し、当該電圧測定処理によって前記電圧が測定されないときに前記抵抗測定処理を開始する。
また、請求項3記載の測定装置は、測定部と、クランプ型の電流センサとを備え、前記測定部が、測定用の接触子を介して入力される第1の入力電圧の電圧を測定する電圧測定処理と、前記電流センサから入力された第2の入力電圧に基づいて電流を測定する電流測定処理とを実行可能に構成されると共に、測定開始が指示されたときに前記電流測定処理を開始し、当該電流測定処理によって前記電流が測定されないときに前記電圧測定処理を開始する。
また、請求項4記載の測定装置は、測定部と、クランプ型の電流センサとを備え、前記測定部が、前記電流センサから入力された第Aの入力電圧に基づいて電流を測定する電流測定処理と、測定用の接触子を流れる電流、および当該接触子を介して入力される第Bの入力電圧のいずれか一方に基づいて抵抗を測定する抵抗測定処理とを実行可能に構成されると共に、測定開始が指示されたときに前記電流測定処理を開始し、当該電流測定処理によって前記電流が測定されないときに前記抵抗測定処理を開始する。
さらに、請求項5記載の測定装置は、請求項1から4のいずれかに記載の測定装置において、前記電流センサの開閉状態を検出する開閉状態検出部を備え、前記測定部が、前記電流測定処理において前記電流が測定され、かつ、前記開閉状態検出部によって閉状態と検出されたときに当該測定された電流の値を表示部に表示させ、前記電流測定処理において前記電流が測定され、かつ、前記開閉状態検出部によって開状態と検出されたときに当該開状態を報知する。
請求項1記載の測定装置によれば、測定開始が指示されたときに電流測定処理を開始し、電流測定処理によって電流が測定されず、かつ電圧検出部によって第1の入力電圧が検出されたときに電圧測定処理を開始し、電流測定処理によって電流が測定されず、かつ電圧検出部によって第1の入力電圧が検出されないときに抵抗測定処理を開始することにより、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサによって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接触子を電圧測定対象体に接触させ、抵抗の測定を所望しているときには、接触子を抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値を正確かつ容易に表示部に表示させることができる。
請求項2記載の測定装置によれば、測定開始が指示されたときに電流測定処理を開始し、電流測定処理によって電流が測定されないときに電圧測定処理を開始し、電圧測定処理によって電圧が測定されないときに抵抗測定処理を開始することにより、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサによって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接触子を電圧測定対象体に接触させ、抵抗の測定を所望しているときには、接触子を抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値を正確かつ容易に表示部に表示させることができる。また、この測定装置によれば、電圧検出部を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
請求項3記載の測定装置によれば、測定開始が指示されたときに電流測定処理を開始し、電流測定処理によって電流が測定されないときに電圧測定処理を開始することにより、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサによって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接触子を電圧測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値を正確かつ容易に表示部に表示させることができる。また、この測定装置においても、電圧検出部を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
請求項4記載の測定装置によれば、測定開始が指示されたときに電流測定処理を開始し、電流測定処理によって電流が測定されないときに抵抗測定処理を開始することにより、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサによって電流測定対象体をクランプし、抵抗の測定を所望しているときには、接触子を抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値を正確かつ容易に表示部に表示させることができる。また、この測定装置においても、電圧検出部を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
請求項5記載の測定装置では、電流測定処理において電流が測定され、かつ、開閉状態検出部によって電流センサが閉状態と検出されたときに測定された電流の値を表示部に表示させ、電流測定処理において電流が測定され、かつ、開閉状態検出部によって電流センサが開状態と検出されたときに開状態を報知する。したがって、この測定装置によれば、電流の測定を所望しているときにおいて電流測定対象体に電流が流れていないときに電流センサが開状態であることに起因して外部磁界の存在による電流が誤って測定される事態を回避することができる。また、この測定装置によれば、電圧の測定または抵抗の測定を所望しているときに外部磁界の存在による電流が誤って測定されて電流測定処理が継続して実行され、電圧測定処理や抵抗測定処理が開始されないといった事態を確実に回避することができる。
以下、本発明に係る測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1に示すクランプ式電流計1は、測定装置の一例であって、電流センサ2、テストリード接続部3、開閉状態検出部4、電圧検出部5、測定部6、操作部7、表示部8、記憶部9および制御部10を備えている。電流センサ2は、クランプ型の(開閉式の)電流センサであって、磁性コアの周囲に導線が巻回されて環状のコイル部が形成されると共に、図示しない開閉機構によって環状のコイル部をC字状に開口することができるように構成されている。この場合、クランプ型の電流センサの構成は、上記の電流センサ2のような構成に限定されず、非磁性コア(非磁性の芯材)の周囲に導線が巻回されて環状のコイル部が形成されると共に、この環状のコイル部をC字状に開口することができるような構成(図示せず)を採用することもできる。また、コイルを備えずに、クランプ機構の一部分にホール素子等の検出センサを配設した構成(図示せず)を採用することもできる。なお、クランプ型の電流センサの構成については公知のため、詳細な説明および図示を省略する。テストリード接続部3(以下、「接続部3」ともいう)は、テストリード3a,3b(測定用の接触子が接続された測定用ケーブル)を接続可能に(着脱可能に)構成されると共に、テストリード3a,3bが接続されている状態において、このテストリード3a,3b(接触子)を電圧検出部5および測定部6に接続する。なお、このクランプ式電流計1では、テストリード3a,3bを着脱可能に構成しているが、テストリード3a,3bを取り外しできないように接続部3に予め固定的に接続しておく構成を採用することもできる。
開閉状態検出部4は、一例として、出願人が特許第3943209号公報に開示しているクランプセンサの構成と同様に電流センサ2のコイル部の開閉状態を検出し、電流センサ2が閉状態のときに検出信号S1を制御部10に出力し、電流センサ2が開状態のときに検出信号S1の出力を停止する。なお、電流センサ2が開状態のときに検出信号を出力し、電流センサ2が閉状態のときに検出信号の出力を停止する構成を採用することもできる。電圧検出部5は、一例として、コンパレータを備え、接続部3に接続されたテストリード3a,3bを介して入力される電圧Vb(「第1の入力電圧」の一例)を検出したときに検出信号S2を制御部10に出力する。具体的には、テストリード3aの接触部位とテストリード3bの接触部位との間に上記の電圧Vbとして交流電圧が印加されている状態では、コンパレータは、この交流電圧を整流した直流電圧と所定の基準電圧とを比較して、整流した直流電圧が所定の基準電圧以上のときに検出信号S2を出力する。また、テストリード3aの接触部位とテストリード3bの接触部位との間に上記の電圧Vbとして直流電圧が印加されている状態では、コンパレータは、この直流電圧と所定の基準電圧とを比較して、直流電圧が所定の基準電圧以上のときに検出信号S2を出力する。
測定部6は、制御部10の制御に従って各種測定処理を実行する。具体的には、測定部6は、電流センサ2から入力された電圧Va(「電流センサから入力された第2の入力電圧(第Aの入力電圧)」の一例)に基づいて電流(電流測定対象体を流れている電流)を測定する電流測定処理、接続部3に接続されたテストリード3a,3bを介して入力された電圧Vb(「接触子を介して入力される第1の入力電圧」の一例)の電圧(電圧測定対象体の電圧)を測定する電圧測定処理、および接続部3に接続されたテストリード3a,3b間に電圧Vcを印加したときにテストリード3a,3bを流れる電流I(「接触子を流れる電流」の一例)に基づいて抵抗(抵抗測定対象体の抵抗)を測定する抵抗測定処理(「接触子を流れる電流、および接触子を介して入力される第3の入力電圧(第Bの入力電圧)のいずれか一方」が「接触子を流れる電流」である抵抗測定処理の例)を実行すると共に、実行した各測定処理の測定結果を測定データDとして出力する。
操作部7は、電源スイッチや、測定ファンクション切替えスイッチ(以下、単に「切替えスイッチ」ともいう)等の各種操作スイッチ(図示せず)を有し、スイッチ操作に応じた操作信号S3を出力する。この場合、このクランプ式電流計1では、上記の電源スイッチのスイッチ操作によって電源が投入されたときに後述する測定処理20が開始される構成が採用されている。また、このクランプ式電流計1では、上記の測定ファンクション切替えスイッチが、「A:電流測定ファンクション」、「V:電圧測定ファンクション」、「Ω:抵抗測定ファンクション」および「AUTO:測定ファンクション自動切替え」の4つのモードのうちのいずれかを選択可能に構成されている。表示部8は、制御部10の制御に従って測定部6からの測定データDに基づく測定値や各種のメッセージを表示する。
記憶部9は、制御部10の動作プログラムを記憶する。制御部10は、クランプ式電流計1を総括的に制御する。具体的には、制御部10は、操作部7の電源スイッチが操作されてクランプ式電流計1に電源が投入されたときに(「測定開始が指示されたとき」の一例)、図2に示す測定処理20を開始し、後述するようにして測定部6を制御して、電流測定処理を実行すると共に、クランプ式電流計1の使用状態に応じて電圧測定処理および抵抗測定処理のいずれかを実行させる。また、制御部10は、開閉状態検出部4からの検出信号S1の出力の有無に基づいて電流センサ2の開閉状態を判別すると共に、電圧検出部5からの検出信号S2の出力の有無に基づいてテストリード3a,3bを接触させている接触部位間に電圧Vbが入力(印加)されているか否かを判別する。さらに、制御部10は、測定部6から出力された測定データDに基づき、測定部6による測定処理の結果(測定結果)を表示部8に表示させる。なお、このクランプ式電流計1では、上記の測定部6および制御部10が相俟って測定部として機能する。
このクランプ式電流計1では、操作部7の切替えスイッチを「AUTO」に切替え操作した状態において電源スイッチを操作する(電源を投入する)ことにより、「電流測定ファンクション」、「電圧測定ファンクション」および「抵抗測定ファンクション」のうちから利用者が実施しようとしている測定ファンクションが自動的に選択されて各種測定処理が実行される構成が採用されている。具体的には、電源が投入されたときに、制御部10は、図2に示す測定処理20を開始する。この測定処理20では、制御部10は、まず、操作部7からの操作信号S3に基づき、切替えスイッチが「AUTO」に切り替えられているか否かを判別する(ステップ21)。この際には、一例として、「AUTO」に切り替えられていると判別し、制御部10は、測定部6を制御して測定モードを電流測定ファンクションに切り替えさせる(ステップ22)。なお、切替えスイッチが「AUTO」以外のモードに切り替えられている際の処理については、後に説明する。
次いで、制御部10は、測定部6を制御して電流測定処理を実行させる(ステップ23)。この際に、利用者がクランプ式電流計1を用いて例えば電源ケーブル(電流測定対象体の一例)を流れている電流を測定しようとしている場合には、電源スイッチの操作時において(測定処理20の開始時において)、電流センサ2によって電源ケーブルがクランプされた状態となっている。このため、電源ケーブルを電流が流れているときには、電源ケーブルの周囲に生じた磁束が電流センサ2の巻線の内側を通過して巻線の両端間に電圧Vaが生じて測定部6に入力される。これに応じて、測定部6が、入力された電圧Vaに基づいて電源ケーブルを流れている電流を測定し(電流測定処理の実行)、その測定結果を測定データDとして制御部10に出力する。一方、制御部10は、測定部6からの測定データDに基づき、測定された電流が「0A」か否かを判別する(ステップ24)。この際には、測定部6によって電源ケーブルを流れている電流が測定されるため、制御部10は、電流が「0A」ではない(言い替えれば電流が流れている)と判別する。
次いで、制御部10は、電流センサ2が閉状態であるか否かを判別する(ステップ25)。この場合、この種のクランプ式電流計では、電流センサ2によって電流測定対象体をクランプしていないとき(電流の測定を所望していないとき)や、電流センサ2によってクランプしている電流測定対象体に電流が流れていない状態であっても、電流センサ2が開状態のときには、周囲の外部磁界が電流センサ2によって検出されて電圧Vaが測定部6に入力されることがある。このような状態においては、利用者が電流の測定を所望していないとき(例えば、電圧の測定や抵抗の測定を所望しているとき)や、電流測定対象体を電流が流れていないときであっても、外部磁界の存在に起因して測定部6に入力された電圧Vaに基づいて所定値の電流が測定されることとなる。したがって、このクランプ式電流計1では、制御部10が、開閉状態検出部4からの検出信号S1の出力の有無に基づき、電流センサ2が閉状態であるか否かをチェックする構成が採用されている。
具体的には、制御部10は、開閉状態検出部4から検出信号S1が出力されているときには、電流センサ2が閉状態ではない(開状態である)と判別し、一例として「クランプセンサが開状態になっています。」とのメッセージを表示し(「開状態を報知する」との処理の一例:ステップ26)、電流測定処理を再び実行する(ステップ23)。また、制御部10は、開閉状態検出部4から検出信号S1が出力されていないときには、電流センサ2が閉状態である(開状態ではない)と判別し、測定部6からの測定データDに基づく測定結果(測定値)を表示部8に表示させる(ステップ27)。これにより、利用者が電流の測定を所望しているとき(電流が流れている電源ケーブルを電流センサ2によってクランプした状態において電源が投入されたとき)には、煩雑なスイッチ操作を行うことなく、電流測定処理が自動的に実行されて測定値が表示部8に表示される。また、電流測定処理の実行に際して利用者が切替えスイッチを操作していないため、切替えスイッチの誤操作(意図しない測定ファンクションの選択)が回避される。次いで、制御部10は、操作部7の切替えスイッチが操作されたか否かを判別し(ステップ28)、切替えスイッチが操作されていないときには、電流測定処理を再び実行し(ステップ23)、切替えスイッチが操作されているときには、「AUTO」に切り替えられているか否かを判別する(ステップ21)。
一方、電流センサ2によってクランプしている電源ケーブルを電流が流れていないときには(測定値が「0A」のときには:ステップ24)、制御部10は、測定部6からの測定データDに基づき、測定値(この例では、「0A」)を表示部8に表示させる(ステップ29)。これにより、利用者が電流の測定を所望しているとき(電流が流れていない電源ケーブルを電流センサ2によってクランプした状態において電源が投入されたとき)には、煩雑なスイッチ操作を行うことなく、電流測定処理が自動的に実行されて測定値が表示部8に表示される。また、この例においても、電流測定処理の実行に際して利用者が切替えスイッチを操作していないため、切替えスイッチの誤操作(意図しない測定ファンクションの選択)が回避される。
この場合、利用者が電流の測定を所望していないとき(電流センサ2によって電源ケーブル等の電流測定対象体がクランプされていないとき)には、測定部6による上記の電流測定処理によって「0A」との測定値が測定される。この際には、制御部10は、「0A」との測定値を表示部8に表示させた後に(ステップ29)、テストリード3a,3bを介して入力される入力電圧の有無(テストリード3a,3bの接触部位間に電圧が生じているか否か)を判別し(ステップ30)、その判別結果に応じて測定部6を電圧測定ファンクションおよび抵抗測定ファンクションのいずれかに切り替えさせる。この際に、利用者がクランプ式電流計1を用いて例えば一対の電源ケーブル(電圧測定対象体の一例)の線間電圧を測定しようとしている場合には、電源スイッチの操作時において(測定処理20の開始時において)、電流センサ2によって電源ケーブルがクランプされることなく、テストリード3a,3bが両電源ケーブルにそれぞれ接触させられた状態となっている。
したがって、テストリード3a,3bを接触させている電源ケーブルに線間電圧が生じてテストリード3a,3bに電圧Vbが印加されているときには、上記の電流測定処理(ステップ23)において「0A」との電流が測定され(ステップ24)、測定値の表示(ステップ29)の後に、電圧検出部5によってこの電圧Vbが検出されて検出信号S2が出力され、これに応じて、制御部10は、入力電圧ありと判別する(ステップ30)。この際に、制御部10は、測定部6を制御して電圧測定ファンクションに切り替えさせ(ステップ31)、電圧測定処理を実行させる(ステップ32)。これに応じて、測定部6は、テストリード3a,3bを介して入力される電圧Vbに基づき、テストリード3a,3bを接触させている一対の電源ケーブルの間の線間電圧を測定して測定データDを出力する。また、制御部10は、測定部6からの測定データDに基づいて測定部6による電圧測定処理の結果(測定結果)を表示部8に表示させる(ステップ33)。
これにより、利用者が電圧の測定を所望しているとき(線間電圧が生じている電源ケーブルにテストリード3a,3bが接触させられてテストリード3a,3bに電圧Vbが印加されているとき)には、煩雑なスイッチ操作を行うことなく、電圧測定処理が自動的に実行されて測定値が表示部8に表示される。また、電圧測定処理の実行に際して利用者が切替えスイッチを操作していないため、切替えスイッチの誤操作(意図しない測定ファンクションの選択)が回避される。次いで、制御部10は、操作部7の切替えスイッチが操作されたか否かを判別し(ステップ34)、切替えスイッチが操作されていないときには、電圧測定処理を再び実行し(ステップ32)、切替えスイッチが操作されていたときには、「AUTO」に切り替えられているか否かを判別する(ステップ21)。
一方、利用者が電圧の測定を所望している電源ケーブルに線間電圧が生じていない場合や、利用者が信号ケーブル(抵抗測定対象体の一例)の両端間抵抗の測定を所望している場合には、制御部10は、電圧検出部5から検出信号S2が出力されていないことに基づき、入力電圧なしと判別して(ステップ30)、一例として「電圧の入力がありません。」とのメッセージを表示部8に表示させる(ステップ35)。次いで、制御部10は、測定部6を制御して抵抗測定ファンクションに切り替えさせ(ステップ36)、抵抗測定処理を実行させる(ステップ37)。これに応じて、測定部6は、テストリード3a,3b間に電圧Vcを印加すると共にテストリード3a,3bを流れる電流Iを測定し、印加した電圧Vcと測定した電流Iとに基づき、テストリード3a,3bを接触させている信号ケーブルの両端の抵抗を測定して測定データDを出力する。また、制御部10は、測定部6からの測定データDに基づいて測定部6による抵抗測定処理の結果(測定結果:この例では、信号ケーブルの両端間抵抗)を表示部8に表示させる(ステップ38)。
これにより、利用者が抵抗(この例では、信号ケーブルの両端間抵抗)の測定を所望しているとき(抵抗測定対象体としての信号ケーブルの両端にテストリード3a,3bが接触させられているとき)には、煩雑なスイッチ操作を行うことなく、抵抗測定処理が自動的に実行されて測定値が表示部8に表示される。また、抵抗測定処理の実行に際して利用者が切替えスイッチを操作していないため、切替えスイッチの誤操作(意図しない測定ファンクションの選択)が回避される。次いで、制御部10は、操作部7の切替えスイッチが操作されたか否かを判別し(ステップ39)、切替えスイッチが操作されていないときには、抵抗測定処理を再び実行し(ステップ37)、切替えスイッチが操作されていたときには、「AUTO」に切り替えられているか否かを判別する(ステップ21)。
この場合、操作部7の切替えスイッチが「AUTO」に切り替えられている状態において、利用者が所望する測定処理が自動的に実行される例について説明したが、このクランプ式電流計1では、「電流測定処理」、「電圧測定処理」および「抵抗測定処理」のいずれかを任意に選択して実行させることもできる。具体的には、電流測定対象体を流れる電流の測定を所望しているときには、切替えスイッチを「A」に切替え操作する。この状態においては、制御部10が操作部7からの操作信号S3に基づき、自動切替えモードではなく(「AUTO」ではなく)「A」に切り替えられていると判別する(ステップ21,40)。この際に、制御部10は、測定部6を制御して電流測定ファンクションに切り替えさせ(ステップ22)、電流測定処理を実行させる(ステップ23)。
一方、電圧測定対象体の電圧の測定を所望しているときには、切替えスイッチを「V」に切替え操作する。この状態においては、制御部10が操作部7からの操作信号S3に基づき、自動切替えモードや電流測定モードではなく(「AUTO」および「A」ではなく)、「V」に切り替えられていると判別する(ステップ21,40,41)。この際に、制御部10は、測定部6を制御して電圧測定ファンクションに切り替えさせ(ステップ31)、電圧測定処理を実行させる(ステップ32)。また、抵抗測定対象体の抵抗の測定を所望しているときには、切替えスイッチを「Ω」に切替え操作する。この状態においては、制御部10が操作部7からの操作信号S3に基づき、自動切替えモード、電流測定モードおよび電圧測定モードではなく(「AUTO」、「A」および「V」ではなく)、「Ω」に切り替えられていると判別する(ステップ21,40,41)。この際に、制御部10は、測定部6を制御して抵抗測定ファンクションに切り替えさせ(ステップ36)、抵抗測定処理を実行させる(ステップ37)。さらに、各測定ファンクションに手動で切り替えした状態において、操作部7の切替えスイッチが「AUTO」に切り替えられたときには(ステップ21)、前述した一連の手順に従って測定ファンクションが切り替えられて(ステップ22,31,36)、各種測定処理が自動的に実行される。
このように、このクランプ式電流計1によれば、測定開始が指示されたとき(この例では、電源スイッチの操作によって測定開始が指示されたとき)に電流測定処理を開始し(ステップ22,23)、電流測定処理によって電流が測定されず、かつ電圧検出部5によって電圧が検出されたとき(この例では、電圧検出部5から検出信号S2が出力されているとき)に電圧測定処理を開始し(ステップ31,32)、電流測定処理によって電流が測定されず、かつ電圧検出部5によって電圧が検出されないとき(この例では、電圧検出部5から検出信号S2が出力されていないとき)に抵抗測定処理を開始する(ステップ36,37)ことにより、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサ2によって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを電圧測定対象体に接触させ、抵抗の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値(この例では、電流、電圧および抵抗のいずれか)を正確かつ容易に表示部8に表示させることができる。
また、このクランプ式電流計1では、電流測定処理(ステップ23)において電流が測定され、かつ、開閉状態検出部4によって電流センサ2が閉状態と検出されたとき(この例では、開閉状態検出部4から検出信号S1が出力されていないとき:ステップ25)に測定部6によって測定された電流の値を表示部8に表示させ、電流測定処理(ステップ23)において電流が測定され、かつ、開閉状態検出部4によって電流センサ2が開状態と検出されたとき(この例では、開閉状態検出部4から検出信号S1が出力されているとき:ステップ25)に開状態を報知するメッセージを表示部8に表示させる(ステップ26)。したがって、このクランプ式電流計1によれば、電流の測定を所望しているときにおいて電流測定対象体に電流が流れていないときに電流センサ2が開状態であることに起因して外部磁界の存在による電流が誤って測定される事態を回避することができる。また、このクランプ式電流計1によれば、電圧の測定または抵抗の測定を所望しているときに外部磁界の存在による電流が誤って測定されて電流測定処理が継続して実行され、電圧測定処理や抵抗測定処理が開始されないといった事態を確実に回避することができる。
なお、電源投入直後に電流測定ファンクションに切り替えて電流測定処理を自動的に開始し、電流測定処理によって電流が測定されないときに、電圧検出部5によってテストリード3a,3bからの入力電圧の有無を検出し、検出結果に応じて電圧測定処理および抵抗測定処理のいずれかを実行する構成を例に挙げて説明したが、電圧検出部5に代えて、測定部6および制御部10によってテストリード3a,3bからの入力電圧の有無を検出する構成(測定部6および制御部10を電圧検出部とする構成)を採用することもできる。具体的には、測定部6によって電圧Vbの電圧を測定し、制御部10が、測定部6からの測定データDに基づき、電圧が測定されたときには「入力電圧あり」と判別し、電圧が測定されないとき(0Vのとき)には「入力電圧なし」と判別する構成を採用することもできる。
また、電流測定処理によって電流が測定されないときに、テストリード3a,3bを介して電圧Vbが入力されているときには電圧測定ファンクションに切り替えて電圧測定処理を自動的に実行し、テストリード3a,3bを介して電圧Vbが入力されていないときには抵抗測定ファンクションに切り替えて抵抗測定処理を自動的に実行する構成のクランプ式電流計1を例に挙げて説明したが、測定装置の構成はこれに限定されない。例えば、測定開始が指示されたとき(例えば、電源スイッチが操作されたとき)に電流測定ファンクションに切り替えて電流測定処理を自動的に開始し(前述した測定処理20におけるステップ22,23に相当)、電流測定処理によって電流が測定されないときに電圧測定ファンクションに切り替えて電圧測定処理を自動的に開始し(前述した測定処理20におけるステップ31,32に相当)、電圧測定処理によって電圧が測定されないときに抵抗測定ファンクションに切り替えて抵抗測定処理を自動的に開始する(前述した測定処理20におけるステップ36,37に相当)構成を採用することができる。
このような構成を採用したクランプ式電流計によれば、前述したクランプ式電流計1と同様にして、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサ2によって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを電圧測定対象体に接触させ、抵抗の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値(この例では、電流、電圧および抵抗のいずれか)を正確かつ容易に表示部8に表示させることができる。また、この構成のクランプ式電流計によれば、電圧検出部5を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
また、電流測定処理、電圧測定処理および抵抗測定処理の3つの測定処理を実行可能なクランプ式電流計1を例に挙げて説明したが、電流測定処理および電圧測定処理だけを実行可能なクランプ式電流計(測定装置)や、電流測定処理および抵抗測定処理だけを実行可能なクランプ式電流計(測定装置)において測定ファンクションを自動的に切り替える構成を採用することもできる。
例えば、電流測定処理および電圧測定処理だけを実行可能なクランプ式電流計においては、測定開始が指示されたとき(例えば、電源スイッチが操作されたとき)に電流測定ファンクションに切り替えて電流測定処理を自動的に開始し(前述した測定処理20におけるステップ22,23に相当)、電流測定処理によって電流が測定されないときに電圧測定ファンクションに切り替えて電圧測定処理を自動的に開始する(前述した測定処理20におけるステップ31,32に相当)構成を採用する。このような構成を採用したクランプ式電流計によれば、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサ2によって電流測定対象体をクランプし、電圧の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを電圧測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値(この例では、電流および電圧のいずれか)を正確かつ容易に表示部8に表示させることができる。また、この構成のクランプ式電流計においても、電圧検出部5を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
また、電流測定処理および抵抗測定処理だけを実行可能なクランプ式電流計においては、測定開始が指示されたとき(例えば、電源スイッチが操作されたとき)に電流測定ファンクションに切り替えて電流測定処理を自動的に開始し(前述した測定処理20におけるステップ22,23に相当)、電流測定処理によって電流が測定されないときに抵抗測定ファンクションに切り替えて抵抗測定処理を自動的に開始する(前述した測定処理20におけるステップ36,37に相当)構成を採用する。このような構成を採用したクランプ式電流計によれば、この種の測定装置の操作に不慣れな利用者であっても、電流の測定を所望しているときには電流センサ2によって電流測定対象体をクランプし、抵抗の測定を所望しているときには、接続部3に接続したテストリード3a,3bを抵抗測定対象体に接触させるだけで、煩雑な切替え操作を行うことなく、所望の測定ファンクションに切り替えられて所望の測定処理が自動的に実行されるため、操作誤りを招くことなく、所望の測定値(この例では、電流および抵抗のいずれか)を正確かつ容易に表示部8に表示させることができる。また、この構成のクランプ式電流計においても、電圧検出部5を不要にできるため、その分の製造コストを低減することができる。
さらに、テストリード3a,3b間に電圧を印加したときにテストリード3a,3bを流れる電流(「接触子を流れる電流」の一例)に基づいて抵抗を測定する抵抗測定処理を実行する構成を例に挙げて説明したが、測定装置の構成はこれに限定されない。具体的には、テストリード3a,3bを介して抵抗測定用の電流を出力した状態においてテストリード3a,3bの間に生じる電圧(「接触子を介して入力される第3の入力電圧(第Bの入力電圧)の一例)に基づいて抵抗(抵抗測定対象体の抵抗)を測定する抵抗測定処理(「接触子を流れる電流、および接触子を介して入力される第3の入力電圧(第Bの入力電圧)のいずれか一方」が「接触子を介して入力される第3の入力電圧(第Bの入力電圧」である抵抗測定処理の例)を実行する構成を採用することもできる。
また、「測定開始が指示されたとき」としての「電源スイッチが操作されて電源が投入されたとき」に一連の処理を実行する構成を例に挙げて説明したが、例えば、測定開始スイッチ(スタートスイッチ)等の「測定開始を指示するための専用の操作スイッチ」を別個に設け、この操作スイッチが操作されたときに一連の処理を実行する構成や、外部装置からの制御信号(測定開始を指示する制御信号)を受信したときに一連の処理を実行する構成を採用することもできる。さらに、電流センサ2が開状態のときに表示部8にメッセージを表示することで開状態を報知する構成を例に挙げて説明したが、メッセージの表示に変えて、インジケータの点灯または点滅や、ブザー音の出力によって開状態を報知する構成を採用することもできる。