JP2010280764A - ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】加硫後のゴム物性の低下、ブルーミング等の問題を生じる可能性のあるCTPのような加硫遅延剤を使用することなく、DCBSと同等以上の加硫遅延効果を有し、良好な作業性を保持しつつ、金属との接着性に優れたゴム組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のゴム組成物は、ゴム成分、式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤および硫黄を含有してなることを特徴とする。
Figure 2010280764

【選択図】なし

Description

本発明は、特定のスルフェンアミド系加硫促進剤を含有するゴム組成物であり、より詳しくはスチールコードを補強材としたタイヤやコンベアベルト等のゴム物品に好適に使用できるゴム組成物に関する。
従来より、自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等、特に強度が要求されるゴム製品には、ゴムを補強し強度、耐久性を向上させる目的で、スチールコード等の金属補強材をゴム組成物で被覆した複合材料が用いられている。
このゴム−金属複合材料が高い補強効果を発揮して信頼性を得るためには、ゴム−金属補強材間に安定した経時変化の少ない接着が必要である。
こうした金属補強材をゴム組成物で被覆した複合材料において、ゴムと金属を接着する場合、ゴムと金属との結合を同時に行う方法、すなわち、直接加硫接着法が知られているが、ゴムの加硫とゴムと金属の結合を同時に行う上で、加硫反応に遅効性を与えるスルフェンアミド系加硫促進剤を用いることが有用とされている。現在、市販されているスルフェンアミド系加硫促進剤の中で、最も加硫反応に遅効性を与える加硫促進剤としては、たとえば、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(以下、「DCBS」と略す)が知られている。さらに、遅効性を必要するような場合には、スルフェンアミド系加硫促進剤と、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(以下、「CTP」と略す)のような加硫遅延剤とを併用することも行われている。
また、上記DCBS以外のスルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、特定式で表されるビススルフェンアミド(特許文献1参照)や、天然油脂由来のアミンを原料としたベンゾチアゾルリルスルフェンアミド系加硫促進剤(特許文献2参照)が知られている。
特開2005−139082号公報 特開2005−139239号公報
しかしながら、これらの特許文献1及び2に記載されるスルフェンアミド系加硫促進剤には、ゴム物性のみの記載であり、接着性能についての記載や示唆はない。しかも、こうした従来の加硫促進剤と上記のような加硫遅延剤とを併用した場合には、加硫遅延剤の配合量によっては加硫ゴムの物理的物性に悪影響を及ぼし、かつ、加硫ゴムの外観の悪化および接着性に悪影響を及ぼすブルーミングの原因になるという問題が生じる。
そこで、本発明は、加硫後のゴム物性の低下、ブルーミング等の問題を生じる可能性のあるCTPのような加硫遅延剤を使用することなく、DCBSと同等以上の加硫遅延効果を有し、良好な作業性を保持しつつ、金属との接着性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、DCBSと同等以上の加硫遅延効果を発揮する特定のスルフェンアミド系加硫促進剤を採用することで、良好な作業性と金属との優れた接着性を付与し得るゴム組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のゴム組成物は、ゴム成分、式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤および硫黄を含有してなることを特徴とする。
Figure 2010280764
(式(I)中、R1は、炭素数5〜12の直鎖アルキル基または分岐アルキル基を示し、R2〜R5は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、或いは炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。xは1または2を示す。)。
また、前記ゴム成分100質量部に対し、前記スルフェンアミド系加硫促進剤を0.1〜10質量部の量で含有してなるのが望ましく、また前記ゴム成分100質量部に対し、前記硫黄を0.3〜10質量部の量で含有してなるのが望ましい。
さらに、前記式(I)中、R2〜R5がすべて水素原子であるのが好ましく、R1が炭素数5〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であるのが好ましい。
前記ゴム組成物は、さらにコバルト単体および/またはコバルトを含有する化合物からなるコバルト系成分を含むのが望ましい。
また、前記コバルト系成分の含有量は、コバルト量として前記ゴム成分100質量部に対し、0.03〜1質量部の量であるのが好ましく、前記コバルトを含有する化合物は、有機酸のコバルト塩であるのが好ましい。
前記ゴム成分は、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含むのが望ましく、前記ゴム成分100質量%中、天然ゴムを50質量%以上の量で含むのが望ましい。
本発明によれば、DCBSと同等以上の加硫遅延効果を有する加硫促進剤を用いているので、ムーニー粘度の上昇が効果的に抑制されて混練作業が容易となるとともに、適度なムーニースコーチタイムを保持することができる。また、加硫後のゴム物性の低下、ブルーミング等の問題を生じる可能性のあるCTPのような加硫遅延剤を使用する必要がなく、加硫ゴムの外観や接着性に悪影響を及ぼすおそれがない。そのため、良好な作業性を保持しつつ、金属との優れた接着性を有するゴム組成物を得ることができる。
したがって、本発明のゴム組成物は、スチールコードを補強材としたタイヤやコンベアベルト等のゴム物品に好適に使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤および硫黄を含有してなることを特徴とする。
Figure 2010280764
本発明に用いるゴム成分としては、タイヤや工業用ベルト等のゴム製品に用いられるゴムであれば特に限定されず、主鎖に二重結合があるゴム成分であれば硫黄架橋可能であるため、上記式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤が有効に機能するものであり、たとえば、天然ゴムまたは合成ゴムが用いられる。合成ゴムとしては、具体的には、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
上記ゴム成分は、スチールコード等の金属補強材への接着性の点から、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含むことが好ましい。さらに、工業用ベルトゴムの耐久性の点から、前記ゴム成分100質量%中、天然ゴムを50質量%以上の量で含むのが望ましい。上限値については特に制限はなく、100質量%であってもよい。なお、この場合には残部が合成ゴムとなり、上記合成ゴムのうち少なくとも1種を含むのが望ましい。
本発明に用いる上記式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤は、下記式(X)で表される従来のスルフェンアミド系加硫促進剤であるDCBSと同等の加硫遅延効果を有しており、かつ、ムーニー粘度の上昇を効果的に抑制するとともに好適なムーニースコーチタイムをも確保することができる。また、スチールコード等の金属補強材との直接加硫接着における接着耐久性にも優れ、肉厚のゴム製品のコーティング用等のゴム組成物にも好適に使用することができる。
Figure 2010280764
本発明において、上記式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤中のRは、炭素数5〜12の直鎖アルキル基または分岐アルキル基を示す。R1が炭素数5〜12の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であれば、上記スルフェンアミド系加硫促進剤の加硫促進性能が良好であるとともに、接着性能を高めることができる。
1としては、具体的には、1,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチル−3−メチルブチル基、1−メチル−3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基(イソペンチル基)、ネオペンチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、1,3−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチル−3−メチルペンチル基、1−メチル−3,3−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、tert−ヘキシル基、1,3−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチル−3−メチルヘキシル基、1−メチル−3,3−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルヘキシル基、1,3,5−トリメチルヘキシル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、tert−デシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、tert−ウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、tert−ドデシル基などが挙げられる。これらの中でも、好適なムーニースコーチタイムが得られるなどの効果の点から、炭素数5〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基が好ましく、炭素数5〜8の分岐アルキル基であるのがさらに好ましい。特に、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、tert−ドデシル基、トリイソブチル基が好ましく、中でも1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、tert−ブチル基が最適である。
これら好適な態様において、特に上記特定の炭素数を有するかさ高い分岐アルキル基R1が−N−の一方の近傍にのみ存在するほど、良好なムーニースコーチタイムを付与できる傾向にあると推定される。したがって、たとえば上記式(I)中のR1が1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基である場合、R1がシクロヘキシル基であるDCBSと比べて、−N−の一方の近傍は前者の方がよりかさ高く、より好適なムーニースコーチタイムを付与し得るものと考えられる。また、DCBSのように上記−N−にシクロヘキシル基が2つ結合する場合や、R1が上記範囲外の長鎖の基や短鎖の分岐基であるような従来のスルフェンアミド系加硫促進剤であると、加硫速度が遅すぎる傾向にある。
上記式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤中のxは、1または2の整数を示す。xが3以上になると反応性が高くなり過ぎるためスルフェンアミド系加硫促進剤の安定性が低下し、作業性が悪化するおそれがある。
上記式(I)中のR2〜R5は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、或いは炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、なかでも、R2とR4とが、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、或いは炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であるのが好ましい。また、R2〜R5が、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の場合、炭素数1であるのが好ましく、R2〜R5のすべてがHであるのが好ましい。好ましいいずれの場合も、化合物の合成のし易さ及び加硫速度が遅くならない点で望ましい。上記式(I)中のR2〜R5の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
本発明において、上記式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤の代表例としては、N−1,3−ジメチルブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3−メチルブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1−メチル−3,3−ジメチルブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ペンチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソアミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−アミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,3−ジメチルペンチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3−メチルペンチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1−メチル−3,3−ジメチルペンチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3,3−ジメチルペンチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,3−ジメチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3−メチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1−メチル−3,3−ジメチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3,3−ジメチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,3,5−トリメチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3,3−ジメチル−5,5−ジメチルヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−オクチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソオクチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−オクチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ノニルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソノニルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ノニルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−デシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−デシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ウンデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソウンデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ウンデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ドデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソドデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ドデシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド;
N−1,3−ジメチルブチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,3−ジメチルブチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3−メチルブチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3−メチルブチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1−メチル−3,3−ジメチルブチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1−メチル−3,3−ジメチルブチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ペンチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ペンチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソアミル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−イソアミル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−アミル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−アミル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ヘプチル−4−メチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−tert−ヘプチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
これらのなかでも、最も長いムーニースコーチタイムと優れた接着性能を有する点で、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドが好ましい。
これらスルフェンアミド系加硫促進剤は、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)などの汎用の加硫促進剤と組み合わせて使用することも可能である。
上記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.8〜2.5質量部の量である。この加硫促進剤の含有量が0.1質量部未満であると、充分に加硫できなくなるおそれがあり、一方、10質量部を超えると、ブルームが問題となり好ましくない。
上記スルフェンアミド系加硫促進剤の製造方法としては、下記方法を好ましく挙げることができる。
すなわち、対応するアミンと次亜塩素酸ソーダの反応によりあらかじめ調製したN−クロロアミンとビス(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィドを、アミンおよび塩基存在下、適切な溶媒中で反応させる。塩基としてアミンを用いた場合は、中和を行い、遊離のアミンに戻した後、得られた反応混合物の性状に従って、ろ過、水洗、濃縮、再結晶など適切な後処理をおこなうと、目的とするスルフェンアミドが得られる。
本製造方法に用いる塩基としては,過剰量用いた原料アミン、トリエチルアミンなどの3級アミン、水酸化アルカリ,炭酸アルカリ、重炭酸アルカリ、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。特に、過剰の原料アミンを塩基として用いたり、3級アミンであるトリエチルアミンを用いて反応を行い、水酸化ナトリウムで生成した塩酸塩を中和し、目的物を取り出した後、ろ液からアミンを再利用する方法が望ましい。
本製造方法に用いる溶媒としては、アルコールが望ましく、特にメタノールが望ましい。
本発明に用いる硫黄は、加硫剤として作用するものであり、その含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.3〜10質量部、好ましくは1.0〜7.0質量部、より好ましくは3.0〜7.0質量部の量である。硫黄の含有量が0.3質量部未満であると、充分に加硫しなくなるおそれがあり、一方、10質量部を超えると、ゴムの老化性能が低下するおそれがあり好ましくない。
さらに、上記ゴム組成物には、初期接着性能の向上の点から、コバルト単体および/またはコバルトを含有する化合物からなるコバルト系成分を含有せしめることが好ましい。上記コバルト系成分としては、コバルト単体が挙げられるほか、コバルトを含有する化合物として、有機酸のコバルト塩、無機酸のコバルト塩である塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、クロム酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。なかでも、さらなる初期接着性能の向上の点から、有機酸のコバルト塩の使用が望ましい。これらコバルト単体およびコバルトを含有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
上記有機酸のコバルト塩としては、より具体的には、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト等の少なくとも1種を挙げることができ、また、有機酸コバルトは有機酸の一部をホウ酸で置き換えた複合塩でもよく、具体的には、市販のOMG社製の商品名「マノボンド」等も用いることができる。
上記コバルト系成分の(合計)含有量は、コバルト量として、ゴム成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.03〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.7質量部の量である。
これらのコバルト量の含有量が0.03質量部未満では、さらなる接着性を発揮することができず、一方、1質量部を越えると、老化物性が大きく低下し、好ましくない。
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分、加硫促進剤、硫黄、コバルト系成分の他に、タイヤやコンベアベルト等のゴム製品で通常使用される配合剤を本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができる。
たとえば、補強性充填剤を用いると、耐破壊性や耐摩耗性などをより向上させることができる。具体的には、カーボンブラックまたは白色無機充填材が挙げられる。
カーボンブラックとしては、製造方法によりチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びサーマルブラックなどがあるが、いずれを用いてもよく、たとえばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等を挙げることができるが、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。
一方、白色無機充填材としては、シリカ、および下記一般式(Y)で表されるものが好ましい。
mM1・xSiOy・zH2O ・・・(Y)
(式(Y)中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、およびそれらの水和物から選ばれる少なくとも一種であり、m、x、yおよびzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、および0〜10の整数である)。さらに、カリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウムなどの金属や、フッ素などの元素、およびNH4−などの基を含有していてもよい。
具体的には、アルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4 、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、各種ゼオライト、長石、マイカ、モンモリロナイト等が例示でき、Mがアルミニウムであることが好ましく、アルミナ類、クレー類であることが特に好ましい。
アルミナ類とは上記一般式(Y)で表されるもののうち、下記一般式(Z)で表されるものである。
Al23・nH2O(但し、式中nは0〜3である。) ・・・(Z)
クレー類では、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、モンモリロナイト等が挙げられる。
これらの白色無機充填材の中で、シリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、特にシリカが好ましい。ここで、シリカとしては、従来ゴム補強用として慣用されているもの、例えば湿式法シリカ(含水ケイ酸)、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、各種ケイ酸塩などの中から適宜選択して用いることができるが、中でも沈降法による合成シリカ(湿式法シリカ)が好適である。
これら補強性充填剤は、上記ゴム成分100質量部に対し、10〜120質量部、好ましくは20〜100質量部の割合で配合することができる。
さらに、上記補強性充填剤としてシリカなどの白色無機充填材を用いる場合には、所望により、カップリング剤を配合してもよい。このカップリング剤としては特に制限はなく、従来公知の様々なカップリング剤の中から任意のものを選択して用いることができるが、これらの中で特にシラン系カップリング剤が好ましい。このシラン系カップリング剤の例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドなどが挙げられる。
上記カップリング剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、配合効果及び経済性などを考慮すると、前記白色無機充填材に対して、1〜20質量%、好ましくは5〜20質量%の量である。
また、上記以外の他の配合剤としては、たとえば、軟化剤、老化防止剤などが挙げられ、これらを用途に応じて適宜配合することができる。
本発明のゴム組成物は、上記各成分を、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることにより製造することができる。また、本発明のゴム組成物を用いて乗用車、トラック、バス、二輪車用等のタイヤを製造する場合には、たとえば押し出し機やカレンダー等によりビードフィラー部材、またはランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを作製してもよく、これらを成型ドラム上で他の部材と張り合わせること等でグリーンタイヤを作製し、このグリーンタイヤをタイヤモールドに収め、内側から圧を加えながら加硫する方法などにより行うことができる。なお、タイヤ内部には、空気のほか、窒素や不活性ガスを充填してもよい。このようにスチールコードを補強材としたタイヤだけでなく、コンベアベルト等のゴム物品にも好適に使用できる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔製造例:N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(加硫促進剤1)の合成〕
1000mL四つ口フラスコにDM−P(133.0g、0.4mol)、ノイゲンET(200mg)、水200mLを加え、10℃に冷却した。tert−オクチルアミン(113.7g、0.88mol)を1時間かけて滴下後、40℃に昇温し、1時間攪拌した。トルエン50mLを加え、35%過酸化水素水溶液(42.8g、0.44mol)を40分かけて滴下し、1時間攪拌した。その後、12%次亜塩素酸ソーダ水溶液(273g、0.44mol)を1時間かけて滴下した。トルエン200mLを加えて分液し、上層を減圧下ロータリーエバポレーターで濃縮した(240.1g)。続いてアセトン450mLを加え、50℃に加熱し、熱濾過した。室温まで冷却し、析出した結晶を濾過した。40℃で12時間熱風乾燥し、白色結晶の目的物である下記式で表されるN−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(加硫促進剤1)(183.7g、0.62mol、収率78%、融点103.7〜104.4℃)を得た。
1H−NMR(CDCl3)d(ppm):7.70−7.80(m,2H)、7.38(t,1H,7.6Hz)、7.25(t,1H,7.6Hz)、3.52(s,1H)、1.59(s,2H)、1.32(s,6H)、1.07(s,9H).
Figure 2010280764
[実施例1、比較例1〜2]
ゴム成分、加硫促進剤、硫黄、その他の配合剤を表1に示す配合処方で混練り混合して、未加硫のゴム組成物を調製し、以下の方法にしたがって評価した。結果を表1に示す。
《ムーニー粘度、ムーニースコーチタイムの評価方法》
JIS K 6300−1:2001に準拠して行った。
なお、評価は、比較例1の値を100として指数表示した。ムーニー粘度は、値が小さいほど混練時の作業性が良好であることを示し、ムーニースコーチタイムは、値が大きいほど混練後の作業性が良好であることを示す。
《耐熱接着性》
黄銅めっき(Cu:63質量%、Zu:37質量%)したスチールコード(外径0.5mm×長さ300mm)3本を10mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを160℃、20分間の条件で加硫し、サンプルを作製した。
得られた各サンプルの各耐熱接着性について、ASTM−D−2229に準拠して、各サンプルを100℃のギヤオーブンに15日、30日間放置した後にスチールコードを引き抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察し、0〜100%で表示して各耐熱接着性の指標とした。数値が大きいほど、耐熱接着性に優れることを示す。
Figure 2010280764
※1:N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(ノクラック6C、大内新興化学工業(株)製)
※2:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(ノクセラーDZ、大内新興化学工業(株)製)
※3:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業(株)製)
※4:製品名:マノボンドC22.5、OMG社製、コバルト含有量:22.5質量%
上記表1の結果から明らかなように、上記特定の加硫促進剤および硫黄を含有する実施例1は、従来の加硫促進剤(DCBS)と硫黄を含有する比較例1〜2に比して、作業性および耐熱接着性ともに優れることがわかる。

Claims (10)

  1. ゴム成分、式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤および硫黄を含有してなることを特徴とするゴム組成物;
    Figure 2010280764
    (式(I)中、R1は、炭素数5〜12の直鎖アルキル基または分岐アルキル基を示し、R2〜R5は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、或いは炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。xは1または2を示す。)。
  2. 前記ゴム成分100質量部に対し、前記スルフェンアミド系加硫促進剤を0.1〜10質量部の量で含有してなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分100質量部に対し、前記硫黄を0.3〜10質量部の量で含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. 前記式(I)中、R2〜R5がすべて水素原子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 前記式(I)中、R1が炭素数5〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 前記ゴム組成物が、さらにコバルト単体および/またはコバルトを含有する化合物からなるコバルト系成分を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 前記コバルト系成分の含有量が、コバルト量として前記ゴム成分100質量部に対し、0.03〜1質量部の量であることを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 前記コバルトを含有する化合物が、有機酸のコバルト塩であることを特徴とする請求項6または7に記載のゴム組成物。
  9. 前記ゴム成分が、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含む請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物。
  10. 前記ゴム成分100質量%中、天然ゴムを50質量%以上の量で含む請求項9に記載のゴム組成物。
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