JP5383351B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
ショルダー部の接着耐久性を上げるため、カーカスゴムに配合する硫黄分を増やす、カーカスゴムのカーカスコードからクッションゴム間のゲージを増やす等の方法がある。また、クッションゴムの配合でショルダー部の接着耐久性を向上させる技術としては、ゴムにポリメトキシメチルメラミンを配合することで加硫促進剤から放出されたアミン成分をトラツプし、接着の湿熱劣化を抑える技術(特許文献3)や、ポリサルファイドを配合する技術(特許文献4)がある。
本発明のタイヤのカーカスプライの隣接ゴム層に用いるゴム組成物は、天然ゴムとポリブタジエンやポリイソプレン等のジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種と、ゴム成分100質量あたり下記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤を0.1〜10質量部(以下phrと表す)を含有し、さらに硫黄を0.1〜10phr、カーボンブラック、シリカからなる充填剤を30〜100phr含有するゴム組成物である。
上記一般式(I)で表される化合物のR1の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基,tert−ブチル基、イソアミル基(イソペンチル基)、ネオペンチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、イソヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、tert−ウンデシル基、イソドデシル基、tert−ドデシル基などが挙げられる。
上記一般式(I)で表される化合物のR2の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基(n−ペンチル基)、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらの中でも、合成のし易さや原材料コストなどの効果の点から、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、更に炭素数1〜6の直鎖アルキル基であることが好ましく、特に好ましくは、好適なムーニースコーチタイムが得られかつ高いスチールコード接着が得られる点で、炭素数1〜6の直鎖アルキル基が望ましい。これは炭素数が増えると加硫が更に遅れるため生産性が低下したり、接着性が低下するためである。これらの中でも、炭素数4以下の直鎖アルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が最も望ましい。
上記一般式(I)で表される化合物中のR3〜R6の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR1、R2の特に好ましい組み合わせとしては、R1がtert−ブチル基であり、R2が炭素数1〜10の直鎖アルキル基、R3〜R6は、水素原子の組み合わせである。この組み合わせの中でも、ベストモードとなる組み合わせとしては、R1がtert−ブチル基であり、R2が炭素数4以下となるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基となる場合であり、更に好ましくは、R2が炭素数3以下、特に好ましくは炭素数2以下であるこの組み合わせの場合に、加硫速度がDCBS(DZ)と同等、更なる接着性能確保、人体蓄積性の見地から最も性能バランスが良いものとなる。
本発明(後述する実施例等を含む)において、上記オクタノール/水分配係数(logP)の測定は、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により実施することができ、下記式により定義される。
logP=log(「Co」/「Cw」)
C0:1−オクタノール層中の被験物質濃度
Cw:水層中の被験物質濃度
以上のように、本発明に用いる上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物の中で好ましい化合物から更に好ましい化合物を順番にまとめてみると、具体的には、ムーニースコーチタイムが早くなりすぎず、加工時にゴム焦げを起こさず、作業性の低下を起こさないなどの点等から、R3〜R6が水素原子で、1)上記一般式(I)のR1は、tert−アルキル基であり、n=0、R2は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であるもの、2)上記一般式(I)中のR1は、tert−アルキル基であり、nは0又は1の整数、R2は、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であるもの、3)上記一般式(I)中のR1は、tert−アルキル基であり、n=0であり、R2は、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であるもの、4)上記一般式(I)中のR1は、tert−アルキル基であり、n=0、R2は炭素数4以下の直鎖アルキル基(好ましくは炭素数3以下の直鎖アルキル基)であるもの、5)上記一般式(I)中のR1は、tert−アルキル基であり、n=0、R2は炭素数2以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基)であるものが好ましいものとなる(降順する程、好適なスルフェンアミド化合物となる)。
これらの化合物は、1種でも組み合わせて使用してもよい。また、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)などの汎用の加硫促進剤と組み合わせて使用することも可能である。
すなわち、対応するアミンと次亜塩素酸ソーダの反応によりあらかじめ調製したN−クロロアミンとビス(ベンゾチアゾ−ル−2−イル)ジスルフィドを、アミンおよび塩基存在下、適切な溶媒中で反応させる。塩基としてアミンを用いた場合は、中和を行い、遊離のアミンに戻した後、得られた反応混合物の性状に従って、ろ過、水洗、濃縮、再結晶など適切な後処理をおこなうと、目的とするスルフェンアミドが得られる。
本製造方法に用いる溶媒としては、アルコール、特にメタノールが望ましい。
この加硫促進剤の含有量が0.1質量部未満であると、十分に加硫しなくなり、一方、10質量部を越えると、ブルームが問題となり、好ましくない。
この硫黄の含有量が0.1質量部未満であると、十分に加硫しなくなり、一方、10質量部を越えると、ゴムの耐老化性能が低下し、好ましくない。
シリカも特に制限はなく、従来の補強用充填剤として使用されているものの中から適宜選択することができる。このようなシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。なかでも湿式シリカが特に好適である。
用いることができるコバルトを含有する化合物としては、有機酸のコバルト塩、無機酸のコバルト塩である塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、クロム酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、更なる初期接着性能の向上の点から、有機酸のコバルト塩の使用が望ましい。
これらのコバルト及び/又はコバルトを含有する化合物の(合計)含有量は、コバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.01〜3質量部、好ましくは、0.03〜1質量部、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部とすることが望ましい。
これらのコバルト量の含有量が0.01質量部未満では、更なる接着性を発揮することができず、一方、3質量部を越えると、耐老化物性が大きく低下し、好ましくない。
本発明で用いるゴム組成物には、上記ゴム成分、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラックの他に、タイヤやコンベアベルト等のゴム製品で通常使用される老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸などを適宜配合することができる。
また、得られた加硫促進剤のオクタノール/水分配係数(logP)を、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。高速液体クロマトグラフィーは、島津製作所社製のものを使用した。
N−t−ブチルエチルアミン16.4g(0.162mol)に12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液148gを0℃以下で滴下し、2時間攪拌後油層を分取した。ビス(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィド39.8g(0.120mol)、N−t−ブチルエチルアミン24.3g(0.240mol)および前述の油層を、メタノ−ル120mlに懸濁させ、還流下2時間攪拌した。冷却後、水酸化ナトリウム6.6g(0.166mol)で中和し、ろ過、水洗、減圧濃縮した後、再結晶することで目的とするN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを41.9g(収率66%)の白色固体(融点60〜61℃)として得た。
得られたN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドのスペクトルデータを以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ=1.29(t,3H,J=7.1Hz,CH3(エチル))、1.34(s,9H,CH3(t−ブチル))、2.9−3.4(br−d,CH2)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ=15.12、28.06、47.08、60.41、120.70、121.26、123.23、125.64、134.75、154.93、182.63:
質量分析(EI、70eV):m/z;251(M+−CH4)、167(M+−C6H14N)、100(M+−C7H5NS2):
IR(KBr,cm−1):3061,2975,2932,2868,1461,1429,1393,1366,1352,1309,1273,1238,1198,1103,1022,1011,936,895,756,727。
また、このN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.9であった。
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチルメチルアミン14.1g(0.162mol)と20.9g(0.240mol)用いて製造例1と同様に行い、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを46.8g(収率82%)の白色固体(融点56〜58℃)として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ=1.32(9H,s,CH3(t−ブチル))、3.02(3H,s,CH3(メチル))、7.24(1H,m)、7.38(1H,m)、7.77(1H,m)、7.79(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ=27.3、41.9、59.2、120.9、121.4、123.3、125.7、135.0、155.5、180.8:
質量分析(EI,70eV)m/z;252(M+)、237(M+−CH3)、223(M+−C2H6)、195(M+−C4H9)、167(M+−C5H12N)、86(M+−C7H4NS2)。
また、このN−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.5であった。
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−n−プロピル−t−ブチルアミン18.7g(0.162mol)と27.7g(0.240mol)を用いて製造例1と同様に行い、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを白色固体(融点50〜52℃)として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.92(t,J=7.3Hz,3H),1.34(s,9H),1.75(br,2H),3.03(brd,2H),7.24(t,J=7.0Hz,1H),7.38(t,J=7.0Hz,1H),7.77(d,J=7.5Hz,1H),7.79(d,J=7.5Hz,1H):
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ:11.7,23.0,28.1,55.3,60.4,120.7,121.3,123.3,125.7,134.7,154.8,181.3。
また、このN−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.3であった。
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチル−n−ブチルアミン20.9g(0.162mol)と31.0g(0.240mol)を用いて製造例1と同様に行い、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを42.4g(収率60%)の白色固体(融点55〜56℃)として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ=0.89(3H,t,J=7.32Hz,CH3(n−Bu))、1.2−1.4(s+m,11H,CH3(t−ブチル)+CH2(n−ブチル))、1.70(br.s,2H,CH2)、2.9−3.2(br.d,2H,N−CH2)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ:14.0、20.4、27.9、31.8、53.0、60.3、120.6、121.1、123.1、125.5、134.6、154.8、181.2:
質量分析(EI,70eV)、m/z294(M+)、279(M+−CH3)、237(M+−C4H9)、167(M+−C8H18N)、128(M+−C7H4NS2):IR(neat):1707cm−1,3302cm−1。
また、このN−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.8であった。
2200mlのバンバリーミキサーを使用して、ゴム成分、硫黄、カーボンブラック、上記製造例で得た加硫促進剤、その他の配合剤を下記表1に示す配合処方で混練り混合して未加硫ゴム組成物を調製し、これをカーカスプライ隣接ゴム層に使用してタイヤ(18.00R25)を製造し、加硫を行った。
以下の方法で、カーカスコードのゴム被覆率を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
上記タイヤを時速20km/hで、ステップロード(荷重:TRA規格100%・10ton、内圧800kPa、72時間毎に荷重20%アップ)にてドラムテストを行い、320時間走行後に停止し、ショルダー部の最大ゲージ部を中心に10cmの領域のカーカスのサンプルに対して、ASTM−D−2229に準拠して、スチールコードを引き抜き、カーカスコードのゴムの被覆状態を目視で観察し、0〜100%で表示した。
*1:天然ゴムRSS#3
*2:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
(大内新興化学工業製、商品名:ノクラック6C)
*3:OMG社製、商品名マノボンドC22.5、コバルト含有量22.5質量%
*4:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
(大内新興化学工業製、商品名:ノクセラーDZ)
*5:N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
2 カーカスプライ
3 インナーゴム層
4 ショルダー部スキージー
5 スティフナー部スキージー
6 パット部スキージー
7 ビードコアスキージ
Claims (7)
- カーカスプライ隣接ゴム層にゴム成分100質量部につき上記スルフェンアミド系加硫促進剤を0.1〜10質量部含有するゴム組成物を使用することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- カーカスプライ隣接ゴム層にゴム成分100質量部につき硫黄を0.1〜10質量部含有するゴム組成物を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- カーカスプライ隣接ゴム層にゴム成分100質量部につきカーボンブラック及びシリカからなる充填剤を30〜100質量部含有するゴム組成物を使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- カーカスプライ隣接ゴム層にコバルト及び/又はコバルト含有化合物を含有するゴム組成物を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- カーカスプライ隣接ゴム層にゴム成分100質量部につきコバルト及び/又はコバルト含有化合物を0.01〜3質量部含有するゴム組成物を使用することを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
- 隣接ゴム層をカーカスプライのタイヤ内側に沿って配した請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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