JP2010280022A - 帯鋸刃及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】帯鋸刃において、耐チッピング性と耐摩耗性とを備えることである。
【解決手段】複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃10において、複数の歯14の歯先部16は、工具鋼で形成され、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部20と、歯先基部20の表面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層22と、を有し、炭化物微細化層22は、歯先基部20のすくい面24に形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、帯鋸刃及びその製造方法に係り、特に、金属材料等の切削に用いられる帯鋸刃及びその製造方法に関する。
金属材料等の切削加工を行う帯鋸盤には、工具鋼等で形成された多数の切断歯を備えた帯鋸刃が用いられる。帯鋸刃には、高速切断加工に対応できるように、胴部を疲労強度の高い特殊合金鋼により構成し、歯先部を硬度の高い高速度工具鋼または超硬合金により構成したバイメタル帯鋸刃等が広く用いられている。
特許文献1には、工具類等の金属成品における表面加工熱処理法が記載され、金属成品の表面に、成品硬度と同等以上の硬度を有する40〜200μmのショットを噴射速度100m/sec以上で噴射し、表面付近の温度をA変態点以上に上昇させる金属成品の表面加工熱処理法が記載され、熱処理及びショットピーニングの二つの工程を同時に行わせて、金属成品の表面付近の組織を変化させることが示されている。
特許第1594395号公報
ところで、歯先部に高速度工具鋼(ハイス)等の工具鋼を用いた従来の帯鋸刃は、歯先部の耐摩耗性を向上させるため、長径が2μm以上の炭化物を含んでいる。図12は、歯先部に高速度工具鋼を用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。長径が2μm以上の粗大な炭化物は、歯先部の耐摩耗性を向上させる反面、耐チッピング性(歯欠け)を低下させる。一般的に、炭化物の粒径がより大きくなると耐摩耗性が向上するが、耐チッピング性が低下する。
また、帯鋸刃には、耐チッピング性を向上させるため、一般的な高速度工具鋼の炭素含有量より少ない炭素含有量を有するマトリックスハイスで歯先部が形成された帯鋸刃が用いられている。図13は、歯先部にマトリックスハイスを用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。マトリックスハイスは、炭素含有量が通常の高速度工具鋼より少ないので、マトリックスハイスで形成された歯先部には、炭化物が析出されないか、析出しても極少量で存在する。そのため、歯先部がマトリックスハイスで形成された帯鋸刃では、耐チッピング性が向上する。しかし、帯鋸刃の歯先部には、炭化物が析出されないか、析出されても極少量のため、一般的な高速度工具鋼で歯先部が形成された帯鋸刃より耐摩耗性が低下する。
さらに、耐チッピング性と耐摩耗性の両立のため、帯鋸刃には、微細な炭化物を均質に分散させた粉末ハイス(焼結高速度工具鋼)で歯先部が形成された帯鋸刃も用いられている。図14は、歯先部に粉末ハイスを用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。歯先部に粉末ハイスを用いた帯鋸刃でも、歯先部に含まれる炭化物が微細炭化物であるので、一般的な高速度工具鋼で歯先部が形成された帯鋸刃より耐摩耗性が低下する場合がある。また、粉末ハイスは、溶製ハイスより製造工程が複雑であるため、帯鋸刃の製造コストが高くなる場合がある。
そこで、本発明の目的は、耐チッピング性と耐摩耗性とを備える帯鋸刃及びその製造方法を提供することである。
本発明に係る帯鋸刃は、複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃であって、前記複数の歯の歯先部は、工具鋼で形成され、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部と、前記歯先基部の表面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層と、を有し、前記炭化物微細化層は、前記歯先基部のすくい面に形成されることを特徴とする。
本発明に係る帯鋸刃において、前記炭化物微細化層は、前記歯先基部のすくい面に平均厚み10μm以上50μm以下で形成されることが好ましい。
本発明に係る帯鋸刃において、前記炭化物微細化層は、前記歯先基部の逃げ面に形成されることが好ましい。
本発明に係る帯鋸刃において、前記歯先部は、前記炭化物微細化層の表面に形成され、前記炭化物微細化層よりも硬度が高い硬質皮膜を有することが好ましい。
本発明に係る帯鋸刃の製造方法は、複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃の製造方法であって、胴部材料で形成される胴部基材と、工具鋼で形成される歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する接合工程と、前記帯鋸刃基材に熱ビームを照射し、溶断により歯切り加工して複数の予備歯形を形成するとともに、前記複数の予備歯形の歯先部を急冷凝固して、前記歯先部のすくい面にマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層を形成する溶融凝固層形成工程と、前記溶融凝固層が形成された歯先部に焼入れ処理と焼戻し処理とを行って、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部を形成し、前記溶融凝固層を、前記歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層にする熱処理工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る帯鋸刃の製造方法は、複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃の製造方法であって、胴部材料で形成される胴部基材と、工具鋼で形成される歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する接合工程と、前記帯鋸刃基材を歯切り加工して複数の予備歯形を形成する歯切り工程と、前記複数の予備歯形の歯先部に熱ビームを照射し、歯先部表面を溶融させてから急冷凝固して、前記歯先部のすくい面にマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層を形成する溶融凝固層形成工程と、前記溶融凝固層が形成された歯先部に焼入れ処理と焼戻し処理とを行って、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部を形成し、前記溶融凝固層を、前記歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層にする熱処理工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る帯鋸刃の製造方法において、前記溶融凝固層形成工程は、前記溶融凝固層を平均厚み10μm以上50μm以下で形成することが好ましい。
上記構成の帯鋸刃及びその製造方法によれば、複数の歯の歯先部は、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部と、歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層とを有しているので、耐チッピング性と耐摩耗性とを備えることができる。
本発明の実施の形態において、帯鋸刃の構成を示す図である。 本発明の実施の形態において、帯鋸刃における歯先部の構成を示す図である。 本発明の実施の形態において、帯鋸刃基材の構成を示す図である。 本発明の実施の形態において、歯切り加工された帯鋸刃基材を示す図である。 本発明の実施の形態において、実施例1の帯鋸刃における歯先部の光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、実施例1の帯鋸刃における歯先部の炭化物微細化層を拡大した光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、炭化物微細化層の厚みの測定方法を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、耐チッピング性の評価試験結果を示す図である。 本発明の実施の形態において、逃げ面摩耗長さの測定方法を示す図である。 本発明の実施の形態において、耐摩耗性の評価試験結果を示す図である。 本発明の実施の形態において、ショットブラスト加工後における帯鋸刃の歯先部の光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、歯先部に高速度工具鋼を用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、歯先部にマトリックスハイスを用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態において、歯先部に粉末ハイスを用いた帯鋸刃の歯先部を示す光学顕微鏡写真である。
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、帯鋸刃10の構成を示す図である。帯鋸刃10は、胴部12と、胴部12に設けられ、複数の歯14からなる歯群とを備えている。
胴部12は、例えば、疲労強度の高いバネ鋼等の胴部材料で形成される。複数の歯14は、歯先部16が工具鋼で形成され、歯先部以外の部位18が胴部材料と同じ材料で形成される。
複数の歯14の歯先部16は、高速度工具鋼で形成されることが好ましい。歯先部16を高速度工具鋼で形成するのは、高速切削時に歯先温度が上昇するため歯先部16の耐熱性等を向上させるためである。高速度工具鋼には、タングステン系高速度工具鋼やモリブデン系高速度工具鋼が用いられる。タングステン系高速度工具鋼には、炭素(C)、タングステン(W)、バナジウム(V)、クロム(Cr)等が含有されている。モリブデン系高速度工具鋼には、炭素(C)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)等が含有されている。これらの元素の中で炭化物を形成して析出硬化に寄与する元素は、主に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)である。
高速度工具鋼には、JIS G4403に定められる高速度工具鋼を用いることができる。高速度工具鋼には、例えば、質量比で炭素(C)を1.05%から1.15%と、珪素(Si)を0.70%以下と、マンガン(Mn)を0.40%以下と、リン(P)を0.03%以下と、クロム(Cr)を3.50%から4.50%と、バナジウム(V)を0.9%から1.3%と、硫黄(S)を0.03%以下と、タングステン(W)を1.2%から1.9%と、モリブデン(Mo)を9.0%から10%と、コバルト(Co)を7.5%から8.5%とを含有するSKH59等が用いられる。
図2は、帯鋸刃10における歯先部16の構成を示す図である。複数の歯14の歯先部16は、歯先基部20と、歯先基部20の表面に形成される炭化物微細化層22とを有している。
歯先基部20は、長径が2μm以上の炭化物を含み、金属組織がマルテンサイトで形成されている。歯先基部20の基地は、平均結晶粒径が5μm以上10μm以下の焼戻しマルテンサイトで形成されることが好ましい。歯先基部20に含まれる長径が2μm以上の炭化物は、未固溶の炭化物で形成される。歯先基部20には、長径が2μm以上の粗大な炭化物が存在しており、歯先部16の耐摩耗性向上に関与している。歯先基部20には、例えば、長径が2μm以上10μm以下の炭化物が含まれる。長径が2μm以上の炭化物は、高硬度のタングステン炭化物、モリブデン炭化物またはバナジウム炭化物等で形成され、例えば、WC、MoC等のMC型炭化物、MoC等のMC型炭化物、VC等のMC型炭化物等である。歯先基部20に含まれる長径が2μm以上の炭化物の体積率は、3%以上15%以下であることが好ましい。
炭化物微細化層22は、歯先基部20の表面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、金属組織がマルテンサイトで形成されている。炭化物微細化層22に形成されるマルテンサイトの平均結晶粒径は、歯先基部20に形成されるマルテンサイトの平均結晶粒径より小さく、例えば、1μm以上5μm以下であることが好ましい。炭化物微細化層22に含まれる炭化物は、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物のみで構成される。長径が2μmより小さい炭化物は、未固溶で樹枝状の炭化物で形成される。炭化物微細化層22に含まれる炭化物の長径が2μmより小さいので、歯先表面の耐チッピング性を向上させることができる。長径が2μmより小さい炭化物は、上述したタングステン炭化物、モリブデン炭化物またはバナジウム炭化物等で形成される。長径2μmより小さい炭化物の体積率は、2%以上10%以下であることが好ましい。
炭化物微細化層22は、歯先基部20のすくい面24に形成される。帯鋸刃10にチッピングが発生する場合には、歯先部16に対する力の負荷方向が帯鋸刃10の走行方向であり、歯先部16のすくい面に対して略垂直方向にかかるため、歯先部16のすくい面にチッピングが生じやすいからである。炭化物微細化層22は、歯先基部20のすくい面24に、平均厚み10μm以上50μm以下で形成されることが好ましい。炭化物微細化層22の平均厚みが10μm以上であるのは、炭化物微細化層22の平均厚みが10μmより小さいと耐チッピング性が低下するからである。また、炭化物微細化層22の平均厚みが50μm以下であるのは、炭化物微細化層22の平均厚みを50μmより厚く形成しても耐チッピング性の向上がそれ以上に得られないにもかかわらず、炭化物微細化層22を厚く形成することによる製造コスト等が増えるからである。
また、炭化物微細化層22は、歯先基部20のすくい面24と逃げ面26との両面に設けられることが好ましい。歯先部16の逃げ面においてもチッピングが生じる場合があるからである。歯先基部20の逃げ面26に形成される炭化物微細化層22は、平均厚み30μmより小さい厚みで形成されることが好ましく、平均厚み20μm以下の厚みで形成されることがより好ましい。歯先基部20の逃げ面26に平均厚み30μm以上の炭化物微細化層22を形成すると、歯先部16の逃げ面における耐摩耗性が低下するからである。勿論、炭化物微細化層22を歯先基部20の逃げ面26に形成せず、歯先基部20のすくい面24のみに形成してもよい。
複数の歯14の歯先部16は、炭化物微細化層22の表面に形成され、炭化物微細化層22よりも硬度が高い硬質皮膜(図示せず)を有することが好ましい。炭化物微細化層22を硬質皮膜で被覆することにより、更に、帯鋸刃10の耐摩耗性を向上させることができる。硬質皮膜は、例えば、窒化チタン(TiN)や炭化チタン(TiC)等で形成される。窒化チタン(TiN)や炭化チタン(TiC)等の硬質皮膜は、物理蒸着法(PVD)や化学蒸着法(CVD)等の一般的なコーティング手段で被覆される。勿論、硬質皮膜は、炭化物微細化層22の表面だけでなく、炭化物微細化層22が設けられていない歯先基部20の表面に形成されてもよい。
また、歯先部16の先端28は、ショットブラスト等により略円弧状に形成されることが好ましい。歯先部16の先端28は、ショットブラスト等により略円弧状に削られるので、帯鋸刃10の耐チッピング性をより向上させることができる。
次に、帯鋸刃10の製造方法について説明する。
帯鋸刃10の製造方法は、胴部基材と歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する接合工程と、帯鋸刃基材を歯切り加工して複数の予備歯形を形成するとともに、予備歯形の歯先部表面に溶融凝固層を形成する溶融凝固層形成工程と、溶融凝固層が形成された歯先部に焼入れ処理と焼戻し処理とを行う熱処理工程と、を備えている。
接合工程は、胴部材料で形成される胴部基材と、工具鋼で形成される歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する工程である。図3は、帯鋸刃基材30の構成を示す図である。帯鋸刃基材30は、胴部基材32と歯部基材34とを接合して形成される。胴部基材32は、上述したように、バネ鋼等の胴部材料で形成される。歯部基材34は、高速度工具鋼等の工具鋼で形成される。胴部基材32と歯部基材34とは、例えば、一般的な金属材料の溶接等により接合される。
溶融凝固層形成工程は、帯鋸刃基材30に熱ビームを照射し、溶断により歯切り加工して複数の予備歯形を形成するとともに、複数の予備歯形の歯先部を急冷凝固して、歯先部表面にマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層を形成する工程である。
図4は、歯切り加工された帯鋸刃基材40を示す図である。熱ビームとしての機能を有する、例えば、レーザビームを帯鋸刃基材30に照射し、溶断により歯切り加工して複数の予備歯形42を形成するとともに、複数の予備歯形42の歯先部43を急冷凝固させて歯先部表面に溶融凝固層44が形成される。レーザ加工は、例えば、レーザ発振器により発振されたレーザビームを集光レンズにより集光して、レーザ加工ヘッドのノズルから集光されたレーザビームを帯鋸刃基材30の歯部基材34に対して照射して行われる。なお、酸化を防止するため、レーザ加工ヘッドのノズルから帯鋸刃基材30に対して不活性ガスを噴射することが好ましい。レーザ加工装置には、炭酸ガスレーザ加工装置、YAGレーザ加工装置、半導体レーザ加工装置、エキシマレーザ加工装置等を用いることができる。また、熱ビームは、レーザビームに限定されず、電子ビーム等でもよい。
溶融凝固層44は、歯先部表面を急冷凝固させることにより微細な結晶粒からなる白層で形成される。急冷凝固時の冷却速度は、100℃/min以上であることが好ましい。
溶融凝固層44は、マルテンサイトと残留オーステナイトとの金属組織で形成される。溶融凝固層44の平均結晶粒径は1μm以上5μm以下であり、微細結晶粒で形成されている。溶融凝固層44には、長径が2μmより小さく、急冷凝固されて樹枝状に析出された微細な炭化物が含まれている。長径が2μmより小さい樹枝状炭化物は、高硬度のタングステン炭化物、モリブデン炭化物またはバナジウム炭化物等で形成され、例えば、WC、MoC等のMC型炭化物、MoC等のMC型炭化物、VC等のMC型炭化物等である。
溶融凝固層44は、複数の予備歯形42における歯先部43のすくい面46に形成される。また、溶融凝固層44は、複数の予備歯形42における歯先部43の逃げ面48にも設けられることが好ましい。歯先部43のすくい面46に設けられる溶融凝固層44は、平均厚み10μm以上50μm以下で形成されることが好ましい。歯先部43の逃げ面48に設けられる溶融凝固層44は、平均厚み30μm未満で形成されることが好ましく、平均厚み20μm以下で形成されることがより好ましい。後述する熱処理工程により、溶融凝固層44が熱処理されて炭化物微細化層22を形成するからである。
溶融凝固層44の厚みは、レーザ出力、レーザビーム径、レーザ加工速度(予備歯形42の歯先部43に対するレーザ加工ヘッドの移動速度)等のレーザ加工条件を変更することにより調整できる。例えば、溶融凝固層44の厚みをより大きくする場合には、より遅いレーザ加工速度が選択される。なお、溶融凝固層44の厚みは、研磨加工やショットブラスト加工等で所定厚みの溶融凝固層44を除去して調整されてもよい。
なお、上記の溶融凝固層形成工程では、歯切り加工と、溶融凝固層形成とを同一工程で行ったが、歯切り加工と、溶融凝固層形成とを別工程で行ってもよい。歯切り工程では、例えば、帯鋸刃基材30をフライス加工等のミーリングにより歯切り加工され、複数の予備歯形42が形成される。なお、歯切り加工を行った後に、バリ等を除去するため研磨処理することが好ましい。溶融凝固層形成工程では、複数の予備歯形42の歯先部43に対して熱ビームを照射して、歯先部表面を溶融させてから急冷凝固し、歯先部43のすくい面46に溶融凝固層44が形成される。溶融凝固層44は、予備歯形42における歯先部43のすくい面46に熱ビームを照射して表層を溶融させた後、急冷凝固することにより白層化して形成される。また、歯先部43の逃げ面48にも溶融凝固層44を形成する場合には、歯先部43の逃げ面48に熱ビームを照射して表層を溶融させた後、急冷凝固することにより白層化して形成される。熱ビームには、火炎、電子ビームまたはレーザビーム等が使用される。溶融凝固層44の厚みは、火炎に曝露される時間や火炎温度、電子ビームやレーザビームの照射条件等で調整される。
熱処理工程は、溶融凝固層44が形成された歯先部43に焼入れ処理と焼戻し処理とを行って、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部20を形成し、溶融凝固層44を、歯先基部20の表面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層22にする工程である。
溶融凝固層44が形成された予備歯形42の歯先部43に焼入れ処理と焼戻し処理とを行うことにより、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部20が形成され、溶融凝固層44が焼入れ処理と焼戻し処理されて、歯先基部20の表面に、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層22が形成される。焼入れ処理と焼戻し処理との熱処理により、金属組織がマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層44は、金属組織がマルテンサイトからなる炭化物微細化層22になり、靭性等が向上する。
予備歯形42の歯先部43のすくい面46に形成された溶融凝固層44は、熱処理工程により炭化物微細化層22となり、歯先部43の逃げ面48にも溶融凝固層44が形成されている場合には、逃げ面48に形成された溶融凝固層44も炭化物微細化層22となる。炭化物微細化層22は、溶融凝固層44と略同じ厚みで形成される。予備歯形42における歯先部43のすくい面46に溶融凝固層44を平均厚み10μm以上50μm以下で形成した場合には、炭化物微細化層22は、歯先基部20のすくい面24に平均厚み10μm以上50μm以下で形成される。また、予備歯形42における歯先部43の逃げ面48に溶融凝固層44を平均厚み30μm未満で形成した場合には、炭化物微細化層22は、歯先基部20の逃げ面26に平均厚み30μm未満で形成される。
歯部基材34に高速度工具鋼を用いた場合には、焼入れ処理と焼戻し処理とは、JIS G4403に規定されている高速度工具鋼の一般的な熱処理条件を用いることができる。例えば、焼入れ処理は、1190℃から1270℃の油冷で行われ、焼戻し処理は、550℃から560℃の空冷で行われる。なお、焼戻し処理は、複数回行われることが好ましい。例えば、高速度工具鋼にSKH59を用いた場合には、1190℃の油冷で焼入れ処理され、550℃の空冷で焼戻しされる。なお、焼入れ処理と焼戻し処理とを行う熱処理装置には、一般的な金属材料の焼入れ処理または焼戻し処理に使用される熱処理炉を用いることができる。
更に、熱処理工程後にショットブラスト加工を行って歯先部の先端を削ることにより、歯先部の先端を略円弧状に形成するショットブラスト工程を備えてもよい。ショットブラスト加工には、一般的に金属加工に使用されるショットブラスト装置を用いることができる。
また、熱処理工程後に、炭化物微細化層22の表面に、炭化物微細化層22よりも硬度が高い硬質皮膜を形成する硬質皮膜形成工程を備えることが好ましい。TiNやTiC等の硬質皮膜は、例えば、物理蒸着法(PVD)や化学蒸着法(CVD)等のコーティング法で形成される。勿論、炭化物微細化層22が設けられていない歯先基部20の表面にも硬質皮膜を被覆してもよい。
以上、上記構成の帯鋸刃によれば、複数の歯の歯先部は、工具鋼で形成され、長径が2μm以上の炭化物を含むマルテンサイトからなり、耐摩耗性に優れる歯先基部と、歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μmより小さい炭化物を含むマルテンサイトからなり、耐チッピング性に優れる炭化物微細化層と、を有しているので、歯先部の逃げ面よりチッピングが生じやすい歯先部のすくい面側の耐チッピング性を向上させることにより、帯鋸刃における耐チッピング性と耐摩耗性とを備えることができる。
上記構成の帯鋸刃によれば、炭化物微細化層は、歯先基部のすくい面に平均厚み10μm以上50μm以下で形成されるので、歯先部のすくい面の耐チッピング性をより向上させることができる。
上記構成の帯鋸刃によれば、歯先部の逃げ面にも、炭化物微細化層が、例えば、平均厚み30μm未満で形成されるので、歯先部における逃げ面の耐チッピング性を耐摩耗性を損なわずに向上させることができる。
上記構成の帯鋸刃によれば、歯先部は、炭化物微細化層の表面に形成され、炭化物微細化層よりも硬度が高い硬質皮膜を有するので、歯先部の耐摩耗性を更に向上させて、帯鋸刃の切断性能をより向上させることができる。
(実施例)
次に、帯鋸刃について耐チッピング性及び耐摩耗性の評価を行った。耐チッピング性及び耐摩耗性の評価に使用した7種類の帯鋸刃の製造方法について説明する。
まず、実施例1から実施例5の帯鋸刃の製造方法について説明する。実施例1から実施例5の帯鋸刃では、バネ鋼で胴部基材を形成し、JIS G4403に規定されている高速度工具鋼SKH59で歯部基材を形成し、胴部基材と歯部基材とを溶接して帯鋸刃基材を形成した。
次に、帯鋸刃基材をレーザ加工することにより、歯切り加工と溶融凝固層形成とを一度に行った。レーザ加工には、炭酸ガスレーザ装置を使用した。そして、帯鋸刃基材の歯部基材に対して集光されたレーザビームを照射して溶断により歯切り加工するとともに、溶融した歯先部表面を空冷により急冷凝固して溶融凝固層を形成した。レーザ加工条件は、レーザ出力を3800Wから4000Wとし、レーザビームのビーム径を0.3mmから0.5mmとし、レーザ加工ヘッドの移動速度を2000mm/minから9000mm/minとした。ここで、溶融凝固層をより厚く形成する場合には、より遅い移動速度を選択した。また、急冷凝固時の冷却速度を100℃/min以上とした。
実施例1の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に20μmの溶融凝固層を形成し、歯先部の逃げ面に10μmの溶融凝固層を形成した。実施例2の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に50μmの溶融凝固層を形成し、歯先部の逃げ面に20μmの溶融凝固層を形成した。実施例3の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に10μmの溶融凝固層を形成し、歯先部の逃げ面に10μmの溶融凝固層を形成した。実施例4の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に80μmの溶融凝固層を形成し、歯先部の逃げ面に30μmの溶融凝固層を形成した。実施例5の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に5μmの溶融凝固層を形成し、歯先部の逃げ面に5μmの溶融凝固層を形成した。
溶融凝固層の形成を行った後、焼入れ処理と焼戻し処理とを行った。焼入れ処理については、焼入温度1190℃、油冷で行った。また、焼戻し処理については、焼戻し温度550℃、空冷で2回行った。このように焼入れ焼戻し処理を行うことにより、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部を形成し、溶融凝固層を、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層にして帯鋸刃を製造した。
次に、比較例1から比較例2の帯鋸刃の製造方法について説明する。比較例1の帯鋸刃では、バネ鋼で胴部基材を形成し、高速度工具鋼SKH59で歯部基材を形成し、胴部基材と歯部基材とを溶接して帯鋸刃基材を形成した。比較例2の帯鋸刃では、SKH59の合金組成をベースとし、炭素量を低減したマトリックスハイスを歯部基材に用いて胴部基材と歯部基材とを溶接し、帯鋸刃基材を形成した。比較例1から比較例2の帯鋸刃では、帯鋸刃基材をフライス加工して溶融凝固層を形成せずに歯切り加工した。そして、歯切り加工後に、歯先部の焼入れ処理と焼戻し処理とを行った。なお、焼入れ条件と焼戻し条件については、実施例1から実施例5の帯鋸刃等と同一の熱処理条件で実施した。したがって、比較例1から比較例2の帯鋸刃では、歯先部のすくい面と逃げ面とには炭化物微細化層が形成されていない。比較例1の帯鋸刃における歯先部の金属ミクロ組織は、上述した図12に示す通常ハイスを使用した帯鋸刃の金属組織と略同じであり、比較例2の帯鋸刃における歯先部の金属ミクロ組織は、上述した図13に示すマトリックスハイスを使用した帯鋸刃の金属組織と略同じである。なお、帯鋸刃の寸法と、歯先の角度と、アサリ加工と、は、実施例1から実施例5の帯鋸刃と、比較例1から比較例2の帯鋸刃とで同一とした。
次に、各帯鋸刃における炭化物微細化層の厚さの測定方法について、実施例1の帯鋸刃に基づいて説明する。帯鋸刃の歯先部の金属ミクロ組織観察を行うため、歯先部を埋込樹脂等に埋め込んだ後、研磨して腐食液で腐食した。腐食液には、5%硝酸アルコール溶液を使用した。金属組織観察には、金属顕微鏡等の光学顕微鏡を用いた。金属ミクロ組織観察は、1000倍等の倍率で行った。
図5は、実施例1の帯鋸刃における歯先部の光学顕微鏡写真である。図6は、実施例1の帯鋸刃における歯先部の炭化物微細化層を拡大した光学顕微鏡写真である。炭化物微細化層は、図5及び図6に示す囲み線で囲まれた領域で示され、明らかに歯先基部の結晶粒径より小さい結晶粒径で形成されている。また、歯先基部には、長径が2μm以上の炭化物(粒子状の白い部分)が形成されており、炭化物微細化層には、長径が2μmより小さく、樹枝状に微細化された炭化物(帯状の白い部分)が形成されているのが認められる。このような金属ミクロ組織観察により、炭化物微細化層を明確に判別することができる。
図7は、炭化物微細化層の厚みの測定方法を示す光学顕微鏡写真である。炭化物微細化層の厚み測定は、図7に示すように、歯先部の先端から帯幅方向(帯鋸刃の長手方向に対して直交方向)に0.15mmから0.20mmの領域が観察可能な測定視野(倍率で400倍から500倍)で行った。炭化物微細化層の厚みを、歯先部表面のすくい面または逃げ面に対して直交方向の長さで測定した。また、炭化物微細化層の厚みを、すくい面側と逃げ面側とで各々5箇所測定し、これらの厚みを各々平均して求めた。
図7に示すように、すくい面側における炭化物微細化層の厚みは、歯先部の先端から順に22.1μm、19.6μm、20.2μm、19.3μm、17.8μmであり、これら5箇所の厚みを平均して20μmとした。また、逃げ面側における炭化物微細化層の厚みは、歯先部の先端から順に11.7μm、11.5μm、8.6μm、9.8μm、8.7μmであり、これら5箇所の厚みを平均して10μmとした。また、他の帯鋸刃における炭化物微細化層の厚みについても、実施例1の帯鋸刃と同様な測定方法で炭化物微細化層の厚みを測定した結果、実施例2の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に平均厚み50μmで形成され、歯先部の逃げ面に平均厚み20μmで形成され、実施例3の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に平均厚み10μmで形成し、歯先部の逃げ面に平均厚み10μmで形成され、実施例4の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に平均厚み80μmで形成され、歯先部の逃げ面に30μmで形成され、実施例5の帯鋸刃では、歯先部のすくい面に平均厚み5μmで形成され、歯先部の逃げ面に平均厚み5μmで形成された。
次に、耐チッピング性の評価試験方法について説明する。
耐チッピング性は、帯鋸刃を帯鋸盤に取り付けた後、被削材を切削加工し、切削加工後のチッピング数(歯欠けした歯数)に基づいて評価した。耐チッピング性の試験条件は、次のとおりである。
(耐チッピング性の試験条件)
帯鋸盤:(株)アマダ製HA400
鋸刃サイズ:帯幅41mm×帯厚1.3mm×鋸刃長さ4570mm、2/3P
被削材鋼種:SS400のH形鋼(幅194mm×高さ150mm×6/9)
鋸速:40m/min
切削率:26cm/min(切断時間1分30秒)
そして、上記試験条件で5カットした後のチッピング数で評価した。図8は、耐チッピング性の評価試験結果を示す図である。実施例1の帯鋸刃におけるチッピング数は5であり、実施例2の帯鋸刃におけるチッピング数は2であり、実施例3の帯鋸刃におけるチッピング数は8であり、実施例4の帯鋸刃におけるチッピング数は2であり、実施例5の帯鋸刃におけるチッピング数は25であり、比較例1の帯鋸刃におけるチッピング数は45であり、比較例2の帯鋸刃におけるチッピング数は4であった。
この評価試験結果より、実施例1から実施例5の帯鋸刃は、比較例1の帯鋸刃より優れた耐チッピング性を有していた。また、実施例1から実施例4の帯鋸刃では、チッピング数が10以下であり、比較例2の帯鋸刃と略同等の耐チッピング性を有しているとともに、実施例5の帯鋸刃より優れた耐チッピング性を有していた。また、実施例2の帯鋸刃と、実施例4の帯鋸刃とは、同等の耐チッピング性を有していた。このように、歯先部のすくい面に炭化物微細化層を有する帯鋸刃では、比較例1の帯鋸刃より明らかに良好な耐チッピング性が得られた。また、実施例1から実施例4の帯鋸刃より実施例5の帯鋸刃の耐チッピング性が低下することと、実施例2の帯鋸刃と実施例4の帯鋸刃とは同等の耐チッピング性を有していることから、歯先部のすくい面に形成される炭化物微細化層の平均厚みは、10μm以上50μm以下が好ましいことがわかった。
次に、耐摩耗性の評価試験方法について説明する。
耐摩耗性は、帯鋸刃を帯鋸盤に取り付けた後、被削材を切削加工し、切削加工後における歯先部の逃げ面摩耗長さに基づいて評価した。耐摩耗性の試験条件は次のとおりである。
(耐摩耗性の試験条件)
帯鋸盤:(株)アマダ製HA400
鋸刃サイズ:帯幅41mm×帯厚1.3mm×鋸刃長さ4570mm、2/3P
被削材鋼種:SKD11(Φ252mm)
鋸速:33m/min
切削率:24cm/min(切断時間20分47秒)
上記試験条件で10カットした後、歯先部の逃げ面摩耗長さで評価した。図9は、逃げ面摩耗長さの測定方法を示す図である。逃げ面摩耗長さの測定は、10個の歯について行い、1つの歯について歯先部の逃げ面における一方の摩耗長さ(A)と他方の摩耗長さ(B)との2箇所を測定し、合計20箇所について行った。そして、逃げ面摩耗長さを、20箇所の平均値で求めた。
図10は、耐摩耗性の評価試験結果を示す図である。実施例1の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.301mmであり、実施例2の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.333mmであり、実施例3の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.310mmであり、実施例4の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.394mmであり、実施例5の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.306mmであり、比較例1の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.308mmであり、比較例2の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さは0.442mmであった。
この評価試験結果より、実施例1から実施例5の帯鋸刃では、比較例2の帯鋸刃より優れた耐摩耗性を有していた。また、実施例1から実施例3の帯鋸刃と、実施例5の帯鋸刃とは、比較例1の帯鋸刃における歯先部の逃げ面摩耗長さを基準としたときの摩耗長さの増加率が10%以下であり、比較例1の帯鋸刃と略同等の耐摩耗性を有しているとともに、実施例4の帯鋸刃より優れた耐摩耗性を有していた。このように、歯先部の逃げ面に炭化物微細化層を平均厚み20μm以下で設けた場合には、比較例1の帯鋸刃と略同等の耐摩耗性が得られた。したがって、歯先部の逃げ面には、炭化物微細化層を平均厚み30μm未満で形成することが好ましく、炭化物微細化層を平均厚み20μmで形成することがより好ましいことがわかった。それにより、歯先部における逃げ面の耐摩耗性を損なうことなく、耐チッピング性を向上させることができる。
また、実施例1から実施例3の帯鋸刃と同じ製造方法で製造した後、歯先部の逃げ面に形成された炭化物微細化層を研磨加工により除去した帯鋸刃について、上述した耐チッピング性評価試験方法及び耐摩耗性評価試験方法と同じ評価試験方法で耐チッピング性と耐摩耗性とを評価した。その結果、耐チッピング性については、歯先部の逃げ面に形成された炭化物微細化層を除去した帯鋸刃についても、上述した実施例1から実施例3の帯鋸刃と同等の耐チッピング性が得られた。また、耐摩耗性については、比較例1の帯鋸刃と同等の耐摩耗性が得られた。
上記の耐チッピング性試験と耐摩耗性試験の試験結果から、比較例1の帯鋸刃では、耐摩耗性に優れるが耐チッピング性が劣り、比較例2の帯鋸刃では、耐チッピング性に優れるが耐摩耗性が劣るのに対して、実施例1から実施例5の帯鋸刃では、いずれの帯鋸刃も耐チッピング性と耐摩耗性とを備えていることが明らかになった。また、実施例1から実施例3の帯鋸刃については、耐チッピング性が比較例2の帯鋸刃と略同等であり、耐摩耗性が比較例1の帯鋸刃と略同等であり、より優れた耐チッピング性と耐摩耗性とを備えていることがわかった。
次に、実施例1の帯鋸刃における歯先部にショットブラスト加工を行った。ショットブラスト加工は、帯鋸刃に用いられる一般的なショットブラスト条件を用いた。図11は、ショットブラスト加工後における帯鋸刃の歯先部の光学顕微鏡写真である。歯先部の先端をショットブラスト加工することにより、歯先部の先端に形成された炭化物微細化層が丸く削り取られ、歯先部の先端が略円弧状に形成される。歯先部の逃げ面に形成された炭化物微細化層もショットブラスト加工により一部削り取られ、歯先部の先端から順に、3.4μm、4.1μm、3.0μm、3.5μm、5.5μmであり、平均の厚みが10μm未満で形成されている。炭化物微細化層形成後に歯先部をショットブラスト加工することにより、歯先部の先端が略円弧状に形成されるので、帯鋸刃の耐チッピング性を更に向上させることができる。
10 帯鋸刃
12 胴部
14 歯
16 歯先
20 歯先基部
22 炭化物微細化層
24 すくい面
26 逃げ面
28 歯先の先端部
30 帯鋸刃基材
32 胴部基材
34 歯部基材
42 予備歯形
44 溶融凝固層

Claims (7)

  1. 複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃であって、
    前記複数の歯の歯先部は、工具鋼で形成され、
    長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部と、
    前記歯先基部の表面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層と、
    を有し、
    前記炭化物微細化層は、前記歯先基部のすくい面に形成されることを特徴とする帯鋸刃。
  2. 請求項1に記載の帯鋸刃であって、
    前記炭化物微細化層は、前記歯先基部のすくい面に平均厚み10μm以上50μm以下で形成されることを特徴とする帯鋸刃。
  3. 請求項1または2に記載の帯鋸刃であって、
    前記炭化物微細化層は、前記歯先基部の逃げ面に形成されることを特徴とする帯鋸刃。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の帯鋸刃であって、
    前記歯先部は、前記炭化物微細化層の表面に形成され、前記炭化物微細化層よりも硬度が高い硬質皮膜を有することを特徴とする帯鋸刃。
  5. 複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃の製造方法であって、
    胴部材料で形成される胴部基材と、工具鋼で形成される歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する接合工程と、
    前記帯鋸刃基材に熱ビームを照射し、溶断により歯切り加工して複数の予備歯形を形成するとともに、前記複数の予備歯形の歯先部を急冷凝固して、前記歯先部のすくい面にマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層を形成する溶融凝固層形成工程と、
    前記溶融凝固層が形成された歯先部に焼入れ処理と焼戻し処理とを行って、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部を形成し、前記溶融凝固層を、前記歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層にする熱処理工程と、
    を備えることを特徴とする帯鋸刃の製造方法。
  6. 複数の歯からなる歯群を備える帯鋸刃の製造方法であって、
    胴部材料で形成される胴部基材と、工具鋼で形成される歯部基材とを接合して帯鋸刃基材を形成する接合工程と、
    前記帯鋸刃基材を歯切り加工して複数の予備歯形を形成する歯切り工程と、
    前記複数の予備歯形の歯先部に熱ビームを照射し、歯先部表面を溶融させてから急冷凝固して、前記歯先部のすくい面にマルテンサイトと残留オーステナイトとからなる溶融凝固層を形成する溶融凝固層形成工程と、
    前記溶融凝固層が形成された歯先部に焼入れ処理と焼戻し処理とを行って、長径が2μm以上の炭化物を含み、マルテンサイトからなる歯先基部を形成し、前記溶融凝固層を、前記歯先基部のすくい面に形成され、長径が2μm以上の炭化物を含まず、長径が2μmより小さい炭化物を含み、マルテンサイトからなる炭化物微細化層にする熱処理工程と、
    を備えることを特徴とする帯鋸刃の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の帯鋸刃の製造方法であって、
    前記溶融凝固層形成工程は、前記溶融凝固層を平均厚み10μm以上50μm以下で形成することを特徴とする帯鋸刃の製造方法。
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