JP2010279264A - Egfr遺伝子変異検出プライマーセット、それを含むegfr遺伝子変異検出キット、およびそれを用いてegfr遺伝子変異検出を行うための核酸増幅装置 - Google Patents

Egfr遺伝子変異検出プライマーセット、それを含むegfr遺伝子変異検出キット、およびそれを用いてegfr遺伝子変異検出を行うための核酸増幅装置 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能とする。
【解決手段】哺乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットであって、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性の欠失変異を検出する第一のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性の点変異を検出する第二のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性の点変異を検出する第三のプライマーセットと、からなる群から選ばれる1種以上のプライマーセットを含む、EGFR変異検出用プライマーセット。
【選択図】図13

Description

本発明は、EGFR遺伝子変異検出プライマーセット、それを含むEGFR遺伝子変異検出キット、およびそれを用いてEGFR遺伝子変異検出を行うための核酸増幅装置に関する。
肺癌は癌死亡原因の1位を占める難治性疾患であるが、近年癌細胞の重要分子を標的としてこれを特異的に阻害する「分子標的治療薬」の開発がさかんになっている。なかでもゲフィチニブ(商品名:イレッサ)は上皮成長因子受容体(EGFR)の特異的な阻害剤であり2002年7月本邦で世界に先駆けて本邦で認可された分子標的治療薬である。本薬は臨床的には投与開始後1ヶ月以内にドラマチックな臨床所見や画像の改善が得られる症例がある一方で、全く反応しない症例や、致命的な肺障害をおこす症例が存在する。
したがってどの症例に投与すべきかの感受性予測因子が強く求められてきたが、2004年4月ボストンの2グループによりEGFR遺伝子変異が有力な効果予測因子であることが報告された。このEGFR遺伝子変異はEGFRチロシンキナーゼドメインのエクソン18〜21に集中しており、ことにexon19のdeletion変異とexon 21のpoint mutation変異の頻度が高い(図1)。ことにイレッサ感受性症例の多い本邦ではこの2つの変異が60%以上(文献によっては90%以上)占めることが知られるようになっている(表1)。
従ってこれら2つの変異を検出するだけでおおかたのイレッサ感受性患者を選択できることになる。そこで最近では個々の症例でこの遺伝子変異を解析して、遺伝子変異がある症例のみにイレッサを使用すること行われるようになっている。その解析方法として現在までリアルタイムPCRとプローブを用いたいくつかの方法が開発され、実用化されている(特許文献1〜4、非特許文献1〜2)。
特開2006−288353号公報 特開2007−97486号公報 特開2007−252312号公報 特表2008−502328号公報
「Light Cyclerを用いた上皮成長因子受容体遺伝子変異検出の試み」、佐々木 秀文、名市大医誌、57巻、3号、2006、p.67〜71 「EGFR遺伝子変異検出とその実用化」、萩原 弘一、Annual Review 呼吸器、2008、p.183〜189
しかしながら、上記文献記載の従来技術には、Taqmanプローブなどの高価なプローブやリアルタイムPCR装置が必要で、しかも現在のPCRには1時間上を要することから、診察中に患者に検査結果を伝えることは断念し、外部の検査機関に検査依頼をだし、結果を得るまで7日以上を要しているのが現状である。これは肺癌治療の使用薬剤の決定における隘路となっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、これらEGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、このようなプライマーセットを含むEGFR遺伝子変異検出のためのキットを用いることで、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能とすることである。さらに、本発明のもう一つの目的は、このようなプライマーセットを用いて迅速かつ正確なEGFR遺伝子変異検出を可能にする核酸増幅装置を提供することである。
本発明によれば、哺乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットが提供される。このプライマーセットは、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性のE746−A750欠失変異を検出する第一のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性のL858R点変異を検出する第二のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性のT790M点変異を検出する第三のプライマーセットと、からなる群から選ばれる1種以上のプライマーセットを含む。
このプライマーセットによれば、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを用いているため、特殊なプローブを必要とせず、通常の核酸増幅反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能であり、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価かつ迅速にどこでも実行可能なものとなる。そのため、現在問題となっている外部検査機関への依頼による診断の遅れを解決するために、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
また、本発明によれば、上記のEGFR変異検出用プライマーセットと、さらに、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、を含む、EGFR変異検出用キットが提供される。
このEGFR変異検出用キットによれば、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを含んでいるため、特殊なプローブを必要とせず、同様にEGFR変異検出用キットに含まれているDNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、を用いて、通常の核酸増幅反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能であり、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価かつ迅速にどこでも実行可能なものとなる。そのため、現在問題となっている外部検査機関への依頼による診断の遅れを解決するために、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
また、本発明によれば、上記のEGFR変異検出用プライマーセットを用いてEGFR変異検出を検出するための核酸増幅装置であって、核酸増幅に必要な熱源と、核酸増幅反応容器と、熱源が前記核酸増幅反応容器の反応部を圧接するための圧接部と、を備える、核酸増幅装置が提供される。
この核酸増幅装置によれば、核酸増幅に必要な熱源と、核酸増幅反応容器と、熱源が前記核酸増幅反応容器の反応部を圧接するための圧接部と、を備えるため、通常の核酸増幅装置の場合に比べて遙かに高速に、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを用いて、EGFR遺伝子の変異を検出できるため、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価かつ迅速にどこでも実行可能なものとなる。そのため、現在問題となっている外部検査機関への依頼による診断の遅れを解決するために、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
本発明によれば、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを用いているため、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみで哺乳動物のEGFR遺伝子変異を検出可能である。そのため、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価にどこでも実行可能なものとなる。その結果、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
EGFR遺伝子のEGFRチロシンキナーゼドメインのエクソン18〜21の構造を示した概念図である。 実施例におけるexon19 deletion検出プライマーの設計方針(A)と通常PCR装置での温度条件(B)を示すDeletion mutation検出プライマーの設計図である。 実施例において設計したDeletion mutation検出プライマーの特異性を示すための電気泳動写真である。 実施例において設計したDeletion mutation検出プライマーの感度を示すための電気泳動写真である。 実施例におけるexon21 point mutation検出プライマーの設計方針である。 実施例において設計したexon21 point mutation検出プライマーの特異性および感度を示すための電気泳動写真である。 実施例において用いた超高速PCRに最適化した反応液組成および温度条件について説明するための図である。 実施例において用いたexon19 deletion 検出 primerによる検出結果の特異性を説明するためのグラフである。 実施例において用いたexon19 deletion 検出 primerによる検出結果の感度を説明するためのグラフである。 実施例において用いたexon21 point mutation検出プライマーの検出結果の特異性を説明するためのグラフである。 実施例において用いたマルチプレックスPCR法の条件について、通常のPCR法の条件と比較して説明するための概念図である。 通常のPCR法による検出結果を示す電気泳動図である。 3種類のプライマーにて同時にマルチプレックスPCR法による増幅を行った結果を示す電気泳動図である。 実施例において用いたPCR装置の概略構成を示す図である。 実施例において用いたPCR装置が備えるヒートブロックの構造を模式的に示す図である。
〔用語の説明〕
本実施形態において、「上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor;以下、EGFRとも記載する)」とは、上皮成長因子(EGF)の受容体を意味する。このEGFRは、チロシンキナーゼ型受容体であり、細胞膜を貫通して存在する分子量170kDaの糖タンパクである。このEGFRは、HER1、ErbB1とも呼ばれる。
本実施形態において、「ゲフィチニブ(Gefitinib)」とは、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを選択的に阻害する内服抗がん剤を意味する。ゲフィチニブは、癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬の一種である。ゲフィチニブは、白色?黄白色の粉末で、IUPAC命名法ではN−(3−chloro−4−fluoro−phenyl)−7−methoxy−6−(3−morpholin−4−ylpropoxy)quinazolin−4−amine、CAS登録番号は184475−35−2、化学式はC2224ClFN、分子量は446.902g/molである。ゲフィチニブ製剤は、手術不能又は再発した非小細胞肺癌に対する治療薬として用いられ、製造・販売元はアストラゼネカ株式会社であり、商品名は「イレッサR (Iressa(R))」という。
また、本実施形態における「ヌクレオチド」もしくは「核酸」とは、天然に存在する塩基、糖及び糖間結合からなるヌクレオチド又はヌクレオシド(RNAおよびDNAの双方を含む)のことをいい、そのオリゴマー(オリゴヌクレオチド、例えば、2から100塩基程度)及びポリマー(ポリヌクレオチド、例えば、100塩基以上)を含む総称である。本実施形態に係るヌクレオチドもしくは核酸は、同様に機能する天然に存在しないモノマー、蛍光分子等や放射性同位体で標識されたモノマー、あるいはこれらを含むオリゴマー又はポリマーを含む。
また、本実施形態における「プライマー」とは、核酸増幅反応において、鋳型とハイブリダイズし、核酸増幅反応を開始するのに必要なヌクレオチドのことをいう。核酸増幅反応において増幅を所望する鋳型を基に、その鋳型とハイブリダイズし、核酸増幅反応を行えるように、例えば、特異的なPCR法、LAMP法、ICAN法、NASBA法、TMA法、3SR法、TRC法等での生成物(鎖長あるいは配列において)を生成可能なように、好ましくはプライマー自身がその鋳型特異的な配列を含むように、設計される。また、一般的なプライマーは、これに限られないが、通常、15塩基−100塩基、好ましくは15塩基−35塩基の鎖長を有するように設計される。
プライマーの3’側の領域は鋳型鎖に対し相補的であることが好ましいが、5’側には制限酵素認識配列やタグなどの機能的な配列を付加することも可能である。また、後述するように、例えば核酸増幅法としてICAN法を用いる場合などにおいては、プライマーはDNAだけでなくRNAを含むか、あるいは必要に応じてRNAのみで構成されていてもよい。特に本実施形態に好適なプライマーについては、後述する。PCR法又はその他の協奏的核酸増幅反応においては、一般に、フォワードプライマー(センスプライマー)とリバースプライマー(アンチセンスプライマー)とからなる一組、あるいはそれ以上のプライマーを含むプライマーセットが用いられる。
また、本実施形態において、「特異的にハイブリダイズする」とは、あるヌクレオチドに対し、別のヌクレオチドが水素結合等を介し、相補的に結合し、比較対照とすべきヌクレオチドには同条件では結合しない状態をいう。必ずしも、他の全てのヌクレオチドに対して特異的である必要は無く、使用目的に応じた特異性を有していればよい。例えば、で哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性のT790M点変異を検出するためには、T790M点変異を含む領域以外のゲノムDNAのヌクレオチドに対して結合しなければ、「特異的にハイブリダイズする」といってもよい。
ハイブリダイズの条件は、そのヌクレオチドの使用目的に応じて選択することができる。例えば、PCR法に用いるプライマーとしてのヌクレオチドであれば、PCR法でのアニーリング時の条件でハイブリダイズするように選択される。また、核酸プローブとして用いられる時には、そのハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイズするように選択される。好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズするものが選択される。
また、本実施形態における「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を含む条件、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるものや、その適宜改変したものが挙げられるが、これに限られない。また、ハイブリダイゼーション条件の温度については、用いる核酸増幅反応あるいはハイブリダイズ反応に応じて定めることができるが、例えば、42℃、43℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、68℃、70℃、72℃である。
また、本実施形態において、「核酸増幅」法としては、標的の核酸を増幅させる方法として公知のものならば、何れの方法を用いてもよいが、プライマー及びプライマーセットを用いる方法として、例えば、PCR法、LAMP法、ICAN法あるいは他の核酸の協奏的核酸増幅方法が用いられる。
また、本実施形態において、増幅産物の検出法としては、核酸を検出するための方法として公知のものならば、何れの方法を用いてもよい。例えば、増幅後の核酸を電気泳動して検出しても、検出可能な標識を結合させた核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション法を用いて検出してもよいが、多数検体処理、自動化、再現性や二次汚染等の点で有利な、以下に記す方法を用いてもよい。
たとえば、簡便にDNAを検出する方法として、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブを用いることができる。このようなプローブを用いた検出方法は、標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分がその相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブの存在下、核酸増幅方法を実施し、蛍光特性の変化を測定するもので、この方法により一定温度、一段階かつ密閉容器内で核酸増幅および検出(測定)を同時かつ迅速・簡便に実施することが可能となる。
増幅核酸の検出方法は、上記に限られず、例えば、LAMP法では、副産物のピロリン酸マグネシウムによる白濁を指標に検出してもよく、増幅核酸を直接測定しない方法等であっても、それぞれの核酸増幅方法に適用可能な公知の増幅産物検出方法であれば、何れの方法でも用いることができる。
また、本実施形態において、「標識される」とは、生物学及び医学の分野で用いることのできる任意のシグナル生成手段で標識されていることをいう。このような検出可能なシグナル生成手段による標識としては、例えば、α−33Pなどの放射性標識、蛍光性のインターカレーターなどによる蛍光色素標識、有色化合物などによる色素標識、あるいはHRPやAPなどの酵素標識が挙げられるが、好ましくは蛍光色素標識である。また、相補的二本鎖を形成することで標識の特性が変化するものがより好ましく、更に好ましくは、相補的二本鎖を形成することで蛍光特性の変化するインターカレーター性蛍光色素標識である。当業者であれば、各種標識試薬・キットの使用法又は常法に従い、これらの標識を行うことは容易に可能である。
また、本実施形態における「相同性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要な場合は間隙を導入した上で、目的の塩基と同一である候補配列中の核酸塩基数のパーセントとして定義される。この際に、同一の塩基(チミンとウラシルも同一とみなす)を有するDNAとRNAとは結合特性が非常に近いため、同一の核酸塩基として定義される。相同性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)の提供するblast、blast2seq又はALIGNのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能であるが、blast2seqにおいて標準的な初期パラメーターを用いて計算された値などを用いることもできる。
なお、核酸増幅のためのプライマーやその他のプローブなどにおいては、ある塩基配列の代わりに、その塩基配列と、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上あるいは98%以上(100%以下)の相同性を有する塩基配列、あるいは、その塩基配列に対し、1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、又は数塩基の置換・欠失・挿入がなされた塩基配列を用いることもできる(相同性の定義の際と同様に、同一の塩基を有するRNAとDNAの置換は、ここでの置換・欠失・挿入には含まれない)。
〔実施形態1〕
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態に係るEGFR変異検出システムは、高速の核酸増幅装置と、哺乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットと、を有する哺乳動物のEGFR変異を検出するシステムである。すなわち、本実施形態に係るEGFR変異検出システムは、(1)高速の核酸増幅装置という機械的な側面の構成と、(2)乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットという生物・化学的な側面の構成と、をともに有する融合技術分野の発明であると言うことができる。
(1)機械的な側面の構成について
そこで、まずは、本実施形態に係るEGFR変異検出システムのうち、(1)高速の核酸増幅装置という機械的な側面の構成について説明をする。図14は、本実施形態において用いる核酸増幅装置の概略構成を示す図である。図15は、本実施形態において用いる核酸増幅装置が備えるヒートブロックの構造を模式的に示す図である。本実施形態において用いる核酸増幅装置1は、複数の温度領域3a、3bを有する加熱板2と、加熱板2の加熱面上で摺動しながら回転するディスクチップ10と、を備えている。また、この核酸増幅装置1は、ディスクチップ10に設けられている複数のサンプルウェル13と、加熱板2の複数の温度領域3a、3bの温度を制御する温度制御部4と、ディスクチップの回転数を制御する回転制御部5と、を備えている。また、このEGFR変異検出システムには、さらに、プライマーに付加された各種標識(たとえば蛍光標識)を検出するための検出器6が備えられている。
このように、この核酸増幅装置1によれば、それぞれ異なる温度に調整された複数の温度領域3a、3bを形成することができる。例えば、解離反応やアニーリング反応等のための反応温度に調整された、複数の温度領域3a、3bを一つの核酸増幅装置1中に形成することができる。そのため、この核酸増幅装置1では、ディスクチップ10を、当該ディスクチップ10全体を複数の温度領域3a、3bで同時に加温する状態で搭載することができる。これにより、当該状態を維持したまま、ディスクチップ10の中の核酸増幅反応液を貯留した複数のサンプルウェル13を、順次それぞれの上記温度領域3a、3b中に配置することができる。つまり、異なる温度に調整された少なくとも二つ以上の温度領域3a、3bによってディスクチップ10全体を加温する状態を維持しながら、核酸増幅反応液をそれぞれの上記温度領域3a、3bで順次加温させることで、解離反応からアニーリング反応等のように、順次反応を移行させることができる。これにより、核酸増幅反応液の加温効率を向上させることができる。
また、この核酸増幅装置で用いるディスクチップ10のPCR反応用サンプルウェルは、PCR反応液が0.9mm以下の液膜になるように構成されるのが好ましく、後述の実施例では、液厚さ0.6mmの膜状にPCR反応液を充填し、厚さ0.1mmのフッソ樹脂製の耐熱かつやわらかいフィルムでシールしたものを用いている。
ここで、本実施形態によって核酸増幅反応液の加温効率を向上させることができる理由を、95℃の解離反応の後、65℃に冷却してアニーリング反応及び伸長反応を行ない、ディスクチップ10全体を95℃の温度領域3a及び65℃の温度領域3bによって同時に加温する場合を例にして説明する。
まず、解離反応時、核酸増幅反応液を貯留したサンプルウェル13及びその周囲は95℃に加温される。上記の構成によれば、ディスクチップ10には65℃で加温されている領域も存在する。そのため、当該ディスクチップ10を95℃のみで加温する場合に比べて、核酸増幅反応液を貯留したサンプルウェル13周囲に形成される95℃の領域は少なくなる。つまり、当該ディスクチップ10上には65℃又はこれに近い温度の領域が増える。これにより、アニーリング反応時には、冷却すべき領域も狭く、また、冷却のために吸収すべき熱量も低減できる。そのため迅速に核酸増幅反応液を65℃に調整することができる。このように、ディスクチップ10全体を、複数の温度領域3a、3bで加温する状態を維持することで、次の反応のために核酸増幅反応液を加温するとき、前回核酸増幅反応液に加温した温度による影響を抑えることができる。これにより、核酸増幅反応液の温度調整に必要な熱量を少なくすることができ、迅速に温度調整を行なうことができる。
そして、このようなサーマルサイクルによって核酸増幅された核酸断片は、上記のプライマーセットに蛍光標識などの各種標識が付加されている場合などには、その蛍光を検出するための検出器6がリアルタイムにその標識を検出し、核酸増幅の様子を記録するしくになっている。そのため、この核酸増幅装置1によれば、非常に短時間に核酸増幅の様子が検出できることになる。
この構成における核酸増幅装置がPCR装置の場合は、EGFR変異を迅速に検出する観点から、反応液の温度をPCR反応に必要なアニーリング温度・伸長温度・乖離温度という3温度に迅速に変化させるための少なくとも二つのあらかじめ必要な温度に設定された熱源に繰り返し接触させる方式か、厚さ0.9mm以下の薄い液膜状の反応部でPCR反応を行う方式か、あるいはその両方式を備えた装置であることが好ましい。PCR反応は、反応液の温度を50度程度のアニーリング温度と70度程度の伸長温度と95度程度の乖離温度(時としてアニーリング温度と伸長温度を同じく設定する場合がある)の間の昇温と冷却を数十回繰り返すことで、反応液に添加されたプライマーによって特定の配列の遺伝子を増幅するものである。通常のPCR装置は、この反応に1時間以上を要し前述のようにこの遅さが肺がん患者への抗がん剤処方適否を診察室に居る間に判断するPOCの実施を困難にしている。
反応速度で見るとPCR法は、ほんの数分で完了するだけの反応速度であるが、従来のPCR法では実際に1時間以上を要している。本発明者らは、これはPCR方式に次の二つの原因があると気づいた。まずひとつは、PCR装置にPCR用の大きな熱源がありこの熱源をPCRに必要な3温度に上下させているため、熱源の熱容量が大きくPCRに必要な時間より、PCRに必要な熱源温度の上げ下げに多くのムダ時間を消費しているということである。もうひとつの原因は、PCR反応液が通常はいわゆる試験管状などの容器に入っており、厚さ数mm以上の液溜りとなっており、液溜りの中での伝熱に時間が掛かるということである。
本発明者らは、この対策としてアニーリング温度や乖離温度にあらかじめ調整しておいた熱源にPCR反応液を接触させて熱サイクルを行うことで、PCRに必要な熱源温度の上げ下げに要するムダ時間を排除することに成功した。
また反応液を0.9mm以下の薄膜に閉じ込める形の反応容器を用いることでPCR反応液の液溜り内部の伝熱によるロス時間の問題を解決した。この場合、反応容器の形状は平板部を有する板状反応容器を用いても良いし、反応容器自体は大きさは問わず柔らかいチュウブ状の部分に反応液を収容し、熱源を圧接することで0.9mm以下に薄くできるものであれば同じ効果が得られる。
これらの処置はそれぞれ単独でも大きな効果はあるが、両方式を組み合わせればさらなる効果があることから、反応液を0.9mm以下の薄膜に閉じ込める形の反応容器として薄い円盤を用い、その円盤をアニーリング温度と乖離温度にあらかじめ設定した熱源の間を接触して回転させる方式を考案した。この方式により従来1時間ほど掛かっていたPCR反応を3〜5分まで短縮が可能である事を見出した。
なお、本実施形態のEGFR変異を迅速に検出するシステムとして、円盤状の反応容器を用いる例を後述の実施例で示しているが、本発明の核酸増幅装置の機構としてはこれに限定されるものではない。
(2)生物・化学的な側面の構成について
次いで、本実施形態に係るEGFR変異検出システムのうち、(2)乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットという生物・化学的な側面の構成について説明する。図1は、EGFR遺伝子のEGFRチロシンキナーゼドメインのエクソン18〜21の構造を示した概念図である。本実施形態で用いるプライマーセットは、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性の欠失変異を検出する第一のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性の点変異を検出する第二のプライマーセットと、哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性の点変異を検出する第三のプライマーセットと、からなる群から選ばれる1種以上のプライマーセットを含む、EGFR変異検出システムである。
本実施形態では、このようにEGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを用いているため、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能であり、コンパクトかつ超高速な回転型のPCR装置とあわせて用いることによって、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価にどこでも実行可能なものとなる。そのため、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
なお、上記の哺乳動物は、特にヒトに限定するものではなく、本実施形態に係るEGFR変異検出システムは、ヒト以外の哺乳動物に用いられてもよい。たとえば、獣医学などの分野において、ヒト以外の哺乳動物である、家畜として飼育されるウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなど、またはペットとして飼育されるイヌ、ネコ、ネズミなどのEGFR変異を検出するために用いることもできる。あるいは、ヒト向けの医薬品の開発、あるいはヒト以外の哺乳動物向けの動物薬の開発のために用いられる実験動物である、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ネズミ(ラットおよびマウスを含む)などのEGFR変異を検出するために用いることもできる。
もっとも、上記の哺乳動物としては、医薬品(診断薬、治療薬および予防薬)としての市場の大きさを考えれば、やはりヒトであることが好ましい。また、上記の第一のプライマーセット、第二のプライマーセット、第三のプライマーセットが、後述するように、いずれもヒトのゲノム上のEGFR遺伝子変異を検出の直接のターゲットとしていることからも、やはりヒトであることが好ましい。さらに、背景技術の項目で説明したように、上皮成長因子受容体(EGFR)の特異的な阻害剤であるゲフィチニブ(商品名:イレッサ)のどのような症例に投与すべきかの感受性予測因子が医学界において強く求められていることからも、やはりヒトであることが好ましい。
また、上記の哺乳動物としては、ヒトの中でも日本民族に分類されるヒトであることが好ましい。なぜなら、イレッサ感受性症例の多い日本民族では、EGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性の欠失変異およびEGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性の点変異という2つの変異が60%以上(文献によっては90%以上)占めることが知られるようになっているためである。すなわち、日本民族にイレッサを投与すべきかどうか判断する上では、これら2つの変異を検出するだけで、おおかたのイレッサ感受性患者を選択できることになるためである。
(2−1)第一のプライマーセットについて
図2は、第一のプライマーセットを作成する際におけるexon19 deletion検出プライマーの設計方針(A)と通常PCR装置での温度条件(B)を示すDeletion mutation検出プライマーの設計図である。図2に示すように、第一のプライマーセットを設計する際には、EGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性の欠失変異を特異的に検出できるように、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失箇所を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。具体的には、第一のプライマーセットが、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。この際、図2に示すように、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失箇所の上流領域に相当する塩基配列ができるだけ短くなるように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計して特異性を高めるようにした。
さらに具体的には、このようにして設計される第一のプライマーセットは、配列番号:1で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、を含むことが好ましい。
配列番号1:5’−CAC AAT TGC CAG TTA ACG TCT TC−3’(DelE746−A750 Forward Primer)
配列番号2:5’−TGT TGG CTT TCG GAG ATG TTT TG−3’(DelE746−A750 Reverse Primer)
この配列によれば、後述する実施例で示すように、本発明者らがEGFR遺伝子のエクソン19における欠失を検出するために有用であることを発見した、上記の配列番号:1で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列を含むリバースプライマーと、を含むプライマーの組合せを用いているため、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を効率的に検出できる。
なぜなら、後述する実施例の図3で示すように、配列番号:1で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットを用いて、上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことを確認しているからである。
そのため、当然のことではあるが、配列番号:1で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を用いてPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:1〜2で示される塩基配列に対して、それぞれ80%以上の相同性を有することが好ましいが、85%以上、90%以上、または95%以上の相同性を有していれば、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
また、当然のことではあるが、配列番号:1で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:1〜2で示される塩基配列に対して、それぞれ1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むことが好ましいが、1塩基のみ欠失、置換、付加してなる塩基配列を含む場合には、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
さらに、当然のことではあるが、配列番号:1で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。なお、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするという用語の意味については、既に〔用語の説明〕の項目で説明しているため、煩雑をさけるため説明を繰り返さない。
(2−2)第二のプライマーセットについて
図5は、第二のプライマーセットを作成する際におけるexon21 point mutation検出プライマーの設計方針を示す。図5に示すように、第二のプライマーセットを設計する際には、EGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性の点変異を特異的に検出できるように、EGFR遺伝子のエクソン21における点変異を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。具体的には、第二のプライマーセットが、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。この際、図5に示すように、ARMS法などの一般的な方法によって、各種プライマーを作成した後、PCR法などによる核酸増幅を行い、もっとも適切なプライマーを選ぶことが好ましい。
ここで、ARMS法とは、Amplification Refractory Mutation Systemの略で、PCRのプライマー部位にミスマッチがあると、プライマーのアニーリングがうまくできなくなり、PCRで増幅ができなくなることを利用した方法である。一般的に、PCRの成否に大きな影響を及ぼすプライマーのミスマッチは、3’末端のものである。したがって、この方法では3’末端に変異部位がくるようにプライマーを設計する。そして、PCRのプライマーとしての働きが、1塩基のみのミスマッチでは悪くないため、変異部位に1または2、塩基5’側にミスマッチを加えることが多い。このようにプライマーに2か所のミスマッチがあると、一定条件下ではPCRのプライマーとしては働かないことが多い。このようにして、正常用と変異用の2とおりのプライマーを作成してPCR反応を行い、生成産物をアガロース電気泳動で調べたとき、正常用プライマーでPCR産物がなく、変異用プライマーでPCR産物があれば、そこのDNA上に変異があることになる。ARMS法では、ハイブリダイゼーションや制限酵素処理をしなくてもよいため、非常に優れた簡便な方法であり、各種の遺伝子変異の検出に利用されている。
話を元に戻すと、さらに具体的には、このようにして設計される第二のプライマーセットは、配列番号:3で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、を含むことが好ましい。
配列番号3:5’−TCC CAT GAT GAT CTG TCC CT−3’(L858R Forward Primer)
配列番号4:5’−CAC CCA GCA GTT TGG TCC−3’(L858R Reverse Primer)
この配列によれば、後述する実施例で示すように、本発明者らがEGFR遺伝子のエクソン21における点変異を検出するために有用であることを発見した、上記の配列番号:3で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列を含むリバースプライマーと、を含むプライマーの組合せを用いているため、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を効率的に検出することができる。
なぜなら、後述する実施例の図6で示すように、配列番号:3で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットによって、上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅され、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異における欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことを確認しているからである。
そのため、当然のことではあるが、配列番号:3で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を用いてPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:3〜4で示される塩基配列に対して、それぞれ80%以上の相同性を有することが好ましいが、85%以上、90%以上、または95%以上の相同性を有していれば、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
また、当然のことではあるが、配列番号:3で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:3〜4で示される塩基配列に対して、それぞれ1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むことが好ましいが、1塩基のみ欠失、置換、付加してなる塩基配列を含む場合には、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
さらに、当然のことではあるが、配列番号:3で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。なお、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするという用語の意味については、既に〔用語の説明〕の項目で説明しているため、煩雑をさけるため説明を繰り返さない。
(2−3)第三のプライマーセットについて
第三のプライマーセットを設計する際には、原則としては、第二のプライマーセットの設計方針と同様の方針を採用することができる。すなわち、EGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ耐性の点変異を特異的に検出できるように、EGFR遺伝子のエクソン21における点変異を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。具体的には、第二のプライマーセットが、EGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性のT790M点変異を挟み込むように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計すればよい。この際、第二のプライマーセットの設計方針と同様に、各種プライマーを作成した後、PCR法などによる核酸増幅を行い、もっとも適切なプライマーを選ぶことが好ましい。
さらに具体的には、このようにして設計される第三のプライマーセットは、配列番号:5で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、を含むことが好ましい。
配列番号5:5’−AGG AAG CCT ACG TGA TGG−3’( T790M Forward Primer)
配列番号6:5’−GAA GGG CAT GAG CTT CA−3’( T790M Reverse Primer)
この配列によれば、後述する実施例で示すように、本発明者らがEGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を検出するために有用であることを発見した、上記の配列番号:5で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列を含むリバースプライマーと、を含むプライマーの組合せを用いているため、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を効率的に検出することができる。
なぜなら、後述する実施例で示すように、配列番号:5で示される塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットによって、上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅され、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異における欠失変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことを確認しているからである。
そのため、当然のことではあるが、配列番号:5で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を用いてPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:5〜6で示される塩基配列に対して、それぞれ80%以上の相同性を有することが好ましいが、85%以上、90%以上、または95%以上の相同性を有していれば、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
また、当然のことではあるが、配列番号:5で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。
もっとも、これらのプライマーの塩基配列は、配列番号:5〜6で示される塩基配列に対して、それぞれ1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むことが好ましいが、1塩基のみ欠失、置換、付加してなる塩基配列を含む場合には、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する被験者のゲノムDNAにさらに特異的に結合するようになるためより一層好ましい。
さらに、当然のことではあるが、配列番号:5で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセット用いた場合にも、同様に上述の装置を使用してPCR法などによる核酸増幅を行った場合、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有する場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されるが、EGFR遺伝子のエクソン20のT790M点変異を有さない場合には、これらのプライマーに挟まれたゲノムDNAの塩基配列が増幅されないことについては、当業者であれば容易に理解できることである。なお、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするという用語の意味については、既に〔用語の説明〕の項目で説明しているため、煩雑をさけるため説明を繰り返さない。
(2−4)いずれのプライマーセットにも共通する性質について
なお、これらのフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、いずれも15塩基以上の長さからなることが好ましい。なぜなら、一般的なPCR法などの核酸増幅法に適したプライマーは、PCRサイクルにおいて、それぞれのステップで鋳型DNAに対して結合・解離がスムーズに進行するようにするために、15塩基−100塩基、好ましくは15塩基−35塩基の鎖長を有するように設計されることが多いためである。
また、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの少なくとも一方が標識されていてもよい。このとき、標識の種類は特に限定されず、α−33Pなどの放射性標識、蛍光性のインターカレーターなどによる蛍光色素標識、有色化合物などによる色素標識、あるいはHRPやAPなどの酵素標識が挙げられるが、安全性および使い勝手のよい蛍光色素標識を用いることが好ましい。このように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの少なくとも一方が標識されていれば、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異のいずれかの変異を有する被験者のゲノムDNAのうち、これらのプライマーセットに挟まれた領域の増幅を容易に検出することができる利点がある。
このような蛍光性のインターカレーターなどによる蛍光色素標識としては、特に限定するものではないが、たとえば、サイバーグリーン(SYBR Green(R))と呼ばれる色素は、分子生物学で核酸の染色に用いられる一般的なシアニン系色素であり、使い勝手がよいために好ましい。サイバーグリーンは、二重らせんを組んでいるDNAと特異的に結合し、DNAと結合することで青色光(λ=488nm)を吸収し、緑色光(λ=522nm)の蛍光を発するようになる。このため、サイバーグリーンは、核酸染色色素として用いられ、強い発癌性物質として知られる臭化エチジウムの代替物質として用いることができ、安全性が高いため好ましい。もっとも、蛍光性のインターカレーターなどによる蛍光色素標識を行う際には、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを事前に標識しておく必要はなく、核酸増幅反応後に電気泳動を行った際に蛍光性のインターカレーターなどによる蛍光色素標識を行って、蛍光を発する増幅断片を検出してもよい。
(2−5)三種のプライマーセットの組み合わせについて
ここで、本実施形態のEGFR変異検出システムにおいては、上記の第一〜第三のプライマーセットが、ディスクチップ10に設けられている複数のサンプルウェル13のうち別々のウェルに分けて注入される形で用いられてもよい。このようにすれば、上記の第一〜第三のプライマーセットによって、それぞれ別のサンプルウェル13中で、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異が、互いに干渉しあうことなく別々に検出されるため、検出精度を高く維持することができるメリットがある。
一方、本実施形態のEGFR変異検出システムにおいては、上記の第一〜第三のプライマーセットが、ディスクチップ10に設けられている複数のサンプルウェル13のうち同じウェルに混合して注入される形で用いられてもよい。このように、上記の第一〜第三のプライマーセットによって、それぞれ同じサンプルウェル13中で、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、およびEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異について、単一のウェルごとに一度にまとめて検出してもよい。
このような手法は、一般的にマルチプレックス法と呼ばれており、一つの核酸増幅反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。このようにマルチプレックス核酸増幅法を行うことで、試薬や機材の節約による経済性、同時検出による迅速性でのメリットに加え、貴重なサンプルの有効利用も可能である。
しかし、マルチプレックス核酸増幅法を行う際には、それぞれのターゲットの増幅が一つのPCR反応系で良好に行えるように、使用するプライマーの設定、反応条件の検討を行わなければならず、煩雑な作業が必要となることが多い。これに対して、本実施形態で説明した上記の第一〜第三のプライマーセットについては、そのような煩雑な作業を必要とせず、最小限の条件設定でマルチプレックス核酸増幅法を行うことができることを、後述する実施例で示すように、本発明者らは確認している。よって、本実施形態で説明した上記の第一〜第三のプライマーセットは、マルチプレックス核酸増幅法を行うに適したプライマーセットであることが明らかである。
なお、このようにマルチプレックス核酸増幅法を行う際には、第一〜第三のプライマーセットが、それぞれのプライマーセットごとに異なる種類の標識が付加されていれば、第一〜第三のプライマーセットによって増幅された断片が、断片のサイズなどにかかわらず標識の種類によって容易に区別できるため好ましい。
たとえば、蛍光標識プローブを用いたリアルタイムPCR法において、マルチプレックス法を行う場合には、プローブの種類だけでなく蛍光色素の種類も重要である。ほとんどの蛍光標識プローブでは、蛍光物質とクエンチャーを組み合わせ、FRETの原理を利用して検出しているが、蛍光物質とクエンチャーにはさまざまな種類があり、使用するリアルタイムPCR法で用いる装置の励起および検出波長に合ったものを選択することが好ましい。そのため、マルチプレックスのリアルタイムPCR法を行う際には、各蛍光がクロストークしないように組み合わせに留意することが好ましい。
(2−6)その他の試薬
本実施形態のEGFR変異検出システムは、上述のプライマーセットにくわえて、さらにDNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、組み合わせることによって、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異を検出するための検出キットとして好適に用いることができる。
このように、上述のプライマーセットと、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、を組み合わせて提供すれば、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異を検出するための検出に必要な試薬が一度に入手できるために、試験を行う研究者の手間が省ける利点がある。
また、あらかじめ上述のプライマーセットと、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、の組み合わせによって、うまくPCRサイクルが進行して、EGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異を検出することができる条件を設定して、キットの説明書に詳細に記載しておけば、やはり試験を行う研究者の手間が省ける利点がある。さらに、第一〜第三のプライマーがいずれも標識されていなくても、これらのキットに含まれるヌクレオチド自体があらかじめ標識されていれば、やはり試験を行う研究者がプライマーの標識を行わずに済むために手間が省ける利点がある。
なお、本実施形態に係るEGFR遺伝子のエクソン19におけるE746−A750欠失変異、EGFR遺伝子のエクソン21におけるL858R点変異、またはEGFR遺伝子のエクソン20におけるT790M点変異を検出するための検出キットに含まれるDNAポリメラーゼは、1本鎖のDNAを鋳型として、それに相補的な塩基配列を持つDNA鎖を合成する酵素であればよく、特に限定するものではないが、たとえば、PCR法による核酸増幅を行うのであれば、Taqポリメラーゼあるいは超高熱アーキア由来の耐熱性ポリメラーゼ(たとえばKODやPfu DNA ポリメラーゼ)などの耐熱性を持つDNA依存性DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。ここで、Taqポリメラーゼとは、好熱菌Thermus aquaticus(下線はイタリックであることを示す)が産生するDNAポリメラーゼ(EC.2.7.7.7)であり、90℃以上の高温でも比較的安定である(DNAポリメラーゼ活性は低下する)ため、PCRに利用されている。なお、もちろん、本実施形態で用いるTaqポリメラーゼは、天然のTaqポリメラーゼに限らず、各種特性を調整するために人工的に改変されたTaqポリメラーゼ(例えば、TaKaRa Taq(R)、Ex Taq(R)など)を用いてもよい。
(2−7)プレセッティング済みのディスクチップ
なお、本実施形態のEGFR変異検出システムに用いるディスクチップ10は、上記のいずれかのプライマーセットと、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、を、内部に塗布乾燥してなる複数のサンプルウェル13を有していてもよい。
このディスクチップ10によれば、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットが、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、組み合わさってサンプルウェル13の内部に塗布乾燥されているため、上述のEGFR変異検出システムに用いた場合には、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみで哺乳動物のEGFR遺伝子の変異を検出可能である。また、あらかじめ必要な試薬等がすべてサンプルウェル13の内部に塗布乾燥されているため、基礎医学分野の研究者・臨床医・看護師・臨床検査技師などの医療分野の研究・臨床に携わるスペシャリストにとっては、実験・検査の手間が大きく省け、また実験・検査の際の測定誤差が低減されるというメリットがある。
すなわち、このディスクチップによれば、EGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、組み合わせてサンプルウェルの内部に塗布乾燥しているため、上述のEGFR変異検出システムに用いた場合には、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみで哺乳動物のEGFR遺伝子の変異を検出可能である。そのため、このディスクチップを、上述のEGFR変異検出システムとあわせて用いることによって、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価にどこでも実行可能なものとなる。そのため、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
〔作用効果〕
以下、本実施形態のEGFR変異検出システムの作用効果について、従来技術と対比しながら再度まとめて説明する。
本実施形態のEGFR変異検出システムによれば、上記のようなEGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットを用いているため、特殊なプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能であり、コンパクトかつ超高速な回転型のPCR装置とあわせて用いることによって、肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価にどこでも実行可能なものとなる。そのため、病院のベッドサイドまたは市中の無床診療所などでのEGFR遺伝子変異検出が可能となり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
一方、標準的な遺伝子変異検出法としてPCR−ダイレクトシークエンス法があるが、これは感度があまりよくなく、検体中に変異遺伝子が20%以上あるような「ほぼ癌細胞」である組織にしか適応できない。したがって、ほぼ大部分が正常細胞で、変異遺伝子をもつ癌細胞が数%以下であるような通常の生検検体から遺伝子変異を検出するためには、変異遺伝子のみを特異的に増幅する以下のPCRベースの方法が開発されている。
具体的に現在開発済みのものは、
(1)PNA−LNA PCR clamp法(三菱メディエンス)
(2)PCR−Invader法(ビーエムエル)
(3)Scorpion ARMS法(DxS社)
(4)High−resolution mutation analysis法
(5)Mutant−enriched PCR法(AVSS社)
(6)SMAP法(ダナフォーム、理化学研究所)
である。(現在国内で保険収載されているものは(1)と(2):背景技術の項目の表2参照)
上記の内、(1)、(2)、(3)、(4)は、プローブを使用するリアルタイムPCR法を基本としており、プローブが高価であり、且つライトサイクラーなどの高価なリアルタイムPCR装置を必要とする。(5)はPCR後の制限酵素処理を必要とし、手技が煩雑で、結果を得るのに長時間を要する。(6)は特殊酵素を用いた等温PCRであるが、迅速性に問題がある。このように従来開発済みの方法では、迅速性、簡便性、経済性を同時にみたすものは存在しない。
本実施形態のEGFR変異検出システムは、それに対して、特別なプライマーセットを用いるために、簡便性、経済性を同時に満たす。なお、本実施形態の特別なプライマーセットを、従来型のPCR装置に用いる場合においても、高速な温度条件を用いれば、10−15分以内の検出と十分な迅速性をもたらすが、さらに高速な上述の回転型のPCR装置と組み合わせた場合、5分以内の検出という、世界最高速のEGFR遺伝子変異検出を可能とすることができる。
本実施形態のEGFR変異検出システムは、いわゆるアリル特異的PCR法を基本原理として発想されたものである。基本原理はすでに存在するものではあるが、発想されたプライマー配列自体は従来にないもので、本発明により上記のような新たな応用分野が開拓される可能性を持つものである。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態では、3種類のプライマーセットを組み合わせたマルチプレックスPCR法について説明したが、特にこれらの3種類に限定されるわけではなく、将来的に他の種類のプライマーセットも、EGFR遺伝子のゲフィニチブ感受性またはゲフィニチブ耐性の変異を有する被験者のゲノムを検出するために有用であることが明らかになれば、5種類、6種類のプライマーセットを組み合わせたマルチプレックスPCR法としてもよい。このようにすれば、さらにEGFR遺伝子のゲフィニチブ感受性またはゲフィニチブ耐性の変異を有する被験者のゲノムを検出する精度が向上する。
一方、上記実施の形態では、3種類のプライマーセットを組み合わせたマルチプレックスPCR法について説明したが、特にこれらの3種類をすべて用いなければいけないわけではなく、これらのうちの2種類のみを組み合わせたマルチプレックスPCR法を行ってもかまわない。この場合にも、EGFR遺伝子のゲフィニチブ感受性またはゲフィニチブ耐性の変異を有する被験者のゲノムを検出することができることには変わりがないからである。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実験材料および試薬>
作成したプライマー
配列番号1:5’−CAC AAT TGC CAG TTA ACG TCT TC−3’(DelE746−A750 Forward Primer)
配列番号2:5’−TGT TGG CTT TCG GAG ATG TTT TG−3’(DelE746−A750 Reverse Primer)
配列番号3:5’−TCC CAT GAT GAT CTG TCC CT−3’(L858R Forward Primer)
配列番号4:5’−CAC CCA GCA GTT TGG TCC−3’(L858R Reverse Primer)
配列番号5:5’−AGG AAG CCT ACG TGA TGG−3’( T790M Forward Primer)
配列番号6:5’−GAA GGG CAT GAG CTT CA−3’( T790M Reverse Primer)
PCR法に用いた試薬 DNAase
RNAase free water(GIBCO)
Speed STAR HS DNA polymerase(Takara)
10xFast Buffer 1(TAKARA;上記酵素に付属)
2.5mM each dNTP Mixture(TAKARA;上記酵素に付属)
電気泳動に用いた試薬 1 x TAE buffer Agarose−S(Nippon Gene)
10mg/ml Ethidium Bromide(Nippon Gene)
6 x Loading Buffer Orange G(Nippon Gene)
増幅断片の検出に用いた試薬 SYBR Green I Nucleic Acid Gel Stein (Takara)
<実験方法>
プライマーの作成
配列に示したオリゴヌクレオチドをSIGMA genosys 社(北海道)へ依頼し、0.02μmolスケールで合成、脱塩精製したものを用いた。
PCR法 各サンプルあたり、water 8.72μl、10xFast Buffer 1 1.6μl、2.5mM dNTP 1.28μl、10μM forward primer 0.8μl、10μM reverse primer 0.8μl、1/2000 SYBR Green I 1.6μl、50U/μl Speed STAR HS DNA polymerase 0.2μl、template DNA 1μl(30ng)を混合し16μlとしたものを用いた。PCRの温度条件は94℃ 1分ののち、98℃ 1.3秒、55℃ 5秒、72℃ 3秒を35サイクル行った。または 95℃ 1分ののち、98℃ 1.3秒、64℃1.45秒、73℃2秒を35サイクル行ってもよい。
電気泳動 Ethidium Bromideを含有した2%アガロースに1レーンあたり、PCR産物5μlと6xLoading Buffer Orange G 1μlを混じたものをアプライし、1XTAE bufferで100V 30分電気泳動した。
増幅断片の検出
増幅断片にインターカレートしたSYBR Green Iの蛍光量を本装置によりリアルタイムに検出することにより、PCRによる増幅断片量をモニターした。また、この増幅断片の確認のために、増幅後のサンプルを電気泳動し、UVライト下で増幅バンドとして検出した。
<実施例1>
exon19 deletion 検出 primerの設計とその検討
図2にexon19 deletion検出プライマーの設計方針(A)と通常PCR装置での温度条件(B)を示す。図3にこれを用いて行ったPCR結果を示す。本プライマーセット(上述の配列番号:1および配列番号:2のプライマーセット)は、exon19のdeletion mutantを特異的に検出することがわかった。しかしながら実際の臨床検体(気管支洗浄液など)はこのようなpureな細胞集団ではなく、正常細胞にごく少量の癌細胞(deletion+細胞)がまじったものである。そこで、次に本プライマーセットの臨床的感度を検討するためにdeletion陽性細胞(Ma1)とdeletion陰性細胞(A549)を任意の比率で混合し、本PCR法により正常細胞のなかにどのくらいの比率でdeletion陽性細胞が混在していると検出できるかを検討した。図4に示すように本PCRは検体の1%に異常細胞が含まれれば十分に検出できることが示された。この検出感度はすでに臨床に供されているPNA−LNA PCR clamp法、PCR−Invader法と同等である。
<実施例2>
exon21 point mutation 検出 primerの設計とその検討
図5にexon21 point mutation検出プライマーの設計方針を示す。ここに示す各種プライマーを作成した後、PCRを行い、もっとも適切なプライマー(ARMS3(上述の配列番号:3および配列番号:4のプライマーセット))を選んだ。他のプライマーではpoint mutationの検出(特異バンド)の出現を認めなかった。
図6に、上述の最適なプライマーであったARMS3(上述の配列番号:3および配列番号:4のプライマーセット))を用いたPCR結果を示す。Point mutationありの細胞(11−18)と無しの細胞(Ma1)でアニーリング温度を変えPCRを行った。図6上段に示すように、どのアニーリング温度でも本プライマーセットは166bpの陽性バンドを認め、61.8℃以上にアニーリング温度をあげると特異増幅のみとなった。一方下段のpoint mutation陰性細胞では、どのアニーリング温度でも目的のバンドは認めなかった本プライマーの検出感度も検体の1%の異常細胞を検出するものであった。
<実施例3>
超高速PCRマシンによる検出結果
本発明者らが試作した図14〜図15に示す基本構造を有する超高速PCRマシンは増幅時間3−5分の世界最高スピードを実現している。そこで、本PCRプライマーセット(上述の配列番号:1および配列番号:2のプライマーセット)と、この超高速PCRマシンとで、癌細胞からの遺伝子変異検出を試みた。このために、図7に示す最適反応条件を決定した。
本PCRプライマーセット(上述の配列番号:1および配列番号:2のプライマーセット)と、この超高速PCRマシンと、で、癌細胞からの遺伝子変異検出した結果を図8に示す。その結果、図8に示すようにdeletion変異をもつMa1のみが増幅し、その特異性が確認できた。
なお、図8において、各記号は、以下のとおりの意味であるものとする。
a: DDW
b: Ma1(30ng)deletion(+)
c: 11−18(30ng) deletion(−)
d: A549(30ng) deletion(−)
e−h: blank
次にこのdeletion変異をもつMa1細胞のDNAの希釈系列を作成し、本PCRの検出感度を検討した。その結果を、図9に示す。
なお、図9において、各記号は、以下のとおりの意味であるものとする。
A: DDW
b: Ma1 (30ng)
c: Ma1 (3ng)
d−h: blank
その結果、図9に示すようにMa1細胞のDNAが最小3ngの場合までdeletionの検出が可能であることが分かった。
<実施例4>
EGFR point mutation 検出 primerの検討
EGFR point mutation 検出 primer(上述の配列番号:3および配列番号:4のプライマーセット)の特異性を検討するために、point mutationのある細胞(Ma1)と、ない細胞(11−18, A549)から抽出したDNAを用いて、本発明者らが試作した超高速PCRマシンによる超高速PCRを行った。その結果を図10に示す。
なお、図10において、各記号は、以下のとおりの意味であるものとする。
a: DDW
b: Ma1 (30ng) point mutaion(−)
c: 11−18(30ng) point mutaion(+)
d: A549(30ng) point mutaion(−)
e−h: blank
その結果、図10に示すpoint mutation変異をもつカラム11−18のみが特異的に増幅しており、その特異性が確認できた。
次に、このpoint mutationをもつ11−18細胞DNAの希釈系列を用いて検出感度を検討した。その結果、11−18細胞DNAが最小30ngまでpoint mutationが検出可能であった。
<実施例5>
EGFR 特異的 primer マルチプレックス法の検討
3種類のプライマーセット(配列番号:1および配列番号:2のプライマーセット、配列番号:3および配列番号:4のプライマーセット、配列番号:5および配列番号:6のプライマーセット)を用いたMultiplex PCR法の有効性を検討するために、以下の実験を行った。
19DF/DR3 primer set(配列番号:1および配列番号:2のプライマーセット)
21F2F/ARMS3 primer set(配列番号:3および配列番号:4のプライマーセット)
T790M F/R primer set(配列番号:5および配列番号:6のプライマーセット)
これらの3種のprimer setを混合し、これらの遺伝子変異を一つの細胞につき、一度に検出する方法を試みた。
ここで、PCR 条件としてはたとえば、19DF/DR3 primer setにて増幅する場合には、図11の左側の条件で行うところ、3種類のprimer setを用いたMultiplex PCR法を行うにあたり、PCR 条件を図11の右側の条件に変更して実験を行った。
その結果、図12および図13に示すように、3種類のprimer setを用いたMultiplex PCR法において、どのような変異の組み合わせを有する細胞株においても、いずれの変異に対応する増幅断片のバンドも互いに干渉しあうことなく別々に検出することができた。すなわち、これらの結果から、3種類のprimer setを用いたMultiplex PCR法によって、3種類の遺伝子変異を一つの細胞につき、一度に検出することが可能であることが明らかになった。
<結果の考察>
上記の実施例1〜5の実験結果から、本研究において肺癌の分子標的治療薬イレッサ感受性患者を検出するための好適なPCR法が開発されたことが明らかである。このPCR法による遺伝子変異検出は、感度が高く、実際の臨床場面で想定される多くの正常細胞遺伝子の中に含有される小数の変異遺伝子を検出するのに最も適している。
これまでにもいくつかのPCRベースの方法が発表されたが、それらの方法における変異の検出には、制限酵素による消化や特殊な蛍光プローブとリアルタイムPCRマシンを必要とし、時間的、費用的に問題があるものがほとんどであった。今回のEGFR変異に特異的な核酸増幅プライマーを用いる方法は特殊なプローブや制限酵素を必要としない検出系であることから高額なリアルタイムPCRマシンも不要であり、EGFR変異の簡便、安価、迅速な検出系が可能となった。
今回のEGFR変異に特異的な核酸増幅プライマーを用い、PCR法による核酸増幅に際し、PCRに必要な少なくとも2つのあらかじめ温度が設定された熱源に、薄膜状の反応液部分を順次接触させてPCRサイクルを行う方式か、PCR反応液膜を厚さ0.9mm以下にして反応液内部の伝熱を高速化するかいずれかの方式を取ることで、更に迅速なEGFR変異の簡便、安価、迅速な検出系を可能とした。
さらに、今回のEGFR変異に特異的な核酸増幅プライマーを用いる方法は、PCRに必要な少なくとも2つのあらかじめ温度が設定された熱源に、薄膜状の反応液部分を順次接触させてPCRサイクルを行う方式と、PCR反応液膜を厚さ0.9mm以下にして反応液内部の伝熱を高速化する方式と、の両方を組み合わせた装置である本発明者らが試作した超高速PCRマシンに対して組み合わせることのできる、現在のところ唯一の検出系であり、この組み合わせにより簡便、安価、迅速な検出系を初めて可能としたものである。
上記の実施例1〜5の実験結果を踏まえて、上述の設計したプライマーセットを含む反応試薬を乾燥封入したディスク、ならびに最適の温度、時間、サイクル条件のプログラムをセットとしたキットとしての実用化が考えられる。このキットを用いて、ユーザーは専用ディスクに液状のサンプルを注入し、上述の装置で専用プログラムを選んで反応を行うことができる。このキットを「イレッサ感受性予測チップ」として、超高速PCR装置向けに実用化したいと考えている。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
以上のように、本発明にかかるプライマーセットはこれらEGFR遺伝子変異検出のための配列を工夫したプライマーセットであり、これを用いることでプローブを必要とせず、通常のPCR反応のみでEGFR遺伝子変異を検出可能とする。本発明により肺癌治療方針決定のうえで今や必須の検査となっているEGFR遺伝子変異検出が安価にどこでも実行可能なものとなる。
さらに加えて、本発明にかかるプライマーセットは、それに最適化した温度条件、反応液組成を用いることによって、回転型の超高速PCR装置にも適応可能であり、5分以内という短時間でのPCRを可能とする。この回転型の超高速PCR装置は、コンパクト且つ超高速なPCR装置として既に開発完了しており、本発明にかかるプライマーセットと同PCR装置との組み合わせにより、ベッドサイドでのEGFR遺伝子変異検出が可能となる可能性があり、その肺癌臨床への恩恵はきわめて高い。
1 PCR装置
2 ヒートブロック
2a、2b、3a、3b 加温部
3 ヒートブロック
4 ディスク駆動部
5 回転部
6 蛍光検出部
9a、9b 蛍光透過部
10 PCR用ディスク
11、21 反応液注入部
12、22 流路
13、23 反応液貯留部
14、24 基板
20 PCR用チップ
A 直線

Claims (10)

  1. 哺乳動物のEGFR変異を検出するプライマーセットであって、
    前記プライマーセットは、
    前記哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン19におけるゲフィニチブ感受性のE746−A750欠失変異を検出する第一のプライマーセットと、
    前記哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン21におけるゲフィニチブ感受性のL858R点変異を検出する第二のプライマーセットと、
    前記哺乳動物のEGFR遺伝子のエクソン20のゲフィニチブ耐性のT790M点変異を検出する第三のプライマーセットと、
    からなる群から選ばれる1種以上のプライマーセットを含む、
    EGFR変異検出用プライマーセット。
  2. 請求項1に記載のEEGFR変異検出用プライマーセットにおいて、
    前記第一のプライマーセットが、
    (i)配列番号:1で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、
    (ii)配列番号:1で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、または、
    (iii)配列番号:1で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:2で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せ、
    のいずれかを含む、EGFR変異検出用プライマーセット。
  3. 請求項1に記載のEGFR変異検出用プライマーセットにおいて、
    前記第二のプライマーセットが、
    (iv)配列番号:3で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、
    (v)配列番号:3で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、または、
    (vi)配列番号:3で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:4で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せ、
    のいずれかを含む、EGFR変異検出用プライマーセット。
  4. 請求項1に記載のEGFR変異検出用プライマーセットにおいて、
    前記第三のプライマーセットが、
    (vii)配列番号:5で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、
    (viii)配列番号:5で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列のうち1塩基または2塩基を欠失、置換、付加してなる塩基配列を含むリバースプライマーとの組合せ、または、
    (ix)配列番号:5で示される塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるフォワードプライマーと、配列番号:6で示される塩基配列の核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸からなるリバースプライマーとの組合せ、
    のいずれかを含む、EGFR変異検出用プライマーセット。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載のEGFR変異検出用プライマーセットにおいて、
    前記プライマーが、いずれも15塩基以上の長さである、
    EGFR変異検出用プライマーセット。
  6. 請求項1乃至5いずれかに記載のEGFR変異検出用プライマーセットと、
    さらに、DNAポリメラーゼと、
    ヌクレオチドと、
    を含む、
    EGFR変異検出用キット。
  7. 請求項1乃至5記載のEGFR変異検出用プライマーセットを用いてEGFR変異検出を検出するための核酸増幅装置であって、
    核酸増幅に必要な熱源と、
    核酸増幅反応容器と、
    前記熱源が前記核酸増幅反応容器の反応部を圧接するための圧接部と、
    を備える、
    核酸増幅装置。
  8. 請求項7記載の核酸増幅装置において、
    前記核酸増幅反応容器は、核酸増幅反応が行われる平板部を有し、
    前記熱源は複数あって、該複数の熱源は、それぞれPCR反応に必要な少なくとも2つの温度にあらかじめ設定されており、
    さらに、前記核酸増幅装置が、前記平板部を前記複数の熱源に順次接触させることで反応液に熱サイクルを与えるための駆動機構を有する、
    核酸増幅装置。
  9. 請求項7記載の核酸増幅装置において、
    前記熱源が前記反応容器を圧接することで該反応容器の反応部分の厚さを0.9mm以下に保持した上で熱反応を行うように構成されている、
    核酸増幅装置。
  10. 請求項7記載の核酸増幅装置において、
    前記核酸増幅反応容器は、核酸増幅反応が行われる厚さが0.9mm以下の平板部を有する円盤であり、
    前記熱源は複数あって、該複数の熱源は、
    それぞれPCR反応に必要な少なくとも2つの温度にあらかじめ設定されており、
    さらに、前記平板部を回転することで、前記複数の熱源に順次接触させることで反応液に熱サイクルを与えるための回転機構を有する、
    核酸増幅装置。
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