JP2010278692A - スピーカ用ディフューザ及びディフューザ付スピーカユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】指向性の強い高音用スピーカユニットに装着して指向性を改善でき、しかも指向性の調整制御が容易で、音質を劣化させないスピーカ用ディフューザと、これを備えたスピーカユニットを提供する。
【解決手段】振動板5とディフューザ6とを備えるスピーカユニットであり、ディフューザ6は、振動板5の中心部に対向配置されるディフューザ本体61を有する。ディフューザ本体61における振動板5との対向面には、ディフューザ本体61が有する音波の伝搬速度よりも音波の伝搬速度が高く、且つディフューザ本体61が有する内部損失よりも内部損失が小さいシート部材8が貼付されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、スピーカの周波数特性を平坦化したり指向性を改善したりするのに用いられるディフューザと、その種のディフューザを備えたスピーカユニットに関する。
従来、スピーカの周波数特性を平坦化したり、指向性を改善したりすることを目的として、振動板に対向してディフューザを配置することが一般に広く行われている(例えば、特許文献1)。
特開平1−256898号公報
しかしながら、従来のディフューザでは、周波数特性の平坦化や指向性に関してある程度の改善効果を得られているが、高域での音の広がり(高指向性)について改善の余地があった。
特に、従来のディフューザは、成形性の観点からプラスチックが多用されているので、高域の音の広がりに乏しく、音場感に欠けるという問題があった。
高域の音を広げるには、音波の伝搬速度が高く内部損失の小さい金属系材料を用いてディフューザを成形すればよいが、金属系材料から複雑形状のディフューザを一体成形することは難しくコスト高になり、しかも金属系材料のみから作られるディフューザでは、高音域のみ強調されてしまったり、残響を生じたりして忠実再生に支障を来たす可能性がある。又、ディフューザによる音響特性には、その形状や振動板までの距離が大きく関係するので、所定形状に成形されたディフューザにおいて、それによる音響特性を後から調整したり制御したりすることは至極困難となる。
尚、スピーカユニットに接続するアンプには、周波数特性を調整するためのイコライザ回路が設けられるが、イコライザ回路による電気的な信号処理では指向性を調整することはできない。
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は指向性の強い高音用スピーカユニットに装着して指向性を改善でき、しかも指向性の調整制御が容易で、音質を劣化させないスピーカ用ディフューザと、これを備えたスピーカユニットを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係るスピーカ用ディフューザ6は、第1の音波の伝搬速度及び第1の内部損失を有し、振動板5の中心部に対向して配置されるディフューザ本体61と、前記第1の音波の伝搬速度よりも高い第2の音波の伝搬速度及び前記第1の内部損失よりも小さい第2の内部損失を有し、前記ディフューザ本体61における前記振動板5との対向面に貼付されたシート部材8と、を備えることを特徴とする。
更に、本発明に係るディフューザ付スピーカユニットは、
振動板5と、
第1の音波の伝搬速度及び第1の内部損失を有し、前記振動板5の中心部に対向して配置されるディフューザ本体61を有するディフューザ6と、
前記第1の音波の伝搬速度よりも高い第2の音波の伝搬速度及び前記第1の内部損失よりも小さい第2の内部損失を有し、前記ディフューザ本体61における前記振動板5との対向面に貼付されたシート部材8と、を備えることを特徴とする。
加えて、前記ディフューザ本体61が合成樹脂製で、前記シート部材8が金属製であることを特徴とする。
又、前記シート部材8は、前記ディフューザ本体61の中心部を通る帯状の形態、もしくは前記ディフューザ本体61の内周部から外周部に向けて放射状に広がる複数の突片部82を有する形態であることを特徴とする。
本発明に係るディフィーザ及びこれを備えたスピーカユニットによれば、振動板の中心部に対向配置されるディフューザ本体を有し、そのディフューザ本体における振動板との対向面に、ディフューザ本体よりも音波の伝搬速度が高く且つ内部損失が小さいシート部材が貼付されていることから、ディフューザ本体によりシート部材の共振による残響や共振音を抑制しながら、ディフューザ本体とシート部材の相互作用により高域を高音圧にして広範囲に広げることができる。
又、ディフューザ本体に対しシート部材が別体として貼付されるので、そのシート部材を形状の異なるものに付け替えるだけでスピーカの指向特性を容易に調整制御することができる。
加えて、ディフューザ本体が合成樹脂製のものでは低コストにして複雑な形状でも容易に成形することができ、これに貼付される金属製のシート部材では高音をクリア再生することができる。
更に、ディフューザ本体の中心部を通る帯状のシート部材、もしくはディフューザ本体の内周部から外周部に向けて放射状に広がる複数の突片部を有するシート部材では、ディフィーザ本体を全面的に被覆しないので、高音域が過度に強調されてしまったり、残響による異音の発生を抑制したりすることができ、しかもシート部材それ自体の長さ方向や突片部の延長方向を中心に音を拡散して高域の音場空間を拡大することができる。
本発明の一実施の形態に係るディフィーザ付スピーカユニットを示す正面図 図1のX−X断面図 ディフューザの装着部分を示す斜視分解図 本発明の一実施の形態に係るディフューザを示す拡大断面図 同ディフューザを裏側からみた底面図 本発明の一実施の形態と従来のディフューザ付スピーカの指向性パターンを示すグラフ シート部材の変形例を示す説明図
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を詳しく説明する。先ず、図1及び図2において、本発明のディフューザ付スピーカユニットの一実施の形態を説明すれば、係るスピーカユニットは動電型(ダイナミック型)のツイータである。1はスピーカユニットのフレームであり、このフレーム1には図2に示すように磁気回路2(図示例において外磁型)が取り付けられている。
磁気回路2は、厚さ方向に着磁されているリング状のマグネット21と、マグネット21の一方の磁極に装着されているリング状のトッププレート22と、マグネット21の他方の磁極に装着されているバックプレート23と、バックプレート23の中心に設けられているポールピース24とにより構成されており、ポールピース24とトッププレート22との間にはマグネット21の磁束が作用する磁気ギャップGが形成されている。
トッププレート22、バックプレート23、及びポールピース24は、磁気ギャップGにマグネット21の磁束を集めるヨークとなるもので、その磁気ギャップGにはボイスコイル3が挿入される。尚、バックプレート23及びポールピース24を一体として成形することもある。
ボイスコイル3は、紙などからなる非導電性(アルミなどの導電性非磁性体を用いる場合もある)のコイルボビン31の外周に、絶縁被膜を施した銅やアルミなどの導電線を巻き付けて巻線部32とした構成であり、その内周にはポールピース24の先端部が挿入され、外周の巻線部32にはトッププレート22の内周面が臨んでいる。そして、ボイスコイル3は、フレーム1にダンパ4を介して取り付けられ、そのダンパ4により前後方向(ボイスコイル3の中心を通る軸線の方向であって図2の上下方向)に移動可能に支持されており、その先端はドーム型の振動板5に接合している。
振動板5は、紙、木、又はポリプロピレンやポリエステルといった合成樹脂、アルミその他の金属、又は化学繊維などから形成されるドーム型の輻射器であり、これは図2から明らかなようにポールピース24の先端面に対向してボイスコイル3の先端に被せられている。
そして、以上のように構成されるスピーカユニットによれば、磁気ギャップG内に発生する直流磁界の磁力線に直交するボイスコイル3(正確にはその巻線部32)に音声電流を流すと、周知のようにボイスコイル3が軸方向の起振力を得て振動し、その振動が振動板5を介して空気振動に変換されることにより音を再生することができる。
尚、ドーム型の振動板5は、その前方における空気振動が球面波となるために音の広がりがよく、直進性の強い高音の再生に適するが、振動エネルギーを広範囲に拡散することになるために一定点での音圧レベルが低下してしまい、結果的に音圧レベルからみた指向特性は必ずしも良好とは言えない。
そこで、図1、図2のように、振動板5の前方(磁気回路とは反対側)においてディフューザ6(音響イコライザ)が設けられる。ディフューザ6は、振動板5に沿って三次曲面状に湾曲した円盤状のディフューザ本体61と、このディフューザ本体61を支持する一対の支持脚62とを一体成形したものである。ディフューザ本体61は振動板5の中心部に対向配置され、支持脚62は振動板5上に跨り、その各下端にフレーム1に固定するためのフット部62aを有している。
図3に示すように、フット部62aは二段の円柱形であり、フレーム1にはフット部62aならびにフット部62aと支持脚62との接続部分を嵌め込む鍵穴状の凹部1aが形成されている。尚、7はフレーム1に装着される金属製のカバーリングであり、このカバーリング7は、ディフューザ6のフット部62aを遮蔽する化粧板として機能するほか、ディフューザ6をフレーム1の定位置に固定してその脱落を防止する役割を果たす。
次に、図4及び図5によりディフューザ6の構成をより詳しく説明すると、係るディフューザ6は、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、又はABS樹脂といった合成樹脂からなる一体成形物で、ディフューザ本体61の裏面(図2に示される振動板5と対向する面)には、ディフューザ本体61とは材質の異なるシート部材8が接着剤などにより貼付固定されている。シート部材8が有する音波の伝搬速度(以下、音速とする)は、ディフューザ本体61が有する音速よりも高く、且つディフューザ本体61が有する内部損失よりも内部損失が小さい部材、具体的にはアルミ、銅、チタンといった定形の金属シート(厚さ10μ〜1000μ)からなる。
音速(ヤング率E/密度ρの平方根)と内部損失(tanδ)は、音響性能を評価する指標となるもので、合成樹脂では材質によって異なるが、概して音速が1000〜3000m/s、内部損失が0.02〜0.08程度である。尚、上記のような合成樹脂よりも高音速、低内部損失の部材として、アルミニウム(音速5114m/s、内部損失0.002)、銅(音速3800m/s、内部損失0.001)、ならびにチタン(音速5145m/s、内部損失0.003)などの金属系のほか、木材系としてシナ(音速4896m/s、内部損失0.019)などが挙げられる。
ここに、ディフューザ6は合成樹脂から一体成形することに限らず、合成樹脂以外の材料から一体成形することもできる。その場合でもシート部材8には上記条件に照らしてディフィーザ本体61よりも高音速、低内部損失の部材が選ばれる。
又、シート部材8も金属製に限らず、金属系以外の材料から成形することもできる。その場合でも上記条件に照らしてディフィーザ本体61よりも高音速、低内部損失の部材(例えば木材シート)が選ばれる。加えて、シート部材8は、ディフューザ本体61の裏面全体を覆う形態でも良いが、高域での共振音の発生を抑制するなどの観点から図5のようにディフューザ本体61の裏面を部分的覆う形態とすることが好ましい。
図5において、シート部材8は、ディフューザ本体61と同心の環状部81の外周に複数(図示例において4つ)の突片部82が連なり、その各突片部82がディフューザ本体61の内周部から外周部に向けて放射状に広がる形態とされる。
そして、上記のようなシート部材8をディフューザ本体61に貼付固定したディフューザ6によれば、ディフューザ本体61によりシート部材8の共振による残響、共振音を抑制しながら、ディフューザ本体61とシート部材8の相互作用により高域の音を広げることができ、特にシート部材8の貼付により生ずる音響異方性により、突片部82の延長方向(図示例において斜め上下方向)を中心に音を拡散して高域の音場空間を拡大することができる。
図6は、本実施の形態に係るディフューザと従来のディフューザを同一のスピーカユニットに装着し、それらスピーカユニットに17kHzの音声信号を入力したときの水平方向の指向性パターンを示す。尚、図6において、実線は本実施の形態に係るディフィーザ付スピーカユニットの指向性パターンを示し、一点鎖線は従来のディフューザ付スピーカユニットの指向性パターンを示す。又、従来のディフューザはアクリル樹脂の一体成形品であり、そのディフューザ(円盤状ディフューザ本体の裏面)に図5に示されるような形態のアルミ製のシート部材8(厚さ100μ)を貼付したものを本実施の形態に係るディフューザとした。
図6から明らかなように、本実施の形態に係るディフューザ付スピーカは、従来のディフューザ付スピーカに比べ、ほぼ全方向で音圧レベルが向上しており、特に後方(120〜160度、及び210〜250度の範囲)で大きな音圧レベルの向上がみられる。これにより、本実施の形態に係るディフューザ6によれば、高音域での指向特性に大きな改善効果を有することが判る。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はドーム型スピーカに限らず、平面型スピーカやコーン型スピーカにも適用することができる。
更に、シート部材8は図5のような形態に限らず、図7(a)〜(j)に示すような形態としてもよい。尚、(a)〜(f)のシート部材8は、いずれもディフューザ本体61の内周部から外周部に向けて放射状に広がる突片部82を有する形態のもので、(a)は図5に示すシート部材8の環状部81を中心孔の無い円形部83としたもの、(b)はディフューザの支持脚62に対する突片部82の向きを変えたもの、(c)及び(d)は環状部81の中心孔の変形例、(e)及び(f)は環状部81がなくディフューザ本体61の中心で突片部82が直接連なっているものである。又、(g)〜(j)のシート部材8は、ディフューザ本体61の中心部を通る帯状の形態としたものである。
5 振動板
6 ディフューザ
61 ディフューザ本体
8 シート部材
81 環状部
82 突片部

Claims (6)

  1. 第1の音波の伝搬速度及び第1の内部損失を有し、振動板の中心部に対向して配置されるディフューザ本体と、
    前記第1の音波の伝搬速度よりも高い第2の音波の伝搬速度及び前記第1の内部損失よりも小さい第2の内部損失を有し、前記ディフューザ本体における前記振動板との対向面に貼付されたシート部材と、
    を備えることを特徴とするスピーカ用ディフューザ。
  2. 前記ディフューザ本体が合成樹脂製で、前記シート部材が金属製であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用ディフューザ。
  3. 前記シート部材は、前記ディフューザ本体の中心部を通る帯状の形態、もしくは前記ディフューザ本体の内周部から外周部に向けて放射状に広がる複数の突片部を有する形態であることを特徴とする請求項1又は2記載のスピーカ用ディフューザ。
  4. 振動板と、
    第1の音波の伝搬速度及び第1の内部損失を有し、振動板の中心部に対向して配置されるディフューザ本体を有するディフューザと、
    前記第1の音波の伝搬速度よりも高い第2の音波の伝搬速度及び前記第1の内部損失よりも小さい第2の内部損失を有し、前記ディフューザ本体における前記振動板との対向面に貼付されたシート部材と、
    を備えることを特徴とするディフューザ付スピーカユニット。
  5. 前記ディフューザ本体が合成樹脂製で、前記シート部材が金属製であることを特徴とする請求項4記載のディフューザ付スピーカユニット。
  6. 前記シート部材は、前記ディフューザ本体の中心部を通る帯状の形態、もしくは前記ディフューザ本体の内周部から外周部に向けて放射状に広がる複数の突片部を有する形態であることを特徴とする請求項4又は5記載のディフューザ付スピーカユニット。
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