JP2010276318A - 防汚抗菌防黴性放熱フィンおよびその製造方法、並びにそれを用いたエアコン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】防汚抗菌防黴性放熱フィンは、分子の一端にフッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び分子の一端に配位結合基を有する第2の膜物質の混合被膜をフィンの表面に混合形成する工程Aと、抗菌防黴性の金属原子又は金属イオンと配位結合基との間で形成される配位結合を介して、金属原子又は金属イオンを混合被膜の表面に固定する工程Bとを有する方法により製造され、フィンの表面に化学結合した、フッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び金属原子又は金属イオンと配位結合を形成する配位結合基を有する第2の膜物質が形成する混合被膜と、前記配位結合基との間に形成される配位結合を介して前記混合被膜の表面に固定された抗菌防黴性の金属原子又は金属イオンとを含む。
【選択図】図1
Description
また、特許文献1〜4のいずれにおいても、抗菌防黴効果と防汚性を兼ね備えるための手段及び方法については何ら記載されていない。
なお、「抗菌防黴性の金属原子又は金属イオン」とは、細菌類及び真菌類(カビ)等の微生物の膜タンパク質及び酵素等の表面や活性中心等に存在するチオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の極性基と結合して変性や失活を引き起こし、それらの機能を阻害することや、細胞内に到達して酵素を失活させること等により、これらの微生物の増殖又は生存を防止することのできるAg、Cu、Zn、Sn等の金属原子又はイオンをいう。
なお、ここで、第1の膜物質は、防汚性を高めるためのものであり、防汚性を必要としない場合には、必ずしも含まれている必要はない。
アルコキシシリル基及びハロシリル基は、ヒドロキシル基等の活性水素基を有する、アルミニウムまたはその合金のフィンの表面との縮合反応により共有結合を形成することができる。また、チオール基及びスルフィド基も、金等の貴金属或いは遷移金属からなるフィンの表面にチオレート結合を形成することができる。
アルコキシシリル基及びハロシリル基は、ヒドロキシル基等の活性水素基を有する、金属、セラミックス、樹脂、繊維等からなる種々のフィンの表面との縮合反応により共有結合を形成することができる。また、チオール基及びスルフィド基は、金等の貴金属或いは遷移金属からなるフィンの表面に共有結合を形成することができる。
これらの金属原子又は金属イオンは、高い抗菌防黴性を有すると共に、人体や環境に有害な影響を及ぼすことがないため、安全性の高い抗菌防黴剤として用いることができる。
さらにまた、「抗菌防黴性の金属原子または金属微粒子」とは、細菌類及び真菌類(カビ)等の微生物の膜タンパク質及び酵素等の表面や活性中心等に存在するチオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の極性基と結合して変性や失活を引き起こし、それらの機能を阻害することや、細胞内に到達して酵素を失活させること等により、これらの微生物の増殖又は生存を防止することのできるAg、Cu、Zn、Sn等の金属原子又は微粒子をいう。
また、この態様でも、最表面にのみ共有結合を介して高濃度に抗菌物質を固定できるため効率が高く、耐久性が高く、安価に製造することができ、人体及び環境に対する安全性が高い防汚抗菌防黴性放熱フィン及びその製造方法、並びにそれらを用いたエアコンを提供できる。
なお、ここで、抗菌防黴性のみが必要な場合には、フッ化炭素基を含む第1の膜物質は必ずしも含めておかなくても良い。
アルコキシシリル基及びハロシリル基は、ヒドロキシル基等の活性水素基を有する、金属、セラミックス、樹脂、繊維等からなる種々のフィンの表面との縮合反応により共有結合を形成することができる。
また、チオール基及びスルフィド基は、Ag、Cu、Zn、Sn等の抗菌防黴性微粒子とチオレート結合を形成できる。
アルコキシシリル基及びハロシリル基は、ヒドロキシル基等の活性水素基を有する、金属、セラミックス、樹脂、繊維等からなる種々のフィンの表面との縮合反応により共有結合を形成することができる。また、チオール基及びスルフィド基は、軽金属からなるフィンの表面に共有結合を形成することができる。
これらの金属微粒子は、高い抗菌防黴性を有すると共に、フィン表面に強固に結合されているため、人体や環境に有害な影響をほとんど及ぼすことがないため、安全性の高い抗菌防黴膜として用いることが可能である。
さらに、前記フィンが、アルミニウム、またはアルミニウム合金であり、表面が酸化されていると、さらに耐久性を向上できる。
また、本発明に係る第1の防汚抗菌防黴性放熱フィンの表面には、抗菌防黴性を有する金属原子又はイオンが、共有結合あるいは配位結合を介して固定されているため、ほとんど放出されることがないが、たとえ放出されたとしても、配位結合基は失われずに残っているため、金属部微粒子又はイオンを再結合させることにより抗菌防黴性を何度でも回復することが可能であり、膜化合物の被膜が残存している限り半永久的に抗菌防黴性を発揮させることが可能である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書において、「膜化合物」及び「膜物質」という用語は、それぞれ、撥水撥油性の混合被膜を形成するための出発物質として使用される化合物、及び形成された撥水撥油性の混合被膜の構成成分を呼称するために使用される。
ここで、図1は、本発明の第1の実施の形態に係る抗菌物質を錯イオンとして固定した防汚抗菌防黴性放熱フィンの断面構造を分子レベルまで拡大して模式的に表した説明図、図2は、本発明の第2の実施形態に係る抗菌物質を錯イオンとして固定した防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法において、フッ化炭素基及びエポキシ基を有する混合単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図、図3は、同防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法において、フッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
なお、図2では活性水素基の一例としてヒドロキシル基を有する場合を図示しているが、アミノ基、チオール基(メルカプト基)、スルフィド基、カルボキシル基等であってもよい。
また、Yは、(CH2)k(kは1〜3の整数を表す)及び単結合のいずれかを表し、Zは、O(エーテル酸素)、COO、Si(CH3)2、及び単結合のいずれかを表す。
(2) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(3) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(4) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(5) CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(6) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(7) CF3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(8) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(9) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(10) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(11) CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(12) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(22) (CH2OCH)CH2O(CH2)7Si(OCH3)3
(23) (CH2OCH)CH2O(CH2)11Si(OCH3)3
(24) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)2Si(OCH3)3
(25) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)4Si(OCH3)3
(26) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)6Si(OCH3)3
(27) (CH2OCH)CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3
(28) (CH2OCH)CH2O(CH2)7Si(OC2H5)3
(29) (CH2OCH)CH2O(CH2)11Si(OC2H5)3
(30) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)2Si(OC2H5)3
(31) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)4Si(OC2H5)3
(32) (CH2CHOCH(CH2)2)CH(CH2)6Si(OC2H5)3
(33) (CH2OCH)(CH2)10Si(OCH3)3
(34) (CH2OCH)(CH2)10Si(OC2H5)3
また、酸素原子から延びた3本の単結合はフィン11の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はフィン11の表面の酸素原子と結合している。
フッ化炭素基を有するアルコキシシラン化合物及びエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物のモル比は特に制限されず、フィン11の種類及び用途、必要とされる防汚性と抗菌防黴性との兼ね合い、並びに用いられる膜化合物の種類等に応じて適宜選択することができる。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
チタン酸エステルキレートの具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、室温における縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
2−メチルイミダゾールはエポキシ基と反応するアミノ基を1−位に有しており、下記の化7に示すような架橋反応により結合を形成する。
(41) 2−メチルイミダゾール(R2=Me、R4=R5=H)
(42) 2−ウンデシルイミダゾール(R2=C11H23、R4=R5=H)
(43) 2−ペンタデシルイミダゾール(R2=C15H31、R4=R5=H)
(44) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R2=Me、R4=Et、R5=H)
(45) 2−フェニルイミダゾール(R2=Ph、R4=R5=H)
(46) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R2=Ph、R4=Et、R5=H)
(47) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R2=Ph、R4=Me、R5=CH2OH)
(48) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R2=Ph、R4=R5=CH2OH)
なお、Me、Et、及びPhは、それぞれメチル基、エチル基、及びフェニル基を表す。
配位結合の形成は、銅塩を溶解した溶液にフッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜13が固定されたフィン11を浸漬し、又はフッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜13上に銅塩を溶解した溶液を塗布することにより、銅塩とフッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜13とを接触させることによって行うことができる。配位結合の形成は室温で行うことができ、反応に要する時間は数十分〜数時間程度である。
溶液には、pHを調整するために、水酸化アルカリ等の塩基を適宜添加してもよい。
また、アミノ基は、化7に示したような1級アミン以外に2級アミンでもよく、アミノ基の代わりにピロール基、イミダゾリル基等のイミノ基を有する官能基を含むアルコキシシラン化合物を用いることができる。
この場合において、用いることができるアミノ基を有するアルコキシシラン化合物の一例としては、下記(51)〜(58)に示した化合物が挙げられる。
(52) H2N(CH2)5Si(OCH3)3
(53) H2N(CH2)7Si(OCH3)3
(54) H2N(CH2)9Si(OCH3)3
(55) H2N(CH2)5Si(OC2H5)3
(56) H2N(CH2)5Si(OC2H5)3
(57) H2N(CH2)7Si(OC2H5)3
(58) H2N(CH2)9Si(OC2H5)3
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、上述のものと同様の化合物を単独で又は2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合と同様であるので、説明を省略する。
ここで、図4は本発明の第1の実施の形態に係る表面に抗菌作用を示す金属(例えば、Cu)微粒子を固定した防汚抗菌防黴性放熱フィンの断面構造を分子レベルまで拡大して模式的に表した説明図、図5は本発明の第2の実施形態に係る防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法において、フッ化炭素基及びチオール基を有する混合単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図、図6は同防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法において、フッ化炭素基及びCu微粒子を有する単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
図6に示す様に、前記チオール基と抗菌作用を示す金属(例えば、Cu)微粒子との間で形成されるチオレート結合を介して、混合単分子膜22の表面に抗菌作用を示すCu微粒子を固定する工程B
とを有する防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法により製造することができる。
また、Yは、(CH2)k(kは1〜3の整数を表す)及び単結合のいずれかを表し、Zは、O(エーテル酸素)、COO、Si(CH3)2、及び単結合のいずれかを表す。
(62) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(63) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(64) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(65) CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(66) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(67) CF3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(68) CF3(CH2)3Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(69) CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(70) CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(71) CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(72) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(82) HSCH2O(CH2)7Si(OCH3)3
(83) HSCH2O(CH2)11Si(OCH3)3
(84) TrCH(CH2)2Si(OCH3)3
(85) TrCH(CH2)4Si(OCH3)3
(86) TrCH(CH2)6Si(OCH3)3
(87) HSCH2O(CH2)3Si(OC2H5)3
(88) HSCH2O(CH2)7Si(OC2H5)3
(89) HSCH2O(CH2)11Si(OC2H5)3
(80) TrCH(CH2)2Si(OC2H5)3
(91) TrCH(CH2)4Si(OC2H5)3
(92) TrCH(CH2)6Si(OC2H5)3
(93) HS(CH2)10Si(OCH3)3
(54) HS(CH2)10Si(OC2H5)3
また、酸素原子から延びた3本の単結合はフィン21の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はフィン21の表面の酸素原子と結合している。
フッ化炭素基を有するアルコキシシラン化合物及びチオール基を有するアルコキシシラン化合物のモル比は特に制限されず、フィン21の種類及び用途、必要とされる防汚性と抗菌防黴性との兼ね合い、並びに用いられる膜化合物の種類等に応じて適宜選択することができる。なお、フッ化炭素基を含む薬剤の添加量が0に近くなれば、当然防汚性はなくなる。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
チタン酸エステルキレートの具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、室温における縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
実施例1:防汚抗菌防黴性放熱フィン1の作成
(1)フッ化炭素基及びエポキシ基を有する混合単分子膜の形成
フィンとして用いたアルミニウムフィンをクロロホルム、アセトン、及びエタノール中で順次超音波洗浄した。次いで、有機溶媒により洗浄を行なったアルミニウムフィンにエキシマ洗浄処理を行なった。このようにして洗浄したアルミニウムフィンを、ペンタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(化14)及び11,12−エポキシドデシルトリメトキシシラン(化15)(EDDS)のトルエン溶液(各0.01mol/L)に2時間浸漬した。その後、アルミニウムフィンを引き上げた後、トルエンですすぎ洗いし大気中で24時間放置した。
上記(1)でフッ化炭素基及びエポキシ基を有する混合単分子膜を形成したアルミニウムフィンを、2−メチルイミダゾールのメタノール溶液(0.1mol/L)5mLを純水50mLで希釈することにより調製した溶液に浸漬して80℃で加熱しながら1時間放置した。基板を引き上げた後、加熱炉により150℃で24時間加熱した。炉から取り出した後、クロロホルム、アセトン、エタノール中で順次超音波洗浄を行なった。このようにして、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基とを反応させて、フッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜を形成した。
上記(2)でフッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜を形成したアルミニウムフィンを、塩化銅(II)0.1mol/L水溶液10mL、純水50mL、及び水酸化ナトリウム0.1mol/L水溶液3mLを混合して調製した溶液に浸漬して室温で2時間放置した。基板を引き上げた後乾燥することにより、銅(II)イオンがイミダゾリル基に配位結合した防汚抗菌防黴性放熱フィン10を得た。
膜化合物としてオクタデシルトリメトキシシランCH3(CH2)17Si(OCH3)3を用いた以外は実施例1(1)と同様の手順により、アルミニウムフィンの表面にアルキル基を有する単分子膜を形成した。
(1)水滴接触角の測定
水滴接触角の評価は、自動接触角計CA−VP型(協和界面科学株式会社)により行った。水滴の滴下量は、3μLで固定し、各サンプルにつき5点測定しその平均値と標準偏差により評価した。エキシマレーザー洗浄処理後のアルミニウムフィン、エポキシ基を有する単分子膜を形成したアルミニウムフィン、イミダゾリル基を有する単分子膜を形成したアルミニウムフィン、イミダゾリル基を有する単分子膜に銅(II)イオン(Cu2+)を配位結合させ防汚抗菌防黴性放熱フィンを形成したアルミニウムフィンのそれぞれについて接触角を測定した。
フッ化炭素基及びエポキシ基を有する単分子膜、フッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する単分子膜、及びアルキル基を有する単分子膜を形成したアルミニウムフィンの赤外吸収スペクトルの測定には、FT−IR Nicolet8700を使用した。測定する基板を、FT−IR装置のサンプル室に入れ、10L/minの流量で5時間窒素置換を行った。まず、単分子膜を形成していないアルミニウムフィンをリファレンスとして測定後、単分子膜を形成した基板を測定し、両者の差スペクトルを得た。また、分光計に付属している偏光板を0〜90度回転させた状態で測定することにより単分子膜の配向性を評価した。
このことから、エポキシ基末端単分子膜と2−メチルイミダゾールとの反応により、イミダゾリル基が単分子膜の表面に結合固定されていることが確認された。
イミダゾリル基へのCu2+の配位を確認するために、紫外可視分光光度計(V−530)を用いて防汚抗菌防黴性放熱フィンを形成したアルミニウムフィンのUV−VISスペクトルの測定を行った。リファレンスとしてイミダゾリル基を有する単分子膜が形成された基板を用い、差スペクトルを得た。なお、単分子膜における微小な吸光度変化を測定するために、イミダゾリル基を有する単分子膜及び防汚抗菌防黴性放熱フィンがそれぞれ形成されたアルミニウムフィン4枚に割り、それらをジグに挟んで積層した状態で測定を行なった。
まず、使用する寒天培地(標準寒天培地、日水製薬株式会社)、及びシャーレをアルミホイルで包み、高温蒸気滅菌器(三洋電機メディカ MLS−3750)にて121℃で15分間滅菌を行なった。次に、寒天培地を作製したシャーレ上に大腸菌(NBRC3301 Escherichia coli)を殖菌し、インキュベータ(三洋電機メディカ MCO−17ALC)内にて、37℃で30分間培養を行なった。次に、大腸菌が繁殖した寒天培地上に、抗菌防黴処理群として防汚抗菌防黴性放熱フィンを形成したアルミニウムフィンと、対照群として未処理のアルミニウムフィンとをそれぞれ置いて、再びインキュベータ内で培養を行なった。培養は9日間行い、その期間中(培養開始から2日、8日、及び9日経過後)に抗菌防黴処理群及び対照群について、培地表面の大腸菌の生育状況を目視にて確認し、その経時変化より抗菌効果を測定した。目視確認は、アルミニウムフィンを取り除いた状態で行った。
(1)フッ化炭素基及びチオール基を有する混合単分子膜の形成
フィンとして用いたAl合金フィンをクロロホルム、アセトン、及びエタノール中で順次超音波洗浄した。次いで、有機溶媒により洗浄を行なったAl合金フィンにエキシマ光を照射して光洗浄処理を行なった。このようにして洗浄したAl合金フィンを、ペンタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(化16)及びω−チオールデシルトリメトキシシラン(化17)(TDTS)(分子組成比1:1)のトルエン溶液(それぞれの濃度は、0.01mol/L)に2時間浸漬した。その後、Al合金フィンを引き上げた後、トルエンですすぎ洗いし大気中で24時間放置した。
前述のフッ化炭素基及びチオール基を混合した状態で含む混合単分子膜を形成したAL合金フィンを、サイズがおよそ10nm程度のCuナノ微粒子を1g/L程度で分散したエタノール溶液中に50℃で1時間程度浸漬して、チオール基とCuナノ粒子を反応固定した。
その後、基板を引き上げた後、水洗乾燥することにより、Cuナノ粒子がチオレート結合を介して単層状でAL合金フィン表面に結合した防汚抗菌防黴性放熱フィンを得た。
(1)水滴接触角の測定
防汚性の目安となる水滴接触角の評価は、自動接触角計CA−VP型(協和界面科学株式会社)により行った。水滴の滴下量は、3μLで固定し、各サンプルにつき5点測定しその平均値と標準偏差により評価した。エキシマ光洗浄処理後のAL合金フィン、Cu微粒子を固定した単分子膜を形成したAL合金フィンのそれぞれについて接触角を測定した。
これに対して、実施例1に置いて、ペンタデカフルオロデシルトリメトキシシランを除いた被膜では、防汚性の目安となる水滴接触角は、15度以下であった。これは、表面が酸化したCuの凸凹により、親水性が増大したためと考えられる。
すなわち、フッ化炭素基を含まない抗菌被膜では、防汚性は全くないことが確認された。
まず、使用する寒天培地(標準寒天培地、日水製薬株式会社)、及びシャーレをアルミホイルで包み、高温蒸気滅菌器(三洋電機メディカ MLS−3750)にて121℃で15分間滅菌を行なった。次に、寒天培地を作製したシャーレ上に大腸菌(NBRC3301 Escherichia coli)を殖菌し、インキュベータ(三洋電機メディカ MCO−17ALC)内にて、37℃で30分間培養を行なった。次に、大腸菌が繁殖した寒天培地上に、抗菌防黴処理群として防汚抗菌防黴性放熱フィンを形成したAL合金フィンと、対照群として未処理のAL合金フィンとをそれぞれ置いて、再びインキュベータ内で培養を行なった。培養は9日間行い、その期間中(培養開始から2日、8日、及び9日経過後)に抗菌防黴処理群及び対照群について、培地表面の大腸菌の生育状況を目視にて確認し、その経時変化より抗菌効果を測定した。目視確認は、AL合金フィンを取り除いた状態で行った。
なお、この試験後でも、水滴接触角は、全く変化がなかった。
11:フィン
12:フッ化炭素基及びエポキシ基を有する混合単分子膜
13:フッ化炭素基及びイミダゾリル基を有する混合単分子膜
20:防汚抗菌防黴性放熱フィン2
21:フィン
22:フッ化炭素基及びチオール基を有する混合単分子膜
23:Cu微粒子をチオレート結合を介して固定した混合単分子膜
Claims (20)
- フィンの表面に化学結合した、フッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び金属原子又は金属イオンと、配位結合を形成する配位結合基を有する第2の膜物質が形成する混合被膜と、前記配位結合基との間に形成される配位結合を介して前記混合被膜の表面に固定された抗菌防黴性の金属原子又は金属イオンを含むことを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 前記第1及び第2の膜物質が、アルコキシシリル基、ハロシリル基、チオール基、スルフィド基、及びカルボキシル基のいずれかと前記フィンの表面との間の反応により形成された結合を介して前記フィンの表面に固定されていることを特徴とする請求項1記載の防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 前記金属原子又は金属イオンが、Ag、Cu、Zn、Sn原子及びこれらの金属のイオンのいずれかであることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンにおいて、第1の膜物質が除外されていることを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンを備えたエアコン。
- 分子の一端にフッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び分子の一端に金属原子又は金属イオンと配位結合を形成する配位結合基を有する第2の膜物質の混合被膜をフィンの表面に形成する工程Aと、
抗菌防黴性の金属原子又は金属イオンと前記配位結合基との間で形成される配位結合を介して、該金属原子又は金属イオンを前記混合被膜の表面に固定する工程Bとを有することを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。 - 前記工程Aが、
分子の一端にフィンの表面と結合を形成する第1の表面結合基を、他端にフッ化炭素基をそれぞれ有する第1の膜化合物、及び分子の一端にフィンの表面と結合を形成する第2の表面結合基を、他端に第1の反応性基をそれぞれ有する第3の膜化合物を該フィンの表面と混合して反応させて、前記フィンの表面に化学結合した前記第1及び第3の膜物質の混合被膜を形成する工程Cと、
前記第1の反応性基と結合を形成する第2の反応性基及び金属原子又は金属イオンと配位結合を形成する配位結合基をそれぞれ有する分子を、前記第1及び第2の反応性基の反応により形成される結合を介して前記第3の膜物質に結合させ、前記第1及び第2の膜物質の混合被膜に変換する工程Dとからなることを特徴とする請求項6記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。 - 前記表面結合基が、アルコキシシリル基、ハロシリル基、チオール基、スルフィド基、及びカルボキシル基のいずれかであることを特徴とする請求項6及び7のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。
- 前記金属原子又は金属イオンが、Ag、Cu、Zn、Sn原子及びこれらの金属のイオンのいずれかであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。
- 請求項6乃至9のいずれか1項に記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法において、第1の膜物質を除外したことを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。
- フィンの表面に化学結合した、フッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び金属原子又は金属微粒子とチオレート結合を形成する結合基を有する第2の膜物質が形成する混合被膜と、前記結合基との間に形成される結合を介して前記混合被膜の表面に固定された抗菌防黴性の金属微粒子とを含むことを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 前記第1及び第2の膜物質が、アルコキシシリル基、ハロシリル基、チオール基、スルフィド基、及びカルボキシル基のいずれかと前記フィンの表面との間の反応により形成された結合を介して前記フィンの表面に固定されていることを特徴とする請求項11記載の防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 前記金属微粒子が、Ag、Cu、Zn、Snであることを特徴とする請求項11及び12のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 請求項11乃至13のいずれか1項に記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンにおいて、第1の膜物質が除外されていることを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィン。
- 請求項11乃至14のいずれか1項に記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンを備えたエアコン。
- 分子の一端にフッ化炭素基を有する第1の膜物質、及び分子の一端に金属原子又は金属微粒子とチオレート結合を形成する結合基を有する第2の膜物質の混合被膜をフィンの表面に形成する工程Aと、
抗菌防黴性の金属微粒子と前記結合基との間で形成される結合を介して、該金属原子又は金属微粒子を前記混合被膜の表面に固定する工程Bとを有することを特徴とする防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。 - 前記工程Aが、
分子の一端にフィンの表面と結合を形成する第1の表面結合基を、他端にフッ化炭素基をそれぞれ有する第1の膜化合物、及び分子の一端にフィンの表面と結合を形成する第2の表面結合基を、他端に第1の反応性基をそれぞれ有する第3の膜化合物を該フィンの表面と混合して反応させて、前記フィンの表面に化学結合した前記第1及び第3の膜物質の混合被膜を形成する工程Cと、
前記第1の反応性基と結合を形成する第2の反応性基及び金属原子又は金属微粒子とチオレート結合を形成する結合基をそれぞれ有する分子を、前記第1及び第2の反応性基の反応により形成される結合を介して前記第3の膜物質に結合させ、前記第1及び第2の膜物質の混合被膜に変換する工程Dとからなることを特徴とする請求項16記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。 - 前記表面結合基が、アルコキシシリル基、ハロシリル基、チオール基、スルフィド基、及びカルボキシル基のいずれかであることを特徴とする請求項16及び17のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。
- 前記金属原子又は金属微粒子が、Ag、Cu、Zn、Snのいずれかであることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンの製造方法。
- 前記フィンが、アルミニウム、またはアルミニウム合金であり、表面が酸化されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項記載の防汚抗菌防黴性放熱フィンおよびエアコン。
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