JP2000351938A - 撥水膜被覆物品を製造する方法および撥水膜被覆用液組成物 - Google Patents

撥水膜被覆物品を製造する方法および撥水膜被覆用液組成物

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JP2000351938A
JP2000351938A JP11164923A JP16492399A JP2000351938A JP 2000351938 A JP2000351938 A JP 2000351938A JP 11164923 A JP11164923 A JP 11164923A JP 16492399 A JP16492399 A JP 16492399A JP 2000351938 A JP2000351938 A JP 2000351938A
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Hiroaki Yamamoto
博章 山本
Kazutaka Kamiya
和孝 神谷
Toyoyuki Teranishi
豊幸 寺西
Mitsuo Asai
光雄 浅井
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Shin Etsu Chemical Co Ltd
Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Shin Etsu Chemical Co Ltd
Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い耐擦傷性、耐候性を有する撥水性物品を
優れた生産性で提供すること。 【解決手段】 アルコール溶媒中にシリコンアルコキシ
ド、フルオロアルキル基含有シラン化合物、および酸を
含む撥水コーティング液を基材に塗布、乾燥する撥水膜
被覆物品を製造する方法において、前記コーティング液
は前記酸および水を、酸/水の重量比が0.58以上で
あるように含有し、そして前記酸はハロゲン化水素を前
記アルコール溶媒に溶解させたものであることを特徴と
する撥水膜被覆物品を製造する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガラス、セラミック
ス、プラスチック或いは金属等の基材表面に撥水膜を形
成した撥水性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス板その他の基材の表面に撥水性被
膜を形成させる際に、基材と撥水性被膜との結合強度を
向上させること、および基材がアルカリ成分を含む場合
にアルカリ成分の拡散を防止して撥水性被膜の耐久性能
を高めることを目的として、基材と撥水層との間にシリ
カ等の下地層を形成する技術が知られている。
【0003】この下地層および撥水性被膜を形成する方
法としては、基材にシリカ等の下地膜を形成した後に撥
水膜を形成する2層膜構造とする方法と、下地成分と撥
水性成分を混合した液を基材に成膜し、単層膜で下地層
と撥水層を形成させる方法が知られている。後者の方法
が成膜工程が少なく生産性に優れ、特公昭63−245
54号公報、特開昭61−215235号公報、特開昭
64−68477号公報、特開平4−338137号公
報、特開平8−239653号公報に開示されるものが
ある。
【0004】特公昭63−24554号公報には、シラ
ノールオリゴマー(20〜40重合体)をフルオロアル
キルシランで変性した撥水性表面処理剤が開示されてい
る。
【0005】特開昭61−215235号公報には、フ
ルオロアルキル基含有シラン化合物とシランカップリン
グ剤をアルコール系溶媒中で酢酸及び有機錫化合物の触
媒を用いて加水分解反応させ、共縮合体を形成させた液
を基材表面に塗布、加熱硬化させた撥水性、防汚性を有
する低反射率ガラスが開示されている。
【0006】特開昭64−68477号公報には、ケイ
素のアルコキシドとフルオロアルキルシランを含有する
アルコール溶液を鋼板表面に塗布した後、加熱すること
を特徴とする撥水性鋼板の製造方法が開示されている。
【0007】特開平4−338137号公報には、シリ
コンアルコキシド、アルコキシル基の一部がフルオロア
ルキル基で置換された置換シリコンアルコキシド、アル
コール、水、および酸(または塩基)を混合した溶液を
ガラス基板表面に塗布して、焼成することを特徴とする
撥水性ガラスが開示されている。
【0008】特開平8−239653号公報には、ペル
フルオロアルキルアルキルシランと完全に加水分解可能
なシラン(例えばテトラクロロシラン)との混合物を溶
媒、好ましくは非水系溶媒に溶解してなる組成物で処理
された撥水性物品が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】特公昭63−2455
4号公報、特開昭61−215235号公報、特開平4
−338137号公報に開示される方法にあっては、ア
ルコール溶液中で触媒の反応を利用して、フルオロアル
キル基含有シランとシリコンアルコキシドを加水分解
し、塗布前の被覆用溶液中で縮重合体及び共縮合体を形
成させるため、撥水性被膜の緻密性は低く、緻密性を上
げるために焼成工程が必要であり、コスト上昇の要因と
なる。
【0010】特開昭64−68477号公報に開示され
る方法にあっては、触媒を添加していないために反応性
が劣り、撥水性被膜の緻密性は低く、緻密性を上げるた
めに焼成工程が必要であり、コスト上昇の要因となる。
【0011】特開平8−239653号公報に開示され
る方法にあっては、その被覆用組成物に使用するクロロ
シランのクロロシリル基は極めて反応性が高く、塗布液
の調合および保存を水を含まない環境で行う必要があ
り、コスト上昇の要因となる。
【0012】本発明は、高い耐擦傷性および高い耐候性
を有する撥水性物品を、優れた生産性で、高温度の焼成
工程を必要とせずに製造することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、アル
コール溶媒中にシリコンアルコキシド、フルオロアルキ
ル基含有シラン化合物、および酸を含む撥水コーティン
グ液を基材に塗布、乾燥する撥水膜被覆物品を製造する
方法において、前記コーティング液は前記酸および水
を、酸/水の重量比が0.58以上であるように含有
し、そして前記酸はハロゲン化水素を前記アルコール溶
媒に溶解させたものであることを特徴とする撥水膜被覆
物品を製造する方法である。
【0014】本発明において、上記コーティング液に用
いるシリコンアルコキシドとして、テトラメトキシシラ
ン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、
テトラブトキシシラン等を挙げることができる。これら
の中で比較的分子量の小さなもの、例えば炭素数が3以
下のアルコキシル基を有するテトラアルコキシシラン
が、緻密な膜となりやすいので好ましく用いられる。ま
たこれらテトラアルコキシシランの重合体であって、平
均重合度が5以下のものでもよい。
【0015】本発明におけるフルオロアルキル基含有の
シラン化合物としては、フルオロアルキル基を含有し、
かつ、アルコキシル基、アシロキシ基、または塩素基を
含有するシラン化合物を好ましく使用することができ、
例えば下記化学式(1)、(2)で示される化合物を挙
げることができる。これらの中から、単独でまたは複数
の物質を組み合わせて使用することができる。
【化1】 CF3−(CF2n−R−SiXp3-p ・・・・・(1) (ここで、nは0から12の整数、好ましくは3から1
2の整数、Rは炭素原子数2〜10の二価の有機基(例
えばメチレン基、エチレン基)、またはケイ素原子およ
び酸素原子を含む基、XはHまたは炭素原子数1〜4の
一価炭化水素基(例えばアルキル基、シクロアルキル
基、アリル基)もしくはこれらの誘導体から選ばれる置
換基、または水素、pは0、1または2、Yは炭素原子
数が1〜4のアルコキシル基、アシロキシ基、又はハロ
ゲン原子)
【0016】上記化学式(1)の化合物の例としては、
次のものを挙げることができる。
【化2】C613CH2CH2Si(OCH33
【化3】C715CH2CH2Si(OCH33
【化4】C817CH2CH2Si(OCH33
【化5】C919CH2CH2Si(OCH33
【化6】C1021CH2CH2Si(OCH33
【化7】C613CH2CH2SiCl3
【化8】C715CH2CH2SiCl3
【化9】C817CH2CH2SiCl3
【化10】C919CH2CH2SiCl3
【化11】C1021CH2CH2SiCl3
【化12】
【化13】C817CH2CH2Si(OC253
【化14】C817CH2CH2Si(OCOCH33
【化15】
【0017】これらの中では、C817CH2CH2SiC
3 (ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン)
および C817CH2CH2Si(CH3)Cl2 (ヘプ
タデカフルオロデシルメチルジクロロシラン)が特に好
ましい。
【0018】本発明において、シリコンアルコキシド、
フルオロアルキル基含有のシラン化合物、酸、アルコー
ル溶媒および水(溶媒中の不純物、雰囲気の湿度から入
るもの等)を含むコーティング液内部で、その調合中、
貯蔵中または塗布後において、酸を触媒として、シリコ
ンアルコキシドと水との間で、式(2)に示す加水分解
反応が行われる。式中、Rはアルキル基である。
【化16】 (−Si−OR)+(H2O)→(−Si−OH)+(ROH)・・・・(2)
【0019】また、この加水分解反応で生成したシラノ
ール基 (−Si−OH)同士が、式(3)に示すように
脱水縮合反応してシロキサン結合(−Si−O−Si−)
を形成する。
【化17】 (−Si−OH)+(−Si−OH)→(−Si−O−Si−)+(H2O)(3)
【0020】シリコンアルコキシド、フルオロアルキル
基含有シラン化合物、酸、溶媒および水を含むコーティ
ング液中で、上記式(2)のようにシリコンアルコキシ
ドのアルコキシ基が加水分解反応するかどうか、およ
び、同じように加水分解反応したシラノール基(−Si
−OH) 同士が、上記コーティング液中で上記式
(3)に示すような脱水縮合反応をするかどうかは、コ
ーティング液中の、酸/水の重量比、酸濃度、シリコン
アルコキシドまたはその加水分解物の濃度、水分量によ
って大きく左右される。コーティング液中の酸/水の重
量比が高い程、溶液の酸濃度がpHで0〜3の範囲にあ
るとき、および、シリコンアルコキシドまたはその加水
分解物の濃度および水分量が低いほど、上記反応が起こ
り難い。
【0021】本発明において、コーティング液中のシリ
コンアルコキシドは、塗布前においては、上記脱水縮合
反応を抑制して、極力低重合度のまま保持され、このコ
ーティング液を基材表面に塗布、乾燥する時に、急激に
上記式(1)、式(2)の反応を起こしてシロキサン結
合を形成させるため、常温で緻密な被膜を形成すること
が可能となった。従来技術のように溶液中でシリコンア
ルコキシドを加水分解、縮重合反応させた場合、溶液を
基材表面に塗布、乾燥する時に重合体同士の結合となる
ために、空隙が生じやすくなり、緻密な被膜にならず、
緻密な被膜にするために焼成硬化が必要であった。従っ
て、本発明において、コーティング液中のシリコンアル
コキシドおよびその加水分解物(部分加水分解物を含
む)は、単量体または20量体未満の重合体であること
が好ましい。しかし、単量体、および20量体未満の重
合体の合計がシリコンアルコキシドおよびその加水分解
物(部分加水分解物を含む)全体に対して80重量%以
上を占める場合には、20量体以上の重合体が含まれて
いても差し支えない。
【0022】また、コーティング液中のシリコンアルコ
キシドまたはその加水分解物の濃度は、できるだけ低い
方が、上記コーティング液のpHと相俟って、上記式
(2)の残りのアルコキシル基の加水分解反応、および
式(3)の脱水縮合反応が塗布前のコーティング液中で
起こりにくくなるので好ましい。しかしこの濃度があま
り低すぎると撥水膜の厚みが小さくなり過ぎて、例えば
膜厚が5nm未満になって、基材がアルカリ成分を含む
場合にアルカリ成分の拡散を防止する能力が低下して、
耐久性能が劣る傾向がある。またシリコンアルコキシド
またはその加水分解物の濃度が2重量%を超えると、得
られる撥水膜の厚みが200nmを超え、撥水膜に傷が
つき易く強固な膜とならない。従ってコーティング液中
のシリコンアルコキシドまたはその加水分解物の濃度
(20量体未満の重合体も含む)の好ましい範囲は、シ
リカに換算して0.01〜2重量%であり、更に好まし
い範囲は、0.01〜0.6重量%である。
【0023】コーティング液中のフルオロアルキル基含
有シラン化合物の濃度は低すぎると撥水性が低下し、多
すぎると膜の硬度が小さくなるので、コーティング液中
のフルオロアルキル基含有シラン化合物の好ましい濃度
範囲は、シリカに換算して、0.00001〜0.15
重量%、更に好ましくは0.0001〜0.03重量%
である。また前記コーティング液中のシリコンアルコキ
シド含有量(シリカに換算した重量)に対するフルオロ
アルキル基含有シラン化合物の含有量(シリカに換算し
た重量)の比率は、塗布乾燥された撥水膜の中の、シリ
カに対するフルオロアルキル基の含有量にほぼ対応す
る。従って、前記コーティング液中のシリコンアルコキ
シド含有量に対するフルオロアルキル基含有シラン化合
物の含有量は小さすぎると撥水膜の撥水性能が低下し、
また多すぎると撥水膜の耐久性能が低下する。従ってコ
ーティング液中で、重量で表して、[フルオロアルキル
基含有シラン化合物量(シリカ換算)]/[シリコンア
ルコキシドまたはその加水分解物量(シリカ換算)]の
値は、0.0005〜0.5であることが好ましく、よ
り好ましくは0.0005〜0.3である。
【0024】本発明において、上記コーティング液中に
含有される酸および水は、酸/水の重量比が0.58以
上であるように調節される。酸/水の重量比を0.58
以上に保つことにより、塗布前のコーティング液中で、
シリコンアルコキシドの加水分解物の加水分解反応およ
び脱水縮合反応を抑制し、かつコーティング液塗布後の
乾燥の際に膜厚のムラの発生を防止する。その結果、得
られた撥水膜は非常に優れた耐擦傷性、耐候性を有す
る。
【0025】本発明における酸触媒の種類としては、常
温の乾燥で揮発して膜中に残らないという観点から、塩
酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ酸等のハロゲン化
水素酸が用いられ、なかでも、高い揮発性を有し、取り
扱う際にも比較的安全な塩酸が特に好ましい。これらの
酸としては、水を含まない形の、ものが使用され、塩化
水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素のようなハロ
ゲン化水素をコーティング液のアルコール溶媒に溶解す
る。これによりコーティング液中の酸/水の重量比を
0.58以上に保つことが容易になる。もし、水溶液の
形の塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を用いた場合に
は、これらに含まれる水分がコーティング液に混入され
ることになり、コーティング液中の酸/水の重量比を
0.58以上に保つことが容易でなくなる。
【0026】本発明において、上記コーティング液中の
酸触媒の濃度を0.001〜3規定に保つことが好まし
く、それにより、上記式(2)の残りのアルコキシル基
の加水分解反応、および上記式(3)の脱水縮合反応が
塗布前のコーティング液中で起こりにくくなり、コーテ
ィング液が塗布された直後に急激にこれらの反応が進行
する。コーティング液中の酸のより好ましい濃度は0.
01〜1規定である。
【0027】本発明において、コーティング液は、前記
シリコンアルコキシド、前記フルオロアルキル基含有シ
ラン化合物、および前記酸の他に、例えば、少量のメチ
ルトリアルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシ
ラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリポロポキ
シシラン、メチルトリブトキシシランを、シリカに換算
して、前記シリコンアルコキシド含有量の50重量%以
下の量、含有することができる。
【0028】本発明において、コーティング液は、まず
アルコール溶媒に塩化水素(HCl)ガス,臭化水素
(HBr)ガス,又はヨウ化水素(HI)ガス等を溶解
させ、必要に応じて溶媒を添加し所定の酸濃度に調整し
た後、フルオロアルキル基含有シラン化合物およびシリ
コンアルコキシドを添加し、10〜60分間攪拌するこ
とにより調製される。このコーティング液の寿命は比較
的に長いが、コーティング液中の酸/水の重量比が0.
58以上であっても、比較的酸触媒量が少ない場合や水
分量が多い場合は、塗布前のコーティング液中で加水分
解、縮重合反応が進み過ぎるおそれがあるので、調製後
2時間以内に塗布した方が好ましい。上記調製されたコ
ーティング液を基板表面に塗布した後、室温で10秒〜
10分間乾燥して溶媒を蒸散させることにより撥水性物
品が得られる。
【0029】また、上記アルコール溶媒としては、メタ
ノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノ
ール、ブチルアルコール、アミルアルコール等を挙げる
ことができるが、それらの中で、メタノール、エタノー
ル、1−プロパノール、2−プロパノールのような炭素
数が3以下の鎖式飽和1価アルコールが、常温における
蒸発速度が大きいので好ましく用いられる。なお、水添
加量を制御するために、脱水処理を行って例えば含水量
を0.005重量%以下にした溶媒を使用してもよい。
【0030】コーティング液中に多量の水が存在する
と、コーティング液中の酸/水の重量比を0.58未満
となって、塗布前のコーティング液中で、シリコンアル
コキシドの加水分解物の加水分解反応が促進され、かつ
脱水縮合反応が起こりやすくなり、またコーティング液
塗布後の乾燥の際に膜厚のムラが生じ易くなるので、コ
ーティング溶液中の水の濃度が高すぎるのは好ましくな
い。従って、コーティング液中の水の濃度は0〜5重量
%であることが好ましい。このようにコーティング溶液
中の水の濃度を維持することにより、上記のコーティン
グ液中の酸/水重量比、コーティング液のpH維持およ
びコーティング液中のシリコンアルコキシド(またはそ
の加水分解物)の濃度維持と相俟って、上記式(2)の
残りのアルコキシル基の加水分解反応、および式(3)
の脱水縮合反応が塗布前のコーティング液中で起こりに
くくなるので好ましい。コーティング液中の水の濃度が
ゼロであっても、基材に塗布された後の塗布膜には空気
中の水分が吸収されるので加水分解反応が阻害されるこ
とはない。 しかし、加水分解の程度を制御するため
に、所定量の水をコーティング液の調合時点で添加する
のが一般的である。
【0031】シリコンアルコキシド、フルオロアルキル
基含有シラン化合物、および酸を溶媒に溶解して、酸/
水の重量比を0.58以上に保たれた溶液を攪拌する
と、溶液中では、上記式(2)の反応により主としてシ
リコンアルコキシドが加水分解物を形成し、かつ、前記
式(3)の反応によりその加水分解物の一部が脱水縮合
反応する。このようにしてコーティング液が調製され、
このコーティング液中には、シリコンアルコキシドが単
量体(加水分解物を含む)または20量体未満の重合体
の形で存在する。
【0032】上記コーティング液が基材に塗布される
と、塗布されて膜状となった液の比表面積が増大するの
で、膜中のアルコール溶媒が急速に蒸発して、シリコン
アルコキシドおよびその加水分解物の塗膜中濃度が急に
高くなり、それまで抑制されていた加水分解反応および
脱水縮合反応(上記20量体未満の重合体の更なる縮重
合反応を含む)が急激に起こってシロキサン結合(・・S
i−O−Si・・)が塗布膜内で多数生成され、その結果、
基材表面と撥水膜との間の結合が強固な、膜厚が5〜2
00nm以下のシリカを主成分とする緻密性の高い膜が
形成される。このように、本発明においては、成膜時の
反応性が高く、室温で反応して、非常に緻密な膜が形成
され、その後の焼成は必要ではない。
【0033】従来のように塗布前のコーティング液中
に、すでに脱水縮合反応によるシロキサン結合が多数存
在して、20以上の重合度の重合体が含有され場合に
は、得られた撥水膜中にシロキサン結合は存在するが、
基材表面と撥水膜とをつなぐシロキサン結合はそれほど
多く生成されないので、基材表面と撥水膜との間の結合
はそれほど強固ではない。そしてこの結合を強固にする
ために、従来は、更に高温度の焼成を必要とする。
【0034】本発明において、コーティング液中におけ
るフルオロアルキル基含有シラン化合物中のアルコキシ
ル基(またはアシロキシ基、塩素基)は、上記のシリコ
ンアルコキシドとほぼ同じ反応が進む。コーティング液
を基材に塗布すると、フルオロアルキル基の表面エネル
ギーが低いために、フルオロアルキルシラン成分が塗布
膜の外側表面に移動し、および/または、フルオロアル
キル基部分が塗布膜の外側表面に向かうように規則的に
フルオロアルキル基含有シラン化合物が配向し、外側表
面層では塗布膜の内層に比してフルオロアルキル基が高
い濃度で存在する。式(3)、式(4)の反応、すなわ
ち、シリコンアルコキシドのケイ素同士がシロキサン結
合を形成する反応および基板表面のケイ素とシリコンア
ルコキシド中のケイ素がシロキサン結合を形成する反応
はフルオロアルキル基含有のシラン化合物がシリコンア
ルコキシドとシロキサン結合を形成する反応よりも起こ
り易く、結果として膜の最表面にフルオロアルキル基が
集まり易くなる。
【0035】上記塗布膜の乾燥が進行していくと、上記
フルオロアルキル基含有シラン化合物の配向を保ったま
まの状態で、シリコンアルコキシドのアルコキシル基と
フルオロアルキル基含有シラン化合物中のアルコキシル
基(またはアシロキシ基、塩素基)が式(2)、式
(3)とほぼ同じ反応が進んで、フルオロアルキル基含
有シラン化合物がシリコンアルコキシドとシロキサン結
合を介して強く結合し、最終的にフルオロアルキルシラ
ン変性シラノールポリマーのゲル層を形成する。
【0036】塗布膜の乾燥が進んでいくと、基板上には
強固に結合したシリカ層が形成され、そのシリカ層の表
面にフルオロアルキル基が高い密度でしかも規則的に配
向した状態で結合される。
【0037】もし、コーティング液中の酸/水の重量比
を本発明におけるよりも低くし、酸濃度を本発明におけ
るよりも低くし、またはシリコンアルコキシド(または
その加水分解物)の濃度を本発明におけるよりも高くし
て、混合攪拌後した後、例えば10日間放置して得られ
たコーティング液の中では、その塗布前に、シリコンア
ルコキシドおよびフルオロアルキル基含有シラン化合物
の加水分解、脱水縮合反応を進んでおり、このコーティ
ング液を基板に塗布・乾燥して得られた撥水膜表面のフ
ッ素濃度は、FとSiの原子比でF/Si=0.5程度
の低い値であることがX線光電子分光法(ESCA)に
より確かめられた。なお、X線光電子分光法(ESC
A)の試験条件は、X線源として、モノクロ化したアル
ミニウムのKα線を用いて、アノードエネルギー;14
86.6eV、アノード出力;150W、加速電圧;1
4kV、試料に対するX線入射角;45度、分析面積;
直径800μmの円、測定厚み;数nmである。
【0038】これに対して、本発明においては、コーテ
ィング液中の酸/水の重量比を本発明の範囲に保って得
られるコーティング液の中では、その塗布前には、シリ
コンアルコキシド(またはその加水分解物)およびフル
オロアルキル基含有シラン化合物の上記加水分解、縮重
合反応は抑制され、そして塗布後の成膜時に急激に反応
が進行する。従って本発明で得られた撥水膜表面のフッ
素濃度が、FとSiの原子比で0.8以上、例えばF/
Si=1.2であり、上記の溶液中で加水分解、脱水縮
合反応を進めた場合に比して非常に高いことが確かめら
れている。また、上記コーティング液中で加水分解、縮
重合反応を進めた場合は、膜を硬くするために250
℃、1時間程度の焼成が必要であり、この焼成時の温度
上昇により基板中のアルカリ成分が膜中に拡散してフル
オロアルキル基の撥水作用を阻害する傾向がある。しか
し、本発明により得られた膜は十分な硬さを有しており
焼成は不要であり、そして膜の硬度を更に高めるために
焼成しても焼成前の膜は十分に緻密であるので、アルカ
リ成分が膜に拡散することが殆どなく、従ってフルオロ
アルキル基の撥水作用が阻害されることはない。
【0039】本発明による撥水膜が優れた耐擦傷性を示
す理由の一つは、撥水膜表面の平滑性によると推定され
る。そしてこの優れた平滑性が得られる理由は次のよう
に推測される。すなわち、塗布前のコーティング液中
で、シリコンアルコキシドおよびフルオロアルキル基含
有シラン化合物、特にシリコンアルコキシドが単量体
(加水分解物を含む)または20量体未満の重合体の形
で溶媒中に均一に溶解しており、しかも塗布された後に
は高濃度の酸触媒の存在およびシリコンアルコキシド
(加水分解物を含む)の濃度の急速上昇の効果で、室温
で緻密な撥水膜を形成させるために優れた平滑性が得ら
れると推測される。
【0040】更に、本発明では、成膜時に自然に撥水基
が配向させられるため、従来のように後から化学吸着や
手塗り等で撥水処理するよりも配向性の良い撥水層を形
成することができると考えられる。従って本発明によれ
ば、撥水被膜表面の撥水基密度が高く、撥水基の配向性
も優れ、更に表面の平滑性の効果が合わさって、優れた
耐候性、耐擦傷性が得られる。
【0041】また、本発明では、成膜時に自然に撥水基
を配向させるための、コーティング液の塗布方法として
は、塗布膜をある程度ゆっくり乾燥させることができる
方法が好ましい。例えばディップコーティング、フロー
コーティング、カーテンコーティング、スピンコーティ
ング、スプレーコーティング、バーコーティング、ロー
ルコーティング、刷毛塗りコーティングなどが挙げられ
る。
【0042】また、従来、例えばソーダライムガラスの
ようなアルカリ分を含む基板にゾルゲル法による撥水膜
を形成した場合は、撥水膜の硬度および緻密性を高くす
るために行われる焼成時に基板のアルカリ分が被膜中に
拡散し、そのアルカリ分が撥水性能の耐久性を低下させ
ていた。これに対して、本発明では、焼成を行わなくて
も、撥水膜の硬度および緻密性は高く、非常に優れた耐
久性能を有する撥水膜となる。
【0043】本発明では、前記撥水処理液を基材表面に
塗布し、室温または150℃以下の温度で乾燥した後、
または乾燥せずに、撥水膜の緻密性を更に高くする目的
で、その温度よりも高く300℃以下の温度で焼成する
ことも可能である。そして焼成の前に撥水膜が十分に緻
密になっているので、焼成時の温度上昇によっても基板
中のアルカリ成分が膜中に拡散してくることは少なく、
焼成により撥水性能の耐久性が低下することはない。
【0044】本発明における基材としては、ガラス、セ
ラミックス、プラスチック或いは金属等の、透明または
不透明の板状体、棒状体その他の種々の形状のものが挙
げられる。これらの中で、透明性が特に要求される、自
動車の窓ガラス、サイドミラー、およびショーウィンド
ウのような建築用ガラス板などの基材が好ましく用いら
れる。基材の表面に親水性基が少ない場合には、その表
面を予め酸素を含むプラズマまたはコロナ雰囲気で処理
して親水性化したり、あるいは、基材表面を酸素を含む
雰囲気中で200〜300nm付近の波長の紫外線を照
射して、親水性化処理を行った後に、表面処理を行うこ
とが好ましい。
【0045】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。各実施例および比較例で次のような材料を使用し
た。 ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン;(CF
3(CF27(CH2 2Si(OCH33 (信越シリコ
ーン製)。 テトラエトキシシラン;(Si(OCH2CH3
4 (信越シリコーン製)。 ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン;(CF3
(CF27(CH22SiCl3 、信越シリコーン
製)。 濃塩酸;35重量%、関東化学製。 ガラス基板:3mm×150mm×150mmの寸法の
ソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のフロートガラス板。
【0046】[実施例1]濃塩酸(濃度35重量%)9
0gに濃硫酸(濃度95重量%)600gを滴下し、発
生した塩化水素(HCl)ガスを脱水エタノール(関東
化学製、含有水分量0.005%以下) 500gに溶
解させて、HClを4.8重量%含有するHClエタノ
ール溶液を作製した。このHClエタノール溶液100
gに、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
0.02gとテトラエトキシシラン1.2gを添加し、
さらに水1.3gを添加し30分間攪拌して、コーティ
ング用組成物を得た。この被覆用溶液中の、シリコンア
ルコキシドおよびその加水分解物の合計の含有量は、シ
リカ換算で、0.35重量%であり、フルオロアルキル
基含有シラン化合物の含有量は、シリカ換算で、0.0
021重量%であり、塩酸の濃度は1.0規定、水含有
量は1.3重量%であった。この被覆用溶液中でのHC
l/水の重量比は3.8であった。
【0047】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
の表面上に、湿度30%、室温下でフローコート法にて
塗布し、室温で約1分乾燥させて撥水性ガラス板を得
た。
【0048】得られた撥水性ガラス板について、水の接
触角を接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)
を用いて、2mgの重量の水滴による静的接触角として
測定した。この接触角の値が大きいほど、静的な撥水性
が優れていることを表している。
【0049】次に、耐候性試験として耐紫外線試験機
(「アイスーパーUVテスター W−13」、岩崎電気
製)を用いて、紫外線強度76±2mW/cm2 とし、
ブラックパネル温度48±2℃、照射20時間、暗黒4
時間のサイクルで、 1時間毎に30秒間イオン交換水シ
ャワーリングをする条件で、上記撥水性ガラス板に対し
て、400時間紫外線を照射した。そして照射後に水の
接触角および臨界傾斜角を測定した。また、耐摩耗性試
験として往復摩耗試験機(新東科学(株)製)に乾布を
取り付けて、荷重0.3kg/cm2 の条件で撥水膜表
面を5000回往復摺動させ、その後に水の接触角を測
定した。撥水膜の初期接触角、耐候性試験後の接触角、
ならびに耐摩耗試験後の接触角の値の測定結果を表1に
示す。
【0050】[実施例2]実施例1で得た4.8重量%
HClのエタノール溶液100gに、ヘプタデカフルオ
ロデシルトリメトキシシラン 0.02gとテトラエト
キシシラン 1.2gを添加し、さらに水0.5gを添
加し30分間攪拌して、コーティング用組成物を得た。
この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびその加
水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で、0.34重
量%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の含
有量は、シリカ換算で、0.0021重量%であり、塩
酸の濃度は1.0規定、水含有量は0.5重量%であっ
た。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は9.7
であった。
【0051】このコーティング用組成物を実施例1と同
様の方法で塗布し、撥水性ガラスを得た。実施例1と同
様に測定した結果を表1に示す。
【0052】[実施例3、4]濃塩酸90gに濃硫酸6
00gを滴下し、発生したHClガスを脱水エタノール
(関東化学製、含有水分量0.005重量%以下)50
0gに溶解させてHClを4.8wt%含有するHCl
エタノール溶液を作製した。このHClエタノール溶液
312.5gにさらに脱水エタノール187.5g添加
し、HClを3.0wt%含有するHClエタノール溶
液を得た。この3.0%HClエタノール溶液100g
に、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
0.02gとテトラエトキシシラン 1.2gを添加
し、さらに実施例3として水1.3gを、実施例4とし
て水0.5gを添加し30分間攪拌して、コーティング
用組成物を得た。この被覆用溶液中のシリコンアルコキ
シドおよびその加水分解物の合計の含有量は、シリカ換
算で、実施例3、4ともに0.34重量%であり、フル
オロアルキル基含有シラン化合物の含有量は、シリカ換
算で、実施例3、4ともに0.0021重量%であり、
塩酸の濃度は実施例3、4ともに0.63規定であり、
水含有量は実施例3で1.3重量%、実施例4で0.5
重量%であった。この被覆用溶液中でのHCl/水の重
量比は実施例3で2.4、また実施例4で6.0であっ
た。
【0053】このコーティング用組成物を実施例1と同
様の方法で塗布し、撥水性ガラスを得た。実施例1と同
様に測定した結果を表1に示す。
【0054】[実施例5]実施例2で得た3.0重量%
HClのエタノール溶液100gに、ヘプタデカフルオ
ロデシルトリメトキシシラン 0.02gとテトラエト
キシシラン 0.3gを添加し、さらに水3.0gを添
加し30分間攪拌して、コーティング用組成物を得た。
この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびその加
水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で、0.084
重量%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の
含有量は、シリカ換算で、0.0020重量%であり、
塩酸の濃度は0.62規定、水含有量は2.9重量%で
あった。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は
1.0であった。
【0055】このコーティング用組成物を実施例1と同
様の方法で塗布し、撥水性ガラスを得た。実施例1と同
様に測定した結果を表1に示す。
【0056】[実施例6]実施例2で得た3.0重量%
HClのエタノール溶液100gに、ヘプタデカフルオ
ロデシルトリメトキシシラン 0.02gとテトラエト
キシシラン 2.4gを添加し、さらに水3.0gを添
加し30分間攪拌して、コーティング用組成物を得た。
この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびその加
水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で、0.65重
量%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の含
有量は、シリカ換算で、0.0021重量%であり、塩
酸の濃度は0.61規定、水含有量は2.9重量%であ
った。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は1.
1であった。
【0057】このコーティング用組成物を実施例1と同
様の方法で塗布し、撥水性ガラスを得た。実施例1と同
様に測定した結果を表1に示す。
【0058】[実施例7]実施例2で得た3.0重量%
HClのエタノール溶液100gに、ヘプタデカフルオ
ロデシルトリメトキシシラン 0.15gとテトラエト
キシシラン 6.0gを添加し、さらに水1.3gを添
加し30分間攪拌して、コーティング用組成物を得た。
この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびその加
水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で1.61重量
%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の含有
量は、シリカ換算で0.014重量%であり、塩酸の濃
度は0.60規定、水含有量は1.2重量%であった。
この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は2.5であ
った。
【0059】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
の表面上に、湿度30%、室温下で、引き上げ速度60
mm/minにてディップ法にて塗布し、室温で約1分
乾燥させて撥水性ガラス板を得た。実施例1と同様に測
定した結果を表1に示す。
【0060】[実施例8]実施例2で得た3.0重量%
HClのエタノール溶液100gに、ヘプタデカフルオ
ロデシルトリメトキシシラン 0.004gとテトラエ
トキシシラン0.24gを添加し、さらに水1.3gを
添加し30分間攪拌して、コーティング用組成物を得
た。この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびそ
の加水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で0.07
重量%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の
含有量は、シリカ換算で0.00042重量%であり、
塩酸の濃度は0.63規定、水含有量は1.3重量%で
あった。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は
2.3であった。
【0061】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
の表面上に、湿度30%、室温下で、スプレー塗布し、
室温で約1分乾燥させて撥水性ガラス板を得た。実施例
1と同様に測定した結果を表1に示す。
【0062】[比較例1]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 81.2gにテトラエトキシシラン9.
5gとヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
0.26gを添加し、20分間攪拌し、次いでこれに水
4.04gと0.1N塩酸5.0gを加えて2時間攪拌
した。ついでこの溶液を密封容器に入れて25℃で10
日間静置して、溶液を得た。この溶液をエタノール(含
有水分量0.35重量%)で5倍に希釈して撥水被覆用
溶液を得た。この被覆用溶液中のシリコンアルコキシド
およびその加水分解物の合計の含有量は、シリカ換算
で、0.55重量%であり、フルオロアルキル基含有シ
ラン化合物の含有量は、シリカ換算で、0.0055重
量%であり、塩酸の濃度は0.001規定、水含有量は
2.1重量%であった。そして、この被覆用溶液中での
HCl/水の重量比は0.0017であった。
【0063】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
上にフローコート法にて塗布し、それを湿度30%、温
度21℃の乾燥室内で乾燥させた後、更に大気中で12
0℃で、20分間乾燥させ、次に250℃で1時間焼成
して、撥水性ガラス板を得た。
【0064】表1に示すように、上記で得られた撥水性
ガラス板は、初期接触角は101度であり優れているも
のの、耐候性および耐磨耗性が劣り、耐候試験後および
耐磨耗性試験後の接触角はそれぞれ65度および96度
であり、実施例のそれぞれ90度以上および100度以
上に比して非常に劣っている。なお、上記の250℃で
の1時間焼成を行わずに塗布・乾燥のみ行って得られた
撥水性ガラス板は、初期接触角は102度であり優れて
いるものの、耐摩耗性試験後の接触角は76度であり、
耐摩耗性が非常に劣っていた。その理由はおそらく、撥
水被覆用溶液(希釈前)中のテトラエトキシシランの濃
度が高く、しかも調合後に10日間静置したために、塗
布前の撥水被覆用溶液中でテトラエトキシシランの加水
分解および縮重合反応が進んで、テトラエトキシシラン
の20量体以上の重合体が生成しているものと推定され
る。
【0065】[比較例2]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 85.3gにテトラエトキシシラン40
gとヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
1.92gを添加し、20分間攪拌し、次いで水16.
6gと0.1N塩酸20.8gを加えて2時間攪拌し、
これを密閉容器に入れ、25℃で24時間放置して撥水
被覆用溶液を得た。この被覆用溶液中のシリコンアルコ
キシドおよびその加水分解物の合計の含有量は、シリカ
換算で、7.0重量%であり、フルオロアルキル基含有
シラン化合物の含有量は、シリカ換算で、0.12重量
%であり、塩酸の濃度は0.010規定、水含有量は2
2.9重量%であった。そして、この被覆用溶液中での
HCl/水の重量比は0.0020であった。洗浄した
ガラス基板をこの撥水被覆用溶液に浸漬し、引き上げて
塗布し、乾燥後、250℃で1時間焼成して、撥水性ガ
ラス板を得た。
【0066】表1に示すように、上記で得られた撥水性
ガラス板は、初期接触角は104度であり優れているも
のの、耐候性および耐磨耗性が劣り、耐候性試験後およ
び耐磨耗性試験後の接触角はそれぞれ67度および96
度であり、実施例のそれぞれ90度以上および100度
以上に比して非常に劣っている。
【0067】[比較例3]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 100gにヘプタデカフルオロデシルト
リメトキシシラン 0.02gとテトラエトキシシラン
1.2gを添加し、30分間攪拌し、次いで濃塩酸
2gを撹拌しながら添加し、撥水被覆用溶液を得た。こ
の被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびその加水
分解物の合計の含有量は、シリカ換算で、0.35重量
%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物の含有
量は、シリカ換算で、0.0021重量%であり、塩酸
の濃度は0.15規定、水含有量は1.6重量%であっ
た。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比は0.4
2であった。
【0068】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
の表面上に、湿度30%、室温下でフローコート法にて
塗布し、室温で約1分乾燥させて撥水性ガラス板を得
た。実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
【0069】[比較例4]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 100gにヘプタデカフルオロデシルト
リメトキシシラン 0.02gとテトラエトキシシラン
1.2gを添加し、30分間攪拌し、次いで濃塩酸
8.5gを撹拌しながら添加し、撥水被覆用溶液を得
た。この被覆用溶液中のシリコンアルコキシドおよびそ
の加水分解物の合計の含有量は、シリカ換算で、0.3
2重量%であり、フルオロアルキル基含有シラン化合物
の含有量は、シリカ換算で、0.0019重量%であ
り、塩酸の濃度は0.58規定、水含有量は5.4重量
%であった。この被覆用溶液中でのHCl/水の重量比
は0.51であった。
【0070】この撥水被覆用溶液を洗浄したガラス基板
の表面上に、湿度30%、室温下でフローコート法にて
塗布し、室温で約1分乾燥させて撥水性ガラス板を得
た。実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
シリコンアルコキシドおよびフルオロアルキル基含有シ
ラン化合物を溶媒に溶解し、高濃度の揮発性の酸および
低濃度の水を含有するコーティング液を基材に塗布し、
常温で乾燥することにより、耐久性が優れ、緻密で強固
な被膜が得られる。また本発明では、撥水膜の成膜後に
焼成を行う必要がなく、その結果、大掛りな設備も不要
となり、製造コストも低減される。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09K 3/18 104 C09K 3/18 104 (72)発明者 神谷 和孝 大阪市中央区道修町3丁目5番11号 日本 板硝子株式会社内 (72)発明者 寺西 豊幸 大阪市中央区道修町3丁目5番11号 日本 板硝子株式会社内 (72)発明者 浅井 光雄 群馬県碓氷郡松井田町大字人見1番地10 信越化学工業株式会社シリコーン電子材料 技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 CA02 CA32 CA36 DB13 EB16 EB42 EB56 EC30 4G059 AA01 AC22 FA05 FA22 FA28 FB06 4H020 BA36 4J038 DL021 DL031 HA096 JC32 NA07 PC02 PC03 PC08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコール溶媒中にシリコンアルコキシ
    ド、フルオロアルキル基含有シラン化合物、および酸を
    含む撥水コーティング液を基材に塗布、乾燥する撥水膜
    被覆物品を製造する方法において、前記コーティング液
    は前記酸および水を、酸/水の重量比が0.58以上で
    あるように含有し、そして前記酸はハロゲン化水素を前
    記アルコール溶媒に溶解させたものであることを特徴と
    する撥水膜被覆物品を製造する方法。
  2. 【請求項2】 前記コーティング液は、 (A)シリコンアルコキシドまたはその加水分解物 (シリカ換算) 0.01〜2重量%、 (B)フルオロアルキル基含有シラン化合物 (シリカ換算) 0.00001〜0.15重量%、 (C)酸 0.001〜3規定、 および (D)水 0〜5重量% を含有する請求項1に記載の撥水膜被覆物品を製造する
    方法。
  3. 【請求項3】 前記ハロゲン化水素は塩化水素である請
    求項1または2に記載の撥水膜被覆物品を製造する方
    法。
  4. 【請求項4】 前記シリコンアルコキシドはテトラメト
    キシシランまたはテトラエトキシシランである請求項1
    〜3のいずれか1項に記載の撥水膜被覆物品を製造する
    方法。
  5. 【請求項5】 前記フルオロアルキル基含有シラン化合
    物はアルコキシル基、アシロキシ基、または塩素基を含
    有するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    撥水膜被覆物品を製造する方法。
  6. 【請求項6】 前記フルオロアルキル基含有シラン化合
    物は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランま
    たはヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランである
    請求項5に記載の撥水膜被覆物品を製造する方法。
  7. 【請求項7】 (A)シリコンアルコキシドまたはその加水分解物 (シリカ換算) 0.01〜2重量%、 (B)フルオロアルキル基含有シラン化合物 (シリカ換算) 0.00001〜0.15重量%、 (C)ハロゲン化水素酸 0.001〜3規定、 および (D)水 0〜5重量%、 ただし、酸/水の重量比が0.58以上である、 を含有する撥水膜被覆用液組成物。
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