JP2010275173A - シリコンシートおよび太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池用などに用いられるシリコンシートにおいて、良好な半導体特性を付与し、そのシリコンシートを用いた太陽電池のさらなる高効率化を図ること。
【解決手段】本発明は、シリコン融液に被接触体を接触させて形成される多結晶シリコンシートであって、0.04〜0.2ppmwのボロンを含有することを特徴とする多結晶シリコンシートである。両方または一方の主面に凹凸を有することが好ましい。また、前記両方の主面の凹凸の周期が同一であることが好ましい。
【選択図】図4

Description

本発明は太陽電池用などに用いられるシリコンシートに関する。
太陽電池の作製などに用いられるシリコン基板(シリコンシート)は、例えば、特開平11−21120号公報(特許文献1)、特開平11−92284号公報(特許文献2)に開示されているようなキャスト法により一般的に製造されている。キャスト法は、坩堝内で溶解したシリコンを坩堝底面から徐々に冷却することによってシリコン融液を固化させ、坩堝底面から上方に向けて成長した長い柱状結晶構造を主体とするインゴット(凝固塊)を製造する方法である。
しかし、キャスト法は、インゴットにクラックを生じさせないようにして成長させるために、また半導体品質確保の観点から、一つのシリコンインゴットの製造には数十時間もの長時間を要する。また、インゴットからシリコン基板を切り出すスライス工程にも長時間を要し、マルチワイヤーソーによるスライス技術を用いても数十時間を要する。したがって、キャスト法を利用したシリコン基板の作製において、大幅なコストの低減を行うことは困難な状況にある。
他方、別のシリコン基板の製造方法としてスライスが不要なウエブ(web)法やEFG(edge-defined film-fed growth)法によるシリコンリボンの成長方法も研究されている。また、近年ではより速い成長を目指して、シリコン融液から直接的に薄板状のシリコンリボンを作製するRGS(ribbon growth on substrate)法が注目されるようになっている(非特許文献1)。
RGS法は、凝固成長面に近い面からの高速熱移動(抜熱)によってシリコンリボンの高速成長を行うものである。具体的には、溶融シリコンの側部周囲を支える側部支持枠に対してその開放下面を支える下面支持平板を冷却しながら相対的に横方向に移動させることにより、その下面支持平板上にシリコンリボンを高速成長させる方法である。以下、ウエブ法、EFG法、RGS法などのシリコンリボン作成法をリボン作成法という。
さらに別のシリコン基板の製造方法としては、シリコン融液に基体を接触させて液相からの凝固によって直接的にシート状のシリコン基板を得る方法(シート形成法)が、たとえば、特開2001−223172号公報(特許文献3)に開示されている。
なお上述したリボン作成法・シート形成法によって得られるシリコン基板は多結晶体であるが、多結晶体においては、(1)粒界では物質の拡散速度が速いこと、および(2)物質が固化(凝固)する際、粒界に不純物が偏析しやすいという2つの現象が一般的に知られている。
このことより、不純物濃度が高い状態のときには、粒界部分に不純物偏析が増えることとなる。よって、多結晶シリコン基板では粒界に不純物であるボロンが偏析し、粒界部分の抵抗値が周囲より低くなると考えられる。
これにより、太陽電池モジュール内の一部のウエハ(シリコンシート)が日陰になった状態を想定し、逆方向に電流を流す試験である逆耐圧試験においては、受光面側にあるpn接合層が電気を通さないように働くため、ウエハ面内で抵抗の低い部分を伝わって電流(短絡電流)が流れることになる。このため上記の抵抗の低い粒界部分に集中して電流が流れることになる。
また、非特許文献2によると、現在の太陽電池用の多結晶シリコンシートの比抵抗値は実験によって経験的に太陽電池特性が良好となるとされる1〜3Ω・cm程度が一般的であるが、理論的には比抵抗値が3Ω・cmを超えても10Ω・cm程度までは比抵抗が大きくなるにともなってライフタイムが増大し、太陽電池特性を大きく悪化させないことが示唆されている。
しかし、比抵抗が10Ω・cmを超えるとライフタイムの伸びが小さくなり、また発電された電流のロスが大きくなって効率が悪くなってしまうため、10Ω・cmを超える高比抵抗のウエハは望ましくない。
特開平11−21120号公報 特開平11−92284号公報 特開2001−223172号公報
26thPVSC,1997,pp.91−93 L. J. Geerlings ほか,「Base Doping and Recombination Activity of Impurities in Crystalline Silicon Solar Cells」,PROGRESS IN PHOTOVOLTAICS:RESERCH AND APPLICATIONS Prog. Photovolt: Res.Appl.,2004,12,pp309-316
本発明は、太陽電池用などに用いられるシリコンシートにおいて、良好な半導体特性を付与し、そのシリコンシートを用いた太陽電池のさらなる高効率化を図ることを目的とする。
本発明は、シリコン融液に被接触体を接触させて形成されるシリコンシートであって、0.04〜0.2ppmwのボロンを含有することを特徴とするシリコンシートである。また両方または一方の主面に凹凸を有することが好ましい。また、前記両方の主面の凹凸の周期が同一であることが好ましい。
また、最も薄い箇所の厚みが100μm以上であることが好ましい。また、前記凹凸の大きさが200μm以下であることが好ましい。また、100μmから1mmの範囲内の平均厚さを有することが好ましい。
本発明は、さらに上記のシリコンシートを備えた太陽電池にも関する。
本発明のシリコンシートは、太陽電池用などに用いられるシリコンシートにおいて、良好な半導体特性を付与し、そのシリコンシートを用いた太陽電池のさらなる高効率化を図ることができる。
本発明によるシリコンシートの厚さ方向に平行な模式的断面図である。 シート形成法の一例の基本的な手順を説明するための模式的断面図であり、(a)はシリコンシートの成長段階を示し、(b)は基体からシリコンシートが剥離される状態を示している。 本発明と従来例のシリコンシートの逆耐圧試験における電流値をグラフ化したものである。 本発明と従来例のシリコンシートのボロン濃度と比抵抗の関係を表すグラフである。 本発明によるシリコンシートを用いて太陽電池を作製する工程の一例を示すフロー図である。 本発明によるシリコンシートを用いて作製した太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のシリコンシートが両面に凹凸を有する場合の一例を示す斜視図である。 本発明のシリコンシートの凹凸の大きさを説明するための模式的断面図であり、(a)は(b)に示すシリコンシートの部分断面図、(b)は両面に凹凸を有するシリコンシートの断面図、(c)は一方の面のみに凹凸を有するシリコンシートの断面図である。 本発明によるシリコンシートを作製するために用い得る基体の表面形状を示す模式的な斜視図であり、(a)は表面に周期的溝が形成された基体を示し、(b)は表面に周期的なピラミッド状凹凸が形成された基体を示している。
(第1の実施形態)
図1から図7、表1および表2を用いて本発明に係る実施形態を説明する。ここで、本実施形態においてはシリコン融液に基体を接触させて液相からの凝固によって直接的にシート状のシリコン基板を得る方法(シート形成法)によって作成されたシリコンシートについて説明するが、ウエブ(web)法やEFG(edge-defined film-fed growth)法、RGS(ribbon growth on substrate)法などのリボン作成法などの他の製造方法であっても、以下に説明する特性を有するシリコンシートが得られる方法であれば特に限定されるものではない。また、本実施形態においては「被接触体」として「基体」を用いたが、本発明に用いられる「被接触体」とは、Web法であれば「回転体」、RGS法なら「下面支持平板」、シート形成法なら「基体」などであり、シリコン融液に浸漬・接触させて表面にシリコンシートを形成するもの全てをいう。
図1はリボン作成法またはシート形成法によって得られる多結晶体シリコンシートの断面図であり、多結晶体シリコンシート1は受光面側表面12から裏面側表面13にかけて粒界11が存在している。上述したようにこの粒界11には不純物が偏析しやすく、逆耐圧試験において抵抗の低い粒界部分に集中して電流が流れることになる。
(製造方法)
次に図2を用いて本発明のシリコンシートをシート形成法によって製造するための方法を説明する。図2(a)の模式的な断面図に示されているように、シリコンの融点である1415℃より低い温度に加熱冷却し得る温度制御手段5によって温度制御された耐熱性の基体2の表面を坩堝4中のシリコン融液3に接触(または浸漬)させることによって、基体2の表面にシリコンシート1が成長する。必要な厚さのシリコンシート1が成長した後に、そのシートが付着した基体2が坩堝4から取り出される。基体2に付着しているシリコンシート1は高温から冷却される段階で、図1(b)に示されるように、基体2とシリコンシート1の熱膨張係数差に起因して基体2とシリコンシート1は自然に分離し、または小さい衝撃を基体2に加えることにより分離され、液相からの凝固によって直接的に形成されたシリコンシート1が得られる。
すなわち、基体2がシリコン融液3の温度より低い温度なので、基体表面にシリコンの結晶核が随所に発生する。そして、これらの結晶核がシリコン融液3に接している方向に向けて一方向に結晶成長することによって、多結晶シリコンシートが形成される。
多結晶シリコンシートにおいては、平均結晶粒径が大きい程、半導体特性の低下原因となる結晶粒界密度が減少してキャリヤの拡散長が伸び、シリコンシートの半導体特性が改善される。この改善効果により、液相からの凝固によって直接的に形成されたシリコンシートが、太陽電池等のデバイス用として用いられ得るものとなる。
また、上記シート形成法に用いられる基体2の材質としては、例えば、グラファイトや、その表面に炭化珪素を熱CVD法で形成した基体を用いることができ、このほかにも、窒化珪素のようなセラミックスや高温に耐える耐熱性金属や、セラミックスを部分的もしくは全面的にコートしたカーボン、セラミックス、または耐熱金属も使用することができる。
また、基体2の温度制御手段5としては、例えば、基体2のシリコン融液と接触する面と反対側の表面近くに空間部を設けて窒素、アルゴン、または空気などを加圧導入させるガス冷媒方式を採用することができ、その他にも、基体2内にステンレス、銅などの金属製配管を埋め込んで温度制御を行う温度制御手段5を備えた液体冷媒方式などの種々の手段を採用することができ、これにより基体2の表面上に多結晶シリコンシート1を高速かつ安定に形成することができるが、シート形成法において温度制御手段5は備えられていなくても良い。
また、シリコンシート製造時におけるシリコン融液の温度は、シートの成長条件との兼ね合い等に応じて、通常、過冷却温度の1380℃以上からより高温の1600℃までの範囲内(例えば、1450℃)に設定され得る。シリコン融液面が規定の高さになった後に、基体2の温度制御を温度制御手段5によって行い、基体2の表面温度がシリコン融点に比べて1000℃から120℃だけ低い温度(例えば、1200℃)に安定化した状態で、その表面がシリコン融液に浸漬されるようになっていてもよい。
以上、本発明によるシリコンシートは、基体2の初期温度をシリコン融点(1415℃)よりも120℃から1000℃程度低い温度範囲で制御し、または適当な厚さのグラファイト材料を用いることによって基体2の熱容量を適切にし、または基体2の加熱冷却を行う温度制御手段5内に冷媒を用い、またはシリコン融液3への基体2の浸漬時間を最適厚さのシリコンシートが得られるよう制御することによりシリコン溶液の固化を促進させる等の基本的条件を設定することにより、基体2の表面上に多結晶シリコンシートを高速かつ安定に形成することができる。
(実施例1および比較例1)
次に表1、表2および図3、図4を用いて本発明に係るシリコンシートの特性を説明する。表1はボロン濃度が0.05ppmwであり比抵抗が10Ω・cmである厚み324μmのシート形成法により作成したシリコンシート(実施例1)と、ボロン濃度が0.15ppmwであり比抵抗が2Ω・cmである厚み336μmのシート形成法により作成したシリコンシート(比較例1)の逆耐圧試験における電流値を比較した表であり、図3はその結果をグラフ化したものである。
(逆耐圧試験)
表1において実施例1および比較例1のシリコンシートに、1〜15Vの逆方向の電圧をシートの厚み方向にかけたときの電流値(逆方向の電流値)を示す。なお、逆方向とは、シリコンシートを太陽電池としたときに光を受けて発電する方向(順方向)と逆の方向であり、電流値の測定は電流計により行った。
Figure 2010275173
表1および図3に示される結果から、実施例1(比抵抗10Ω)のシリコンシートにおいては、逆方向電圧を上げても比較例1(比抵抗2Ω)のシリコンシートに比して電流の流れる量が少なく、比抵抗の値が高いシリコンシートのほうが短絡電流が生じにくいものとなっていることが分かる。ここで、逆耐圧試験は発熱量で評価を行うが、仮にウエハの抵抗値が2倍になれば電流量は1/2になり、発熱を抑制する効果が2倍になるため、実施例1のシリコンシートを用いて太陽電池を作成したとき、太陽電池として良好な特性を示すものが得られる。
(比抵抗の比較)
次に表2と図4を用いてボロン濃度と比抵抗の関係を説明する。表2は従来のシリコンシートの一例としてキャスト法によって得られるシリコンシートと、上記シート形成法によって得られたシリコンシートとのボロン濃度と比抵抗の関係を比較したものである。また図4は表2の結果をグラフ化したものである。これより、キャスト法、シート形成法によって作成されたシリコンシートは両者共にボロン濃度が低くなるほど比抵抗は高くなる傾向があることがわかる。
Figure 2010275173
しかしながら、このボロン濃度と比抵抗の関係はキャスト法によって得られたシリコンシートと、リボン作成法およびシート形成法によって得られたシリコンシートでは異なった特性を示し、一般的なキャスト法で得られるシリコンシートの比抵抗値と比べると、同じ濃度のボロンを含有するシート形成法によって作成されたシリコンシートは遥かに高い比抵抗を有するものであることが分かる。
このようにシート形成法で製造されたシリコンシートがボロン濃度以外の要因により高い比抵抗を示すかの理由は明らかではないが、シート形成法は製造工程での温度変化がキャスト法等に比べて速やかであり、これが結晶粒径などに影響し、何らかの結晶構造の違いが生じていることなどが推測される。
また、図4をみると、シート形成法によって作成されたシリコンシートは、ボロン濃度が0.2ppmw付近から比抵抗の増大量が急激に大きくなっていることがわかる。上述したように逆耐圧試験は発熱量で評価し、比抵抗の値が大きくなれば電流値はそれに比例して小さくなるため、比抵抗が急激に増大すれば電流値は急激に小さくなり、短絡電流の生じにくいシートが得られる。
また非特許文献2より比抵抗が10Ω・cm以上のシリコンシートでは良好な特性を有する太陽電池の作成は困難であるため、シート形成法によって作成されたシリコンシートではボロン濃度が0.04ppm以上含まれている必要がある。
ボロン濃度が0.04ppm未満ではシリコンシート全体の比抵抗が高くなり、ライフタイムの伸びが小さくなり、また発電された電流のロスが大きくなり効率が悪くなってしまうためである。
以上説明したように、本発明のシリコンシートは、0.04〜0.2ppmwのボロンを含有する多結晶シリコンシートであるが、該シリコンシート中のボロン濃度は0.04〜0.1ppmwであればなお比抵抗の値が大きいため好適であり、またボロン濃度が0.04〜0.07ppmwであればさらに急激に比抵抗の値が大きくなっており、さらに好ましい。
(太陽電池)
本発明のシリコンシートを利用して太陽電池を作製する方法について、一例としては、図5のフロー図に示された手順に従う方法を挙げることができる。この実施例では、シリコンシートがp型半導体にされたが、n型半導体であってもよい。pまたはnの導電型のシリコンシートを形成する場合には、原料シリコンの溶融時にボロン(B)またはリン(P)のようなドーパントを混入することが望ましい。
図5のフロー図では、まずステップSlとS2において、硝酸とフッ酸との混合液を用いてシリコンシートの洗浄と表面エッチングを行った。その後のステップS3において、水酸化ナトリウムを用いて、シートの光入射側主面にテクスチャエッチングを行った。このエッチングとしてはプラズマ放電によるドライエッチング法なども可能であるが、ウエットエッチング法を用いることで、より低コストで表面テクスチャの形成が可能となる。
次にステップS4では、PSG拡散(リンシリケートガラス膜を用いた拡散方法)によりn型拡散層を形成した。ステップS5においては、表面に形成されているPSG膜をフッ酸で除去した後に、受光面側主面に反射防止膜としてシリコン窒化膜を形成した。
次にステップS6において、裏面側に形成された拡散層を硝酸とフッ酸の混合液を用いて除去した。ステップS7では、Alペーストを用いて裏面側に合金層と裏面電極を同時に形成した。最後にステップS8において、受光面側の電極が銀ペースト材料のスクリーン印刷により形成された。
このようにして、図6の模式的断面図に示されているような太陽電池セルが作製される。図6の太陽電池セルは、シリコンシート6、拡散層61、光電変換層62、合金層63、表面電極64、および裏面電極65を含んで形成される。
(第2の実施形態)
本実施形態のシリコンシートの形状は、その両方または一方の主面に凹凸を有することを特徴とするものであり、図7から図9を用いてその説明をする。
図7は基体8の表面に基体頂部81および基体底部82を有する基体8の回転方向に沿った溝、または規則的もしくは不規則に配置した微細凹凸面などが形成されているものであり、このような基体8の表面に形成された溝や微細凹凸面は、シリコンシート7の成長を高速化する機能を有する。
このような形状の基体8をシリコン融液に接触または浸漬させると、基体8が有する溝や凹凸は、シリコン結晶成長の起点となりやすいため、ここから結晶の成長が始まり、最終的にシリコンシート7は凹凸の形状を有するものとなる。ここで基体8の溝や凹凸の分布を決定することによりシリコンシート7の凹凸の分布、溝間隔等を決定することができ、シリコンシート7はある程度規則性をもった形状を形成することが可能である。なお、図7においては図9(a)に示すような表面に周期的溝が形成された基体を用いたが、図9(b)に示すような表面に周期的なピラミッド状凹凸が形成された基体を用いても凹凸を有するシリコンシートを得ることができる。
ここで両方または一方の主面に凹凸を有するとは、シリコンシートの縁の面を除く2つの主面の両方または一方に厚み方向の高低差(起伏)を有することである。例えば、溝状、ピラミッド状などの規則的な周期の凹凸を有するシートなどが挙げられるが、周期性はシート全体にわたって均一に周期性があるもののみを意味するものではなく、シートの一部に周期性があればよく、また人工的に設計される程度の厳密な周期性は必要としない。また、不規則な周期の凹凸のものであってもよい。また、凹部または凸部のみを有する形状であってもよい。
次に図8を用いてシリコンシート7の凹凸形状について詳細に説明する。本発明のシリコンシートは、両方の主面が凹凸を有する場合に特に有効であり、さらに、図8(a)(b)のように前記両方の主面の凹凸の周期が同一である場合にさらに有効である。ここで、両方の主面の凹凸の周期が同一であるとは、主面表面に凹部と凸部が交互に表れる周期が両面でほぼ同様であるような状態を意味する。
両方の主面が凹凸を有する場合、局部的にシート厚みの薄い部分が形成されやすく、特に、両方の主面の凹凸の周期が同一である場合、局部的にシート厚みの薄い部分(両方の主面が凹部となる箇所)が周期的に多数存在するため、その箇所での厚み方向の短絡電流が生じる可能性が高くなるためである。
また凹凸の大きさとは、図8(b)に示すような両面に凹凸を有するシリコンシートの部分断面図である図8(a)において、一主面において凸部における基準面から頂部までの高さ(a)もしくは(a’)と、該凸部に隣接する凹部における基準面から底部までの高さ(b)との高さの差(c)や(c’)とする。基準面は、両主面の高さの平均値であっても良いし、両主面の凹部における底部の高さの平均値であっても良く、基準面は、シリコンシートの厚み方向に対して垂直な平面であればいかなるものを基準としても良い。
また図8(a)、(b)においては両主面に凹凸を有するシートを示したが、図8(c)に示すような凹凸が上面のみにあり下面が平面であるシリコンシートについても、上面の凹凸の大きさは上記と同様に定義される。ここで、平面とは厳密な意味での平面に限られず、10μm未満の誤差程度の凹凸を有する面を含むものとする。
また、本発明のシリコンシートは、図8(a)における同一周期の第一の主面側底部72と第二の主面側底部74の基準面からの距離の和(基準面が第一の主面側底部72と第ニの主面側底部74の間にあるとき)であるeの最小値(シリコンシートの最も薄い箇所の厚み)が100μm以上であることが好ましい。このような場合、局部的に厚みの薄い部分が形成されにくく短絡電流が生じにくいからである。
上記凹凸の大きさが大きすぎると太陽電池等に適用する上で不都合が生じるため、シリコンシート7の表面凹凸の大きさは200μm以下であることが好ましく、この場合、スライスや研磨等のプロセスを経ることなくシートの太陽電池等への利用が可能となり、表面エッチング時間の短縮または表面エッチングの省略が可能になる。また、シリコンシート内のキャリヤの拡散長が30μm以上であることにより、変換効率の比較的良好な太陽電池を得ることができる。
本発明のシリコンシートのシリコン純度は5ナイン以上であることが好ましく、この場合、太陽電池等へ利用した場合にも良好なデバイス特性値を得ることができる。太陽電池の特性の観点からは、シリコンシートの純度が7ナイン以上であることがより好ましい。
また、シリコンシートの平均厚さは、100μmから1mmの範囲内に設定することが好ましい。シリコンシートの平均厚さを100μm以上にすることにより、そのシートを利用した太陽電池の作製プロセスにおいて高いハンドリング性を得ることができる。また、シート厚を1mm以下にすることにより、シートの製造時間を短縮でき、低コストのシリコン基板の提供が可能になる。
シート製造の容易さの観点からは、シートの平均厚さが200〜600μmの範囲内にあることがより好ましい。なお、シリコンシートの平均厚さとは、シリコンシートの面内の各点におけるシート厚の平均値であり、凸部の厚みも凹部の厚みも含むシート厚の平均値である。本発明の製造方法においては、かかる厚さのシリコンシートをシリコン融液から直接製造することにより、キャスト法の場合のようなシリコンインゴットのスライス工程等が不要になり、また良好な半導体特性を得ることができる。
本発明によればシリコンインゴッドをスライスすることなく効率的にシリコンシートが作成でき、比抵抗を太陽電池用等に用いられるのに適切な値とすることができる。これによって、太陽電池等の用途に要求される特性を低下させることなく、シートの部分的に短絡しやすくなっている箇所における厚み方向の短絡電流の発生を防止できるため、太陽電池等に用いた場合の電力損失を回避し高効率な太陽電池等の製品を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,6,7 シリコンシート、11 粒界、12 受光面側表面、13 裏面側表面、2,8 基体、3 シリコン融液、4 坩堝、5 温度制御手段、61 拡散層、62 光電変換層、63 合金層、64 表面電極、65 裏面電極、71 シリコンシートの第一の主面側頂部、72 シリコンシートの第一の主面側底部、73 シリコンシートの第二の主面側頂部、74 シリコンシートの第二の主面側底部、81 基体頂部、82 基体底部。

Claims (7)

  1. シリコン融液に被接触体を接触させて形成されるシリコンシートであって、0.04〜0.2ppmwのボロンを含有することを特徴とするシリコンシート。
  2. 両方または一方の主面に凹凸を有する、請求項1に記載のシリコンシート。
  3. 前記両方の主面の凹凸の周期が同一である、請求項2に記載のシリコンシート。
  4. 最も薄い箇所の厚みが100μm以上である、請求項2〜3のいずれかに記載のシリコンシート。
  5. 前記凹凸の大きさが200μm以下である、請求項2〜4のいずれかに記載のシリコンシート。
  6. 100μmから1mmの範囲内の平均厚さを有する、請求項2〜5のいずれかに記載のシリコンシート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のシリコンシートを備えた太陽電池。
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