JP2010275128A - セラミック電子部品、及びセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

セラミック電子部品、及びセラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気損失が小さく、磁気損失が小さく、磁性体材料と安価なCuを主成分とする導電性材料とを同時焼成しても構造破壊の生じることのない高周波用のセラミック電子部品、及び該セラミック電子部品の製造方法を実現する。
【解決手段】磁性体セラミックが、主成分はビスマスを含まないガーネット型フェライト系材料で形成されると共に、Cu酸化物が0.25〜2.50重量%の範囲で含有され、Cuを主成分とした導体部と前記磁性体セラミックとは、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10-3Paの雰囲気で同時焼成されてなり、前記導体部は、焼成前の脱バインダ処理前後の重量増加率が15%以下の導電性粉末を焼結してなる。導電性粉末は、例えば、Cu−Niの表面がガラス材で被覆されている。
【選択図】図2

Description

本発明はセラミック電子部品、及びセラミック電子部品の製造方法に関し、より詳しくは磁性体セラミックにガーネット型フェライト系材料を使用し、電極材料にCuを使用した非可逆回路部品等のセラミック電子部品、及びその製造方法に関する。
携帯電話やミリ波レーダ等のマイクロ波領域の電磁波を利用した通信技術の進展に伴い、アイソレータ等の非可逆回路素子の研究・開発が盛んに行われている。
アイソレータは、一般に、信号の伝送方向には減衰がなく、逆方向には減衰が大きくなる機能を有しており、数100MHz〜数GHzの極超短波帯やマイクロ波帯で使用される携帯電話、自動車電話等の移動体通信機器の送受信回路に搭載されている。
そして、この種の磁性体材料としては、従来より、イットリウム鉄ガーネットYFe12(以下、「YIG」という)に代表されるガーネット型フェライト系材料が広く使用されている。
例えば、特許文献1には、主成分が、一般式(Y3.0-x-yBiCa)(Fe5-α-β-γInαAlβγ)012で表される組成を有し、x、yの値が、0.44<x≦1.5、0.5≦y≦1.2であり、α、β、γの値が、0≦α≦0.4、0≦β≦0.45、0.25≦γ≦0.6(ただし0.1≦α+β≦0.75)の範囲内にあって、副成分としてCu及び/又はZrを含み、その含有量は、前記主成分100重量部に対して、CuをCuO換算で0重量%≦CuO≦0.8重量%、ZrをZrO換算で、0重量%≦ZrO≦0.8重量%であり、ガーネット構造を有する相を主成分とし、850℃以上980℃未満の温度で焼結するようにした多結晶セラミック磁性体材料が開示されている。
この特許文献1では、Yの一部をBiで置換し、かつ副成分としてCuOを含有させることにより、850℃以上980℃未満の低い温度での焼成を可能としている。さらに、特許文献1では、上述したように850℃以上980℃未満の低い温度での焼成が可能であることから、AgやCu等の低抵抗の金属材料との同時焼成が可能である旨が記載されている。
特開2007−145705号公報(請求項1、段落番号〔0015〕)
ところで、非可逆回路素子は磁気損失の小さいのが望ましいが、この磁気損失は強磁性共鳴半値幅ΔHで評価することができる。
しかしながら、特許文献1は、主成分中にBiを含有させることにより、850℃以上980℃未満での低温焼成を可能としているが、強磁性共鳴半値幅ΔHが4400〜8900A/mと大きく、所望の低磁気損失の非可逆回路素子を得ることができないという問題点があった。
また、生産性を向上させるためには、磁性体材料と低抵抗金属材料とを重ね合わせて同時焼成するのが望ましく、また、コスト面を考慮すると、金属材料としては低抵抗で安価なCuを使用するのが望ましい。
しかしながら、特許文献1は、大気中でAgと同時焼成する点は記載されているものの、Cuと同時焼成した場合のセラミック電子部品の特性については記載されていない。
しかるに、本発明者らの研究結果より、磁性体材料とCuとを同時焼成した場合、たとえ焼成処理を還元雰囲気で行なっても、焼成前の脱バインダ処理を大気雰囲気で行うとCuの酸化により体積膨張を起こし、その結果磁性体層の構造破壊を招くことが分かった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、磁気損失が小さく、磁性体材料とCuを主成分とする導電性材料とを同時焼成しても構造破壊の生じることのない高周波用のセラミック電子部品、及び該セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らの鋭意研究の結果、ガーネット型のフェライト系材料中にビスマスを含まなくともCu酸化物を0.25〜2.50重量%の範囲で含有し、かつ、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10−3Paの還元雰囲気で焼成することにより、焼成温度は若干高くなるが、Cuの融点よりも十分に低い温度で焼成することができ、かつ強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/m以下の低磁気損失の磁性体セラミックを得ることができるという知見を得た。
しかしながら、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、導電性材料としてCuを使用し磁性体材料と同時焼成しようとした場合、焼成前の脱バインダ処理(熱処理)を大気雰囲気で行うと、Cuが酸化され、体積膨張して磁性体セラミックの構造破壊を招くことが分かった。
そこで、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、脱バインダ処理前後における重量変化率が15%以下となるように導電性粉末を処理することにより、脱バインダ処理時のCuの酸化が抑制され、磁性体層が構造破壊するのを回避できるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係るセラミック電子部品は、磁性体セラミックが、主成分はビスマスを含まないガーネット型フェライト系材料で形成されると共に、Cu酸化物が0.25〜2.50重量%の範囲で含有され、Cuを主成分とした導体部と前記磁性体セラミックとは、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10-3Paの雰囲気で同時焼成されてなり、前記導体部は、焼成前の脱バインダ処理前後の重量増加率が15%以下の導電性粉末を焼結してなることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記磁性体セラミックの強磁性共鳴半値幅が、4000A/m以下であることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記導電性粉末は、表面がガラス材で被覆されていることを特徴としている。
さらに、本発明のセラミック電子部品は、前記導電性粉末は、Cu−Ni合金を主成分とし、Niの含有量が15atm%以下であることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記導電性粉末は、主成分がCuで形成されると共に、In、P、及びSiのうちの少なくともいずれか1種の元素が含有されていることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記導電性粉末は、Cuの表面が貴金属で被覆されていることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、非可逆回路部品であることを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品は、前記脱バインダ処理は、大気雰囲気中、300〜500℃の温度で1.5〜5時間熱処理されることを特徴としている。
また、本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、Fe化合物を含む磁性体材料から成形体を作製する成形体作製工程と、Cuを主成分とする導電膜を前記成形体の表面に形成する導電膜形成工程と、前記成形体を前記導電膜を挟持する形態で積層体を形成する積層体形成工程と、該積層体を加熱して脱バインダ処理する脱バインダ工程と、前記脱バインダ処理後に前記積層体を焼成する焼成工程とを含み、前記脱バインダ工程は、導電膜を形成する導電性粉末の重量変化率が15%以下となるように熱処理し、前記焼成工程は、酸素分圧を1.0×10〜1.0×10-3Paに設定して前記積層体を行うことを特徴としている。
また、本発明のセラミック電子部品の製造方法は、前記熱処理は、大気雰囲気中、300〜500℃の温度で1.5〜5時間保持して行うことを特徴としている。
本発明のセラミック電子部品によれば、磁性体セラミックが、主成分はビスマスを含まないガーネット型フェライト系材料で形成されると共に、Cu酸化物が0.25〜2.50重量%の範囲で含有され、Cuを主成分とした導体部と前記磁性体セラミックとは、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10-3Paの雰囲気で同時焼成されてなり、前記導体部は、焼成前の脱バインダ処理前後の重量増加率が15%以下の導電性粉末を焼結してなるので、脱バインダ処理前後で導体部が体積膨張するのが抑制される。したがってCuを主成分とする導電性材料と磁性体材料とを同時焼成しても、磁性体セラミックは強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/m以下の低磁気損失を有し、かつ構造破壊の生じることのない所望のセラミック電子部品を得ることができる。
また、導電性粉末は、表面がガラス材で被覆されているので、脱バインダ処理前後の重量増加率を15%以下に抑制することができ、これにより大気雰囲気で脱バインダ処理を行っても主成分であるCuの酸化が抑制されて体積膨張が抑制され、素子が構造破壊するのを回避できる。
また、前記導電性粉末は、Cu−Ni合金を主成分とし、Niの含有量が15atm%以下とした場合も、同様の作用効果を得ることができる。
また、前記導電性粉末は、主成分がCuで形成されると共に、In、P、及びSiのうちの少なくともいずれか1種の元素が含有されている場合や、Cuの表面が貴金属で被覆されている場合も同様の作用効果を奏することができる。
そして、本発明のセラミック電子部品は、非可逆回路部品であるので、構造破壊が生じず、Q値が高く挿入損失の小さい高品質で信頼性の高いアイソレータ等の非可逆部品を得ることができる。
本発明のセラミック電子部品の製造方法によれば、Fe化合物を含む磁性体材料から成形体を作製する成形体作製工程と、Cuを主成分とする導電膜を前記成形体の表面に形成する導電膜形成工程と、前記成形体を前記導電膜を挟持する形態で積層体を形成する積層体形成工程と、該積層体を加熱して脱バインダ処理する脱バインダ工程と、前記脱バインダ処理後に前記積層体を焼成する焼成工程とを含み、前記脱バインダ工程は、前記導電膜を形成する導電性粉末の重量変化率が15%以下となるように熱処理し、前記焼成工程は、酸素分圧を1.0×10〜1.0×10-3Paに設定して前記積層体の焼成を行うので、導電性粉末が焼結しても体積膨張が生じるのを抑制できる。したがって構造破壊が生じず、信頼性に優れた高品質のアイソレータを高効率かつ安価に製造することができる。
本発明の磁性体セラミックを使用して製造されたセラミック電子部品としてのアイソレータ(非可逆回路部品)の一実施の形態を示す分解斜視図である。 図1の要部分解斜視図である。 上記アイソレータの等価回路を示す電気回路図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係るセラミック電子部品としての2ポート型アイソレータ(非可逆回路部品)の一実施の形態を示す分解斜視図であって、本実施の形態では、集中定数型のアイソレータを示している。
このアイソレータは、回路基板1上にアイソレータ本体2が実装されると共に、平板状に形成されたヨーク3が絶縁層4を介して前記アイソレータ本体2に載設されている。
回路基板1は、導電膜が形成された複数のセラミックグリーンシートが積層され、焼成されたセラミック多層基板からなり、整合用コンデンサや終端抵抗が内蔵されている。そして、回路基板1の上面にはアイソレータ本体2と電気的接続を行うための上面電極5a〜5cが形成されると共に、該回路基板1の下面には外部接続用に複数の下面電極(不図示)が形成されている。
ヨーク3は、電磁シールド機能を有し、アイソレータ本体2からの磁気の漏れや高周波電磁界の漏れを抑制すると共に、外部からの磁気の影響を抑制する作用を有する。尚、ヨーク3は、必ずしも接地されている必要はないが、はんだ付けや導電性接着剤などで接地してもよく、接地することにより、高周波シールドの向上に寄与することができる。
アイソレータ本体2は、アイソレータ素子6が熱硬化性系エポキシ樹脂等の接着剤7a、7bを介して一対の永久磁石8a、8bで挟着されている。
尚、永久磁石8a、8bとしては、特に限定されるものではないが、Sr系、Ba系、或いはLa−Co系のフェライト磁石を好んで使用することができる。
図2はアイソレータ素子6の分解斜視図である。
このアイソレータ素子6は、略直方体形状に形成された中心層9の両主面には第1の外側層10a、10bが配されると共に、該第1の外側層10a、10bの外主面には第2の外側層11a、11bが配されている。さらに、中心層9と第1の外側層10a、10bの間には中心電極層12a、12bが介装され、第1の外側層10a、10bと第2の外側層11a、11bとの間には外側電極層群13a、13bが介装されている。
そして、本実施の形態では、中心層9、第1の外側層10a、10b、及び第2の外側層11a、11bが上記磁性体セラミックで形成され、中心電極層12a、12b及び外側電極層群13a、13bはCuで形成されている。
中心層9の上下両面には複数の凹部が形成され、該凹部にはCuが充填されてビア導体14a〜14nが形成されている。
中心電極層12aは、中心層9の主面に沿うように所定角度でもって傾斜状に形成されると共に、該中心電極層12aの一方の端部12a′はビア電極14aと接続可能となるように立設され、かつ他方の端部12a″はビア電極14mと接続可能となるように垂設されている。
また、中心電極層12bは、前記中心電極層12aと略対向状となるように所定角度でもって傾斜状に形成されると共に、該中心電極層12bの一方の端部12b′は前記ビア電極14aと接続可能となるように立設され、かつ他方の端部12b″はビア電極14nと接続可能となるように垂設されている。このように中心層9は、これら中心電極層12a、12bにより1ターン巻回されている。
また、第1の外側層10a、10bの上下両面には複数の凹部が形成され、該凹部にはCuが充填されてビア導体15a〜15g、16a〜16hが形成されている。
外側電極層群13aは、第1の外側層10aの主面に対し斜め上方に傾斜状となるように、4つの外側電極層(第1〜第4の外側電極層17a〜17d)が平行状に形成されている。また、外側電極層群13bは、第2の外側層10bの主面に対し直交状となるように、4つの外側電極層(第1〜第4の外側電極層18a〜18d)が平行状に形成されている。
そして、第1の外側電極層17aの上端は、ビア電極15d、14e、16dを介して第1の外側電極層18aの上端に電気的に接続されている。さらに、第1の外側電極層18aの下端はビア電極16h、14l、15gを介して第2の外側電極層17bの下端に電気的に接続されている。以下同様に、第2の外側電極層17bの上端は、ビア電極15c、14d、16cを介して第2の外側電極層18bの上端に電気的に接続され、第2の外側電極層18bの下端はビア電極16g、14k、15fを介して第3の外側電極層17cの下端に電気的に接続されている。また、第3の外側電極層17cの上端は、ビア電極15b、14c、16bを介して第3の外側電極層18cの上端に電気的に接続され、第3の外側電極層18cの下端はビア電極16f、14j、15eを介して第4の外側電極層17dの下端に電気的に接続されている。さらに、第4の外側電極層17dの上端は、ビア電極15a、14b、16aを介して第4の外側電極層18dの上端に電気的に接続されている。さらに、第4の外部電極層17dはビア電極14iに接続されると共に、第1の外部電極層18aはビア電極14mに接続されている。尚、ビア電極14mは外側電極層群13a及び外側電極層群13bのそれぞれの端部の接続用電極として共用される。また、ビア電極14f、14g、14hはダミー電極である。
このように外側電極層群13a、13bは、第1の外側層10a、10bにより中心電極層12a、12bとの電気的絶縁性を確保しながら、中心層9の周囲を螺旋状に4ターン巻回されている。そして、中心電極層12a、12bと外側電極層群13a、13bとはビア電極14lを介して電気的に接続されている。
尚、本実施の形態で、ターン数とは、外側電極層群13a、13bが中心層9を1回横断した状態を0.5ターンとして計算している。そして、中心電極層12a、12bと外側電極層群13a、13bとの交差角度は、必要に応じて所望角度に設定され、これにより入力インピーダンスや挿入損失が調整される。
そして、本実施の形態では、中心層9、第1の外側層10a、10b、第2の外側層12a、12bが磁性体セラミックで構成されている。そして、この磁性体セラミックは、主成分が、YIGからなるガーネット型フェライト系材料で形成されると共に、Cu酸化物が0.25〜2.50重量%の範囲で含有され、かつ、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10−3Paの還元雰囲気で焼成されている。
これにより1000〜1050℃の比較的低温で焼成しても、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/m以下の磁気損失が低減された磁性体セラミックを得ることができる。
尚、YIG中、Y及びFeの一部は、必要に応じて各種元素で置換するのも好ましく、例えば、Yの一部をCaで置換した(Y,Ca)Fe12や、Feの一部をIn、Sn、Al、Vのうちの少なくとも1種で置換したY(Fe,In)12、Y(Fe,Al)12、Y(Fe,Sn)12、Y(Fe,V)12、Y(Fe,In,Al,V)12、Y(Fe,Sn,Al,V)12、或いはこれらの組み合わせを適宜使用することができる。
ただし、本発明のガーネット型フェライト系材料にはBiは含有されていない。これは、Biは焼成温度の低温化には寄与するものの、磁気損失の低減には寄与しないからである。
また、上記磁性体セラミックで、Cu酸化物の含有量を0.25〜2.50重量%としたのは以下の理由による。
Cu酸化物の含有量が0.25重量%未満に低下すると、1050℃以下の低温での焼成が困難となる。一方、Cuの含有量が2.50重量%を超えると、1.0×10〜1.0×10-3Paの還元雰囲気で焼成を行っても、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超えてしまい、磁気損失が大きくなる。
そして、このようなCu酸化物としては、CuO及びCuOのいずれか1種又はこれらの組み合わせを使用することができる。
また、焼成雰囲気の酸素分圧を1.0×10〜1.0×10-3Paとしたのは以下の理由による。
焼成雰囲気が1.0×10Paを超えて大気雰囲気に近くなると、Cu酸化物の含有量を増加させた場合、含有量が2.5重量%以下であっても、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超えてしまって磁気損失の低下を招くおそれがある。一方、焼成雰囲気が1.0×10-3Pa未満になると、過度の還元性雰囲気となり、この場合も強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超えてしまい、磁気損失の低下を招くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、焼成雰囲気の酸素分圧を1.0×10〜1.0×10-3Paとしている。
また、中心電極層12a、12b、外部電極層群13a、13b、及びビア電極14a〜14n、15a〜15g、16a〜16hは導体部を形成している。
そして、この導体部は、脱バインダ処理前後の重量変化率が15%以下の導電性粉末を焼結してなり、これにより構造破壊が生じるのを防止している。
すなわち、磁性体シートや導電性ペーストに含有される有機バインダを焼失させるために、焼成処理前に熱処理(脱バインダ処理)が行われる。
しかしながら、磁性体シートとCuを主成分とする導電膜とを一体にして大気雰囲気中で同時に熱処理を行なうと、Cuが酸化され、CuOとなって重量増を招き、体積が膨張する。その結果、バインダが焼失して脆くなった焼成後の磁性体セラミックが損傷し、構造破壊を招くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、導電性粉末を、例えば、下記(1)〜(3)に示すような構成とすることにより、脱バインダ処理前後の重量変化率を15%以下としている。
(1)主成分であるCu又はCu合金の表面をガラス材で被覆する。
表面をガラス材で被覆することにより、Cuの酸化を防ぎ、これにより体積膨張に起因した構造破壊を防止することができる。
ガラス材としては、特に限定されるものではなく、例えば、Si−Ca−Ba系ガラス等を使用することができる。
また、ガラス材の含有量は、Cu表面の全周又は略全周が被覆されるのであれば、特に限定されるものではなく、例えば、1〜3重量%が好ましい。
また、Cu合金を使用する場合は、耐酸性を有するNiを含有したCu−Ni合金が好ましい。この場合、Niの含有量は特に限定されないが、Niを15atm%を超えて含有すると、電極層の抵抗が大きくなり、アイソレータの挿入損失が劣化するおそれがある。したがって、このような点を考慮すると、Niの含有量は15atm%以下が好ましい。
(2)In、P、及びSiのうちのいずれか少なくとも1種の元素を含有したCu合金で導電性粉末を形成する。
In、P、及びSiのうちの少なくとも1種の元素(以下、これらの元素を「特定元素」という。)を含有したCu合金を導電性粉末とした場合も、導電性粉末の酸化を抑制することができ、体積膨張に起因した構造破壊を防止することができる。
すなわち、Cu中に上記特定元素を含有させた場合、大気雰囲気中で脱バインダ処理を行なうと、上記特定元素の酸化物被膜(例えば、In酸化物被膜)が表層面に形成される。そして、このように表層面を特定元素の酸化物被膜で形成することにより、Cu自身の酸化が抑制され、これにより導電性粉末の体積膨張に起因した構造破壊を防止することができる。
尚、特定元素の含有量は、特に限定されるものではないが、Cuの酸化を抑制できる程度に酸化物被膜が形成されればよく、例えば、4〜6重量%程度が好ましい。
(3)Cuを貴金属材料で被覆して導電性粉末を形成する。
Cuを貴金属材料で被覆した場合も、該貴金属材料により、Cuの酸化が抑制され、導電性粉末の体積膨張に起因した構造破壊を防止することができる。
尚、貴金属材料の含有量は、熱処理を行なっても表面が侵食されない程度であればよく、例えば、40〜60重量%が好ましい。
また、貴金属材料の種類は、コスト面を考慮すると、比較的安価なAgが好ましい。
次に、これら導電性粉末の作製方法を説明する。
(1)主成分であるCu又はCu合金の表面をガラス材で被覆する場合
この場合は噴霧熱分解法を使用して導電性粉末を作製することができる。
例えば、熱分解性を有するCu化合物又はCu合金化合物にガラス質を形成する酸化物前駆体を添加した溶液を作製し、該溶液を噴霧して微細な液滴にし、該液滴をCu化合物又はCu合金化合物の分解温度より高い温度、望ましくはCu又はCu合金の融点近傍又はそれ以上の高温で加熱し、Cu化合物又はCu合金化合物を熱分解して導電性粉末を析出させることができる。
この噴霧熱分解法によって得られた導電性粉末は、結晶性が良好で、粒子内部に欠陥が少なく粒界をほとんど含まないので、熱分解により析出したCu酸化物は粒子内部には析出しにくく、Cu粒子又はCu合金粒子の表面に弾き出され、表面近傍に高濃度に偏析してガラス化する。しかも、析出したガラス質は表面を比較的均一に覆うので、少量でも酸化や焼結に対する保護層として作用する。さらに、噴霧熱分解法では、生成粒子の組成は基本的に溶液中の金属組成と一致するので、組成の制御や粒径制御も容易でガラス組成に対する自由度も大きい。
そして、このような熱分解性を有するCu化合物又はCu合金化合物としては、Cu又はCu合金の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、アンモニウム塩、リン酸塩、カルボン酸塩、金属アルコラート、樹脂酸塩などの1種又は2種以上や複塩や錯塩を使用することができる。
また、酸化物前駆体としては、熱分解後生じるCu酸化物又はCu合金酸化物が、Cu粉末中にほとんど固溶せず、ガラス化するようなものであれば、特に限定されるものではなく、例えばホウ酸、ケイ酸、燐酸や各種ホウ酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、又種々の金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、アンモニウム塩、燐酸塩、カルボン酸塩、アルコラート、樹脂酸塩などの熱分解性塩や複塩や錯塩などから適宜選択して使用することができる。
(2)特定元素を含有したCu合金で導電性粉末を形成する場合
この場合は、アトマイズ法で容易に製造することができる。
すなわち、Cu粉末に特定元素粉末を少量添加し、加熱溶融し、タンデッシュの底部に設けたノズル穴からその溶湯を流出させ。そして周囲からジェット流体を吹き付け、該ジェット流体のエネルギーで流下してくる溶湯流から生成した液滴を落下させながら凝固させ、これにより導電性粉末を作製することができる。
(3)Cuを貴金属材料で被覆する場合
この場合は、めっき法でCu粉末の表面に、例えばAg被膜を形成することにより容易に製造することができる。
尚、上記(1)〜(3)の導電性粉末の作製方法は一例であり、これらの作製方法に限定されるものでないのはいうまでもなく、また、導電性粉末の脱バインダ処理前後における重量変化率を15%以下にする方法も上記(1)〜(3)に限定されるものではない。
図3は上記アイソータの等価回路を示す電気回路図である。
すなわち、回路基板1には整合用コンデンサC1及び終端抵抗Rが内蔵され、回路基板1の下面に形成された下面電極(不図示)が入力ポートP1を形成している。そして、該下面電極は、回路基板1の上面に形成された上面電極5a及び中心層9の下面に形成されたビア電極14nを介して中心電極層12の一端に接続されている。
中心電極層12の他端及び外側電極層群13の一端は、中心層9の下面に形成されたビア電極14m及び回路基板1の上面に形成された上面電極5bを介して終端抵抗R及びコンデンサC1、C2に接続され、かつ、回路基板1の下面に形成された下面電極に接続され、出カポートP2を形成している。
また、外側電極層群13の他端は、中心層9の下面に形成されたビア電極14i及び回路基板1の上面に形成された上面電極5cを介してコンデンサC2及び回路基板1の下面に形成された下面電極に接続され、該下面電極がグランドポートP3を形成している。
また、入力ポートP1にはコンデンサCs1が接続され、出力ポートP2にはコンデンサCs2が接続されている。そして、入力ポートP1と上面電極5bとの間にはコイルLs1が介装されている。
次に、上記アイソレータの製造方法を詳述する。
まず、Cuを主成分とする導電性ペーストを作製する。
例えば、上述したいずれかの方法で、脱バインダ処理前後の重量変化率が15%以下となるような導電性粉末を作製する。
次いで、作製された導電性粉末を有機ビヒクル中に混練・分散させ、これにより導電性ペーストを作製する。
尚、有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤からなり、有機バインダとしては、エトセル樹脂、アルキド樹脂、エチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等の1種又は2種以上を使用することができ、溶剤としてはジヒドロターミネオール、テトラリン、ブチルカルビトール等を使用することができる。また、有機バインダと溶剤の配合比率は、例えば1:9となるように調製される。
次に、上記導電性ペーストを使用してアイソレータ素子6を作製する。
すなわち、まず、Y、Fe、及びCuO又は/及びCuOを含む複数種のセラミック素原料を所定量秤量し、ボールミルで湿式混合した後、大気中で仮焼し、その後湿式粉砕して仮焼粉末を得る。次いで、この仮焼粉末と有機バインダとを有機溶剤中に分散させてセラミックスラリーを作製する。
次いで、このセラミックスラリーを、ドクターブレード法等の成形加工法を使用して成形し、矩形状の磁性体シートを作製する。
次いで、この磁性体シートをレーザ加工して上下両面に多数の凹部を形成する。そして、該凹部にCuを主成分とするCuペーストを塗布し、ビア電極14a〜14nとなるべきCuが凹部に充填された中心層9用の第1の磁性体シートを作製する。
次に、別の矩形状磁性体シートを用意し、該矩形状磁性体シートをレーザ加工して上下両面に多数の凹部を形成し、該凹部に前記導電性ペーストを塗布し、ビア電極15a〜15g、16a〜16hとなるべき導電性材料が凹部に充填された第1の外側層10a、10b用の2枚の第2の磁性体シートを作製する。次いで、この第2の磁性体シートの両主面にスクリーン印刷し、中心電極層12a、12bとなるべき導体膜を形成する。
次に、さらに別の矩形状磁性体シートを用意し、該矩形状磁性体シートの一方の主面にスクリーン印刷を行い、外側電極層群13a、13bとなるべき導体膜を形成し、2枚の第3の磁性体シートを得る。
そしてこの後、第1の磁性体シートを第2の磁性体シートで挟持し、さらに該第2の磁性体シートを第3の磁性体シートで挟持して圧着し、積層体ブロックを作製する。
次いで、この積層体ブロックを熱処理温度300〜500℃で1.5〜5時間程度保持して脱バインダ処理し、その後、1×10〜1.0×10−3Paの雰囲気下、1000℃〜1050℃の焼成温度で所定時間(例えば、5時間)焼成し、これにより磁性体シートと導体膜とが同時焼成され、アイソレータ素子6が作製される。
このように本実施の形態では、脱バインダ処理前後の導電性粉末の重量変化率が15%以下であるので、例えば、熱処理温度300〜500℃で1.5〜5時間程度保持して脱バインダ処理しても、Cuの体積膨張が抑制され、これにより構造破壊が生じるのを回避することができる。そして、その後1×10〜1.0×10−3Paの還元雰囲気下、1000℃〜1050℃の焼成温度で所定時間焼成しているので、磁性体シートと導電膜とが同時焼成されるので、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/m以下と低磁器損失を有し、Q値が高く挿入損失の小さい高品質で信頼性の高いアイソレータを得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、セラミック電子部品についてもアイソレータを例示して説明したが、サーキュレータなど、他の通信用高周波回路等にも適用可能であるのはいうまでもない。
次に、本発明の実施例を具体例に説明する。
セラミック素原料として、CaCO、Y、Fe、In、V、Al、SnO及びBiを用意し、表1のような主成分組成となるように、これらセラミック素原料を秤量した。次いで、これら秤量物を純水及びPSZボールと共に塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、蒸発乾燥させた後、850〜950℃の温度で仮焼し、それぞれの仮焼粉末を得た。
次に、副成分としてCuO及びZrOを用意した。そして、これら副成分が表1に示すような含有量となるように、これら副成分を秤量して仮焼粉末に添加し、ポリビニルブチラール系バインダー、有機溶剤としてのエタノール、及びPSZボールと共に、再び塩化ビニル製のポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、セラミックスラリーを得た。
次に、得られた各セラミックスラリーに対し、ドクターブレード法を使用して厚さが50μmとなるようにシート状に成形し、これを縦50mm、横50mmの大きさに打ち抜き、磁性体シートを得た。
次に、このようにして得られた磁性体シートを、厚さが総計で0.5mmとなるように積層し、60℃に加熱し、100MPaの圧力で60秒間加圧し、圧着させ、その後、直径10mmの大きさの円板状に切り出し、これにより積層体ブロックを得た。
次に、前記積層体ブロックを十分に脱バインダ処理した後、所定の酸素分圧(大気雰囲気(2×10Pa)、1Pa、10-1Pa、10-3Pa、又は10-4Pa)に調整された焼成炉に投入し、920℃又は1040℃で5時間焼成し、試料番号1〜22の試料を得た。尚、1〜10-4Paの酸素分圧は、N−H−HOの混合ガスを炉内に供給することにより調整した。
次に、これら試料番号1〜22の各試料について、短絡同軸線路法を使用し、強磁性共鳴半値幅ΔHを測定した。
表1は、試料番号1〜22の各試料の組成を示し、表2は焼成温度と各酸素分圧における強磁性共鳴半値幅ΔHを示している。
Figure 2010275128
Figure 2010275128
試料番号1〜9は、主成分組成が(Y2.12Ca0.89)(Fe4.05In0.22Al0.300.42)O12であり、試料中にCuOを0〜3.00重量%含有させたものである。
試料番号1は、試料中にCuOが含まれていないため、1040℃の低温では焼結させることができず、融点が1083℃のCuと同時焼成するのは困難であることが分かった。
試料番号9は、CuOが試料中に3.00重量%と過剰に含まれているため、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超え、磁気損失が劣化することが分かった。
これに対し試料番号2〜8は、1〜10-3Paの範囲の酸素分圧で焼成することにより、CuOの含有量が0.25〜2.5重量%の範囲で強磁性共鳴半値幅ΔHを4000A/m以下とすることができ、磁気損失を抑制できることが分かった。
尚、試料番号2〜8の場合であっても、酸素分圧を10-4Paと過度に還元性雰囲気にしたときは、強磁性共鳴半値幅ΔHが6000A/mを超え、磁気損失の劣化が顕著になることが分かった。
また、試料番号8の場合、大気雰囲気で焼成させたときは強磁性共鳴半値幅ΔHが6000A/mを超え、磁気損失が劣化した。これはCuOの含有量が2.5重量%であり、試料番号2〜7に比べ多いためと思われる。したがって、Cuの含有量の自由度を広げる観点から、1〜10-3Paの範囲の酸素分圧で行うのが望ましいことが分かった。
試料番号10〜18は、主成分組成が(Y2.12Ca0.89)(Fe3.97In0.30Al0.300.42)O12であり、試料中にCuOを0〜3.00重量%含有させたものである。
試料番号10は、試料番号1と同様、試料中にCuOが含まれていないため、1040℃の低温では焼結させることができず、融点が1083℃のCuと同時焼成するのは困難であることが分かった。
試料番号18も、試料番号9と同様、CuOが試料中に3.00重量%と過剰に含まれているため、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超え、磁気損失が劣化することが分かった。
これに対し試料番号11〜17は、1〜10-3Paの範囲の酸素分圧で焼成することにより、CuOの含有量が0.25〜2.5重量%の範囲で強磁性共鳴半値幅ΔHを4000A/m以下とすることができ、磁気損失を抑制できることが分かった。
尚、試料番号11〜17の場合であっても、試料番号2〜8と同様、酸素分圧を10-4Paと過度に還元雰囲気にした場合は、強磁性共鳴半値幅ΔHが6000A/mを超え、磁気損失の劣化が顕著になることが分かった。
また、試料番号17の場合、大気雰囲気で焼成させたときは、試料番号8と同様の理由から、強磁性共鳴半値幅ΔHが6000A/mを超え、磁気損失が劣化した。
試料番号19、20は、主成分組成が(Y2.05Ca0.95)(Fe3.97Sn0.30Al0.280.45)O12であり、試料中にCuOを0.35重量%又は0.50重量%含有させたものである。
この試料番号19、20でも、酸素分圧を10-4Paと過度に還元性雰囲気にした場合は、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/mを超えたが、1〜10-3Paの範囲の酸素分圧で焼成することにより、強磁性共鳴半値幅ΔHが4000A/m以下となり、磁気損失を抑制できることが分かった。
試料番号21は、(Y1.55Ca0.90Bi0.55)(Fe3.97In0.30Al0.280.45)O12であり、Yの一部をCaのみならずBiでも置換したものであり、CuOを0.35重量%含有させている。
また、試料番号22は、試料番号21に加え、ZrOを0.1重量%含有させている。
この試料番号21、22では、主成分中にBiを含有させているため、920℃の低温での焼成が可能であるが、大気中で焼成しても強磁性共鳴半値幅ΔHは4000A/mを超え、酸素分圧を1Paに調整して焼成した場合は、強磁性共鳴半値幅ΔHは8000A/mを超えた。すなわち、主成分中にBiを含有させることにより、より低温での焼成が可能となるが、強磁性共鳴半値幅ΔHが大きくなり、磁気損失の劣化が顕著になることが確認された。
以上より磁気損失が小さく、しかもCuとの同時焼成を可能とするためには、磁性体セラミック中にBiを含まず、CuOの含有量は、0.25〜2.5重量%、焼成雰囲気の酸素分圧が1〜10-3Paで行う必要のあることが確認された。
また、試料番号2〜4、11〜13から明らかなように、主成分組成が(Y,Ca)(Fe,In,Al,V)系で構成され、かつCuOの含有量が0.25〜0.75重量%の場合は、酸素分圧が1〜10-3Paの焼成雰囲気で焼成することにより、強磁性共鳴半値幅ΔHを3000A/m以下に抑制でき、より好ましいことが分かった。
この実施例2では、磁性体材料と導電性材料とを同時焼成し、アイソレータを作製して特性を評価した。
〔導電性粉末の作製〕
〔試料番号M1〕
Niの含有量が15atm%のCu−Ni合金を使用し、〔発明を実施するための形態〕の項で述べた噴霧熱分解法により、Si−Ca−Ba系ガラスの含有量が2重量%となるように、Cu−Ni合金をSi−Ca−Ba系ガラスで被覆し、これにより試料番号M1の導電性粉末を作製した。
〔試料番号M2〕
Niの含有量が1atm%のCu−Ni合金を使用した以外は、試料番号M1と同様、噴霧熱分解法により試料番号M2の導電性粉末を作製した。
〔試料番号M3〕
Niを含まずCuのみを使用した以外は、試料番号M1と同様、噴霧熱分解法により試料番号M3の導電性粉末を作製した。
〔試料番号M4〕
Inの含有量が5atm%となるように、〔発明を実施するための形態〕の項で述べたアトマイズ法を使用してCu−In合金からなる試料番号M4の導電性粉末を作製した。
〔試料番号M5〕
めっき法を使用し、Agの含有量が50重量%となるように、Cu粉末をAgで被覆し、試料番号M5の導電性粉末を作製した。
〔試料番号M6〕
ゾルーゲル法を使用し、CuをSiOで被覆し、試料番号M6の導電性粉末を作製した。尚、SiOの含有量は0.73重量%となるように調製した。
〔試料番号M7〕
通常のCu粉末を用意し、試料番号M7とした。
〔重量変化率の測定〕
試料番号M1〜M7の各試料について、TG−DTA(リガク社製、TAS300)を使用し、重量変化率を求めた。
すなわち、試料30mgをTG−DTAの所定位置に配置し、100mL/分の割合で空気を装置内に供給しながら、室温から400℃まで、20℃/分の昇温スピードで昇温した。そして、温度が400℃に達した段階で2時間保持し、金属粒子の酸化による重量変化率を数式(1)から求めた。
重量変化率=(測定重量−初期重量)/初期重量×100 …(1)
表3は試料番号M1〜M7の各試料の仕様と重量変化率を示している。
Figure 2010275128
この表3から明らかなように、試料番号M7は、400℃の熱処理温度で2時間保持したところ、導電性粉末の重量変化率が25.0%と大きくなった。これは導電性粉末がCu単体であるので、400℃の熱処理温度に晒された結果、Cuの酸化により体積膨張が生じたためと思われる。
また、試料番号M6は、重量変化率が17.5%と大きくなった。これはSiOでは金属表面を隙間なく被覆するのが難しく、SiOの被覆面の隙間から酸素が浸入し、Cuの酸化を促進させるためと思われる。
これに対し試料番号M1〜M3は、Cu又はCu−Ni合金をSi−Ca−Ba系ガラス材で被覆しているので、重量変化率は10.3%以下に抑制できることが分かった。特に、Cu−Ni合金をSi−Ca−Ba系ガラス材で被覆した場合は、重量変化率が5.1%以下となり、Niの含有量が多くなると、重量変化率はより一層低減できることが分かった。
また、試料番号M4、M5から明らかなように、Inを含有させたCu−In合金や、Cuを貴金属であるAgで被覆した場合も重量変化率を15%以下に抑制できることが分かった。
〔導電性ペーストの作製〕
重量平均分子量が5×10のエトセル樹脂、重量平均分子量が8×10のアルキド樹脂を準備した。次に、溶剤としてジヒドロターピネオールを準備し、エトセル樹脂:アルキド樹脂:ジヒドロターピネオールが重量比で9:2:89となるようにこれら樹脂を溶剤に溶解させて有機ビヒクルを作製した。
次に、試料番号M1〜M6の導電性粉末が32.5体積%、有機ビヒクルが67.5体積%となるように両者を調合し、これらを3本ロールミルで混練・分散させ、これにより導電性ペーストを作製した。
〔アイソレータの作製〕
〔実施例1〕で作製した試料番号12と同一組成の磁性体シートを使用し、〔発明を実施するための形態〕の項で説明したアイソレータ(図1、2参照)を作製した。
すなわち、まず、実施例1と同様の方法・手順で試料番号12と同一組成の磁性体シートを作製した。
次いで、この磁性体シートを縦50mm、横50mmの大きさに切断し、レーザ加工して所定箇所に凹部を形成し、この凹部に上記導電性ペーストを塗布して充填し、中心層用磁性体シートを作製した。
次に、別の磁性体シートを縦50mm、横50mmの大きさに切断し、レーザー加工して凹部又は切欠部を形成し、この凹部又は切欠部に上記導電性ペーストを塗布し、充填した。2枚の第1の外側層用磁性体シートを作製した。
次いで、これらの第1の外側層用磁性体シートの一方の主面に上記導電性ペーストを塗布し、中心電極となるべき導電パターンをスクリーン印刷して形成した。
次に、さらに別の磁性体シートを縦50mm、横50mmの大きさに切断し、第2の外側層用磁性体シートを作製した。
そして、この第2の外側層用磁性体シートの表面にスクリーン印刷を行い、外側電極層群となるべき導電膜を形成した。
次いで、これら各磁性体シートを図2に示す分解斜視図に従って積層し、圧着し、所定寸法に切断して積層体ブロックを得た。
次に、この積層体ブロックを、大気雰囲気中、温度400℃で2時間熱処理を行い脱バインダ処理を行った。そしてその後、酸素分圧が10-1PaとなるようにN−H−HOガスで置換し、1040℃の温度で5時間焼成し、アイソレータ本体を作製した。
そしてその後、アイソレータ本体を、熱硬化型エポキシ系接着剤を介して永久磁石で狭着し、ヨークを絶縁体を介して載設し、整合用コンデンサ及び終端抵抗が内蔵されたセラミック多層基板に実装し、試料番号1〜7のアイソレータを作製した。
〔アイソレータの特性評価〕
まず、試料番号1〜7のアイソレータ各100個について、アイソレータ本体を目視で観察し、構造破壊の有無を確認した。
また、中心電極層をインダクタンスとし、該中心電極層と並列共振用のコンデンサとで共振回路を作製した。そして、アイソレータ本体に磁界をかけながらネットワークアナライザで共振回路のQ値を測定した。
さらに、この共振回路に整合素子と終端抵抗を組み付け、図3に示したような等価回路を有する2ポート型のアイソレータを作製した。そして、ネットワークアナライザで挿入損失を測定した。
表4はその測定結果である。
Figure 2010275128
構造破壊については、構造破壊が全く生じなかった試料を◎印、磁性体セラミック層と電極層との間に隙間が生じた試料を○印、焼結体に亀裂や割れなどの構造破壊を起こした試料を×印として評価した。
Q値については、40以上を◎印、30以下を×印、30を超え40未満を○印として評価した。
挿入損失については、0.35以下を◎印、0.40以上を×印、0.35を超え0.40未満を○印として評価した。
表4から明らかなように、試料番号7は構造破壊が生じた。これは導体部である電極層がCu単体で形成されているため、脱バインダ処理前後の電極層の重量変化率が25.0%と大きく、熱処理によってCuが酸化されて体積膨張を起こし、その結果バインダが焼失して脆くなった磁性体層を破壊したものと思われる。
試料番号6も、脱バインダ処理時に電極の重量変化率が17.5%と大きく、試料番号7と同様、熱処理によってCuが酸化されて体積膨張を起こし、バインダが焼失して脆くなった磁性体層を破壊したものと思われる。
これに対し試料番号1〜5は、重量変化率が15.0%以下であり、構造破壊が生じなかった。特に、重量変化率が10%未満の試料番号1、2及び4は構造破壊が全く生じなかった。したがって、重量変化率が構造破壊に大きな影響を及ぼすことが確認された。
また、Q値は、導体部の比抵抗と相関関係があり、導体部が低抵抗であればQ値は上昇する。したがって、導体部中の不純物量が大きな影響を及ぼす。
試料番号3、4は、Q値が40以上と高かったが、これは不純物量が少ないため、電極層の比抵抗が低く抑えられたものと思われる。そして、Q値が高いことから、挿入損失も0.35以下と良好な結果を得た。
また、試料番号1、2及び5は、NiやAgが含まれているものの、Q値や挿入損失は十分に実用に耐えうることが分かった。
従来、実用化されていなかった磁性体シートとCuとの同時焼成が可能となり、しかも強磁性共鳴半値幅ΔHも4000A/m以下と低く、Q値が高く挿入損失の小さい高品質・高信頼性を有するアイソレータ等の非可逆回路部品を実現できる。
9 中心層(磁性体セラミック)
10a、10b 第1の外側層(磁性体セラミック)
11a、11b 第2の外側層(磁性体セラミック)
12a、12b 中心電極層(導電部)
13a、13b 外部電極層群(導電部)
14a〜14n ビア電極(導電部)
15a〜15g ビア電極(導電部)
16a〜16h ビア電極(導電部)

Claims (10)

  1. 磁性体セラミックが、主成分はビスマスを含まないガーネット型フェライト系材料で形成されると共に、Cu酸化物が0.25〜2.50重量%の範囲で含有され、
    Cuを主成分とした導体部と前記磁性体セラミックとは、酸素分圧が1.0×10〜1.0×10-3Paの雰囲気で同時焼成されてなり、
    前記導体部は、焼成前の脱バインダ処理前後の重量増加率が15%以下の導電性粉末を焼結してなることを特徴とするセラミック電子部品。
  2. 前記磁性体セラミックは、強磁性共鳴半値幅が4000A/m以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
  3. 前記導電性粉末は、表面がガラス材で被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のセラミック電子部品。
  4. 前記導電性粉末は、Cu−Ni合金を主成分とし、Niの含有量が15atm%以下であることを特徴とする請求項3記載のセラミック電子部品。
  5. 前記導電性粉末は、主成分がCuで形成されると共に、In、P、及びSiのうちの少なくともいずれか1種の元素が含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のセラミック電子部品。
  6. 前記導電性粉末は、Cuの表面が貴金属で被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のセラミック電子部品。
  7. 非可逆回路部品であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  8. 前記脱バインダ処理は、大気雰囲気中、300〜500℃の温度で1.5〜5時間熱処理することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセラミック電子部品。
  9. Fe化合物を含む磁性体材料から成形体を作製する成形体作製工程と、Cuを主成分とする導電膜を前記成形体の表面に形成する導電膜形成工程と、前記成形体を前記導電膜を挟持する形態で積層体を形成する積層体形成工程と、該積層体を加熱して脱バインダ処理する脱バインダ工程と、前記脱バインダ後に前記積層体を焼成する焼成工程とを含み、
    前記脱バインダ工程は、前記導電膜を形成する導電性粉末の重量変化率が15%以下となるように熱処理し、前記焼成工程は、酸素分圧を1.0×10〜1.0×10-3Paに設定して前記積層体を行うことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
  10. 前記熱処理は、大気雰囲気中、300〜500℃の温度で1.5〜5時間保持して行うことを特徴とする請求項9記載のセラミック電品の製造方法。
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