JP2010270276A - 一液常温硬化型被覆材 - Google Patents

一液常温硬化型被覆材 Download PDF

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Abstract

【課題】省工程、省資源でありながら、高度な耐硫酸性をもつ下水道コンクリート保護無機コーティング剤を提供する。
【解決手段】下水道コンクリートに被覆を形成する無機コーティング剤で、耐薬品性の高いフィラーを1または2種充填してなる下水道コンクリート保護塗料。および前記無機コーティング剤が硬化剤として有機金属を含み、200g/m〜800g/mを2〜3工程に分けて塗布する高耐硫酸性の一液常温吸湿硬化型無機コーティング剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、下水道施設等で用いるコンクリートなどのセメント製構造物を劣化から保護する、高耐硫酸性の一液常温硬化型被覆材に関する。
下水道施設の内、菅きょの一部、ポンプ場および終末処理場の土木構造物等は鉄筋コンクリート構造物となっている。下水に含有される洗剤、し尿等に由来する硫酸塩が嫌気性細菌により硫化水素へと還元され、さらに、気化した硫化水素が好気性細菌により硫酸となりコンクリート構造物を劣化させる。
下水道のコンクリートの保護としては、非特許文献1に記載されている防食工法があげられる。硫酸による劣化環境下におかれたコンクリート面を被覆し、保護することにより、被覆するコンクリートを健全な状態に維持することを目的としており、耐硫酸性、硫酸をコンクリート躯体に浸透させないための遮断性、ならびに、コンクリート躯体と一体化して防食被覆層としての機能を発揮するための接着安定性が必要となる。
非特許文献1には、下水道施設のコンクリートを保護するための防食工法の例として、工場製作したシート状の防食被覆層をコンクリートと一体化することによりコンクリートを被覆する、シートライニング工法、および、コンクリート表面に防食被覆材料を塗布して防食被覆層を形成させる、塗布型ライニング工法が挙げられている。
さらに、劣化を防止する技術として、特許文献1、2、3には、ガラス短繊維で耐食性樹脂を補強してなるパネルをコンクリート躯体に張り付けてコンクリートを保護する工法が記載されている。特許文献4、5には金属チタンまたはチタン合金からなるパネルをコンクリート躯体に張り付けてコンクリートを保護する工法が記載されている。
また、特許文献6には、光硬化性のラジカル重合樹脂を繊維強化材に含浸してなるプリプレグシートをコンクリート躯体へ貼り付けることによるコンクリートの保護工法が、特許文献7には、支持体にポリプロピレン等の耐食性を有する合成樹脂材料を主成分とし、支持体と同じ、もしくは同様の耐食性を有する不織布に熱溶融させた合成樹脂を充填してなる耐食層をコンクリートに設置する方法からなるコンクリート保護工法が記載されている。
さらに、特許文献8、9には、ガラスマット等の無機質基材に高粘度のエポキシ等のバインダー樹脂組成物を塗布して含浸させ、コンクリート躯体を保護する工法が記載されている。とくに、特許文献8、9によると、低粘度のエポキシ塗料であると、コンクリート構造物の上面および側面に塗布した場合、場所によって塗布量のばらつきが発生し、微視的にピンホールが発生する。そこでピンホールの発生を防止することを目的として高粘度のバインダーを無機質基材に均一に塗布する必要があることを記載している。
特許文献10、11、12には、エポキシ塗料およびウレタン塗料をコンクリートに塗布することによりコンクリートを保護する工法が記載されている。
特許文献13には水ガラスを主成分とした常温硬化型の無機コーティング剤の製法および、その耐薬品性を生かしてのコンクリートとの無機基材の保護の可能性が記載されている。また、完全無機のコーティング膜とするために無機顔料を充填してなるコーティング剤の製法も記載されている。
特開平7−158392号公報 特開2003−166299号公報 特開2008−223328号公報 特開2005−220677号公報 特開2005−314492号公報 特開2004−181934号公報 特開2008−25226号公報 特開2005−68752号公報 特開2006−240950号公報 特開2005−307076号公報 特開2003−268303号公報 特開2005−193142号公報 特開2000−86934号公報
下水道施設のコンクリート構造物の腐食抑制技術および防食技術指針・同マニュアル(日本下水道事業団) 下水道構造物に対するコンクリート劣化抑制技術および防食技術の評価に関する報告書(日本下水道事業団)
しかしながら、上記の工法にはいずれも問題がある。まず、特許文献1〜5に記載の工法では、工場生産が中心であり、さらに、工事設備が大掛かりとなり、施工コストも高くなりやすい。そしてさらに、補修が必要となった際も、パネル交換、損傷部の補修をするにしても作業が煩雑になってしまう。また、特許文献6、7に記載の工法も、工事設備が大がかりとなり、さらに補修作業の困難さが問題となる。
さらに、特許文献8、9に記載の工法では、パネル工法ほどの工事設備は必要としないものの、ガラス繊維マット等に均質に高粘度の塗剤を含浸させ、コンクリート躯体に保護層を構成する作業は施工性が問題となっており、とくに、側面および上面への施工は困難である。さらに、ピンホールが存在すると、硫酸の侵入を許してしまい、コンクリートが劣化してしまう。そのため、一般的に、ピンホールの生成を防止するために被覆を積層し、被覆厚を数mm程度確保していることが非特許文献2に記載されている。塗料を塗布する方法で用いられる塗料は、主剤と硬化剤を作業現場にて混合する必要があるため、二液を指定量、正確に混合する作業が必要となる。また、溶剤型であることが多く、また、無溶剤タイプであっても臭気が強烈で作業環境が良くないといった問題もある。
さらにまた、特許文献8,9に記載の工法で、被覆厚を安定的に確保するには高い粘度が要求されるため、高粘度の主剤と硬化剤を作業現場にてハンドディスパーで混合しなくてはならない。しかし、高粘度の主剤と硬化剤をハンドディスパーで混合するのでは、主剤と硬化剤が均一に混合されにくくなるという欠点があり、塗装箇所により塗料の硬化速度、被覆の耐食性に差異が生じる可能性がある。そのため、被覆強度、耐酸性にばらつきが生じ、弱い箇所から劣化が起こる可能性もある。また、被覆にピンホールを発生させないためにさらに被覆を積層することで、被覆厚を数mm程度確保していることが非特許文献2に記載されている。
すなわち、特許文献8,9に記載の方法では、粘度が高いために1回の塗布ではピンホールが発生する可能性が高く、ピンホールの発生を抑えるために、数回の積層が必要になっている。具体的は、補強層(ガラス繊維マット等)を2層以上形成させているので、塗剤の塗布は少なくとも4回であると考えられる。それゆえに膜厚も厚くならざるをえない。また、膜厚で耐硫酸性を確保するといった考え方から膜厚を厚く規定しているということもある。このため、膜厚が0.3mm以下となることは極めて難しい。
一方、特許文献10、11、12においても、特許文献8、9と同じく高粘度の主剤と硬化剤の混合の不確実さ、作業現場において二液を指定量、正確に混合する必要性、塗布量の多さを減らすこと、そして、ピンホールに関する問題が課題となっており、さらに、臭気等の作業環境の問題も存在する。
また、特許文献13に記載されている水ガラスを主原料としたコンクリート保護塗料は、耐薬品性は高いものの、被覆厚が数μmというのが上限で、それより厚い被覆厚だと被覆表面にクラックを生じてしまう。よって、コンクリートのように、表面が完全に平滑でない基材へ該コーティング剤を塗布した場合、基材の表面凹凸を完全にカバーできず被覆欠陥を生じてしまうという問題がある。
そこで本発明は、下水道事業にて規定されている塗布型ライニング工法品質規格のD1種に適合する被覆を、塗工回数3回以下、被覆厚最大0.3mmという薄さで、コンクリート基材に根付き、剥離を生じない被覆を形成することで施設のコンクリートを保護することができる一液常温硬化型被覆材を提供することを目的とする。
この発明は、下記の(A)、(C)及び(D)の各成分、又は、(A)、(B),(C),及び(D)の各成分を含有し、25℃における初期粘度が900〜2000mPa・sとなり、このうち(A)および、含む場合には(B)成分を含めた混合物の平均分子量が1200〜1600である、無溶剤一液常温硬化型被覆材を作製することにより、上記の課題を解決したのである。
ここで、(A)成分とは、下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。
Si(OR4−n (1)
(上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
また、(B)成分とは、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(B)成分は、含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
(R−RSi(OR (2)
(上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
(C)成分とは、酸化チタン、タルク、ホウ酸アルミニウムウィスカから選ばれる1種類の無機顔料または複数種の無機顔料の混合物、又は、その混合物と、上記一液常温硬化型被覆材の明度を7以上かつ彩度を3以下にするように添加される着色用の無機顔料との複合混合物である。これらのそれぞれの平均粒子径が、0.1〜5μmであるとよい。
そして、(D)成分とは硬化触媒である。
すなわち、この一液常温硬化型被覆材は、アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物として、上記の平均分子量となる配合組成を選択しており、なおかつ、硬化剤との組み合わせで、塗工後環境に存在する水分を吸湿することにより硬化するようになるものとする。このような(A)〜(D)を組み合わせた被覆材は、コンクリート、モルタルなどのセメント製構造物に十分に塗布可能な粘度の液状となる。従って、セメント製構造物に塗布すると、セメント表層の細孔を閉塞させつつ、表面に被覆を形成させることができる。また、この一液常温硬化型被覆材は、浸透性が高いために発生したピンホールを封孔することもできる。ここで固まる際には、(A)成分および(B)成分が加水分解してアルコールが抜けつつ多量体を形成していき、硬化剤がその反応を促進させて、好ましい速度で硬化する。
ただし、(A)〜(D)を組み合わせた被覆材の初期粘度が低すぎると、セメント製構造物の表面を完全に被覆できず、塗膜欠陥を発生し、一方で初期粘度が高すぎると粘度が高すぎて塗布性の悪化を招き、ピンホールの封孔もしづらくなる。また、初期粘度が高すぎると被覆硬化後にクラックを発生してしまうこともある。このため、(A)〜(D)の混合物の25℃、20rpmにおける初期粘度が900〜2000mPa・sの範囲である必要がある。
なおかつ、上記の(A)、(B)成分の選択と共に、(D)成分である硬化剤を選択することにより、加熱によって反応を促進させなくとも、空気中の水分と加水縮合反応を起こして、塗布後常温環境下において2時間程度でその表面を指で擦っても傷が付かない程度に硬化させることができる。
なお、上記の(A)〜(D)成分からなる被覆材とすることにより、好適な挙動を示すものを実現できるが、(A)〜(D)成分の組み合わせは無限にあり、構成要素のうちの一つが極端な性質であると、他の成分が好適なものであっても問題を生じる場合がある。
一方で、(A)〜(D)成分のうちの一つが、ある組み合わせでは上記の条件を満たすものでなくても、別の組み合わせでは上記の条件を実現可能である場合がある。このため本発明では、成分とともに平均分子量と粘度を規定することで、確実に発明の課題を達成しうる範囲を規定し、発明を特定している。
この発明にかかる被覆材により、モルタル、コンクリートなどのセメント製構造物の表面に根付きの剥離しない高耐硫酸性の被覆を形成し硫酸によるセメント製構造物の劣化を防止できる。さらに、細孔への高い浸透性によりピンホールの生成を抑制することができるため、従来より少ない塗布回数で、かつ薄い被覆厚でセメント製構造物の劣化を防止できる。なお、好ましい塗布回数と被膜厚は固定されるものではなく、同じ被膜厚でもより多数回の塗布によって形成される膜の方がピンホールは生じにくい。ただしこの発明にかかる被覆材は浸透しやすいため、概ね2〜3回程度の塗布で十分な被覆効果が得られる。
実施例における平均分子量および25℃での初期粘度との関係を示すグラフ
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、セメント製構造物の表面に塗工し、そのセメントからなる表面を被覆することで、硫酸や水などがセメント製構造物のセメント組織内に浸入、含浸することを遮る一液常温硬化型被覆材である。
この発明で対象とするセメント製構造物は、特に下水道施設のような酸性腐食雰囲気下に施工されたセメント製構造物に用いると有用である。例えば、打放しコンクリート・軽量コンクリート・プレキャストコンクリート等のコンクリート、モルタル、石綿セメント板・パルプセメント板・木毛セメント板等のセメント板などの無機質材料が例示される。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材は、アルコキシシラン化合物、その部分加水分解縮合物又はその両方、および、無機顔料と、硬化触媒とを含む。具体的には、アルコキシシラン化合物、又はその部分加水分解縮合物としては、少なくとも下記の(A)成分を有し、下記の(B)成分を含んでいてもよい。また、前記無機顔料を(C)成分、前記硬化触媒を(D)成分と記載する。
上記(A)成分は、下記式(1)で示されるアルコキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選ばれる、1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(A)成分を用いることにより、硬化後、セメント製構造物の表層に存在する細孔を封する、すなわち、封孔作用を発揮することができる。
Si(OR4−n (1)
上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。
上記Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等の芳香族基等が挙げられる。
このようなアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有アルコキシシラン等が挙げられる。
また、上記アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記アルコキシシラン化合物の単一物又は混合物に水を加え、塩酸、酢酸、蟻酸等の触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせて縮合させることにより得られた化合物をいう。
上記の複数種の化合物の混合物とは、上記アルコキシシラン化合物である複数種の化合物の混合物、上記アルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と上記アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物との混合物、上記部分加水分解縮合物である複数種の化合物の混合物をいう。上記のうち、上記部分加水分解縮合物から選ばれる化合物を複数種用いて混合する場合、上記の各アルコキシシラン化合物を、別々に加水分解縮合してから混合してもよく、複数種の上記アルコキシシラン化合物を混合してから加水分解縮合してもよい。
上記の部分的な加水分解縮合を行う際に必要に応じて溶剤を用いることができる。溶剤としては、上記混合物を溶解して均一な溶液を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等が用いられる。なお、ここで用いた溶剤は、加水分解後に除去しておくと好ましい。溶剤が残存していると、この発明にかかる一液常温硬化型被覆材を使用する際に、溶剤によって固形分量が低下し細孔を塞げない場合がある。
次に、上記(B)成分は、下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種の化合物又は複数種の化合物の混合物である。この(B)成分を用いることにより、アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物として、上記(A)成分のみを使用した場合に比べて、上記一液常温硬化型被覆材をセメント製構造物の表面に塗工等して注入・浸透させたとき、得られるポリマー又はこのポリマーからなる被覆とセメント製構造物の表面との密着力がより向上し、表面全体を覆う被覆を形成させた場合の耐久性が飛躍的に向上する。なお、(B)成分としては、下記式(2)の構造を有する1種類の化合物でもよいし、2種類以上の化合物を併用してもよい。
(R−RSi(OR (2)
上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である。
上記(B)成分としてのアルコキシシラン化合物を加水分解縮合する方法、加水分解縮合の程度、および、使用する溶剤の種類については、上記した(A)成分の場合と同様な方法、程度、溶剤の種類等を採用することができる。また、アルコキシシラン化合物とその部分加水分解縮合物についての混合物の混合のさせ方や、加水分解縮合する手順も上記(A)成分と同様の方法が採用できる。
上記(B)成分を構成するアルコキシシラン化合物の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記(A)成分および(B)成分の好ましい混合比は、(B)成分/(A)成分=0/100〜25/75がよく、0/100〜15/85が好ましい。上記(B)成分がアルコキシシラン化合物中に占める割合が15重量%より多くなると、耐硫酸性が悪化する傾向がある。
これらの上記(A)成分および(B)成分は、空気中の水分などの水とOR基とが反応する加水分解反応で脱アルコール縮合を起こし、ポリマー化することで、細孔を閉塞させるとともに被覆を形成する。また同時に、コンクリートなどのシリコンを含有する素材である場合には、シリコンとの間にSi−O−Si結合を形成し、強固に結合する。
次に、上記(C)成分は無機顔料である。ここでいう無機顔料とは、金属および合金並びにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、硫化物、窒化物等が挙げられる。具体例としては、二酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、ケイ酸鉛、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、硫酸鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、二酸化ケイ素、炭化珪素、窒化珪素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、雲母、ベントナイト、タルク、カオリン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、ガラスフレーク、アパタルジャイト、カーボンブラック等から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物が挙げられる。
上記無機顔料のなかで、二酸化チタン、タルク、および、ホウ酸アルミニウムウィスカは硫酸等の無機酸、水酸化ナトリウム等の強塩基、腐食性ガス等の耐薬品性が強いため特に好ましい。これらの無機顔料をポリマー中に配合することにより、ポリマー中にある分子レベルの隙間からコンクリートの組織に侵入してくる水分、二酸化炭素等の気体、および硫酸などの薬品の浸透を抑制または遮断することができる。そのため、被覆に高度な耐薬品性を付与することができる。
また、上記無機顔料を充填することにより被覆を補強することができる。さらに、上記無機顔料として、タルク、ベントナイト、板状の硫酸バリウムなどのリン片状の顔料、またはホウ酸アルミニウムウィスカ、アパタルジャイトなどの針状の顔料を含めると、被覆の残留応力を緩和することができ、クラックなどの被覆欠陥を抑制することができる。
さらに(C)成分として、被覆材全体に色を添加するための着色用の無機顔料を含んでいてもよい。この着色用の無機顔料は着色用のものであれば特に内容を限定されるものではない。ただし、被覆材の明度を7以上かつ彩度を3以下とするように添加されるものであることが好ましい。
上記(C)成分は、種類、配合量を調整することにより、一液常温硬化型被覆材の初期粘度を調整することができる。例えば、タルク、ベントナイト、板状の硫酸バリウムなどのリン片状の顔料、または、ホウ酸アルミニウムウィスカ等の針状顔料の添加で初期粘度を高くすることができ、対して、二酸化チタンのような球状の顔料を添加すると初期粘度の上昇が抑えられる。
上記(C)成分を構成する無機顔料の平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.2μm以上2μm以下がより好ましい。0.1μm未満だと被覆材の粘度が高くなり作業性が悪くなり、さらに、被覆の顔料による補強効果が低下する。5μmを越えると顔料の沈降が起こり扱いにくくなる。
また、上記(C)成分の配合量は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、30重量部以上であるとよく、50重量部以上であると好ましい。添加量が30重量部未満では得られる被覆の耐硫酸性が十分ではない場合がある。一方で、100重量部以下であるとよく、80重量部以下であると好ましい。100重量部を超えると顔料の沈降が起こりやすくなり、また、被覆の可撓性が低下したりするなど良好な被覆が得られない場合がある。
さらに、この発明にかかる一液常温硬化型被覆材は、アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物である(A)成分、(B)成分および(C)成分とは別に、(D)成分となる上記硬化触媒を有する。この硬化触媒は、上記のアルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物を常温において実用的な時間で十分に縮合させて硬化させるために必要な成分である。上記硬化触媒である(D)成分の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物等の有機金属化合物、塩酸、クロム酸等の無機酸、酢酸、蟻酸、グリコール酸等の有機カルボン酸等から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物が挙げられる。
上記硬化触媒の中でも、常温で硬化可能となり、セメント製構造物の劣化への影響がなく、使用条件に応じた硬化時間の調整が可能である点で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物が好ましい。
上記(D)成分となる上記硬化触媒の使用量(固形分)は、上記アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物である(A)成分および含む場合には(B)成分を含めた合計量100重量部(固形分)に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと、常温での硬化速度が異常に遅くなったり、硬化被覆の強度が不足したりする場合がある。一方、10重量部より多いと、硬化速度が速くなりすぎて、形成されるポリマーに内部応力が蓄積され、経時的に被覆にクラックが発生する傾向がある。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材の、(A)成分および(B)成分の混合物の平均分子量は、1200〜1600となるように、用いる(A)成分及び(B)成分の分子量と配合比を調整する必要があり、1400〜1600であることが好ましい。平均分子量が1200未満だと、耐硫酸性が低くなり、被覆が高濃度硫酸環境下では短期で侵されてしまう。一方で、平均分子量が1600を超えると硬化後の被覆に短期でクラックが発生しやすくなる傾向もある。なお、本願において平均分子量とは、重量平均分子量をいう。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材の、(A)成分〜(D)成分の混合物の初期粘度は、20rpmの条件において、900〜2000mPa・sが好ましく、1000〜1900mPa・sであることが好ましい。初期粘度が900mPa・s未満だと、所定量を塗工することが困難になる。さらに、セメント製構造物表面に存在する骨材等の凹凸を完全には被覆できず、塗膜欠陥を作ることがある。一方で、初期粘度が2000mPa・sを超えると被覆作業が困難となり、平滑な被覆形成が困難となる。
なお、初期粘度の測定はJIS K 7117によるものであり、混合直後に測定した粘度のことをいう。
この初期粘度の調整は、(A)〜(D)成分全ての構成によるが、特に上記の(C)成分の種類及び量を調整することによると、最も調整しやすい。ただし、(A)及び(B)成分が低分子量のものは全般的に粘度を上げにくい傾向にあり、分子量が低すぎるものを上記の規定粘度に調整しようとすると、硬化した被膜が脆くなりやすい。逆に、(A)及び(B)成分が高分子量すぎると、(C)成分によって粘度を低下させることは可能であるが、剥離が起きやすくなる傾向にある。すなわち、(A)及び(B)成分の分子量と、(C)成分による粘度向上効果とでバランスを取ることが、この発明の条件を満たすための必要手順となる。
また、この発明にかかる一液常温硬化型被覆材の硬化速度は、塗工後30分間の重量減少率にして、10〜16重量%が好ましい。この重量減少率が10重量%未満であると加水分解縮合の進行が遅すぎて、硬化までにかかる時間がかかりすぎ、実用上問題が生じてしまうおそれがある。一方で、16重量%を超えると、形成されるポリマーに内部応力が蓄積され、経時的に被覆にクラックが発生する傾向がある。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材は、上記の成分を混合することで製造することができる。具体的には上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分をそれぞれ上記した量で混合することにより製造することができる。
なお、実際に上記一液常温硬化型被覆材を製造するにあたっては、(A)成分、必要に応じて(B)成分を混合した後、また、必要に応じて、部分加水分解した後で加水分解に使用していた溶剤を留出させ、この溶剤の留出がなくなった状態にして、被覆材として用いる。具体的には、一般的に溶剤と呼ばれる化合物、例えば、沸点が145℃以下の炭化水素化合物や、酸素含有炭化水素化合物、窒素含有炭化水素化合物等の含有割合が、0.1重量%以下の一液常温硬化型被覆材である。このような溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トリエチルアミン、トリメチルアミン等が挙げられる。
一方、この発明にかかる一液常温硬化型被覆材を用いて、セメント製構造物の被覆を行うには、上記セメント製構造物を予め乾燥させることが必要となる。湿潤状態のセメント製構造物は細孔、特に材料表層の細孔が水で充満されており、被覆材は細孔へ浸透できないので、根付きの被覆を形成できず、剥離する恐れがある。
上記湿潤状態のセメント製構造物に被覆材を塗工せざるを得ない場合、この発明で用いる一液常温硬化型被覆材に、必要に応じて(E)成分として極性の有機溶剤を加えるとよい。極性の有機溶剤を加えることにより、極性の有機溶剤が水と相溶することができ、湿潤状態のセメント製構造物に一液常温硬化型被覆材が浸透し根付き、剥離しない塗膜を形成することができる。
上記(E)成分を構成する有機溶剤の例としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物を挙げることができる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
また、上記(E)成分の配合量は、一液常温硬化型被覆材の100重量部に対して、4重量部以上であるとよく、8重量部以上であると好ましい。添加量が4重量部未満であると、水と一液常温硬化型被覆材の相溶が不完全となり、被覆が湿潤状態のセメント製構造物の表面にある細孔への浸透量が減って、根付きが弱くなり被覆が容易に剥離してしまう。一方で、30重量部以下が好ましく、15重量部以下であるとより好ましい。添加量が30重量部を超えると一液常温硬化型被覆材の粘度が低くなりすぎ、所定量を塗工するのが困難になる。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材を塗工する際の、上記セメント製構造物の乾燥の程度は、該当するセメント製構造物が最大に保有できる水分量の10〜50%が好ましい。50%より大きいと、上記一液常温硬化型被覆材の注入又は浸透が十分でない場合がある。一方、10%より少なくともよいが、乾燥に手間がかかるとともに、無駄なコストをかけてしまうことになるので、10%あれば十分である。乾燥させる方法は、自然乾燥でも加熱乾燥でもよい。
なお、上記の含水率は、重量Wのセメント製構造物を、換気の良い炉を使って100〜105℃にて恒量になるまで乾燥した状態(全乾状態)にし、そのときの重量Wとして、その全乾状態の材料を水に浸漬して恒量になるまで水を浸透させたときの重量をWとして、下記式により算出する。
含水率(%)=(W−W)/(W−W)×100 ……(3)
上記の程度にまで乾燥させたセメント製構造物の表面上に、この発明にかかる上記一液常温硬化型被覆材を、刷毛塗り、ローラー塗り等の方法によって材料の表面全体に塗工して使用する。塗工後は速やかに上記硬化触媒が反応し、上記アルコキシシラン化合物やその部分加水分解縮合物を加水分解縮合させて硬化することにより、材料表層部細孔内に被覆材のポリマーを固定化させ、材料表面に硬化被覆を形成させたセメント製構造物を速やかに得ることが出来る。
上記セメント製構造物の表面への上記一液常温硬化型被覆材の塗布量は、400g/m以上が好ましく、500g/m以上がより好ましい。500g/mより少ないと、目視では観測できないくらいのピンホールを完全に防止することができない可能性があり、400g/mより少ないとその可能性がさらに高くなる。なお、凹凸や孔の無い平滑な板であれば200g/mでも保護することは可能であるが、本発明の目的であるセメント製構造物では現実的ではない。一方で、800g/m以下が好ましく、700g/m以下であるとより好ましい。700g/mより多いと、被覆が厚くなりすぎて残留応力が増大し、クラックを発生する可能性がある。800g/mより多くなるとその可能性はさらに高まり、1000g/mを超えるとほぼ確実にクラックを発生させる。さらに、液だれ等施工上の問題も発生する危険がある。
また、上記セメント製構造物への上記一液常温硬化型被覆材の塗布回数は、2回以上が好ましい。塗布回数が1回だと、規定量塗布することは困難である、さらに、セメント製構造物に由来するピンホールが発生し、そのピンホールから硫酸等の侵入を許すこととなり、セメント製構造物の劣化を招く可能性が高い。一方で、塗布回数に特に上限は無いが、回数が多いとそれだけ現場での負担が大きくなり、また、一回あたりの塗布量と好ましい膜厚の上限とから、5回以下であるのが現実的であり、少ない方が好ましい。
また、上記一液常温硬化型被覆材からなる硬質被覆を上記セメント製構造物表面に形成させる場合、得られる硬化被覆の厚みは、150μm以上がよく、200μm以上であるとより好ましい。200μmより薄いと、凹凸の被覆が不十分で、硫酸等による浸食を受ける可能性がある。150μmより薄いと、その可能性はさらに高くなる。一方で、500μm以下がよく、450μm以下であるとより好ましい。450μmより厚いと、残留応力が蓄積され増大し、経時的に被覆にクラックを発生する可能性がある。500μmより厚くなると、その可能性はさらに高くなる。
この発明で用いる一液常温硬化型被覆材は、常温で十分硬化可能であり、速やかに表面を被覆されたセメント製構造物を得ることができる。また必要に応じて加熱処理を行うとより速く硬化を行うことができる。
この発明にかかる一液常温硬化型被覆材は、コンクリート、モルタル、セメント板などのセメント製構造物に適用すると、水および二酸化炭素ガス、Clイオン等の浸透を大幅に抑制し、中性化、塩害等による劣化を防止できると共に白華現象も防止できる。
以下、この発明について具体的な実施例を示す。まず、用いる原材料と評価方法について説明する。
<(A)成分>
・メチル基およびフェニル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KR−213(以下、「KR213」と称する。)メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した4量体。分子量約440、粘度18mPa・s。
・メチルトリメトキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:KC89S(以下、「KC89S」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約2量体。分子量約280、粘度5mPa・s。
・メチル基含有アルコキシシランオリゴマー…信越化学工業(株)製:X−40−9225(以下、「X409225」と称する。)メチルトリメトキシシランを部分加水分解縮合した約20量体。分子量約1700、粘度80mPa・s。
<(B)成分>
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン…信越化学工業(株)製:KBM−803(以下、「KBM803」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量196、粘度4mPa・s。
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン…東レ・ダウコーニング(株)製:SH6040(以下、「SH6040」と称する。)部分加水分解していないモノマー。分子量236、粘度4mPa・s。
<(C)成分>
・タルク…林化成工業(株)製:ミクロンホワイト#5000S(以下、「タルク」と称する。)
・二酸化チタン…デュポン(株)製:R−960(以下、「チタン」と称する。)
・ホウ酸アルミニウムウィスカ…四国化成(株)製:アルボレックスY(以下、「ホウ酸アルミ」と称する。)
<(D)成分>
・テトラ−n−ブトキシチタン…日本曹達(株)製:B−1(以下、「B−1」と称する。)(反応速度高)
・チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)…(株)マツモト交商製:TC−750(以下「TC750」と称する。)
<(E)成分>
・イソプロピルアルコール…(株)製:IPA(以下、「プロパノール」と称する。)
<液初期粘度測定方法>
下記に示すそれぞれの構成の試料について、混合した直後に、東機産業(株)製:TVE−22H型粘度計を用い、コーン:1°34′(R:24)、20rpmおよび2rpmの条件下で測定した。
<平均粒子径測定>
下記に示すそれぞれの構成の試料について、分散した直後に、プロパノールで約1000倍に希釈して、(株)堀場製作所製;LA−910型レーザー回折光散乱式粒度分布測定装置で測定した。測定値は、体積換算でのメジアン径である。
<硬化速度測定方法>
底面積23.7cm(5.5cmφ)のアルミ箔トレーにサンプルを0.1g滴下し、25℃に保持し、5分ごとにエー・アンド・ディ社製電子天秤HR−200(最小表示0.1mg)にて重量減少を秤量して、塗布30分後の重量減少率を算定した。
<塗布量測定方法>
日本テストパネル(株)製:モルタル板150mm×70mm×厚さ20mmに、各例の試料被覆材を塗布する前の重量をWm0とし、塗布後の重量をWm1として、下記式(4)により算出する。
塗布量(g/m)=(Wm1−Wm0)/(0.07×0.15) ……(4)
さらに、上記の値から、下記の換算式(5)により塗膜厚(μm)を算出した。なお、係数0.5は別途行った検証試験により求めた値である。
塗布厚(μm)=塗布量(g/m)×0.5 ……(5)
<耐硫酸性試験方法>
日本テストパネル(株)製:モルタル板150mm×70mm×厚さ20mmに、各例の試料被覆材を刷毛にて各規定量塗布し、7日間室温(約20℃)で養生した後、JIS K5600 6 1:1999 7項に従い、試験体を約23℃の10重量%の硫酸水溶液に浸漬し、被覆にふくれ、われ、軟化、溶出発生するまでの日数を目視により確認した。
表1に記載の組成で、(株)東洋精機製作所製試験用分散機(俗称ペイントシェイカー、容器450cc、溶液/シンマルエンタープライゼス(株)製ジルコンボール1mmφの容積比=50/50、充填率:80%、回転数750rpm)にて、(A)、(B)および(C)成分を1時間混合した後、(D)成分を所定量滴下し2分間混合して得られた一液常温硬化型被覆剤について上記の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
Figure 2010270276
Figure 2010270276
Figure 2010270276
<被覆>
(実施例1〜18、比較例1〜19)
いずれも、表面を覆う被覆を形成するよう、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を調製し、上記の評価を行った。
上記の実施例および比較例の、平均分子量および25℃での初期粘度の値を、平均分子量を横軸に、25℃での初期粘度の値を縦軸としてプロットしたものを図1に示す。また、上記の、平均分子量および耐硫酸性で被覆の剥離が起こるまでの日数のよい値を点線で、好ましい値の範囲を太実線で囲み、示す。
実施例1〜9は平均分子量が1200〜1600の間にあり、かつ、(A)〜(D)成分の混合物の25℃での初期粘度が900〜2000mPa・sの間に入っているために、硫酸浸漬試験で120日以上被覆剥離しない。比較例4では、25℃での初期粘度は900〜2000mPa・s内に収まっているが、平均分子量が1200より低かったために硫酸による浸食を受け剥離を発生している。
比較例1〜3は平均分子量が1200より少なく、かつ、25℃での初期粘度が900mPa・sより低いために、硫酸の浸食を受け被覆の剥離が起こっている。また、平均分子量が1200〜1600内に収まっていても、(C)成分を含有していない場合、粘度が900mPa・sより大幅に低くなるので硫酸の浸食を受け被覆の剥離が起こっている。
比較例5〜9は平均分子量は1200〜1600内に収まっているが、粘度が900〜2000mPa・sから外れているために硫酸の浸食を受け被覆の剥離が起こっている。比較例10〜12では、縮合度が大きく、平均分子量が大きいオリゴマーを早く硬化させたことで、クラックが生じやすくなっている。
実施例8、9、比較例13、14では、被覆の強化を目的にした(B)成分を添加したが、比較例13、14は平均分子量が1200より少なく、かつ、25℃での初期粘度が900mPa・sより低いために、(C)成分の種類とは関係なく硫酸の浸食を受け被覆が剥離した。対して、実施例8、9は平均分子量が1200〜1600内にあり、かつ、25℃での初期粘度が900〜2000mPa・sの間にあるので硫酸による浸食を受けず剥離を生じていない。
そして、(C)成分を含有しない比較例15では、粘度が極端に低くなってしまい、被覆はできたものの、早々に剥離が生じてしまった。
実施例11〜17は、塗布量が500〜700g/m内にあり、かつ、塗工回数が2回以上であるので硫酸浸漬試験で120日以上被覆剥離しない。対して、比較例17は塗布量が400g/mであっても塗工回数が1回のため、被覆に欠陥を生じることがあり、硫酸による浸食を受け剥離を生じている。比較例16は、塗布量が400g/mより少ないため、硫酸による浸食を受け剥離を生じている。比較例18、19では、塗布量が800g/mより多くなっているため、被覆の内部応力が大きくなりすぎクラックを生じ、硫酸による浸食を受け剥離を生じている。

Claims (6)

  1. 下記の(A)、(C)及び(D)の各成分、又は、(A)、(B),(C),及び(D)の各成分を含有し、このうち、(A)および(B)成分の混合物の平均分子量が1200〜1600であり、(A)〜(D)の混合物の25℃、20rpmにおける初期粘度が900〜2000mPa・sとなる、一液常温硬化型被覆材。
    ・(A)成分:下記式(1)で示されるアルコキシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
    Si(OR4−n (1)
    (上記式(1)中、Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでも良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。上記RとRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは1〜3の整数を示す。)
    ・(B)成分:下記式(2)で示されるアルコキシシラン化合物、およびその部分加水分解縮合物から選ばれる1種類の化合物又は複数種の化合物の混合物。
    (R−RSi(OR (2)
    (上記式(2)中、Rは、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、メタクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、又はビニル基を示す。Rは炭素数0〜4の二価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。また、mは1〜3の整数を、pは1〜3の整数を、qは0〜2の整数を示し、m+p+q=4である)
    ・(C)成分:酸化チタン、タルク、ホウ酸アルミニウムウィスカから選ばれる1種類の無機顔料または複数種の無機顔料の混合物、又は、その混合物と、上記一液常温硬化型被覆材の明度を7以上かつ彩度を3以下にするように添加される着色用の無機顔料との複合混合物。
    ・(D)成分:硬化触媒。
  2. 上記の(A)成分及び(B)成分の混合物の平均分子量が1400〜1600であり、25℃での初期粘度が900〜2000mPa・sであって、塗工したセメント製構造物の表層にある細孔の内部を閉塞させつつ、塗工した上記セメント製構造物の表面に被覆を形成させることを特徴とする、請求項1に記載の一液常温硬化型被覆材。
  3. 上記(C)成分を構成する無機顔料の平均粒子径が、0.1〜5μmである請求項2に記載の一液常温硬化型被覆材。
  4. 上記(D)成分である硬化触媒が、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、および有機アルミニウム化合物から選ばれる1種の化合物、又は2種以上の化合物の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の一液常温硬化型被覆材。
  5. (E)成分として、炭素数3以下の低級アルコール、水に可溶のエステル化合物、水に可溶のケトン化合物から選ばれる1種の化合物、または2種以上の化合物の混合物である有機溶剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の一液常温硬化型被覆材。
  6. セメント製構造物の表面に、請求項1〜5のいずれかに記載の一液常温硬化型被覆材を塗工し、上記(A)成分、又は、上記(A)及び(B)成分の加水分解縮合によって上記一液常温硬化型被覆材が前記セメント製構造物の表面を被覆した被覆構造物。
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