JP2010268990A - 光干渉断層撮像装置およびその方法 - Google Patents
光干渉断層撮像装置およびその方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】光干渉断層撮像装置であって、中心波長の異なる第1の測定光と第2の測定光と、第1の測定光の焦点位置を調整するための第1の調整手段と、第2の測定光の焦点位置を調整するための第2の調整手段と、
第1の測定光によって生じる第1の戻り光と第1の参照光によって生成される干渉光を検出するための第1の検出手段と、第2の測定光によって生じる反射または散乱した第2の戻り光と第2の参照光とによって生成される干渉光を検出するための第2の検出手段とを有し、
第1と第2の調整手段によって第1の測定光と第2の測定光の焦点位置とが、深さ方向で異なるように調整可能に構成する。
【選択図】 図1
Description
また、OCT装置は測定光を、被検査物上にスキャンすることで、断層像を高分解能に得ることができる。
そのため、被検眼の眼底における網膜の断層像を高分解能に撮像することも可能であることから、網膜の眼科診断等において広く利用されている。
特に、OCT装置の登場により網膜の断層像を高分解能に撮像することができ、これまでの診断では発見し難い小さな病変部の検出が可能になった。
そのため、OCT装置に対して眼底疾患の早期発見が期待されており、様々な開発が進められている。
また、800nm帯の光に加えて1500nm帯の波長の光源を用い、なおかつそれぞれの波長ごとに焦点位置を変えて焦点深度を深くする眼科撮影装置が、特許文献2に開示されている。この装置では、2つの光源の光を交互に被検査物に入射させ、交互に取得した断層像を合成して広範囲の断層像を取得するように構成されている。
また、特許文献2の技術によれば、800nm帯の低コヒーレント光源と1500nm帯の低コヒーレント光源を備え、色収差を用いてそれぞれの波長の光の焦点位置をずらすことで実質的に焦点深度を大きくすることができる。しかし、それぞれの波長の光を交互に切り替えて撮像するため同じ部位を同時に測定することができない。また、色収差のみによって焦点位置をずらすため、眼の視度の影響を排除することが困難である。
本発明の光干渉断層撮像装置は、光源からの光を被検査物に照射し、前記被検査物からの反射または散乱した戻り光を用いて干渉光を合成し、前記干渉光を用いて前記被検査物の断層像を撮像する光干渉断層撮像装置であって、
前記被検査物に光を照射するため、互いに中心波長の異なる第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を出射する低コヒーレント光出射手段と、
前記第1の低コヒーレント光を、第1の参照光と第1の測定光に分割する第1の分割手段と、
前記第2の低コヒーレント光を、第2の参照光と第2の測定光に分割する第2の分割手段と、
前記第1の測定光の焦点位置を調整するための第1の調整手段と、
前記第2の測定光の焦点位置を調整するための第2の調整手段と、
前記第1の調整手段で調整された前記第1の測定光と前記第2の調整手段で調整された前記第2の測定光とを、被検眼に照射するための照射手段と、
前記第1の測定光が被検査物において反射または散乱した第1の戻り光と前記第1の参照光によって生成される干渉光を検出する第1の検出手段と、
前記第2の測定光が前記被検査物において反射または散乱した第2の戻り光と前記第2の参照光とによって生成される干渉光を検出するための第2の検出手段と、を有し、
前記第1の調整手段により調整される前記第1の測定光の焦点位置と、前記第2の調整手段により調整される前記第2の測定光の焦点位置とが、深さ方向で異なる位置に調整可能に構成されていることを特徴とする。
また、本発明の断層画像の撮像方法は、中心波長の異なる第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を、それぞれ第1の参照光と第1の測定光および第2の参照光と第2の測定光に分割して照射手段によって被検査物に照射し、
前記被検査物からの反射または散乱した戻り光を用いて干渉光を合成し、前記干渉光を用いて前記被検査物の断層像を撮像するOCTによる断層画像の撮像方法であって、
前記照射手段により照射された前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、前記被検眼の基準となる基準層に合わせる第1の工程と、
前記第1の工程により前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を前記基準層にあわせた後に、前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、それぞれ異なる深さに合わせる第2の工程と、
前記第2の工程によりそれぞれ異なる深さ位置に合わせた後に、前記被検眼の断層画像を取得する第3の工程と、を有することを特徴とする。
本実施形態のOCT装置は、つぎの(1)〜(6)のように構成される。
また、本実施形態のOCTによる断層画像の撮像方法は、つぎの(7)〜(11)のように構成される。
(1)短波長である第1の低コヒーレント光と長波長である第2の低コヒーレント光に対してそれぞれの干渉像を得るための第1と第2の干渉計と、
第1、第2の低コヒーレント光の光束をそれぞれ調整できる第1と第2の光束調整部を備えた構成とする。
断層画像を撮像する際において、前記第1の低コヒーレント光を有する第1の測定光と前記第2の低コヒーレント光を有する第2の測定光の焦点深度が連続または重複する範囲において各々の焦点位置を同一光軸上でずらす。
これにより、見かけの焦点深度は深くなり、一度に眼底の広い範囲を撮像することが可能となる。
また、その際、前記光束調整部を調整して、前記第1の測定光の焦点位置を高反射となる層よりも浅い位置に、第2の測定光の焦点位置を高反射となる層よりも深い位置になるように調整可能に構成される。
これにより、結果として前記第1の測定光では測定しにくい前記高反射層よりも深い位置までを一度の撮像で画像を得ることが可能となる。
また、前記光束調整部を用いて、前記第1と第2の測定光のビーム径をそれぞれ調整することで、所望の分解能の画像を得ることが可能となる。
(2)前記第1の測定光と前記第2の測定光の光束径をそれぞれ個別に調整できるように構成することができる。
これにより、それぞれの測定光の分解能を変化させることが可能となる。
また、光束径を調整することで撮像範囲を広げることが可能となる。
これらにより第1の測定光と第2の測定光それぞれの分解能を調整することができ、結果として広範囲にわたって高画質のOCT画像を取得することが可能となる。
(3)被検眼に前記第1の測定光と前記第2の測定光を照射する照射手段を、前記第1と前記第2の測定光の焦点位置を同時に調整する第3の調整手段を備えた構成とすることができる。
これにより、前記第1と前記第2の測定光の焦点位置を同時に大きく移動させることができる。結果として焦点位置の調整時間の短縮を図る事が可能となる。
(4)前記第1と第2の低コヒーレント光を出射する低コヒーレント光出射手段は、第1の低コヒーレント光を生成する第1の光源と、第2の低コヒーレント光を生成する第2の光源より構成することができる。
これにより、撮像部位の特性に合わせて所望の波長を選択することができる。
結果として所望の範囲で高画質な断層画像を取得することが可能となる。
(5)前記低コヒーレント光出射手段は、広帯域の光を生成する光源と、単一の波長を選択可能な複数のフィルタから構成することができる。
これにより、前記複数のフィルタにより前記第1の低コヒーレント光と前記第2の低コヒーレント光が生成可能となる。
これらにより、単一の光源ですむため、装置の簡素化と第1と第2の低コヒーレント光の発振にばらつきがなくなる。結果として高画質な断層画像を取得することが可能となる。
(6)前記第1と第2の分割手段、または、前記第1の参照光の光路長調整手段と前記第2の参照光の光路長調整手段のうちのいずれかが共有されている構成とすることができる。これにより、装置の簡略化を図る事が可能となる。
(7)前記断層画像を撮像する工程において、前記照射手段により照射された前記第1と前記第2の測定光の焦点位置を調整の基準となる層に合わせる第1の工程と、
前記第1の工程後に前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、それぞれ異なる深さに合わせる第2の工程と、
前記第2の工程後に前記被検眼の断層像を取得する第3の工程を備えた構成とすることで、焦点位置の調整が容易となる。結果として効率的に断層画像の撮像を行うことが可能となる。
(8)前記基準層を、網膜色素上皮層、神経線維層、視神経内節外節境界部の中から選択するように構成することができる。このようにすることにより、前記第1の測定光の反射率が高いことから、前記眼底の特定の層として認識することが容易となる。
その結果、前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置の調整が容易になり、結果として眼底の広い領域を高画質に撮像することが可能となる。
(9)前記第1の測定光の焦点深度と前記第2の測定光の焦点深度とを光軸方向に連続または部分的に重複させるようにすることができる。
これにより、光軸方向に広範囲なOCT画像を一度に取得することが可能となる。
(10)前記第1の測定光の焦点位置と前記第2の測定光の焦点位置との距離を20μmから2000μmとすることができる。
これにより、第1の測定光と第2の測定光の焦点深度が連続または部分的に重複させることができる。
また、第1の測定光と第2の測定光の焦点位置間の距離を2000μmとすることで、一度に網膜から脈絡膜にいたる範囲のOCT像を十分取得可能である。
結果として光軸方向に広範囲なOCT画像を一度に取得することが可能となる。
(11)前記短波長の低コヒーレント光である前記第1の測定光の焦点位置を前記基準層よりも浅い位置にあわせ、前記長波長の低コヒーレント光である前記第2の測定光の焦点位置を前期基準層よりも深い位置にあわせるようにすることが出来る。
これにより、前記第1の測定光に対して反射率が高く、前記第1の測定光が透過しにくい層よりも深い位置に前記第2の測定光を到達させることが可能となる。結果として眼底の広い領域を撮像することが可能となる。
ここで、別の実施形態として、上述の実施形態に係る光干渉断層法を用いる撮像方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムとして、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、EEPROM、ブルーレイディスクなど)に格納しても良い。また、別の実施形態として、上述の光干渉断層法を用いる撮像方法をコンピュータに実行させるためのプログラムでも良い。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用したOCT装置について説明する。
ここでは特に、被検査物を被検眼としてその断層画像(OCT像)を撮像する装置について説明する。
ここで説明するOCT装置はフーリエドメイン方式のOCT装置(Fourier Domain OCT)である。また使用する光源は第1と第2の低コヒーレント光源である。
なお、図1において、制御・信号処理部130は図の都合上同じ番号が複数記してあるが、実際には同一の構成部である。
本実施例のOCT装置100は、図1に示されるように、全体として2台のマイケルソン干渉計によって構成され、各々の測定光はダイクロイックミラー116によって合波され同一の光軸上を通って被検眼に入射されるようになっている。光源101−1と、101−2とは、互いに中心波長の異なる低コヒーレント光源であり、光源101−1からは第1の低コヒーレント光が出射され、光源101−2からは第2の低コヒーレント光が出射される。
光源101−1から出射された光は光ファイバ102−1を通り、ファイバカプラ111−1(第1の分割手段)を介して参照光150−1(第1の参照光)と測定光151−1(第1の測定光)に強度比10:90で分割される。
測定光151−1はダイクロイックミラー116を透過し、被検査物である被検眼140に入射され、被検眼140によって反射あるいは散乱された戻り光153−1(第1の戻り光)となって戻される。
戻り光153−1は再びダイクロイックミラー116を透過し、ファイバカプラ111−1によって参照光150−1と合波される。
参照光150−1と戻り光153−1は合波された後、この合波された干渉光は透過型グレーティング106−1によって波長ごとに分光され、ラインカメラ120−1(第1の検出手段)に入射される。
ラインカメラ120−1は各位置(波長)ごとに光強度を電圧に変換し、その信号170−1は制御・信号処理部130に送られる。
測定光151−2はダイクロイックミラー116で反射され、被検眼140に入射される。被検眼140によって反射あるいは散乱された戻り光153−2(第2の戻り光)となって戻される。
戻り光153−2は再びダイクロイックミラー116で反射され、ファイバカプラ111−2によって参照光150−2と合波される。
参照光150−2と戻り光153−2は合波された後、この合波された干渉光は透過型グレーティング106−2によって波長ごとに分光され、ラインセンサカメラ120−2(第2の検出手段)に入射される。
ラインカメラ120−2によって各位置ごとに光強度を電圧に変換し、その信号170−2は制御・信号処理部130に送られる。
信号170−1および170−2は制御・信号処理部130によって処理されることで、被検眼140の断層像が構成される。
なお、本実施例では、互いに異なる中心波長の低コヒーレント光を生成する第1の低コヒーレント光源と第2の低コヒーレント光源によって第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を生成する構成について記載しているが、これに限定されるものではなく、例えばSC(Supercontinuum)光源(発振波長は700nm〜2000nm)のように広帯域の光を生成する光源と単一の波長を選択可能な複数のフィルタを用いることで、1つの光源から互いに異なる中心波長である第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を生成する構成とすることも出来る。
光源101−1は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。中心波長は830nm、バンド幅50nmである。
ここで、バンド幅は、得られる断層像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメーターである。
また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。
ファイバカプラ111−1によって分割された参照光150−1は光ファイバ102−2を通してレンズ117−1に導かれ、平行光になるように調整される。次に、参照光150−1はレンズ117−2にて集光され、ミラー105−1によって反射されることで再びファイバカプラ111−1に導かれる。
ここで、参照光150−1が通過した分散補償用ガラス112−1は被検眼140に測定光151−1が往復したときの分散を、参照光150−1に対して補償するものである。
分散補償用ガラス112−1の厚さL1は被検眼140、光束調整部110−1およびレンズ124−1、2の構成と波長の関係によって決定される。
また、光路長L3はファイバカプラ111−1から被検眼までの光学距離とファイバカプラ111−1からミラー105−1までの光学距離を同一にするために調整される光路長である。
さらに、ミラー105−1は電動ステージ114−1上に固定されており、電動ステージ114−1を矢印で図示する方向に移動させることで参照光150−1の光路長を調整・制御することができる。
また、電動ステージ114−1は制御・信号処理部130によって高速に制御することができる。
ファイバカプラ111−2によって分割された参照光150−2は光ファイバ103−2を通してレンズ118−1に導かれ、平行光になるように調整される。次に、参照光150−2はレンズ118−2にて集光され、ミラー105−2によって反射されることで再びファイバカプラ111−2に導かれる。
ここで、参照光150−2が通過した分散補償用ガラス112−2は被検眼140に測定光151−2が往復したときの分散を、参照光150−2に対して補償するものである。
分散補償用ガラス112−2の厚さL2は被検眼140、光束調整部110−2およびレンズ124−1、2の構成と波長の関係によって決定される。
また、光路長L4はファイバカプラ111−2から被検眼までの光学距離とファイバカプラ111−2からミラー105−2までの光学距離を同一にするために調整される光路長である。
さらに、ミラー105−2は電動ステージ114−2上に固定されており、電動ステージ114−2を矢印で図示する方向に移動させることで参照光150−2の光路長を調整・制御することができる。
また、電動ステージ114−2は制御・信号処理部130によって高速に制御することができる。
ファイバカプラ111−1によって分割された測定光151−1はレンズ122−1によってビーム径2.5mmの平行光とされ、光束調整部110−1に導かれる。
光束調整部110−1では制御・信号処理部130からの信号に基づいて光束径および収束度の調整を行うことができる。
測定光151−1の光束径は瞳孔径よりも小さい径で調整されればよく、ここでは1mmから6mmまでの範囲で調整可能としている。
また、収束度は、被検眼140の眼底上での測定光151−1の焦点位置を変化させるために調整され、ここでは眼底上の焦点位置を1mm変化することができる。
焦点位置は少なくとも網膜の厚さ分だけ変化させられれば良く、観測範囲によって変化量は決めてよい。
次に、光束調整部110−1を通した測定光151−1はダイクロイックミラー116に導かれる。
ダイクロイックミラー116は光源101−1からの測定光151−1及び戻り光153−1は透過し、光源101−2からの測定光151−2及び戻り光153−2は反射するような特性を持たせている。
測定光151−1はダイクロイックミラー116を透過し、XYスキャナ107に入射される。
ここでは簡単のため、XYスキャナ107は1つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置され、網膜141上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンできる構成になっている。
また、測定光151−1の中心はXYスキャナ107のミラーの回転中心と一致するように調整されている。
レンズ124−1、124−2は網膜141を走査するための光学系であり、測定光151−1を角膜142の付近を支点として、網膜141をスキャンする役割がある。
ここでは、レンズ124−1、124−2の焦点距離はそれぞれ50mm、40mmである。
また、114−3は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、付随するレンズ124−2の位置を、調整・制御することができる。レンズ124−2の位置を制御・信号処理部130によって調整することで、被検眼140の網膜141に測定光151−1を集光し、観察することが可能になる。
また、被検眼140が屈折異常を有している場合にも対応できる。
測定光151−1は被検眼140に入射すると、網膜141からの反射や散乱によって戻り光153−1となり、測定光151−1の光路を逆に進む。
戻り光153−1はダイクロイックミラー116を透過し、ファイバカプラ111−1を介してラインカメラ120−1に導かれる。
光源101−2は101−1と同様にSLDであり、波長は1050nm、バンド幅50nmである。
ここで、光源101−2は光源101−1の測定光151−1とは互いに干渉しない波長であればよい。
測定光151−2は光束調整部110−2を通った後、ミラー105−3で反射しダイクロイックミラー116に導かれる。
ダイクロイックミラー116では光源101−2からの測定光151−2は反射され、測定光151−1と合波されて同一の光軸上を進む。
網膜141において反射あるいは散乱された光は戻り光153−2となって測定光151−2と逆の光路を進む。
戻り光153−2はダイクロイックミラー116で反射し、戻り光153−1と分割される。
その他、測定光151−2の光路については測定光151−1の光路と略同一であるため説明を省略する。
OCT装置100は2つのマイケルソン干渉計が合わさった形になっており、その干渉信号の強度から構成される断層像(OCT像)を取得することができる。ここで、光源101−1から出射される測定光151−1によって測定される干渉計の測定系について説明する。
網膜141で反射や散乱された光である戻り光153−1はファイバカプラ111−1において参照光150−1と合波される。
そして、合波された光160−1は透過型グレーティング106−1によって波長ごとに分光され、レンズ104−2で集光され、ラインカメラ120−1にて光の強度が各位置(波長)ごとに電圧に変換される。
具体的には、ラインカメラ120−1上には波長軸上のスペクトル領域の干渉縞が観察されることになる。
得られた電気信号群は制御・信号処理部130にてデータ処理を行い、断層像を形成する。
ここでは、ラインカメラは1024画素を有し、合波された光160−1の波長ごと(1024分割)の強度を得ることができる。
光源101−2から出射される測定光151−2によって測定される干渉計の測定系については、光源101−1から出射される測定光151−1によって測定される干渉計の測定系と略同一であるため省略する。
図2は、焦点位置の調整方法を説明する図であり、被検眼に測定光を入射する光学系部分が示されており、図1と同じ構成には同一の符号が記されている。
一般に眼底の網膜を観察する場合には、安全上の問題から測定光を網膜上に走査して行う。本実施例においても実際には測定光が網膜上を走査しながら測定が行われる。
図3において、201は短波長光源に対して高反射となる層(網膜色素上皮層:RPE層)、210は測定光151−1の焦点位置、211は測定光151−2の焦点位置を示している。
また、コンピュータなどを用いて、以下の工程を自動的に行うように構成してもよい。
まず、第一の工程において、レンズ124−2および光束調整部110−1、110−2を用いて網膜上の同一層に合焦させる。
このとき、合焦させる層は網膜を構成する層から選ばれれば特に限定するものではないが、焦点を合わせやすい高反射層を基準層として合焦させることが好ましい。
例えば、網膜における高反射層としては、網膜色素上皮層220、視神経内節外節境界部221、神経線維層222などが挙げられる(図4)。
ここでは、光源101−1の波長に対して高反射となる層である網膜色素上皮層(RPE層)に合焦させる(図3(a))。
調整は124−2、光束調整部110−1、110−2を制御・信号処理部130によって制御して行う(図2)。
具体的には、網膜141からの戻り光153−1および153−2をラインカメラ120−1、120−2において検出し、その強度が略最大になるようにする。
焦点位置の移動は制御・信号処理部130の制御に基づき、光束調整部においてビーム収束度を変化させることで行われる。
光束調整部において光束収束度を調整し、XYスキャナ107に対して平行光線よりもやや収束した光を入射させると焦点位置は第一の工程であわせた焦点位置に対して、XYZ座標のZ方向(深さ方向)である角膜方向へ移動させる。
逆に、XYスキャナ107に対して平行光線よりもやや発散した光を入射させることで、焦点位置は角膜から遠ざかる方向へ移動させる。
これにより、RPE層を透過しにくい短波長側の光源101−1の測定光151−1は焦点位置を角膜方向へ、またRPE層を透過する長波長側の光源101−2の測定光151−2は焦点位置を角膜から遠ざかる方向へ移動させる。
焦点位置の移動量は、単一の測定光の焦点深度からRPE層が外れてしまわない範囲で行う。
またここで、それぞれの焦点深度が連続、あるいは部分的に重複するような範囲で調整する。
一般的に、焦点深度はつぎの(数式1)として表現することができる。
続いて、測定光151−1と151−2の焦点でのスポットサイズが同じサイズになるように、光束調整部110−2で測定光151−2を調整する。
波長の長い光はそれよりも短い波長の光に対して焦点深度が深く、スポットサイズが大きくなるが、ここでは光軸と垂直の方向に対する分解能を同じにするために、測定光151−2のビーム径を変化させる。
ここでは、測定光151−2のビーム径を1.01mmに調整する(図3(c))。
次に、第三の工程において、電動ステージ114−1、114−2を用いてミラー105−1、105−2を調整する。
これにより、参照光150−1、150−2の光路長を調整し、参照光150−1と戻り光153−1、参照光150−2と戻り光153−2とをそれぞれ干渉させる。
OCT装置100は、XYスキャナ107を制御し、ラインカメラ120−1、120−2で干渉縞を取得することで、網膜141の断層像を取得することができる(図1)。
ここでは、図5を用いて網膜141の断層像(光軸に平行な面)の取得方法について説明する。
図5(a)は被検眼140の模式図であり、OCT装置100によって観察されている様子を示している。
図5(a)に示すように、測定光151−1、151−2は角膜142を通して、網膜141に入射すると様々な位置における反射や散乱により戻り光153−1、153−2となる。
そして、それぞれの位置での時間遅延を伴って、ラインカメラ120−1、120−2に到達する。
ここでは、光源101−1、101−2のバンド幅が広く、空間コヒーレンス長が短いために、参照光路の光路長と測定光路の光路長とが略等しい場合に、ラインカメラ120−1、120−2にて、それぞれ干渉縞が検出できる。
上記したように、ラインカメラ120−1、120−2で取得されるのは波長軸上のスペクトル領域の干渉縞となる。
次に、波長軸上の情報である前記干渉縞を、ラインカメラ120−1、120−2と透過型グレーティング106−1、106−2との特性を考慮して、光周波数軸の干渉縞に変換する。
さらに、変換された光周波数軸の干渉縞を逆フーリエ変換することで、深さ方向の情報が得られる。
結果として、XZ面での戻り光153−1、153−2それぞれの強度の2次元分布が得られる。それらを制御・信号処理手段130において光束調整部110−1、110−2および124−2の位置情報を元に重ね合わせることで断層像300となる(図5(c))。
本来は、断層像300は上記説明したように、前記戻り光153の強度をアレイ状に並べたものであり、例えば前記強度をグレースケールに当てはめて、表示されるものである。
ここでは、得られた断層像の境界のみ強調して表示している。
図6に、上記説明した工程をフローチャートとして示す。
なお、本実施例では測定光151−1、151−2の焦点位置を同一光軸上で変化させる例について記載したが、同一光軸上でない場合であっても位置情報から干渉画像の合成が可能な場合は本方法が適応可能である。
実施例2においては、実施例1で示した構成のうち、参照光の光路長調整のためのミラーを共有する構成とした場合のOCT装置の光学系の構成について、図7を用いて説明する。
図7には図1に示した実施例1の構成と同一または対応する構成には同一の符号が付されているから、重複する構成についての説明は省略する。
図7において、400はOCT装置であり、105−4はミラー、114−4は電動ステージである。
本実施例においては、OCT装置400は図1のミラー105−1と105−2、電動ステージ114−1と114−2を単一のミラーと単一の電動ステージで構成することによって、装置の簡略化が図られている。
単一のミラーと単一の電動ステージによって構成していることを除けば、実施例1と基本的構成において差異のない構成を備えている。
本実施例のOCT装置400は、図7に示されるように、全体として2台のマイケルソン干渉計によって構成され、各々の測定光はダイクロイックミラー116によって合波され同一の光軸上を通って被検眼に入射されるようになっている。図7において測定光151−1は観察対象である被検眼140に入射後、網膜141で反射や散乱により戻り光153−1となって戻され、ファイバカプラ111−1によって参照光150−1と合波される。
参照光150−1と戻り光153−1は合波された後、透過型グレーティング106−1によって分光され、ラインカメラ120−1によって検出される。
測定光151−2についても略同一であるため、説明を省略する。
参照光150−1はファイバカプラ111−1によって分割された後、光ファイバ102−2を通してレンズ117−1に導かれ、平行光になるように調整される。
次に、参照光150−1はレンズ117−2にて集光され、ミラー105−4によって反射されることで再びファイバカプラ111−1に導かれる。
ここで150−1が通過した分散補償用ガラス112−1は被検眼140に測定光151−1が往復したときの分散を、参照光150−1に対して補償するものである。
分散補償用ガラス112−1の厚さL1は被検眼140、光束調整部110−1及びレンズ124−1、2の構成と波長の関係によって決定される。また、光路長L3はファイバカプラ111−1から被検眼までの光学距離とファイバカプラ111−1からミラー105−4までの光学距離を同一にするために調整される光路長である。
次に、参照光150−2はレンズ118−2にて集光され、ミラー105−4によって反射されることで再びファイバカプラ111−2に導かれる。
ここで、参照光150−2が通過した分散補償用ガラス112−2は被検眼140に測定光151−2が往復したときの分散を、参照光150−2に対して補償するものである。
分散補償用ガラス112−2の厚さL2は被検眼140、光束調整部110−2及びレンズ124−1、2の構成と波長の関係によって決定される。
また、光路長L4はファイバカプラ111−2から被検眼までの光学距離とファイバカプラ111−2からミラー105−4までの光学距離を同一にするために調整される光路長である。
さらに、ミラー105−4は電動ステージ114−4上に固定されており、電動ステージ114−4を矢印で図示する方向に移動させることで参照光150−1と参照光150−2の光路長を調整・制御することができる。
また、電動ステージ114−4は制御・信号処理手段130によって高速に制御できる。
これにより、参照光150−1および150−2は単一のミラー105−4及び単一の電動ステージ114−4によってその光路長を同時に調整することが可能となる。
その他の光学系の構成、および測定方法に関しては実施例1と同一であるため、説明は省略する。
以上に説明したように実施例2によれば、参照光路の調整を共通化することにより実施例1の効果に加えて装置構成を簡単にすることができ、装置を小型化することができる。
101:光源
102、103:光ファイバ
104、108、117、118、122、124:レンズ
105:ミラー
106:透過型グレーティング
107:XYスキャナ
110:光束調整部
111:ファイバカプラ
112:分散補償用ガラス
114:電動ステージ
116:ダイクロイックミラー
120:ラインカメラ
130:制御・信号処理部
140:被検眼
141:網膜
142:角膜
150:参照光
151:測定光
153:戻り光
160:参照光と戻り光を合波した光
170:電圧に変換された光強度
Claims (13)
- 光源からの光を被検査物に照射し、前記被検査物からの反射または散乱した戻り光を用いて干渉光を合成し、前記干渉光を用いて前記被検査物の断層像を撮像する光干渉断層撮像装置であって、
前記被検査物に光を照射するため、互いに中心波長の異なる第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を出射する低コヒーレント光出射手段と、
前記第1の低コヒーレント光を、第1の参照光と第1の測定光に分割する第1の分割手段と、
前記第2の低コヒーレント光を、第2の参照光と第2の測定光に分割する第2の分割手段と、
前記第1の測定光の焦点位置を調整するための第1の調整手段と、
前記第2の測定光の焦点位置を調整するための第2の調整手段と、
前記第1の調整手段で調整された前記第1の測定光と前記第2の調整手段で調整された前記第2の測定光とを、被検眼に照射するための照射手段と、
前記第1の測定光が被検査物において反射または散乱した第1の戻り光と前記第1の参照光によって生成される干渉光を検出する第1の検出手段と、
前記第2の測定光が前記被検査物において反射または散乱した第2の戻り光と前記第2の参照光とによって生成される干渉光を検出するための第2の検出手段と、を有し、
前記第1の調整手段により調整される前記第1の測定光の焦点位置と、前記第2の調整手段により調整される前記第2の測定光の焦点位置とが、深さ方向で異なる位置に調整可能に構成されていることを特徴とする光干渉断層撮像装置。 - 前記第1の調整手段および前記第2の調整手段は、前記第1の測定光および前記第2の測定光の光束径を、それぞれ調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層撮像装置。
- 前記照射手段は、前記調整された前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、同時に調整する第3の調整手段を更に有し、
前記第1の調整手段、前記第2の調整手段、及び前記第3の調整手段により、前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光干渉断層撮像装置。 - 前記低コヒーレント光出射手段が、前記第1の低コヒーレント光を生成する第1の光源と、前記第2の低コヒーレント光を生成する第2の光源と、で構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光干渉断層撮像装置。
- 前記低コヒーレント光出射手段が、広帯域の光を生成する光源と、単一の波長を選択可能な複数のフィルタとから構成され、
前記複数のフィルタにより前記第1の低コヒーレント光と前記第2の低コヒーレント光が生成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光干渉断層撮像装置。 - 前記第1の参照光の光路長調整手段と前記第2の参照光の光路長調整手段が共有されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光干渉断層撮像装置。
- 中心波長の異なる第1の低コヒーレント光と第2の低コヒーレント光を、それぞれ第1の参照光と第1の測定光および第2の参照光と第2の測定光に分割して照射手段によって被検査物に照射し、
前記被検査物からの反射または散乱した戻り光を用いて干渉光を合成し、前記干渉光を用いて前記被検査物の断層像を撮像する断層画像の撮像方法であって、
前記照射手段により照射された前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、前記被検眼の基準となる基準層に合わせる第1の工程と、
前記第1の工程により前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を前記基準層にあわせた後に、前記第1の測定光と前記第2の測定光の焦点位置を、それぞれ異なる深さに合わせる第2の工程と、
前記第2の工程によりそれぞれ異なる深さ位置に合わせた後に、前記被検眼の断層画像を取得する第3の工程と、
を有することを特徴とする断層画像の撮像方法。 - 前記基準層として、網膜色素上皮層、神経線維層、視神経内節外節境界部のいずれかが含まれることを特徴とする、請求項7に記載の断層画像の撮像方法。
- 前記第1の測定光の焦点深度と前記第2の測定光の焦点深度とが光軸方向に連続または部分的に重複していることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の断層画像の撮像方法。
- 前記第1の測定光の焦点位置と前記第2の測定光の焦点位置との距離が、20μmから1000μmであることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の断層画像の撮像方法。
- 前記第2の工程において、短波長の測定光の焦点位置を前記基準層よりも浅い位置に合わせ、長波長の測定光の焦点位置を前記基準層よりも深い位置に合わせることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の断層画像の撮像方法。
- 請求項7から11のいずれか1項に記載の断層画像の撮像方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
- 請求項7から11のいずれか1項に記載の断層画像の撮像方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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