JP2010267790A - 永久磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】永久磁石の磁気特性である磁束密度もしくは保磁力の少なくともいずれか一方が向上され、かつ、それらのいずれの特性も低下されることのない、永久磁石を製造する方法を提供する。
【解決手段】主相Sと粒界相Rからなる金属組織を呈する永久磁石Eを用意し、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、永久磁石Eの活性面Kを露出させる第1の工程、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で活性面Kに金属膜Cをコーティングし、金属膜Cを形成する第1の金属成分を粒界相Rに拡散させ、加熱処理して、粒界相Rを形成していた第2の金属成分と、第1の金属成分と、からなる金属合金の粒界相を形成する第2の工程、からなる、永久磁石の製造方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、永久磁石の製造方法に関するものである。
ブラシレスDCモータをはじめとする各種モータの中で、ロータコア内部に複数の永久磁石が埋め込まれてなる永久磁石埋込型のロータを具備するモータ(以下、IPMモータという)はよく知られるところである。例えば、ハイブリット車両の駆動用モータには、上記するIPMモータが使用されている。
ところで、ステータティースには巻線が集中巻き若しくは分布巻きされることによってコイルが形成されており、コイルに電流を通電することによって磁束を生じさせ、永久磁石による磁束との間でマグネットトルクおよびリラクタンストルクを発生させている。この分布巻きコイルの場合には、集中巻きコイルの場合に比して磁極数も多くなり、したがって、ロータ回転時にティース側からロータの永久磁石に入ってくる磁束(または磁束の変化)は相対的に連続性がある。そのため、ロータ回転時の磁束密度の変化は相対的に少ない。それに対し、集中巻きコイルの場合には、磁束密度の変化が相対的に大きくなることから永久磁石には渦電流が生じ易く、渦電流の発生によって永久磁石は発熱し、不可逆な熱減磁が招来されることで永久磁石自体の磁気特性が低下することとなる。
近時のハイブリッド自動車や電気自動車で使用される駆動用モータに関して言えば、モータの出力性能アップが追求されている中でたとえばその回転数や極数の増加が図られており、この回転数の増加等によって磁石に作用する磁界の変動率が大きくなり、その結果として上記渦電流が発生し易く、発熱によって齎される磁石の熱減磁によってモータ性能が逆に低下し、モータの耐久性の低下に繋がるといった課題が生じている。
上記する渦電流の発生およびそれに起因する熱減磁の招来を防止するために、IPMモータにおいては、該永久磁石を複数の分割ピースから形成しておき、この分割ピースを束ねてロータスロットに挿入設置する方策が講じられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2005−198365号公報 特開2004−96868号公報 特開2006−238565号公報
永久磁石に生じ得る渦電流の発生を効果的に抑止するために、たとえば上記特許文献1〜3に開示のごとく、永久磁石を複数の分割ピースから製造するのは有効な方法である。なお、特許文献1に記載の製造方法では、分割された希土類永久磁石が酸化し易い希土類磁石の際に、その分割面(切断面)に防錆処理を施すことができるとしている。
ところで、これら各特許文献に開示の永久磁石を構成する分割ピースはいずれも、各分割ピースを別体で製造するか、永久磁石が挿入されるべきロータスロットの内空形状および内空寸法に成形された永久磁石を複数の分割片に機械加工(切断)する方法でおこなわれるものである。製造効率や製造コストの観点からすれば、後者の加工方法でおこなわれるのが一般的といえる。
上記する機械加工では、たとえば超鋼円盤の外周側にダイヤモンドチップを付着させた高価な切断刃具が必要であるが、この切断刃具は消耗品であることから定期的な交換が必須であること、分割数の増大に伴って刃具交換頻度が増すこと、などにより、メンテナンス手間と製造コストの高騰が大きな問題となっている。
さらに、上記機械加工によって永久磁石を切断する方法は次のような問題を抱えている。すなわち、永久磁石であるネオジム磁石等の希土類磁石やフェライト磁石は、該磁石の組織を拡大した図5に示すように、磁化に寄与する主相Sと、保磁力に寄与する粒界相Rからなる金属組織を有している。この永久磁石Eを機械加工によって分割すると、同図のL1ラインで示す切断ラインに沿って分割片が形成される。図からも明らかなように、このL1ラインは主相Sを切断分割しながら形成されるものであるために、切断された主相Sは切断前に比して小サイズとなり、このことは切断前に比して残留磁束密度:Brを低下させる原因となる。なお、一般には、図示するように、粒界相Rを形成する金属成分が酸化した酸化物皮膜Oが永久磁石Eを被覆している。
さらに、粒界相Rは、これが被覆する主相Sに対して保磁力を発現するものであるが、切断面に接する主相Sには粒界相Rの被覆が破られているために外部磁場に対して容易に磁化反転を起こし易くなり、この磁化反転相が起点となって磁石全体の保磁力を低下させることになる。
そこで、上記する特許文献1のごとく、その切断面に防錆処理を施す方策も考えられるが、切断面に単に防錆処理を施すのみでは、仮に磁気特性の悪化を防ぐことができたとしても、磁気特性をより向上させることまでは期待できない。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、永久磁石の磁気特性である磁束密度もしくは保磁力の少なくともいずれか一方が向上され、かつ、それらのいずれの特性も低下されることのない、永久磁石を製造する方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による永久磁石の製造方法は主相と粒界相からなる金属組織を呈する永久磁石を用意し、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、該永久磁石の活性面を露出させる第1の工程、前記無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、前記活性面に金属膜をコーティングし、該金属膜を形成する第1の金属成分を前記粒界相に拡散させ、加熱処理して、該粒界相を形成していた第2の金属成分と、該第1の金属成分と、からなる金属合金の粒界相を形成する第2の工程、からなるものである。
ここで、本発明の製造方法が対象としている永久磁石は、希土類磁石やフェライト磁石、アルニコ磁石等を包含するものであり、磁化に寄与する主相と保磁力に寄与する粒界相からなる金属組織を有していれば特に限定されるものではない。また、本発明でいう「永久磁石」とは、着磁後の前記希土類磁石等のほかに、着磁前の焼結体やただの圧粉体をも含む意味である。希土類磁石としては、ネオジムに鉄とボロンを加えた3成分系のネオジム磁石(Nd−Fe−B系焼結永久磁石)、サマリウムとコバルトとの2成分系の合金からなるサマリウムコバルト磁石、サマリウム鉄窒素磁石、プラセオジム磁石などを挙げることができる。中でも、希土類磁石はフェライト磁石やアルニコ磁石に比して最大エネルギー積(BH)maxが高いことから、高出力が要求されるハイブリッド車等の駆動用モータへの適用に好適である。
本発明の永久磁石の製造方法は、その第1の工程で、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、用意された永久磁石の任意表面に活性面を露出させ、次いで、その第2の工程で、この活性面に金属膜をコーティングすることにより、該金属膜を形成する第1の金属成分を粒界相に効果的に拡散させるものである。ここで、活性面が酸化して金属酸化物が形成されると、たとえばナノオーダーレベルの厚みの粒界相がこの金属酸化物で閉塞され、第1の金属成分が粒界相へ拡散するのが阻害される。そこで、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で活性面(活性界面)を形成することにより、該活性面の酸化を防止でき、第1の金属成分が粒界相へ拡散する際のパスを可及的に多くすることができ、第1の金属成分の拡散駆動力を向上させることができる。
そして、第1の金属成分が十分に拡散浸透したら、これを加熱処理することにより、粒界相を形成している第2の金属成分と第1の金属成分との合金からなる粒界相を形成することができる。
ここで、永久磁石の活性面を露出させる方法として、たとえば、用意された永久磁石を割断して活性面を露出させる方法、用意された永久磁石表面の酸化物層をプラズマ放電等にて除去して活性面を露出させる方法、の2つの方法を挙げることができる。
「割断」とは、従来の刃具による機械切断ではなく、永久磁石の所定部位を押圧することにより、相対的に低強度の粒界相に沿って磁石が分割されること(いわゆる、粒界破断)を示しており、永久磁石表面のように酸化層のない、永久磁石内部の活性面を効率的に露出させることができる方法である。この割断により、上記する機械切断が有する課題、すなわち、残留磁束密度の低下と磁化反転による保磁力の低下、さらには刃具交換によるメンテナンス手間と製造コストの高騰のすべてを解消することができる。
また、永久磁石表面の酸化物層、たとえば3成分系のネオジム磁石の場合には、その表面に酸化ネオジウムなどの層が形成されているが、この酸化物層をプラズマ放電等をおこなって除去することにより、永久磁石を痛めることなく、その表面の活性面を露出させることができる。
また、上記する第1の工程では、用意された永久磁石を収容する容器内を減圧雰囲気、もしくは真空雰囲気、もしくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、もしくはこれらを組み合わせた雰囲気とすることで、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気を形成することができる。たとえば、この容器には、適宜の割断用のマニピュレータ(ロボットハンドなど)などが備えられていてもよいし、無酸素雰囲気や低酸素雰囲気を保持できる開口、たとえば、作業員の手が入る開口の内枠にゴム等のシーリング材が形成された開口などを備えておいてもよい。
上記する第2の工程における活性面への金属膜のコーティング方法として、第1の金属成分を蒸着(真空蒸着)もしくはスパッタリング、イオンブレーティング、CVD(化学気相析出)などの方法を挙げることができる。
希土類磁石の中でも、製造頻度の高いNd−Fe−B系焼結永久磁石を取り上げると、粒界相を形成していた第2の金属成分はNdであり(もしくはNdがリッチであり)、これに、金属膜を形成する第1の金属成分としてNd,Al,Cu,Ni,Feのいずれか一種を使用することで、上記第2の工程では、第2の金属成分であるNdと、第1の金属成分であるNd,Al,Cu,Ni,Feのいずれか一種と、からなる金属合金の粒界相を形成することができる。なお、この実施の形態において、第1の金属成分としてNdを使用する場合には、第2の金属成分もNdであることから、第2の工程にて形成される「金属合金」に、このNd単体も含まれるものとする。
また、たとえば低酸素雰囲気下で活性面が露出している場合に、その酸化を完全に防止するべく、活性面を露出させた後に、第2の工程において速やかに第1の金属成分であるNdをコーティングし、次いで、別途の第1の金属成分であるAl,Cu,Ni,Feのいずれか一種をコーティングして、粒界相内にこれらの金属成分を拡散浸透させる方法が好ましい。
本発明者等の検証によれば、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で永久磁石の活性面を露出させ、これにNd、Al等の金属を蒸着等させてコーティングし、粒界相内に蒸着金属を拡散させ、加熱処理して粒界相を形成する金属と拡散金属からなる合金(拡散金属がNd,粒界相を形成する金属がNdの場合は、Nd単体)を主相周囲に形成することにより、何等の加工も施さない永久磁石(本発明の第1の工程における、用意された永久磁石)に対して、磁束密度(磁化)を低下させることなく、保磁力を向上させることができ、もしくは、保磁力を低下させることなく、磁束密度(磁化)を向上させることができることが実証されている。
この検証において、保磁力を向上できる場合、磁束密度を向上できる場合は、蒸着される金属の種類で変化するものである。なお、主相の大きさやその成分を変化させることなく、焼結金属成分からなる粒界相を、粒界相を形成する金属と蒸着拡散された金属との合金にて置換することからすれば、磁束密度に変化はなく、保磁力のみが向上するようにも考えられるが、本発明者等の検証結果では、蒸着金属の種類により、保磁力が向上する場合、磁束密度が向上する場合の双方の結果が得られている。これは以下の理由によるものである。すなわち、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気で金属元素を拡散させることによって酸化物が完全に、もしくは殆ど存在しなくなること、および、Nd等との合金化によって共晶点が低下することで、粒界Ndリッチ相が効率よく拡散される。これにより、ナノスケールの連続粒界相が形成され、磁化反転の発生を遅らせることが可能となり、保磁力を向上させることができる。一方、従来の製造方法では避けられなかった永久磁石表層に生じ得る劣化層が形成されなくなり、これに起因して残留磁束密度の低下が生じなくなるために、従来の製造方法による永久磁石に比して高い残留磁束密度を有する永久磁石が得られるというものである。
上記する本発明による永久磁石の製造方法によって製造された永久磁石やこれを備えた
ロータ、さらにはこのロータを備えたIPMモータは、磁束密度、もしくは保磁力のいずれか一方の性能に優れたものであることから、近時その量産が盛んになっており、かつ高い出力性能が期待されるハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータに好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の永久磁石の製造方法によれば、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で永久磁石の活性面を露出させ、この活性面に金属蒸着等をおこない、粒界相内に蒸着金属を拡散させ、加熱処理して粒界相を形成する金属と拡散金属からなる合金を主相周囲に形成することにより、磁束密度もしくは保磁力のいずれか一方は低下されず、他方が向上した永久磁石を製造することができる。
本発明の永久磁石の製造方法の一実施の形態の第1の工程を説明した図であって、容器内を視認できるように、該容器の前面を切断した模式図である。 第1の工程で活性面が露出された永久磁石を、その組織を拡大して示した模式図である。 本発明の永久磁石の製造方法の一実施の形態の第2の工程を説明した図である。 第2の工程で活性面に金属膜がコーティングされ、該金属膜を形成する金属が粒界相を介して内部に拡散している状況を説明した模式図である。 従来の永久磁石の製造方法であって、機械切断された永久磁石をその組織を拡大して示した模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示する製造装置は、永久磁石割断用のロボットハンドを具備するものであり、かつ、活性面に金属膜を形成するためのスパッタリング装置を具備するものであるが、これ以外の形態、たとえば、ロボットハンド以外のマニピュレータを具備する形態、シーリング材を内枠に具備し、このシーリング材で気密を保持しながら容器内に挿入された人手で永久磁石を割断するような形態、さらには、イオンブレーティング装置などを具備する形態などであってもよいことは勿論のことである。
図1は、本発明の永久磁石の製造方法の一実施の形態の第1の工程を説明した図であり、この工程にて使用される容器内を視認できるように、容器の前面を切断した模式図である。
図示する製造装置10は、不図示の前面扉を介して永久磁石Eを内部に収容する(X1方向)とともに、製造後の永久磁石を取り出す(X2方向)ための取出し扉13を側方に具備する真空容器11と、不図示の吸引機構に連通して容器内を真空引き(Y1方向)することで減圧雰囲気もしくは真空雰囲気とする真空引き用ノズル15、永久磁石Eを所望の姿勢にて保持する載置台12、永久磁石Eを少なくとも2箇所で把持して割断するためのロボットハンド14、スパッタリング装置16と、直流電源をスパッタリング装置16に提供するための回路17と、から大略構成されている。
ここで、真空容器11内に収容される永久磁石Eは、3成分系のネオジム磁石(Nd−Fe−B系焼結永久磁石)、サマリウムとコバルトとの2成分系の合金からなるサマリウムコバルト磁石(Sm−Co系焼結永久磁石)、サマリウム鉄窒素磁石、プラセオジム磁石などのいずれか一種であるが、以後の説明では、Nd−Fe−B系焼結永久磁石を取り上げて説明する。
永久磁石Eを真空容器11内に収容し、載置台12上で位置決め固定した後に、まず、真空引きして真空容器11内を真空雰囲気とすることにより、容器内の酸素が完全に、もしくは略完全に除去された無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気とする。
この無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下において、2本のロボットハンド14,14で永久磁石Eの2箇所を把持し、所望の曲げを付与することで、永久磁石Eを割断する(第1の工程)。なお、永久磁石Eの所望部位に予め適宜の大きさおよび寸法のノッチを設けておき、割断ラインを所望に調整できるようにしてもよい。
第1の工程で割断された永久磁石を、その金属組織を拡大して模式的に図2に示している。相対的に軟質な粒界相Rに沿って割断される永久磁石E1の割断面は、主相Sがその途中で切断されることなく、したがって、微視的に見た場合に、図示のごとく主相Sに沿って活性面Kが形成され、露出した状態を呈している。なお、真空容器11内に収容された永久磁石Eは、粒界相Rが酸化された金属酸化層Oをその周囲に有するものであり、したがって、活性面K以外の表面は不活性な面となっている。
第1の工程で、真空雰囲気下で永久磁石Eを割断し、活性面Kを露出させたら、次に、その活性面Kに金属膜を形成する、第2の工程に移行する。
図3は、図1に続き、本発明の永久磁石の製造方法の第2の工程を説明した模式図である。
製造装置10を構成する真空容器11の天井裏面には、スパッタリング装置16が装着されている。そして、このスパッタリング装置16の内側には、ターゲット物質である所望の金属、たとえば、Nd,Al,Cu,Ni,Feのいずれか一種が装備されている。
直流電源をスパッタリング装置16に提供する回路17は、その一端が通電可能な載置台12に繋がれ、その他端がスパッタリング装置16に繋がれている。そして、必要に応じて、イオン化したアルゴンガスをターゲットに提供できるようになっている。真空雰囲気下で、回路17をON制御し、直流高電圧を印加すると、たとえばイオン化したアルゴンガスがターゲットに衝突し、この衝撃で弾き飛ばされたターゲットTを永久磁石E1の活性面Kに提供し、金属膜を成膜することができる。
ここで、金属膜を形成する方法としては、大きく2つの方法がある。その一つは、露出された活性面Kに、Nd,Al,Cu,Ni,Feのいずれか一種をスパッタリングする方法であり、他の一つは、まず、Ndをスパッタリングして活性面Kを粒界相Rと同素材からなる金属膜で包囲し、酸化を防止した後に、Al,Cu,Ni,Feのいずれか一種をスパッタリングするものである。
第2の工程で金属膜が活性面上に成膜された永久磁石E1を、図2と同様にその金属組織を拡大して模式的に図4に示している。
ターゲットTが活性面Kに提供され、金属膜Cが形成されると、この金属膜Cを構成する金属は、粒界相Rを介して永久磁石E1内に拡散していく(Z方向)。
本製造方法では、活性面Kが酸化されておらず、しかも、主相Sが露出し、隣接する主相S,S間を満たす粒界相Rも露出しているために、金属膜Cを構成する金属を粒界相R内に拡散させる拡散駆動力が極めて高く、金属の拡散が効率的にその内部にまで及ぶことが本発明者等によって特定されている。
金属膜Cが形成され、金属の内部拡散が十分におこなわれることを待って、今度は不図示の加熱装置にて永久磁石E1を加熱処理することにより、当初の粒界相Rを構成していた金属(第1の金属成分であり、Nd−Fe−B系焼結永久磁石の場合にはNd)と、拡散された金属(第2の金属成分)と、からなる合金が形成され、この合金からなる粒界相を具備する永久磁石が製造される。
なお、永久磁石の活性面を露出させる方法は、永久磁石を割断して活性面Kを露出させる方法以外にも、表面に形成されている金属酸化層をプラズマ放電等にて除去し、活性面を露出させる方法などであってもよい。
[従来の製造方法と本発明の製造方法で製造された永久磁石の、磁束密度(磁化)と保磁力の比較をおこなった実験とその結果]
本発明者等は、永久磁石に予め割断用のノッチを設けておき、割断等しない無垢の永久磁石(比較例1)、空気中でスリット破断する方法で形成された永久磁石(比較例2)、空気中で割断する方法で形成された永久磁石(比較例3)と、本発明の製造方法により製造された永久磁石(実施例)の磁束密度をBHトレーサにて測定するとともに、この測定結果から保磁力を割り出した。
ここで、本発明の製造方法の適用に当たり、容器内は100ppm程度の低酸素雰囲気とし(比較例2,3が製造される空気内の酸素濃度は、200000ppm程度である)、スパッタリングで使用されるターゲット物質を、Ndのみをスパッタリングしたもの(実施例1)、Ndをスパッタリングした後にAlをスパッタリングしたもの(実施例2)、Ndをスパッタリングした後にCuをスパッタリングしたもの(実施例3)、Ndをスパッタリングした後にNiをスパッタリングしたもの(実施例4)、Ndをスパッタリングした後にFeをスパッタリングしたもの(実施例5)の5つのテストピースを製造した。その結果を以下の表1に示している。
Figure 2010267790
表1では、比較例1の各計測値および特定値を基準として、他の比較例および実施例の値を正規化して示している。表1より、割断等されない無垢の永久磁石(比較例1)に対して、酸素濃度の高い空気内で割断されただけの比較例2,3は、磁束密度の低下が顕著であった。
一方、実施例1〜5では、実施例1,2において、磁束密度の向上は認められないものの(当然に低下するものではない)、保磁力がそれぞれ10%、20%向上することが実証されている。また、実施例3〜5においては、保磁力の向上は認められないものの、磁束密度がそれぞれ5%、10%、5%向上することが実証されている。
この結果を踏まえ、本製造方法にて永久磁石を製造することにより、スパッタリングするターゲットの金属種によって、永久磁石の保磁力、もしくは磁束密度のいずれか一方を向上させることができることが実証された。
10…製造装置、11…真空容器、12…載置台、13…取出し扉、14…ロボットハンド、15…真空引き用ノズル、16…スパッタリング装置、17…回路、E…永久磁石、E1…割断された(活性面を有する)永久磁石、S…主相、R…粒界相、K…活性面、C…金属膜、O…金属酸化層、T…ターゲット

Claims (7)

  1. 主相と粒界相からなる金属組織を呈する永久磁石を用意し、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、該永久磁石の活性面を露出させる第1の工程、
    前記無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気下で、前記活性面に金属膜をコーティングし、該金属膜を形成する第1の金属成分を前記粒界相に拡散させ、加熱処理して、該粒界相を形成していた第2の金属成分と、該第1の金属成分と、からなる金属合金の粒界相を形成する第2の工程、からなる、永久磁石の製造方法。
  2. 前記第1の工程では、用意された永久磁石を割断して前記活性面を露出させる、請求項1に記載の永久磁石の製造方法。
  3. 前記第1の工程では、用意された永久磁石表面の酸化物層を除去することにより、前記活性面を露出させる、請求項1に記載の永久磁石の製造方法。
  4. 前記第1の工程では、用意された永久磁石を収容する容器内を減圧雰囲気、もしくは真空雰囲気、もしくは不活性ガス雰囲気、もしくはこれらを組み合わせた雰囲気とすることで、無酸素雰囲気もしくは低酸素雰囲気が形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  5. 前記活性面への金属膜のコーティングは、第1の金属成分を蒸着もしくはスパッタリングにておこなわれる、請求項1〜4のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  6. 用意された前記永久磁石が、Nd−Fe−B系焼結永久磁石であり、粒界相を形成していた第2の金属成分がNdであり、金属膜を形成する第1の金属成分がNd、Al、Cu,Ni,Feのいずれか一種であり、
    前記第2の工程では、前記第2の金属成分と、前記第1の金属成分と、からなる金属合金の粒界相を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  7. 用意された前記永久磁石が、Nd−Fe−B系焼結永久磁石であり、粒界相を形成していた第2の金属成分がNdであり、
    前記第2の工程では、前記活性面に第1の金属成分であるNdをコーティングし、次いで、別途の第1の金属成分であるAl、Cu,Ni,Feのいずれか一種をコーティングして、前記第2の金属成分と、前記第1の金属成分と、からなる金属合金の粒界相を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
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