JP2010261891A - 床排水ファンネル - Google Patents

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Abstract

【課題】逆流防止に優れ、しかも構造が単純で作動安定性に優れる床排水ファンネルの提供。
【解決手段】床排水ファンネル11は、床2に埋設のファンネルケーシング12と連絡管13を備え、ファンネルケーシングの流入開口部17から流入する床排水Wを連絡管により排水処理系の排水配管4に流出させるようにされており、さらに球状のフロート14がファンネルケーシング内に配され、また床排水の流入路となる流入孔24が設けられた弾性的な逆流防止シール体15が流入開口部に組み付けられ、そして連絡管を介して排水配管からファンネルケーシングに逆流した排水によりフロートが浮上するのに応じて、逆流防止シール体がフロートに弾性的に当接することで流入孔の逆流水に対する封止をなすようにされている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、各種プラントの建屋内で床に流出した排水を集水して排水処理系の排水配管に流下させるために建屋内の床に設置される床排水ファンネルに係り、特に建屋内における複数のエリアについて共通の排水処理系で床排水を処理するようになっている場合に好適な床排水ファンネルに関する。
原子力発電所などのプラントでは、建屋内の床の洗浄や機器の分解点検、あるいは配管の損傷などに伴って床に流出する排水(以下、適宜に床排水と呼ぶ)が発生する。そのため床排水について処理する構造を必要とし、その床排水処理構造の一要素として床排水ファンネルが建屋内の床に設けられている。すなわち床排水処理にあっては床排水をプラントの排水設備系に流下させて処理することになるが、そのような床排水処理において床排水を集水して排水処理系の排水配管に流下させる装置として床排水ファンネルが設けられている。
代表的な例の床排水ファンネルは、その基本構造として、ファンネルケーシングと連絡管を備えている。ファンネルケーシングは、上部に流入開口部を有する有底の函状に形成されており、建屋内の床を流れる排水がその流入開口部を介して流入できるようにして床に埋設される。一方、連絡管は、ファンネルケーシングの底部に組み付けて設けられ、排水配管に接続される。そしてファンネルケーシングの流入開口部から流入した床排水が連絡管により排水処理系の排水配管に流下するようにされている。
一般的に、原子力発電所の場合、その建屋は複数階建てとなっており、各階に放射能濃度などにより区別されるエリアが設けられている。そして各エリアに床排水ファンネルが一つないし複数設けられており、それら各床排水ファンネルで流下させられる床排水を共通の排水処理系に送水して処理できるようにされている。つまり床排水を受け入れる排水処理系では、共通の母排水配管に接続する排水配管が階ごとに設けられており、その階ごとの排水配管に各エリアの床排水ファンネルが接続されている。そして床排水ファンネルから排水配管に流下した床排水は、一般的に地階に設けられるサンプタンク(排水収集槽)に向けて排水配管と母排水配管により送られて溜められ、一定量溜まったら排水処理装置に送られて必要な処理が施される(例えば特許文献1)。
このような原子力発電所建屋における床排水処理には、床排水ファンネルに関連して、逆流問題と気密性問題がある。逆流問題とは、共通の母排水配管に接続することで各階の排水配管が互い連通状態となっていることに起因し、あるエリアで発生した床排水が他のエリアに連通状態の排水配管と当該エリアの床排水ファンネルを介して逆流する問題である。一方、気密性問題とは、同じく各階の排水配管が互い連通状態となっていることに起因しており、放射能濃度などの異なる各エリアが排水配管と床排水ファンネルを介して通気状態になってしまうことで各エリア間に必要な気密性を保てなくなる問題である。
これら床排水ファンネルに関連する逆流問題と気密性問題については、例えば特許文献2〜特許文献5に開示の例のように、様々なファンネル構造が提案されている。しかしこれらのファンネル構造は、例えば特許文献2〜特許文献4のファンネル構造の場合、複雑であり過ぎて作動安定性に欠け、また保守の負担が大きくなるなどの理由から、また例えば特許文献5のファンネル構造の場合、構造的には単純であるものの、逆流防止性に欠けるなどの理由から、実際には採用されていない。
そのため閉止キャップ方式によるか、又は排水配管を独立化する方式で逆流問題や気密性問題に対応しているのが実情である。閉止キャップ方式は、床排水ファンネルのファンネルケーシングにおける流入開口部を閉止キャップで塞ぐことで逆流水が床に流れ出さないようにして逆流を防止し、またエリア間が通気状態になるのを避ける方式である。このような閉止キャップ方式には、床排水の発生時に作業員が閉止キャップを取り外す必要があり、そのために急激に床排水が発生した場合に対応が遅れて汚染が拡大してしまう可能性があり、また閉止キャップを取り外す作業員が放射能汚染を受ける可能性があるなどといった問題がある。
排水配管を独立化する方式は、排水配管を適切に独立化させることで放射能濃度などの基準が異なるエリア間が排水配管や床排水ファンネルを介して通気状態になるのを避け、かつ他エリアからの逆流を防止する方式である。このような排水配管独立化方式には、排水配管を独立化する程度に応じて母排水配管やサンプタンクの数が増大し、設備コストが増大するなどといった問題がある。
特開2000−147191号公報 特開昭64−68695号公報 特開2004−226361号公報 特開2005−300331号公報 特開2002−116289号公報
上述のように原子力発電所などのプラント建屋における床排水ファンネルには逆流問題や気密性問題があり、それに関して様々なファンネル構造が提案されている。しかしそれらのファンネル構造は実際には採用されておらず、閉止キャップ方式や排水配管独立化方式で逆流問題や気密性問題に対応しているのが実情で、そのため上述のような閉止キャップ方式や排水配管独立化方式における問題を抱えることになっている。
こうしたことから、逆流防止と気密化に高い機能性を有し、しかも構造が単純で作動安定性に優れる床排水ファンネルの開発が強く望まれている。特に、原子力発電所の建屋の場合、放射能濃度の高いエリアからの排水の放射能濃度の低いエリアへの逆流は少量であっても放射能汚染につながる可能性があることから、床排水ファンネルでの逆流を極力避けたいという要求があり、そうした要求に応えることのできる床排水ファンネルの開発が強く望まれている。
本発明はこのような要望に応えるためになされたもので、したがってその課題は、逆流防止と気密化、特に逆流防止に高い機能性を有し、しかも構造が単純で作動安定性に優れる床排水ファンネルの提供にある。
本発明では、上記課題を解決するために、上部に流入開口部を有し、建屋内の床を流れる排水が前記流入開口部を介して流入できるように前記床に埋設されたファンネルケーシング、及び前記ファンネルケーシングの底部に組み付けられた連絡管を備え、前記流入開口部から流入する床排水を前記連絡管により排水処理系の排水配管に流出させるようにされた床排水ファンネルにおいて、前記ファンネルケーシングに流入する排水により浮上可能としたフロートが前記ファンネルケーシング内に配され、また前記流入開口部を介した前記床からの排水の流入時に当該排水の流入路となる流入孔が設けられた弾性的な逆流防止シール体が前記流入開口部に組み付けられ、そして前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに逆流した排水により前記フロートが浮上するのに応じて、前記逆流防止シール体が前記フロートに弾性的に当接することで前記流入孔の逆流水に対する封止がなされるようにされていることを特徴としている。
このような本発明は、基本として一般的なフロート式トラップ構造を用いることで床排水ファンネルに逆流防止性と気密性を与える。つまり床排水ファンネルに床排水の流入のない状態では、フロートがその自重により連絡管のファンネルケーシング側の開口に当接し、これにより連絡管をファンネルケーシング側に対して封止することで、床排水ファンネルを排水配管に対し気密化する。また、連絡管が接続する排水配管から排水がファンネルケーシングに流入した場合、つまり逆流を生じた場合には、その逆流水によりフロートが浮上して流入開口部における逆流防止シール体に当接してその流入孔を封止する。この結果、ファンネルケーシングに流入した逆流水が床排水ファンネル設置の床に流出するのを防止でき、したがって逆流を実効的に防止することができる。
以上はフロート式トラップ構造における基本的な機能で、こうした逆流防止機能と気密化機能、特に逆流防止機能について、本発明では、その高度化を図っている。すなわち床排水の流入路となる流入孔を有する弾性的な逆流防止シール体をファンネルケーシングの流入開口部に設け、逆流水のファンネルケーシングへの流入によりフロートが浮上した際に、そのフロートに逆流防止シール体が弾性的に当接するようにしている。このためフロートと逆流防止シール体に安定性の高い密接状態を得ることができる。このことは、例えば原子力発電所の建屋における床排水ファンネルのように長期間にわたって作動しない状態にある場合が少なくなく、そのためにフロートへのゴミなどの付着を招き易いといった条件の床排水ファンネルにおいて特に有効である。つまり弾性的な当接によりフロートと逆流防止シール体に高い密接状態を得られるようにしたことで、フロートにゴミなどが付着していてもフロートと逆流防止シール体に十分な密接状態を安定的に得ることができ、したがって十分な封止性を安定的に流入孔に与えることができ、例えば原子力発電所の建屋で要求されるような高い逆流防止機能を実現できる。しかもこうした高い逆流防止機能は、単純な構造で済む一般的なフロート式トラップ構造に弾性的な逆流防止シール体を付加するだけで実現できる。このため構造が単純で作動安定性に優れるという要求にも十分に応えることができる。
本発明では、上記のような床排水ファンネルについて、前記排水配管からの逆流水が前記ファンネルケーシングに充満した際に、逆流水による水圧を受けるように形成された弾性的なリップ部が前記逆流防止シール体に設けられ、前記リップ部が逆流水による水圧を受けつつ弾性的に前記フロートに当接するのを伴って前記逆流防止シール体と前記フロートの当接がなされるようにされていることを好ましい形態としている。
このような本発明による床排水ファンネルでは、リップ部により逆流水の水圧も利用して逆流防止シール体とフロートの弾性的な当接をなさせるようにしている。このため上記のようなフロートと逆流防止シール体における安定性の高い密接状態をさらに一層高めることができる。
また本発明では、上記課題を解決するために、上部に流入開口部を有し、建屋内の床を流れる排水が前記流入開口部を介して流入できるように前記床に埋設されたファンネルケーシング、及び前記ファンネルケーシングの底部に組み付けられた連絡管を備え、前記流入開口部から流入する床排水を前記連絡管により排水処理系の排水配管に流出させるようにされた床排水ファンネルにおいて、複数の流入孔を形成することで前記床からの排水の流入を許容するようにされた流入部を部分的に有し、前記流入開口部に配されたファンネル蓋、及び膜開口部が設けられた遮断膜体を備え、そして前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水による浮力や水圧を受けつつ前記遮断膜体の前記膜開口部以外の部分が前記ファンネル蓋の前記流入部に張り付く状態となることで、前記流入部の前記各流入孔を前記排水配管からの逆流水に対し遮断するようにされていることを特徴としている。
このような本発明による床排水ファンネルでは、ファンネル蓋における床排水流入用の流入孔を遮断膜体の張り付きにより逆流水に対し遮断することで逆流を防止する。遮断膜体の張り付きによる流入孔の遮断は、ファンネルケーシングに流入した逆流水による浮力や水圧を受けつつなされることになる。そのため流入孔の高い遮断性が得られ、例えば原子力発電所の建屋で要求されるような高い逆流防止機能を実現できる。またその張り付きにより流入孔を遮断する遮断膜体は、きわめて単純な構造で作動可能であることから、構造が単純で作動安定性に優れるという要求にも十分に応えることができる。
上記のような床排水ファンネルについては、遮断膜体のファンネル蓋に対する初期状態に関して二つの形態が可能である。一つの形態では、前記遮断膜体が前記ファンネル蓋から離隔した状態を初期状態とするようにして設けられ、その離隔状態により前記膜開口部を介して前記床からの排水が前記ファンネルケーシングに流入できるようにされる一方で、前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水により前記遮断膜体が押し上げられることで前記遮断膜体の前記ファンネル蓋への張り付き状態を生じるようにされ、他の形態では、前記遮断膜体が前記ファンネル蓋に張り付く状態を初期状態とするようにして設けられ、前記床から流入しようとする排水により前記遮断膜体がファンネル蓋から離隔された状態となることで、前記膜開口部を介して前記床からの排水が前記ファンネルケーシングに流入できるようにされる一方で、前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水により前記遮断膜体が押し上げられることで前記遮断膜体の前記ファンネル蓋への張り付き状態を助長するようにされる。
以上のような本発明によれば、逆流防止に高い機能性を有し、しかも構造が単純で作動安定性に優れ、例えば原子力発電所の建屋で要求されるような高い逆流防止機能を可能とする床排水ファンネルが実現される。
本発明による床排水ファンネルを適用する原子力発電所建屋における排水処理系の構成を示す図である。 第1の実施例による床排水ファンネルの構成を示す図である。 図1の床排水ファンネルについて床排水が流入している状態を示す図である。 図1の床排水ファンネルについて逆流水が流入している状態を示す図である。 図4中に一点鎖線の円で示す部分を拡大して示す図である。 第2の実施例による床排水ファンネルの構成を示す図である。 図6の床排水ファンネルについて床排水が流入している状態を示す図である。 図6の床排水ファンネルについて逆流水が流入している状態を示す図である。 第3の実施例による床排水ファンネルの構成を示す図である。 図9の床排水ファンネルについて床排水が流入している状態を示す図である。 図9の床排水ファンネルについて逆流水が流入している状態を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明による床排水ファンネルは原子力発電所の建屋に特に有効である。したがって以下では、原子力発電所の建屋に関する実施例として説明する。
図1に本発明による床排水ファンネルを適用する原子力発電所建屋における排水処理系の構成を模式化して示す。図1の例の建屋は、地上4階、地下1階建てとなっており、これら各階に放射能濃度などで区別される複数のエリア1が設けられ、それら各エリア1の床2に床排水ファンネル3が一つないし複数設けられている。
床排水ファンネル3は、各階に設けられている排水配管4に接続されており、床2に発生した床排水を排水配管4に流下させることができるようにされている。また各階の排水配管4は、それぞれ共通の母排水配管5に接続されており、その母排水配管5を介して地階に設置のサンプタンク6に接続されている。そして床排水ファンネル3から排水配管4に流下した床排水は、母排水配管5を経てサンプタンク6に送られて溜められ、一定量溜まったら図外の排水処理装置に送られて必要な処理が施される。
このような排水処理系では、共通の母排水配管5に接続することで各階の排水配管4が互い連通状態となっており、そのために床排水ファンネル3に関して逆流問題と気密性問題を抱え、したがって逆流防止と気密化、特に逆流防止機能に優れたものが求められる。
図2に第1の実施例による床排水ファンネル11の構成を縦断面状態について簡略化して示す。本実施例における床排水ファンネル11は、ファンネルケーシング12、連絡管13、フロート14、逆流防止シール体15、及び保護蓋16を備えている。
ファンネルケーシング12は、金属材、例えばステンレス鋼材などを用い、上部に流入開口部17を有した有底の函状に形成され、原子力発電所建屋の床2に埋設されている。ファンネルケーシング12の埋設部位の周囲では床2に緩い傾斜の導流面2sが設けられており、床2に発生する排水(その流れを図2では二点鎖線の矢印Wで仮想的に示し、後述の図3、4では実線の矢印Wで示している。以下では床排水Wと記す)が導流面2sにより集められるようにしてファンネルケーシング12に流入開口部17、より具体的には流入開口部17に組み付けられている後述のような逆流防止シール体15の流入孔24を介して流入できるようされている。
連絡管13は、ファンネルケーシング12に流入する床排水Wを排水配管4に流下させるのに機能する。そのために連絡管13は、ファンネルケーシング12と同様にステンレス鋼材などを用いて管構造に形成されており、一部が適切な高さでファンネルケーシング12の内部に突出し、残りの部分がファンネルケーシング12の底部19から外方に突出するようにして底部19に組み付けられ、底部19からの外方突出部を介して排水配管4に接続されている。また連絡管13は、ファンネルケーシング12内への突出部に、その先端縁を覆うようにして環状の気密化シール体21が取り付けられている。気密化シール体21は、例えばゴム材などの弾性材料を用いることで適度な弾性を有するように形成されている。
フロート14は、例えば直径がファンネルケーシング12の幅サイズの半分程度となるサイズとし、かつ見かけの比重が1より小さくなるように形成され、ファンネルケーシング12に流入した排水(床排水や逆流排水)により浮上できるようにしてファンネルケーシング12内に配されている。
逆流防止シール体15は、ゴム材などの弾性材料を用いることでそれぞれ適度な弾性を有するようにして一体的に形成された本体部22とリップ部23からなる。本体部22は、短筒状に形成され、その内部が流入孔24となるようにされている。リップ部23は、流入孔24の下縁部につながる状態で下方に末広がりとなる環状の内側テーパ面25を有するとともに、内側テーパ面25と対向する外側テーパ面26を有する形状にして本体部22から延設されている。この逆流防止シール体15は、床排水Wが流入開口部17を介してファンネルケーシング12に流入する際に流入孔24が床排水Wの流入路となるようにして流入開口部17に組み付けられている。より具体的にいうと、逆流防止シール体15は、流入開口部17の形状に合せて形成された塞ぎ板27に組み付け、その塞ぎ板27を介して流入開口部17に組み付けられている。つまり塞ぎ板27により逆流防止シール体15の周囲について流入開口部17を塞ぐようにし、これにより流入孔24だけが床排水Wのファンネルケーシング12への流入路となるようにされている。なお、塞ぎ板27は、側面にねじ部28が形成され、このねじ部28により螺合することで流入開口部17に組み付けられている。このように螺合組付けすることで、ファンネルケーシング12の内部を点検する際に塞ぎ板27を簡単に取り外すことができる。
ここで、上記のようなリップ部23の形状は、後述するように、ファンネルケーシング12に充満した逆流水による水圧を外側テーパ面26で受けつつ、内側テーパ面25をフロート14に当接させるためのものである。したがって、そのような機能性を満たすことができる形状であれば、この例の形状に限られない。
保護蓋16は、床排水Wの通過を許容する平板な格子構造に形成されており、逆流防止シール体15が組み付けられた流入開口部17を覆って保護するようにしてファンネルケーシング12に被せられている。
以上のような床排水ファンネル11では、フロート14、流入開口部17の逆流防止シール体15、及び連絡管13の気密化シール体21によりフロート式トラップ構造が形成され、それにより逆流防止性と気密性を与えられている。以下では、このような床排水ファンネル11におけるフロート式トラップ構造の動作について説明する。
図2はファンネルケーシング12に床排水の流入のない状態である。この状態では、フロート14がその自重により連絡管13に気密化シール体21を介して当接している。フロート14と気密化シール体21の当接は、環状の気密化シール体21の端縁に気密化シール体21が密接する状態でなされ、しかも気密化シール体21がその弾性によりフロート14に弾性的に当接するようにしてなされている。このためフロート14と気密化シール体21に高い密接状態を得ることができる。したがって連絡管13をファンネルケーシング12側に対して高い精度で封止することができ、これによりファンネルケーシング12を排水配管4に対して高い精度で気密化することができる。
ファンネルケーシング12に床排水Wが流入している状態を図3に示す。ファンネルケーシング12に床排水Wが流入すると、その床排水Wによりフロート14が浮上して気密化シール体21から離れる。これにより連絡管13がファンネルケーシング12に連通し、床排水Wは連絡管13を通じて排水配管4に流下する。このように床排水Wがファンネルケーシング12を通過する状態にあっては、床排水Wがファンネルケーシング12内で一定の水位を保っている。そしてフロート14は、そのような床排水Wの水位に応じた程度で浮上し、気密化シール体21から離れるものの、逆流防止シール体15には当接することのない状態を保つことになる。
ファンネルケーシング12に排水配管4から排水が流入して逆流を生じている状態を図4に示す。ファンネルケーシング12に逆流水Rが流入すると、逆流水Rによりフロート14が浮上し、逆流水Rによる浮力と水圧を受けつつフロート14が逆流防止シール体15に当接して流入孔24を封止する。この結果、ファンネルケーシング12に流入した逆流水Rが床2に流出するのを防止でき、したがって逆流を実効的に防止することができる。こうした逆流防止機能にあって、逆流水Rで浮上するフロート14と逆流防止シール体15の当接は、図5に部分的に拡大して示すように、リップ部23が内側テーパ面25を介して弾性的に当接するのを伴ってなされ、しかもリップ部23が図5中にブロック矢印で示すような状態で働く逆流水による水圧を外側テーパ面26に受けつつなされる。このためフロート14と逆流防止シール体15に安定性の高い密接状態を得ることができる。したがって流入孔24をファンネルケーシング12側に対して高い精度で封止することができ、これによりファンネルケーシング12から逆流水Rが床2に流出するのを確実に防止して高い精度の逆流防止機能を発揮することができる。
図6に第2の実施例による床排水ファンネル31の構成を縦断面状態について簡略化して示す。本実施例における床排水ファンネル31は、ファンネルケーシング12、連絡管13、ファンネル蓋32、遮断膜体33、及び気密化シール冠34を備えている。ここで、ファンネルケーシング12と連絡管13は、第1の実施例の床排水ファンネル11におけるそれらと基本的には同様である。したがってファンネルケーシング12と連絡管13については、図1におけるのと同一の符号を付して示し、上での説明を援用するものとする。
ファンネル蓋32は、ファンネルケーシング12の流入開口部17の形状に適合する平板形状に形成され、部分的に流入部35を有する構造とされている。より具体的には、中心部を非流入部36とし、その周辺部に、複数の小さな流入孔37を形成することで床排水Wの流入を許容するようにした流入部35を設けた構造とされている。またファンネル蓋32は、側面にねじ部38が形成され、このねじ部38により螺合することで流入開口部17に組み付けられている。
遮断膜体33は、ゴム材などのように適度に伸縮性のある弾性材料を用いて適度な厚みを有する平板状な膜体として形成され、その外周がファンネル蓋32の外周にほぼ適合する形状とされ、中心部に膜開口部41が設けられている。膜開口部41は、見かけの比重が1より小さくなるように形成されたフロートリング42が周縁部に取り付けられている。また遮断膜体33は、周縁部を介してファンネル蓋32の周縁部に固定して取り付けられ、初期状態では固定の周縁部以外の部分が自重やフロートリング42の重みにより下方に撓むことでファンネル蓋32から離隔した状態となるようにされている。
気密化シール冠34は、底部開放の函状に形成され、その開放底部側で側面部に連通開口部43が設けられている。この気密化シール冠34は、気密性の高い一般的なサイフォン型トラップ構造をファンネルケーシング12と連絡管13の間で形成するのに機能する。すなわち気密化シール冠34は、連絡管13のファンネルケーシング12内への突出部をやや離れて覆う一方で、開放底部をファンネルケーシング12の底部19に密接させるようにしてファンネルケーシング12に設置されている。そしてその設置状態によりファンネルケーシング12と連絡管13の間でサイフォン様の構造を形成し、そこに滞留する滞留水Sによりサイフォン型トラップ構造を形成する。このように気密化シール冠34で形成されたサイフォン型トラップ構造は、連絡管13をファンネルケーシング12側に対して封止するのに機能し、それによりファンネルケーシング12が排水配管4に対し気密化される。
以上のような床排水ファンネル31では、ファンネル蓋32と遮断膜体33により逆流防止がなされる。以下では、このような床排水ファンネル31における逆流防止動作について説明する。
図6はファンネルケーシング12に床排水の流入のない状態である。この状態では、遮断膜体33は上述の初期状態にあり、その初期状態におけるファンネル蓋32からの離隔状態により、ファンネル蓋32の流入部35における流入孔37と遮断膜体33の膜開口部41を介して床排水Wがファンネルケーシング12に流入することが可能となっている。
ファンネルケーシング12に床排水Wが流入している状態を図7に示す。床2に床排水Wが発生してそれが流入孔37から膜開口部41と経てファンネルケーシング12に流入すると、気密化シール冠34によるサイフォン型トラップ構造における滞留水Sの水位が上昇して連絡管13の上端を超え、その状態で床排水Wが連絡管13を通じて排水配管4に流下するようになる。
ファンネルケーシング12に排水配管4から排水が流入して逆流を生じている状態を図8に示す。ファンネルケーシング12に逆流水Rが流入すると、逆流水Rにより遮断膜体33の全体及びフロートリング42に水圧や浮力が働いて遮断膜体33が押し上げられる。そして押し上げられた遮断膜体33は、逆流水Rの水圧や浮力を受けつつ、膜開口部41を非流入部36に密接させるようにしてファンネル蓋32に張り付く。この結果、膜開口部41がファンネル蓋32の非流入部36により封止され、またファンネル蓋32の流入部35における流入孔37が逆流水Rに対し遮断され、これにより逆流水Rが床2に流出するのを確実に防止でき、したがって逆流を実効的に防止することができる。
図9に第3の実施例による床排水ファンネル51の構成を縦断面状態について簡略化して示す。本実施例における床排水ファンネル51は、基本的には第2の実施例における床排水ファンネル31と同様で、遮断膜体52について相違している。以下では、床排水ファンネル51に特徴的な構成について説明し、その他の構成については図6におけるのと同一の符号を付して示し、上での説明を援用するものとする。
遮断膜体52は、遮断膜体33と同様に、ゴム材などのように適度に伸縮性のある弾性材料を用いて適度な厚みを有する平板状な膜体として形成され、その外周がファンネル蓋32の外周にほぼ適合する形状とされ、中心部に膜開口部53が設けられている。また遮断膜体52は、周縁部を介してファンネル蓋32の周縁部に固定して取り付けられ、初期状態で全体がファンネル蓋32に張り付く状態をとるようにされている。したがって遮断膜体52は、初期状態では膜開口部53がファンネル蓋32の非流入部36により封止され、またファンネル蓋32の流入部35における流入孔37を膜開口部53以外の部分で塞いでファンネルケーシング12側に対して遮断する状態となっている。
以上のような床排水ファンネル51では、ファンネル蓋32と遮断膜体52により逆流防止がなされる。以下では、このような床排水ファンネル51における逆流防止動作について説明する。
図9はファンネルケーシング12に床排水の流入のない状態である。この状態では、遮断膜体52は上述の初期状態にあり、ファンネル蓋32に張り付いた状態をとっている。
ファンネルケーシング12に床排水Wが流入している状態を図10に示す。床2に床排水Wが発生してそれが流入孔37からファンネルケーシング12に流入しようとすると、その床排水Wの流下圧を受けて遮断膜体52がファンネル蓋32に固定の周縁部以外の部位について下方に撓むことでファンネル蓋32から離隔した状態となる。そしてその離隔状態により、ファンネル蓋32の流入部35における流入孔37と遮断膜体52の膜開口部53を介して床排水Wがファンネルケーシング12に流入できるようになり、ファンネルケーシング12に床排水Wが流入すると、気密化シール冠34によるサイフォン型トラップ構造における滞留水Sの水位が上昇して連絡管13の上端を超え、その状態で床排水Wが連絡管13を通じて排水配管4に流下するようになる。
ファンネルケーシング12に排水配管4から排水が流入して逆流を生じている状態を図11に示す。ファンネルケーシング12に逆流水Rが流入した場合、逆流水Rはファンネルケーシング12を満たす状態まではなるものの、その状態の逆流水Rによる図中に示すブロック矢印のような水圧により初期状態の遮断膜体52が押し上げられることで遮断膜体52のファンネル蓋32への張り付き状態が助長される。この結果、初期状態における遮断膜体52の状態、つまり膜開口部53をファンネル蓋32の非流入部36により封止させ、ファンネル蓋32の流入部35における流入孔37をファンネルケーシング12側に対して遮断し、これにより流入孔37を逆流水Rに対して遮断する状態がより強固なものとなる。そしてこのことで、逆流水Rが床2に流出するのを確実に防止でき、したがって逆流を実効的に防止することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これらは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。
2 床
3、11、31、51 床排水ファンネル
4 排水配管
12 ファンネルケーシング
13 連絡管
14 フロート
15 逆流防止シール体
17 流入開口部
19 底部
23 リップ部
24 流入孔
32 ファンネル蓋
33 遮断膜体
35 流入部
37 流入孔
41 膜開口部
R 逆流水
W 床排水

Claims (5)

  1. 上部に流入開口部を有し、建屋内の床を流れる排水が前記流入開口部を介して流入できるように前記床に埋設されたファンネルケーシング、及び前記ファンネルケーシングの底部に組み付けられた連絡管を備え、前記流入開口部から流入する床排水を前記連絡管により排水処理系の排水配管に流出させるようにされた床排水ファンネルにおいて、
    前記ファンネルケーシングに流入する排水により浮上可能としたフロートが前記ファンネルケーシング内に配され、また前記流入開口部を介した前記床からの排水の流入時に当該排水の流入路となる流入孔が設けられた弾性的な逆流防止シール体が前記流入開口部に組み付けられ、そして前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに逆流した排水により前記フロートが浮上するのに応じて、前記逆流防止シール体が前記フロートに弾性的に当接することで前記流入孔の逆流水に対する封止がなされるようにされていることを特徴とする床排水ファンネル。
  2. 前記排水配管からの逆流水が前記ファンネルケーシングに充満した際に、逆流水による水圧を受けるように形成された弾性的なリップ部が前記逆流防止シール体に設けられ、前記リップ部が逆流水による水圧を受けつつ弾性的に前記フロートに当接するのを伴って前記逆流防止シール体と前記フロートの当接がなされるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の床排水ファンネル。
  3. 上部に流入開口部を有し、建屋内の床を流れる排水が前記流入開口部を介して流入できるように前記床に埋設されたファンネルケーシング、及び前記ファンネルケーシングの底部に組み付けられた連絡管を備え、前記流入開口部から流入する床排水を前記連絡管により排水処理系の排水配管に流出させるようにされた床排水ファンネルにおいて、
    複数の流入孔を形成することで前記床からの排水の流入を許容するようにされた流入部を部分的に有し、前記流入開口部に配されたファンネル蓋、及び膜開口部が設けられた遮断膜体を備え、そして前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水による浮力や水圧を受けつつ前記遮断膜体の前記膜開口部以外の部分が前記ファンネル蓋の前記流入部に張り付く状態となることで、前記流入部の前記各流入孔を前記排水配管からの逆流水に対し遮断するようにされていることを特徴とする床排水ファンネル。
  4. 前記遮断膜体が前記ファンネル蓋から離隔した状態を初期状態とするようにして設けられ、その離隔状態により前記膜開口部を介して前記床からの排水が前記ファンネルケーシングに流入できるようにされる一方で、前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水により前記遮断膜体が押し上げられることで前記遮断膜体の前記ファンネル蓋への張り付き状態を生じるようにされていることを特徴とする請求項3に記載の床排水ファンネル。
  5. 前記遮断膜体が前記ファンネル蓋に張り付く状態を初期状態とするようにして設けられ、前記床から流入しようとする排水により前記遮断膜体がファンネル蓋から離隔された状態となることで、前記膜開口部を介して前記床からの排水が前記ファンネルケーシングに流入できるようにされる一方で、前記連絡管を介して前記排水配管から前記ファンネルケーシングに排水が逆流した際に、その逆流水により前記遮断膜体が押し上げられることで前記遮断膜体の前記ファンネル蓋への張り付き状態を助長するようにされていることを特徴とする請求項3に記載の床排水ファンネル。
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