JP2010260901A - 光重合開始剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はフッ素系界面活性剤とオキシムエステルとを組み合わせた新規な界面活性光重合開始剤に関する。
オキシム誘導体が光開始剤として利用可能なことは知られている(例えば特許文献1)。具体的には、オキシムエステル化合物を開示するもの(特許文献2及び3)、アクリルアミノ置換されたオキシムエステルを開示するもの(特許文献4)、アルドキシムエステル化合物を開示するもの(特許文献5)、ベンゾフェノンオキシムエステル化合物を開示するもの(特許文献6及び7)、p−アルコキシフェニルオキシムエステル化合物を開示するもの(特許文献8〜12)等を挙げることができる。
これらオキシム系光重合開始剤は、高度に反応性に富む高感度光重合開始剤として有用である。しかしながら、一方では、反応性に富むがゆえに熱安定性や貯蔵安定性に劣るといった、相反する特性を有する。また、工業的見地から、光重合開始剤は製造が容易であり、尚且つ取扱い性に優れることが求められ、このような様々な必要条件を満たさなければならない。
ところで、光重合開始剤は、光が当たった部分のみで反応するという性質を有するため、光が遮蔽された部分や光が到達しない部分では光重合に寄与しない。このような問題が顕著になる例として、例えばカラーフィルターのブラックマトリクスを形成するために用いる光重合性ブラックレジスト膜では、遮光性を有するカーボンブラック等の遮光性顔料が配合されているため、反応に寄与するのは光が当たる表層部分のみとなり、それ以外の部分、例えば膜の内部では光重合開始剤が十分に機能しない問題がある。そのため、十分な光重合反応を起こさせるためには光重合開始剤を多量に添加する必要があるが、それによって今度は、ブラックマトリクスとしての液晶汚染性が生じたり、密着力不足や強度不足等の機能低下につながるという問題がある。
そこで、界面活性機能を有する界面活性光開始剤が検討されている(特許文献13〜15)。このような界面活性光開始剤は、界面活性部分の作用によって、少量でも光重合性レジスト膜の表層に光重合開始剤が集積し、光が当たる部分のみに光重合開始剤を存在させることができ、光重合に寄与しない膜内部の存在量を減らし、結果として光重合開始剤の添加量を減らすことができる。そのため、過剰な光重合開始剤の添加による問題点を解消することができる。しかしながら、従来知られている界面活性光開始剤は、光開始剤部分の作用によって、樹脂を光重合するが硬化性が不十分な点で、光重合開始剤としての機能が不十分である。
そこで、本発明者等は、少量でも十分機能して熱安定性や貯蔵安定性の問題を引き起こすおそれを減らすことができ、例えば、光重合性レジスト膜の表層での硬化を十分に引き出すことができるような優れた光重合開始剤を得るために鋭意検討した結果、フッ素系界面活性剤とオキシムエステルとを組み合わせた新規な界面活性光重合開始剤が、これらの問題を同時解決できることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、反応性に富む高感度の光重合開始剤と界面活性光開始剤との両者の長所を兼ね備えた、新規な光重合開始剤を提供することにある。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
(式中、R1は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、R2はアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Rfは炭素数6〜15のパーフルオロ基を示す。)で示される光重合開始剤である。
本発明は、オキシムエステル構造と界面活性効果を有するパーフルオロ基とを有する新規な界面活性光重合開始剤である。本発明の光重合開始剤は、界面活性効果によりレジスト膜表面に集約するため、光重合性ブラックレジスト膜のような表層しか光が到達しない場合でも少量で光重合性を発現し、全体の光重合開始剤添加量を減少させることができる。
以下に本発明の光重合開始剤の合成例を示す。
第一段階として、カルバゾール-9-エタノールを原料として合成される。カルバゾール-9-エタノールにベンゾイルクロリド、ジクロロメタンを混合し、塩化アセチル、塩化アルミニウムの存在下にFriedel-Crafts反応によりベンゾイル基、アセチル基を導入する。なお、下記反応式においては2−メチル−ベンゾイルクロリドを用いた例を示す。
第一段階として、カルバゾール-9-エタノールを原料として合成される。カルバゾール-9-エタノールにベンゾイルクロリド、ジクロロメタンを混合し、塩化アセチル、塩化アルミニウムの存在下にFriedel-Crafts反応によりベンゾイル基、アセチル基を導入する。なお、下記反応式においては2−メチル−ベンゾイルクロリドを用いた例を示す。
このFriedel-Crafts反応においては、カルバゾール-9-エタノールの水酸基がエステル化されるため、水酸化カリウムを用いた加水分解により水酸基へと戻すことにより、フッ素官能基導入前駆体となる末端水酸基を有するジアシル体(4)を得ることができる。
次に、末端水酸基に界面活性能を発現させるためパーフルオロ基(Rf)を導入するが、一般的な求核置換反応であり、目的とするRf体を得るには、1級水酸基を前駆体とし、アミン系の塩基を用いて導入する方法が挙げられる。
ここでパーフルオロ基を導入するために好適に用いられるフッ素原子を有する化合物としては、C6〜14F11〜25の構造を有する基であるのが好ましく、特には、下記式で示されるものがより好ましい例として挙げることができる。
次に、アセチル基を水酸化アンモニウムを用いてオキシム化するが、公知の方法を用いることができる。すなわち、例えばエタノール溶媒中に塩化ヒドロキシルアンモニウムと反応させることでオキシムエステル化されたオキシム化合物とすることができる。
このようにして得られた界面活性光重合開始剤は、カラーフィルターのブラックマトリクス形成用ブラックレジストや、カラーフィルターRGB画素形成用感光性レジスト、透明保護膜用感光性レジスト等に用いることができる。また、本発明の界面活性重合開始剤は、他の光重合開始剤と併用することもでき、それぞれの光重合開始剤の特性を生かした複合的効果を得ることもできる。
以下に本発明の実施例を示す、ただし、本発明は以下の合成手段のみに限定されない。
(ジアシル化)
カルバゾール-9-エタノール3g(14.2mmol)をジクロロメタン30mlに溶解させ、0℃に冷却、塩化アルミニウム4g(31.2mmol)、2-メチルベンゾイルクロリド3.88ml(29.8mmol)を加え、5分間攪拌した。室温に昇温し1時間攪拌、再び0℃に冷却し、塩化アルミニウム2.08g(15.6mmol)、及び塩化アセチル1.06ml(14.9mmol)を加えた。5分後、室温に昇温し、1時間攪拌した。水10mlを滴下し、反応を停止、ジクロロメタンにより抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄、乾燥、濃縮させることにより、ジアシルエステル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物について、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.85付近のd、4.8付近のd、2.8付近のs、2.5付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
カルバゾール-9-エタノール3g(14.2mmol)をジクロロメタン30mlに溶解させ、0℃に冷却、塩化アルミニウム4g(31.2mmol)、2-メチルベンゾイルクロリド3.88ml(29.8mmol)を加え、5分間攪拌した。室温に昇温し1時間攪拌、再び0℃に冷却し、塩化アルミニウム2.08g(15.6mmol)、及び塩化アセチル1.06ml(14.9mmol)を加えた。5分後、室温に昇温し、1時間攪拌した。水10mlを滴下し、反応を停止、ジクロロメタンにより抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄、乾燥、濃縮させることにより、ジアシルエステル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物について、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.85付近のd、4.8付近のd、2.8付近のs、2.5付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
(加水分解)
上記で得られたジアシルエステル体の粗生成物5gをTHF30mlに溶解させ、メタノール30ml、及び5%水酸化カリウム水溶液を30mlを加え、室温で5時間攪拌した。攪拌後、水20ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルにより3回抽出し、有機層を乾燥、濃縮し、ジアシル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシル体を4.30g(11.58mmol)得た。収率はジアシル化から加水分解までの2段階で82%だった。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.5付近のs、8.1付近のm、4.6付近のd、4.2付近のd、2.7付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
上記で得られたジアシルエステル体の粗生成物5gをTHF30mlに溶解させ、メタノール30ml、及び5%水酸化カリウム水溶液を30mlを加え、室温で5時間攪拌した。攪拌後、水20ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルにより3回抽出し、有機層を乾燥、濃縮し、ジアシル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシル体を4.30g(11.58mmol)得た。収率はジアシル化から加水分解までの2段階で82%だった。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.5付近のs、8.1付近のm、4.6付近のd、4.2付近のd、2.7付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
(パーフルオロ基の導入)
上記で得られたジアシル体3g(8.08mmol)をアセトニトリルに溶解させ、トリエチルアミン1.69ml(12.1mmol)、C9F18 5.44g(12.1mmol)を加え、12時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、酢酸エチルにより抽出し、有機層を乾燥、濃縮させることにより粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシルRf体を5.5g(6.86mmol)得た。収率は85%だった。得られたものについて、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、4.8付近のm、及び4.4付近のmを確認した。
上記で得られたジアシル体3g(8.08mmol)をアセトニトリルに溶解させ、トリエチルアミン1.69ml(12.1mmol)、C9F18 5.44g(12.1mmol)を加え、12時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、酢酸エチルにより抽出し、有機層を乾燥、濃縮させることにより粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシルRf体を5.5g(6.86mmol)得た。収率は85%だった。得られたものについて、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、4.8付近のm、及び4.4付近のmを確認した。
(アセチル基のオキシム化)
上記で得られたジアシルRf体4g(4.99mmol)をエタノール65mlに溶解させ、水20ml、酢酸ナトリウム878.4mg(6.59mmol)、及び塩化ヒドロキシルアンモニウム381.5mg(5.49mmol)を加えた。溶液を3時間加熱還流し、室温に冷却した。水20mlを加えて反応を停止させ、析出した白色固体をTHF30mlで溶解させた。溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、乾燥濃縮し、オキシム体粗生成物を得た。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.4付近のs、8.1付近のd、7.9付近のd、4.6付近のm、4.3付近のm、及び4.2付近のmを確認した。
上記で得られたジアシルRf体4g(4.99mmol)をエタノール65mlに溶解させ、水20ml、酢酸ナトリウム878.4mg(6.59mmol)、及び塩化ヒドロキシルアンモニウム381.5mg(5.49mmol)を加えた。溶液を3時間加熱還流し、室温に冷却した。水20mlを加えて反応を停止させ、析出した白色固体をTHF30mlで溶解させた。溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、乾燥濃縮し、オキシム体粗生成物を得た。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.4付近のs、8.1付近のd、7.9付近のd、4.6付近のm、4.3付近のm、及び4.2付近のmを確認した。
(オキシムのエステル化)
上記で得られたオキシム体粗生成物をt-ブチルメチルエーテル60mlに溶解させ、溶液を0℃に冷却、トリエチルアミン1.25ml(8.98mmol)、及び塩化アセチル0.532ml(7.49mmol)を加えた。溶液を室温に昇温し、4時間攪拌した。攪拌後、水を加えて反応を停止させ、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を乾燥濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、光開始剤を3.7g(4.31mmol)得た。収率はアセチル基のオキシム化からオキシムのエステル化までの2段階で86%だった。得られたものについて、H1NMRにより目的物を確認した。図1に示すように、8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.6付近のm、4.4付近のm、及び4.3付近のmのピークがそれぞれ確認された。また、IRのチャート図を図2に示す。
上記で得られたオキシム体粗生成物をt-ブチルメチルエーテル60mlに溶解させ、溶液を0℃に冷却、トリエチルアミン1.25ml(8.98mmol)、及び塩化アセチル0.532ml(7.49mmol)を加えた。溶液を室温に昇温し、4時間攪拌した。攪拌後、水を加えて反応を停止させ、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を乾燥濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、光開始剤を3.7g(4.31mmol)得た。収率はアセチル基のオキシム化からオキシムのエステル化までの2段階で86%だった。得られたものについて、H1NMRにより目的物を確認した。図1に示すように、8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.6付近のm、4.4付近のm、及び4.3付近のmのピークがそれぞれ確認された。また、IRのチャート図を図2に示す。
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