本発明は、ボールエンドミル加工に関するシステム、装置および方法に関するものである。
機械加工において、切削工具として剛性の低い工具を用いる場合等に、切削工具と被削材との間に、いわゆるびびり振動とよばれる異常(あるいは望ましくない)振動が発生する場合がある。この現象について、図20を参照して説明する。図20は、エンドミル加工を行う場合のエンドミルと被削物におけるびびり振動の発生を説明するための模式図である。エンドミル50が被削物52を削り取ることにより、被削物52の仕上げ面に起伏(アウターモジュレーション)が転写される。この一刃前の起伏と現在の切削による振動(インナーモジュレーション)との間に位相遅れが生じることにより、被削物52の切取り厚さが一定とならず、切取り厚さが変動することによって機械系が加振され、この結果としてびびり振動が発生すると考えられている。このびびり振動は再生型びびり振動と呼ばれ、切削加工で重切削を行う場合や、被切削物が高硬度の場合、剛性の低い工具やワーク(被切削物)を用いる場合に発生しやすい。
このようなびびり振動は、切削加工の加工精度を低下させたり、切削加工工具を破損させるといった問題を引き起こすため、できるだけびびり振動を抑制させることが望ましい。一般的には、びびり振動を抑制させるために、切削速度の低減や切削幅の低減といった対策が採られているが、これらの対策は切削加工の生産性を低下させるという背反事項がある。また、機械加工工具のシャンク材質の改善によってもびびり振動は低減できるが、その低減効果は大きくなく、汎用的な対策には至っていない。
びびり振動を低減させる技術に関しては、特許文献1に示すような対策が行われている。特許文献1は、切削工具の回転数を変更したり、不等ピッチ角のエンドミル(切削工具)を用いることにより、びびり振動を低減するものである。また、本出願の発明者らは、非特許文献1において、低剛性工作物のボールエンドミル加工における再生型びびり振動に関する研究を行っている。
特開2007−44852号公報
AKAZAWA, SHAMOTO, IEEE Catalog Number:CFP08768-CDR ISBN 978-1-4244-2919-6 Library of Congress:2008908396
近年、被削物に対して切削工具の角度を変えることが可能な工作機械装置、いわゆる5軸による切削加工が可能な工作機械装置が実用化されてきている。しかしながら、びびり振動に関して、被削物に対する工具の姿勢の影響を明らかにした研究は未だ発表されておらず、被削物に対して、びびり振動を考慮してボールエンドミルの最適姿勢を求めることは、びびり振動低減の効果が高いものであると期待される。
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被削材に対するボールエンドミルの姿勢を制御するシステム、装置および方法を提供し、びびり振動の少ない切削加工を可能にすることを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、設計された加工形状に基づくデータを生成するCAM装置と、前記CAM装置より出力されるデータを用いてNCプログラムを作成するNCプログラム作成装置と、前記NCプログラム作成装置によって作成された前記NCプログラムによって制御を行うNC制御装置と、前記NC制御装置によって制御されるものであり、被削材に対してボールエンドミルが用いられる工作機械装置と、を備えるボールエンドミル加工システムであって、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を、さらに備えることを特徴とするボールエンドミル加工システムによって構成される。
上記の構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を備えているため、ボールエンドミル加工に対するびびり振動の影響を抑制することができる。
本発明の第1の実施形態のボールエンドミル加工システム2の全体構成を示す概略図である。
本発明の第1の実施形態のNC制御装置8および工作機械装置10の構成を示す概略図である。
本発明の第1の実施形態の工作機械装置10の全体構成を示す斜視図である。
本発明の第1の実施形態の角度決定部25で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
被削材66に対するボールエンドミル68の角度の変化による被削材66の切取られる部分の変化を示す模式図であり、図5(a)はα=30°、図5(b)はα=70°、図5(c)はα=110°、図5(d)はα=150°の場合である。
本発明の第2の実施形態のNC制御装置74および工作機械装置76の構成を示す概略図である。
本発明の第2の実施形態の工作機械装置76の全体構成を示す斜視図である。
本発明の第2の実施形態の角度決定部85で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
(a)はY軸方向から見たボールエンドミル68と被削材66の切削部を拡大した断面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
本発明の第3の実施形態の角度決定部85で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
工作機械装置76の制御系のブロック図である。
本発明の第4の実施形態の角度決定部85で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
本発明の第5の実施形態の角度決定部85で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
本発明の第6の実施形態の角度決定部85で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
本発明の第7の実施形態のボールエンドミル加工システム86の全体構成を示す概略図である。
本発明の第7の実施形態のNC制御装置90および工作機械装置92の構成を示す概略図である。
本発明の第7の実施形態の角度決定部94で実行される角度決定方法を説明するためのフローチャートである。
本発明の第8の実施形態の角度決定部94で実行される角度決定方法を説明するためのフローチャートである。
本発明の第9の実施形態の角度決定部94で実行される角度決定方法を説明するためのフローチャートである。
加工における再生型のびびり振動の発生メカニズムを説明するための図である。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施態様の記載、従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となりうるのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(9)項が請求項5に、(11)項が請求項6に、(13)項が請求項7に、(17)項が請求項8に、(18)項が請求項9に、(19)項が請求項10に、(20)項が請求項11に、(28)項が請求項12に、(29)項が請求項13に、(30)項が請求項14に、(31)項が請求項15に、それぞれ相当する。
(1)設計された加工形状に基づくデータを生成するCAM装置と、前記CAM装置より出力されるデータを用いてNCプログラムを作成するNCプログラム作成装置と、前記NCプログラム作成装置によって作成された前記NCプログラムによって制御を行うNC制御装置と、前記NC制御装置によって制御されるものであり、被削材に対してボールエンドミルが用いられる工作機械装置と、を備えるボールエンドミル加工システムであって、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を、さらに備えることを特徴とするボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、(1)のシステムは、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を備えているため、ボールエンドミル加工に対するびびり振動の影響を抑制することができる。なお、(1)におけるCAM(Computer Aided Manufacturing)装置は、加工形状に基づいてデータを生成するものであれば良く、被削材の材質を考慮して工具の材質や形状および加工条件(主軸回転数、切込み量(切込み深さ)、ピックフィード量、切削送り方向、1刃あたりの送り量等)を決定し、加工形状に基づいて工具軌跡(ツールパス)や工具姿勢または可能な工具姿勢の範囲を生成するものとすることができる。また、CAM装置は、加工形状に基づくデータを生成するものであるが、CAM装置の機能として、加工形状を設計する機能(CAD(Computer Aided Design)機能)を備えるものであっても良い。また、CAM装置は、加工形状等に基づいて各種データを生成する機能(CAM機能)を有するソフトウェアと、当該ソフトウェアを実行するコンピュータにより構成されても良い。また、(1)におけるNC(Numerical Control)プログラム生成装置は、CAM装置から出力される少なくとも工具軌跡データを用いてNCプログラムを生成するものであれば良く、CAM装置から出力される工具軌跡、工具姿勢、1刃あたりの送り量等に基づいてNCプログラムを生成するものとすることができる。また、NCプログラム生成装置は、NCプログラムを生成する機能を有するソフトウェアと、当該ソフトウェアを実行するコンピュータにより構成されても良い。また、NC制御装置は、NC制御機能を有するソフトウェアと、当該ソフトウェアを実行するコンピュータにより構成されても良い。また、NC制御装置と工作機械装置は双方により1つの装置を構成することもできるが、この場合は、構成された1つの装置は、切削加工装置、切削加工システムあるいは単に工作機械装置と呼ぶこともでき、例えば、工作機械装置と呼ぶ場合は、工作機械装置がNCプログラム制御機能部と工作機械機能部を有するものとみなすことができる。また、被削材に対するボールエンドミルの角度は、被削材の現在加工中の面に対するボールエンドミルの軸線のなす角度ということができるが、これ以外にも、被削材の現在加工中の面の法線に対するボールエンドミルの軸線の角度と定義することもできる。また、被削材に対するボールエンドミルの角度は、ボールエンドミルの送り方向を基準とする送り方向周りの角度(送り方向に垂直な平面内における被削材に対するボールエンドミルの角度)や、ボールエンドミルのピックフィード方向を基準とするピックフィード方向周りの角度(ピックフィード方向に垂直な平面内における被削材に対するボールエンドミルの角度)ということもできる。また、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整するとは、ボールエンドミルの主軸自体を被削材に対して傾けて、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することや、被削材自体をボールエンドミルの主軸に対して傾けて、ボールエンドミルに対する被削材の角度を調整することや、被削材およびボールエンドミルの両方を傾けて被削材に対するボールエンドミルの角度を調整すること等を含むものである。また、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整するとは、被削材に対するボールエンドミルの姿勢を調整することと言うことができ、被削材に対する工具姿勢を調整すると言うこともできる。また、(1)におけるびびり振動は、切削時に工作機械装置に発生するびびり振動を意味するが、(1)では特に、被削材とボールエンドミルの少なくとも一方が振動し、当該振動によって発生する切削断面積の増減によって、切削力が変動することで、大きく成長する振動と定義することができ、当該びびり振動は自励型のびびり振動ということができ、この中には再生型、さらにはモードカップリング型が含まれる。また、(1)におけるびびり振動抑制部は、被削材とボールエンドミルの間に発生したびびり振動の程度を、程度が大きいものから程度が小さいものに抑制する機能以外にも、被削材とボールエンドミルの間に発生すると予測されるびびり振動の程度を、程度が大きいものから程度が小さいものに抑制したり、びびり振動が発生しないようにびびり振動の発生を抑制する機能も含むものである。また、びびり振動の程度が大きいとは、びびり振動によって振動する被削材あるいはボールエンドミルの振動幅の大きさ(振幅)が大きいものをいう。なお、びびり振動抑制部は、ボールエンドミル加工システムに含まれていればよく、CAM装置、NCプログラム作成装置、NC制御装置および工作機械装置のうちの少なくとも1つに含まれていても良いし、CAM装置、NCプログラム生成装置、NC制御装置および工作機械装置いずれにも含まれない態様とすることもできる。
(2)前記びびり振動抑制部は、前記NC制御装置に含まれ、前記NC制御装置は、前記びびり振動抑制部によって調整された角度に基づいて、前記工作機械装置を制御することを特徴とする(1)に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、NC制御装置内にびびり振動抑制部が備えられるため、工具軌跡(ボールエンドミルのボール部分の中心が移動する軌跡)を変更することなく、びびり振動抑制部によって調整された角度に基づいて、工作機械装置においてボールエンドミルを動作させることが可能となる。したがって、速やかにびびり振動を抑制することができる。
(3)操作者の前記びびり振動抑制部への入力を可能にする操作者入力部をさらに備え、前記びびり振動抑制部は、前記操作者入力部の入力に基づき、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)または(2)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者の入力に基づいて、びびり振動抑制部が被削材に対するボールエンドミルの角度を調節するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、操作者の入力の内容は、様々なものが考えられ、例えば、切削時にびびり振動が発生しているか否かの情報や、びびり振動が発生している場合には、びびり振動の程度の大きさや、発生しているびびり振動が許容できるものか、許容範囲外のものであるか、振動の方向あるいは振動を発生しやすい低剛性の構造が、回転するボールエンドミル側か被削材側かの判断等の情報が挙げられる。このような情報が操作者入力部を介して入力される場合、例えば、びびり振動の発生の有無が情報として入力される場合は、びびり振動が発生しているときは、びびり振動が抑制されるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整され、びびり振動が発生していないときは、角度調整を行わないことで、びびり振動を新たに発生させることが回避されるのである。
(4)前記操作者入力部は、操作者が前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動の原因を特定することが可能であることを特徴とする(1)から(3)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者が特定したびびり振動の原因に基づいて、びびり振動抑制部が被削材に対するボールエンドミルの角度を、びびり振動の原因となる部分の振動を低減させるように調節するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、びびり振動の原因は、様々なものが考えられるが、例えば、ボールエンドミルが原因の場合、被削材が原因の場合、ボールエンドミルと被削材の両方が原因の場合、あるいは工作機械装置の構造が原因の場合等が挙げられる。
(5)前記操作者入力部は、操作者が前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動の原因を、前記被削材が原因の場合と前記ボールエンドミルが原因の場合の中から少なくとも1つを特定することが可能であることを特徴とする(3)項または(4)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者が、被削材が原因の場合とボールエンドミルが原因の場合の中から少なくとも1つを特定し、特定された原因に基づいて、びびり振動抑制部が被削材に対するホールエンドミルの角度を調節するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。
(6)前記びびり振動抑制部は、前記操作者入力部によりびびり振動の原因が前記被削材が原因と特定された場合、前記被削材に前記被削材の板厚方向のびびり振動が発生しているとして、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(4)項または(5)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動抑制部は、被削材に被削材の板厚方向にびびり振動が発生しているとして被削材に対するボールエンドミルの角度を調整するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、被削材の板厚方向とは、加工形状が板状部を有する場合は当該板状部の厚さ方向ということができるが、加工形状あるいは被削材の加工途中の形状において剛性の低い方向ということもできる。
(7)前記びびり振動抑制部は、前記操作者入力部によりびびり振動の原因が前記ボールエンドミルが原因と特定された場合、前記ボールエンドミルに前記ボールエンドミルの軸に垂直な方向のびびり振動が発生しているとして、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(4)項から(6)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動抑制部は、ボールエンドミルにボールエンドミルの軸に垂直な方向にびびり振動が発生しているとして、被削材に対するボールエンドミルの角度を調節するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、ボールエンドミルの軸とは、ボールエンドミルの主軸(回転軸)であり、ボールエンドミルの形状が、先端部が球形状でこれに続く部分が円筒形状である場合、円筒形状部分の中心軸ということができる。
(8)操作者にびびり振動の原因を特定させるための表示を行う表示部をさらに備えることを特徴とする(3)項から(7)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者は表示部の表示に基づいてびびり振動の原因を特定することが可能となるため、びびり振動の特定が容易化される。
(9)前記工作機械装置に発生するびびり振動を検出するびびり振動検出部をさらに備え、前記びびり振動抑制部は、前記びびり振動検出部によってびびり振動が検出された場合に、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)項から(8)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動が検出された場合に、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されるため、切削効率の低下を回避しつつ、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、(9)においては、びびり振動検出部によってびびり振動を検出した後に、操作者によってびびり振動の原因を特定させる構成とすることもできるし、びびり振動検出部がびびり振動の原因を特定する構成とすることも可能である。
(10)前記びびり振動検出手段は、前記機械加工装置のボールエンドミル側に設置された加速度センサの値に基づきびびり振動を検出することを特徴とする(9)項に記載のボールエンドミル加工システム。
(11)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルが前記被削材に対してダウンカット方向とアップカット方向のいずれの方向に切削しているかを検出し、検出結果に基づき、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)項から(10)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの切削送りの方向を検出して、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、ダウンカット方向とは、ボールエンドミルの刃が、被削材のボールエンドミルに対向する面に対して、ボールエンドミル側(被削材の外側)から被削材側(被削材の内側)に切削していく場合の切削方向であり、アップカット方向とは、ボールエンドミルの刃が、被削材のボールエンドミルに対向する面に対して、被削材側(被削材の内側)からボールエンドミル側(被削材の外側)に切削していく場合の切削方向である。
(12)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルが前記被削材に対してダウンカット方向で切削している場合、前記ボールエンドミルが前記被削材に対してアップカット方向で切削するように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調節することを特徴とする(11)項に記載のボールエンドミル加工システム。
切削方向がアップカット方向の場合はダウンカット方向の場合よりも、ボールエンドミルから被削材に及ぼされる力あるいは被削材からボールエンドミルから及ぼされる力(加工面(切削送り方向とピックフィード方向を含む面)に垂直な方向の力の成分)が小さくなるため、びびり振動が発生し易い。したがって、この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで、良好にびびり振動を抑制することができる。
(13)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルの軸線と前記被削材の前記ボールエンドミルに対向する面の法線の角度が大きくなるように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)項から(12)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、ボールエンドミルの軸線と被削材のボールエンドミルに対向する面の法線の角度が大きくなるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されることにより、切削時にボールエンドミルが被削材に接触する期間が短くなるため、良好にびびり振動を抑制することができるが、特に、びびり振動の原因が被削材側にある(被削材が低剛性の)場合に良好にびびり振動を抑制することができる。
(14)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルの軸線と前記被削材の前記ボールエンドミルに対向する面の法線の角度が小さくなるように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)項から(13)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、ボールエンドミルの軸線と被削材のボールエンドミルに対向する面の法線の角度が小さくなるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されることにより、切削時にボールエンドミルがボールエンドミルの軸に垂直な方向への力を被削材から受けにくくなるため、良好にびびり振動を抑制することができるが、特に、びびり振動の原因がボールエンドミル側にある場合に良好にびびり振動を抑制することができる。なお、被削材のボールエンドミルに対向する面とは、ボールエンドミルが現在加工を行っている被削材の切削部を含む面であり、加工面ということもできる。また、被削材のボールエンドミルに対向する面は、ピックフィード方向と切削送りの方向の両方を含む面である。
(15)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミル加工プロセスのゲイン、すなわち、びびり振動による前記被削材と前記ボールエンドミルの間の微小変位によって切削力が増大する割合が、平均的に小さくなるように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(1)項から(14)項にのいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、被削材とボールエンドミルの間の振動によって、その振動を成長させる加振力を発生する不安定な閉ループのゲインが小さくなるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調節されるため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。なお、(15)のゲインは、再生型びびり振動を伴うボールエンドミル加工におけるプロセスゲインということもできる。
(16)前記びびり振動検出部は、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度が調整された後にもびびり振動の検出を行うものであり、前記びびり振動抑制部は、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度が調整された後にびびり振動が検出された場合に、再度前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(9)項から(15)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動抑制部によって被削材に対するボールエンドミルの角度が調整された後にびびり振動が発生している場合も、再度被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されるため、良好にびびり振動の発生を抑制することができる。
(17)前記びびり振動抑制部は、前記びびり振動検出部がびびり振動を検出していない状態の前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度に基づき、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(9)項から(16)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動が発生していない被削材に対するボールエンドミルの角度を参照して被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(18)前記びびり振動抑制部は、前記CAM装置に含まれ、前記CAM装置は、前記びびり振動抑制部によって調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(1)に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、CAM装置内にびびり振動抑制部が備えられるため、びびり振動を考慮したデータ(ツールパス)を生成することができ、びびり振動を良好に抑制することができる。
(19)前記操作者入力部は、操作者が前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動の原因を特定することが可能であることを特徴とする(18)に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者が特定したびびり振動の原因に基づいて、びびり振動抑制部が被削材に対する角度を、びびり振動の原因となる部分の振動を低減させるようなツールパスが生成されるため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。
(20)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルが前記被削材に対してダウンカット方向とアップカット方向のいずれの方向に切削するかを検出し、検出結果に基づき、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することを特徴とする(19)または(20)のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの切削送りの方向を検出して、ボールエンドミルのツールパスが生成されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(21)前記びびり振動抑制部は、前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動の原因を、前記被削材が原因の場合と前記ボールエンドミルが原因の場合の中から操作者によって特定された少なくとも1つの原因に基づき、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(19)項または(20)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、操作者が被削材が原因の場合とボールエンドミルが原因の場合の中から少なくとも1つを特定し、特定された原因に基づいて、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整され、調整された角度に基づいてツールパスが生成されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(22)前記びびり振動抑制部は、操作者によりびびり振動の原因が前記被削材が原因と特定された場合、前記被削材に前記被削材の板厚方向にびびり振動が発生するとして、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(20)項または(21)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動抑制部は、被削材に板厚方向にびびり振動が発生するとして被削材に対するボールエンドミルの角度を調整し、CAM装置は、調整された角度に基づいてツールパスを生成するため、良好にびびり振動を抑制することが可能となる。
(23)前記びびり振動抑制部は、操作者によりびびり振動の原因が前記ボールエンドミルが原因として特定された場合、前記ボールエンドミルに前記ボールエンドミルの軸に垂直な方向のびびり振動が発生するとして、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づき前記CAM装置の出力データを生成すること特徴とする(19)項から(22)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、びびり振動抑制部は、ボールエンドミルにボールエンドミルの軸方向と垂直な方向にびびり振動が発生するとして、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整し、CAM装置は、調整された角度に基づいてツールパスを生成するため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(24)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルの軸線と前記被削材の前記ボールエンドミルに対向する面の法線の角度が大きくなるように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(18)項から(23)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、ボールエンドミルの軸線と被削材のボールエンドミルに対向する面の法線の角度が大きくなるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されることにより、ボールエンドミルが被削材に接触する期間が短くなるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(25)前記びびり振動抑制部は、前記ボールエンドミルの軸線と前記被削材の前記ボールエンドミルに対向する面の法線の角度が小さくなるように、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(18)項から(24)項のいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、ボールエンドミルの軸線と被削材のボールエンドミルに対向する面の法線の角度が小さくなるように、被削材に対するボールエンドミルの角度が調整されることにより、ボールエンドミルがボールエンドミルの軸に垂直な方向への力を被削材から受けにくくなるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(26)前記びびり振動抑制部は、伝達関数、比切削抵抗および切削条件よりびびり振動が発生しない角度を演算し、びびり振動が発生しない角度に基づいて前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(18)項から(25)項にのいずれか1項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度が、びびり振動が発生しない角度に調整され、調整された角度に基づいてツールパスが生成されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、切削条件は、切込み量、ピックフィード量、1刃あたりの送り量およびボールエンドミル先端部の半径、切削送り方向および調整する前のボールエンドミルの角度の内の少なくとも1つを採用することができる。
(27)前記びびり振動抑制部は、被削材の素材形状および加工形状に基づく形状データを用いて有限要素法により振動しやすい方向(振動モードの方向)を解析し、その振動方向の情報に基づいてびびり振動が発生しない角度を演算し、びびり振動が発生しない角度に基づいて前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整し、前記CAM装置は、調整された角度に基づいて前記CAM装置の出力データを生成することを特徴とする(18)項から(26)項に記載のボールエンドミル加工システム。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度が、有限要素法による振動解析を利用して、びびり振動が発生しない角度に調整され、調整された角度に基づいてNCプログラムが作成されるため、良好にびびり振動を抑制することができる。
(28)CAM装置によって出力されるデータに基づき作成されたNCプログラムを用いて制御を行うNC制御部と、前記NC制御部によって制御されるものであり、切削工具としてボールエンドミルを用いる工作機械部と、を備えるボールエンドミル加工装置であって、前記ボールエンドミル加工装置は、被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を、さらに備えることを特徴とするボールエンドミル加工装置。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を備えているため、仕上げ面性状や工具寿命などに対するびびり振動の影響を抑制することができる。
(29)設計された加工形状に基づくデータを生成するCAM装置であって、前記CAM装置は、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部をさらに備え、調整された角度に基づいて前記データを作成することを特徴とするCAM装置。
この構成によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するびびり振動抑制部を備えているため、調整された角度に基づくデータを生成することにより、切削加工に対するびびり振動の影響を抑制することができる。なお、(29)のCAD装置は、CAMデータを生成するソフトウェア(プログラム)とすることもできるし、CAMデータを生成するソフトウェアと当該ソフトウェアを実行するコンピュータより構成することもできる。
(30)設計された加工形状に基づくデータを生成するステップと、生成されたデータを用いてNCプログラムを作成するステップと、作成されたNCプログラムによって制御を行い、被削材に対してボールエンドミルを用いて切削を行うステップと、を備えるボールエンドミル加工方法であって、前記ボールエンドミル加工方法は、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するステップを、さらに備えることを特徴とするボールエンドミル加工方法。
この方法によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制するステップを備えているため、切削加工に対するびびり振動の影響を抑制することができる。
(31)設計された加工形状に基づくデータを用いて作成されたNCプログラムを用いて、被削材に対してボールエンドミルを用いて切削を行うボールエンドミル加工方法であって、前記ボールエンドミル加工方法は、前記被削材に対する前記ボールエンドミルの角度を調整することで前記被削材と前記ボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制することを特徴とするボールエンドミル加工方法。
この方法によれば、被削材に対するボールエンドミルの角度を調整することで被削材とボールエンドミルの間に発生するびびり振動を抑制しているため、切削加工に対するびびり振動の影響を抑制することができる。
本発明を実施するための実施の形態について以下に詳細に説明する。図1は、本発明が適用された第1の実施形態の全体構成の概略を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態のボールエンドミル加工システム2は、CAD/CAM装置4、NCプログラム作成装置6、NC制御装置8および工作機械10より構成されている。CAD/CAM装置4は、部品設計や金型設計等を行うCAD機能部と、これらの3Dデータよりツールパス(工具軌跡)、送り量、切込み量等のNCデータを決定するCAM機能部より構成されており、例えば、CAD機能およびCAM機能を有するソフトウェアと当該ソフトウェアを実行するパーソナルコンピュータよりCAD/CAM装置4は構成される。なお、本実施形態では、CAD機能部とCAM機能部を有するものを1つの装置として説明するが、CAD機能部とCAM機能部はそれぞれ別のコンピュータ上で実行される別のソフトウェアとして構成されていても良い。
NCプログラム作成装置6は、CAD/CAM装置4で決定されたツールパス等のNCデータから、後述するNCプログラム制御装置8を制御するためのNCプログラムを作成するものであり、例えば、ポストプロセッサとよばれるソフトウェアと当該ソフトウェアを実行するパーソナルコンピュータよりNCプログラム作成装置6は構成される。
また、NC制御装置8は、NCプログラム作成装置6で作成されたNCプログラムに従い、工作機械装置10を制御するものである。なお、本実施形態では、NC制御装置8と工作機械装置10が分離されたものとして説明するが、NC制御装置8と工作機械装置10が一体とされていても良く、NC制御装置8と工作機械装置10が一体となって工作機械装置とよばれることもある。工作機械装置10は、NC制御装置8によって制御されることにより、ボールエンドミルによる被削材の加工を行う装置である。
次に、NC制御装置8および工作機械装置10の構成の詳細について、図2および図3を参照して説明する。図2はNC制御装置8および工作機械装置10に含まれる各種センサや制御部を模式的に示す概略図であり、図3は工作機械装置10の全体構成を示す斜視図である。図2および図3に示すように、工作機械装置10は、X軸センサ12、Y軸センサ14、Z軸センサ16、主軸センサ18、角度センサ20および操作者入力部22を備えている。
X軸センサ12は、図3に示す被削材(ワーク)66が設置されているテーブル64のX軸方向(紙面と平行な方向)の位置を検出するセンサである。Y軸センサ14は、被削材66が設置されているテーブル64のY軸方向の位置を検出するセンサである。また、Z軸センサ16は、ボールエンドミル68のZ軸方向(紙面と平行な方向)の位置を検出するセンサである。
主軸センサ18は、ボールエンドミル68を回転させる主軸モータ(スピンドルモータ)の回転速度を検出するセンサである。また、角度センサ20は、角度モータ46内に搭載され、水平面に対するボールエンドミル68の主軸(回転軸)の角度を検出するセンサである。本実施形態においては、ボールエンドミル送り方向を基準とする送り方向(Y軸)周りの角度(送り方向に垂直な平面内における水平方向に対するボールエンドミル68の角度)を検出するものである。すなわち、図3の状態では、角度センサ20が検出する角度は90度であり、後述する角度モータ46の駆動により、角度センサ20が検出する角度は、0度から180度まで変化する。なお、後述する被削材66に対するボールエンドミル68の角度は、角度センサ20が検出する水平面に対するボールエンドミル68の主軸の角度より演算されるボールエンドミル68の主軸の方向と、CAM装置によって生成されるCAMデータが有する被削材66の現在加工中の加工面(被削材66のボールエンドミル68に対向する面)の法線の方向より演算されるものである。したがって、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定された場合は、被削材66の現在加工中の加工面の法線方向を参照することで、角度モータ46の目標角度が演算されるのである。
操作者入力部22は、NC制御装置8の制御開始や制御終了等を指示するためのものであるが、本実施形態では特に、びびり振動が発生した場合に、操作者にびびり振動の発生や原因(低剛性の部分)を入力させる部分を含んでいる(詳細は後述)。なお、X軸センサ12、Y軸センサ14、Z軸センサ16、主軸センサ18、角度センサ20および操作者入力部22の信号はそれぞれ、NC制御装置8に送られる。
また、図2に示すように、NC制御装置8は、NCプログラム解析部24、びびり振動抑制部である角度決定部25、座標変換部27および制御部26を備えている。NCプログラム解析部24は、NCプログラム作成装置6で作成されたNCプログラムを解析し、工作機械装置10を制御するための情報を制御部26へ送るものである。なお本実施形態のNCプログラム解析部24に入力されるNCプログラムは、ボールエンドミル68のボール部の中心位置の軌跡と、ボールエンドミル68の角度指令値の情報を有するプログラムである。また、角度決定部25は、後述する角度決定ルーチンにおいて、NCプログラム解析部24から送られる目標角度を必要に応じて調整し、びびり振動を考慮した被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度を決定するものである。座量変換部27は、被削材66に対するボールエンドミル68の角度が角度決定部25で決定された目標角度となるように、ボールエンドミル68のボール部の中心の軌跡とボールエンドミル68の角度指令値を、各テーブルのX軸位置、Y軸位置、Z軸位置および角度モータ46の角度に変換するものである。また、制御部26は、X軸制御部28、Y軸制御部30、Z軸制御部32、主軸制御部34、および角度制御部36を備えている。
X軸制御部28はX軸モータ38を制御するものであり、テーブル64のX軸位置を、座標変換部27より与えられたX軸位置に一致させるように、X軸センサ12の値を参照して、X軸モータ38を制御するものである。また、Y軸制御部30はY軸モータ40を制御するものであり、テーブル64のY軸位置を、座標変換部27より与えられたY軸位置に一致させるように、Y軸センサ14の値を参照して、Y軸モータ40を制御するものである。
また、Z軸制御部32はZ軸モータ42を制御するものであり、ボールエンドミル68のZ軸位置を、座標変換部27より与えられたZ軸位置に一致させるように、Z軸センサ16の値を参照して、Z軸モータ42を制御するものである。
主軸制御部34は主軸モータ44を制御するものであり、NCプログラム解析部24により与えられた回転速度となるように主軸モータ44を制御するものである。また、角度制御部36は角度モータ46を制御するものであり、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を、座標変換部27で決定された目標角度となるように、角度モータ46を制御するものである。表示部48は操作者に各種表示を行う場合に所定の表示を行うものであり、制御部26により制御されるものである。
また、図3において、工作機械装置10は、本体部であるコラム60と、コラム部60に下方から支持され、Y軸方向へ移動可能な支持テーブル62を備えている。支持テーブル62はコラム60に形成されたレール部で支持され、Y軸モータ40によって回転させられるボールねじ機構によってY軸方向に移動可能とされている。
また、支持テーブル62の上方には、支持テーブル62に形成されたレール部で支持され、X軸方向へ移動可能なテーブル64が設けられている。テーブル64は、水平面と略並行な面(ワーク設置面)を備えており、X軸モータ38によって回転させられるボールねじ機構によってX軸方向に移動可能とされている。テーブル64のワーク設置面には、被削材66(ワーク)が固定されている。
テーブル64の上方には、ボールエンドミル68が配置されており、ボールエンドミル68の刃先は被削材66(テーブル64)と対向しており、ボールエンドミル68の刃先と反対の端部は、チャック70によって支持されている。チャック70はボールエンドミル68と一体的に主軸モータ44によって回転されるものであり、主軸モータ44は主軸支持部72によって支持されている。なお、主軸モータ44内には主軸センサ18が設けられている。
主軸支持部72は、一端をコラム部60の側面に形成されたレール部で支持され、Z軸モータ42によって回転させられるボールねじ機構によってZ軸方向にコラム部60に対して移動可能とされている。また、主軸支持部72は、中間部において2つに分割され、主軸支持部72のコラム部60に支持される側には角度モータ46が設けられている。
角度モータ46は、コラム部60に支持される側の主軸支持部72に配置され、コラム部60に支持される側の主軸支持部72に対して、主軸モータ44を支持する主軸支持部72を相対的に回動可能にするものである。角度モータ46の内部には角度センサ20が設けられている。したがって、角度モータ46を駆動させることにより、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を自由に調整することが可能となるのである。なお、本実施形態では、主軸支持部72をコラム部60に対して回動可能とすることで、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を調整可能な構成としたが、この構成に限られず、ボールエンドミル68の角度を変えずに被削材66の角度をボールエンドミル68の軸線に対して相対的に変える構成としても良い。この構成においては、テーブル64がY軸周りに回動可能な構成を採用することができる。また、本実施形態では、ボールエンドミル68の角度を1つの軸周りに回動させて、ボールエンドミル68の角度を調整可能な構成としたが、本発明はこの構成に限られず、ボールエンドミル68の角度を2つ以上の軸周りにそれぞれ回動させて、ボールエンドミル68の角度を2つ以上の軸周りに調整可能な構成としても良い。また、ボールエンドミル68の角度を変えずに、被削材66を支持するテーブルの角度を、2つ以上の軸周りに回動させて、ボールエンドミル68と被削材66の間の角度を2つ以上の軸周りに調整可能な構成とすることもできる。
次に、本実施形態の作用について説明する。CAD/CAM装置4において、金型等の形状が設計され、この形状に対応するツールパス等のデータがNCプログラム作成装置6に出力される。NCプログラム作成装置6では、入力されたデータに基づきNCプログラムが作成され、作成されたNCプログラムはNC制御装置8に出力される。NC制御装置8では、入力されたNCプログラムをNCプログラム解析部24で解析し、座標変換部27を介して、各モータの目標値(目標位置、目標角度等)を制御部26に出力する。制御部26は各モータの目標値に応じて制御を行い、被削物66のボールエンドミル68による切削が行われる。これにより、所望の形状の金型等を作成することができる。ここで、図2の角度決定部25における制御について説明する。角度決定部25は、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度を決定する角度決定ルーチンより構成されており、角度決定ルーチンについて説明する。図4は角度決定部25で実行される角度決定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
図4において、ステップ100(以下、S100と略称する。以下のステップについても同様とする。)では、操作者の入力があるか否かが判断される。この判断は操作者入力部22の入力信号によって判断される。本実施形態においては、工作機械装置10の作動開始後に、図2の表示部48には「びびり振動が発生した場合、原因を特定して下さい。A:エンドミル側 B:被削材側」と表示されており、操作者はびびり振動が発生した場合は操作者入力部22によりびびり振動発生を入力するとともに、その原因を特定することが可能とされている。切削開始後、未だびびり振動が発生していない場合やびびり振動が発生しても操作者が何も入力していない場合は、S100の判断は否定され、S110に進み、NCプログラム解析部24による角度より演算されるX軸位置、Y軸位置、Z軸位置および角度モータ46の角度を、各制御部の目標値として採用する。なお、びびり振動の原因の特定は、被削材66とボールエンドミル68の構造とびびり振動の発生状況から、振動している部材をびびり振動の原因として特定することができる。
切削開始後、ボールエンドミル68と被削材66の間にびびり振動が発生し、操作者が操作者入力部22を操作することにより入力がなされた場合は、S100の判断は肯定的なものとなり、S120に進む。S120では、操作者によってなされた入力がエンドミルによるびびり振動か否かが判断される。本実施形態におけるびびり振動は、ボールエンドミル68がボールエンドミル68の軸方向に垂直な方向に振動する場合(ボールエンドミル68側の低剛性が原因でびびり振動が発生している場合)、被削材66の加工部が薄板上であって板厚方向(被削材66の法線方向)に振動する場合(被削材66が原因でびびり振動が発生している場合)のいずれかに大別することができる。
操作者は、被削材66側の低剛性が原因でびびり振動が発生していると判断した場合は、操作者入力部22で「B」という入力を行い、この場合は、S120における判断が否定され、S130に進む。S130では、ボールエンドミル68の軸線と被削材66のボールエンドミル68に対向する面の法線の角度が大きくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定される。なお、被削材66のボールエンドミル68に対向する面は、現在ボールエンドミル68が被削材66に対して加工を行っている加工面ということもできる。
S130において上述のように目標角度が決定されるため、被削材66が原因で発生したびびり振動を抑制することができるという効果がある。これを図5を用いて説明する。図5はボールエンドミル68の被削材66に対する角度の変化によって、切削を行うボールエンドミル68の刃先位置の変化を示す図であり、図5の紙面に垂直な方向かつ下向きの方向がボールエンドミル68の送り方向である。一点鎖線はボールエンドミル68の軸線(回転軸)を示し、破線は被削材66のボールエンドミル68に対向する面(現在の加工面)の法線方向を示す。また、図5の被削材66のハッチングで示す部分は、ボールエンドミル68の刃の1回の回転によって切取られる部分を示している。例えば、図5の(b)、すなわち、被削材66に対するボールエンドミル68の角度が70°の場合(α=70°)において、切削時に被削材66の原因によるびびり振動が発生していた状況では、図5(b)に示す矢印方向に薄板状の被削材66が振動している状態と考えられる。この状態において、図5(a)に示すようにα=30°とした場合、びびり振動は抑制されると考えられる。これは以下のように説明することができる。図5(b)の状態では、ボールエンドミル68が1回転してハッチング部分を削るのであるが、ボールエンドミル68の軸線に近い部分を切削する状態のため、ボールエンドミル68が1回転する間の加工角度範囲、すなわちボールエンドミル68が被削材66を加工するために必要な角度の範囲は比較的大きいものと考えられる。一方、図5(a)に示すα=30°の状態では、ボールエンドミル68は、ボールエンドミル68の軸線から離れた部分で被削材66を切削する状態のため、ボールエンドミル68の加工角度範囲は(b)の場合よりも減少し、言い換えれば、ボールエンドミル68の空転角度範囲が大きくなるのである。ボールエンドミル68と被削材66が接触している状態では、被削材66はボールエンドミル68から力を受けるため、被削材66の板厚方向にびびり振動が発生しやすい。そこで、本実施形態では、図5(b)から図5(a)の状態へボールエンドミル68の角度を調整することでびびり振動を抑制するものである。
また、図5(c)および(d)に示すように、α=110°の場合は、α=150°とすることで上述の理由と同じ理由によって被削材66が原因のびびり振動を抑制することができる。つまり、図5(b)あるいは(c)の状態でびびり振動が発生している場合は、それぞれ図5(a)あるいは(d)となるように、すなわちボールエンドミル68の軸線と被削材66のボールエンドミル68に対向する面の法線との角度βが増大するように被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度を決定すれば良い。つまり、図5(b)の状態(α=70°)から図5(a)の状態(α=30°)にαの値を減少させる場合と、図5(c)の状態(α=110°)から図5(d)の状態(α=150°)にαの値を増加させる場合のいずれかの態様となるように、被削材66のボールエンドミル68に対する目標角度が決定される。なお、これは、ボールエンドミル68が被削材66に対して近づく方向に移動するように目標角度を決定すると言うこともできるし、ボールエンドミル68が被削材66に対して倒される方向に移動するよう目標角度を決定すると言うこともできる。なお、被削材66の法線方向とテーブル66の上面(被削材66を支持する面)の法線方向が一致する場合は、上記の「被削材66の法線方向」を「テーブル64の法線方向」と置き換えることができる。
図4のS120において、操作者による入力がエンドミルによるびびり振動である場合は、S120の判断が肯定され、S140に進む。S140では、ボールエンドミル68の軸線と被削材66のボールエンドミル68に対向する面の法線の角度が小さくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定される。
S140において上述のように目標角度が調整されるため、ボールエンドミル68が原因で発生したびびり振動を抑制することができるという効果がある。これを図5を用いて説明する。例えば、図5の(a)の場合(α=30°)において、切削時にボールエンドミル68の原因によるびびり振動が発生していた状況では、図5(a)に示す矢印方向にボールエンドミル68が振動している状態と考えられる。この状態において、図5(b)に示すようにα=70°とした場合、びびり振動は抑制されると考えられる。これは以下のように説明することができる。図5(a)の状態では、被削材66からボールエンドミル68に及ぼされる力は、ボールエンドミル68の軸線に垂直な方向に多く及ぼされ、図5(a)の矢印方向の振動をボールエンドミル68に生じさせやすい。一方、図5(b)の状態では、被削材66からボールエンドミル68に及ぼされる力は、ボールエンドミル68の軸線方向に多く及ぼされるが、ボールエンドミル68は軸線方向には比較的剛性が高いため、びびり振動は発生し難い。したがって、ボールエンドミル68の被削材66に対する角度を、図5(a)の状態から(b)の状態に変更することにより、ボールエンドミル68が原因となるびびり振動を抑制することが可能となる。
また、図5(c)および(d)に示すように、α=150°の場合は、α=110°とすることで上述の理由と同じ理由によってボールエンドミル68が原因のびびり振動を抑制することができる。つまり、図5(a)あるいは(d)の状態でびびり振動が発生している場合は、それぞれ図5(b)あるいは(c)となるように、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線との角度βが減少するように被削材66に対するボールエンドミル68の角度を決定すれば良い。つまり、図5(a)の状態(α=30°)から図5(b)の状態(α=70°)にαの値を増加させる場合と、図5(d)の状態(α=150°)から図5(c)の状態(α=110°)にαの値を減少させる場合のいずれかの態様となるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定される。このことは、ボールエンドミル68が被削材66に対して離れる方向に移動するように目標角度を決定すると言うこともできるし、ボールエンドミル68が被削材66に対して立つ方向に移動するように目標角度を決定すると言うこともできる。なお、被削材66の法線方向とテーブル66の上面(被削材66を支持する面)の法線方向が一致する場合は、上記の「被削材66の法線方向」を「テーブル64の法線方向」と置き換えることができる。
S110、S130およびS140の処理が終わった後、S150では、被削材66とボールエンドミル68等の干渉チェックが行われる。これは、S110、S130およびS140でそれぞれ決定された目標角度でボールエンドミル68の位置および角度を制御した場合に、ボールエンドミル68と被削材66が切削部以外の部分で接触するか否かをチェックするものである。このチェックはボールエンドミル68の形状、位置、角度等の情報と、被削材66の素材形状/加工形状等のデータを参照することにより行われるものである。S150において、被削材66とボールエンドミル68の干渉が発生しない場合は、S110、S130およびS140でそれぞれ決定された目標角度がそのまま目標角度として採用される。一方、S150で被削材66とボールエンドミル68の干渉が発生する判断された場合は、目標角度は、被削材66とボールエンドミル68が干渉しない範囲に制限される。S150の処理が終わると本ルーチンを終了する。
したがって、本発明の第1の実施形態においては、図4における角度決定ルーチンにおいて、びびり振動が発生した場合でも、びびり振動を抑制する角度にボールエンドミル68の被削材66に対する角度が設定されるため、びびり振動を効果的に抑制することができる。また、びびり振動が発生した場合にのみ、ボールエンドミル68の被削材66に対する角度が調整される構成とされているため、切削効率の低下を最小限に抑えつつ、びびり振動の発生を抑制することができる。また、操作者により、びびり振動の原因が特定され、特定された原因に基づいて、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定されるため、効果的にびびり振動を抑制することができる。また、被削材66が原因のびびり振動が発生している場合に、ボールエンドミル68の軸線と被削材66のボールエンドミル68に対向する面の法線の角度が大きくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定されるため、良好に被削材66が原因のびびり振動を抑制することができる。また、ボールエンドミル68が原因のびびり振動が発生している場合に、ボールエンドミル68の軸線と被削材66のボールエンドミル68に対向する面の法線の角度が小さくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定されるため、ボールエンドミル68が原因のびびり振動を良好に抑制することができる。
なお、本実施形態では、S150において、ボールエンドミル68と被削材66の干渉チェックを行い、両者が干渉しない範囲で目標角度が決定されることとされていたが、S150における判断に加え、あるいはS150の判断に代えて、ボールエンドミル68の断面直線部分(側面部分)が被削材66の切削面に影響を与えるか否かを判断して、影響を与える場合は影響を与えない範囲に目標角度を制限することとしても良い。ボールエンドミル68は図5の各図に示すように、先端部が球形状であり、球形状部分とこれに続く円筒形状部分により構成されるものであるが、図5(d)に示すように、αの値が大きく(あるいは小さく)なると断面円弧形状に続く断面直線部分が被削材66の切削面に影響を与えることがある。ボールエンドミル68の断面直線部分が被削材66の切削面に影響を与える場合は、被削材66の切削形状がCAD/CAM装置4により設計された形状と異なる場合がある。この影響を排除するために、S150に加え、あるいはS150に代えて、上記の制御を行うようにすることも可能である。
なお、S130およびS140における角度の調整量は適宜決めることができるものであり、例えば、調整量を一定値としたり、操作者の選択によって、びびり振動の程度が大きい場合はびびり振動の程度が小さい場合よりも調整量を大きくしても良いし、操作者の経験によって定められるものであっても良い。また、上述の第1の実施形態および後述の各実施形態においては、角度決定ルーチンにおいて、すべての被削材66に対するボールエンドミル68の角度について、角度調整を行って、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度を決定するものとして説明されるが、次のような態様とすることもできる。すなわち、角度決定ルーチンにおいて、びびり振動が発生しないような被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が決定された場合は、びびり振動が再び発生するまでは、決定された目標角度を被削材66に対するボールエンドミル68の角度として継続して採用する。びびり振動が発生しないような目標角度を決定した場合は、びびり振動が発生しない限り、目標角度を変更する必要が無いからである。このようにすることにより、びびり振動が発生していない場合に、NCプログラム解析部24の出力する目標角度を採用することにより、びびり振動が発生してしまうという事態を回避することが可能となる。なお、本実施形態のS130およびS140のうちの少なくとも1つが請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態においては、びびり振動が発生したことを操作者が判断するものとされていたが、第2の実施形態では、びびり振動が発生したことをNC制御装置が自動的に判断してびびり振動を抑制するものとされている。なお、第2の実施形態においては、第1の実施の形態とは異なる部分について詳細に説明し、第1の実施形態と同じ部分については説明を省略する。
第2の実施形態を図6および図7を用いて説明する。図6は第2実施形態のボールエンドミル加工システム2のNC制御装置74を説明するための概略図であり、図7は工作機械装置76の全体斜視図である。図6および図7において、工作機械装置76は、X軸方向加速度センサ80およびY軸加速度センサ82を備えている。図7に示すように、X軸方向加速度センサ80は、工作機械装置76の主軸支持部72に固定されるものであり、回転主軸を工具側で支えるベアリングに近い位置に固定されることが望ましい。また、Y軸方向加速度センサ82は、主軸支持部72に固定されるものであり、回転主軸を工具側で支えるベアリングに近い位置に固定されることが望ましい。X軸方向加速度センサ80は、主軸支持部72に発生した振動のX軸方向(紙面に平行な方向)の成分を検出するものであり、Y軸方向加速度センサ82は、主軸支持部72に発生した振動のY軸方向の成分を検出するものである。
また、図6に示すように、NC制御装置74の制御部78は、びびり振動検出部84を備えている。びびり振動検出部84は、X軸方向加速度センサ80とY軸方向加速度センサ82の各加速度値より工作機械装置78のびびり振動を検出するものである。びびり振動検出部84は、X軸方向加速度センサ80とY軸方向加速度センサ82の両方の加速度の周波数分析結果を勘案し、いずれか一方の加速度または変位に換算された値(絶対値)の最大値がが一定値を超え、あるいはその最大値に対応する周波数が主軸回転数の整数倍に一致しない場合に、工作機械装置78にびびり振動が発生したと判断するものである。また、びびり振動検出部84は、工作機械装置78に発生しているびびり振動について、被削材66が原因のびびり振動であるか、ボールエンドミル68が原因のびびり振動であるかを判断することもできる。当該判断は以下のようにして行う。びびり振動と判断される周波数成分の前記X軸方向加速度とY軸方向加速度、またはそれぞれから求まるX軸方向変位とY軸方向変位との間に位相の差が所定値以上発生している場合は、ボールエンドミル68側が原因のびびり振動であると判断し、位相の差が所定値未満である場合は、被削材66側が原因のびびり振動であると判断する。被削材66は通常、一方向に剛性が弱く、当該方向に被削材66が振動するびびり振動が発生した場合は、X軸振動とY軸振動の位相差は少ないと考えられるからである。なお、本実施形態では、びびり振動をX軸加速度センサ80およびY軸加速度センサ82によって検出するものとしたが、この構成に限られず、工作機械装置78にひずみゲージを貼り付けて検出しても良いし、ボールエンドミル68あるいは被削材66のびびり振動による変位をギャップセンサ(変位センサ)によって直接検出しても良い。また、角度決定部85は、びびり振動検出部84の検出結果に基づき、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度を決定するものである。
第2の実施形態においては、角度決定部85の角度決定ルーチン部は図8に示すフローチャートに従い、実行される。図8のS200において、びびり振動が発生しているか否かが判断される。工作機械装置78に発生するびびり振動は、びびり振動検出部84によって検出される。びびり振動検出部84によってびびり振動が検出されていない場合は、S200の判断が否定され、S210に進み、目標角度が決定される。一方、びびり振動検出部84によってびびり振動が検出されている場合は、S200における判断が肯定され、S220に進み、検出されているびびり振動がボールエンドミル68側が原因の振動か否かが判断される。検出されているびびり振動がボールエンドミル68側が原因の振動か否かは、びびり振動検出部84の検出結果によって判断されるものである。
S220において、びびり振動がボールエンドミル68側が原因の振動でない場合は、S220における判断が否定され、S230に進み、目標角度が決定される。一方、S220において、びびり振動がボールエンドミル68側が原因の振動である場合は、S220における判断が肯定され、S240に進み、目標角度が決定される。
したがって、第2の実施形態のボールエンドミル加工システム2においては、被削材66に対するボールエンドミル68の角度が、びびり振動を抑制する角度に調整されるため、びびり振動を抑制することができる。また、本第2実施形態においては、びびり振動検出部84がボールエンドミル68側が原因のびびり振動なのか、被削材66側が原因のびびり振動なのかを特定することが可能な構成とされているため、操作者がびびり振動の原因を特定することなく、びびり振動を良好に抑制することができる。なお、S230およびS240における角度の調整量は適宜決めることができるものであり、例えば、調整量を一定値としたり、びびり振動検出部84により、びびり振動の程度が大きいと検出された場合はびびり振動の程度が小さいと検出された場合よりも調整量を大きくしても良いし、操作者の経験や過去の学習によって定められるものであっても良い。なお、本実施形態のS220が請求の範囲のびびり振動検出部の一態様であり、S230およびS240のうちの少なくとも1つが請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は図6および図7を採用し、第2の実施形態と同様に角度決定部85を備えるが、本実施形態の角度決定部85は、被削材66に対するボールエンドミル68の現在の切削方向がダウンカット方向であるのか、アップカット方向であるのかを判断することが可能なものとされている。ここで、切削方向のアップカット方向とダウンカット方向について図9を参照して説明する。図9(a)はY軸方向から見たボールエンドミル68と被削材66の切削部を拡大した断面図であり、図9(b)は(a)のA−A線における断面図を示している。なお、図9(a)において、ボールエンドミル68の切削送り方向はY軸と平行な方向、すなわち紙面に垂直かつ下向きの方向である。
図9(a)において、ボールエンドミル68はZ軸周りに回転しており、その回転方向は、ボールエンドミル68の上方(Z軸上方)から見て時計回り方向である場合、図9(b)のダウンカット方向で示す方向にボールエンドミル68は被削材66を切削する。ボールエンドミル68の回転方向が上記と逆、すなわちボールエンドミル68の上方から見て反時計回り方向である場合は、ボールエンドミル68の切削送り方向が上記と同じである場合は、図9(b)のアップカット方向で示す方向にボールエンドミル68は被削材66を切削する。また、図9(a)はα=30°の場合であるが、例えば、図5(d)に示すように、αが150°になった場合は、ボールエンドミル68が時計回りに回転している状態でも、ボールエンドミル68は被削材66をアップカット方向に切削することになる。これらの考察より、切削状態がダウンカット方向の切削であるか、アップカット方向への切削であるかは、ボールエンドミル68の切削送り方向、ボールエンドミル68の回転方向および、ボールエンドミル68と被削材66の角度で求めることができるのである。
本出願の発明者らの実験結果および解析結果より、被削材66の板厚方向の剛性が弱い場合、ボールエンドミル68が被削材66をダウンカット方向に切削している状態は、アップカット方向に切削している状態よりもびびり振動が発生しやすいことが分かっている。したがって、、被削材66に板厚方向のびびり振動が発生している場合、ボールエンドミル68をアップカット方向に切削している状態とすることで、びびり振動を抑制できると考えられる。
図10に示すように、第3実施形態の角度決定ルーチンを示すフローチャートでは、S320において、被削材66側(の低剛性)が原因のびびり振動が発生しているか否かが判断される。S320で否定判断がなされた場合、すなわち、びびり振動の原因がボールエンドミル68側にあると判断された場合は、S330に進み、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が小さくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の角度が調整される。一方、S320において、肯定判断された場合はS340に進み、現在の切削の状態が、アップカット状態であるか否かが判断される。S340において否定判断がなされた場合、すなわち、切削の状態が、ボールエンドミル68が被削材66をダウンカット方向に切削している状態の場合は、S350に進み、ボールエンドミル68が被削材66をアップカット方向に切削する状態となるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が設定される。例えば、図5(a)の状態(α=30°)から図5(d)の状態(α=150°)にαの値を調整したり、図5(b)の状態(α=70°)から図5(c)の状態(α=110°)にαの値を調整することが考えられる。一方、S340において肯定判断がなされた場合、すなわち、ボールエンドミル68が被削材66をアップカット方向へ切削している状態の場合は、S360に進み、アップカットの程度が大きくなるように、被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度が設定される。ここで、アップカットの程度について図5を用いて説明する。本実施形態では、切削の状態がアップカットの状態であって、図5(c)の状態(α=110°)から図5(d)の状態(α=150°)になることを、アップカットの程度が大きくなると定義している。図5(c)および図5(d)に示すように、アップカットの程度が大きい場合は、小さい場合よりも、ボールエンドミル68の回転角度範囲に対する加工角度範囲は小さくなり、ボールエンドミル68の空転角度範囲が大きくなるため、アップカットの程度を大きくすることで、びびり振動を抑制することができるのである。
したがって、第3実施形態においては、びびり振動の原因を特定し、被削材66側に原因がある場合に、切削の状態をアップカットの状態となるように被削材66に対するボールエンドミル68の角度が調整されるため、良好にびびり振動の発生を抑制することができる。また、切削の状態がアップカットの状態の場合に、アップカットの程度が大きくなるように被削材66に対するボールエンドミル68の角度が調整されるため、良好にびびり振動の発生を抑制することが可能となる。なお、上述したように、被削材66側が原因(被削材66の法線方向に振動する場合)のびびり振動は、ボールエンドミル68の切削方向をアップカット方向とすることで良好に抑制されることが実験結果および解析結果より分かっているが、理論的にも以下のように説明することができる。すなわち、ボールエンドミル68が被削材66をアップカットの状態で切削している場合、ボールエンドミル68から被削材66に及ぼされる主分力は、被削材66の板厚方向の成分(主分力板厚方向成分)を有しており、当該主分力板厚方向成分の向きは、被削材66からボールエンドミル68に向かう方向である。また、アップカット切削に伴う背分力は板厚方向の成分(背分力板厚方向成分)を有しており、背分力板厚方向成分の向きは、ボールエンドミル68から被削材66に向かう向きである。したがって、切削時には、主分力と背分力とが合成された力がボールエンドミル68から被削材66に及ぼされるが、切削の状態がアップカットの状態の場合は、主分力板厚方向成分と背分力板厚方向成分の向きが逆向きのため、両者は打ち消され、板厚方向に及ぼされる力は小さいものとなる。一方、切削の状態がダウンカットの状態の場合は、主分力板厚方向成分と背分力板厚方向成分は同じ方向(ボールエンドミル68から被削材66に向かう方向)となり、主分力と背分力が合成されることにより、板厚方向に及ぼされる力は大きいものとなる。したがって、切削の状態がアップカットの場合はダウンカットの場合よりも、板厚方向のびびり振動を良好に抑制することが可能となるのである。なお、本実施形態のS320と、S330、S340、S350およびS360のうちの少なくとも1つが請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。なお、本実施形態では、NC制御装置8にびびり振動検出部84が含まれる態様について説明したが、CAD/CAM装置4にびびり振動検出部84が含まれる態様においても、同様にびびり振動が抑制されたボールエンドミル加工を行うことが可能である。すなわち、CAD/CAM装置4でデータを生成する際に、切削の状態を判断し、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を上記と同じ状態として、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢を決定することができるのである。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4実施形態は、加工プロセスの平均的なゲインを用いてびびり振動が発生しない目標角度を求めるものである。第4実施形態の工作機械装置は図7に、NC制御装置は図6に示すものを用いる。まず、図11に、びびり振動を伴うボールエンドミル加工システムのブロック図を示す。ここで、Pxx、Pyx、Pyy、・・・・はボールエンドミル68による加工のプロセスゲインである。
例えば、びびり振動が1方向であって、その方向が推定可能な場合(被削材66や主軸頭などの固定部が低剛性と特定される場合等)その方向のプロセスゲインが小さくなるように、被削材66に対するボールエンドミル86の目標角度を決定する。びびり振動の方向がx方向の場合、平均プロセスゲインPxxは以下のように表される。
Pxx=fxavr/Δx ・・・(1)
ここで、Δxは、x方向への微小変位であり、fxavrは、微小変位Δxが生じると仮定した際に増加する切削力のx方向成分を、ボールエンドミル86の1回転にわたって平均した値である。したがって、(1)式で表される平均プロセスゲインPxxが小さくなるような被削材66に対するボールエンドミル86の目標角度を決定することで、不安定なびびり振動が平均的に見て成長し難くなり、x方向へのびびり振動を良好に低減することが可能となる。
第4の実施形態の角度決定ルーチンをを図12のフローチャートを用いて説明する。図12のS400において、びびり振動が発生しているか否かが判断される。びびり振動が発生しているが否かは、びびり振動検出部84により判断しても良い。びびり振動が発生していない場合はS400における判断が否定され、S410で目標角度が決定される。びびり振動が発生している場合はS400における判断が肯定され、S420に進む。
S420では、平均プロセスゲインPxxを小さくするように被削材66に対するボールエンドミル86の角度が調整される。(1)式に含まれるfxavrは、ボールエンドミル86の角度を変化させることにより変化する値であるため、fxavrを小さく(最小に)するような目標角度が演算される。
したがって、本発明の第4の実施形態によれば、びびり振動が発生し難い角度で切削加工を行うことができるため、良好にびびり振動の発生を抑制することができる。なお、びびり振動が2方向の場合(ボールエンドミル86やローターなどの回転部が低剛性と特定される場合)、その2方向に関わる平均プロセスゲイン行列の固有値λの逆数1/λ=λ’re+iλ’imから計算される値:−(λ’re/2)・{1+(λ’im/λ’re)2}が大きくなるように、ボールエンドミル86の目標角度を決定することもできる。平均プロセスゲイン行列は、2方向のうちの各1方向に微小変位が生じると仮定した際に増加する切削力の2方向の成分を、工具の1回転にわたってそれぞれ平均し、仮定した各微小変位量で割って求まる行列である。この構成によっても、図11に示される閉ループのゲイン余裕が大きくなるため、加工システムの安定性が向上し、良好にびびり振動を低減することのできる被削材66に対するボールエンドミル86の目標角度を決定することができる。なお、本実施形態のS420が請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。また、本実施形態では、NC制御装置8にびびり振動検出部84が含まれる態様について説明したが、CAD/CAM装置4にびびり振動検出部84が含まれる態様においても、同様にびびり振動が抑制されたボールエンドミル加工を行うことが可能である。すなわち、CAD/CAM装置4でデータを生成する際に、平均プロセスゲインを小さくするように、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を調整し、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢を決定することができるのである。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、機械加工装置76にびびり振動が発生した場合に、ボールエンドミル68の被削材66に対する角度を任意の方向に傾けてやり、その結果びびり振動が収まったか、発生し続けているかでボールエンドミル68の傾ける方向を決定するものである。なお、第5実施形態の工作機械装置は図7に、NC制御装置は図6に示すものを用いる。
第5の実施形態の角度決定ルーチンを図13のフローチャートを用いて説明する。図13のS500において、びびり振動が発生しているか否かが判断される。びびり振動が発生していない場合はS500における判断が否定され、S510でNCプログラム解析部24による角度が目標角度として決定される。また、びびり振動が発生している場合はS500における判断が肯定され、S520でボールエンドミル68の被削材66に対する角度が、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなるように制御部26に指令が出され、指令された値に基づき角度モータ46が駆動される。その後、S530において、角度モータ46が駆動された後においてもびびり振動が発生しているか否かが判断される。
角度モータ46が駆動されてびびり振動が収まった場合は、S530における判断が否定され、S540に進み、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなる角度が目標角度として採用される。S530にて否定されたことによって、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなる角度を目標角度とすることがびびり振動を抑制するのに有効であると考えられるためである。また、角度モータ46が駆動された後でもびびり振動が収まらない(発生し続ける)場合は、S530における判断が肯定され、S550において、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が小さくなる角度が目標角度として採用される。S530にて肯定されたことによって、ボールエンドミル68と被削材66の法線の角度が小さくなる角度を目標角度とすることが、びびり振動を抑制するのに有効であると考えられるためである。
したがって、本発明の第5の実施形態においては、びびり振動が発生した後に、角度モータ46を駆動して角度を調整し、角度調整によるびびり振動への影響を実際に確認した後に目標角度を決定するため、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、S520では、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなるように角度モータ46の角度を調整したが、この構成に限られず、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が小さくなるように角度モータ46の角度を調整しても良い。このようにした場合には、S540とS550の処理を入れ替えることにより、第5実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、S520は、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなるように調整するものであるが、どの程度(大きさ)の角度を調整するかという点については、実験的に最適な値(例えば10°)を予め求めておいても良いし、びびり振動が抑制されるか否かを判断するのに必要十分な値を予測して採用することとしても良い。なお、本実施形態のS540およびS550のうちの少なくとも1つが請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態はびびり振動が発生していない状態における角度モータ46の角度を記憶しておき、びびり振動が発生した場合に記憶された角度を目標角度として採用するものである。なお、第6実施形態の工作機械装置は図7に、NC制御装置は図6に示すものを用いる。
第6の実施形態の角度決定ルーチンを図14のフローチャートを用いて説明する。図14のS600において、工作機械装置76にびびり振動が発生しているか否かが判断される。びびり振動が発生していない場合はS600における判断が否定され、S610に進み、びびり振動が発生していない状態の角度モータ46の角度(ボールエンドミル86の姿勢)およびその箇所の切削条件が制御部78の記憶領域に記憶される。その後S620に進み、NCプログラム解析部24による角度を目標角度として採用する。また、びびり振動が発生している場合はS600における判断が肯定され、S630に進み、制御部78の記憶領域に記憶された角度モータ46の角度を目標角度として採用する。記憶された角度モータ46の角度は、びびり振動が発生していない状態の時の角度モータ46の角度のため、びびり振動を抑制させるための目標角度として採用できると考えられるからである。
したがって、本発明の第6の実施形態では、過去にびびり振動が発生していない角度モータ46の角度をびびり振動が発生した場合の目標角度として採用する構成のため、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、上述の実施形態では、びびり振動が発生していない状態のボールエンドミル68の角度モータ46の角度等を記憶するものであったが、びびり振動が発生している状態のボールエンドミル68の角度等を記憶することとしても良い。同じ加工を繰り返す量産可能の場合や、低剛性の工具を利用して別の加工を行う場合には、過去の学習結果を参照し、可能な姿勢の範囲内で、びびり振動が発生しなかった姿勢に近い姿勢を選んでツールパスまたはNCプログラムを作成する、あるいはNC制御を行うことで、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、記憶された角度モータ46の角度値やボールエンドミル68の姿勢が複数ある場合は、その内の少なくとも1つを目標角度として採用すれば良く、採用にあたっては、現在の角度モータ46の角度から最も近い(差が小さい)角度を目標角度として採用しても良い。この場合は角度モータ46が速やかに目標角度となるように駆動されるため、びびり振動を速やかに抑制することができるという効果が予測される。また、切削条件(切込み、ピックフィード、切削送り方向等)が最も近い条件における工具姿勢を採用しても良いし、複数のデータを平均する、内挿するなどしても良い。また、びびり振動が発生した姿勢も利用し、それらの姿勢から遠い姿勢であることも評価関数に加えて姿勢の最適化を行っても良い。さらに、CAM装置で本学習結果を利用する場合には、びびり振動が発生しなかった条件の中で、望ましい切削条件を選び、その切削条件と工具姿勢を保持して加工形状の各部を加工するようにツールパスを作成しても良い。これらの手法により、学習結果に近い条件を選ぶ場合には、びびり振動を抑制することができるという効果が予測され、学習結果と同じ条件と選ぶことができる場合は、確実にびびり振動を抑制することができるという効果が予想される。また、上述の実施形態においては、びびり振動が発生していない状態の角度モータ46の角度を記憶し、びびり振動が発生した場合は記憶された角度を角度モータ46の目標制御値としたが、この構成に限られるものではない。例えば、びびり振動が発生していない状態の角度モータ46の角度を参照し、角度モータ46の角度に基づく方向と、被削材66の現在加工中の面の法線の方向より、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)を演算してこれを記憶し、びびり振動が発生した場合は、記憶された被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢(角度)より、目標となる被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢(目標角度)を求めることとしても良い。なお、本実施形態のS610およびS630が請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。上述の第1乃至第6の実施形態においては、工作機械装置10で一度切削加工を行ってからびびり振動が発生した場合に、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を所定の目標角度とすることでびびり振動を抑制するものであったが、後述する実施形態においては、CAM装置で工具姿勢等のデータを作成する段階で、びびり振動が起こりにくい工具姿勢を設定し、びびり振動の発生を未然に防止する、あるいはびびり振動が発生したとしてもすぐにびびり振動が収まるようにする工具姿勢等のデータ(被削材66に対するボールエンドミル68の角度、ツールパス等)を作成するものである。
図15は、本発明が適用された第7の実施形態の全体構成の概略を示す図であり、図16は第7の実施形態のNC制御装置90と工作機械装置92の概略を示すものである。図15に示すように、第7の実施形態のボールエンドミル加工システム86は、CAD/CAM装置87、NCプログラム作成装置88、NC制御装置90および工作機械92より構成されている。CAD/CAM装置4は、部品設計や金型設計等を行うCAD機能部と、これらの3Dデータ等より工具姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度等)ツールパス(工具軌跡)等のNCデータを決定するCAM機能部より構成されている。また、CAD/CAM装置87は、角度決定部94、入力部96および表示部98を備えている。NCプログラム作成装置88は、CAD/CAM装置4で決定されたツールパス等のNCデータから、NCプログラム制御装置90を制御するためのNCプログラムを作成するものであり、ポストプロセッサとよばれるものである。なお、本実施形態の工作機械装置92の構成は、図3に示す第1の実施形態の工作機械装置10と同じであるため、図示および説明を省略する。
角度決定部94は、後述するフローチャートを実行する部分であり、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)を決定するものである。なお、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢は、被削材66に対するボールエンドミル68の角度で表すことができ、被削材66の現在加工中の加工面(ボールエンドミル68に対向している被削材66の面)の法線方向が分かっているため、NCプログラム制御装置90においては、演算により角度モータ46の角度を算出することができるのである。なお、本実施形態および後述の実施形態においては、角度決定部94で行われる角度決定方法について詳説するが、各実施形態における角度決定方法は、被削材66に対するボールエンドミル68の姿勢(工具姿勢)を決定しているものであるため、工具姿勢決定方法と言うこともできる。入力部96は、表示部98の表示内容に応じて操作者が入力を行うためのものである。本実施形態においては、表示部98には、「びびり振動の危険性がある場合、低剛性部分を特定(予測)してください。A:エンドミル側、B:被削材側、C:不明」と表示されるようになっており、操作者は、びびり振動の原因を特定(予測)した場合は、AかBを入力し、びびり振動の原因が特定できない場合は、Cを入力する。
なお、びびり振動の原因の特定(予測)は操作者によって行われるものであるが、ボールエンドミル68と被削材66(加工品)の形状の組合せから総合的に判断しても良いし、ボールエンドミル68と被削材66(加工品)の形状の組合せと過去の経験を勘案して判断しても良い。また、びびり振動の原因の特定は、ボールエンドミル68の形状を勘案して行うことが可能である。例えば、ボールエンドミル68が、ボールエンドミル68の回転軸に直交する方向の剛性が低い場合、ボールエンドミル68がびびり振動の原因であると判断することができる。また同様に、びびり振動の原因の特定は、被削材66の形状を勘案して行うことができ、例えば、被削材66の板厚が薄い場合や加工品の形状が薄板状の場合は、被削材66がびびり振動の原因であると判断することができる。
次に、図17を用いて、第7の実施形態のCAD/CAM装置87の角度決定部94について説明する。図17は角度決定部94の角度決定方法を説明するためのフローチャートである。なお本フローチャートは、CAD/CAM装置87がデータを作成する前に行われるものであり、CAD/CAM装置87が生成する工具姿勢すべてについて行われるものである。S700において、角度決定部94により表示部98には「びびり振動の危険性がある場合、低剛性部分を特定(予測)してください。A:エンドミル側、B:被削材側、C:不明」と表示される。次に、S710に進み、操作者による入力が行われたか否かが判断される。操作者による入力がない場合はS710における判断が否定され、S700に戻り、表示部98には引き続き表示が行われる。操作者によって何らかの入力がなされた場合は、S710における判断が肯定され、S720に進み、操作者にびびり振動の原因が特定されたか否かの判断が行われる。
操作者によって「C」が入力された場合、すなわち操作者がびびり振動の原因を特定しなかった場合はS730に進み、CADデータ、切削条件等より工具姿勢が決定される。また、操作者によってびびり振動の原因が特定された場合、すなわち操作者によってAまたはBが入力された場合は、S720における判断が肯定され、S740に進む。S740では、操作者によって、ボールエンドミル68側がびびり振動の原因として特定されたか否かが判断される。操作者によって、びびり振動の原因が被削材66にあると判断され、そのように入力された場合は、S740の判断が否定され、S750に進み、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を、ボールエンドミル68の軸線と被削材66の法線の角度が大きくなるような角度に調整し、調整された角度に基づいて工具姿勢を決定する。これにより、第1の実施形態で述べた理由と同じ理由によって、工作機械装置92にびびり振動が発生しない工具姿勢を決定することができる。また、操作者によって、びびり振動の原因がボールエンドミル68にあると判断され、そのように入力された場合は、S740における判断が肯定され、S760に進み、被削材66に対するボールエンドミル68の角度を、ボールエンドミル68と被削材66の法線の角度が小さくなるような角度に調整し、調整された角度に基づいて工具姿勢を決定する。これにより、第1の実施形態で述べた理由と同じ理由によって、工作機械装置92にびびり振動が発生しない工具姿勢を決定することができる。
S730、S750およびS760の各ステップで工具姿勢が決定された後、S770において、工具姿勢における被削材66とボールエンドミル68の干渉がチェックされ、最終的な工具姿勢が決定される。その後、CAD/CAM装置87で決定されたデータに基づいてNCプログラム作成装置88によりNCプログラムが作成され、作成されたNCプログラムがNC制御装置90に入力され、所定の条件により、工作機械装置92において、ボールエンドミル加工が行われる。
以上説明したように、本発明の第7の実施形態においては、CAD/CAM装置で生成される工具姿勢に関するデータであって、NCプログラムを作成するときに用いられる工具姿勢が、びびり振動が発生し難い角度とされるため、びびり振動の発生を抑制することができる。なお、本実施形態では、S770において、被削材66とボールエンドミル68の干渉チェックを行っているが、当該干渉チェックは必ずしもCAD/CAM装置87で行う必要はなく、干渉チェックをNC制御装置90によって行うこととしても良い。なお、本実施形態のS750およびS760のうちの少なくとも1つが請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、予め被削材66あるいはボールエンドミル68の伝達関数や被削材66の比切削抵抗を測定しておき、これらの測定結果に基づき、びびり振動が発生する可能性が少ない工具姿勢で切削を行うものである。なお、第8実施形態のボールエンドミル加工システム86、NC制御装置90および工作機械装置92は第7の実施形態と同じ構成のため説明を省略する。
図15において、本実施形態では、CAD/CAM装置87の角度決定部94には、10種類の被削材に対する比切削抵抗が記憶されており、これらは近似的に工具形状に依存しないものとして扱っても良く、それぞれの特定の工具形状に対するものとして扱ってもよく、せん断強さや摩擦係数のような材料特性として記憶しておき、その都度解析的に予測するものであっても良い。また、伝達関数についても、ボールエンドミル68と被削材66のそれぞれについて、例えば5種類ずつ記憶されている。表示部98には、上記10種類の比切削抵抗と5種類ずつの伝達関数がそれぞれ表示されるようになっている。また、操作者は、入力部96に所定の操作、例えば、「1」という番号の比切削抵抗と「A」という番号の低剛性部伝達関数を選ぶことで、低剛性の方向(複数でも良い)におけるボールエンドミル加工のプロセスゲインを算出することができる。なお、ボールエンドミル68と被削材66のいずれかの動剛性の方が低いか明確でない場合、または両方ともに影響があると思われる場合には、両方を入力し、両方を足し合わせたループ伝達関数として扱い得るシステムとしても良い。
次に、図18を用いて、第8の実施形態の角度決定部94の角度決定方法について説明する。なお本フローチャートは、CAD/CAM装置87が工具姿勢等のデータを作成する前に行われるものであり、すべての工具姿勢のデータについて行われるものである。
S800において、角度決定部94によって表示部98には「比切削抵抗と低剛性部伝達関数の組合せを番号で特定してください。特定できない場合は0を押してください。」と表示され、それぞれが10種類表示される。なお、表示部98は、比切削抵抗と低剛性部伝達関数を10種類同時に表示できる場合はそのようにし、10種類ずつ同時に表示できない場合は、表示できるものを表示し、表示の変更を促すメッセージを操作者に表示するようにしても良い。その後S810において、操作者より何らかの入力操作があったか否かが判断される。操作者より入力操作がない場合はS800に戻り、何らかの入力操作があった場合は、S820に進む。
S820においては、操作者により比切削抵抗と低剛性部伝達関数が特定されたか否かが判断される。操作者はS800による表示に基づいて、10種類ずつの中から今回切削に使用する被削材66とボールエンドミル68の組合せに最も近い比切削抵抗と低剛性部伝達関数を選択し、対応する番号を入力するか、10種類ずつの選択肢の中に近いものがないと判断する場合は「0」を入力する操作を行う。操作者により「0」が入力された場合はS820における判断が否定され、S830に進み、従来の手法等によって演算された目標角度を工具姿勢として決定する。また、操作者によって10種類ずつ選択肢の中から比切削抵抗と低剛性部伝達関数が選択され、該当する番号が入力された場合はS820における判断が肯定され、S840に進む。
S840では、操作者によって特定された組合せに対応する伝達関数および比切削抵抗が角度決定部94の記憶領域から読み出され、読み出された伝達関数および比切削抵抗を用いてびびり振動安定限界解析が行われ、仕上げ面粗さや使用する工具形状等の制約条件の基で、安定限界が高くなる工具姿勢や切削送り方向、回転速度等を探索すると同時に、その安定限界(切込み量、ピックフィード量等)が求められる。その後、所定の安全率を乗じた切込み量やピックフィード、適切な工具姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)や切削送り方向、回転速度等の条件下でツールパスが算出される。
したがって、本発明の第8の実施形態においては、工具姿勢等をびびり振動が発生しない条件とすることができ、さらにその他の加工条件を限界近くに設定することができるため、びびり振動を良好に抑制するとともに、高能率加工を実現することができる。なお、本実施形態においては、比切削抵抗と低剛性部伝達関数を特定してびびり振動解析を行う構成としたが、この構成に限られず、今回の切削に用いられるボールエンドミルと被削材の伝達関数と比切削抵抗を測定し、測定された値を用いてびびり振動解析を行うこととしても良い。なお、本実施形態のS840が請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。第9の実施形態は、被削材66の加工途中の3次元形状データを利用して、有限要素法による振動解析をおこなって、その加工時点においてびびり振動が発生し易い方向と大よその伝達関数値(動剛性)を予測し、これに基づく安定限界解析と行うことで、安定限界が高くなる工具姿勢や切削送り方向、回転速度等を探索すると同時に、その安定限界(切込み量、ピックフィード等)を求めるものである。その後、所定の安全率を乗じた切込み量やピックフィード、適切な工具姿勢や切削送り方向、回転速度等の条件下でツールパスが算出される。なお、第9実施形態のボールエンドミル加工システム86、NC制御装置90および工作機械装置92は第7の実施形態と同じ構成のため説明を省略する。
図15において、本実施形態では、CAD/CAM装置87の角度決定部94には、有限要素法解析を行う機能(ソフトウェア)が備えられており、角度決定部94における角度決定方法は図19のフローチャートに示すとおりである。なお、本フローチャートは、CAD/CAM装置87が工具姿勢等のデータを生成する前に行われるものであり、すべての工具姿勢について行われるものである。
図19のS900では、角度決定部94に送られる被削材66の加工後の3次元データや切削条件が有限要素法により解析される。その後S910においては、解析結果に基づいてびびり振動限界が求められ、びびり振動限界に達しない工具姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)が決定される。したがって、本発明の第9の実施形態においては、有限要素法解析によってびびり振動が発生しない工具姿勢(目標角度)を求めることができるため、びびり振動の発生を良好に抑制することができる。なお、本実施形態では、被削材66の加工後の3次元データを用いて解析を行ったが、この構成に限られず、例えば、予め10種類の被削材の加工後の3次元データを用いた有限要素法解析の解析結果を角度検出部94に記憶させておき、被削材66のNCプログラムを作成する段階で、操作者に10種類の中から被削材66の加工後の形状に近いものを操作者に選択させ、選択された解析結果を利用して工具姿勢(目標角度)を決定しても良い。なお、本実施形態のS900およびS910が請求の範囲のびびり振動抑制部の一態様である。
なお、第7乃至第9の実施形態においては、本発明の範囲内において、以下の態様とすることも可能である。例えば、第7の実施形態においては、操作者がびびり振動の原因としてボールエンドミル68であるか、被削材66であるかを特定した場合に工具姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の目標角度)を調整するものとされているが、操作者がびびり振動の原因を特定しない場合でも工具姿勢を調整するものとしても良い。また、この場合は、S750に示す調整でも良いし、S760に示す調整でも良いが、このような調整を行った目標角度により工具姿勢等のCAMデータを作成した場合は、一度切削を行い、びびり振動が発生しない場合はそのまま切削を続け、びびり振動が発生する場合は一旦切削をやめ、目標角度の調整の態様を別の態様に調整することでびびり振動の発生を抑制することができる(例えば、S750の調整を行ってびびり振動が発生した場合は、再度S760の調整を行ってCAMデータを作成し、切削を行う)。
また、第7の実施形態では、操作者がびびり振動の原因を特定していたが、過去に行った切削の結果(ボールエンドミルの形状と被削材の形状と、びびり振動が発生したか発生しなかったかの結果)を角度決定部94の記憶領域に記憶しておき、過去に行った切削の結果に基づいて、角度検出部94が自動的にびびり振動の原因を特定することとしても良いし、過去に行った切削の結果を角度検出部94が表示部98に表示し、表示に基づき操作者がびびり振動の原因を特定することとしても良い。また、第7の実施形態では、びびり振動の原因を特定し、特定された原因に基づいて、被削材66に対するボールエンドミル68の角度が調整されているが、この態様に限られず、過去に行った切削の結果に基づいて、被削材66に対するボールエンドミル68の工具姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)を調整しても良い。例えば、今回使用する被削材66とボールエンドミル68の組み合わせと、一致するあるいは似た組み合わせの切削結果がある場合、びびり振動が発生しなかった工具姿勢(角度)を参照することにより、工具姿勢を調整することも可能である。
また、第7乃至第9の実施形態においては、CAD/CAM装置87の内部に角度決定部94を備える構成としたが、この構成に限られるものではない。例えば、NCプログラム作成装置88の内部に角度決定部94を備える構成とした場合は、NCプログラム作成装置88でNCプログラムを作成する段階でびびり振動が起こり難いボールエンドミル68の姿勢(被削材66に対するボールエンドミル68の角度)を設定し、びびり振動の発生を未然に防止するか、あるいはびびり振動が発生したとしてもすぐにびびり振動が収まるようにするNCプログラムを作成することが可能となる。
2 ボールエンドミル加工システム
4 CAD/CAM装置
6 NCプログラム作成装置
8 NC制御装置
10 工作機械装置
25 角度決定部
36 角度制御部
46 角度モータ
66 被削材
68 ボールエンドミル
84 びびり振動検出部
85 角度決定部
87 CAD/CAM装置
94 角度決定部