JP2010256268A - ガス分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸着燃焼式のガスセンサを用いたガス分析装置で、センサ出力の検出値の微分波形から正確にガス種を判定する。
【解決手段】吸着燃焼式のガスセンサのマイクロヒータを一定昇温制御する。1回目の40ミリ秒の間に、マイクロヒータを一定昇温制御しながら抵抗値を高速サンプリングする。最初に余分なガス成分、水分等を焼き飛ばす。その後の10秒間マイクロヒータを100℃に保ち、測定ガスを吸着させる。次に、マイクロヒータを一定昇温制御しながら抵抗値を高速サンプリングする。計測値を微分して微分波形を求める。微分波形をウェーブレット分解・合成し、ノイズを除去する。ノイズを除去した微分波形と基準ガスの微分波形との相互相関をとり、相関係数を求める。複数の基準ガスを選択しながら、相関係数を閾値と比較し、閾値以上の場合にその基準ガスのガス種を測定ガスのガス種とする。異なる吸着時間または吸着温度を設定して同様に相関係数によりガス種を判定する。
【選択図】図5
【解決手段】吸着燃焼式のガスセンサのマイクロヒータを一定昇温制御する。1回目の40ミリ秒の間に、マイクロヒータを一定昇温制御しながら抵抗値を高速サンプリングする。最初に余分なガス成分、水分等を焼き飛ばす。その後の10秒間マイクロヒータを100℃に保ち、測定ガスを吸着させる。次に、マイクロヒータを一定昇温制御しながら抵抗値を高速サンプリングする。計測値を微分して微分波形を求める。微分波形をウェーブレット分解・合成し、ノイズを除去する。ノイズを除去した微分波形と基準ガスの微分波形との相互相関をとり、相関係数を求める。複数の基準ガスを選択しながら、相関係数を閾値と比較し、閾値以上の場合にその基準ガスのガス種を測定ガスのガス種とする。異なる吸着時間または吸着温度を設定して同様に相関係数によりガス種を判定する。
【選択図】図5
Description
本発明は、吸着燃焼式ガスセンサを用いて有極性ガスを検知するガス分析装置に関する。
従来、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置として、例えば特開2005−83949号公報(特許文献1)に開示されたものがある。図33はこのガス検知装置の回路ブロック図、図34は同ガス検知装置の駆動用のパルス電圧を示す図、図35は吸着燃焼式ガスセンサの概略構造を示す図である。
図35に示す吸着燃焼式ガスセンサは、シリコン基板10を異方性エッチングして形成されたダイヤフラム10aの上に、白金でパターニングされたマイクロヒータ1,2が形成されている。センサ側となるマイクロヒータ1の上には触媒3が塗布されているが、リファレンス側となるマイクロヒータ2上にはなにも形成されていない。
マイクロヒータ1,2を加熱していくと、センサ側では触媒3に吸着したガスが燃焼反応を起こす。この燃焼反応により、センサ側の温度が上昇するため、このセンサ側のマイクロヒータ2の抵抗値Rsを計測することでガス濃度が計測できる。なお、リファレンス側はガスによる燃焼反応を起こさない。
上記吸着燃焼式ガスセンサは、図33に示すようにガスセンサ側のマイクロヒータ1とリファレンス側のマイクロヒータ2は、抵抗器及び可変抵抗器でブリッジ回路を構成している。このブリッジ回路にはセンサ駆動制御部から図34に示す駆動用のパルス電圧が印加される。そして、吸着燃焼式ガスセンサはパルス電圧OFFの3sec間にガスが吸着され、パルス電圧ONの200ミリ秒間に燃焼反応を起こす。
センサ出力検出部では、ガスの燃焼反応によるブリッジ回路のバランスのズレを検出する。センサ出力検出部の出力を積分演算部で演算すると、ガス濃度に応じた値が出力される。また、センサ出力検出部の出力を微分演算部で微分すると、ガス種固有のピークを持つ微分波形が得られる。ガス濃度検出部は積分演算部の値からガス濃度を算出する。ガス種検出部は微分演算部の出力波形からガス種を算出する。詳細には、微分波形データにおける微分値上昇方向から下降方向に変わる変局点の出現時間をピーク位置とするとともに、この変局点の数をピーク数として算出する。そして、ピーク位置及びピーク数を、基準ピークデータを含む微分波形データベースと比較して、ガス種を判定する。それぞれ算出されたガス種、ガス濃度は出力部より出力される。
前記のように、従来の技術では、微分波形データの微分値上昇方向から下降方向に変わる変局点の出現時間をピーク位置としているが、マイコンやDSP等でこの方法でピーク位置を検出しようとすると、ノイズや微分波形の歪みを間違ってピークと判断する可能性がある。また、被検出ガスにおける微分波形のピーク数は多くても3個程度であり、ピーク数からガス種を判定するにはデータが少なすぎて、誤判定し易いという問題がある。また、ピーク位置とピーク数からの判定ではデータが少なすぎ、計測誤差等によりピーク位置が微妙にずれた場合、判定精度に問題が生じる。
本発明は、微分波形から精度よくガス種を判定できるガス分析装置を提供することを課題とする。
請求項1のガス分析装置は、吸着燃焼式ガスセンサのセンサ出力をサンプリングして、該サンプリングしたセンサ出力を時間微分して微分波形データを取得し、該取得した微分波形データに基づいてガス種を判定するガス分析装置であって、ガス種と微分波形データが既知である複数の基準ガスの該微分波形データを記憶手段に記憶しておき、前記取得した微分波形データに対して前記記憶手段から基準ガスの微分波形データを読み出し、該取得した微分波形データと該基準ガスの微分波形データとの相互相関関係による相関係数を求め、ずらし量が0のときの該相関係数が所定の閾値以上となった基準ガスのガス種を、前記取得した微分波形データに対応するガスのガス種であるとして、該ガス種を判定することを特徴とする。
請求項2のガス分析装置は、請求項1に記載のガス分析装置であって、前記記憶手段に、前記複数の基準ガスとして、同じガス種であって吸着時間の異なる複数の基準ガスの前記微分波形データを含んで記憶しておき、該吸着時間の異なる基準ガスの各々に対して、前記吸着燃焼式ガスセンサにおける吸着時間を該各々の吸着時間に設定して前記微分波形データを取得し、該吸着時間の異なる基準ガスにより同じガス種について、前記相互相関係数により前記ガス種を判定することを特徴とする。
請求項3のガス分析装置は、請求項1に記載のガス分析装置であって、前記記憶手段に、前記複数の基準ガスとして、同じガス種であって吸着温度の異なる複数の基準ガスの前記微分波形データを含んで記憶しておき、該吸着温度の異なる基準ガスの各々に対して、前記吸着燃焼式ガスセンサにおける吸着温度を該各々の吸着温度に設定して前記微分波形データを取得し、該吸着温度の異なる基準ガスにより同じガス種について、前記相互相関係数により前記ガス種を判定することを特徴とする。
請求項4のガス分析装置は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス分析装置であって、前記ヒータの抵抗値をサンプリングして該サンプリングした抵抗値が一定変化で上昇するように、該ヒータに印加する電圧を制御することを特徴とする。
請求項5のガス分析装置は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガス分析装置であって、前記取得した微分波形データをウェーブレット分解し、マザーウェーブレットのスケールの大きな高レベルのウェーブレット係数により合成してノイズを除去し、該ノイズを除去した微分波形データに基づいてガス種の判定を行うことを特徴とする。
請求項1のガス分析装置によれば、微分波形はガス濃度に依らずガス種に固有の同じ波形となるので、基準ガスの微分波形との相互相関関係によりガス種を精度高く判定することができる。
請求項2のガス分析装置によれば、請求項1の効果に加えて、ガス種が異なり同じ吸着時間の基準ガスについての微分波形が類似していても、ガス種判別の精度が高まる。
請求項3のガス分析装置によれば、請求項1の効果に加えて、ガス種が異なり同じ吸着温度の基準ガスについての微分波形が類似していても、ガス種判別の精度が高まる。
請求項3のガス分析装置によれば、請求項1または請求項2の効果に加えて、微分波形のピーク位置が、ガス濃度の違いによる影響を受けずに殆どずれを生じることがなく、さらに正確なガス種の判定を行うことができる。
請求項3のガス分析装置によれば、請求項1または請求項2または請求項3の効果に加えて、微分波形からノイズを除去できるとともにピーク値の位置のズレや波形の歪みが生じることがなく、さらに正確なガス種の判定を行うことができる。
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は実施の形態のガス分析装置のアナログ部の回路図、図2は同ガス分析装置のデジタル部の回路ブロック図である。図1において、ガスセンサ側のマイクロヒータ1及びリファレンス側のマイクロヒータ2は前記従来のものと同様な構造である。ガスセンサ側のマイクロヒータ1、リファレンス側のマイクロヒータ2はそれぞれブリッジ回路Bs,Brを構成している。
デジタル部(図2)から出力される後述のブリッジ電圧DA1はオペアンプap1に入力され、このオペアンプap1の増幅出力はガスセンサ側のブリッジ回路Bsとリファレンス側のブリッジ回路Brとに印加される。ガスセンサ側のブリッジ回路Bsの出力は計装アンプap2により10倍にに増幅されてAD1として出力され、デジタル部のADコンバータ11に取り込まれる。リファレンス側のブリッジ回路Brの出力は計装アンプap3により10倍にに増幅される。また、ブリッジ電圧DA1は分圧回路Dにより1/2に分圧されてAD2として出力され、デジタル部のADコンバータ12に取り込まれる。
ガスセンサ側のブリッジ回路Bsの出力を計装アンプap2(ガスセンサ側)で増幅した電圧と計装アンプap3(リファレンス側)で増幅した電圧との差は、2段目の計装アンプap4で差動増幅されてAD3として出力される。この計装アンプap4の出力は、デジタル部でデータサンプリングされた後、RAM(メモリ)14に格納される。この2段目の計装アンプap4の増幅率は可変とし、外部より設定可能とする。なお、図1に付記したRs、Rr、Rx、R1、Rはそれぞれマイクロヒータ1,2、各抵抗器の抵抗値である。
以上の構成により、計装アンプap2,ap3のゲインをGAIN1とすると、出力AD1の値と出力AD2の値から、以下の式(1),(2)でガスセンサ側のマイクロヒータ1の抵抗値Rsを算出することができる。
Rs=R×(2×GAIN1×AD2/(AD1+2×GAIN2×AD2)−1)…(1)
GAIN2=GAIN1×R/(R+Rx)…(2)
Rs=R×(2×GAIN1×AD2/(AD1+2×GAIN2×AD2)−1)…(1)
GAIN2=GAIN1×R/(R+Rx)…(2)
図2に示すように、デジタル部は、アナログ部の出力AD1、AD2及びAD3をそれぞれアナログ/デジタル変換するADコンバータ11,12,13、計測データを記憶するRAM(メモリ)14、制御プログラム等を記憶しているROM15、計測制御処理をするDSP16、DSP16から出力されるデジタル信号としてのブリッジ電圧DA1をデジタル/アナログ変換してアナログ部のオペアンプap1に出力するDAコンバータ17を備えている。なお、DSP16は後述の割り込み処理により、抵抗値Rsのサンプリングとブリッジ電圧の出力を100KHzのサンプリング間隔で4000回繰り返す。
ここで、DSP1から出力するブリッジ電圧DA1は、計測したガスセンサ側の抵抗値Rsと、理想的なガスセンサの抵抗値とのズレから予測したブリッジ電圧である。理想的なガスセンサの抵抗値Roは以下の式(3)で求まる。
Ro=(Rmax−Rmin)/4000×カウント+Rmin…(3)
Rmax:ガスセンサが500℃のときの抵抗値
Rmin:ガスセンサが100℃のときの抵抗値
4000:サンプリング回数
カウント:そのときのサンプリング回
Ro=(Rmax−Rmin)/4000×カウント+Rmin…(3)
Rmax:ガスセンサが500℃のときの抵抗値
Rmin:ガスセンサが100℃のときの抵抗値
4000:サンプリング回数
カウント:そのときのサンプリング回
ブリッジ電圧の予測方法は以下のとおりである。計測した抵抗値Rsが理想抵抗値より大きい場合は、DA1に加える増量ΔDA1から係数(kinc)を引く。計測した抵抗値Rsと理想的抵抗値が同じ場合は、DA1に加える増量ΔDA1は前回のままとする。計測した抵抗値Rsが理想抵抗値より小さい場合は、DA1に加える増量ΔDA1に係数(kinc)を加算する。そして、この更新される増量ΔDA1を前回のブリッジ電圧に加算して抵抗値Rsの1回のサンプリング毎にこの予測したブリッジ電圧DA1を出力する。
(第1実施例)図3、図4及び図5はDSP16が実行するプログラムのフローチャートであり、図3(A) は計測制御処理のメインルーチンのフローチャート、図3(B) はヒータ制御&サンプリング処理のサブルーチンのフローチャート、図4は割り込み処理のフローチャートであり、割り込み処理は、割り込みイネーブルにより図示しないタイマにより100KHzで起動される。図5はガス種判定処理のサブルーチンのフローチャートである。次に、同フローチャートに基づいて動作を説明する。
図3(A) の処理では、ステップS1で、RAM14内の各種レジスタのリセット等の初期設定を行い、ステップS2で図3(B) のヒータ制御&サンプリング処理を行う。次に、ステップS3で、ブリッジ電圧DA1の初期値として100℃になる電圧を出力しながら10秒間待機し、ステップS4で2回目のヒータ制御&サンプリング処理を行う。次に、ステップS5でRAM14に格納した2回目のヒータ制御&サンプリング処理によるサンプリングデータに微分演算を行う。次に、ステップS6で後述する図5によるガス種判定処理を行う。そして、プS7でガス濃度の判定を行い、ステップS8でガス種、ガス濃度を出力し、ステップS9でその他の処理を行って処理を終了する。
図3(B) のヒータ制御&サンプリング処理では、ステップS11で、前記式(3)の傾きをΔRoとして求める。次に、ステップS12でサンプリングのカウント値をリセットし、ステップS13で割り込みをイネーブルにし、ステップS14で、ブリッジ電圧の増量ΔDA1のレジスタ、ブリッジ電圧の待避用のレジスタDA1_oldのレジスタをリセットする。そして、ステップS15でカウント値が4000になるまで待機する。カウント値は、図5の割り込み処理を行う毎にインクリメントされるので、4000回の割り込み処理により、4000のデータをサンプリングするとカウント値が4000を越えるので、ステップS16で割り込みをディセーブルにし、ステップS17で出力処理を行ってメインルーチン(図3(A) )に復帰する。
図4の割り込み処理では、ステップS21で、前記式(3)により現在のカウントに対応する理想的な抵抗値Roを求め、ステップS22で、ADコンバータ11,12,13からAD1、AD2及びAD3のデータをそれぞれ入力し、ステップS23でAD3のデータをメモリ(RAM)に格納する。次に、ステップS24で、15ビットデータのAD1及びAD2を電圧値に変換し、ステップS25で、前記式(1)によりガスセンサ側の抵抗値Rsを演算する。
次に、ステップS26及びステップS27でRsとRoの大小関係を判定し、Rs<Roであれば、ステップS28で、ブリッジ電圧の増量ΔDA1に係数kincを加算して更新し、ステップS30に進む。Rs=Roであれば増量ΔDA1はもとのままでステップS30に進む。Rs>Roであれば、ステップS29で、増量ΔDA1から係数kincを減算して更新し、ステップS30に進む。そして、ステップS30で、前回のブリッジ電圧DA1_oldに増量ΔDA1を加算して今回のブリッジ電圧DA1とする。
次に、ステップS31でブリッジ電圧DA1をDAコンバータ16を介してアナログ部に出力し、ステップS32で今回のブリッジ電圧DA1をレジスタDA1_oldに待避するとともに、カウントをインクリメントして元のルーチンに復帰する。
図6は上記計測制御処理によるガスセンサ側のマイクロヒータ1の温度変化を示す図であり、1回目及び2回目の40ミリ秒のマイクロヒータ1の温度は一定昇温制御されている。1回目の一定昇温制御により、ガスセンサの余分なガス成分、水分等を焼き飛ばし、その後の10秒間で測定ガスを吸着させる。そして、2回目の一定昇温制御によるガス計測を行う。
図7は時間に対するガスセンサのマイクロヒータ1の抵抗値を示すグラフ、図8はマイクロヒータ1の抵抗値と理想的な抵抗値との時間に対する誤差を示すグラフである。なお、マイクロヒータ1は白金で構成されているため、その抵抗値と温度は直線関係にある。図7に示すように、マイクロヒータ1の温度制御は、定常状態に入ると0.2%以内の誤差で制御されている。
図7に示す抵抗値のように、マイクロヒータ1の温度は、ガスによる吸着燃焼反応を起こしても、時間に対して一定の昇温温度になるように制御されるが、リファレンス側のマイクロヒータ2は、ガスによる吸着燃焼反応が無いため、ガスセンサが吸着燃焼反応を起こした場合も低い温度に制御される。このため、AD3の値は、ガス種、ガス濃度により変化する。
そして、以上のように一定昇温制御のもとにサンプリングしたAD3のデータに対して次式(4)により微分演算を行う。
Y[n]=(X[n]−X[n−m])/m…(4)
n=N,N−m,N−2m,N−3m,…,1
Y[n]:微分値
X[n]:サンプリングデータ
m:間引き率(10)
N:全データ数(4000)
n=N,N−m,N−2m,N−3m,…,1
Y[n]:微分値
X[n]:サンプリングデータ
m:間引き率(10)
N:全データ数(4000)
図9はTERTブタノールの一定昇温制御におけるAD3の微分値のグラフ(微分波形)である。なお、図9のグラフの横軸は、一定昇温制御での時間(15ミリ秒〜40ミリ秒)をガスセンサの温度にした温度軸である。また、0〜15ミリ秒までの波形はヒータ制御が定常状態に無いため省略した。
このような微分波形にはノイズが発生する。このノイズはノコギリ状のノイズであり、このノイズの周期が一定である。そして、この微分波形データに対して、図10のcoifrets5のマザーウェーブレットでレベル5のウェーブレット分解を行う。
図11はウェーブレット分解の様子を説明する図である。図11(A) に示すように、この実施例では図10のマザーウェーブレット波形の時間軸方向の幅を5段階にスケーリングしてウェーブレット分解した。なお、レベル1からレベル5になるほどスケールは大きくなる。そして、レベル1〜5の各レベルの各ブロックにウェーブレット係数が求まる。このレベル1〜5の各々のディテイルは図11(B) のようになり、各レベル1〜5の合成波形は図11(C) のようになる。ノイズを除去した微分波形としたはレベル5だけ必要である、レベル4〜1はノイズ成分と見なすことができる。このため、ウェーブレット係数に対するスレッシュホールドを、レベル4〜1に対して最高値とし、レベル5に対して0とし、合成を行うことでノイズが除去できる。
次に、ガス種の判定方法について説明する。ガスの種類毎に、予め所定濃度の基準ガスを決めておき、その基準ガスについての微分波形を求めておく。また、この基準ガスの微分波形におけるピークの値は既知である。これらの基準ガスの微分波形データとピークの値をそのガス種に対応してROM15等に記憶しておく。
サンプリングして微分した得られた微分波形データからガス濃度0での微分波形データを減算し、そのデータに対して前記ウェーブレット分解及び合成によりよるノイズ除去を行う。図12はTERTブタノールの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。基準ガスの微分波形データのピークの値をこのノイズを除去した微分波形データのピークの値で除算して係数を求め、この係数をノイズを除去した微分波形データに乗算し、ピークの高さを同じにする。すなわち規格化する。図13は係数を乗算して規格化したTERTブタノールの微分波形である。また、図14は同様に係数を乗算して規格化したエタノールの微分波形である。
これらの図から解るように、この微分波形はガス濃度に依らずガス種に固有の同じ波形をしている。すなわち、ピークの位置もガス濃度に依らずガス種に固有の一定の位置である。そこで、基準ガスの微分波形データをxと測定ガスの規格化した微分波形データをyとし、この微分波形データxと微分波形データyの相関関係をとり、次式(5)により相関係数rを求める。
そして、lag(ずれ時間)が0での相関係数r0を閾値と比較し、その相関係数が閾値以上でれば測定ガスがその相関関係をとった基準ガスと同じガス種であると判定する。
図15はTERTブタノール30ppmを基準ガスとした場合の他のガスの相関係数のグラフである。図16はエタノール1000ppmを基準ガスとした場合の他のガスの相関係数のグラフである。ガス種が同じであれば、濃度によらず相関係数のグラフはlag0を基準ガスとした正規分布を描き、波形形状も大きさもほぼ同一である。一方、ガス種が異なれば、相関係数のピークはlag0を外れる。
以上のことから、lag0での相関係数r0に閾値を設けることで測定ガスが基準ガスと同じガス種であるか否かが解り、この処理を複数の基準ガスを用いて判断することで、測定ガスのガス種を判定することができる。なお、図17はTERTブタノール30ppmと他のガスのlag0での相関係数のグラフ、図18(A) はエタノール1000ppmと他のガスのlag0での相関係数のグラフ、図18(B) は図18(A) の縦軸拡大図である。この図から解るように、相関係数の閾値を0.95に設定し、測定ガスと基準ガスの微分波形の相関係数が0.95以上の場合は、測定ガスは基準ガスと同種のガスであると判定でき、0.95未何の場合は、測定ガスは基準ガスと異種のガスであると判定できる。
図5のガス種判定処理では、ステップS41で、基準ガスを選択し、ROM15に記憶されている基準ガスの微分波形データ及びピーク値を読み出す。次に、ステップS42で測定ガスの微分波形からガス濃度0の微分波形を減算し、ステップS43でウェーブレット分解及び合成によりノイズ除去を行う。次に、ステップS44で係数を演算するとともにノイズを除去した微分波形に係数を乗算して規格化し、ステップS45で相関係数を演算する。
次に、ステップS46でlag=0における相関係数r0を抽出し、ステップS47で相関係数r0が閾値以上であるかを判定する。閾値以上であれば、現在の基準ガスのガス種を測定ガスのガス種と判定して元のルーチンに復帰する。閾値以上でなければ、ステップS49で全基準ガスについての処理が終了しているかを判定し、判定がNOであればステップS41に戻って同様の処理を行う。なお、閾値以上がなく全ての基準ガスについての処理が終了した場合には、ステップS50でガス種の判定がNGであると判断し、元のルーチンに復帰する。
(第2実施例)以上のように相関係数r0を閾値と比較する方法は、微分波形の形状及びピーク位置が一致するか否かを判定しているが、異なるガス種でも波形及びピーク位置が類似している場合に誤判定をするおそれがある。
例えば、図19は吸着温度200℃、吸着時間25分でのエタノールの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフであり、図20は吸着温度200℃、吸着時間25分でのアセトンの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。このように。図19に示す各濃度でのエタノールと、図20に示す低濃度(10ppm)でのアセトンの波形及びピーク位置は類似している。なお、吸着温度及び吸着時間は、前掲の図6に示す第1実施例における100℃、10秒に相当するものである。
上記の波形の類似をさらに確認した。エタノール100ppmを基準波形として、上記各濃度のエタノールの微分波形と、30ppm及び50ppmのアセトンの微分波形について相互相関をとると、その相関係数は図21のようになった。この図から解るように、エタノールとアセトンの相関係数の波形に殆ど変わりはない。図22は図21のlag0での縦軸拡大図であるが、エタノール10ppmの相関係数より、アセトンの30ppm及び50ppmでの相関係数(r0)の方が大きく、エタノールとアセトンの判別ができないことが解る。このように、微分波形が似ているガス同士では判別ができない場合がある。
そこで、以下の第2実施例あるいは第3実施例のようにするとよりガス種の判別を高精度とすることができる。図23は吸着温度200℃、吸着時間1分でのエタノールの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。このグラフと図19のグラフとを比較すると、同種のガスでもセンサへの吸着時間の違いにより、ガス種固有の微分波形の二つの山の比率が変わることが解る。なお、これらのグラフの横軸は、前述のとり一定昇温制御での燃焼反応時の時間をガスセンサの温度にした温度軸である。
エタノールの場合、微分波形に300℃と400℃(いずれも時間相当)付近にピークを持つ山がある。吸着時間が25分の場合は400℃付近にピークを持つ山の比率が、300℃付近にピークを持つ山に比べて著しく大きい。これに対して、吸着時間が1分の場合は400℃付近にピークを持つ山の比率が、300℃付近にピークを持つ山に比べて若干大きい程度である。
図24は吸着温度200℃、吸着時間1分でのアセトンの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。このグラフと図20のグラフとを比較すると、この場合も、同種のガスでもセンサへの吸着時間の違いにより、ガス種固有の微分波形の二つの山の比率が変わることが解る。
アセトンの場合、微分波形に350℃と400℃(いずれも時間相当)付近にピークを持つ山がある。吸着時間が25分の場合(図20)は、低濃度で400℃付近にピークを持つ山の比率が、350℃付近にピークを持つ山に比べ大きい。これに対して、吸着時間が1分の場合は400℃付近にピークを持つ山が殆どなく、350℃付近にピークを持つ山だけになる。
このように、微分波形は吸着時間に対し、ガス種固有のパターンを持つ。図25は、吸着時間1分でのエタノール100ppmを基準波形として、上記各濃度のエタノールの微分波形と、30ppm及び50ppmのアセトンの微分波形について相互相関をとった相関係数のグラフである。各濃度のエタノールの波形(相関係数)とアセトンの波形は明らかに異なっている。図26は図25のlag0での縦軸拡大図であるが、各濃度のエタノールでの相関係数(r0)は0.9以上あるが、アセトンの相関係数は0.8以下である。したがって、吸着時間1分では相関係数の閾値を0.9から0.8に切替設定することにより、エタノールとアセトンの判別ができる。
このように、同種のガスでも、センサへの吸着時間の違いにより、ガス種固有の微分波形の二つの山の比率が変わり、この変わる比率はガス種により異なっている。そこで、複数の吸着時間を設定し、吸着時間毎に判別を行い、各吸着時間での判別結果の総合判定を行うことにより、ガス種判別をより高精度化できる。例えば、総合判定は各吸着時間での基準ガスの微分波形との相関係数r0が0.9以上の場合、基準ガスと同種であると判定する。また、エタノールとアセトンの場合、吸着時間25分では相関係数0.9により同定されるが、このエタノールとアセトンの場合でも、吸着時間1分では相関係数0.8以下となり、別種でると判定される。すなわち、二つの吸着時間での判定から、エタノールを基準ガスとし、測定ガスをアセトンとした場合、基準ガスと測定ガスは異種と判定される。
図27はこの第2実施例に係るフローチャートであり、前記同様図4及び図5はDSP16が実行するプログラムのフローチャートである。先ず、ステップS61でセンサを高温にして高温燃焼し、ステップS62で第1吸着時間に設定してこの第1吸着時間の間、測定ガスを吸着させる。次に、ステップS63で、前記同様にヒータ制御&サンプリング処理を行い、ステップS64でサンプリングデータに微分演算を行う。そして、ステップS65で、各種基準ガスのデータを記憶しているデータベースを検索し、第1吸着時間に対応する基準ガスとの相互相関をとって相関係数を演算する。なお、このステップS65では、前記同様にノイズ除去及び係数乗算による規格化等の処理も行う。
次に、ステップS66で第2吸着時間に設定してこの第2吸着時間の間、測定ガスを吸着させる。次に、ステップS67で、前記同様にヒータ制御&サンプリング処理を行い、ステップS68でサンプリングデータに微分演算を行い、ステップS69でステップS66と同様にデータベースの検索、相関係数の演算等を行う。そして、ステップS70で、各演算された相関係数と、各種閾値により、ガス種の総合判定を行う。
(第3実施例)以下の第3実施例のようにするとより前掲の図19乃至図22で説明した微分波形が似ているガス同士に対してガス種の判別を高精度とすることができる。図28は吸着温度100℃、吸着時間25分でのエタノールの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。このグラフと図19のグラフとを比較すると、同種のガスでもセンサへの吸着温度の違いにより、ガス種固有の微分波形の二つの山の比率が変わることが解る。なお、これらのグラフの横軸は、前述のとり一定昇温制御での燃焼反応時の時間をガスセンサの温度にした温度軸である。
エタノールの場合、微分波形に約220℃、約300℃、400℃(いずれも時間相当)付近にピークを持つ山がある。吸着温度が200℃の場合は220℃と300℃付近にピークを持つ山が殆ど無いが、400℃付近にピークを持つ山が大きくでる。これに対して、吸着温度が100℃の場合、180℃と300℃付近にピークを持つ山があるが、400℃付近にピークを持つ山が殆ど無い。
図29は吸着温度100℃、吸着時間25分でのアセトンの各濃度でのノイズを除去した微分波形のグラフである。このグラフと図20のグラフとを比較すると、この場合も、同種のガスでもセンサへの吸着温度の違いにより、ガス種固有の微分波形の山の比率が変わることが解る。
アセトンの場合、微分波形に350℃と400℃(いずれも時間相当)付近にピークを持つ山がある。吸着温度が200℃(図20)の場合は、低濃度で400℃付近にピークを持つ山の比率が、350℃付近にピークを持つ山に比べ大きい。これに対して、吸着温度が100℃の場合は400℃付近にピークを持つ山が殆どなく、350℃付近にピークを持つ山だけになる。
このように、微分波形は吸着温度に対し、ガス種固有のパターンを持つ。図30は、吸着温度100℃でのエタノール100ppmを基準波形として、上記各濃度のエタノールの微分波形と、30ppm及び50ppmのアセトンの微分波形について相互相関をとった相関係数のグラフである。各濃度のエタノールの波形(相関係数)とアセトンの波形は明らかに異なっている。図31は図30のlag0での縦軸拡大図であるが、各濃度のエタノールでの相関係数(r0)は0.8以上あるが、アセトンの相関係数は0.7以下である。したがって、吸着温度100℃では相関係数の閾値を0.8から0.7に切替設定することにより、エタノールとアセトンの判別ができる。
このように、同種のガスでも、センサへの吸着温度の違いにより、ガス種固有の微分波形の二つの山の比率が変わり、この変わる比率はガス種により異なっている。そこで、複数の吸着温度を設定し、吸着温度毎に判別を行い、各吸着温度での判別結果の総合判定を行うことにより、ガス種判別をより高精度化できる。例えば、総合判定は各吸着温度での基準ガスの微分波形との相関係数r0が0.8以上の場合、基準ガスと同種であると判定する。また、エタノールとアセトンの場合、吸着温度200℃では相関係数0.9により同定されるが、このエタノールとアセトンの場合でも、吸着温度100℃では相関係数0.7以下となり、別種でると判定される。すなわち、二つの吸着温度での判定から、エタノールを基準ガスとし、測定ガスをアセトンとした場合、基準ガスと測定ガスは異種と判定される。
図32はこの第3実施例に係るフローチャートであり、前記同様図4及び図5はDSP16が実行するプログラムのフローチャートである。先ず、ステップS71でセンサを高温にして高温燃焼し、ステップS72で第1吸着温度に設定してこの第1吸着温度で、測定ガスを吸着させる。次に、ステップS73で、前記同様にヒータ制御&サンプリング処理を行い、ステップS74でサンプリングデータに微分演算を行う。そして、ステップS75で、各種基準ガスのデータを記憶しているデータベースを検索し、第1吸着温度に対応する基準ガスとの相互相関をとって相関係数を演算する。なお、このステップS75では、前記同様にノイズ除去及び係数乗算による規格化等の処理も行う。
次に、ステップS76で第2吸着時間に設定してこの第2吸着時間の間、測定ガスを吸着させる。次に、ステップS77で、前記同様にヒータ制御&サンプリング処理を行い、ステップS78でサンプリングデータに微分演算を行い、ステップS79でステップS76と同様にデータベースの検索、相関係数の演算等を行う。そして、ステップS80で、各演算された相関係数と、各種閾値により、ガス種の総合判定を行う。
以上の実施形態では、微分波形からノイズを除去する処理としてウェーブレット分解及び合成を行うようにしているが、ノイズ除去の方法は他の方法でもよい。
また、図1に示すガスセンサのアナログ部の構成は一例であり、この実施形態に限らず、他の構成でもよい。また、図2に示すデジタル部のDSPの処理はパーソナルコンピュータ、マイコン等で行ってもよい。
1 ガスセンサ側のマイクロヒータ
2 リファレンス側のマイクロヒータ
Bs ガスセンサ側のブリッジ回路
Br リファレンス側のブリッジ回路
ap4 計装アンプ
15 ROM(記憶手段)
16 DSP
17 DAコンバータ
2 リファレンス側のマイクロヒータ
Bs ガスセンサ側のブリッジ回路
Br リファレンス側のブリッジ回路
ap4 計装アンプ
15 ROM(記憶手段)
16 DSP
17 DAコンバータ
Claims (5)
- 吸着燃焼式ガスセンサのセンサ出力をサンプリングして、該サンプリングしたセンサ出力を時間微分して微分波形データを取得し、該取得した微分波形データに基づいてガス種を判定するガス分析装置であって、
ガス種と微分波形データが既知である複数の基準ガスの該微分波形データを記憶手段に記憶しておき、
前記取得した微分波形データに対して前記記憶手段から基準ガスの微分波形データを読み出し、該取得した微分波形データと該基準ガスの微分波形データとの相互相関関係による相関係数を求め、ずらし量が0のときの該相関係数が所定の閾値以上となった基準ガスのガス種を、前記取得した微分波形データに対応するガスのガス種であるとして、該ガス種を判定することを特徴とするガス分析装置。 - 前記記憶手段に、前記複数の基準ガスとして、同じガス種であって吸着時間の異なる複数の基準ガスの前記微分波形データを含んで記憶しておき、該吸着時間の異なる基準ガスの各々に対して、前記吸着燃焼式ガスセンサにおける吸着時間を該各々の吸着時間に設定して前記微分波形データを取得し、該吸着時間の異なる基準ガスにより同じガス種について、前記相互相関係数により前記ガス種を判定することを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
- 前記記憶手段に、前記複数の基準ガスとして、同じガス種であって吸着温度の異なる複数の基準ガスの前記微分波形データを含んで記憶しておき、該吸着温度の異なる基準ガスの各々に対して、前記吸着燃焼式ガスセンサにおける吸着温度を該各々の吸着温度に設定して前記微分波形データを取得し、該吸着温度の異なる基準ガスにより同じガス種について、前記相互相関係数により前記ガス種を判定することを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
- 前記ヒータの抵抗値をサンプリングして該サンプリングした抵抗値が一定変化で上昇するように、該ヒータに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス分析装置。
- 前記取得した微分波形データをウェーブレット分解し、マザーウェーブレットのスケールの大きな高レベルのウェーブレット係数により合成してノイズを除去し、該ノイズを除去した微分波形データに基づいてガス種の判定を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガス分析装置。
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