JP2010256094A - 原子炉用制御棒 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレードヒストリー問題の緩和、ハフニウムの使用量削減、溶接変形或いは力学的アンバランスによる非健全性ならびに製造非容易性などを解消しつつ、寿命期間平均の反応度価値を停止用制御棒の反応度価値と同等にできる出力調整用制御棒を提供すること。
【解決手段】本発明では、少なくとも1/4区分の肉厚が1.5mm〜2.5mmのHf板12を保持する翼片10が一対対峙して成る翼1と、原子炉用制御棒CRの軸心に沿って間隔を置いて配置され、4枚の翼1を横断面十字状に保持するタイクロス4と、翼片10の対峙間スペースに設けられて炉水が充填されるトラップ13と、翼片10の少なくとも1/4区分に設けられ、部分的なハフニウム欠損部を成す水窓3と、タイクロス4の配置間スペースに設けられ、制御棒有効部の少なくとも1/4区分で軸心水幅CWとして10mm〜40mmを有する軸心水領域5とを備えるようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、沸騰水型原子炉の出力制御に用いられる原子炉用制御棒に係り、特に、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする長寿命型の原子炉用制御棒に関する。
沸騰水型原子炉に用いられる原子炉用制御棒は、原子炉運転サイクルの略全期間に至って炉心に挿入された状態となる出力調整用制御棒と、原子炉運転サイクル中は炉心から引き抜かれ原子炉停止に際して炉心に挿入される停止用制御棒とに分類できる。出力調整用制御棒は全制御棒の略70%を占めることとも相俟って、その核的寿命を全うして交換に至るまで停止用制御棒と同等の反応度価値を維持することが望ましい。
原子炉用制御棒の核的寿命を「反応度価値が初期値から10%低下した時点」と定義する従来からの慣例に従えば、出力調整用制御棒の反応度価値は、停止用制御棒と比較して寿命期間(耐用期間)初期にて5%高くなり且つ寿命期間末期に5%低くなるのが理想的モデルとされる。
一般的に、ボロンカーバイド(B4C)を主要な中性子吸収材とする従来の制御棒にあっては、反応度価値を高めることが容易ではないことから、上述の理想モデルは実現困難である。加えて、出力調整用制御棒は、原子炉運転サイクル中は炉心に挿入された状態となり大量の中性子照射を受けることから長寿命化が求められていた。
そのため、中性子吸収材として、B4C系の停止用制御棒と比較して反応度価値の大幅増大が期待できると共に中性子照射に伴う経時的な中性子吸収能力の低下が抑えられるハフニウム(Hf)の適用が考えられた。しかしながら、ハフニウムは比重が著しく大きく(13g/cm)且つ高価である。比重が大きいと、制御棒駆動機構に対する負荷が大きくなり、制御棒のスクラム特性が悪化して緊急時の原子炉停止に支障を来たすことになる。
このような事情を勘案し、横断面十字状に配置されて成る4翼一体の出力調整用制御棒を対象として、深い横断面U字状を呈するステンレス製シース内にハフニウム板(Hf板)を中性子吸収材として内装して各翼片を構成し、各翼片にて向き合うHf板間に減速材(軽水)が浸入可能なトラップを形成したHf系の出力調整用制御棒が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。この出力調整用制御棒では、Hf板間の浸入減速材により中性子が減速されることから、ハフニウム板の中性子吸収能力が高められ、もって比重が高く且つ高価なハフニウムの必要量が削減できるようになる。
ところが、Hf系の出力調整用制御棒には、次のような問題が浮上した。一般に出力調整用制御棒は、中性子束分布の関係上、上半分(制御棒有効部の挿入先端から挿入末端にかけて半分までの範囲)がその下半分よりも中性子照射量が多くなる。このため、上半分が核的寿命に達し交換される時点で下半分のハフニウムが未だ使用可能な状態で廃棄処分されることとなり、高価なハフニウムの無駄が生じるという経済面の問題である。
そのため、炉心内での中性子束分布に伴う照射量分布を考慮して挿入先端から挿入末端にかけてハフニウム板の厚みを段階的に変化させた多分割型の出力調整用制御棒が種々提案されている(特許文献2〜6参照)。なお、シースを用いないで、Hf板と異種金属間の電気化学的な腐食ないしこれに起因する機械的強度低下の回避を図った出力調整用制御棒も提案されている(特許文献7参照)。
特開昭63−008594号公報 特開昭62−235595号公報 特開昭62−254098号公報 特開昭63−221289号公報 特開平02−010299号公報 特開平04−006493号公報 特開昭58−147687号公報
M. Ueda T. Tanzawa, R. Yoshioka: "Critical Experiment on a Flux-Trap-Type Hafnium Control Rod for BWRs", Transactions of the American Nuclear Society, Vol.55, p.616(1987).
従来のHf系の出力調整用制御棒では、トラップの厚み(翼厚み方向のサイズ)を大きく設定するほど、中性子減速効果が高められてHf板に中性子が効率よく吸収されるようになり、比重が大きく且つ高価なハフニウムをより削減できるようになる。しかしながら、原子炉用制御棒は、4体1組の燃料集合体相互間に設けられる間隙が狭いことから、その翼(ウイング)の厚みは通常8mm(一部の原子炉では6〜7mm)程度に制限される。
かかる制限上、ステンレス製シースの厚みを薄くしたり、シースとHf板との間の間隙(SH間隙と称され、主として異種金属間の電気化学的な腐食反応を回避するために設けた間隙)を狭くしたくなる。しかしながら、出力調整用制御棒は、高温高圧且つ大量の中性子照射を受ける過酷な環境に長期間晒されることから、このような措置を採ると、出力調整用制御棒を構成するHf板とステンレス鋼との異種金属の近接対峙構造にて電気・水化学的な腐食反応に基づいた機械的強度の低下が大となる。最近の研究により、出力調整用制御棒の全長のうち制御棒有効部の挿入先端から挿入末端にかけて1/2の範囲特に1/4の範囲においてその機械的強度低下が比較的大きくなることも判っている。なお、シースを用いない出力調整用制御棒では、ステンレス製のタイクロスを用いるとHf板との間で同様のメカニズムに基づいた機械的強度の低下が問題となる。
また、多分割型の出力調整用制御棒における厚みの異なる各々のHf板は、コマと称される複数のトラップ間隙保持兼荷重保持部材を用いてシースに溶接されると共にこのコマもシースに溶接され、これにより構造安定性が確保される。しかしながら、溶接領域近傍では、溶接変形により薄いシースがHf板に向かって湾曲してSH間隙の領域縮小を招きやすい。このSH間隙の領域縮小は、シースの構成金属などを起源とする腐食生成物を保持可能な領域縮小となるほか、シースやHf板の熱膨張および照射成長に基づく相対変位も許容しない構造の拘束状態を形成することになり、過大な応力に基づくシースやHf板の応力腐食割れの可能性を高めることにもなる。
また、厚みの異なる多様なHf板が用いられるが故に、Hf板の成形加工等に伴う製造コストが上昇すると共に挿入末端に向かうほどHf板の厚みが薄くなることによる力学的脆弱面も残っている。さらに、多分割型の出力調整用制御棒では、構造の電気化学的腐食ないし応力腐食割れ防止に重要な役割を担うSH間隙を一様に維持することも容易ではない。
ところで、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする長寿命型の出力調整用制御棒は、その大部分の領域が原子炉運転サイクル中に炉心挿入状態となる。そのため、燃料集合体のうち出力調整用制御棒の軸心に近い領域ほど中性子フラックス低下に基づく燃焼遅延すなわち燃料核種の残留濃度が高い状態が形成されやすい。この状態で出力調整用制御棒を炉心から引き抜いたとき、制御棒挿入時にて軸心に近接していた燃料集合体の領域出力密度が高くなり燃料健全性を損なうおそれがある。いわゆるブレードヒストリー問題である。
このようなブレードヒストリー問題を緩和するには、出力調整用制御棒のハフニウム量を少なくして反応度価値を小さくすれば良いが、必要な反応度価値が得られず或いは上述した反応度価値増大の要求と逆行するという不都合が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、原子炉用制御棒一般に問題とされるブレードヒストリー問題を緩和すると共に、中性子吸収板の分割方式を採用することによる不都合、すなわち、中性子束分布に伴う照射量分布に起因するハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用を解消する際に伴う構造の溶接変形或いは力学的アンバランスによる非健全性ならびに製造非容易性などを解消しつつ、寿命期間平均の反応度価値を停止用制御棒の反応度価値と同等にできる出力調整用制御棒(以下、原子炉用制御棒)を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明に係る原子炉用制御棒では、ハフニウムを主要な中性子吸収材とし、沸騰水型原子炉の出力調整に用いられる長寿命型の原子炉用制御棒において、制御棒有効部を略4等分し、制御棒有効部の挿入先端から挿入末端に向かって1/4区分、2/4区分、3/4区分および4/4区分としたとき、少なくとも1/4区分の肉厚が1.5mm〜2.5mmのハフニウム板を保持する翼片が一対対峙して成る翼と、制御棒中心軸に沿って間隔を置いて設けられ、4枚の翼を横断面十字状に保持するタイクロスと、前記翼片の対峙間スペースに設けられ、炉水が充填されるトラップと、前記翼片の少なくとも1/4区分に設けられ、部分的なハフニウム欠損部を成す水窓と、前記タイクロスの配置間スペースに設けられ、制御棒有効部の少なくとも1/4区分で軸心水幅10mm〜40mmを有する軸心水領域とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、原子炉用制御棒一般に問題とされるブレードヒストリー問題を緩和すると共に、中性子吸収板の分割方式を採用することによる不都合、すなわち、中性子束分布に伴う照射量分布に起因するハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用を解消する際に伴う構造の溶接変形或いは力学的アンバランスによる非健全性ならびに製造非容易性などを解消しつつ、寿命期間平均の反応度価値を停止用制御棒の反応度価値と同等にできる。
なお、前記翼のハフニウム板は、その表面がジルカロイの圧着により被覆され或いはその表面が被覆されることなく露呈して設けられる構成を採用すれば、ステンレス製シースを用いることで生じる応力腐食割れを解消できる。
本発明に係る原子炉用制御棒の第1実施形態を示す側面要部透視図。 図1のI−I断面拡大図。 図1のII−II断面拡大図。 図1の原子炉用制御棒に設けた軸心領域と反応度価値の相関評価の計算条件を示す図であり、(A)は図1の原子炉用制御棒の模擬体系を示す図、(B)は停止用制御棒の模擬体系(比較用)を示す図。 図1の原子炉用制御棒の軸心水領域と反応度価値の相関評価の結果を示す図。 図1の原子炉用制御棒におけるHf板の厚みと反応度価値の相関評価の結果を示す図。 図1の原子炉用制御棒に設けた水窓と反応度価値の相関評価の計算条件を示す図。 図1の原子炉用制御棒に設けた水窓と反応度価値の相関評価の結果を示す図。 運転サイクル終了時点で交換される原子炉用制御棒の反応度価値設定方法の説明図。 図1の原子炉用制御棒における水窓および軸心水領域と燃料集合体における出力分布の相関評価の計算条件を示す図。 図1の原子炉用制御棒における水窓および軸心水領域と燃料集合体における出力分布の相関評価の結果を示す図であり、(A)は出力分布を示す図、(B)は軸心水領域と出力分布の相関強調図、(C)は水窓と出力分布の相関強調図。 図1の原子炉用制御棒におけるHf板の厚みと核的寿命の相関評価の結果を示す図。 本発明に係る原子炉用制御棒の第2実施形態を示す側面要部透視図。 図13のI−I線断面図。 本発明に係る原子炉用制御棒の第3実施形態を示すI−I線(図13)断面図。 原子炉用制御棒の第4実施形態を示すII−II線(図1)断面図。 原子炉用制御棒の第4実施形態を示すII−II線(図1)断面図。
本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明に係る原子炉用制御棒の第1実施形態を示す側面要部透視図である。図2は図1のI−I線断面拡大図である。図3は図1のII−II線断面拡大図である。
本実施形態の原子炉用制御棒CRは、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心部に装荷される4体一組の燃料集合体内の配列間隙(図示省略)を通って挿抜可能に設けられ、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする長寿命型の原子炉用制御棒である。この原子炉用制御棒は、図1〜図3に示すように、翼1、間隔保持棒2、水窓3、タイクロス4、軸心水領域5、先端構造材6ならびに末端構造材7を主要構成とする。
[翼]
図2および図3に示すように、原子炉用制御棒CRの翼1は、所定の間隔を置いて向かい合うように対峙して成り制御棒有効部を担う一対の翼片10により構成され、厚み(翼1の表面間距離)は、6.5mm〜8.5mmに設定される。この翼片10の対峙間スペースには、炉水(軽水)が浸入し、翼片10を透過してきた中性子を減速させることでHf板12による中性子吸収効率を高めるトラップ13が形成される。
一対の翼片10は、ジルカロイ被覆層(Zr被覆層)11により無分割且つ一様厚のハフニウム板(Hf板)12の両面がサンドイッチ構造にて挟み込まれて構成される。このZr被覆層11は、Hf板12の表層面と隙間を形成しないようHf板12に圧着される。Hf板12の厚みは、Hf板12の挿入先端から挿入末端にかけて1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)では1.5mm〜2.5mmに設定され、その他の範囲では核特性および機械的強度を考慮して適宜設定される。
「間隔保持棒」
原子炉用制御棒CRの間隔保持棒2は、図2に示すように、翼片10の対峙間スペースのうち翼片10の挿入先端から挿入末端にかけて1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)に且つ翼幅方向Wの中央よりも外側の位置に介挿され、翼片の対峙間スペースを維持する。
この間隔保持棒2は、翼1と比較して大幅に短尺化されたハフニウム片により構成され、翼片10の挿入先端から挿入末端にかけて1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)においては、その挿入先端側から挿入末端側に向かって次第に短くなるように寸法設定される。
また、間隔保持棒2は、図2に示すように、一対の翼片10の内側に形成されたアリ溝に勘合され且つHf板12に対してピン14を用いて留められる。Hf板12に設けられるピン孔(図示省略)の径は、ピン14の径よりも若干大きく設定され、そのピン孔径の寸法設定によるピン留め緩みを補うようにピン頭がHf板12に溶着される。なお、ピン14は、ハフニウム、ジルカロイ或いはハフニウム−ジルカロイ合金により構成される。
[水窓]
原子炉用制御棒CRの水窓3は、翼片10の挿入先端から少なくとも1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)に設けられ、翼片幅方向Wに幅3mm〜10mmを有して部分的なハフニウム欠損部を成す。この水窓3は、翼片10の挿入方向に長軸を有する長孔状に刳り貫かれることにより構成され、一対の翼片10で形成されるトラップ13と連通する。
また、水窓3は、向かい合う翼片10に設けられる水窓3が互いに重ならないよう段違いに配置される。そして、燃料集合体が縦横に燃料棒8本×8本、9本×9本或いは10本×10本などを有して成る場合にあっては、一側の翼片10に設けられる水窓3の中心が3本目或いは4本目に位置し、且つ、他側の翼片10に設けられる水窓3の中心が同基準で数えてし4本目ないし6本目に位置するように設けられる。
[タイクロス]
原子炉用制御棒CRのタイクロス4は、4枚の翼1を横断面十字状に保持して4翼一体型の原子炉制御棒CRを形成する。このタイクロス4は、少なくともその表面がジルカロイにより構成され、図1に示すように、原子炉用制御棒CRの中心軸上に所定の間隔を置いて断続的に設けられる。また、タイクロス4は、互いに直交する方向に延びる4本のアーム41を有して横断面十字状を呈し、各アーム41はその先端側に翼保持部42を有する。
翼1を成す2枚の翼片10がタイクロス4の翼保持部42を挟み込んだ状態で、翼片10と翼保持部42とがピン14により接合されると共にこのピンがHf板12に溶着される。Hf板12に設けられるピン孔(図示省略)の径は、ピン14の径よりも若干大きく設定され、そのピン孔径の寸法設定によるピン留め緩みを補うようにピン頭がHf板12に溶着される。また、このピン14は、ハフニウム、ジルカロイ或いはハフニウム−ジルカロイ合金により構成される。なお、このタイクロス4の翼保持部42は、間隔保持棒2と同様、翼片10の対峙間スペースを維持する機能も有する。
[軸心水領域]
原子炉用制御棒CRの軸心水領域5は、タイクロス4の配置間スペースにて減速材が充填される領域である。したがって、軸心水領域5は、図1に示すように、原子炉用制御棒CRの軸心に沿って所定の間隔を置いて設けられる。
この軸心水領域5は、上半分すなわち翼片10の挿入先端から挿入末端にかけて1/2以内の範囲(1/4区分および2/4区分)では、原子炉用制御棒CRの軸心Cから翼片10までの最短距離(軸心水幅CW;図3参照)として10mm〜40mmを有する。また、下半分すなわち翼片10の挿入先端から挿入末端にかけて1/2以上の範囲(3/4区分および4/4区分)では、軸心水幅CWとして30mm〜50mmを有する。そして、軸心水幅CWは、上半分よりも下半分の方が広く設定され、且つ、50mmを超えない範囲で翼片10の挿入先端から挿入末端に向かうほど拡大される。
[先端構造材および末端構造材]
原子炉用制御棒CRの先端構造材6および末端構造材7は、図1に示すように、原子炉用制御棒CRの構造支持ならびに挿抜ガイドなどを担う。この先端構造材6および末端構造材7は、少なくとも表面がジルカロイにより構成され、それぞれ翼1の挿入先端部と挿入末端部に溶着される。
次に、原子炉用制御棒CRの作用を、制御棒特性に関わる評価計算の結果を用いて説明する。なお、各評価計算に用いた計算モデルの構成のうち、原子炉用制御棒CRと対応する構成には同一符号を付す。
[反応度価値の評価計算(その1)]
第1の反応度価値の評価計算は、原子炉用制御棒CRに設けた軸心水領域5と反応度価値の相関評価に関するものである。
図4は相関評価の計算条件を示す図であり、(A)は原子炉用制御棒CRの模擬体系を示す図、(B)は停止用制御棒の模擬体系(比較用)を示す図である。
原子炉用制御棒CRの模擬体系(Hfモデル)CRは、横断面十字状に配置した4枚の翼1(図2(A)では1翼のみ図示)から構成した2次元計算モデルである。翼1の幅Wは125mm、その厚みTTは8.3mm、Hf板12の厚みHTは1.8mm、Zr被覆層11の厚みZTは0.4mmである。軸心水幅CWは、可変パラメータとして取り扱い、HfモデルCRの軸心Cから翼片10までの距離にして5mm〜40mmの間で変化させた。
一方、停止用制御棒の模擬体系(B4Cモデル)CRaは、HfモデルCRと同様に横断面十字状に配置した4枚の翼1a(図2(B)では1翼のみ図示)から構成した2次元計算モデルである。翼1aの幅Wは125mm、その厚みTTは8.3mm、シース11aの厚みSTは1.1mm、B4Cチューブ12aの外径ROは5.6mm、その内径RIは4.2mmである。
また、タイクロス4に対応するタイロッド4aは、軸心Caから翼片10aまでの距離にして20mmとし、軸心水領域は設けない。さらに、シース11aおよびB4Cチューブ12aはステンレスから成り、B4C粉末の充填密度は70%である。
HfモデルCRおよびB4CモデルCRaの反応度価値は、いずれもモンテカルロ法(1000万ヒストリー)で求めた。
図5は評価計算の結果を示す図である。なお、図5の横軸は軸心水幅CWの寸法であり、縦軸は反応度価値の相対値である。この反応度価値の相対値は、(HfモデルCRの反応度価値)/(B4CモデルCRaの反応度価値)である。加えて、図5は軸心水幅CWが5mmの場合の反応度価値で規格化したものである。
図5に示すように、HfモデルCRの反応度価値902は、軸心水幅CWが5mmの場合にB4CモデルCRaの反応度価値901と比較して13.4%高い値を示し、軸心水幅CWが30mmの場合にB4CモデルCRaの反応度価値901よりも5%高い値を示した。なお、HfモデルCRの軸心水幅CWを30mm〜40mmへと変化させると、反応度価値の低下割合は大きく、7.9%減となるがその低下勾配は略一定となった。
この結果、例えば、寿命期間初期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%高める手段として、原子炉用制御棒CRの軸心水領域5のサイズ調節が有効であることが理解できる。このことわりは、寿命期間末期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%低める場合についても同様である。
[反応度価値の評価計算(その2)]
第2の反応度価値の評価計算は、原子炉用制御棒CRにおけるHf板12の厚みと反応度価値の相関評価に関するものである。
原子炉用制御棒CRの反応度価値は、図4(A)に示すHfモデルCRにおいて、軸心水幅CWを30mm一定とし、トラップ13の厚み(翼厚み方向の寸法)TWを3.1mm一定とし且つHf板12の厚みHTを可変パラメータとした場合(ケース1)と、Zr被覆層11の厚みZTを0.4mm一定とし且つHf板12の厚みHTを可変パラメータとした場合(ケース2)との計2ケースについて行った。なお、基準となる停止用制御棒の反応価値は、図4(B)に示すB4CモデルCRaを用いて計算した。
図6は評価計算の結果を示す図である。なお、図6の横軸はHf板12の厚みHTであり、縦軸は反応度価値の相対値である。この反応度価値の相対値は、(HfモデルCRの反応度価値)/(B4CモデルCRaの反応度価値)である。
図6に示すように、ケース1の場合におけるHfモデルCRの反応度価値903は、Hf板の厚みが約1.5mmを超えるとB4CモデルCRaの反応度価値901よりも大きくなる。また、ケース2の場合におけるHfモデルCRの反応度価値904は、Hf板の厚みが約1.4mmを超えるとB4CモデルCRaの反応度価値901よりも大きくなる。また、Hf板12の増加に伴う反応度価値の増加は、ケース1よりもケース2の方が小さいが、これはトラップ13の厚みTWが小さくなることにより反応度価値の増加が抑えられたことによる。
この結果、例えば、寿命期間初期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%高める手段として、原子炉用制御棒CRのHf板12の厚みやトラップ13の厚み調節が有効であることが理解できる。このことわりは、寿命期間末期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%低める場合についても同様である。
[反応度価値の評価計算(その3)]
第3の反応度価値の評価計算は、原子炉用制御棒CRに設けた水窓3と反応度価値の相関評価に関わるものである。
図7は相関評価の計算条件を示すもので、原子炉用制御棒CRの模擬体系を示す図である。
原子炉用制御棒CRの模擬体系(Hfモデル)CRは、図7に示すように、横断面十字状に配置した4枚の翼(図7では1翼のみ図示)から構成した2次元計算モデルである。翼1の幅Wは125mm、その厚みTTは8.3mm、Zr被覆層11の厚みZTは0.4mmである。軸心水幅CWは30mm一定とした。
水窓幅WWは、可変パラメータとして取り扱い、HfモデルCRの軸心Cから60mm離れた位置から0mm〜15mmの範囲で変化させた。
図8は評価計算の結果を示す図である。なお、図5の横軸は水窓幅WWであり、縦軸は規格化した反応度価値である。この規格化は、水窓幅WWが0mmの場合の反応度価値で行ったものである。
図8に示すように、HfモデルCRにおいて水窓幅WWが増大するにつれて反応度価値905は低下していき、水窓幅WWが10mmの場合では水窓幅WWが0mmの場合と比較して3.1%低い値となった。この反応度価値の低下量3.1%は、軸心水幅CWを26mm〜30mmに拡大した場合の反応度価値の低下量と等価である。
この結果、例えば、寿命期間初期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%高める手段として、原子炉用制御棒CRの水窓3のサイズ調節が有効であることが理解できる。このことわりは、寿命期間末期に原子炉用制御棒CRの反応度価値を停止用制御棒のそれよりも5%低める場合についても同様である。また、反応度価値を所要量抑えるにあたって、軸心水領域5を調節するよりも水窓3を調節する方がハフニウムの節約効果は大きいものとなる。
ここで、具体的な反応度価値の設定方法を説明する。
原子炉用制御棒CRの炉心装荷時点(BOC:Begining of cycle)における反応度価値の理想は、核的な寿命期間初期に停止用制御棒の反応度価値よりも5%大きくなり且つ核的な寿命期間末期に5%小さくなることとされる。しかしながら、原子炉用制御棒は、運転サイクル中に交換することは出来ないため、運転サイクル終了時点(EOC:End of cycle)で交換される。したがって、理想の反応度価値を設定するにあたって、核的寿命期間(慣例的に初期の反応度価値から10%低下した時点)に着目するのではなく、いずれかのEOCに着目することになる。
図9はEOCで交換される原子炉用制御棒の反応度価値設定方法の説明図である。図9における横軸はEOC、縦軸はB4C系の停止用制御棒の反応度価値を基準(1.00)とした原子炉用制御棒CRの相対的な反応度価値である。以下、原子炉用制御棒CRがEOC=5で交換される場合を想定する。
図9の符号K1は、BOCでの反応度価値を1.00(停止用制御棒の反応度価値と同一)とした場合の原子炉用制御棒CRの反応度価値低下曲線であり、この設定例によると、EOC=5での反応度価値は約0.92となって反応度価値の理想(0.95)よりも0.03小さくなる。符号K4は、BOCでの反応度価値を1.07とした場合の原子炉用制御棒CRの反応度価値低下曲線であり、この設定例によると、EOC=5における反応度価値は約0.98となって反応度価値の理想(0.95)よりも0.03大きくなる。
一方、符号K2は、BOCでの反応度価値を1.03とした場合の原子炉用制御棒CRの反応度価値低下曲線であり、この設定例によると、EOC=5における反応度価値は約0.94となって反応度価値の理想(0.95)よりも0.01小さくなるが、K1やK2で示す反応度価値設定例に比べると理想に近い。符号K3は、BOCでの反応度価値を1.05とした場合の原子炉用制御棒CRの反応度価値低下曲線であり、この設定例によると、EOC=5における反応度価値は約0.96となって反応度価値の理想(0.95)よりも0.01大きくなるが、K1やK2で示す反応度価値設定例に比べると理想に近い。
すなわち、EOC=5で交換される原子炉用制御棒CRにあっては、BOCでの反応度価値を1.04とすることが最も理想的な反応度価値設定となる。なお、実際の反応度価値低下曲線は図9に示したものとは異なる傾向を示すが、BOCでの反応度価値を1.03〜1.05とすることが最も理想的な反応度価値設定となることが多いと考えられる。
[出力分布の評価計算]
出力分布の評価計算は、原子炉用制御棒CRにおける水窓3および軸心水領域5と燃料集合体における出力分布の相関評価に関わるものである。
図10は相関評価の計算条件を示すもので、原子炉用制御棒CRを装荷した炉心模擬体系を示す図である。
炉心模擬体系CREは、燃料棒FLRをマトリクス状に縦列9×9に束ねた燃料集合体FLAの間に横断面十字状の原子炉用制御棒CRの模擬体系(Hfモデル)CRを装荷し、ウォーターロッドWRRなどを備えて冷却材温度その他の炉心パラメータとして実機BWRを模擬した2次元計算モデルである。
HfモデルCRは、その基本条件を図7と共通にし、水窓3を設けず且つ軸心水幅CWを5mmとしたHfモデル(ケース1)、水窓3を設けず且つ軸心水幅CWを26mmとしたHfモデル(ケース2)、水窓3を燃料棒(ID=4,1)と(ID=5,1)の位置に対応するよう段違いに配置し且つ水窓幅WWを7.8mmとすると共に軸心水幅CWを26mmとしたHfモデル(ケース3)の計3ケースとした。
図11は評価計算の結果を示す図であり、(A)はケース1の出力分布(符号906)、ケース2の出力分布(符号907)およびケース3の出力分布(符号908)を示す図、(B)は軸心水領域5と出力分布の相関強調図(ケース2の出力分布−ケース1の出力分布)、(C)は水窓3と出力分布の相関強調図(ケース3の出力分布−ケース2の出力分布)である。なお、図11の出力はID(9,9)の燃料棒出力で規格化したものである。加えて、図11は燃料集合体FLAにおける出力分布は、HfモデルCRの翼1の両側でわずかに歪むので、この翼1の両側の燃料集合体FLAにおける出力分布の平均値としている。
図11(A)に示すように、ケース1〜ケース3は燃料集合体FLAの出力分布変化に対する寄与が異なることが分かる。
また、図11(B)に示すように、HfモデルCRの軸心Cの付近では軸心水幅CWの違いによる出力分布の違いが顕著に現れた。
また、図11(C)に示すように、HfモデルCRの水窓3の付近では水窓3(水窓幅WW)の有無による出力分布の違いが現れた。
この結果、例えば、燃料集合体内部の出力分布を均一化しブレードヒストリー問題を解消する手段として、原子炉用制御棒CRの水窓3や軸心水領域5のサイズ調節が有効であることが理解できる。
[核的寿命の評価計算]
核的寿命の評価計算は、原子炉用制御棒CRにおけるHf板12の厚みと原子炉用制御棒CRの核的寿命の相関評価に関わるものである。
この核的寿命の評価計算は、図4(A)に示すHfモデルCRにおいて、Hf板12の厚みHTを可変パラメータとし、慣例に従い初期の反応度価値から10%低下した時点をその核的寿命として行なった。なお、基準となる停止用制御棒の核的寿命は、図4(B)に示すB4CモデルCRaを用いて計算した。
図12は評価計算の結果を示す図である。なお、横軸はHf板12の厚みHTであり、縦軸はHfモデルCRの核的寿命である。
図12に示すように、HfモデルCRの核的寿命909は、Hf板12の厚みHTの増大と共に長くなり、Hf板12の厚みHTが1.5mm以上にあっては厚みの増大による核的寿命909の延長割合が大きくなる。なお、ハフニウムとホウ素の中性子吸収反応における核的性質上、HfモデルCRの核的寿命909はB4CモデルCRaの核的寿命910よりも常に長いものとなる。
この結果、例えば、原子炉用制御棒CRの核的寿命を高める手段としてHf板12の厚み調節が有効であり、Hf板12が特定の厚み以上になると、この手段による核的寿命の延長効果が大きいものとなる。
次に、原子炉用制御CRの効果を説明する。
原子炉用制御CRにあっては、
(1) 少なくとも1/4区分の肉厚が1.5mm〜2.5mmのHf板12を保持する翼片10が一対対峙して成る翼1と、原子炉用制御棒CRの軸心に沿って間隔を置いて配置され、4枚の翼1を横断面十字状に保持するタイクロス4と、翼片10の対峙間スペースに設けられて炉水が充填されるトラップ13と、翼片10の少なくとも1/4区分に設けられ、部分的なハフニウム欠損部を成す水窓3と、タイクロス4の配置間スペースに設けられ、制御棒有効部の少なくとも1/4区分で軸心水幅CWとして10mm〜40mmを有する軸心水領域5とを備える。
すなわち、一般的なBWRに実装可能であると共に、水窓3の面積やトラップ13の厚み、軸心水領域5の軸心水幅CWないしその容量などを調節することにより、言い換えると、従来の如く厚みの異なる複数のHf板を用いることなく、所望の出力分布ならびに反応度価値を得ることができる。反応度価値については、例えば、寿命期間平均の反応度価値が停止用制御棒の反応度価値と等しくなり、或いは、寿命期間初期の反応度価値が停止用制御棒の反応度価値よりも5%大きくなり且つ寿命期間末期の反応度価値が停止用制御棒の反応度価値よりも5%小さくなるように調節することもできる。
したがって、原子炉用制御棒一般に問題とされるブレードヒストリーを緩和すると共に、中性子吸収板の分割方式を採用することによる不都合、すなわち、中性子吸収板の照射量分布に起因するハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用を解消する際に伴う構造の溶接変形或いは力学的アンバランスによる非健全性ならびに製造非容易性などを解消しつつ、寿命期間平均の反応度価値を停止用制御棒の反応度価値と同等にできる。
ここで、原子炉用制御棒CRは、一般的に挿入先端に近い部分ほど早期に核的寿命に到達する。このため、上述の反応度価値の調節は、制御棒有効部の挿入先端から挿入末端にかけて1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)の反応度価値に着目して行うことが重要になるが、この1/4程度の範囲に限定して反応度価値調節を行うことにより設計コストを必要最小限に抑えることができる。なお、原子炉用制御棒CRの核的寿命が定期検査等による制御棒交換時期よりも短い場合は、この交換時期を核的寿命と捉えて上限値および下限値を設定することが、ハフニウムの節約の観点から好ましい。
(2) 翼1のHf板12は、その表面がジルカロイの圧着により被覆される。このため、中性子吸収材としてのハフニウムの剥離等に基づくプラント放射能を抑えることができる。
説明すると、一般にハフニウムは高い耐蝕性を有するが、高温水に長期間晒されると表面に若干ながら腐食生成物が発生して何等かのきっかけで剥離する事が判っている。この剥離した腐食生成物は、放射能を帯びている。含まれる核種は、主にHf−181であり半減期43日で比較的低エネルギーのガンマ線(482keV、346keVおよび133keV)を放出する。なお、半減期111日で1.2MeVのガンマ線を放出するTa−182も僅かに生成する。昨今、BWRの炉水水質がBWR導入初期に比べて著しく向上しており、放射能レベルは著しく低下していることからHf−181の低放射能でも確認出来るようになっている。Hf−181は、半減期が比較的短く且つ放射能としても弱いために外部環境への問題は殆ど考えられないが、原子炉建屋内部では放射能低減対策の対象核種となり得る。本実施形態の原子炉用制御棒CRでは、翼1のHf板12表面がZr被覆層11により被覆されるので、上述した起源に基づく放射能を大幅に抑えられるようになる。
(3) 翼片よりも短尺のハフニウム片により構成され、翼片10の対峙間スペースのうち翼片10の挿入先端から挿入末端にかけて1/4以上に至る範囲(少なくとも1/4区分)で且つ翼片幅方向W中央よりも外側の位置に介装されて翼片の対峙間スペースを維持する間隔保持棒2を備える。すなわち、翼片10の対峙間スペースのうち炉心中性子束が特に高い部位にハフニウムが多く介装される。
このため、翼片10の対峙間スペースを維持できることに加え、原子炉用制御棒CRの核的寿命を延ばすことができると共に原子炉用制御棒CRの反応度価値を高めることができる。また、間隔保持棒2が翼片10の長手寸法よりも短尺であることにより、翼1のしなやかな変形が若干ながら許容され、構造の破損頻度が低減する。
ところで、Hf板12と間隔保持棒2とが異なる製造過程を経るなどして両者の金属結晶に微差があると、それらが中性子照射環境に長期間晒されることで照射成長の差異が生じ、ひいては原子炉用制御棒CRの翼1を変形させたり破損に至らしめる可能性がある。この点に関し、間隔保持棒2は短尺化されているため、その照射成長が小さく且つその照射成長による構造拘束状態が形成されにくいものとなり、もって翼1に加わる応力が低減されて原子炉用制御棒CRの健全性低下が抑えられる。
(4) 間隔保持棒2は、翼片10の挿入先端側から挿入末端側に向かうほど、ハフニウム密度にして粗に配置される。炉心の中性子束分布は、原子炉用制御棒CRの挿入末端側に向かうほど低くなるため反応度価値も低くてもよく、このように構成することによりハフニウム節約および原子炉用制御棒CRの重量低減が図られる。なお、ピン14を用いて間隔保持棒2をHf板12に留めているため、アリ溝勘合のみによる万一のHf板12の離間事故を防止できる。また、ピン孔をピン径よりも若干大きく寸法設定しているため、若干の熱膨張が許容されて応力負荷を緩和できる。
(第2実施形態)
図13は原子炉用制御棒の第2実施形態を示す側面要部透視図であり、図14は図13のI−I線断面図である。本実施形態は、第1実施形態の原子炉用制御CRにおけるHf板12および水窓3の構成を変更した例である。以下、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「A」を付して説明する。
本実施形態の原子炉用制御棒CR/Aは、図14に示すように、分割Hf板12Aと、水窓3Aとを備える。
[分割Hf板]
分割Hf板12Aは、一対の翼片10Aにおいて挿入先端側から半分程度の範囲に限定して設けられる先端側Hf板12aAと、この先端側Hf板12aAから下半分に設けられ且つ先端側Hf板12aAよりも薄く厚み設定される末端側Hf板12bAとを有する。
この先端側Hf板12aAと末端側Hf板12bAは、共にハフニウムを主要な構成材とし、P部にて互いに溶接される。また、末端側Hf板12bAの両面には、ハフニウムと化学的性質が類似するジルカロイが圧着されて成るZr被覆層11が設けられ、先端側Hf板12aAと末端側Hf板12bAとの厚みが同一になるよう構成される。
原子炉用制御棒に求められる反応度価値の観点から、分割Hf板12Aの構成の好適条件を以下に列挙する。
<条件1>
(a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
(b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
(c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
(d)4/4区分では、(b)の厚みと同一或いは(b)の厚みの80%の厚みを有すること。
<条件2>
(a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
(b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
(c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
(d)4/4区分では、(a)の厚みと同一の厚みを有し、ハフニウムとジルコニウムの合金により構成され且つハフニウムの重量割合が50%〜70%であること。
<条件3>
(a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
(b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
(c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
(d)4/4区分では、(c)の厚みの50%の厚みを有し、ハフニウム板の表面がジルカロイの圧着により被覆されること。
[水窓]
水窓3Aは、図13及び図14に示すように、一対の翼片10Aにおいて挿入先端側から半分程度の範囲に限定して設けられ、第1実施形態と同様に段違い構造にて配置される。
次に、原子炉用制御棒CR/Aの効果を説明する。
原子炉用制御CR/Aにあっては、第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(5) 翼1AのHf板12Aは、<条件1>〜<条件2>のいずれかを満たすように構成される。このため、第1実施形態の(1)の効果で延べた「ハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用の解消」という効果が一層高められる。
(6) 水窓3Aは、一対の翼片10Aにおいて挿入先端側から半分程度の範囲に限定して設けられる。このため、第1実施形態の(1)の効果で延べた「ハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用の解消」という効果が一層高められる。
(第3実施形態)
図15は原子炉用制御棒の第3実施形態を示すI−I線(図13)断面図である。本実施形態は、第2実施形態の原子炉用制御棒CR/AにおけるHf板12Aの構成を変更した例である。以下、第2実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「B」を付して説明する。
本実施形態の原子炉用制御棒CR/Bは、図15に示すように、Zr−Hf合金板12Bを備える。
Zr−Hf合金板12Bは、一対の翼片10Bにおいてその挿入先端から挿入末端にかけて1/2以上の範囲(少なくとも1/4区分および2/4区分)に設けられ、ハフニウムとジルカロイとの合金により構成される。先端側Hf板12AとZr−Hf板12Bとは、同一の厚みに設定され、P部にて互いに溶接される。
ここで、Zr−Hf合金板12Bは、ハフニウムとジルカロイとが全率固溶体を形成する性質を利用して為されたものである。なお、この合金に対するハフニウムの成分割合と密度は、例えば、(重量割合、体積割合、密度)=(0.4,0.28,8.1),(0.5,0.33,8.7),(0.6,0.43,9.3),(0.7,0.54,10),(0.8,0.67,10.8)である。
次に、原子炉用制御棒CR/Bの効果を説明する。
原子炉用制御CR/Bにあっては、第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(7) 翼1のハフニウム板は、その挿入先端から1/2未満の範囲(1/4区分および2/4区分)ではハフニウム金属版により構成され、その挿入先端から1/2以上挿入末端まで(3/4区分および4/4区分)は、ハフニウムとジルコニウムの合金により構成される。すなわち、炉心中性子束が小さい領域では、ハフニウム密度が小さくなるように構成される。このため、第1実施形態の(1)の効果で延べた「ハフニウムの資源的或いは経済的な無駄使用の解消」という効果が一層高められる。
(第4実施形態)
図16は原子炉用制御棒の第4実施形態を示すII−II線(図1)断面図である。本実施形態は、第1実施形態の原子炉用制御棒CRにおける翼片10同士の接合構成を変更した例である。以下、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「C」を付して説明する。
本実施形態の原子炉用制御棒CR/Cは、図16に示すように、翼端溶接部16Cを備える。
翼端溶接部16Cは、翼片10の翼片幅方向Wの末端すなわちタイクロス4との接合側に対向する翼端にて翼片10同士を溶接する。このとき、一対の翼片10は、所要の中性子減速効果が得られるトラップ13が形成されるように折り曲げ長或いは折り曲げ角度が調節される。
次に、原子炉用制御棒CR/Cの効果を説明する。
原子炉用制御CR/Cにあっては、第1実施形態の(1)および(2)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(8) 翼片10の対峙間スペースを維持するように、一対の翼片10を翼片幅方向Wの末端にて溶接する翼端溶接部16Cを備える。これにより、翼片10同士の接合やトラップ13の厚みを堅実に維持できると共に、第1実施形態の間隔保持棒2を採用する場合に比べて施工の容易化ならびにハフニウムの節約が図られる。
(第5実施形態)
図17は原子炉用制御棒の第4実施形態を示すII−II線(図1)断面図である。本実施形態は、第1実施形態の原子炉用制御棒CRにおいて対峙する翼片10の相対尺度を変更した例である。以下、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号末尾に「D」を付して説明する。
本実施形態の原子炉用制御棒CR/Dは、図17に示すように、翼1Dを備える。
翼1Dは、図17に示すように、翼幅方向に長さの異なる翼片10Dにより構成される。すなわち、翼片10Dに含まれるハフニウムの量が向かい合う翼片10Dと異なるように構成される。なお、各翼1Dの長さは変更できるが、反応度価値その他の原子炉用制御棒の特性の観点から、軸心水幅CWが5mm以上確保されることが好ましい。
次に、原子炉用制御棒CR/Dの効果を説明する。
原子炉用制御CR/Dにあっては、第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
(9) 翼を構成する一側の翼片が他側の翼片よりも制御棒軸心側に張り出して構成される。これにより、炉心出力分布の非対称性を考慮してブレードヒストリー問題を緩和できると共にハフニウムの無駄使用を削減できる。
以上、本発明に係る原子炉用制御棒を第1実施形態〜第5実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
例えば、翼のHf板の一部の範囲についてはハフニウムで構成する例を示したが、全範囲に至ってハフニウムとジルコニウムの合金により構成して、その合金の成分調節により反応度価値調節を行うようにしてもよい。また、Hf板の表面は、被覆されることなく外部に露呈させて構成してもよい。
間隔保持棒は、ハフニウムで構成する例を示したが、ハフニウムとジルコニウムの合金により構成するようにしてもよい。
水窓は、翼片の挿入方向に長軸を有する長孔状に構成する例を示したが、円状その他の形状であってもよい。
原子炉用制御棒の反応度価値調節は、水窓の面積調節を通じて行う例を示したが、水窓の面積は一様に揃えて配置設定により行うようにしてもよい。
CR,CR/A,CR/B,CR/C,CR/D……原子炉用制御棒(出力調整用制御棒), 1,1A,1B,1C,1D……翼, 10,10A,10B,10D……翼片, 11……Zr被覆層, 12……Hf板, 12A……分割Hf板, 12aA……先端側Hf板, 12bA……末端側Hf板, 12B……Zr−Hf合金板, 13……トラップ, 14……ピン, 16C……翼端溶接部, 2……間隔保持棒, 3……水窓, 4……タイクロス, 4a……タイロッド, 41……アーム, 42……翼保持部, 5……軸心水領域, 6……先端構造材, 7……末端構造材, CW……軸心水幅, WW……水窓幅, K1〜K4……原子炉用制御棒の反応度価値低下曲線。

Claims (21)

  1. ハフニウムを主要な中性子吸収材とし、沸騰水型原子炉の出力調整に用いられる長寿命型の原子炉用制御棒において、
    制御棒有効部を略4等分し、制御棒有効部の挿入先端から挿入末端に向かって1/4区分、2/4区分、3/4区分および4/4区分としたとき、
    少なくとも1/4区分の肉厚が1.5mm〜2.5mmのハフニウム板を保持する翼片が一対対峙して成る翼と、
    制御棒中心軸に沿って間隔を置いて設けられ、4枚の翼を横断面十字状に保持するタイクロスと、
    前記翼片の対峙間スペースに設けられ、炉水が充填されるトラップと、
    前記翼片の少なくとも1/4区分に設けられ、部分的なハフニウム欠損部を成す水窓と、
    前記タイクロスの配置間スペースに設けられ、制御棒有効部の少なくとも1/4区分で軸心水幅10mm〜40mmを有する軸心水領域と、
    を備えることを特徴とする原子炉用制御棒。
  2. 前記水窓は、翼片幅方向に幅3mm〜10mmを有することを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒。
  3. 制御棒有効部の少なくとも1/4区分で、寿命期間初期の反応度価値が停止用制御棒の反応度価値よりも大きくなり且つ寿命期間末期の反応度価値が停止用制御棒の反応度価値よりも小さくなるように反応度価値調節されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子炉用制御棒。
  4. 前記寿命期間初期の反応度価値は、停止用制御棒の反応度価値よりも3%〜5%大きくなるように調節されることを特徴とする請求項3に記載の原子炉用制御棒。
  5. 前記水窓の面積或いは軸心水領域の容積は、制御棒有効部の少なくとも1/4区分で前記反応度価値を満たすように設定されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の原子炉用制御棒。
  6. 前記翼のハフニウム板は、その表面がジルカロイの圧着により被覆されることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  7. 前記翼のハフニウム板は、ハフニウムとジルコニウムの合金により構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  8. 前記翼のハフニウム板は、その表面が被覆されることなく露呈して設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  9. 前記水窓は一対の翼片それぞれに設けられ、向かい合う翼片に設けられる水窓が互いに重ならないよう段違いに配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  10. 前記水窓は、円状或いは翼片の挿入方向に長軸を有する長孔状を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  11. 前記水窓は、燃料集合体が縦横に8本×8本、9本×9本或いは10本×10本の燃料棒を有して成る場合、一側の翼片に設けられる水窓の中心が3本目或いは4本目に位置し、且つ、他側の翼片に設けられる水窓の中心が同基準で数えて4本目ないし6本目に位置するように設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  12. 前記翼片のハフニウム板は、無分割且つ一様厚に構成され、前記軸心水幅は、50mmを超えない範囲で翼片の挿入先端から挿入末端に向かうほど拡大されることを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  13. 前記水窓は、翼片の挿入先端側から挿入末端側に向かって一様な面積を有することを特徴とする請求項12に記載の原子炉用制御棒。
  14. 前記翼のハフニウム板は、次の条件(a)〜(d)を満たすように構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
    <条件>
    (a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
    (b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
    (c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
    (d)4/4区分では、(b)の厚みと同一或いは(b)の厚みの80%の厚みを有すること。
  15. 前記翼のハフニウム板は、次の条件(a)〜(d)を満たすように構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
    <条件>
    (a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
    (b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
    (c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
    (d)4/4区分では、(a)の厚みと同一の厚みを有し、ハフニウムとジルコニウムの合金により構成され且つハフニウムの重量割合が50%〜70%であること。
  16. 前記翼のハフニウム板は、次の条件(a)〜(d)を満たすように構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
    <条件>
    (a)1/4区分では、1.5mm〜2.5mmの厚みを有し、
    (b)3/4区分では、(a)の厚みの50%の厚みを有し、
    (c)2/4区分では、(a)の厚みと同一或いは(a)〜(b)の厚みの中間にある厚みを有し、
    (d)4/4区分では、(c)の厚みの50%の厚みを有し、ハフニウム板の表面がジルカロイの圧着により被覆されること。
  17. 前記翼のハフニウム板は、その挿入先端から挿入末端にかけて1/2までがハフニウム金属板により構成され、1/2を超える部分がハフニウムとジルコニウムの合金により構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  18. 前記翼片の長手寸法よりも短尺のハフニウム片或いはハフニウム−ジルコニウム合金片から成り、翼片の対峙間スペースのうち翼片の挿入先端から少なくとも1/4以上に至る範囲で且つ翼片幅方向中央よりも外側の位置に介装されて翼片の対峙間スペースを維持する間隔保持棒を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項17の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  19. 前記間隔保持棒は、翼片の挿入先端側から挿入末端側に向かうほど、ハフニウム密度にして粗に配置されることを特徴とする請求項18に記載の原子炉用制御棒。
  20. 前記翼片の対峙間スペースを維持するように、一対の翼片を翼片幅方向末端にて溶接する翼片溶接部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項17の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
  21. 前記翼を構成する一側の翼片が軸心水幅5mm以上を確保して他側の翼片よりも制御棒軸心側に張り出して構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項20の何れか1項に記載の原子炉用制御棒。
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