JP2010253862A - 透明ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックフィルムを加熱処理し、特定の熱収縮率となるように収縮させてプラスチック基材フィルムとし、該プラスチック基材フィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を設けて蒸着フィルムとし、該蒸着フィルムを加熱処理して、特定の熱収縮率となるように収縮させ、該収縮させた蒸着フィルムの蒸着膜が設けられた面に、さらに、ガスバリア性塗布膜、蒸着膜、ガスバリア性塗布膜、をこの順序で設けることを特徴とする透明ガスバリア性フィルム。
【選択図】なし
Description
また、JIS−K6900では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品をいうものと定義されているが、本明細書ではシート及びフィルムの両方を含めて「フィルム」と呼ぶ。
本明細書において、MD方向とは、押出し成形時の機械におけるフィルムの流れ方向、すなわち長手方向であり、TD方向とは、MD方向と直角の方向である。
本明細書において、「透明」とは、製品化した際にその用途に支障がない程度に、十分な可視光透過性を有することを意味し、有色で透明なものも無色で透明なものも、いずれも含む。
また、該透明ガスバリア性フィルムからなる包装体を提供する。
また、本発明において、蒸着前後の二段階でフィルムを収縮させることにより、緻密で、隙間の少ない蒸着膜が得られるため、本発明の透明ガスバリア性フィルムは、極めて高いガスバリア性を示す。
さらに、蒸着膜の上にガスバリア性塗布膜を設けることにより、蒸着膜の緻密な状態が維持され、また平滑な塗膜表面が得られる。したがって、別のフィルム等をラミネートした場合に生じ得る密着強度の不足に起因するデラミネーションやガスバリア性の劣化を最小限に抑えることができる。
また、蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを、交互に繰り返し積層することにより、極めて高いガスバリア性が達成される。本発明において、隣り合う蒸着膜とガスバリア性塗布膜とは、その境界面において、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成しているため、良好な密着性を示す。
1.本発明の透明ガスバリア性フィルムの構造
本発明に係る透明ガスバリア性フィルムは、プラスチック基材フィルム1のいずれか一方の面に蒸着膜2a、ガスバリア性塗布膜3a、蒸着膜2b、ガスバリア性塗布膜3b、を順に設けた5層構成を基本構造とするものである(図1)。
ガスバリア性塗布膜3bの上にさらに、蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを、この順序で、1回または2回以上繰り返し積層してもよい。
また、プラスチック基材フィルム1のいずれか一方の面に蒸着膜2a、ガスバリア性塗布膜3a、蒸着膜2b、ガスバリア性塗布膜3bを順に設け、もう一方の面にも蒸着膜、及びガスバリア性塗布膜を交互に1回〜複数回積層し、さらなる多層構成としてもよい。
さらに、各蒸着膜及び各ガスバリア性塗布膜は、それぞれ2層以上の多層膜からなってもよい。
本発明において用いるプラスチックフィルムとしては、化学的または物理的強度に優れ、種々の蒸着法によって蒸着膜を形成する条件に耐え得るプラスチック材料からなる透明フィルムを使用することができる。
このようなプラスチック材料からなる透明フィルムとしては、具体的には、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種のプラスチック材料からなる透明フィルムを使用することができる。
レトルト処理用包装体への適用のためには、優れた機械的強度を示す2軸延伸フィルムが特に好ましい。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
また、本発明において、上記プラスチックフィルムの表面には、後述する蒸着膜との密接着性等を向上させるために、予め、所望の表面処理層を設けておくこともできる。
上記の表面前処理は、プラスチックフィルムと後述する蒸着膜との密接着性等を改善するためのものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、プラスチックフィルムの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
本発明にしたがって、プラスチックフィルム及び後述の蒸着フィルムの収縮程度を正確に調整することにより、耐熱性及び耐水性に優れ、経時劣化の生じにくい本発明の透明ガスバリア性フィルムを得ることができる。ここで、本発明においては、包装体への適用においてMD方向より重要なファクターとなり得るTD方向の寸法変化により、両フィルムの収縮程度を定義する。
本発明において、上記プラスチックフィルムを第一の加熱処理に付し、TD方向の熱収縮率(S1)が、以下の式
TD方向の熱収縮率(S1)/基準熱収縮率(Sb)×100=10〜90(%)
のように、基準熱収縮率(Sb)の10〜90%の値となるように、好ましくは15〜80%の値となるように収縮させて、プラスチック基材フィルムとする。ここで、TD方向の熱収縮率(S1)は、以下の式により表される:
S1=(L10−L11)/L10 ×100
S1:TD方向の熱収縮率(%)
L10:第一の加熱処理前のTD方向の寸法
L11:第一の加熱処理後のTD方向の寸法
加熱温度及び加熱時間は、加熱処理に付すプラスチックフィルムの組成に応じて、適宜設定することができるが、加熱温度は、室温以上〜200℃の範囲内、より好ましくは、55℃〜150℃の範囲である。加熱温度が室温以下であると、蒸着フィルムの膜質に変化がなく、防湿性の向上効果が得られない。一方、200℃より高いと、プラスチック基材フィルムが溶融し得るため好ましくない。加熱時間は、TD方向の熱収縮率(S1)が所望の値に至った時点で加熱を終了すればよく、例えば5秒間以上〜30分間の範囲、より好ましくは10秒以上〜1分間の範囲であってよい。加熱方法としては、通常の電気抵抗加熱によるオーブン加熱、真空式オーブン加熱、温水を利用した加熱、赤外線ヒータによる加熱、超音波振動による加熱など、種々の加熱方法を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
本発明において、上記プラスチック基材フィルムの少なくとも一方の面に、蒸着膜を設けて蒸着フィルムとする。このような蒸着膜は、例えば、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)、真空蒸着法(抵抗加熱、誘電加熱、電子ビーム加熱方式)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)のいずれかを用いて、またはこれらのうちの幾つかを併用して、プラスチック基材フィルム上に形成することができる。これらの蒸着法は、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等に応じて適宜選択することができる。
蒸着膜の膜厚は、ガスバリア能が発揮され得る厚さであれば特に制限はないが、好ましくは30〜10000Å、さらに好ましくは70〜8000Å、特に好ましくは100〜5000Åである。30Å未満では、必要なガスバリア性が得られにくく、10000Åを超えると、それ自身の応力が大きくなり、フレキシビリティが損なわれる。なお、蒸着膜が複層構造である場合は、上記膜厚とは、複層全体の膜厚を意味する。
本発明において、プラスチック基材フィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を設けて得られる蒸着フィルムを、さらに加熱処理し、TD方向の熱収縮率(S2)が、0.1〜2.0%となるように収縮させることにより、プラスチック基材フィルムが収縮すると共に、その上に積層された蒸着膜が緊密化するため、蒸着膜の防湿性を一層向上させることができる。
ここで、TD方向の熱収縮率(S2)は、以下の式により表される:
S2=(L20−L21)/L20 ×100
S2:TD方向の熱収縮率(%)
L20:第二の加熱処理前のTD方向の寸法
L21:第二の加熱処理後のTD方向の寸法
加熱温度及び加熱時間は、加熱処理に付す蒸着フィルムを構成するプラスチックフィルムや蒸着膜の組成に応じて、適宜設定することができるが、例えば、加熱温度は、室温以上〜200℃の範囲内、より好ましくは、55℃〜150℃の範囲である。加熱温度が室温以下であると、蒸着フィルムの膜質に変化がなく、防湿性の向上効果が得られない。一方、200℃より高いと、プラスチック基材フィルムが溶融し得るため好ましくない。加熱時間は、TD方向の熱収縮率(S2)が所望の値に至った時点で加熱を終了すればよく、例えば5秒以上〜30分間の範囲、より好ましくは10秒以上〜1分間の範囲であってよい。加熱方法としては、通常の電気抵抗加熱によるオーブン加熱、真空式オーブン加熱、温水を利用した加熱、赤外線ヒータによる加熱、超音波振動による加熱など、種々の加熱方法を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
本発明において、第二の加熱処理により収縮させた蒸着フィルムの蒸着膜が設けられた面に、ガスバリア性塗布膜を設けることにより、蒸着膜のクラック等の発生を防ぐと共に、炙りピンホール等の発生を皆無とし、これにより、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れた透明ガスバリア性フィルムを得ることができる。
本発明で使用するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種類のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記第二の加熱処理により収縮させた蒸着フィルムの蒸着膜が設けられた面上に塗工し、乾燥させることによって塗布膜を設け、20℃〜200℃、かつ使用したプラスチックフィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
なお、本発明のガスバリア性組成物の硬化工程における上記加熱条件下では、本発明の第一及び第二の加熱処理を経て得られた該蒸着フィルムは、変形及び変質を起こさないため、蒸着膜の緻密な状態が維持され、さらに平滑な塗膜表面が得られる。
上記一般式R1 nM(OR2)m中、R1としては、分枝を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
Mで表される金属原子としては、珪素、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム等を例示することができる。
本発明において珪素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1 nM(OR2)mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトラプロポキシシランSi(OC3H7)4、テトラブトキシシランSi(OC4H9)4等を例示することができる。
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られる透明ガスバリア性フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができる。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができ、例えば、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができ、例えば、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
また、ゾルゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三級アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができる。本発明においては、特に、N,N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾルゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸などの有機酸を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
まず、アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、第二の加熱処理により収縮させた蒸着フィルムの蒸着膜が設けられた面に、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、ガスバリア性組成物を塗布し、乾燥させる。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した蒸着膜を20℃〜200℃、かつプラスチックフィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成することができる。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾルゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、蒸着フィルム上の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
本発明において、ガスバリア性塗布膜の乾燥膜厚は、ガスバリア性及びフレキシビリティの観点から、0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmであってよい。
上記により得られた、プラスチック基材フィルム/蒸着膜/ガスバリア性塗布膜、又はガスバリア性塗布膜/蒸着膜/プラスチック基材フィルム/蒸着膜/ガスバリア性塗布膜、の構成を有するフィルムにおいて、ガスバリア性塗布膜の上にさらに、蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを、この順序で、1回又は2回以上繰り返し積層して、本発明の透明ガスバリア性フィルムが得られる。
蒸着膜及びガスバリア性塗布膜の組成や形成方法は、上記のそれぞれの記載に準じる。本発明の透明ガスバリア性フィルムにおいて、各蒸着膜の材料及び蒸着方法等は、各層毎に独立して選択され、同一であっても、異なっていてもよい。ガスバリア性塗布膜についても同様である。
本発明の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とは、層間の密着が良好であるため、層間剥離が発生しにくく、繰り返し積層することが可能である。したがって、レトルト処理のような極めて過酷な処理条件にも適用可能な、高いガスバリア性を有するフィルムを得ることができる。
本発明の透明ガスバリア性フィルムは、レトルト処理に付される種々の包装体において使用するのに特に適している。
具体的には、本発明の透明ガスバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜を設けた面に、さらにシーラントフィルム、例えばヒートシール性樹脂フィルムを、例えばドライラミネート法等によりラミネートして積層材を得、該積層材2枚を、そのシーラントフィルム側の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその2枚を重ね合わせ、外周周辺の端部をヒートシールし、開口部を形成することによって、本発明に係る、レトルト処理用包装体を製造することができる。
また、本発明の透明ガスバリア性フィルムの最外層を形成するガスバリア性塗布膜層と、ヒートシール性樹脂フィルムとの間に、包装体の使用目的に応じて、更なる基材フィルムを任意に積層することができる。
なお、本発明においては、上記のようなレトルト処理に代えて、例えば、90℃位で30分間位煮沸して加熱殺菌処理等を施して、殺菌処理包装製品を製造することもできる。
本発明の包装体は、耐熱性、耐水性に優れ、レトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、内容物の充填包装適正及び品質保全性等に優れているものである。
[実施例1]
プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この基準熱収縮率(Sb)を180℃、30分で測定したところ、2.0%であった。
その後、上記の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、150℃の乾燥条件下で、30秒間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を0.3%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、該プラスチック基材フィルムを、巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出し、そのコロナ放電処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
酸素ガス導入後の蒸着チャンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ放電処理面
次いで、上記の蒸着フィルムを、150℃の乾燥条件で1分間加熱処理を行って収縮させ、TD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とした。
次いで、以下に示す組成に従って、組成a.正珪酸エチル(多摩化学工業株式会社製)、イソプロピルアルコール、0.5規定塩酸水溶液、イオン交換水、シランカップリング剤からなる加水分解液に、予め調製した組成b.のポリビニルアルコール水溶液を加えて攪拌し 、無色透明のガスバリア性組成物を得た。
組成a.
正珪酸エチル 16.00
イソプロピルアルコール 3.90
0.5規定塩酸水溶液 0.50
H2O 21.80
シランカップリング剤 1.60
(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
組成b.
ポリビニルアルコール 2.30
(RS−110:株式会社クラレ製、ケン化度=99%、重合度=1,000)
イソプロピルアルコール 2.700
H2O 51.20
合計 100.000 (wt%)
さらに、該ガスバリア性塗布膜を形成したフィルムを、巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、上記と同様にして、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、その蒸着膜面をプラズマ処理に付し、プラズマ処理面を形成した。
その後、該プラズマ処理面に、上記と同様にして、厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、1分間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を0.8%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、得られたプラスチック基材フィルム上に、実施例1と同様にして、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、得られた蒸着フィルムを加熱処理に付してTD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とし、蒸着膜のプラズマ処理面に、ガスバリア性塗布膜、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜、ガスバリア性塗布膜を順に形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、3分間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を1.6%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、得られたプラスチック基材フィルム上に、実施例1と同様にして、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、得られた蒸着フィルムを加熱処理に付してTD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とし、蒸着膜のプラズマ処理面に、ガスバリア性塗布膜、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜、ガスバリア性塗布膜を順に形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、30秒間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を0.3%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、該プラスチック基材フィルムを、プラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出し、そのコロナ放電処理面に、以下の蒸着条件により、膜厚200Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
反応ガス混合比:ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.2:5.0:2.5(単位:slm)
到達圧力:5.0×10-5mbar
製膜圧力:7.0×10-2mbar
フィルムの搬送速度:150m/min
パワー:35kW
次いで、実施例1と同様にして、上記の蒸着フィルムを加熱処理に付してTD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とし、蒸着膜のプラズマ処理面に、ガスバリア性塗布膜、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜、ガスバリア性塗布膜を順に形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、3分間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を1.6%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、得られたプラスチック基材フィルム上に、実施例4と同様にして、膜厚200Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、プラズマ処理面を形成し、蒸着フィルムを加熱処理に付してTD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とし、蒸着膜のプラズマ処理面に、ガスバリア性塗布膜、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜、ガスバリア性塗布膜を順に形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、30秒間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を0.3%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、該プラスチック基材フィルムを、マグネトロンスパッタリング装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出し、そのコロナ放電処理面に、以下の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化窒化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
到達圧力:5.0×10-5mbar
成膜圧力:5.0×10-3mbar
アルゴンガス流量:800sccm
窒素ガス流量:300sccm
印加電力:4.5kW
フィルムの搬送速度:0.2m/min
次いで、実施例1と同様にして、上記の蒸着フィルムを加熱処理に付してTD方向の熱収縮率(S2)を0.1%とし、蒸着膜のプラズマ処理面に、ガスバリア性塗布膜、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜、ガスバリア性塗布膜を順に形成し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で用いたものと同じ、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これを、150℃の乾燥条件下で、30秒間加熱処理を行って収縮させて、TD方向の熱収縮率(S1)を0.3%とし、所望のプラスチック基材フィルムを得た。
次いで、実施例1と同様にして、該プラスチック基材フィルム上に、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜と、ガスバリア性塗布膜とを交互に積層し、本発明の透明ガスバリア性フィルムを得た。ただしここで、第二の加熱処理は、180℃で1分間行い、TD方向の熱収縮率(S2)を1.8%とした。
第一の加熱処理を施さない以外は、実施例1と同様の方法で、透明ガスバリア性フィルムを製造した。
第一の加熱処理を施さない以外は、実施例4と同様の方法で、透明ガスバリア性フィルムを製造した。
第一の加熱処理により、TD方向の熱収縮率(S1)を0.1%とした以外は、実施例4と同様の方法で、透明ガスバリア性フィルムを製造した。
上記実施例1で記載した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、第一の加熱処理により、TD方向の熱収縮率(S1)を2.0%としたところ、巻取り中に多数のしわが発生したため、その後の加工工程に付すことができなかった。
第二の加熱処理により、TD方向の熱収縮率(S2)を2.3%とした以外は、実施例3と同様の方法で、透明ガスバリア性フィルムを製造した。
実施例1〜8及び比較例1〜3、5で作成した透明ガスバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜を設けた面に、15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム及び60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネーション法で順次積層し、積層材を得た。該積層材2枚を用意し、外周周辺の端部をヒートシールし、開口部を形成することによって、本発明に係るレトルト処理用包装体を製造した。
該包装体に内容物として水を充填して四方パウチサンプルを作成し、120℃、30分、2気圧で加熱殺菌処理を行い、処理前後での酸素透過度及び水蒸気透過度を測定し、性能を評価した。
(a)酸素透過度測定:酸素透過度を、25℃、100%RHの雰囲気下で、酸素透過度測定装置(モダンコントロール社製、MOCON OXIRAN)を使用して、JIS K7126に準じて測定した。
(b)水蒸気透過度測定:水蒸気透過度を、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製、MOCON PARMATRAN)を使用して、JIS K7129に準じて測定した。
結果を表1に示す。
2a、2b:蒸着膜
3a、3b:ガスバリア性塗布膜
21:低温プラズマ化学気相成長装置
22、42:真空チャンバー
23、43:送り出しロール
24、33:補助ロール
25:冷却・電極ドラム
26、27:ガス供給装置
28:原料揮発供給装置
29:原料供給ノズル
30:グロー放電プラズマ
31:電源
32:マグネット
34、53:巻き取りロール
35:真空ポンプ
41:巻き取り式真空蒸着装置
44、45、51、52:ガイドロール
46:コーティングドラム
47:るつぼ
48:蒸着源
49:酸素ガス吹出口
50:マスク
Claims (15)
- プラスチックフィルムを加熱処理し、TD方向の熱収縮率(S1)が、基準熱収縮率(Sb)の10〜90%の値となるように収縮させてプラスチック基材フィルムとし、
該プラスチック基材フィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を設けて蒸着フィルムとし、
さらに、該蒸着フィルムを加熱処理して、TD方向の熱収縮率(S2)が、0.1〜2.0%となるように収縮させ、
該収縮させた蒸着フィルムの蒸着膜が設けられた面に、ガスバリア性塗布膜を設け、
該ガスバリア性塗布膜の上にさらに、蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを、この順序で、1回または2回以上繰り返し積層することを特徴とする透明ガスバリア性フィルム。 - プラスチックフィルムが、2軸延伸加工した樹脂のフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 少なくとも1つの蒸着膜が、無機酸化物、無機窒化物または無機酸化窒化物の蒸着膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 少なくとも1つの蒸着膜が、物理気相成長法により形成された酸化アルミニウムの蒸着膜であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 少なくとも1つの蒸着膜が、化学気相成長法により形成された炭素含有酸化珪素の蒸着膜であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性塗布膜が、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種類のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及びエチレン・ビニルアルコール共重合体の少なくともいずれか一方とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなる膜であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 一般式R1 nM(OR2)m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタニウム、または、アルミニウムから選択される金属原子を表すことを特徴とする、請求項6に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- アルコキシドが、アルコキシラン、アルコキシドの加水分解物、または、アルコキシドの加水分解縮合物からなることを特徴とする、請求項6または7に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性塗布膜が、シランカップリング剤を含むガスバリア性組成物からなる膜であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工し、乾燥させて得られる塗工膜を、20℃〜200℃で、かつ、上記プラスチックフィルムの融点より低い温度で10秒〜10分間加熱処理して得られる硬化膜からなることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 塗工膜が、2層またはそれ以上積層されてなることを特徴とする、請求項10に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性組成物が、水に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三級アミンからなるゾルゲル法触媒を使用するゾルゲル法によって重縮合して得られることを特徴とする、請求項6〜11のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 第三級アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンであることを特徴とする、請求項12記載の透明ガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性組成物が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの水を使用するゾルゲル法によって重縮合して得られることを特徴とする、請求項6〜13のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルム。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性フィルムからなる包装体。
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