JP2010253502A - 中空鋳物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定のキャビティ形状を有する金型1を用いて、中空部材10を鋳ぐるむことにより中空鋳物を製造する中空鋳物の製造方法であって、中空部材10を金型1のキャビティ内に位置決めして、前記キャビティ内に溶湯を供給して、前記溶湯の凝固時に中空部材10内部に流体を供給することにより中空部材10を膨張させる。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の中空鋳物の製造方法は、製作すべき中空鋳物の中空形状と同一形状を有する薄肉中空部材を製作し、この薄肉中空部材を鋳ぐるむことで、中空鋳物を製造している。詳細には、(1)中空部材を金型キャビティ内に配置し、(2)中空部材を除く金型キャビティ内に溶湯を充填することにより、(3)金型キャビティ内に充填された溶湯は凝固を完了して凝固金属になると共に中空部材と一体化し、中空部材が鋳ぐるまれる。このようにして、中空鋳物ができあがる。
引け巣が発生すると、例えば中空部材を中空鋳物の冷却に用い、中空部材内部に冷却水を流すことにより中空鋳物を冷却する場合に、引け巣の断熱作用により、中空鋳物の熱が中空部材に円滑に伝達せずに中空鋳物が十分に冷却されず、ひいては中空鋳物の機能を損なう可能性がある。そこで、中空鋳物の機能を確保するには引け巣の発生を抑制する必要がある。
しかし、弾性体の溶湯への押圧力が小さいため引け巣の抑制力が小さく、さらに、弾性体の膨張する部分をコントロールできず、狙った箇所(例えば、鋳ぐるみ界面などの引け巣が発生しやすい箇所)の引け巣の発生を抑制することが困難な点で不利である。
以下に、本発明に係る中空鋳物の製造方法の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
「中空部材10を鋳ぐるむ」とは、中空部材10の外周部分に金属(鋳造用アルミ合金等)を溶着することである。
中空部材10の鋳ぐるみは、金型1のキャビティ内に中空部材10が予め配置されている状態において、中空部材10が配置されている部分を除く金型1のキャビティ内に溶湯(溶融状態の鋳造用アルミ合金等)が充填されることにより行われる。
金型1の外周部の所定位置(本実施形態では、固定金型1aの所定位置)には、金型1のキャビティ内外を連通し、中空部材10を嵌入可能な嵌入孔2が形成されている。また、金型1には、金型1のキャビティ内に溶湯を供給可能な供給孔3が形成されている。供給孔3は溶湯を押し出す射出装置(不図示)に接続されており、当該射出装置の作動により溶湯が供給孔3を通じてキャビティ内に供給される。
中空部材10は、所定部分において肉厚が一部薄肉化されており、他の部分に比べて肉厚の薄い薄肉部13が形成されている。
開口部11は流体(オイル、空気等)を供給可能な加圧装置(不図示)に接続されており、当該加圧装置により開口部11を通じて中空部材10内部に流体が供給可能に構成されている。中空部材10は、内部に流体を供給されると、当該流体から受ける流体圧で膨張可能に構成されており、特に薄肉部13から膨張していく。
詳細には、可動金型1bが固定金型1aに衝合されている状態において、中空部材10を底部12側から金型1の嵌入孔2に嵌入することにより、金型1のキャビティ内の所定位置に底部12側(薄肉部13)が配置され、金型1のキャビティ外に開口部11側が配置される。
金型1のキャビティ内に供給された溶湯は、縁側(金型1のキャビティ面に接する部分)から内側に向けて凝固していく。
詳細には、金型1のキャビティ内に溶湯が供給されると、溶湯の熱が中空部材10にこもる。これにより、鋳ぐるみ界面(中空部材10外周部)にある溶湯の方が他の位置にある溶湯に比べて冷却速度が遅くなり、凝固が遅れるので、鋳ぐるみ界面に引け巣が発生しやすくなる。しかし、中空部材10を膨張させることにより、引け巣が占める予定だった体積分(鋳ぐるみ界面であった部分)が、代わりに中空部材10の膨張した体積分で占められ、鋳ぐるみ界面に引け巣が発生することが抑制される。
そして、金型1のキャビティ内の溶湯が凝固を完了して凝固金属になると共に中空部材10と一体化し、中空部材10が鋳ぐるまれ、当該凝固金属と中空部材10とが一体化したものである中空鋳物ができあがる。
つまり、前記温度センサにより検出される金型1のキャビティ内の溶湯の温度が所定値以下になるときを、引け巣が発生し始めるときと判断する。そして、前記温度センサの検出値(金型1のキャビティ内の溶湯の温度)が所定値以下になるタイミングで、前記加圧装置により中空部材10内部に流体を供給して薄肉部13を膨張させる。
また、中空部材10内部に流体を供給したときに膨張しやすい薄肉部13を中空部材10の所定部分に形成し、さらに薄肉部13の形成位置を適宜位置に設定することにより、中空部材10の特定箇所に膨張しやすい部分を設定できる。例えば、薄肉部13を特に引け巣の発生しやすい箇所に可及的に近づけて形成することにより、薄肉部13を引け巣の発生しやすい箇所近傍で確実に膨張させることができ、引け巣の発生を確実に抑制できる。
以下では、第一実施形態に関する一実施例である実施例1について説明する。本実施例では、公知の中子の代替として本発明を適用し、前述の(3)で薄肉部13を膨張させることを利用して、中空部材10の形状をコントロールし、所望の形状に変形する。
本実施例では、図2に示すように、中空部材10の一例であるアルミパイプ10a・10b・10cとエンジンのシリンダヘッド4とを一体に鋳ぐるみ、アルミパイプ10a・10b・10cとシリンダヘッド4(吸気ポート4a及び排気ポート4b)とが一体形成された中空鋳物(アルミパイプ10a・10b・10cを含むエンジン)を製造する。
鋳ぐるみ後のアルミパイプ10a・10b・10cはウォータージャケットとしてエンジンのシリンダヘッド4(特に、エンジンの燃焼室等)の冷却に用いられ、アルミパイプ10a・10b・10c内部に冷却水等が流されることによりエンジンが冷却される。
これにより、鋳ぐるみ後のアルミパイプ10a・10b・10cをエンジンの冷却に用いるとき、エンジンの冷却効果を向上できる。
このように、アルミパイプ10a・10b・10cとエンジンのシリンダヘッド4とを一体に鋳ぐるむ際に薄肉部13a・13a・・・をそれぞれ膨張させることを利用してアルミパイプ10a・10b・10cの形状を所望の形状(エンジンの冷却効果を向上できる形状)に変形できる。
さらに、上述のように、鋳ぐるみの界面(各アルミパイプの外周部とシリンダヘッド4との界面)における引け巣の発生を抑制できるので、ウォータージャケットとして用いられるアルミパイプ10a・10b・10cの性能を確保できる。
特に、中子を用いて中空鋳物を製造する際の問題点である、中子を除去する工程が必要となる点、中子に熱がこもり、中子界面周辺に溶湯の凝固収縮によって引け巣が発生し易い点に対して有利である。
以下に、本発明に係る中空鋳物の製造方法の第二実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では第一実施形態の中空鋳物の製造方法と異なる部分について説明し、同様の部材に対しては同一符号を付し、詳細な説明およびそれに付随する効果等の記載は省略する。
金型1のキャビティ内に供給された溶湯は、縁側(金型1のキャビティ面に接する部分)から内側に向けて凝固していく。
このとき、断熱材塗布部分15周辺にある溶湯の熱が断熱材14により中空部材10に流れず、断熱材塗布部分15周辺にある溶湯の方が他の位置にある溶湯に比べて冷却速度が遅くなり、凝固が遅れるので、鋳ぐるみ界面(断熱材塗布部分15周辺)に集中的に引け巣が発生しやすくなる。つまり、断熱材14により、断熱材塗布部分15周辺にある溶湯の凝固が遅れ、断熱材塗布部分15周辺に引け巣が集中的に発生しやすくなる状況が作り出される。
なお、前述のように断熱材塗布部分15周辺にある溶湯は断熱材14により凝固が遅れ、最後に凝固する。つまり、断熱材塗布部分15周辺の溶湯が凝固し始めるとき、断熱材塗布部分15周辺の溶湯が溶融(半溶融)状態にあるのに対して、他の位置にある溶湯は凝固状態にある。従って、断熱材塗布部分15周辺の溶湯が凝固し始めるとき、中空部材10に流体圧が加えられると、中空部材10において、特に断熱材塗布部分15が膨張し、他の部分の膨張が抑制される。
そして、金型1のキャビティ内の溶湯が凝固を完了して凝固金属になると共に中空部材10と一体化し、中空部材10が鋳ぐるまれ、中空鋳物ができあがる。
また、中空部材10外周面における断熱材14を塗布する位置を適宜変更することにより、中空部材10の膨張させる部分を適宜位置に設定でき、中空部材10の形状をコントロールできる。
これに対し、本実施形態では、溶湯の凝固時に断熱材塗布部分15を膨張させることにより、引け巣が占める予定だった体積分が、代わりに断熱材塗布部分15の膨張した体積分で占められるように構成するので、引け巣の発生を確実に抑制できる。
以下では、第二実施形態に関する一実施例である実施例2について説明する。本実施例では、公知の鋳抜きピンの代替として本発明を適用し、前述の(1)〜(4)の工程に加えて、下記の(5)の工程を経て、シリンダブロック5(図6参照)にクランクキャップ固定用のボルト穴を形成する。
(5)アルミパイプ10dの内周面を削ってネジ加工を施し、シリンダブロック5にボルト穴を形成する。
アルミパイプ10dは、ボルト穴を構成する部材であり、有底円筒形状を有し、一端が開口して開口部11をなし、他端が閉塞して底部12をなしている。底部12側の外周面には断熱材14が塗布されている。さらに、底部12の肉厚は他の部分の肉厚よりも薄く設定されており、例えば、底部12の肉厚d1を1mmとし、他の部分(側部)の肉厚d2を2mmとする。
特に、鋳抜きピンを用いて中空鋳物を製造する際の問題点である、中空形状の自由度が小さい点、金型形状が複雑となる点、メンテナンス性に劣る点に対して有利である。
10 中空部材
10a・10b・10c・10d アルミパイプ
13・13a 薄肉部
14 断熱材
Claims (3)
- 所定のキャビティ形状を有する金型を用いて、中空部材を鋳ぐるむことにより中空鋳物を製造する中空鋳物の製造方法であって、
前記中空部材を前記金型のキャビティ内に位置決めして、
前記キャビティ内に溶湯を供給して、
前記溶湯の凝固時に前記中空部材内部に流体を供給することにより前記中空部材を膨張させる中空鋳物の製造方法。 - 前記中空部材の所定部分には、他の部分に比べて肉厚が薄く設定される薄肉部が形成される請求項1に記載の中空鋳物の製造方法。
- 前記中空部材の所定部分には、断熱材が塗布される請求項1に記載の中空鋳物の製造方法。
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