JP2009262190A - ダイカスト鋳物 - Google Patents
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Abstract
【課題】粥状凝固型の凝固様式をもつ金属のダイカスト鋳造において、局部加圧により最終凝固部に良好に溶湯が補給されるとともに、局部加圧することで発生することがある鋳物の割れや変形が防止された、欠陥の少ない高品質なダイカスト鋳物を提供する。
【解決手段】最終凝固部をもつ肉厚部と、肉薄部と、を備え、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属の溶湯がプランジャーにより加圧充填されダイカスト鋳造されたダイカスト鋳物であって、
前記肉厚部に前記溶湯が充填された後、局部加圧によって前記肉薄部を通じて該肉厚部の前記最終凝固部に該溶湯を補給するときに形成される該肉薄部から該肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有する。
肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面にもつダイカスト鋳物は、ひけ巣発生部位への溶湯補給が十分にされているとともに、割れや偏析などの欠陥が少ない。
【選択図】図4
【解決手段】最終凝固部をもつ肉厚部と、肉薄部と、を備え、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属の溶湯がプランジャーにより加圧充填されダイカスト鋳造されたダイカスト鋳物であって、
前記肉厚部に前記溶湯が充填された後、局部加圧によって前記肉薄部を通じて該肉厚部の前記最終凝固部に該溶湯を補給するときに形成される該肉薄部から該肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有する。
肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面にもつダイカスト鋳物は、ひけ巣発生部位への溶湯補給が十分にされているとともに、割れや偏析などの欠陥が少ない。
【選択図】図4
Description
本発明は、マグネシウム合金のように固液共存状態で凝固する金属のダイカスト鋳造に関するものである。
ダイカスト鋳造では、キャビティに高速で溶湯を充填するときに巻き込まれるガスや、凝固収縮に起因する鋳巣の発生が問題となる。特に、肉薄部と肉厚部とをもつ複雑形状の鋳物の場合、凝固の遅い肉厚部が最終凝固部となり、肉厚部にひけ巣が発生する。たとえば、ダイカスト鋳造により製造されるケース、カバー、ハウジングなどの鋳物には、鋳物に備品を取り付けたり鋳物と他の部品とを締結したりするために、肉厚部に穴加工やネジ加工が施される。このとき、肉厚部に鋳巣が存在すると、締結力不足、鋳物の強度不足、圧漏れやオイル漏れの原因となることがある。
そこで、ダイカスト鋳造においては、キャビティに溶湯が充填された後、充填された溶湯に対して、局部加圧(スクイズ)が行われている。局所加圧により、鋳巣の発生部位に確実に溶湯を補給することで、鋳巣の発生が防止される。
たとえば、特許文献1では、キャビティ内の溶湯温度を計測して、キャビティ内の溶湯が凝固しつつある最適状態の溶湯温度でスクイズピンを発進させて局部加圧を行う方法が開示されている。スクイズピンは、キャビティ内の温度がピークを経た後、予め設定した温度に降下した時点で発進される。
引用文献2に開示されているダイカスト鋳造では、鋳造条件の変動に応じて加圧条件を制御する。金型温度および鋳造圧の持続時間と、局部加圧の開始時期および加圧速度と、の関係を鋳造製品のひけ巣発生を防止する最適関係として予め求めておく。鋳造中に金型温度および鋳造圧の持続時間を実測して、これらの実測値より上記最適関係に基づいて設定した条件で局部加圧を行う。
また、引用文献3には、溶湯温度を検出する手段と、検出温度に基づいて温度勾配を求める演算手段と、温度勾配に基づいて加圧速度を導出する手段と、得られた加圧速度の良否を判定する手段と、検出温度が基準温度範囲内であるか否か判定する手段と、局部加圧開始時期および加圧速度の条件を設定する手段と、を備えるダイカスト鋳造の局部加圧制御装置が開示されている。
特開平4− 94854号公報
特開平4−178255号公報
特開平8−243714号公報
上記の各特許文献で提案されている手法は、キャビティの壁面から凝固が進行する表皮形成型の凝固様式をもつアルミニウム合金(ADC12など)のダイカスト鋳造を想定していると考えられる。表皮形成型のアルミニウム合金は、凝固途中であっても溶湯の流動性がよく、溶湯補給性に優れ、局部加圧による溶湯補給の効果が、ほぼ凝固終了まで続く。よって、局部加圧により鋳物を高品質化するためには、少なくとも、局部加圧の開始時間および表皮形成凝固の進行に応じた加圧速度を、適切にすればよい。
一方、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の凝固様式をもつ金属として、マグネシウムダイカスト合金が挙げられる。粥状凝固は、表皮形成凝固に比べて溶湯補給性が劣るため、マグネシウム合金のダイカスト鋳造では、凝固途中であっても流動性が悪くなり、局部加圧による溶湯の補給が停止することがある。半凝固状態の金属は脆弱であるため、流動しにくい状態で溶湯を加圧し続けると、局部加圧に起因した割れや塑性変形、低融点共晶組成が偏析した固液分離相が鋳物に生じるおそれがある。したがって、上記の各特許文献に記載の技術を粥状凝固型の凝固様式をもつ金属のダイカスト鋳造に単に適用すると、この種の金属特有の溶湯の補給性が全く考慮されていないため、溶湯の補給が不十分であったり、局部加圧によって割れや組成偏析などの欠陥が発生したり、といった問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑み、粥状凝固型の凝固様式をもつ金属のダイカスト鋳造において、局部加圧により最終凝固部に良好に溶湯が補給されるとともに、局部加圧することで発生することがある鋳物の割れや変形が防止された、欠陥の少ない高品質なダイカスト鋳物を提供することを目的とする。
本発明のダイカスト鋳物は、最終凝固部をもつ肉厚部と、肉薄部と、を備え、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属の溶湯がプランジャーにより加圧充填されダイカスト鋳造されたダイカスト鋳物であって、
前記肉厚部に前記溶湯が充填された後、局部加圧によって前記肉薄部を通じて該肉厚部の前記最終凝固部に該溶湯を補給するときに形成される該肉薄部から該肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有することを特徴とする。
前記肉厚部に前記溶湯が充填された後、局部加圧によって前記肉薄部を通じて該肉厚部の前記最終凝固部に該溶湯を補給するときに形成される該肉薄部から該肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有することを特徴とする。
本発明のダイカスト鋳物は、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属からなり、肉薄部と肉厚部とを備える。肉厚部は、最終凝固部でひけ巣が発生する。局部加圧することで、最終凝固部(肉厚部のひけ巣発生部位)に溶湯が補給される。局部加圧によって形成される肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面にもつ本発明のダイカスト鋳物は、ひけ巣発生部位への溶湯補給が十分にされているとともに、割れや偏析などの欠陥が低減されている。
筋状の流れ痕は、局部加圧により最終凝固部に補給される溶湯が最適な固液共存状態(固相率)にあるときに、形成される。補給される溶湯が流動中には、流れの中央部に固相が多くなるため、肉薄部の表層側と中央部とで固相の割合が異なることから筋状になる。最適な固液共存状態よりも液相の割合が多いと、局部加圧により溶湯が流れるときに全体的に液相が多い状態となるため、鋳物の断面に明確な流れ痕は形成されにくい。このとき、肉厚部に溶湯が達しても補給量はわずかであり、補給された溶湯の凝固収縮により肉厚部にひけ巣が発生しやすい。一方、最適な固液共存状態よりも固相の割合が多くても肉薄部の断面に筋が形成されるが、溶湯の流動性が悪いため、肉厚部にまで達する流れ痕にはならない。つまり、肉厚部のひけ巣発生部位に溶湯が補給されない。また、局部加圧により補給される溶湯の固相の割合が多すぎて溶湯の流動が困難な状態で局部加圧を行うと、凝固が進行した表層を含む肉薄部全体が流動して鋳物に割れや組成偏析などの欠陥が生じ、流れ痕も形成されない。
すなわち、肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面にもつことは、溶湯の凝固の進行状態が最適なタイミングで局部加圧が行われ、本発明のダイカスト鋳物に鋳巣や欠陥が少ないことを示す。
また、粥状凝固型の金属を用いたダイカスト鋳造では、局部加圧を行うことで、キャビティ壁面への密着性も向上する。その結果、本発明のダイカスト鋳物は、その表面状態が良好である。
以下に、本発明のダイカスト鋳物を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のダイカスト鋳物は、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属からなり、最終凝固部をもつ肉厚部と、肉薄部と、を備える。粥状凝固型の金属としては、たとえば、ASTM規格でAZ91D、AM60B、AM50といったマグネシウム合金、AC4C、AC2B、ADC6といったアルミニウム合金、などが挙げられる。また、肉厚部と肉薄部の寸法や形状に特に限定はない。肉厚部に最終凝固部を有する形状をもつ製品であれば、本発明のダイカスト鋳物として好適である。本発明のダイカスト鋳物の具体例としては、エンジンのシリンダヘッドカバー、ミッションケース、ホイール、バルブ部品、エンジンブロック、オイルパン、エンジンブラケット、クランクケース、シート部品等が挙げられる。なお、最終凝固部は、鋳物の形状などから溶湯流動解析、凝固解析などの方法により解析することが可能である。
本発明のダイカスト鋳物は、粥状凝固型の金属の溶湯がプランジャーにより加圧充填されダイカスト鋳造されてなる。ダイカスト鋳造には、キャビティと、キャビティと連通しプランジャーにより溶湯をキャビティに加圧充填する射出部と、を備える一般的なダイカスト鋳造装置を用いることができる。本発明のダイカスト鋳物は、肉厚部の外面を区画する第一キャビティと、第一キャビティと連通し肉薄部の外面を区画する第二キャビティと、を備える製品キャビティをもち、第二キャビティと連通する湯道を通じて溶湯を充填して鋳造されるとよい。第一キャビティおよび第二キャビティは、ダイカスト鋳物の寸法および形状に応じた寸法や形状であれば、特に限定はない。たとえば、溶湯の充填方向に垂直な少なくとも一方向の厚さが、第一キャビティのほうが第二キャビティよりも厚いとよい。ここで、「溶湯の充填方向」とは、第一キャビティおよび第二キャビティを移動する溶湯の流動方向とする。このとき、溶湯の充填方向に垂直な少なくとも一方向の厚さは、第一キャビティと第二キャビティとの間で不連続に変化しても連続的に変化しても、いずれであってもよい。
そして、本発明のダイカスト鋳物は、射出部(プランジャー)と肉薄部との間で局部加圧されることで、肉厚部の最終凝固部に溶湯が補給される。加圧部は欠陥が出来やすいため、製品キャビティ、特に肉厚部から離れた位置に加圧キャビティを配設するのが望ましい。
本発明のダイカスト鋳物は、肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有する。流れ痕は、局部加圧して最終凝固部に溶湯を補給するときに形成される。
流れ痕は、溶湯の充填終了後の所定の時間に局部加圧を開始してから、所定の時間に加圧を停止することで形成されるとよい。既に説明したように、局部加圧により補給される溶湯の固相率が望ましい範囲内にないと、肉厚部の最終凝固部への補給が不十分となったり、局部加圧したことで鋳物に欠陥が生じたり、といった問題がある。したがって、補給される溶湯の固相率が望ましい範囲内にあるタイミングで局部加圧を行う必要がある。そのため、局部加圧は、溶湯の補充後、所定の時間内に開始および停止させるのがよい。また、局部加圧の加圧力が小さすぎると、肉厚部に十分に溶湯が補給されず、最終凝固部にてひけ巣が発生しやすい。加圧力が大きすぎると、溶湯が大きく加圧されて、溶湯の大きな流動により鋳物に欠陥が発生するおそれがある。すなわち、局部加圧の可能な時間および加圧力は、キャビティ(すなわちダイカスト鋳物)の寸法や形状に応じて最適な条件を適宜選択する必要がある。なお、射出部からキャビティへの溶湯の充填においては、従来と同等の射出条件(圧力、溶湯温度など)を選択すればよい。
肉薄部から肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有する本発明のダイカスト鋳物は、肉厚部への溶湯の補給が十分に行われるため、気孔率が低減される。具体的には、肉厚部の気孔率が2%以下さらには1.5%以下であるのが好ましい。なお、本明細書において「気孔率」とは、次の式で定義される。
気孔率[%]=(1−(肉厚部の比重)/(使用した金属の比重))×100
気孔率[%]=(1−(肉厚部の比重)/(使用した金属の比重))×100
以上、本発明のダイカスト鋳物の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明のダイカスト鋳物の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[ダイカスト鋳造装置]
下記の鋳物の作製に用いたダイカスト鋳造装置の金型を図1に示す。金型1は、固定型10と、固定型10に当接する可動型20とを備える。金型1は、固定型10と可動型20との当接面にキャビティ30を有する。キャビティ30は、第一キャビティ31、第二キャビティ32、加圧キャビティ39および湯道35からなる。第一キャビティ31は、ドーナツ型のダイカスト鋳物の外周側に位置する肉厚部の外面を区画する。第一キャビティ31と連通する第二キャビティ32は、ダイカスト鋳物の内周側に位置する肉薄部の外面を区画する。このとき、第一キャビティ31は、第二キャビティ32よりも容積が大きい。中心部に位置する加圧キャビティ39は、第二キャビティ32を介して第一キャビティ31と連通する。加圧キャビティ39に局部加圧がなされると、肉薄部である第二キャビティ32の一部は、第一キャビティ31に対して湯道の役割を果たす。
下記の鋳物の作製に用いたダイカスト鋳造装置の金型を図1に示す。金型1は、固定型10と、固定型10に当接する可動型20とを備える。金型1は、固定型10と可動型20との当接面にキャビティ30を有する。キャビティ30は、第一キャビティ31、第二キャビティ32、加圧キャビティ39および湯道35からなる。第一キャビティ31は、ドーナツ型のダイカスト鋳物の外周側に位置する肉厚部の外面を区画する。第一キャビティ31と連通する第二キャビティ32は、ダイカスト鋳物の内周側に位置する肉薄部の外面を区画する。このとき、第一キャビティ31は、第二キャビティ32よりも容積が大きい。中心部に位置する加圧キャビティ39は、第二キャビティ32を介して第一キャビティ31と連通する。加圧キャビティ39に局部加圧がなされると、肉薄部である第二キャビティ32の一部は、第一キャビティ31に対して湯道の役割を果たす。
図3は、金型1を用いた鋳造によって得られるドーナツ型のダイカスト鋳物の断面を示す図面代用写真である。図3では、第一キャビティ31で外面を区画された肉厚部をC1、第二キャビティ32の一部で外面を区画された肉薄部をC2で示す。このとき、第二キャビティ32の一端は第一キャビティ31に連通するが、他端部側は単なる湯道であって、他端で加圧キャビティ39と連通する。
湯道35は、射出口36を介して射出スリーブ40と連通する。射出スリーブ40は、固定型10の下部に位置し、内部に摺動可能な射出プランジャー41を備える。また、射出スリーブ40の側面には、溶湯が供給される給湯口42が形成されている。
加圧キャビティ39は、可動型20側の壁面より加圧キャビティ39内に抜き差し可能なスクイズピン38を有する。スクイズピン38は、図示しない制御手段により、溶湯の充填終了後の所定の時間に加圧キャビティ39へと所定の加圧力で移動させてから、移動後の位置で停止させる。
[マグネシウムダイカスト鋳物の製造]
上記のダイカスト鋳造装置を用いマグネシウム合金(AZ91D:Mg−9%Al−0.7%Zn−0.3%Mn、比重1.81)からなるダイカスト鋳物を鋳造した。マグネシウム合金の溶湯Mを、給湯口42より給湯したのち、射出プランジャー41を前進させて、キャビティ30に溶湯Mを充填した。溶湯Mが第一キャビティ31に満たされ充填が終了後、スクイズピン38を移動させて、局部加圧を行った。冷却後、固定型10と可動型20とを分離し、鋳物を取り出した。
上記のダイカスト鋳造装置を用いマグネシウム合金(AZ91D:Mg−9%Al−0.7%Zn−0.3%Mn、比重1.81)からなるダイカスト鋳物を鋳造した。マグネシウム合金の溶湯Mを、給湯口42より給湯したのち、射出プランジャー41を前進させて、キャビティ30に溶湯Mを充填した。溶湯Mが第一キャビティ31に満たされ充填が終了後、スクイズピン38を移動させて、局部加圧を行った。冷却後、固定型10と可動型20とを分離し、鋳物を取り出した。
上記の手順において、溶湯Mの充填終了からスクイズピンを移動させるまでの時間を変化させて、局部加圧を行い、複数の鋳物を作製した。いずれにおいても、スクイズピンの移動量および加圧力は同じとなるように設定した。
局部加圧の効果を確認するために、得られた鋳物の肉厚部の比重を求めるとともに、肉薄部および肉厚部の断面観察を行った。結果を図2〜図11に示す。図2は、スクイズピンを移動させるタイミング(加圧タイミング)に対する肉厚部の気孔率の変化を示すグラフである。また、図3〜図6は、作製した複数の鋳物のうち、図2のグラフに示す異なる加圧タイミングにより作製した#11〜#14の鋳物の断面の写真であって、図7は鋳物#11、図8は鋳物#12、図9および図11は鋳物#13の断面を拡大して示す。これらの断面の観察は、実体顕微鏡および光学顕微鏡を用いて行った。また、図10は、#13の鋳物の表面を示す写真である。なお、気孔率は肉厚部位のみの比重をアルキメデス法により測定して、次式により求めた。
気孔率[%]=(1−(肉厚部の比重)/1.81)×100
気孔率[%]=(1−(肉厚部の比重)/1.81)×100
加圧タイミングが最も早い#11の鋳物では、溶湯の凝固が不十分であったために、流れ痕が明確に観察されず(図3)、肉厚部の気孔率が2%を超え、肉厚部への溶湯補給が不十分であった。また、図7に、#11の鋳物の肉厚部を拡大した断面写真を示す。#11の鋳物の肉厚部には、ひけ巣やガスの巻き込みが多く観察された。
#11の場合よりも加圧タイミングを遅くすることで、肉厚部の気孔率は低下した。#12の鋳物においては、肉厚部の気孔率は2%以下であり、肉薄部から肉厚部に至る部位に連続した流れ痕が観察された(図4)。流れ痕は、局部加圧により最適な固液共存状態にある溶湯が流動することで形成された。また、鋳物#12の肉厚部には、ひけ巣やガスの巻き込みはほとんど観察されなかった(図8)。なお、流れ痕が観察された加圧タイミングは、図2の点線で挟まれた範囲であった。
さらに加圧タイミングを遅くした#13の鋳物は、気孔率は2%以下であったが、流れ痕は観察されず、鋳物のコーナー部などに特異な塊状、棒状の組織が観察された(図5)。図9は、この塊状、棒状の組織を観察した図面代用写真である。局部加圧により固相と液相とが分離して生じた組織(固液分離相)が観察された。また、局部加圧により溶湯が流動する部位の鋳物表面に割れ(図10)が見られ、割れに起因した液相分離(合金元素濃度の高い部位)による偏析(図11)も確認された。
加圧タイミングを最も遅くした#14の鋳物では、流れ痕は観察されず(図6)、肉厚部にひけ巣やガスの巻き込みが多く観察された。加圧タイミングが遅すぎて固相率が高くなったために、肉厚部への溶湯の補給がなされなかったと思われる。
次に、局部加圧の加圧力を変化させて、上記と同様のマグネシウム合金(AZ91D)からなる複数のダイカスト鋳物を鋳造した。このとき、加圧タイミングは、図2において流れ痕が観察された一定のタイミングとした。
局部加圧の効果を確認するために、上記と同様の手順で、得られた鋳物の肉厚部の比重を求めるとともに、肉薄部および肉厚部の断面観察を行った。結果を図12〜図16に示す。図12は、局部加圧の加圧力に対する肉厚部の気孔率の変化を示すグラフである。また、図3〜図6は、作製した複数の鋳物のうち、図12のグラフに示す異なる加圧力により作製した#21〜#24の鋳物の断面の写真である。
#21の鋳物には流れ痕が観察されたが、加圧力が不十分であったため、肉厚部の気孔率が2%を超えた。また、#24の鋳物では、流れ痕の内部に塊状や棒状の固液分離相が生じた。粥状凝固型の凝固様式をもつマグネシウム合金のダイカスト鋳物では、必要以上の圧力で局部加圧を行った場合や、凝固が進行してからも加圧を続けた場合(#14)には、固液分離相が発生した。
1:金型
10:固定型
20:可動型
30:キャビティ
31:第一キャビティ 32:第二キャビティ
38:スクイズピン 39:加圧キャビティ(加圧部)
40:射出スリーブ(射出部)
41:射出プランジャー 42:給湯口
10:固定型
20:可動型
30:キャビティ
31:第一キャビティ 32:第二キャビティ
38:スクイズピン 39:加圧キャビティ(加圧部)
40:射出スリーブ(射出部)
41:射出プランジャー 42:給湯口
Claims (5)
- 最終凝固部をもつ肉厚部と、肉薄部と、を備え、固液共存状態で凝固する粥状凝固型の金属の溶湯がプランジャーにより加圧充填されダイカスト鋳造されたダイカスト鋳物であって、
前記肉厚部に前記溶湯が充填された後、局部加圧によって前記肉薄部を通じて該肉厚部の前記最終凝固部に該溶湯を補給するときに形成される該肉薄部から該肉厚部へと連続する筋状の流れ痕を断面に有することを特徴とするダイカスト鋳物。 - 前記粥状凝固型の金属は、マグネシウム合金である請求項1記載のダイカスト鋳物。
- 前記肉厚部の気孔率が2%以下である請求項1記載のダイカスト鋳物。
- 前記流れ痕は、前記溶湯の充填終了後、局部加圧を開始してから加圧を停止することで形成される請求項1記載のダイカスト鋳物。
- 前記肉厚部は、前記溶湯の充填方向に垂直な少なくとも一方向の厚さが、前記肉薄部よりも厚い請求項1記載のダイカスト鋳物。
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