JP2010253454A - 酸素酸イオン収着材の製造方法、酸素酸イオン収着材およびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸素酸イオン収着性のカチオン性基を有し、3次元網状構造を有する高分子物からなるイオン収着部とセルロース系材料からなる支持基材からなる酸素酸イオン収着材の製造方法において、アルカリセルロース化処理をしたセルロース基材をエポキシ基を有する多官能性化合物で処理し、エポキシ基と反応し得る基およびカチオン性基を同一分子に有する化合物あるいは別々に有する化合物を、必要に応じて多官能性化合物を反応させることで、酸素酸イオン収着性のカチオン性基を有し、3次元網状構造を有する高分子物を合成することを特徴とする水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
【選択図】なし
Description
(1)アニオン収着性基が導入された基体重合体の水への親和性は必要であるが、水に溶解したり、大きく膨潤することは収着材構造の破壊をもたらしてアニオン収着効率の低下や流水経路の詰まりを起こすこともあるため、水への親和性が適切に制御されていること
(2)アニオン収着性基が密集しているほどアニオン収着能が高まることから、酸素酸イオン収着性基は密集させること
(3)アニオン収着性基の密集したアニオン収着部に、イオン溶液が迅速に拡散できる間隙を有さすようにすること
などである。
また、支持基材としては、木材や植物からのセロールズ系の素材が使用され、各種木材のパルプ、天然繊維の木綿、麻などのセルロース系素材からなる単繊維、わた、糸、織布、不織布や、セルロースから製造された連続多孔質体、粒状体、粉状体などが使用される。セルロース素材としては、特に針葉樹からのセルロースやユーカリからのセルロースが好ましい。
本発明においては、先ず、支持材であるセルロース系材料にイオン収着部を結合するために、セルロース材料の表面を水酸化ナトリウムなどの苛性アルカリ溶液でアルカリセルロース化処理を行う。アルカリセルロース化処理に使用する苛性アルカリの量は特に制限しないが、セルロース表面に部分的に反応させる観点から、グルコース単位1モル当たりの苛性アルカリが0.05モルから1.0モルを使用することが好ましい。
(イ)アルキル(C1〜C6)アミン、ジアルキル(C1〜C6)アミン、(ジまたはトリ−)アルキレン(C2〜C4)(トリまたはテトラ−)アミン、(モノまたはジ−)アルキル(C1〜C4)(ジまたはトリ−)アルキレン(C2〜C4)(トリまたはテトラ−)アミンなどの低分子アミン類
(ロ)アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、ビニルメチルアミンからなるカチオン性基を有する単量体の(共)重合体、ポリエチレンイミンなどの重合体アミン類、
(ハ)アリルメチルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアルキル(C1〜C3)アミノアルキル(C2〜C3)(メタ)アクリレート、トリアルキル(C1〜C3)アンモニウムアルキル(C2〜C3)(メタ)アクリレート、3−ジアルキル(C1〜C3)アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−トリアルキル(C1〜C3)アンモニウム−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのカチオン性基を有する単量体の反応性共重合体、
(ニ)ポリオルニチン、ポリリジンなどのポリアミノ酸類
などから選ばれる1種以上のアミノ化合物が挙げられる。
以上に説明したような構造を有する酸素酸イオン収着材において、支持基材とアニオン収着部の割合(アニオン収着部/支持基材)は、例えば、体積比基準で、0.05/1〜3/1の範囲であることが望ましい。前記範囲よりもアニオン収着部が少ないとアニオン収着容量が小さくなり、大きすぎるとアニオン収着部へのイオン拡散が小さくなり、また支持基材の目詰まりを引き起こすおそれがある。
酸素酸イオンを含む処理原水の脱イオン処理方法としては、従来公知の処理方法に準ずるものであるが、好ましい処理方法を挙げる。
(1)酸素酸イオン収着材を水処理装置中に充填し、上部から流入させ充填物中を流下し下部から流出させる処理方法
(2)酸素酸イオン収着材や酸素酸イオン収着材組成物を水処理装置中に充填し、下部から注入して充填物中を上昇し、上部からオーバーフローさせる処理方法
などが挙げられる。
本発明にかかる酸素酸イオン収着材の酸素酸イオン収着性は、用いる酸素酸イオン収着性基や収着するイオンの種類によっては、pH依存性を示す場合がある。例えば、酸素酸イオン収着性基としてアミノ基が導入された酸素酸イオン収着材を用いてリン酸や6価クロム酸などの酸素酸イオンを収着する場合、pH2〜8、より好ましくはpH3〜8で優れた収着性を示す。そして、収着後に再びイオンを回収したい場合や酸素酸イオン収着材を再生したい場合には、前記pH範囲から外れるように、使用後の酸素酸イオン収着材を酸やアルカリで洗浄することにより、前記使用後の酸素酸イオン収着材から収着されたイオンを容易に溶離することもできるのである。
従来のリン酸排水の処理方法は、例えば、排水のpHを調整したのちに凝集剤を加えてフロックを形成させ、さらにpH調整したのちに凝集剤を加えて沈殿を生ぜしめ、最後に固液分離により沈殿物を除去するというプロセスを採用しており、処理が多工程に亘り、非常に煩雑で大規模な装置を必要とする。これに対して、本発明の処理方法は、リン酸排水を貯蔵した排水槽中の排水を、本発明の酸素酸イオン収着材を充填したイオン捕集槽へと導入し、通過後のイオンの除去された溶液をそのまま放流することができる。
両方法を対比すれば明らかなように、本発明にかかる酸素酸イオン収着材を用いれば、処理が簡素化でき、装置も小規模とすることができる。さらに、本発明にかかる酸素酸イオン収着材を用いた方法ではリン酸イオンは荷電により酸素酸イオン収着材に収着されているため、化学的洗浄により簡易に収着材を再生し、かつ、リン酸を回収することができる点において、経済的・環境的にも、イオンを凝集沈殿させて分離除去する従来法にはない利点を有するものである。
[実施例1]
攪拌機、加温装置を備えた反応容器に十分に叩解したセルロースパルプ10部と水40部を攪拌機によって混和し、これに2%水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し、攪拌した。そこへソルビトールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量:173、有効成分60質量%)5部を添加、攪拌して後、25℃に加温して2時間静置状態で反応させた。次に、ポリアリルアミン(重量平均分子量:15000、当量57.1)20%水溶液12部を添加、攪拌し、エポキシ基とポリアリルアミンのもつアミノ基との架橋反応を25℃、18時間静置状態で行い、セルロースにアミノ基を導入した。得られた反応混合物中の反応液をろ過し、水で十分に洗浄を行い、イオン収着材を得た。以下、「酸素酸イオン収着材−1」と称する。pHを指標とする酸/アルカリ中和滴定で測定した結果、イオン収着性基が3.70×10-3mol/g(モル)の割合で含まれていることが分かった。
実施例1で得られた酸素酸イオン収着材−1の0.02gを、F-、Cl-、NO2 -、Br-、NO3 -、PO4 3-、SO4 2-をそれぞれ10ppm含む混合イオン水溶液1L(pH6.8)に加えて、20分間撹拌したのち、各イオンの濃度を測定した。
その結果、PO4 3-は4.8ppm、SO4 2-は6.0ppmに減少し、他のイオンは初期濃度(10ppm)のままであった。
さらに、イオン収着材に収着された上記PO4 3-、SO4 2-は、0.01M水酸化ナトリウム水溶液をイオン収着材に流すことで、ほぼ100%溶離させることができた。以下のイオン収着試験でも同様に溶離回収が可能である。
酸素酸イオン収着材−1の0.02gを直径15mmのカラムに詰めて、pH6.8の条件で、100ppmリン酸水溶液を1ml/minの速度で流した。
カラム中のイオン収着材がPO4 3-を収着し、カラムを通じて流れた水溶液中にPO43-はしばらく検出されなかった。そして、800秒後に初めてPO43-が検出された。
この結果から、酸素酸イオン収着材−1のリン酸イオン捕集量は、イオン収着材1g当たり66.7mgであることが分かった。
pHを様々に変えたこと以外はアニオン収着試験2と同様の条件で、酸素酸イオン収着材−1を充填したカラムにリン酸水溶液を流し、カラム通過後の溶液中のPO4 3-濃度を測定し、その収着率を算出したところ、pH3〜8で優れた収着能を示すことが分かった。pH3以下では収着能は失われPO4 3-を溶離する。
酸素酸イオン収着材−1の0.01gを直径15mmのカラムに詰めて、濃度10ppmのCrO4 2-含有水溶液(pH6)を1ml/minの流速で流し、カラム通過後の溶液中のCrO4 2-濃度を測定したところ、0.02ppmに減少した。
酸素酸イオン収着材−1の0.2gを濃度10ppmの砒素溶液(pH6.5)中に浸漬し、2時間撹拌した。5分で90%、30分で96%除去できたことが分かる。
Claims (11)
- 酸素酸イオン収着性のカチオン性基を有し、3次元網状構造を有する高分子物からなるイオン収着部とセルロース系材料からなる支持基材からなる酸素酸イオン収着材の製造方法において、アルカリセルロース化処理をしたセルロース基材をエポキシ基を有する多官能性化合物で処理し、エポキシ基と反応し得る基およびカチオン性基を同一分子に有する化合物あるいは別々に有する化合物を、必要に応じて多官能性化合物を反応させることで、酸素酸イオン収着性のカチオン性基を有し、3次元網状構造を有する高分子物を合成することを特徴とする水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
- 前記のカチオン性基が、アミノ基、イミノ基、第3級アミノ基、それらのアミノ基の酸塩、第4級アンモニウム基、ピリジン基、ピリジニウム基から選ばれる1種以上のカチオン性基である請求項1に記載の水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
- 前記支持基材が、木材パルプ、綿、麻、亜麻からなるセルロース系素材からなる単繊維、わた、糸、織布、不織布、連続多孔質体、粒状体、粉状体から選ばれる1種以上の支持基材である請求項1に記載の水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
- 前記エポキシ基を有する化合物が、エピハロヒドリン、ポリアルコールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリフェノールポリグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル(共)重合体から選ばれた1種以上のエポキシ化合物である請求項1に記載の水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
- 前記エポキシ基と反応し得る基およびカチオン性基を同一分子に有する化合物が、(イ)アルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、(モノまたはポリ−)アルキルポリアルキレンポリアミンからなる低分子アミン、(ロ)アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、ビニルメチルアミンからなるカチオン性基を有する単量体の(共)重合体、ポリエチレンイミンからなる重合体アミン、(ハ)ジアリルメチルアミン、ジアリルジメチルアミン、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、トリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレート、3−ジアルキルアミノ−2−ヒドロキシプロピルアルキル(メタ)アクリレート、3−トリアルキルアンモニウム−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなるカチオン性基を有する単量体の反応性共重合体、(ニ)ポリオルニチン、ポリリジンからなるポリアミノ酸から選ばれる1種以上の分子量が500〜10万のアミノ化合物であり、多官能性化合物がポリエポキシ化合物、ポリメチロール化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリカルボキシル化合物、ポリ無水カルボン酸化合物、ポリアルデヒド化合物あるいはポリカルボジイミド化合物である請求項1に記載の水処理に使用される酸素酸イオン収着材の製造方法。
- アルカリセルロース化処理をしたセルロース基材をエポキシ化合物で処理し、エポキシ基と反応し得る基およびカチオン性基を同一分子に有する化合物あるいは別々に有する化合物を、必要に応じて多官能性化合物を反応させることによって得られた、酸素酸イオン収着性のカチオン性基を有し、3次元網状構造を有する高分子物からなるイオン収着部とセルロース系材料からなる支持基材からなることを特徴とする水処理に使用される酸素酸イオン収着材。
- 酸素酸イオンを含む処理原水の脱イオン処理方法において、請求項1から5のいずれかに記載の酸素酸イオン収着材の製造方法によって得られた酸素酸イオン収着材および/または請求項6に記載の酸素酸イオン収着材を使用し、酸素酸イオンを含む処理原水を接触させて、前記処理原水に含まれるイオンを酸素酸イオン収着材に収着させることを特徴とする処理原水のイオン収着処理方法。
- 前記酸素酸イオンが、周期律表の3A族、4A族、5A族、6A族、7A族および3B族、4B族、5B族、6B族、7B族の元素の酸素酸イオンから選ばれる1種以上の酸素酸イオンである請求項7に記載の処理原水のイオン収着処理方法。
- 前記酸素酸イオンが、硼酸イオン、メタホウ酸イオン、燐酸イオン、亜燐酸イオン、ピロ燐酸イオン、砒酸イオン、亜ヒ酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオンからなる非金属元素の酸素酸イオンおよびウラン酸イオン、チタン酸イオン、スズ酸イオン、バナジン酸イオン、メタバナジン酸イオン、クロム酸イオン、二クロム酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、マンガン酸イオン、過マンガン酸イオンからなる金属元素の酸素酸イオンから選ばれる1種以上の酸素酸イオンである請求項7に記載の処理原水のイオン収着処理方法。
- 前記酸素酸イオン収着材の水処理装置中での充填方法が、単繊維状、わた状、糸状、織布状、不織布状、連続多孔質体状、粒体状、粉体状の収着材を浮遊状態、充填状態で使用されるか、糸状、紙状、織布状あるいは不織布状の収着材を円筒状、積層状および/または巻き込み状の形態で使用される請求項7に記載の処理原水のイオン収着処理方法。
- 酸素酸イオンを含む処理原水の脱イオン処理方法が、酸素酸イオン収着材を水処理装置中に充填し、上部から流入させ充填物中を流下し下部から流出させる処理方法および/または下部から注入して充填物中を上昇し、上部からオーバーフローさせる処理方法からなる請求項7に記載の処理原水のイオン収着処理方法。
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