JP2010248590A - 溶接熱影響部のctod特性が優れた鋼およびその製造方法 - Google Patents

溶接熱影響部のctod特性が優れた鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 小〜中入熱の多層溶接等において、−60℃のFL部のCTOD特性に加え、IC部のCTOD特性も満足させるこれまでにない優れたCTOD(破壊靭性)特性を有する高強度の鋼およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 質量%で、C:0.015〜0.045%、Si:0.05〜0.20%、Mn:2.0〜3.0%、P:0.008%以下、S:0.005%以下、Al:0.004%以下、Ti:0.005〜0.015%、Nb:0.005%以下、O:0.0015〜0.0035%、N:0.002〜0.006%を含有し、PCTODが0.065以下およびCeqHが0.235以下で、残部が鉄及び不可避不純物からなることを特徴とする溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
【選択図】 図1

Description

本発明は小入熱溶接から中入熱溶接の溶接熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)のCTOD特性が優れた鋼及びその製造法に関し、特に、小入熱溶接から中入熱溶接時に最も靭性が劣化するFL部やIC部のCTOD特性が極めて良好で優れた靭性を示す溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼及びその製造方法に関するものである。
近年、厳しい使用環境で使用される鋼材が要求されている。例えば、北極圏等の寒冷地域等で用いられる海洋構造物や耐震性建築物等の鋼構造物に適した高強度の鋼材として、破壊靭性の指標であるCTOD(Crack Tip Opening Displacement)特性が優れた鋼材が要求されており、溶接部においても優れたCTOD特性が必要とされる。
溶接熱影響部(HAZ)のCTOD特性は、FL部(Fusion Line;WM(溶接金属)とHAZ(溶接熱影響部)との境界)およびIC部(Intercritical HAZ;HAZとBM(母材)との境界)の2箇所の位置(ノッチ)で評価されるが、これまではFLのみがCTOD特性改善の対象とされていた。
これは、試験温度があまり厳しくない条件では、FL部のCTOD特性を満足すれば、IC部のCTOD特性は十分な値が得られるため、問題となっていなかったことによる。
しかしながら、−60℃もの厳しい試験条件下では、IC部で低CTOD値が発生するケースがかなりの頻度で発生することがわかり、その対策が求められてきた。
この対策として、例えば、小〜中入熱の溶接継手で−60℃の厳しい試験条件下での良好なCTOD特性が得られることを示している技術があるが(例えば、特許文献1参照)、ここでは、IC部のCTOD特性の記述はなされていない。
特開2007−002271号公報
本発明は、小〜中入熱の多層溶接等において、−60℃のFL部のCTOD特性に加え、IC部のCTOD特性も満足させるこれまでにない優れたCTOD(破壊靭性)特性を有する高強度の鋼およびその製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、小入熱溶接から中入熱溶接時に最も靭性が劣化する溶接部のFL部とIC部との両方のCTOD特性を向上させることについて鋭意研究した。その結果、FL部とIC部との両方のCTOD特性の向上には、非金属介在物の低減が最も重要で、このためO(鋼中酸素)の低減が必須であるが、Oの低減により粒内変態フェライト(IGF)が減少するので、FL部のCTOD特性を劣化させる合金元素の低減が必要となること、そして、IC部のCTOD特性の向上は鋼板酸素の低減だけでは難しく、硬さの低減が有効であることを見出し、本発明を完成した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.015〜0.045%、
Si:0.05〜0.20%、
Mn:2.0〜3.0%、
P:0.008%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.004%以下、
Ti:0.005〜0.015%、
Nb:0.005%以下、
O:0.0015〜0.0035%、
N:0.002〜0.006%
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ下記(1)式で示すPCTODが0.045以下および下記(2)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
ここで、
CTOD=C ・・・・ (1)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+1.12Nb ・・・・ (2)
(2) 前記鋼が、さらに、質量%で、
Cu:0.35%未満、
Ni:0.70%未満
の1種または2種を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(3)式で示すPCTODが0.065以下および下記(4)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする上記(1)に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
ここで、
CTOD=C+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (3)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
+1.12Nb ・・・・ (4)
(3) 前記鋼が、さらに、質量%で、
V:0.005〜0.020%
を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(5)式で示すPCTODが0.065以下および下記(6)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
ここで、
CTOD=C+V/3+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (5)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
+1.12Nb+V/1.82 ・・・・ (6)
(4) 質量%で、
C:0.015〜0.045%、
Si:0.05〜0.20%、
Mn:2.0〜3.0%、
P:0.008%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.004%以下、
Ti:0.005〜0.015%、
Nb:0.005%以下、
O:0.0015〜0.0035%、
N:0.002〜0.006%
を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ下記(1)式で示すPCTODが0.045以下および下記(2)式で示すCeqHが0.235以下である鋼を連続鋳造法によってスラブとし、その後950〜1100℃の温度に再加熱後、加工熱処理をすることを特徴とする溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
ここで、
CTOD=C ・・・・ (1)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+1.12Nb ・・・・ (2)
(5) 前記鋼が、さらに、質量%で、
Cu:0.35%未満、
Ni:0.70%未満
の1種または2種を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(3)式で示すPCTODが0.065以下および下記(4)式で示すCeqHが0.235以下の鋼であることを特徴とする上記(4)に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
ここで、
CTOD=C+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (3)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
+1.12Nb ・・・・ (4)
(6) 前記鋼が、さらに、質量%で、
V:0.005〜0.020%
を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(5)式で示すPCTODが0.065以下および下記(6)式で示すCeqHが0.235以下の鋼であることを特徴とする上記(4)または(5)に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
ここで、
CTOD=C+V/3+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (5)
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
+1.12Nb+V/1.82 ・・・・ (6)
本発明により製造した鋼は、小〜中入熱の多層溶接等の溶接時に最も靭性が劣化するFL部及びIC部のCTOD特性が極めて良好で優れた靭性を示す。これにより、海洋構造物、耐震性建築物等の厳しい環境で使用される高強度の鋼材の製造を可能とした。
CTODとFL相当再現熱サイクル試験でのCTOD特性との関係を示す図である。 ICHAZ相当再現熱サイクル試験でのHAZの硬さとCTOD特性の関係を示す図である。 eqHとICHAZ相当再現熱サイクル試験でのHAZ硬さの関係を示す図である。
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明者らの研究によれば、小〜中入熱(板厚50mmで1.5〜6.0kJ/mm)溶接HAZの−60℃のFL部とIC部のCTOD特性を満足させるためには、FL部のCTOD特性を満足させ、IC部のCTOD特性の向上を目的とした酸化物系の非金属介在物の低減が最も重要で、O(鋼中酸素)の低減が必須となる。
つまり、従来技術では、優れたFL部のCTOD特性確保のために、Ti酸化物に代表される酸化物系の非金属介在物を粒内変態フェライト(Intragranular Ferrite;IGF)を変態核として利用するため、ある程度のOの添加が必要であった。その一方で、本発明者らの研究により、−60℃のFL部とIC部のCTOD特性を向上させるためには、酸化物系の非金属介在物の低減が必要なことを見出した。
Oの低減によりIGFが減少するため、FL部のCTOD特性を劣化させる合金元素の低減が必要となる。図1に、FL相当再現HAZのCTOD特性とPCTODとの関係を示す。ここで、鋼成分のパラメータとして下記(7)式で表すことができるPCTODは、多数の実験室溶製鋼でのFL相当再現HAZのCTOD特性(Tδc0.1(FL))と鋼成分の解析から導出した経験式である。
CTOD=C+V/3+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (7)
なお、上記式中の元素は、含有質量%を意味し、含有されていない場合は0とする。
図1に示したFL相当再現HAZにおいて、Tδc0.1(FL)≦−110℃という目標レベルは、多数の実験で得られた知見であり、板厚50〜100mmの鋼板の実継手FLノッチにおいて、−60℃で安定して0.25mm以上のCTOD値を得るために必要な値である。図1から、FL相当再現HAZにおいて、Tδc0.1(FL)≦−110℃とするためには、鋼成分パラメータPCTODを0.065%以下に制御する必要があることがわかる。
図1のTδc0.1(FL)について、FL相当再現熱サイクル処理(Triple cycle)、1st:1400℃(800〜500℃:15sec)、2nd:760℃(760〜500℃:22sec)、3rd:500℃(500〜300℃:60sec)を施した断面10mmx20mmの試験片を、BS7448(British Standard)に則り実施したCTOD試験により得られたものである。このTδc0.1(FL)は、各試験温度で3本実施したCTOD(δ)値の最低値が0.1mmを超える温度(℃)を意味する。なお、CTOD試験における板厚効果を考慮すると、板厚50〜100mmの鋼板の実継手FLノッチで−60℃を安定して0.25mm以上のCTOD値を得るためには、経験的にTδc0.1(FL)を−110℃以下にする必要がある。
また、IC部のCTOD特性の向上は鋼中酸素の低減だけでは難しく、硬さの低減が有効であることを見出した。
図2に後述するIntercritical HAZ(ICHAZ)相当の再現熱サイクルを受けた試験片のCTOD特性とICHAZ相当の硬さの関係を、図3に鋼成分硬さパラメータCeqHとICHAZ相当HAZ硬さの関係を示す。
ここで、図2に示したICHAZ相当の再現HAZ(断面10mmx20mm)のTδc0.1(ICHAZ)が−110℃以下という目標レベルは多数の実験で得られた知見であり、板厚50〜100mmの鋼板の実継手のICノッチの−60℃で0.25mm程度のCTOD値を得るための必要値である。
図2、3から再現HAZのTδc0.1(ICHAZ)を−110℃以下とするためには、硬さをHv176以下、鋼成分硬さパラメータ下記(8)式で表されるCeqHを0.235以下に制御する必要があることがわかる。より硬さを低くするために、0.225以下が望ましい。
なお、試験方法としては、CTOD試験方法のBS7448(British Standard)を適用しており、用いたICHAZ相当再現熱サイクル処理(Triple cycle)は、1st:950℃(800〜500℃:20sec)、2nd:770℃(770〜500℃:22sec)、3rd:450℃(450〜300℃:65sec)である。ここで、
eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
+1.12Nb+V/1.82 ・・・・ (8)
と定義される。PCTODやCeqHの量を制限しても、その他の合金元素を適正化しなければ、高強度と優れたCTOD特性を兼ね備えた鋼は製造できない。
なお、上記式中の元素は、含有質量%を意味し、含有されていない場合は0とする。
以下に本発明の限定理由について説明する。まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。以下の組成についての%は、質量%を意味する。
C:0.015〜0.045%
Cは強度を得るため0.015%以上は必要であるが、0.045%超では溶接HAZの特性を劣化させ、−60℃のCTOD特性を満足できないため0.045%を上限とする。
Si:0.05〜0.20%
Siは良好なHAZ靭性を得るために少ない方が好ましいが、発明鋼ではAlを添加していないため、脱酸上0.05%以上は必要である。しかしながら、0.20%超ではHAZ靭性を害するため、0.20%を上限とする。より良好なHAZ靭性を得るためには、0.15%以下が望ましい。
Mn:2.0〜3.0%
Mnはミクロ組織を適正化する効果が大きく安価な元素であることや、HAZ靭性に対して有害な粒界からの変態を抑制する効果を有し、HAZ靭性を害することが少ないために添加量を多くしたいが、3.0%超ではICHAZの硬さが増加し、靭性が劣化するため3.0%を上限とした。また、2.0%未満ではミクロ組織の適正化効果が小さいため、下限を2.0%とした。
P:0.008%以下
Pは、不可避不純物として含有され、粒界に偏析して鋼の靱性を劣化させるので、できるだけ低減することが望ましいが、工業生産的な制約もあり、0.008%を上限とした。より良好なHAZ靭性を得るためには、0.005%以下が望ましい。
S:0.005%以下
Sは、不可避不純物として含有され、母材靭性、HAZ靭性の観点からともに少ない方がよいが、工業生産的な制約もあり、0.005%を上限とした。より良好なHAZ靭性を得るためには、0.003%以下が望ましい。
Al:0.004%以下
Alは、Ti酸化物を生成させるために少ない方が好ましいが、工業生産的に制約があり、0.004%を上限とした。
Ti:0.005〜0.015%
Tiは、Ti酸化物を生成させミクロ組織を微細化させるが、多すぎるとTiCを生成し、HAZ靭性を劣化させるため、0.005〜0.015%が適正範囲である。よりHAZ靭性を改善するためには、0.013%以下が望ましい。
Nb:0.005%以下
Nbは、母材の強度と靭性の観点から有益であるが、HAZ靭性には有害である。このため、HAZ靭性を著しく低下しない範囲である0.005%まで添加できる。ただし、よりHAZ靭性を改善させるためには、0.002%以下に制限することがより望ましい。
N:0.002〜0.006%
Nは、Ti窒化物生成に必要であるが、0.002%未満では効果が少なく、0.006%超では鋼片製造時に表面疵が発生するため、上限を0.006%とした。より良好なHAZ靭性を得るためには、0.005%以下が望ましい。
O:0.0015〜0.0035%
Oは、TiのFL部のIGFの生成核としての酸化物の生成性から0.0015%以上が必須である。しかし、Oが多すぎると酸化物のサイズおよび個数が課題となって、IC部のCTOD特性を劣化させるため、0.0015〜0.0035%を制限範囲とした。より良好なHAZ靭性を得るためには、0.0030%以下が、より好ましくは0.0028%以下が望ましい。
次に選択的に添加する成分であるCu、Ni、Vについて説明する。
Cu:0.35%未満
Cuは、HAZ靭性の劣化が少なく、母材の強度を向上させる効果があり有効で、ICHAZの硬さの増加も少なく有効であるが、高価な合金であるため、0.35%未満を制限範囲とした。なお、下限は特に限定するものではないが望ましくは0.01%以上である。
Ni:0.70%未満
Niは、HAZ靭性の劣化が少なく、母材の強度を向上させる効果があり有効で、ICHAZの硬さの増加も少なく有効であるが、高価な合金であるため、0.70%未満を制限範囲とした。なお、下限は特に限定するものではないが望ましくは0.01%以上である。
V:0.005〜0.020%
基本となる成分にさらにVを添加する目的は、母材強度の向上に有効なためであるが、この効果を発揮させるためには0.005%以上とすることが必要である。一方、0.020%を超えて添加するとHAZ靭性を害することになるので、HAZ靭性を大きく害しない範囲として、Vの上限を0.020%以下とした。
鋼の成分を上記のように限定しても製造法が適切でなければ目的とした効果は発揮できない。このため、製造条件についても限定が必要である。以下で、製造条件限定の理由について説明する。
本発明鋼は工業的には連続鋳造法で製造することが必須である。その理由は溶鋼の凝固冷却速度が速く、スラブ中に微細なTi酸化物とTi窒化物を多量に生成することが可能なためである。
スラブの圧延に際し、その再加熱温度は950〜1100℃とする必要がある。再加熱温度が1100℃を超えるとTi窒化物が粗大化して母材の靭性劣化やHAZ靭性改善効果が期待できないためである。また、950℃未満の再加熱温度では、圧延の負荷が大きく、生産性を著しく阻害するため、950℃が下限の再加熱温度である。再加熱温度は950〜1100℃でも十分に優れた母材靭性を確保可能であるが、さらに極めて優れた母材靭性が要求される場合は、再加熱温度は950〜1050℃とするのがよい。
再加熱後の製造法は加工熱処理が必須である。加工熱処理は圧延温度を鋼成分に適した範囲に制御し、その後に必要に応じて水冷等を施す処理であり、この処理により、オーステナイト粒の微細化、およびミクロ組織の微細化を行うことができる。これにより、鋼材の強度向上や靭性を改善させることができる製造方法である。本発明鋼でも、優れたHAZ靭性が得られても、母材の靭性が劣っていると鋼材としては不十分なため加工熱処理法が必須である。なお、加工熱処理法の条件として、未再結晶域温度における累積圧下率が30%以上であるのが望ましい。
加工熱処理の方法としては(1)制御圧延、(2)制御圧延−加速冷却、(3)圧延後直接焼入れ−焼戻しが挙げられるが、好ましい方法は(2)制御圧延−加速冷却法である。なお、この鋼を製造後脱水素処理などの目的でAr3変態点以下の温度に再加熱しても、本発明の特徴を損なうものではない。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を説明する。
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の厚鋼板を製造し、母材強度や溶接継手のCTOD試験を実施した。溶接は、一般的に試験溶接として用いられている潜弧溶接(SAW)法で、溶接溶け込み線(FL)が垂直になるようにK開先で溶接入熱は4.5〜5.0kJ/mmで実施した。
CTOD試験はt(板厚)×2tのサイズでノッチは50%疲労き裂で実施し、ノッチ位置はFL(WMとHAZの境界)およびIC(HAZとBM(母材)の境界)の2箇所で、−60℃でそれぞれ5本の試験を実施した。
表1に鋼の化学成分を示し、表2に製造条件および母材、溶接継手のCTOD特性を示す。表2中の加工熱処理方法の記号は、以下の熱処理方法を意味する。
CR:制御圧延(強度・靭性に最適な温度域での圧延)
ACC:加速冷却(制御圧延に400〜600℃の温度域まで水冷後放冷)
DQ:圧延直後焼入れ−焼戻し処理(圧延直後に常温まで水冷し、その後に焼戻し処理)
また、表2中の溶接継手のCTOD試験結果において、δCAveは5本の試験結果の平均値を、δCminは5本の試験のうちの最低値を示す。
本発明で製造した鋼板(本発明鋼)は降伏強度(YS)が424N/mm2以上、引張強度(TS)が501N/mm2以上で、−60℃のCTOD値がFLノッチのδCminで0.39mm以上、ICノッチのδCminで0.62mm以上の良好な破壊靭性を示した。
これに対し、比較鋼の強度は発明鋼と概ね同等であるが、CTOD値が劣り、厳しい環境下で使用される鋼板として適切ではない。
鋼23〜42は表1から明らかなように、化学成分について本発明から逸脱した比較例を示したものである。これらの鋼は、それぞれC量(鋼23、鋼41)、Si量(鋼24)、Mn量(鋼25、鋼26)、P量(鋼27)、S量(鋼28)、Nb量(鋼29、鋼34)、V量(鋼30)、Al量(鋼31、鋼42)、Ti量(鋼32、鋼33)、O量(鋼35、鋼36)、N量(鋼37、鋼38)、PCTOD(鋼39)、CeqH量(鋼40)の条件が発明のものと異なっている。比較鋼の強度は発明鋼と概ね同等であるが、CTOD値が劣り、厳しい環境下で使用される鋼板として適切ではない。
また、鋼22の例にあるように、発明鋼でも加熱条件が満たされなければ、CTOD値が劣ることがわかる。
Figure 2010248590
Figure 2010248590

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.015〜0.045%、
    Si:0.05〜0.20%、
    Mn:2.0〜3.0%、
    P:0.008%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.004%以下、
    Ti:0.005〜0.015%、
    Nb:0.005%以下、
    O:0.0015〜0.0035%、
    N:0.002〜0.006%
    を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ下記(1)式で示すPCTODが0.045以下および下記(2)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
    ここで、
    CTOD=C ・・・・ (1)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+1.12Nb ・・・・ (2)
  2. 前記鋼が、さらに、質量%で、
    Cu:0.35%未満、
    Ni:0.70%未満
    の1種または2種を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(3)式で示すPCTODが0.065以下および下記(4)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
    ここで、
    CTOD=C+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (3)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
    +1.12Nb ・・・・ (4)
  3. 前記鋼が、さらに、質量%で、
    V:0.005〜0.020%
    を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(5)式で示すPCTODが0.065以下および下記(6)式で示すCeqHが0.235以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼。
    ここで、
    CTOD=C+V/3+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (5)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
    +1.12Nb+V/1.82 ・・・・ (6)
  4. 質量%で、
    C:0.015〜0.045%、
    Si:0.05〜0.20%、
    Mn:2.0〜3.0%、
    P:0.008%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.004%以下、
    Ti:0.005〜0.015%、
    Nb:0.005%以下、
    O:0.0015〜0.0035%、
    N:0.002〜0.006%
    を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分の鋼であって、かつ下記(1)式で示すPCTODが0.045以下および下記(2)式で示すCeqHが0.235以下である鋼を連続鋳造法によってスラブとし、その後950〜1100℃の温度に再加熱後、加工熱処理をすることを特徴とする溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
    ここで、
    CTOD=C ・・・・ (1)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+1.12Nb ・・・・ (2)
  5. 前記鋼が、さらに、質量%で、
    Cu:0.35%未満、
    Ni:0.70%未満
    の1種または2種を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(3)式で示すPCTODが0.065以下および下記(4)式で示すCeqHが0.235以下の鋼であることを特徴とする請求項4に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
    ここで、
    CTOD=C+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (3)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
    +1.12Nb ・・・・ (4)
  6. 前記鋼が、さらに、質量%で、
    V:0.005〜0.020%
    を含有する化学成分の鋼であって、かつ下記(5)式で示すPCTODが0.065以下および下記(6)式で示すCeqHが0.235以下の鋼であることを特徴とする請求項4または5に記載の溶接熱影響部のCTOD特性が優れた鋼の製造法。
    ここで、
    CTOD=C+V/3+Cu/22+Ni/67 ・・・・ (5)
    eqH=C+Si/4.16+Mn/14.9+Cu/12.9
    +1.12Nb+V/1.82 ・・・・ (6)
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