JP2010248481A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、および繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性に優れ、かつ硬化時の反応発熱が少ないエポキシ樹脂組成物を提供する。さらに硬化物のネットワーク構造の制御が反応条件に依存せず容易であるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成分(A)、および、成分(B)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。(A):一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物。
(B):3官能以上のエポキシ樹脂
【選択図】なし
【解決手段】成分(A)、および、成分(B)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。(A):一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物。
(B):3官能以上のエポキシ樹脂
【選択図】なし
Description
本発明は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に適した繊維強化複合材料、これを得るためのプリプレグ、さらにはそれらのマトリックス樹脂として好適に用いられるエポキシ樹脂組成物に関するものである。特に、硬化時の発熱が少ない樹脂組成物に関するものである。
近年、航空機、自動車をはじめあらゆる分野で軽量化をふくめたエネルギー消費の抑制が求められている。航空機や自動車などは特に顕著であり従来のスチール、アルミなどの金属材を高強度や高弾性率といった特徴をもつ炭素繊維を用いた材料への置き換えが進んでいる。
炭素繊維は、強度や弾性率は高いが、伸度は低いため炭素繊維単独では使用されることがなく、樹脂やセラミックスからなるマトリックスと組み合わせで用いられる。その中で、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を組み合わせた炭素繊維強化複合材料は、比強度、非弾性率が高い、良好な耐疲労性、寸法安定性、耐蝕性、X線透過性など優れた特徴を示す。
ところで、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする場合、マトリックス樹脂を硬化させる必要がある。航空機用部材や自動車部材、風車の羽根などへ利用する場合、大型の部材を硬化する必要がある。加えて、これらの用途では高い弾性率と耐熱性が要求される。高弾性・高耐熱を達成するために、耐熱性や弾性率に優れる多官能のグリシジルアミン型のエポキシ樹脂と、芳香族アミンを組み合わせた樹脂系がしばしば用いられる。このような樹脂系は反応温度が高く、高い温度での硬化が必要となる。加えて、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂は一般的に単位質量当たりのエポキシ環の数が多く、単位質量当たりの硬化反応発熱が大きい。硬化反応時に発生する熱が内部に蓄積されることにより部材が過熱することがあるが、硬化温度が高い条件で、さらに大型の部材であるほど熱が逃げにくいためにこの影響は顕著である。部材の過熱は硬化構造に影響を与えるだけでなく、異常に発熱すれば成型時の安全面にも問題がある。内部の反応熱を逃がすため、硬化時の昇温速度を下げたり、昇温の途中で一旦温度を一定に保ったりするなど、硬化条件を細かくコントロールする方法が採られるが、特に大型の部材を成形する装置では、炉やプレス機での温度ムラが生じやすく、コントロールは容易でない。作成する部材の大きさ、形状に関わらずより簡便に樹脂を利用するためには、低発熱化や硬化条件依存性のない熱硬化性樹脂を使用することが求められている。
熱硬化性樹脂の低発熱化技術としては、主成分に、グリシジルアミン型エポキシ樹脂に代えて、グリシジルアミン型エポキシに比べ単位質量当たりの発熱量が少ないグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂をすること使用することが知られている(例えば特許文献1)。グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂の骨格を特定のものにすれば、耐熱性が維持できるとされている。しかし、この方法では、主成分の変更を伴うため、特定の成分を除き、共に配合する成分との相溶性に問題が生じる可能性がある。
また、高耐熱の樹脂組成物を得るためにしばしば使用される芳香族アミンは反応性が低く、また前述の通り高耐熱すなわち高いガラス転移温度の樹脂硬化物を与えるので、高い温度で硬化反応させなくてはならない。高い温度ではすべてのエポキシ化合物が、それぞれの反応性に関わらず同時に反応する。この方法では硬化後のネットワーク構造はランダムで平均的なものができる。しかしながら、今後のさらなる高性能化に対応するためには硬化後のネットワーク構造を精密に制御することが必要であり、ランダムな構造では対応ができない。精密に制御する一つの方法として、例えば0.5℃/分といった低速な昇温を行うことができるが、反応性の高いものが先に反応し、低いものが遅れて反応する。つまりこの方法では構造のランダムさは解消されるがエポキシ樹脂の反応性に支配され、硬化ネットワーク構造はなお制限されてしまう。加えて前述の通り、大型の部材の成形では温度コントロ−ルにムラが生じやすく、硬化ネットワーク構造の安定化は難しい。
熱硬化性樹脂の性質を改良する技術の一つとして、硬化剤として使用されるアミン等にエポキシ化合物をあらかじめ付加させたものを硬化剤として用いることが知られている。例えば、ジアミノジフェニルスルホンと脂環式のジエポキシドを付加させたものを硬化剤として使用する方法が知られている(例えば特許文献2)。しかしながら、この組み合わせでは、本発明のもう一つの課題である硬化時の発熱抑制を解決することはできない。また、2種以上のアミン類とエポキシ化合物の付加物を用いることで組成物の硬化特性・硬化後の物性を向上する例が知られているが(例えば特許文献3)、この例で使用されているアミン類は室温での硬化が容易な反応性の高い非芳香族アミン類であり、本発明者らが解決しようとしている高耐熱樹脂系の高い温度での反応における硬化発熱の低減という課題を達成できるものではなかった。すなわち、多官能のエポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂および芳香族アミン系硬化剤を主要成分として含む高耐熱樹脂およびそれをマトリックスとして用いた繊維強化複合材料を高温硬化条件で成型するときに、反応時の発熱を抑え、さらに硬化ネットワーク構造の制御を両立する方法については未だ満足する方法が見いだされていない。
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、耐熱性に優れ、かつ硬化時の反応発熱が少ないエポキシ樹脂組成物を提供することにある。さらに硬化物のネットワーク構造の制御が反応条件に依存せず容易であるエポキシ樹脂組成物を提供することを目標とする。
本発明の他の目的は、上記のエポキシ樹脂組成物を用いてなるプリプレグと繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下のような構成を有するエポキシ樹脂ならびに製法により前記課題を解決した。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、
成分(A):一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物。
成分(A):一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物。
(ここで、式中、R1はアリール基、R2は水素またはアリール基、Xはカルボニル基、mおよびnはそれぞれ0または1であり、R1−(X)m−とR2−(Y)n−が環構造を形成していてもよい。)
(B):3官能以上のエポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂組成物である。
(B):3官能以上のエポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂組成物である。
前記樹脂組成物の、不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて、示差走査熱量分析で求める硬化反応の発熱ピークが150℃以上300℃以下であるものが好ましい。
また、前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)が、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルナフチルアミン、グリシジルフタルイミドおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂組成物の、前記芳香族アミン(b)が、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも一種であるものが好ましい。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物の好適な製造方法は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と芳香族アミン(b)を120〜200℃に加熱して得られた成分(A)を、成分(B)を主成分とする予備混合物に混合することを特徴とし、該成分(A)を得る際に、有機溶媒を用いない方法や、有機溶媒を用いて(a)と(b)を混合させ、(a)と(b)の反応前、反応中または反応後のいずれかに、前記有機溶媒を乾燥させる方法を用いることができる。
かかる、エポキシ樹脂組成物は、強化繊維と組み合わせて、プリプレグおよび繊維強化複合材料を形成することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、大きな反応熱を生じるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族アミン系硬化剤を主成分とする樹脂組成物であるにもかかわらず、硬化反応における発熱を低減することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、硬化反応における発熱を低減することができるため、大型部材の硬化においても内部が過熱することを防ぐことができる。
本発明にしたがって、硬化剤と特定の低分子量グリシジルアミン型エポキシ化合物をあらかじめ反応させて結合させておくことで、硬化条件によらず、硬化物のネットワーク構造を制御、安定化することができる。
本発明者らは、前記課題について鋭意検討した結果、エポキシ樹脂組成物の主要エポキシ樹脂成分の一つとして用いられる特定の低分子量のグリシジルアミン型エポキシ樹脂に特定の構造を有する芳香族アミンを予め特定比率で付加重合させた反応物を硬化剤として用いることで、上記問題を解決し、低発熱性と硬化条件依存性の解消を両立させることを見出した。
すなわち、エポキシ樹脂組成物の一部の成分を予め反応させておくことで、硬化時の反応発熱量を抑えるとともに、配合するエポキシ樹脂の反応性に差があったとしても硬化条件によらず、均一な硬化構造が得られることを見出したものである。これにより、多官能のエポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂および芳香族アミン系硬化剤を主要成分として含む樹脂系においても、硬化反応時の発熱が抑えられ、硬化条件によらず特定の低分子量グリシジルアミン型エポキシ樹脂が硬化剤とともにネットワーク構造全体に分散した硬化構造が得られる。(A)は、一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物である。
ここで、式中、R1はアリール基、R2は水素またはアリール基、Xはカルボニル基、mおよびnはそれぞれ0または1であり、R1−(X)m−とR2−(Y)n−が環構造を形成していてもよい。
(A)は、(a)と(b)の成分を反応させずに(B)を含む他成分と混合した場合に比べて低発熱化するのに必要な成分である。また、予め反応させておくことで硬化後のネットワーク構造を安定化し、耐熱性など物性を安定化させるためにも重要な成分である。
本発明において用いられるグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)は、窒素に結合したグリシジル基を有する1官能もしくは2官能のエポキシ樹脂であり、分子内に少なくとも一つの芳香環を有するものである(一般式(1),(2))。ここで、1官能とは、分子内に1個のエポキシ基をもつエポキシ樹脂であり、同様に2官能とは、分子内に2個のエポキシ基をもつエポキシ樹脂である。なお、3つ以上のエポキシ基の場合は、多官能エポキシと呼ぶ。
本発明におけるグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)として用いることのできるエポキシ化合物において、分子内の芳香環は、硬化物の弾性率、耐熱性を向上させるために必須な構造である。
本発明におけるグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)として用いることのできるエポキシ化合物の具体的な例を挙げると、(i)アニリン、およびo−トルイジン、p−トルイジン、m−トルイジンなどのアニリンの芳香族にアルキル基などの置換基を導入した分子、また、フタルイミドなどの芳香環を有するアミド・イミド、カルバゾールなどの複素芳香族分子を、(ii)エピクロロヒドリンと反応させてエポキシ化し、分子内に1ないし2個のエポキシ基を導入したものが挙げられる。かかるエポキシ化合物の市販品としては、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル−o−トルイジン、ジグリシジルナフチルアミン、グリシジルフタルイミドなどが挙げられ、本発明において好ましく用いられる。また、これらの化合物の芳香環に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン基、スルホニル基などの置換基を有する誘導体も、同様に好ましく用いられる。これらのグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられる分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)として用いることのできる芳香族アミン化合物は、分子内に1級アミン、2級アミンなどの活性水素を有するアミノ基がベンゼンなどの芳香環に直接結合した構造を持ち、それらのアミノ基の活性水素が1分子の中に2個以上存在する化合物が挙げられる。一般的に1級、2級、3級と数字が大きくなるにつれアミンはエポキシ基と反応性が乏しくなる。本発明においてはネットワーク構造を形成させる観点から3級アミンは実質的に反応性を持たないとみなす。ネットワーク構造を形成させる観点からは、分子内の活性水素は2個以上が必要である。具体的には、ジアミノジフェニルメタンやそのアルキルおよびハロゲン誘導体、ジアミノジフェニルスルホンとそのアルキルおよびハロゲン誘導体や3,3体、4,4’体、3,4’体などの位置異性体、ジエチルトルエンジアミンなどが挙げられる。特に好ましくはジアミノジフェニルスルホンとその誘導体、位置異性体が挙げられる。本発明における芳香族アミン(b)としては、上記した芳香族アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明におけるグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と芳香族アミン(b)の配合比率は、得られる反応物(A)が他のエポキシ成分に配合されたときに硬化剤として働くために、(a)のエポキシ基に対する(b)のアミンの活性水素の数の比が1.1〜4である必要がある。より好ましくは、2〜4の範囲である。この比が1.1に満たない場合は、得られる反応物が他のエポキシ樹脂と反応する活性水素を十分に持たず、硬化剤として働かないため不適当である。この比が4を超えると、(a)と全く反応しない未反応の(b)アミンの量が多くなるため、硬化物のネットワーク構造の制御が効果的に行われず、耐熱性などの物性が安定に発現しない可能性がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
まず、成分(A)は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と芳香族アミン(b)を混合し、両成分が十分に分散するよう撹拌しながら加熱し、反応させることにより得られる。撹拌しながら加熱する方法としては、ニーダー等の攪拌機を用いる、油浴で加熱しながらメカニカルスターラーで撹拌する、等の一般的な方法があげられる。ただし、反応により高分子量化することで固化して撹拌できなくなる場合があるが、この場合は後述のように溶媒に溶解して反応させる、もしくは加熱前に十分に撹拌して分散させた物を撹拌しないで反応させる方法をとることができる。
加熱前に十分に撹拌して分散させた物を撹拌しないで反応させる場合、分散のための撹拌の方法は、ニーダー等の攪拌機を使用するほか、粘度の低いものであれば遠心力で撹拌する撹拌装置も使用可能である。十分に分散できるならば、ヘラ等を用いて混合してもよい。粘度が高い成分の場合は加熱して粘度を下げることができるが、このとき、撹拌中に硬化反応を進行させないためには芳香族アミンが融解しエポキシ基との反応が促進される100℃以上としないことが推奨される。100℃以上とした場合、撹拌中に硬化反応が進行して固化した場合、攪拌機から取り出すことが難しくなることがある。なお、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と芳香族アミン(b)の両方を室温で粉末に加工できる場合は、乳鉢と乳棒を用いて両成分を十分にすり混ぜ分散させることで混合することができる。このような方法で混合したものを、金属製のバットに薄く広げる、またはアルミ板で挟むなどの方法で除熱が十分にできるようにしてオーブンで加熱し、反応を進行させる。除熱を十分に行わないと、反応で発生する熱により内部の温度が上昇し、温度ムラが発生して均一なものができないことがある。
反応温度は混合する成分、目的にもよるが120〜200℃の範囲が好ましい。反応温度が200℃を超えるとエポキシ樹脂自体の自己開環反応が徐々に起きることがあり、それにより目的とは異なる構造となりガラス転移温度や弾性率等の機械物性が低下することがある。一方、反応温度が120℃未満では付加反応が十分に進行しないことがある。反応時間はエポキシの残量を確認しながら決定することが望ましいが、通常2〜12時間の範囲である。反応の終了、すなわち未反応のエポキシ基が無いことを確認する方法としては、不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて、示差走査熱量分析測定を行った場合に150〜300℃の発熱ピークが見られないことで判断する。また、赤外分光光度計などで分析した結果、エポキシ基による吸収バンドが見られないことで判断しても良い。反応が未完了、すなわち未反応のエポキシ基が残っている場合は、適宜反応温度を調整したり反応時間を延長したりすることができる。
反応により得られた反応物(A)は、(A)が液状の場合はそのまま、固形の場合は乳鉢や粉砕機などの既知の方法で粉砕して微粒子化し、エポキシ樹脂(B)を主成分とする予備混合物に、調製の最後の段階で加えて混ぜて樹脂組成物を製造すると良い。ここでいう予備混合物とは、硬化剤以外の成分を、硬化剤の投入の前にあらかじめ混合、必要に応じて溶解した混合物である。エポキシ樹脂(B)を主成分とする予備混合物に(A)を混合する際は加熱して粘度を下げることができるが、(A)と予備混合物の反応が進行する可能性のある100℃以上としないことが推奨される。また、(A)の軟化点が室温付近にあるような場合は、低温でフレーク化してから予備混合物に加えることにより、均一に混合しやすくなることがある。
また、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と芳香族アミン(b)の混合においては、アセトンやメチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶媒を使用して混合することもできる。溶媒を使用することで均質な物が得られる。溶媒を用いる場合は、混合や反応を行う温度でエポキシやアミンと反応しない溶媒系を用いる必要がある。この場合、加熱して反応させる前に溶媒を十分除去してから反応させる、または硬化させながら溶媒を除去する、もしくは反応終了後に乾燥させ、溶媒を十分除去してからエポキシ樹脂(B)を主成分とする予備混合物に混合すると良い。なお、高沸点の溶媒を用いて溶液状態で反応させることにより、より均質な反応物が得られることがある。溶液から反応物(A)を取り出すには、例えば減圧下で溶媒を蒸発させるほか、溶液を冷却する、または別の溶媒を加える等の方法で(A)の溶解度を下げて析出させ、ろ取して乾燥させるという方法等を用いることができる。溶媒が残留していると、エポキシ樹脂(B)等と混合した樹脂組成物や強化繊維と組み合わせたプリプレグ、およびそれらを硬化させた樹脂硬化物や繊維強化複合材料の安定性や物性に悪影響を及ぼす可能性があるので、使用した溶媒は十分に除去しておく必要がある。
成分(B)3官能以上のエポキシ樹脂は、高耐熱性・高弾性などの機械物性向上のために必須の成分である。具体的には、3官能のトリグリシジルイソシアヌレートやアミノフェノールのグリシジル化合物、3官能以上のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂や、4官能のテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。より好ましくは、弾性や耐水や耐熱性の観点から、芳香環を有するグリシジルアミン型のエポキシ樹脂である。アミノフェノールのグリシジル化合物やテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが好ましく用いられる。
これらの量は、最終的な物性により調整されるが、全エポキシ樹脂100質量部中に20〜100質量部加えることができる。
本発明における、成分(A)、および、成分(B)を含むエポキシ樹脂組成物は、樹脂硬化物の耐熱性の観点から、不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて、示差走査熱量分析で求める硬化反応の発熱ピークが150℃以上300℃以下であることが好ましい。ピークが150℃以下の場合、樹脂硬化物の耐熱性が不十分である場合があり好ましくない。また、300℃以上にピークがある場合、200℃以上の非常に高い温度での硬化が必要となる場合があり、条件を厳密に制御する必要があるため成形性の面から好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂組成物の靱性や粘弾性を制御するために熱可塑性樹脂成分(C)を加えることができる。(C)は、具体的には、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。このような熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチロールに代表されるビニル系樹脂、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される炭化水素系樹脂、酢酸セルロース、および絡酸セルロースに代表されるセルロース誘導体が挙げられる。
耐熱性や靱性、粘度の制御の面から、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドが好ましく用いられる。
これらの熱可塑性樹脂成分(C)は、成分(B)および成分(B)以外のエポキシ樹脂成分の混合物に溶解させて用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度調整や硬化物の弾性、曲げ伸度などの物性を制御するために、成分(B)の他にエポキシ樹脂を加えることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂やそれぞれのアルキルやハロゲンの置換体などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、反応物(A)に加えて、各種のエポキシ樹脂硬化剤を併用することができる。
前記エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればこれを用いることができるが、好ましくは、アミノ基、酸無水物基およびアジド基を有する化合物が適している。エポキシ樹脂硬化剤としては、より具体的には、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタン、および三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、前記(A)で用いた芳香族アミン(b)と同じものを用いても良いし、別のものを用いても良い。添加する場合は、単独で使用しても複数成分を併用してもよい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、未硬化樹脂の粘弾性や樹脂硬化物の靱性などを改良するため、各種の改質剤を添加することができる。具体的には、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子や無機粒子を配合することができる。
ゴム粒子としては、取り扱い性等の観点から、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子の市販品としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(日本合成ゴム工業社製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(東都化成(株)製)等を使用することができる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655(Rohm&Haas社製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(ガンツ化成(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“パラロイド(PARALOID)(登録商標)”EXL−2611、EXL−3387(Rohm&Haas社製)等を使用することができる。
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられ、ポリアミド粒子の市販品として、SP−500(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002、3502、3801(アルケマ社製)等を使用することができる。
本発明では、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子は、得られる樹脂硬化物の弾性率と靱性を両立させる点から、全エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部配合することが好ましく、より好ましくは1〜15質量部配合することができる。
本発明では、エポキシ樹脂組成物の増粘等の粘弾性制御および揺変性付与のため、エポキシ樹脂組成物に、シリカ、アルミナ、スメクタイトおよび合成マイカ等の無機粒子を配合することができる。
本発明では、無機粒子はエポキシ樹脂組成物に適度な粘弾性を与え、優れた取り扱い性のプリプレグ、良質な複合材料が得られるため、全エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、(B)を含むエポキシ樹脂成分を60〜100℃で混合したのち、100℃以下、より好ましくは80℃以下で反応物(A)を含む硬化剤成分を加えて混合して調製する。熱可塑性樹脂成分(C)を添加する場合は、エポキシ樹脂成分の混合物に加えて140〜180℃に加熱して融解したのち、100℃以下、より好ましくは80℃以下に冷却してから反応物(A)を含む硬化剤成分を加えて混合して調製する。
発明において用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。
本発明においては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性に優れ、高い剛性および機械強度を有する複合材料を得られることから、JIS R 7601に記載の方法によるストランド引張試験における引張弾性率が200〜500GPa、引張強度4.4〜8GPa 、引張伸度1.7〜2.2%の高強度高伸度炭素繊維が適している。今後の高性能化の要求に応えるためには、引張強度が5.4GPa以上の高強度炭素繊維がより好ましい。
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐などが用いられる。また、特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
本発明のプリプレグは、マトリックス樹脂として用いられる前記のエポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させる方法(ウェット法)と、マトリックス樹脂を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法(ドライ法)等により作製することができる。
ウェット法は、強化繊維をマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、ホットメルト法(ドライ法)は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしたフィルムを作成しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため、本発明においては好ましい態様である。
得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等により、本発明による繊維強化複合材料が作製される。
ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が採用される。
以下、実施例により、本発明のエポキシ樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。各実施例の樹脂組成物を得るために、下記の樹脂原料を用いた。
<グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)>
・GAN(日本化薬(株)製,ジグリシジルアニリン,エポキシ当量125)
・GOT(日本化薬(株)製,ジグリシジル−o−トルイジン,エポキシ当量134)
・“デナコール(登録商標)”Ex−731 (ナガセケムテックス(株)製,グリシジルフタルイミド,エポキシ当量216)。
・GAN(日本化薬(株)製,ジグリシジルアニリン,エポキシ当量125)
・GOT(日本化薬(株)製,ジグリシジル−o−トルイジン,エポキシ当量134)
・“デナコール(登録商標)”Ex−731 (ナガセケムテックス(株)製,グリシジルフタルイミド,エポキシ当量216)。
<芳香族アミン(b)>
・“セイカキュア”(和歌山精化(株)製 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)
・ “3,3’−DAS”(三井化学ファイン(株)製 3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)。
・“セイカキュア”(和歌山精化(株)製 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)
・ “3,3’−DAS”(三井化学ファイン(株)製 3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)。
<3官能以上のエポキシ樹脂(B)>
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434(住友化学工業(株)製,テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン,エポキシ当量120)。
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434(住友化学工業(株)製,テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン,エポキシ当量120)。
<熱可塑性樹脂(C)>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製,末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン)。
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製,末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン)。
<上記(A)および(B)のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂>
・“jER(登録商標)”1001(ジャパンエポキシレジン(株)製,ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂,エポキシ当量475)。
・“jER(登録商標)”1001(ジャパンエポキシレジン(株)製,ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂,エポキシ当量475)。
樹脂組成物の調製、樹脂組成物の発熱量測定、樹脂硬化物の耐熱性、プリプレグの作製、繊維強化複合材料の作成と耐熱性評価の測定は、次のような条件で行った。特に断りのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定を行った。測定の結果は表2、3にまとめて示す。
(1)反応物(A)の調整
表1の組成、温度条件で、反応物を調整した。
表1の組成、温度条件で、反応物を調整した。
参考例1〜3、および、比較参考例1,2:表1に示す配合比でエポキシ樹脂と芳香族アミン(b)を、ニーダーで70℃に加温しながら混練した。混練したものを耐熱の離型剤フィルムで挟み、アルミ板に載せてオーブンで表1に記載の反応条件で加熱して反応させた。30℃以下まで空冷したのち、乳鉢と乳棒を用いて粉末状になるまで粉砕した。
参考例4:表1に示すエポキシ樹脂と芳香族アミン(b)の粉末を、乳鉢を用いてよく分散させて混合した。混合したものを、耐熱の離型剤フィルムで挟み、オーブンで表1に記載の反応条件で加熱して反応させた。30℃以下まで空冷したのち、乳鉢と乳棒を用いて粉末状になるまで粉砕した。
参考例5:表1に示すエポキシ樹脂と芳香族アミン(b)の粉末をアセトンと混合し溶解させた。混合したものを、撹拌しながら減圧下約40℃の水浴で加熱し、アセトンを除いた。これを耐熱の離型剤フィルムで挟み、アルミ板に載せてオーブンで表1に記載の反応条件で加熱して反応させた。30℃以下まで空冷したのち、減圧下24時間乾燥させて残留アセトンを除去した。これを乳鉢と乳棒を用いて粉末状になるまで粉砕した。
(2)エポキシ樹脂組成物の調製
原料をニーダーで混練して、表2に示す組成のエポキシ樹脂組成物を調製した。調整は次の手順で行った。まずエポキシ樹脂成分をニーダーで60〜100℃で撹拌して混合した。熱可塑性分を加える場合はさらに150℃に加熱しながら60〜80分撹拌して溶融させた。この混合物を80℃以下に冷却したのち、硬化剤成分を加えて混合した。
原料をニーダーで混練して、表2に示す組成のエポキシ樹脂組成物を調製した。調整は次の手順で行った。まずエポキシ樹脂成分をニーダーで60〜100℃で撹拌して混合した。熱可塑性分を加える場合はさらに150℃に加熱しながら60〜80分撹拌して溶融させた。この混合物を80℃以下に冷却したのち、硬化剤成分を加えて混合した。
(3)樹脂組成物の発熱量
上記(2)で作製したエポキシ樹脂組成物5mgを用い、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、−50℃〜350℃温度範囲を昇温速度10℃/分にて、測定を行い、100℃〜300℃に現れるピークの面積を樹脂組成物の硬化発熱量として評価した。
上記(2)で作製したエポキシ樹脂組成物5mgを用い、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、−50℃〜350℃温度範囲を昇温速度10℃/分にて、測定を行い、100℃〜300℃に現れるピークの面積を樹脂組成物の硬化発熱量として評価した。
(4)樹脂硬化物の耐熱性評価
上記(2)で作成したエポキシ樹脂組成物を直径4cmのアルミカップに入れて70℃に加熱して均一に広げ、180℃のオーブンで2時間硬化して樹脂硬化物の板を作成した。この樹脂硬化物の板から、樹脂硬化物を7mg取り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃温度範囲を昇温速度5℃/分にて、測定を行い、ガラス転移領域の中点をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。
上記(2)で作成したエポキシ樹脂組成物を直径4cmのアルミカップに入れて70℃に加熱して均一に広げ、180℃のオーブンで2時間硬化して樹脂硬化物の板を作成した。この樹脂硬化物の板から、樹脂硬化物を7mg取り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃温度範囲を昇温速度5℃/分にて、測定を行い、ガラス転移領域の中点をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。
(5)プリプレグの作製
上記(2)に従って作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(繊維数24000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%)に、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m2、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを作製した。
上記(2)に従って作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(繊維数24000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%)に、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m2、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを作製した。
(6)プリプレグの発熱量
上記(5)で作成したプリプレグから10mgを切り出し、−50〜350℃の温度範囲で昇温速度10℃/分にて、測定を行い、100〜300℃に現れるピークの面積を樹脂組成物の硬化発熱量として評価した。
上記(5)で作成したプリプレグから10mgを切り出し、−50〜350℃の温度範囲で昇温速度10℃/分にて、測定を行い、100〜300℃に現れるピークの面積を樹脂組成物の硬化発熱量として評価した。
(7)繊維強化複合材料の作成と耐熱性評価
上記(6)により作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて3枚積層し、オートクレーブにて180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製した。この積層体から10mgを切り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃温度範囲を昇温速度5℃/分にて、測定を行い、ガラス転移領域の中点をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。
上記(6)により作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて3枚積層し、オートクレーブにて180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製した。この積層体から10mgを切り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃温度範囲を昇温速度5℃/分にて、測定を行い、ガラス転移領域の中点をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。
(実施例、比較例についての説明)
参考例で調整したアミン型エポキシと芳香族アミンの予備反応物を使用した場合、同様の組成で予備反応物を使用しない場合に比べ、発熱量の低減効果が確認された。例えば、参考例1の予備反応物を使用した実施例1の場合、同様の組成で予備反応物を使用しない比較例1に対して発熱量が3分の2に低減できた。参考例3の予備反応物を用いた実施例3では、予備反応物を用いない比較例3に対して約3割発熱量が押さえられるが、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂(jER1001)をあらかじめ反応させた比較参考例2の予備反応物を利用した比較例4では発熱量の低減効果はほとんどない。なお、比較参考例1の予備反応物を配合した比較例6では硬化物は得られなかった。なお、参考例6のように溶媒(アセトン)を使用して混合した場合(実施例5)、反応物は溶媒を使用しない参考例4(実施例4)とほぼ同等の物が得られた。
参考例で調整したアミン型エポキシと芳香族アミンの予備反応物を使用した場合、同様の組成で予備反応物を使用しない場合に比べ、発熱量の低減効果が確認された。例えば、参考例1の予備反応物を使用した実施例1の場合、同様の組成で予備反応物を使用しない比較例1に対して発熱量が3分の2に低減できた。参考例3の予備反応物を用いた実施例3では、予備反応物を用いない比較例3に対して約3割発熱量が押さえられるが、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂(jER1001)をあらかじめ反応させた比較参考例2の予備反応物を利用した比較例4では発熱量の低減効果はほとんどない。なお、比較参考例1の予備反応物を配合した比較例6では硬化物は得られなかった。なお、参考例6のように溶媒(アセトン)を使用して混合した場合(実施例5)、反応物は溶媒を使用しない参考例4(実施例4)とほぼ同等の物が得られた。
参考例3の予備反応物を用いた実施例3のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂に使用したプリプレグ(実施例6)を作成し、予備反応物を用いない比較例3をマトリックス樹脂に用いたプリプレグ(比較例7)と比較した(表3)。参考例3の予備反応物を用いたものは、予備反応物を用いないものに比べて約3割発熱量が低減された。耐熱性の指標であるガラス転移温度についても、同等以上の値が発現した。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に適した繊維強化複合材料、これを得るためのプリプレグ、さらにはそれらのマトリックス樹脂として好適に用いることが出来る。
また、硬化時の発熱が少なく、さらに硬化物のネットワーク構造の制御が反応条件に依存せず容易であるので、硬化時に炉内の温度ムラの生じやすい大型部材を成形する用途にも好適に用いられる。
Claims (10)
- 成分(A)、および、成分(B)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(A):一般式(1)または一般式(2)で表される分子内に少なくとも一つの芳香環を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と、分子中にエポキシ基と反応しうる活性水素を複数有する芳香族アミン(b)を、前記芳香族アミン(b)中の活性水素数の前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ環の数に対する比が1.1以上4以下になるように混合したのち加熱して得られる反応物。
(B):3官能以上のエポキシ樹脂 - 不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて、示差走査熱量分析で求める硬化反応の発熱ピークが150℃以上300℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)が、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルナフチルアミン、グリシジルフタルイミド、およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記芳香族アミン(b)が、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンおよびそれらのアルキルおよびハロゲン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1から3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維を含むプリプレグ。
- 請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸し、硬化させてなる繊維強化複合材料。
- 前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と前記芳香族アミン(b)を120〜200℃に加熱して得られた成分(A)を、成分(B)を主成分とする予備混合物に混合することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
- 前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と前記芳香族アミン(b)を120〜200℃に加熱して成分(A)とする際に、有機溶媒を用いないことを特徴とする、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
- 前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(a)と前記芳香族アミン(b)を120〜200℃に加熱して成分(A)とする際に、有機溶媒を用いて(a)と(b)を混合させ、(a)と(b)の反応前、反応中または反応後のいずれかに、前記有機溶媒を乾燥させる工程を含む、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸するプリプレグの製造方法。
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- 2010-03-04 JP JP2010047356A patent/JP2010248481A/ja active Pending
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