第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1乃至図4は、本発明の第1の実施の形態における制振装置を示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態における制振装置を示す正面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態における制振装置を示す側面図である。図3(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態において、吊荷の旋回方向の振れを減衰させる方法を示す平面図であり、図4(a)(b)(c)(d)は、本発明の第1の実施の形態において、吊荷の並進方向の振れを減衰させる方法を示す平面図である。
まず図1および図2により、本実施の形態における制振装置10について説明する。なお後述するように、図1は、一対のアームの間の角度が180度である場合の制振装置を示す正面図であり、図2は、一対のアームの間の角度が0度である場合の制振装置を示す側面図である。
はじめに図1および図2により、本発明が介在されるクレーン31Aと吊荷32について説明する。図1および図2に示すように、レール31Cに沿って走行する走行機31Bと、走行機31Bに連結されたワイヤロープ31とを有するクレーン31Aが設けられている。そしてクレーン31Aのワイヤロープ31により吊荷32が吊り下げられている。ワイヤロープ31の下端にはクレーンフック35が取り付けられており、また吊荷32の上面には吊具33が取り付けられている。また図1および図2に示すように、クレーンフック35と吊具33との間に、環状のクレーン側吊り部34と、本発明による制振装置10とが介在されている。クレーン側吊り部34は、図2に示すようにクレーンフック35により掛止されており、またクレーン側吊り部34は制振装置10に連結されている。
次に本発明による制振装置10について詳細に説明する。図1および図2に示すように、制振装置10は、上下方向に延びる長手軸を有する棒状の接続部材11と、接続部材11に連結された一対のアーム21、22(第1アーム対)とを備えている。図1および図2に示すように、接続部材11の上端は、上部第1ジョイント14を介してクレーン側吊り部34に連結されている。この上部第1ジョイント14は、接続部材11の長手軸と直交する回転軸を有しており、このため接続部材11は、クレーン側吊り部34に対して上部第1ジョイント14を回転軸として回転することができる。同様に、接続部材11の下端は、下部第1ジョイント15を介して吊具33に連結されている。この下部第1ジョイント15は、上部第1ジョイント14の回転軸と平行な回転軸を有しており、このため吊具33は、接続部材11に対して下部第1ジョイント15を回転軸として回転することができる。なお図2に示すように、上部第1ジョイント14と下部第1ジョイント15との間の距離をLhとする。
なお本実施の形態において、図1に示すように、接続部材11の長手軸が延びる方向はZ軸方向となっており、上部第1ジョイント14および下部第1ジョイント15の回転軸と平行な方向はX軸方向となっている。また図2に示すように、X軸およびZ軸と平行な方向はY軸となっている。
次に、一対のアーム21、22について詳細に説明する。図1および図2に示すように、一対のアーム21、22は、それぞれ一端21c、22cが接続部材11に連結された第1アーム21および第2アーム22からなる。第1アーム21の一端21cには、環状の回動支持部材21aが取り付けられており、この回動支持部材21aは、接続部材11の回りを回動可能に設けられている。同様に、第2アーム22の一端22cには、環状の回動支持部材22aが取り付けられており、この回動支持部材22aは、接続部材11の回りを回動可能に設けられている。また接続部材11に、回動支持部材21a、22aを回転駆動する駆動装置12が設けられており、このため、各アーム21、22を、接続部材11に対して、接続部材11の長手軸を回転軸として駆動装置12により回転駆動することができる。
さらに接続部材11には、図1に示すように検出装置18が設けられている。この検出装置18は、例えば加速度を計測する加速度センサからなり、吊荷32に連結されている制振装置10が並進方向または旋回方向に振れていることを検出することができる。なお図1において、検出装置18が接続部材11に設けられている例を示したが、これに限られることはなく、検出装置18を吊荷32または吊具33に取り付けてもよい。
また接続部材11には、図1に示すように、検出装置18からの信号に基づいて駆動装置12を制御する制御装置13が設けられている。後述するように、制御装置13は、吊荷32の並進方向または旋回方向の振れを減衰させるよう各アーム21、22を回転させる。
また図1および図2に示すように、第1アーム21と第2アーム22は各々等しい長さを有しており、また各アーム21、22の他端21d、22dには、等しい重さMwを有するウェイト21b、22bが各々取り付けられている。なお図1および図2に示すように、接続部材11の長手軸からウェイト21bまたはウェイト22bまでの距離をLwとする。
なお図1に示す制振装置10において、一対のアーム21、22は、第1アームと第2アームの長手方向が各々X軸と平行するとともに、第1アームと第2アームの間の角度が180度となるよう配置されている。一方、図2に示す制振装置10において、一対のアーム21、22は、第1アーム21と第2アーム22の長手方向が各々Y軸と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう配置されている。制振装置10が図2に示す状態にある場合、ウェイト21b、22bにより、X軸を回転軸として図2に示す偏心モーメントM
bが発生する。重力加速度をGとすると、この偏心モーメントM
bは以下の〔数1〕により表される。
この偏心モーメントM
bにより、図2に示すように下部第1ジョイント15には、Y軸に平行な力F
tbが発生する。この力F
tbは以下の〔数2〕により表される。
後述するように、この力F
tbを利用することにより、吊荷32の並進方向における振れを効率的に減衰させることができる。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。はじめに図3(a)(b)を参照して、吊荷32が旋回方向に振れている場合について説明する。
図3(a)(b)は、上方から見た場合の制振装置10および吊荷32を示す平面図である。図3(a)に示すように、吊荷32が、上下方向(Z軸)を回転軸として反時計回りに旋回している場合を考える。この場合、まず検出装置18により、吊荷32が反時計回りに振れていることが検出される。制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が反時計回りに振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、まず一対のアーム21、22を、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう配置する(図3(a)参照)。
次に制御装置13は、図3(b)に示すように、第1アーム21が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向、すなわち反時計回りに回転するよう第1アーム21を制御する。同時に、制御装置13は、第2アーム22が反時計回りに回転するよう第2アーム22を制御する。これによって、各アーム21、22および各アーム21、22に取り付けられたウェイト21b、22bが、接続部材11の長手軸を回転軸として反時計回りに回転する。このとき、図3(b)に示すように、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから接続部材11を介して、吊荷32に対して働く時計回りのモーメント反力FRが発生する。このことにより、吊荷32の反時計回りの振れを減衰させることができる。
その後、吊荷32を所定位置に着地させる。この場合、吊荷32を着地させる前に各アーム21、22の反時計回りの回転を停止させると、各アーム21、22を減速する際に発生する反時計回りのモーメント反力により、吊荷32が再び旋回方向に振れることが考えられる。従って、吊荷32を着地させた後に、各アーム21、22の反時計回りの回転を停止させることが好ましい。しかしながら、吊荷32を着地させる前に、各アーム21、22の反時計回りの回転を停止させる必要がある場合が考えられる。この場合、各アーム21、22を十分にゆっくりと減速させることが好ましい。これによって、各アーム21、22が減速する際に発生する反時計回りのモーメント反力を、吊荷32と制振装置10との間に働く摩擦力などよりも小さくすることができ、このことにより、吊荷32が再び旋回方向に振れるのを防ぐことができる。
次に図4(a)(b)(c)(d)を参照して、吊荷32が並進方向に振れている場合について説明する。
図4(a)(b)(c)(d)は、上方から見た場合の制振装置10および吊荷32を示す平面図である。図4(a)に示すように、吊荷32がY軸の正の方向(矢印Tで示す方向)に振れている場合を考える。この場合、まず検出装置18により、吊荷32がY軸の正の方向に振れていることが検出される。制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32がY軸の正の方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と直交するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう一対のアーム21、22を配置する。すなわち、図4(a)に示すように、Y軸と直交するX軸上において、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう一対のアーム21、22を配置する。
次に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と同一の方向に各々動き出すよう一対のアーム21、22を駆動する。このとき、第1アーム21と第2アーム22の加速度は互いに同一である。これによって、図4(b)に示すように、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bが各々Y軸の正の方向(矢印T1、T2で示す方向)に動き出す。このことにより、図4(b)に示すように、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して働くY軸の負の方向の反力FTaが発生する。この反力FTaにより、吊荷32のY軸の正の方向の振れを減衰させることができる。
Y軸の正の方向に動き出した第1アーム21およびウェイト21bは、接続部材11の長手軸を回転軸として時計回りに回転する。一方、Y軸の正の方向に動き出した第2アーム22およびウェイト22bは、接続部材11の長手軸を回転軸として反時計回りに回転する。図4(c)は、X軸上に配置されていた各アーム21、22が各々Y軸の正の方向に向って約20度回転した後の制振装置10を示す図である。図4(c)に示す制振装置10において、制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22が各々の円周方向T1、T2に向って同一の大きさの加速度で動くよう一対のアーム21、22を駆動する。これによって、第1アーム21およびウェイト21bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、図4(c)に示す矢印T1と反対の向きに働く反力が発生する。同様に、第2アーム22およびウェイト22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、図4(c)に示す矢印T2と反対の向きに働く反力が発生する。
この場合、第1アーム21およびウェイト21bの運動により発生する矢印T1と反対の向きに働く反力のうち、X軸方向における成分と、第2アーム22およびウェイト22bから発生する矢印T2と反対の向きに働く反力のうち、X軸方向における成分とは、互いに大きさが同じで向きが逆であり、このため各々打ち消しあう。一方、第1アーム21およびウェイト21bの運動により発生する矢印T1と反対の向きに働く反力のうち、Y軸方向における成分と、第2アーム22およびウェイト22bから発生する矢印T2と反対の向きに働く反力のうち、Y軸方向における成分とは、互いに大きさが同じで、かつどちらもY軸の負の方向に働く。従って、図4(c)に示す状態においては、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、Y軸の負の方向に働く反力が発生する。この反力FTaにより、吊荷32のY軸の正の方向の振れをさらに減衰させることができる。
その後、制御装置13は、各アーム21、22が吊荷32の並進方向と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう一対のアーム21、22を停止させる。すなわち図4(d)に示すように、各アーム21、22がY軸の正の方向において重なるよう一対のアーム21、22を停止させる。この場合、前述のとおり、ウェイト21b、22bにより、X軸を回転軸として図2に示す偏心モーメントMbが発生し、これによって、図4(d)に示すように、接続部材11において、下部第1ジョイント15には上部第1ジョイント14に対してY軸に平行な力Ftbが発生する。この反力FTbにより、吊荷32のY軸の正の方向の振れをさらに減衰させることができる。
このように本実施の形態によれば、クレーンと吊荷32との間に介在された制振装置10は、上端がクレーンに連結され、下端が吊荷32に連結され、垂直方向に延びる長手軸を有する棒状の接続部材11と、各々の一端21c、22cが接続部材11に連結された一対のアーム21、22とを備えている。各アーム21、22は、接続部材11に対して、接続部材11の長手軸を回転軸として駆動装置12により回転可能に連結されている。また、吊荷32が並進方向または旋回方向に振れることを検出する検出装置18が設けられており、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて駆動装置12を制御する。このとき制御装置13は、吊荷32の並進方向または旋回方向の振れを減衰させる力が発生するよう各アーム21、22を回転させる。このことにより、クレーンに吊り下げられた吊荷32の並進方向または旋回方向における振れを減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、各アーム21、22の他端21d、22dには、略等しい重さを有するウェイト21b、22bが各々取り付けられている。このため、吊荷32の並進方向または旋回方向の振れをより効率的に減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が旋回方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22を駆動する。このため、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、吊荷32の旋回方向と反対の回転方向に働くモーメント反力が発生する。このことにより、吊荷32の反時計回りの振れを減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が並進方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、はじめに、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と直交するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう一対のアーム21、22を配置し、次に、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と同一の方向に同一の加速度で各々動き出すよう一対のアーム21、22を駆動する。このため、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、吊荷32の並進方向と反対の方向に働く反力が発生する。このことにより、吊荷32の並進方向の振れを減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が並進方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより一対のアーム21、22を駆動した後、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう一対のアーム21、22を停止させる。このため、ウェイト21b、22bにより偏心モーメントが発生し、このことにより、接続部材11において、下部第1ジョイント15には上部第1ジョイント14に対して吊荷32の並進方向と反対の方向に働く力が発生する。この力により、吊荷32の並進方向の振れをさらに減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、接続部材11の上端は、上部第1ジョイント14を介してクレーン側吊り部34に連結されている。この上部第1ジョイント14は、接続部材11の長手軸と直交する回転軸を有しており、このため接続部材11は、クレーン側吊り部34に対して上部第1ジョイント14を回転軸として回転することができる。同様に、接続部材11の下端は、下部第1ジョイント15を介して吊具33に連結されている。この下部第1ジョイント15は、上部第1ジョイント14の回転軸と平行な回転軸を有しており、このため吊具33は、接続部材11に対して下部第1ジョイント15を回転軸として回転することができる。
なお本実施の形態において、吊荷32が旋回方向に振れている場合の制振装置10の作用、または、吊荷32が並進方向に振れている場合の制振装置10の作用についてそれぞれ個別に説明した。しかしながら、これに限られることはなく、吊荷32が旋回方向に振れ、かつ並進方向に振れている場合においても、本実施の形態における制振装置10により、吊荷32の振れを減衰させることができる。
この場合、はじめに制御装置13は、上述の方法により、吊荷32の旋回方向または並進方向における振れの一方を減衰させる。次に制御装置13は、上述の方法により、吊荷32の旋回方向または並進方向における振れの他方を減衰させる。このことにより、吊荷32が旋回方向に振れ、かつ並進方向に振れている場合であっても、吊荷32の旋回方向および並進方向の振れを減衰させることができる。
また本実施の形態において、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が旋回方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22を駆動する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、制御装置13は、吊荷32が旋回方向に振れていない場合であっても、吊荷32の姿勢を調整するため、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22を駆動してもよい。これによって、吊荷32を所望の姿勢に調整することができる。
また本実施の形態において、接続部材11の上端が、上部第1ジョイント14を介してクレーン側吊り部34に連結され、接続部材11の下端が、下部第1ジョイント15を介して吊具33に連結されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、接続部材11の上端を、上部第1ジョイント14を介することなくクレーン側吊り部34に連結し、接続部材11の下端を、下部第1ジョイント15を介して吊具33に連結してもよい。この場合、第1アーム21と第2アーム22とが吊荷32の並進方向と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう一対のアーム21、22を停止させたとき、ウェイト21b、22bにより偏心モーメントが発生し、このことにより、接続部材11には、クレーンフック35に対して、吊荷32の並進方向と反対の方向に働く力が発生する。
第2の実施の形態
次に図5乃至図8を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。このうち図5は、本発明の第2の実施の形態における制振装置を示す正面図であり、図6は、本発明の第2の実施の形態における制振装置を示す側面図である。図7(a)(b)は、本発明の第2の実施の形態において、吊荷の旋回方向の振れを減衰させる方法を示す平面図であり、図8(a)(b)(c)(d)は、本発明の第2の実施の形態において、吊荷の並進方向の振れを減衰させる方法を示す平面図である。
図5乃至図8に示す第2の実施の形態は、第1アームと第2アームとからなる第1アーム対に加えて、第3アームと第4アームとからなる第2アーム対が設けられた点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。図5乃至図8に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
まず図5および図6により、本実施の形態における制振装置10について説明する。
図5および図6に示すように、制振装置10は、上下方向に延びる長手軸を有する棒状の接続部材11と、接続部材11に連結された一対のアーム(第1アーム対)21、22と、接続部材11に連結されたその他の一対のアーム(第2アーム対)23、24とを備えている。図5および図6に示すように、接続部材11の上端は、上部第1ジョイント14と上部第2ジョイント16とを介してクレーン側吊り部34に連結されている。このうち上部第1ジョイント14は、接続部材11の長手軸と直交する回転軸を有しており、また上部第2ジョイント16は、接続部材11の長手軸と直交するとともに上部第1ジョイント14の回転軸と直交する回転軸を有している。このため接続部材11は、クレーン側吊り部34に対して、上部第1ジョイント14を回転軸として回転することができるとともに、上部第2ジョイント16を回転軸として回転することもできる。
同様に、図5および図6に示すように、接続部材11の下端は、下部第1ジョイント15と下部第2ジョイント17とを介して吊具33に連結されている。このうち下部第1ジョイント15は、上部第1ジョイント14の回転軸と平行な回転軸を有しており、また下部第2ジョイント17は、上部第2ジョイント16の回転軸と平行な回転軸を有している。このため吊具33は、接続部材11に対して、下部第1ジョイント15を回転軸として回転することができるとともに、下部第2ジョイント17を回転軸として回転することもできる。
なお本実施の形態において、図5に示すように、接続部材11の長手軸が延びる方向はZ軸方向となっており、上部第1ジョイント14および下部第1ジョイント15の回転軸と平行な方向はX軸方向となっている。また図6に示すように、上部第2ジョイント16および下部第2ジョイント17の回転軸と平行な方向はY軸方向となっている。
次に、第1アーム対21、22および第2アーム対23、24について詳細に説明する。図5および図6に示すように、第1アーム対21、22は、それぞれ一端21c、22cが接続部材11に連結された第1アーム21および第2アーム22からなる。図5および図6に示す第1アーム21および第2アーム22は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態における第1アーム21および第2アーム22と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
図5および図6に示すように、第2アーム対23、24は、それぞれ一端23c、24cが接続部材11に連結された第3アーム23および第4アーム24からなる。第3アーム23の一端23cには、環状の回動支持部材23aが取り付けられており、この回動支持部材23aは、接続部材11の回りを回動可能に設けられている。同様に、第4アーム24の一端24cには、環状の回動支持部材24aが取り付けられており、この回動支持部材24aは、接続部材11の回りを回動可能に設けられている。また接続部材11に、回動支持部材24a、24aを回転駆動する駆動装置12が設けられており、このため、各アーム23、24は、接続部材11に対して、接続部材11の長手軸を回転軸として駆動装置12により回転駆動される。
また図5および図6に示すように、第3アーム23と第4アーム24は各々等しい長さを有しており、また各アーム23、24の他端23d、24dには、等しい重さを有するウェイト23b、24bが各々取り付けられている。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。はじめに図7(a)(b)を参照して、吊荷32が旋回方向に振れている場合について説明する。
図7(a)(b)は、上方から見た場合の制振装置10および吊荷32を示す平面図である。図7(a)に示すように、吊荷32が、上下方向(Z軸)を回転軸として反時計回りに旋回している場合を考える。この場合、まず検出装置18により、吊荷32が反時計回りに振れていることが検出される。制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が反時計回りに振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、まず第1アーム対21、22を、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう配置する(図7(a)参照)。同時に、第2アーム対23、24を、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が180度となるよう配置する。この場合、図7(a)に示すように、例えば第1アーム対21、22はX軸上に配置され、第2アーム対23、24はX軸と直交するY軸上に配置されている。
次に制御装置13は、図7(b)に示すように、第1アーム対21、22および第2アーム対23、24の各アーム21、22、23、24が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向、すなわち反時計回りに回転するよう各アーム21、22、23、24を制御する。これによって、各アーム21、22、23、24および各アーム21、22、23、24に取り付けられたウェイト21b、22b、23b、24bが、接続部材11の長手軸を回転軸として反時計回りに回転する。このとき、図7(b)に示すように、各アーム21、22、23、24および各ウェイト21b、22b、23b、24bから、接続部材11を介して吊荷32に対して働く時計回りのモーメント反力FRが発生する。このことにより、吊荷32の反時計回りの振れを減衰させることができる。
その後、吊荷32を所定位置に着地させる。この場合、吊荷32を着地させる前に各アーム21、22、23、24の反時計回りの回転を停止させると、各アーム21、22、23、24を減速する際に発生する反時計回りのモーメント反力により、吊荷32が再び旋回方向に振れることが考えられる。従って、吊荷32を着地させた後に、各アーム21、22、23、24の反時計回りの回転を停止させることが好ましい。しかしながら、吊荷32を着地させる前に各アーム21、22、23、24の反時計回りの回転を停止させる必要がある場合が考えられる。この場合、各アーム21、22、23、24を十分にゆっくりと減速させることが好ましい。これによって、各アーム21、22、23、24が減速する際に発生する反時計回りのモーメント反力を、吊荷32と制振装置10との間に働く摩擦力などよりも小さくすることができ、このことにより、吊荷32が再び旋回方向に振れるのを防ぐことができる。
次に図8(a)(b)(c)(d)を参照して、吊荷32が並進方向に振れている場合について説明する。
図4(a)(b)(c)(d)は、上方から見た場合の制振装置10および吊荷32を示す平面図である。図8(a)に示すように、吊荷32が矢印Tで示す方向に振れている場合を考える。まず検出装置18により、吊荷32が矢印Tで示す方向に振れていることが検出される。この場合、はじめに制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、並進方向における吊荷32の振れTを、Y軸方向(第1方向)における成分TYと、Y軸と直交するX軸方向(第2方向)における成分TXとに分解する。次に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とがY軸方向と直交するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう第1アーム対21、22を配置する。すなわち、図8(a)に示すように、X軸上において、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう第1アーム対21、22を配置する。同時に制御装置は、第3アーム23と第4アーム24とがX軸方向と直交するとともに、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が180度となるよう第2アーム対23、24を配置する。すなわち、図8(a)に示すように、Y軸上において、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が180度となるよう第2アーム対23、24を配置する。
次に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とが、吊荷32の並進振れTのY軸方向における成分TYと同一の方向に動き出すよう第1アーム対21、22を駆動する。このとき、第1アーム21と第2アーム22の加速度は互いに同一である。これによって、図8(b)に示すように、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bが各々Y軸の負の方向(矢印T1、T2で示す方向)に動き出す。このことにより、図8(b)に示すように、各アーム21、22および各ウェイト21b、22bから、接続部材11を介して吊荷32に対して働くY軸の正の方向の反力FTa1が発生する。
同時に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第3アーム23と第4アーム24とが、吊荷32の並進振れTのX軸方向における成分TXと同一の方向に動き出すよう第2アーム対23、24を駆動する。このとき、第3アーム23と第4アーム24の加速度は互いに同一である。これによって、図8(b)に示すように、各アーム23、24および各ウェイト23b、24bが各々X軸の正の方向(矢印T3、T4で示す方向)に動き出す。このことにより、図8(b)に示すように、各アーム23、24および各ウェイト23b、24bから、接続部材11を介して吊荷32に対して働くX軸の負の方向の反力FTa2が発生する。この反力FTa2と、前述の反力FTa1との合力として、吊荷32の並進振れTと逆向きに働く反力FTaが発生する。この反力FTaにより、吊荷32の並進振れを減衰させることができる。
なお上述の記載から明らかなように、第1アーム対21、22を駆動する際の加速度と、第2アーム対23、24を駆動する際の加速度の比率を調整することにより、Y軸の正の方向の反力FTa1とX軸の負の方向の反力FTa2の比率を調整することができ、このため、反力FTaをXY平面上の任意の方向に発生させることができる。このことにより、任意の方向における吊荷32の並進振れを減衰させることが可能となる。
Y軸の負の方向に動き出した第1アーム21およびウェイト21bは、接続部材11の長手軸を回転軸として反時計回りに回転し、一方、Y軸の正の方向に動き出した第2アーム22およびウェイト22bは、接続部材11の長手軸を回転軸として時計回りに回転する。また、X軸の正の方向に動き出した第3アーム23およびウェイト23bは、接続部材11の長手軸を回転軸として反時計回りに回転し、一方、X軸の正の方向に動き出した第4アーム24およびウェイト24bは、接続部材11の長手軸を回転軸として時計回りに回転する。図8(c)は、X軸上に配置されていた第1アーム対21、22が各々Y軸の負の方向に向って約20度回転し、Y軸上に配置されていた第2アーム対23、24が各々X軸の正の方向に向って約20度回転した後の制振装置10を示す図である。図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と同様に、この場合も、吊荷32の並進振れTと逆向きに働く反力FTaが発生する(図8(c)参照)。この反力FTaにより、吊荷32の並進振れをさらに減衰させることができる。
その後、制御装置13は、第1アーム21と第2アーム22とがY軸と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう第1アーム対21、22を停止させる。すなわち図8(d)に示すように、各アーム21、22がY軸の負の方向において重なるよう第1アーム対21、22を停止させる。このとき、図1乃至図4に示す第1の実施の形態の場合と同様に、Y軸上のウェイト21b、22bにより、X軸を回転軸として偏心モーメントが発生し、これによって、図8(d)に示すように、接続部材11において、下部第1ジョイント15には上部第1ジョイント14に対してY軸に平行な力Ftb1が発生する。
同様に、制御装置13は、第3アーム23と第4アーム24とがX軸と平行するとともに、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が0度となるよう第2アーム対23、24を停止させる。すなわち図8(d)に示すように、各アーム23、24がX軸の正の方向において重なるよう第2アーム対23、24を停止させる。この場合も、X軸上のウェイト23b、24bにより、Y軸を回転軸として偏心モーメントが発生し、これによって、図8(d)に示すように、接続部材11において、下部第2ジョイント17には上部第2ジョイント16に対してX軸に平行な力Ftb2が発生する。この力FTb2と、前述の反力FTb1との合力として、吊荷32の並進振れTと逆向きに働く力FTbが発生する。この力FTaにより、吊荷32の並進振れをさらに減衰させることができる。
このように本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が旋回方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22、23、24が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22、23、24を駆動する。このため、各アーム21、22、23、24および各ウェイト21b、22b、23b、24bから、接続部材11を介して吊荷32に対して、吊荷32の旋回方向と反対の回転方向に働くモーメント反力が発生する。このことにより、吊荷32の反時計回りの振れを減衰させることができる。
また本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が旋回方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とがY軸方向と直交するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が180度となるよう第1アーム対21、22を配置し、同時に制御装置は、第3アーム23と第4アーム24とがX軸方向と直交するとともに、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が180度となるよう第2アーム対23、24を配置する。次に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第1アーム21と第2アーム22とが、吊荷32の並進振れのY軸方向における成分と同一の方向に動き出すよう第1アーム対21、22を駆動し、同時に制御装置13は、駆動装置12を制御することにより、第3アーム23と第4アーム24とが、吊荷32の並進振れのX軸方向における成分と同一の方向に動き出すよう第2アーム対23、24を駆動する。このため、第1アーム対21、22を駆動する際の加速度と、第2アーム対23、24を駆動する際の加速度の比率を調整することにより、反力をXY平面上の任意の方向に発生させることができ、このことにより、任意の方向における吊荷32の並進振れを減衰させることが可能となる。
また本実施の形態によれば、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が並進方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより第1アーム対21、22を駆動した後、第1アーム21と第2アーム22とがY軸と平行するとともに、第1アーム21と第2アーム22の間の角度が0度となるよう第1アーム対21、22を停止させる。このため、ウェイト21b、22bにより偏心モーメントが発生し、このことにより、接続部材11において、下部第1ジョイント15には上部第1ジョイント14に対してY軸に平行な力が発生する。同様に、制御装置13は、第2アーム対23、24を駆動した後、第3アーム23と第4アーム24とがX軸と平行するとともに、第3アーム23と第4アーム24の間の角度が0度となるよう第2アーム対23、24を停止させる。このため、ウェイト23b、24bにより偏心モーメントが発生し、このことにより、接続部材11において、下部第2ジョイント17には上部第2ジョイント16に対してX軸に平行な力が発生する。これらの力の合力として、吊荷32の並進振れと逆向きに働く合力が発生する。この合力により、吊荷32の並進振れをさらに減衰させることができる。
なお本実施の形態において、吊荷32が旋回方向に振れている場合の制振装置10の作用、または、吊荷32が並進方向に振れている場合の制振装置10の作用についてそれぞれ個別に説明した。しかしながら、これに限られることはなく、吊荷32が旋回方向に振れ、かつ並進方向に振れている場合においても、本実施の形態における制振装置10により、吊荷32の振れを減衰させることができる。
この場合、はじめに制御装置13は、上述の方法により、吊荷32の旋回方向または並進方向における振れの一方を減衰させる。次に制御装置13は、上述の方法により、吊荷32の旋回方向または並進方向における振れの他方を減衰させる。このことにより、吊荷32が旋回方向に振れ、かつ並進方向に振れている場合であっても、吊荷32の振れを減衰させることができる。
また上記各実施の形態において、制御装置13は、検出装置18からの信号に基づいて、吊荷32が旋回方向に振れていると判断した場合、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22、23、24が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22、23、24を駆動する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、制御装置13は、吊荷32が旋回方向に振れていない場合であっても、吊荷32の姿勢を調整するため、駆動装置12を制御することにより、各アーム21、22、23、24が吊荷32の旋回方向と同一の回転方向に各々動き出すよう各アーム21、22、23、24を駆動してもよい。これによって、吊荷32を所望の姿勢に調整することができる。