JP2010244927A - 高耐圧気密端子およびその製造方法 - Google Patents

高耐圧気密端子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アイレットにガラスを介してリードを封着してなる気密端子において、リードとアイレットの間に発生した絶縁ガラスのクラックに起因する絶縁破壊を防止することで、絶縁耐力を安定して保持できる気密端子を提供する。
【解決手段】円形キャップ状のアイレット15と、このアイレット15に形成された貫通孔14と、ガラス20を介してリード30を封着してなる気密端子において、前記アイレット15の下面側に配置された前記貫通孔14と互いに連なった同軸配置の座ぐり40を設け、前記貫通孔14から座ぐり端面41まで円盤状にガラスを濡れ拡げて延在させ、リードの軸線方向に形成した封着ガラスフィレットに加えて、アイレット裏面側の水平方向にもガラスの張り出しを設けたことにより、貫通孔端部領域のガラスクラックを抑止し、アイレットとリード間の沿面距離を確保して、両者間の絶縁劣化を防止する。
【選択図】図2

Description

本発明は、高耐圧気密端子に関し、より詳細には、内圧が10MPa以上である冷蔵庫やエアコン、給湯器等の圧縮機における導入端子用に好適する気密端子に関する。
気密端子は、アイレットまたは金属外環の挿通孔にガラスを介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。例えば、冷蔵庫やエアコン等の圧縮機に用いられる気密端子は、特許文献1に示されるように、天板部、この天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、この筒状部の下端から斜め外方に広がったフランジ部、及び天板部から内方側に向かって延びるリード封着孔を形成する3個の小筒状部を備えた金属外環が用いられている。そして、この金属外環のリード封着孔にそれぞれ封着用ガラスを介して封着されたリードが気密封着される。
例えば近年では、地球温暖化の防止および環境負荷低減を目的として、従来圧縮機に用いられてきたHFC134a等の代替フロン系冷媒から、より環境負荷の小さい炭酸ガス等の自然冷媒に切り替える動きが活発となってきている。炭酸ガスはもともと自然界に存在し温暖化への影響は軽微であるが、エアコン等の圧縮機に適用すると内圧がHFC134aの約10倍となり、相応して環境対応型圧縮機に用いられる気密端子には、より厳しい機械的強度が要求されるようになって来ている。このように、最近の気密端子には、想定以上の厳しい使用環境が要求されるケースが増えている。先の例で述べた自然冷媒を使用した冷凍機の場合であれば、内圧が10MPa以上となるが、従来、この種の高耐圧性を要する気密端子には、特許文献2に示すように、金属外環やリードに特殊な金属材料を使用する構造とするなど特別な対策が必要であった。
特許文献1:特開2008−258100号公報
特許文献2:特開昭59−141179号公報
上述するような圧縮機に用いられる高耐圧気密端子は、粘りと伸びを調和させて適切な機械的強度を持たせる必要から、金属材料を金属外環として低炭素鋼またはステンレス鋼を使用したアイレットや鉄−クロム合金材を使用したリードが使用される。そのために、熱膨張係数の異なる封着用ガラスとの整合が困難となり、材料膨張係数の差によりクラックが発生し易くなる。クラックの発生は外界からの水分を招き入れ、アイレットとリード間の絶縁を損なう結果を招く。特に、本発明者等は、このクラックの発生がアイレットの貫通孔の内方端部領域に発生し易いことを見い出し、この領域でのクラック防止に有効な方策を検討した。そして、アイレットとリード間の電気的絶縁を長期にわたり満足させることを提案する。
したがって、本発明の目的は上記する欠点に鑑みこれを解消することを提案するもので、アイレットとリード間の電気的絶縁を安定して維持する新規かつ改良された気密端子を提供し、その製造方法を提示することにある。
本発明によれば、アイレットの貫通孔に封着ガラス材を介し電気的に絶縁してリード部材を気密封着すると共に封着ガラス材をアイレット下面側の貫通孔端部からその周辺に延在させた気密端子を提供し、それにより、アイレットの貫通孔端部領域で発生する封着ガラス材のクラックを防止する。また、封着ガラスのクラック発生位置をアイレットの貫通孔端部領域から離れた位置にすることで、たとえ、発生したクラックに水分が含浸したとしても、アイレットとリードとの絶縁劣化を招かない位置にするような高耐圧用気密端子を提供することにある。ここで、好ましくは、前記アイレットは貫通孔端部に座ぐりを形成し、封着ガラス材をこの座ぐりに流し込んで延在させたことを特徴とする気密端子を開示する。さらに、アイレットの裏面側に延在させたガラス封着材の厚さは0.4mm以上、好ましくは0.4mm〜2mmの範囲内で設け、この座ぐりは深さを0.4mm以上でその内径Dを前記貫通孔の内径dに対して1.2倍以上に形成することを開示する。
本発明の別の観点によれば、貫通孔が形成されたキャップ状アイレットにリードを挿通し、絶縁封着材により前記アイレットとリードを電気的に絶縁して封着する気密端子の製造方法において、絶縁封着材は、リードが挿通されたアイレットの貫通孔およびアイレット裏面側に配置したガラス封着治具が形成する空間に溶融したガラス材を流入充填して貫通孔の空隙部分と同時にアイレット裏面側の貫通孔周辺部分に延在させた高耐圧用気密端子の製造方法を提案する。ここで、アイレットは貫通孔に沿った裏面側に座ぐり加工による切削部が形成され、アイレット裏面に配置する封着治具により、切削部に毛管現象を利用して溶融したガラス材を流入させたことを特徴とする気密端子の製造方法を開示する。したがって、ガラスの流し代をリードの軸線方向に形成した封着ガラスフィレットに加えて、アイレットの内方である裏面側にも水平方向に延長して存在させた封着ガラスの張り出しを設け、それにより、貫通孔端部領域のガラスクラックを抑止し、アイレットとリード間の沿面距離を確保して、両者間の絶縁抵抗の低下を防止する。
座ぐりの内径寸法は、当然のことながら、貫通孔の口径寸法よりも大きくなるが、好ましい範囲は、座ぐり直径Dと、挿通孔の直径dとの関係は、D/d=1.2〜2の範囲であることが判明した。さらに、より望ましくはD/d=1.4〜1.8の範囲である。なお、D/dの値が1.2未満である場合は、アイレットとリード間の充分な沿面距離を得られない。また、前記D/dの値が2を超えるとアイレットの貫通孔から座ぐりの切削部内に封着用ガラスを濡れ拡げて延在し張り出させることが困難となる。
本発明の気密端子は、前記座ぐり部の径を拡げることで所望の範囲に沿面距離を拡張できる。また、本発明の気密端子のアイレットは、プレス加工品に比べて金型変更の必要がなく比較的低コスト、短納期で設計変更が可能である。このため取り付ける機器の型式変更等に即応した対応が可能となり、大幅な納期の短縮化を実現することができる。また、従来用いられてきた絶縁スリーブ等の部品を必要としないことから、従来から材料構成を変更することなしに製造できるため、余分な材料コストがかからず組立が容易となった。
さらに、従来、嵩だかな絶縁スリーブ等を内側端子部に取り付ける方法に比べ、リード軸線上に配置される部品の容積を減らし、気密端子の小型化に対応しやすい利点を有する。
本発明の気密端子はアイレットの貫通孔に封着ガラス材を介し電気的に絶縁してリード部材を気密封着すると共に封着ガラス材をアイレット下面側の貫通孔端部からその周辺に延在させたもので、アイレットの貫通孔端部領域で発生する封着ガラス材のクラックを防止する。また、アイレットの下面側の貫通孔の端部に沿って形成した座ぐりに張り出す絶縁ガラスとは連続するリード軸線上に形成したガラスフィレット斜面と共にアイレットとリード間の沿面距離を増大して両者間の絶縁距離を増大し、この間に金属微粉末が付着することによる絶縁劣化や短絡が防止できる。さらに、ガラスに発生するクラックの起点を、貫通孔の端部領域から異なる位置にすることで、クラック内に浸入する水分による絶縁低下を防止することができる。同時に、クラックの成長方向を起点からリード間の水平延長線上に局限させることができ、ガラスクラックに起因するアイレットとリード間の絶縁破壊を完全に防止できる。しかも、従来の絶縁スリーブ等による絶縁対策を必要とせず、絶縁ガラス単体で実現できるので、製造コスト削減になるという優れた作用効果を奏する。
本発明に係る実施例の気密端子の平面図である。 同じく図1の気密端子のA−A線に沿う縦断面図である。 同じく図1の気密端子の下面図である。 同じく図1の気密端子における貫通孔部分の拡大縦断面図である 同じく図1の気密端子の封着工程の状態を示した要部断面図である。 従来例の気密端子における貫通孔部分の拡大縦断面図である。
本発明の高耐圧用気密端子は、炭素鋼材S10C〜S45Cの切削加工により天蓋部と円筒部および3個の貫通孔を有するアイレットが調達される。この貫通孔にガラスとの封着性に優れた鉄−クロム合金材のリードが挿通され、封着ガラス材により気密封着してアイレットとリードを電気的に絶縁される。封着ガラス材はアイレット下面側の貫通孔端部の周辺部分に延在される。この延在部分はアイレットの裏側下面に座ぐりを形成して位置を規制することができ、それにより、アイレットの貫通孔端部領域で発生する封着ガラス材のクラックを防止することができる。すなわち、溶融状態のガラス材を座ぐりに流し込んで延在させてある。以下、本発明の気密端子の実施例について、図面を参照して説明する。
本発明に係る実施例である気密端子10は、図1ないし図3に示されるように、中炭素鋼S30Cの切削加工による天蓋部11と円筒部12と、この円筒部12の外周から斜め外方に広がるフランジ部13および3個の貫通孔14を一体に有するアイレット15と、このアイレット15の貫通孔14に封着ソーダガラス20を介して気密封着した鉄−クロム合金のリード30とを具備する。そして、アイレット15の下面である裏面側の各貫通孔14に、連続する同軸配置を取って座ぐり40が形成され、この部分にも封着ソーダガラス43を設ける。この座ぐり40は、深座ぐりの形状を有し直径9mm深さ1.5mmに形成されている。従来、絶縁低下の原因となっていたアイレット下面側のガラス表面に生ずるクラックの位置を、座ぐりに形成したガラスの厚み分、空間的に隔絶したガラス内に限定させることができる。その結果、アイレット15とリード30間のクラックによる短絡路の形成を完全に抑制することができる。ここで、座ぐり40の直径をDとし、貫通孔14の口径をdとすると、座ぐりの直径Dは、貫通孔の口径dとの比率D/dで規定され、D/d=1.4〜1.8の範囲で規制される。実施例は、リード封着孔の口径d=6mmであり、この数値が1.5となる。D/dの値を前述の範囲内に設定することで、貫通孔から座ぐりの端まで円盤状にガラスを濡れ拡げて存在させることができる。リード軸線上に形成したガラスフィレット斜面に加えてアイレットとリード間の沿面距離が増大するため、圧縮機内部の駆動系から生ずる切子等の金属微粉末が付着することによる絶縁劣化や短絡の防止効果を有する。
上述する気密端子10は、図4に示すように、アイレット下面側の貫通孔周辺に設けた座ぐり端面41まで一定の厚みを保って封着ガラス材20のソーダガラスが存在することになる。このような構成は、座ぐり40にガラスを埋設したガラス平坦面43を形成させることによって、アイレット15とガラス20との熱膨張差に因って生じる圧縮応力を屈曲点70に集中させることができ、表面クラックの起点をガラス平坦面43とガラスフィレット斜面44の交点70に限定させて、アイレット15から封着ガラス絶縁層を隔てた位置とすることができ、同時にクラックの成長方向を、起点70からリード間の水平延長線上71に局限させることができる。このため、従来、気密端子を機器に取付ける際の前処理工程であるアルカリ洗浄において、気密端子の下面側ガラス表面に生じたクラックに、イオン性物質が浸入することが原因で発生していたアイレットとリード間の絶縁破壊を完全に防止できる。
従来の気密端子では、図6に示すように、アイレット5の下面側にガラスフィレット4のみを形成した構成であったため、クラック9の起点9aは、アイレット5とガラス2の境界端部9aのガラス表面上から発生していた。また、従来、上記応力が集中していたアイレット5とガラス2の境界端部9aを起点として水平方向に生ずるクラック9については、本発明の気密端子においては完全にガラス内部に封入された形態とすることで、絶縁破壊を抑制することができる。
従って、従来は下面側のガラス表面とアイレットの境界端部近傍に集中していた応力を、本発明の気密端子では、下面側貫通孔の隅角部と下面側に形成したガラス屈曲部に分散させることで、応力集中を緩和させることができる。
座ぐり端面までガラスで被覆するには、図5に示す封着治具80を用い、座ぐり底面42と封着冶具80に形成された間隙を毛管として、溶融したガラス82が這い渡って濡れ拡がり、ガラスが座ぐり端面41まで到達して、継ぎ目なく充填され完成する。実施例の気密端子では、座ぐり底面42と封着治具80の間隙を0.8mmに取ることで、座ぐり底面42に平行して0.8mm厚のガラスが貫通孔に沿って円盤状に形成される。
この際、毛管を伝って延在された溶融ガラスは、封着治具との接触表面を平坦に成型しながら固着される。ここで言う接触表面とは、自由表面でない溶融ガラスの表面であり封着治具と接触を保ったまま炉温から徐冷してアイレット座ぐり底面に固着された後、気密端子は封着治具から取り外されて完成される。
次に、本発明の気密端子10と比較例となる従来の気密端子を同時に耐湿絶縁試験にかけ、その結果を表1に示した。比較例は貫通孔の下面周辺の構造が、図6に示すように、ガラスフィレット4のみの構成の気密端子である。
耐湿絶縁性試験の試験条件は、次の通り実施した。実施例と比較例の気密端子各28個を取って供試品とし、初期の絶縁抵抗をDC500V/印加1分値で測定した後、供試品を60℃の2%アルカリ洗浄液で1分間、浸漬撹拌洗浄し、常温で自然乾燥させ、次いで65℃/97%RHに調整した恒温恒湿槽に24時間保管した後、槽より取り出した直後の絶縁抵抗をDC500V/印加1分値で測定した。
実施例の供試品は、試験戦後で絶縁抵抗値の変化がなく良好な試験結果を示した。一方、比較例の供試品は、初期の絶縁抵抗値にもバラツキが大きく耐湿試験後に絶縁抵抗値の低下が見られた。
本発明は、特に高耐圧力かつ高絶縁耐力が要求される気密端子に使用できる。
10・・・気密端子、 11・・・天蓋部、 12・・・円筒部、
13・・・フランジ部、 14・・・貫通孔、 15・・・アイレット、
20・・・封着ガラス材(ソーダガラス)、
30・・・リード、
40・・・座ぐり、 41・・・座ぐり端面、 42・・・座ぐり底面、
43・・・ガラス平坦面、 44・・・ガラスフィレット斜面、
50・・・端子板、
60・・・下面貫通孔の隅角、
70・・・ガラス屈曲部、
80・・・封着治具、 81・・・ガラスタブレット、 82・・・溶融ガラス。

Claims (8)

  1. アイレットの貫通孔に封着ガラス材を介し電気的に絶縁してリード部材を気密封着すると共に前記封着ガラス材をアイレット下面側の貫通孔端部からその周辺に延在させ、前記アイレットの貫通孔端部領域で発生する前記封着ガラス材のクラックを防止する高耐圧用気密端子。
  2. 前記アイレットは前記貫通孔端部に座ぐりが形成され、前記封着ガラス材を前記座ぐりに流し込んで延在させたことを特徴とする請求項1記載の高耐圧用気密端子。
  3. 前記アイレットの下面側に延在させた前記ガラス封着材の厚さは0.4mm〜2mmの範囲内で設けたことを特徴とする請求項2記載の高耐圧用気密端子。
  4. 前記座ぐりは深さを0.4mm以上でその内径Dを前記貫通孔の内径dに対して1.2倍以上に形成したことを特徴とする請求項3記載の高耐圧用気密端子。
  5. 前記座ぐり部底面に延在させた封着ガラス材の表面にガラス封着治具を押し当てて、その接触表面を平坦に成型したことを特徴とする請求項2記載の気密端子。
  6. 貫通孔が形成されたキャップ状アイレットにリードを挿通し、絶縁封着用材により前記アイレットとリードを電気的に絶縁して封着する高耐圧用気密端子の製造方法において、前記絶縁封着材は、前記リードが挿通された前記アイレットの貫通孔およびアイレット裏面側に配置したガラス封着治具が形成する空間に溶融したガラス材を流入充填して前記貫通孔の空隙部分と同時に前記アイレット裏面側の貫通孔周辺部分に延在させた高耐圧用気密端子の製造方法。
  7. 前記アイレットは前記貫通孔に沿った裏面側に座ぐり加工による切削部が形成され、アイレット裏面側に配置する封着治具により、前記切削部に毛管を利用して溶融したガラス材を流入させたことを特徴とする請求項5記載の気密端子の製造方法。
  8. 溶融ガラス材を、座ぐり底面と、これと対応する封着治具の平面に接触させながら流入させることにより、前記アイレット座ぐり底面に延在させた封着ガラスと前記封着治具との接触表面を平坦に成型しながら固着させたことを特徴とする請求項6記載の気密端子。
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