JP2010242955A - クラッチ装置の油圧操作機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】既存部品の動作を利用した簡単な構成で、クラッチ装置及びその付随機構の複雑化や部品点数の増加を招くことなく、車両発進時のクラッチの急激な係合を効果的に抑制する。
【解決手段】マスターシリンダ4から送出された作動油の圧力でクラッチ9を係脱させる作動機構5と、マスターシリンダ4から作動機構5に連通する油圧回路10とを備えたクラッチ装置の油圧操作機構1において、油圧回路10は、クラッチペダル3が戻るときのみ作動油の流量を絞る流量調節部14(チェック弁12及びオリフィス13)を有する第1経路11と、作動油を流量調節せずに流通させる第2経路15と、第1経路11と第2経路15を選択的に切り換える第1バルブ20及び第2バルブ30とを有し、第1バルブ20及び第2バルブ30の開閉を変速機50が備えるシフトフォーク51,61の動作で行うように構成した。
【選択図】図1
【解決手段】マスターシリンダ4から送出された作動油の圧力でクラッチ9を係脱させる作動機構5と、マスターシリンダ4から作動機構5に連通する油圧回路10とを備えたクラッチ装置の油圧操作機構1において、油圧回路10は、クラッチペダル3が戻るときのみ作動油の流量を絞る流量調節部14(チェック弁12及びオリフィス13)を有する第1経路11と、作動油を流量調節せずに流通させる第2経路15と、第1経路11と第2経路15を選択的に切り換える第1バルブ20及び第2バルブ30とを有し、第1バルブ20及び第2バルブ30の開閉を変速機50が備えるシフトフォーク51,61の動作で行うように構成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、クラッチペダルなどの操作に応じてクラッチ作動機構を動作させるクラッチ装置の油圧操作機構に関し、特に、クラッチの急激な係合を抑制して車両の異常急発進を防止するための機構に関する。
自動車などの車両には、エンジンから変速機への駆動トルクの伝達又は遮断を行うクラッチ装置が備えられている。このクラッチ装置は、クラッチへダルの操作に応じてクラッチを作動する作動機構を備えている。すなわち、クラッチへダルを踏むと、作動機構のレリーズフォークやレリーズベアリングが動き、クラッチが切れる。このようなクラッチ装置において、クラッチペダルから作動機構への動力伝達手段が油圧式の場合、クラッチペダルの動作に応じて油圧を発生するマスターシリンダと作動機構との間には、油圧を供給するための油圧回路が設けられている。
このようなクラッチ装置では、車両の発進時にクラッチペダルを素早く戻すと、クラッチが急激に係合して車両の異常急発進や大きな衝撃の発生につながるという問題がある。この問題に対処するため、特許文献1に開示された装置は、クラッチペダルに連動して作動油を送出するマスターシリンダとスレーブシリンダとを連結する作動油管路に流量制御弁を設置している。これによれば、クラッチの操作時に流量制御弁による作動油の流量制限がなされるため、クラッチの急激な係合を抑制できる。
しかしながら、特許文献1の装置では、変速機の変速段に関わらず常に作動油管路の流量制御がなされる。そのため、クラッチの早期磨耗につながるおそれがある。また、発進時以外の変速時には、クラッチの接続が遅れることでその操作感覚に違和感が生じるという問題がある。
これらの点に着目した従来技術として、特許文献2、3に記載の装置が提案されている。特許文献2の装置は、エンジン回転、車速、ギヤポジションをセンサーで検知し、それらをパラメータとした制御条件により、油圧回路に設けた可変オリフィスをソレノイドで進退させて油圧を可変制御する装置である。この装置では、作動油のオリフィス効果は、主に車両の発進時に作用するように制御される。また、特許文献3の装置は、油圧回路に設置した電磁弁の制御により、車両の後進時のみオリフィス油路を使用するようにした装置である。
特許文献2、3の装置では、作動油のオリフィス効果は車両の発進時や後進時のみ作用するため、特許文献1に関して説明した上記の問題は回避できる。しかしながら、特許文献2、3の装置では、油圧回路のオリフィス効果が得られるタイミングを制御するために、電磁バルブなどの電気的な機構を設けている。そのため、電気的機構とその故障検知手段が必要となる。さらに、電気的機構に関連する配線、電力供給源、制御手段なども追加的に必要となる。これにより、車両全体の構成が煩雑化しコスト高につながる懸念がある。また、構造の複雑化に伴い、故障などの不具合が生じる可能性も高くなる。
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存部品を利用した簡単な構成で、クラッチ装置及びその付随機構の複雑化や部品点数の増加を招くことなく、車両発進時のクラッチの急激な係合を効果的に抑制できるクラッチ装置の油圧操作機構を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、クラッチ操作子(3)の操作に連動して作動油を送出するシリンダ(4)と、シリンダ(4)から送出された作動油の圧力によりクラッチ(9)を係脱させる作動機構(5)と、シリンダ(4)から作動機構(5)に連通する油圧回路(10)と、を備えたクラッチ装置の油圧操作機構(2)において、油圧回路(10)は、作動油の流量を絞る流量調節部(14)を有する第1経路(11)と、作動油を流量調節せずに流通させる第2経路(15)と、作動油の流通経路を第1経路(11)と第2経路(15)とで選択的に切り換える経路切換手段(20,30)と、を有し、経路切換手段(20,30)は、変速機(50)が備える変速操作に応じて作動する変速用部材(51,61)の動作で第1経路(11)と第2経路(15)の開閉を行うように構成したことを特徴とする。
本発明にかかるクラッチ装置の油圧操作機構によれば、油圧回路に、作動油の流量を絞る流量調節部を有する第1経路と、作動油を流量調節せずに流通させる第2経路とを選択的に切り換える経路切換手段を備えたので、車両発進時のクラッチ操作に対しては、クラッチの急激な係合を抑制して、車両の異常急発進や大きな衝撃の発生を効果的に防止することが可能となる。その一方で、車両発進時以外の変速操作時には、クラッチの迅速な接続により、クラッチの操作感覚にダイレクト感を持たせて、操作感覚を良好にすることが可能となる。また、クラッチの早期磨耗も抑制できる。その上で、本発明では、変速機が備える変速操作に応じて作動する変速用部材の動作で油圧回路の開閉を行うように構成した。したがって、第1経路と第2経路の開閉を行うための電磁バルブなどの電気的な機構が不要となる。これにより、油圧操作機構の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。また、油圧操作機構に対する電気的な制御を行う必要が無いので、追加的な配線、電力供給源、制御手段なども不要となり、車両の製造コストを抑制することができる。
また、この油圧操作機構では、第1経路(11)の流量調節部(14)は、クラッチ(9)が係合するときのみ作動油の流量を絞るように構成するとよい。これによれば、第1経路が選択されている状態で、クラッチが係合するときの衝撃の効果的な緩和と、クラッチの係合を解除するときのスムーズな操作性との両立が可能となる。
また、この油圧操作機構では、経路切換手段(20,30)は、変速機(50)の変速段が1速段もしくは後進段に設定されているときは、第1経路(11)を選択し、それ以外のときは、第2経路(15)を選択することが望ましい。これによれば、クラッチの急激な係合の抑制が必要である1速段もしくは後進段のみ第1経路を使用することができ、それ以外のときは、第2経路を使用することができる。したがって、車両の発進時の異常急発進や衝撃の効果的な抑制と、走行時の変速操作に対するクラッチの良好な操作感覚の両立が可能となる。
また、この油圧操作機構では、経路切換手段(20,30)は、変速機(50)が備えるシフトフォーク(51,61)の動作で第1経路(11)と第2経路(15)の開閉を行う弁(20,30)を備えてよい。これによれば、変速機が従来から備えているシフトフォークの動作を利用して油圧回路の開閉制御が行えるので、油圧操作機構の制御のための別途の電気的部品などを設ける必要がなくなる。したがって、クラッチ装置及び油圧操作機構の構造の複雑化や部品点数の増加を招かずに済む。特に、シフトフォークの動作を利用した機械的な機構で作動油経路の開閉が行えるので、電気的デバイスやその制御を必要としない簡素な装置となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
本発明にかかるクラッチ装置の油圧操作機構によれば、既存の部品を利用した簡単な構成で、構造の複雑化や部品点数の増加を招くことなく、車両発進時のクラッチの急激な係合を効果的に抑制できる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかるクラッチ装置の油圧操作機構及び変速機の構成を概念的に示す図である。同図に示すように、クラッチ装置の油圧操作機構1は、クラッチペダル(クラッチ操作子)3の操作に連動して作動油を送出するマスターシリンダ4と、マスターシリンダ4から送出された作動油の圧力によりクラッチ9を係脱させる作動機構5と、マスターシリンダ4と作動機構5を連通する油圧回路10とを備えている。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかるクラッチ装置の油圧操作機構及び変速機の構成を概念的に示す図である。同図に示すように、クラッチ装置の油圧操作機構1は、クラッチペダル(クラッチ操作子)3の操作に連動して作動油を送出するマスターシリンダ4と、マスターシリンダ4から送出された作動油の圧力によりクラッチ9を係脱させる作動機構5と、マスターシリンダ4と作動機構5を連通する油圧回路10とを備えている。
クラッチペダル3は、踏込操作に応じて回動するように設置されている。クラッチペダル3には、マスターシリンダ4のピストンロッド4aが連結されている。マスターシリンダ4は、油圧回路10を介して作動機構5に連結されている。作動機構5は、油圧回路10の油圧で動作するレリーズベアリング6、クラッチ9のクラッチディスク8を押圧するためのダイヤフラムスプリング7などを備えて構成されている。
クラッチペダル3を踏み込むと、ピストンロッド4aが油圧発生方向へ移動する。その結果、油圧回路10を介して下流側の作動機構5へ油圧が供給される。これにより、作動機構5のレリーズベアリング6が順方向へ動く。レリーズベアリング6が順方向へ動くと、ダイヤフラムスプリング7がクラッチディスク8から離間する方向に付勢されて、クラッチ9が切れる。一方、クラッチペダル3の踏み込みを解除する(クラッチペダル3を戻す)と、ダイヤフラムスプリング7の復元力(反力)によって、レリーズベアリング6が逆方向に動くことで油圧回路10内の作動油がクラッチペダル3側へ戻されながらクラッチ9が接続(係合)される。この際、クラッチ9の接続速度は、油圧回路10内を戻る作動油の戻り時間に応じて決まる。
そして、本実施形態の油圧回路10は、互いに並列に配置した第1経路11と第2経路15を備えるとともに、作動油の流通経路を第1経路11と第2経路15とで選択的に切り換えるための経路切換手段である第1バルブ20及び第2バルブ30を備えている。なお、以下では、説明の都合上、油圧回路10のクラッチペダル3側を上流側と呼び、作動機構5側を下流側と呼ぶ。また、以下の説明で、左右あるいは時計回り方向(反時計回り方向)というときは、図面上での左右及び時計回り方向を指すものとする。
第1経路11は、作動機構5側からクラッチペダル3側への作動油の流れを阻止するチェック弁12を設けた流路と、オリフィス13を設けた流路とを並列に配置した構成である。この第1経路11では、チェック弁12とオリフィス13によって、クラッチ9が係合するときのみ作動油の流量を絞る流量調節部14が構成されている。第2経路15は、作動油を流量調節せずにそのまま流通させる経路である。
また、油圧回路10には、マスターシリンダ4の下流側に第1バルブ20と第2バルブ30がこの順で配設されている。第1バルブ20及び第2バルブ30の下流側には、上記の第1経路11と第2経路15が配置されている。第1バルブ20は、スプリング21によって左側に付勢されたスプール22と、スプール22の位置に関わらず常に開いた常開ポート23と、スプール22が右端に位置するとき開く第1開閉ポート24と、スプール22が左端に位置するときに開く第2開閉ポート25とを備えている。第1バルブ20のスプール22は、後述する変速機50が備えるリバースシフトフォーク51の動作で作動する。
一方、第2バルブ30は、バルブの構成自体は第1バルブ20と同様であり、スプリング31によって左側に付勢されたスプール32と、スプール32の位置に関わらず常に開いた常開ポート33と、スプール32が右端に位置するときに開く第1開閉ポート34と、スプール32が左端に位置するときに開く第2開閉ポート35とを備えている。第2バルブ30のスプール32は、変速機50が備える1−2速シフトフォークシャフト61の動作で作動する。
マスターシリンダ4から出た油路16は、第1バルブ20の常開ポート23に繋がっている。また、第1バルブ20の第1開閉ポート24と第2バルブ30の第1開閉ポート34は、いずれも第1経路11の上流端に繋がっている。また、第1バルブ20の第2開閉ポート25は、第2バルブ30の常開ポート33に繋がっている。第2バルブ30の第2開閉ポート35は、第2経路15の上流端に繋がっている。第1経路11と第2経路15は、それらの下流端が合流して一本の油路17となり、作動機構5に繋がっている。
次に、変速機(マニュアルトランスミッション)50の構成を概略的に説明する。本実施形態の変速機自体の構成は、従来と同様であり、リバースアイドルギヤ(図示せず)をニュートラル位置とリバース位置との間で移動させるリバースシフトフォーク51と、1速2速同期機構のスリーブ(図示せず)をニュートラル位置及び1速位置と2速位置の間で移動させる1−2速シフトフォーク61aを備えている。なお、変速機50は、3−4速シフトフォークや5速シフトフォークも備えているが、それらは、本実施形態の油圧操作機構1とは直接関わりがないため、図示及び説明を省略する。
リバースシフトフォーク51は、支点52を中心に回動自在に設置されている。そして、リバースシフトフォーク51を動かすための機構として、ニュートラル位置とリバース位置との間で回動自在に設置されたリバースシフトアーム53、運転者によって操作されるシフトレバー(チェンジレバー)40の操作をリバースシフトアーム53に伝達するためのシフトワイヤー54、リバースシフトアーム53の回動動作をリバースシフトフォーク51の一端に伝達するシフトピース55などが設けられている。
また、1−2速シフトフォーク61aを設けた1−2速シフトフォークシャフト61は、軸方向に沿って進退移動するようになっている。1−2速シフトフォークシャフト61を動かすための機構として、ニュートラル位置及び1速位置と2速位置の間で回動自在に設置された1−2速シフトアーム63、シフトレバー40の操作を1−2速シフトアーム63に伝達するためのシフトワイヤー64、1−2速シフトアーム63の回動動作を1−2速シフトフォークシャフト61の軸方向動作に変換するシフトピース65などが設けられている。
ここで、変速機50の変速段と第1バルブ20及び第2バルブ30の開閉状態との関係について説明する。図2,図3,図4はそれぞれ、変速機50で1速段、リバース段、2速段が設定されているときの油圧操作機構1の各部の状態を示す図である。なお、変速機50で1速段、リバース段、2速段以外の変速段が設定されているときの油圧操作機構1は、図1に示す状態となる。
まず、図3を参照して第1バルブ20について説明する。運転者によってシフトレバー40がリバース位置に操作されると、リバースシフトアーム53が時計回りに回動し、リバースシフトフォーク51が反時計回りに回動したリバース位置となる。この状態では、リバースシフトフォーク51の一端に接する第1バルブ20のスプール22が、リバースシフトフォーク51の押圧力でスプリング21の付勢に抗して右端に位置する。これにより、第1バルブ20の第1開閉ポート24が開き、第2開閉ポート25が閉じる。
シフトレバー40がリバース位置以外(ニュートラル位置を含む、以下同じ)に操作されたときは、図1に示すように、リバースシフトアーム53及びリバースシフトフォーク51がリバース位置から戻ったニュートラル位置となる。この状態では、リバースシフトフォーク51による第1バルブ20のスプール22への押圧が解除されるので、スプール22は、スプリング21の付勢で左端に位置する。これにより、第1バルブ20の第2開閉ポート25が開き、第1開閉ポート24が閉じる。
次に、図2,4を参照して第2バルブ30について説明する。図2に示すように、シフトレバー40が1速(LOW)位置に操作されると、1−2速シフトアーム63が反時計回りに回動し、1−2速シフトフォークシャフト61が右一杯に移動した1速位置となる。この状態では、1−2速シフトフォークシャフト61の右端に接する第2バルブ30のスプール32がスプリング31の付勢に抗して右端に位置する。これにより、第2バルブ30の第1開閉ポート34が開き、第2開閉ポート35が閉じる。一方、図4に示すように、シフトレバー40が2速位置に操作されると、1−2速シフトアーム63が時計回りに回動し、1−2速シフトフォークシャフト61が左一杯に移動した2速位置となる。この状態では、1−2速シフトフォークシャフト61の右端が第2バルブ30のスプール32から離間するので、スプール32がスプリング31の付勢で左端に位置する。これにより、第2バルブ30の第1開閉ポート34が閉じ、第2開閉ポート35が開く。
シフトレバー40が1速位置及び2速位置以外に操作されたときは、図1に示すように、1−2速シフトアーム63及び1−2速シフトフォークシャフト61は、1速位置と2速位置の中間のニュートラル位置となる。この状態でも、1−2速シフトフォークシャフト61によるスプール32の押圧が解除されているので、スプール32は、スプリング31の付勢で左端に位置する。したがって、第2バルブ30の第2開閉ポート35が開き、第1開閉ポート34が閉じる。
次に、変速機50で各変速段が設定されているときの油圧操作機構1の状態について説明する。まず、変速機50で1速段が設定されているときは、図2に示すように、第1バルブ20では、第1開閉ポート24が閉じ、第2開閉ポート25が開いている。また、第2バルブ30では、第1開閉ポート34が開き、第2開閉ポート35が閉じている。この状態で、クラッチペダル3を踏み込むと、マスターシリンダ4から出た作動油が、第1バルブ20の第2開閉ポート25、第2バルブ30の第1開閉ポート34、第1経路11のチェック弁12を通る経路で作動機構5に供給される。これにより、レリーズベアリング6が順方向に動いてクラッチ9が切れる。一方、クラッチペダル3の踏み込みを解除する(クラッチペダル3を戻す)と、作動機構5側の作動油が、第1経路11のオリフィス13、第2バルブ30の第1開閉ポート34、第1バルブ20の第2開閉ポート25を通る経路でクラッチペダル3側へ戻される。これにより、レリーズベアリング6が逆方向に動いてクラッチ9が接続される。この際、第1経路11のオリフィス13を介して戻る作動油は、オリフィス13でその流れが絞られるため、作動機構5側からクラッチペダル3側へゆっくりと還流する。したがって、クラッチペダル3を戻す速度に関わらず、クラッチ9の接続に要する時間を稼ぐことができるので、クラッチ9の急激な係合を抑制でき、クラッチ装置や変速機50に急激な負荷が作用することを回避できる。
変速機50でリバース段が設定されているときは、図3に示すように、第1バルブ20では、第1開閉ポート24が開き、第2開閉ポート25が閉じている。また、第2バルブ30では、第1開閉ポート34が閉じ、第2開閉ポート35が開いている。この状態で、クラッチペダル3を踏み込むと、マスターシリンダ4から出た作動油が、第1バルブ20の第1開閉ポート24を経由して第1経路11のチェック弁12を通る経路で作動機構5に供給される。これにより、レリーズベアリング6が順方向に動いてクラッチ9が切れる。一方、クラッチペダル3の踏み込みを解除すると、作動機構5側の作動油が、第1経路11のオリフィス13及び第1バルブ20の第1開閉ポート24を通る経路でクラッチペダル3側へ戻される。これにより、レリーズベアリング6が逆方向に動いてクラッチ9が接続される。この際にも、第1経路11のオリフィス13を介して戻る作動油は、オリフィス13でその流れを絞られるため、作動機構5側からクラッチペダル3側へゆっくりと還流する。
変速機50で2速段が設定されているときは、図4に示すように、第1バルブ20では、第1開閉ポート24が閉じ、第2開閉ポート25が開いている。また、第2バルブ30では、第1開閉ポート34が閉じ、第2開閉ポート35が開いている。この状態で、クラッチペダル3を踏み込むと、マスターシリンダ4から出た作動油が、第1バルブ20の第2開閉ポート25及び第2バルブ30の第2開閉ポート35を経由して第2経路15通る経路で作動機構5に供給される。これにより、レリーズベアリング6が順方向に動いてクラッチ9が切れる。一方、クラッチペダル3の踏み込みを解除すると、作動機構5側の作動油が、第2経路15及第2バルブ30の第2開閉ポート35と第1バルブ20の第2開閉ポート25を通る経路(踏み込み時と同じ経路)でクラッチペダル3側へ戻される。これにより、レリーズベアリング6が逆方向に動いてクラッチ9が接続される。この際、作動油が第2経路15を戻るため、クラッチ9の接続速度に遅れは生じない。
変速機50で3速段以上の変速段が設定されているときの油圧操作機構1の各部は、図1に示す状態となるが、この状態は、図4の2速段が設定されているときと比較して、1−2速シフトフォークシャフト61の位置が異なるが、1−2速シフトフォークシャフト61で動かされる第2バルブ30のスプール32の位置は同じである。したがって、3速段以上の設定時における油圧回路10の各部の状態及び作動油の流れは、2速段の設定時と同じである。
このように、本実施形態の油圧操作機構1では、変速機50で1速段又はリバース(後進)段が設定されているときは、クラッチペダル3が戻るときのみ作動油の流量を絞る流量調節部14を有する第1経路11が選択され、それ以外の変速段(2速以降及びニュートラル)が設定されているときは、作動油を流量調節せずに流通させる第2経路15が選択されるようになっている。したがって、車両の発進時(1速段及びリバース段での発進時)のクラッチ操作に対しては、クラッチ9の急激な係合を抑制して、車両の異常急発進や大きな衝撃の発生を効果的に防止できる。その一方で、車両の発進時以外(走行中)の変速操作時には、クラッチ9が迅速に接続されるようになるので、クラッチ9の操作感覚にダイレクト感を持たせて、操作感覚を良好にすることができる。また、クラッチ9の早期磨耗も防止できる。
すなわち、クラッチ9の急激な係合の抑制が必要である1速段もしくは後進段での発進時にのみ第1経路11を使用することができ、それ以外のときは、第2経路15を使用することができる。したがって、車両の発進時の異常急発進や衝撃の効果的な抑制と、走行時の変速操作に対するクラッチ9の良好な操作感覚の両立が可能となる。
そして、本実施形態の油圧操作機構1では、作動油の流通経路を第1経路11と第2経路15とで選択的に切り換える経路切換手段として、変速機50のリバースシフトフォーク51の動作で作動する第1バルブ20と、変速機50の1−2速シフトフォークシャフト61の動作で作動する第2バルブ30とを備えた。すなわち、この経路切換手段は、変速機50が備える変速操作に応じて作動する変速用部材の動作で経路の開閉を行うように構成している。したがって、第1経路11と第2経路15の開閉を行うための電磁バルブなどの電気的な機構が不要となる。これにより、油圧操作機構1の部品点数を少なく抑えて構成の簡素化を図ることができる。また、油圧操作機構1に対する電気的な制御を行う必要が無いので、追加的な配線、電力供給源、制御手段なども不要となり、車両の製造コストを抑制することができる。
つまり、この油圧操作機構1では、変速機50が従来から備えているシフトフォーク(リバースシフトフォーク51、1−2速シフトフォークシャフト61)の動作で作動油経路の開閉制御が行えるので、油圧操作機構1の制御のための別途の電気的部品などを設ける必要がなくなる。このように、変速機50が備えるシフトフォークの動作を利用した機械的な機構で作動油経路の開閉制御が行えるので、電気的デバイスやその制御を必要としない簡素な装置となる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる油圧操作機構について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。
次に、本発明の第2実施形態にかかる油圧操作機構について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。
図5は、第2実施形態にかかるクラッチ装置の油圧操作機構及び変速機の構成を概念的に示す図である。本実施形態の油圧操作機構1−2は、第1実施形態の油圧操作機構1が備えていたリバースシフトフォーク51の動作で作動する第1バルブ20を省略し、経路切換手段として、1−2シフトフォークシャフト61の動作で作動する第2バルブ30のみを備えたものである。すなわち、本実施形態の油圧回路10−2では、マスターシリンダ4から出た油路16は、第2バルブ30の常開ポート33に繋がっている。また、第2バルブ30の第1開閉ポート34は、第1経路11の上流端に繋がっており、第2開閉ポート35は、第2経路15の上流端に繋がっている。なお、リバースシフトフォーク51は、本実施形態の油圧操作機構1−2と直接関わりがないため、図示を省略している。
本実施形態の油圧操作機構1−2では、変速機50で1速段が設定されているときのみ第1経路11が選択され、リバース段を含むそれ以外の変速段が設定されているときは、第2経路15が選択される。したがって、1速段発進のクラッチ操作に対してのみ、クラッチの急激な係合を抑制して、車両の異常急発進や大きな衝撃の発生を効果的に防止できる。本実施形態の油圧操作機構1−2は、第1実施形態よりも部品点数が少なく構成が簡単になるので、より簡易な構成の車両や低廉な車両に適用して好適である。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、変速機50が備えるシフトフォーク(リバースシフトフォーク51,1−2速シフトフォークシャフト61)の動作で第1経路11と第2経路15の開閉を行う第1バルブ20と第2バルブ30を作動するように構成した場合を説明したが、本発明の経路切換手段は、シフトフォーク以外の変速機50が備える変速操作に応じて作動する変速用部材の動作で第1経路11と第2経路15の開閉を行うように構成してもよい。
1 油圧操作機構
3 クラッチペダル(クラッチ操作子)
4 マスターシリンダ
5 作動機構
9 クラッチ
10 油圧回路
11 第1経路
12 チェック弁
13 オリフィス
14 流量調節部
15 第2経路
20 第1バルブ(経路切換手段)
30 第2バルブ(経路切換手段)
40 シフトレバー(チェンジレバー)
50 変速機
51 リバースシフトフォーク(変速用部材)
61 1−2速シフトフォークシャフト(変速用部材)
3 クラッチペダル(クラッチ操作子)
4 マスターシリンダ
5 作動機構
9 クラッチ
10 油圧回路
11 第1経路
12 チェック弁
13 オリフィス
14 流量調節部
15 第2経路
20 第1バルブ(経路切換手段)
30 第2バルブ(経路切換手段)
40 シフトレバー(チェンジレバー)
50 変速機
51 リバースシフトフォーク(変速用部材)
61 1−2速シフトフォークシャフト(変速用部材)
Claims (4)
- クラッチ操作子の操作に連動して作動油を送出するシリンダと、
前記シリンダから送出された作動油の圧力によりクラッチを係脱させる作動機構と、
前記シリンダから前記作動機構に連通する油圧回路と、
を備えたクラッチ装置の油圧操作機構において、
前記油圧回路は、前記作動油の流量を絞る流量調節部を有する第1経路と、前記作動油を流量調節せずに流通させる第2経路と、前記作動油の流通経路を前記第1経路と前記第2経路とで選択的に切り換える経路切換手段と、を有し、
前記経路切換手段は、変速機が備える変速操作に応じて作動する変速用部材の動作で前記第1経路と前記第2経路の開閉を行うように構成した
ことを特徴とするクラッチ装置の油圧操作機構。 - 前記第1経路の前記流量調節部は、前記クラッチが係合するときのみ前記作動油の流量を絞るように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置の油圧操作機構。 - 前記経路切換手段は、前記変速機の変速段が1速段もしくは後進段に設定されているときは、前記第1経路を選択し、それ以外のときは、前記第2経路を選択する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ装置の油圧操作機構。 - 前記経路切換手段は、前記変速機が備えるシフトフォークの動作で前記第1経路と前記第2経路の開閉を行う弁を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクラッチ装置の油圧操作機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009095718A JP2010242955A (ja) | 2009-04-10 | 2009-04-10 | クラッチ装置の油圧操作機構 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009095718A JP2010242955A (ja) | 2009-04-10 | 2009-04-10 | クラッチ装置の油圧操作機構 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010242955A true JP2010242955A (ja) | 2010-10-28 |
Family
ID=43096151
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009095718A Pending JP2010242955A (ja) | 2009-04-10 | 2009-04-10 | クラッチ装置の油圧操作機構 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010242955A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014163111A1 (ja) * | 2013-04-02 | 2014-10-09 | 株式会社Osamu-Factory | 後付自動クラッチ装置 |
-
2009
- 2009-04-10 JP JP2009095718A patent/JP2010242955A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014163111A1 (ja) * | 2013-04-02 | 2014-10-09 | 株式会社Osamu-Factory | 後付自動クラッチ装置 |
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