JP2010242745A - 内燃機関の燃焼室の圧力推定方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃焼サイクルのある工程において、燃焼室内部の圧力を推定する方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】燃料噴射弁28における差圧変動を補償するために、燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、推定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関のためのエンジンマネジメントシステムにおける気筒圧の推定のための方法及び装置に関するものである。
内燃機関のためのエンジンマネジメントシステムは、多くのエンジン運転パラメータを制御している。
有害物質の排出を低く抑える効率的な燃焼を得るために、最近のエンジンマネジメントシステムは、個々の燃焼に対して目標となる燃料量を噴射するように燃料噴射弁を制御している。所望の燃料量は、通常、燃料供給管における燃料圧及び噴射弁が開放されて燃料を燃焼室に噴射する時間を制御するパルス幅に基づいて制御される。
しかしながら、噴射弁を通過する燃料流量は、燃料供給管と燃焼が行なわれる燃焼室内部との間の燃料噴射弁における圧力差の関数である。従って、目標とする燃料量を達成するために、噴射弁制御のパルス幅は、噴射弁における圧力差に対応して補正されることが必要である。例えば、直噴エンジンにおいては、噴射弁における圧力差は燃料供給管の圧力(すなわち、レール圧力)から燃焼室(例えば、該当する気筒の燃焼室)における圧力を差し引いた値に相当する。しかし、圧縮噴射期間中に、各気筒におけるピストンの移動及び燃料噴射により気筒内圧力が変化するために、噴射弁における圧力差も変動する。
燃焼室における悪環境のために、現在のところ、燃焼室内部の圧力を正確に測定することは経済的に現実的ではない。それ故、本願発明は、噴射弁における差圧に応じてより正確な補償を行うことができるように、燃焼サイクルの少なくともある部分(工程)における燃焼室内部の圧力を推定する方法及び装置を提供することを目的とするものである。
本願発明は、燃料噴射弁により燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を推定する方法を提供するものである。この方法は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧、並びに吸気弁が閉じるタイミングおよび少なくともその他の一つのタイミングにおける燃焼室の容量に基づき、燃焼室の圧力を推定するものである。
この方法の一つの例において、噴射弁が開弁している間の燃焼室の平均圧力は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧並びに吸気弁が閉じるタイミングおよび少なくともその他の複数のタイミングにおける燃焼室の容量に基づき計算される推定圧力を使用して、それらの推定圧力を噴射弁が開弁している期間に亘って平均化することにより、求めることができる。
本願発明は、また、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するために燃料噴射弁が開弁する期間に対応する噴射パルスの幅を調整する方法を提供するものである。この方法は、推定された燃焼室の圧力に基づき、燃料供給圧に対して圧力補正を加えるものである。推定燃焼室圧力は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧、並びに吸気弁が閉じるタイミング及び少なくともその他の一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、計算される。
本願発明は、さらに、燃料が噴射される内燃機関のある気筒の燃焼室の圧力を推定する圧力推定手段を有するエンジンコントロールユニットを提供するものである。この圧力推定手段は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧、並びに吸気弁が閉じるタイミング及び少なくともその他の一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を推定するものである。
また、本願発明は、少なくとも1つの燃焼室と前述のエンジンコントロールユニットを有する内燃機関を含むエンジンシステムを提供するものである。
さらに、本願発明では、コンピューターが本願発明の上記の方法を実行することを可能にする、コンピューターが読取り可能なプログラムコードを記憶する(コンピューターが読取り可能な)記憶媒体を利用して、前記方法が実行される。
本願発明の実施形態における内燃機関の例を示す模式的な図である。 本願発明の実施形態におけるエンジンコントロールユニットの一部を示すブロック図である。 非燃焼サイクル(工程)における圧力変化を示すグラフである。 エンジンコントロールユニットの一部を示すブロック図である。 車両を示す模式図である。
本願発明の実施形態を、添付の図面を参照して、説明する。以下、内燃機関の燃料噴射弁における差圧に応じて補償を行なうことが可能な本願発明の実施形態を説明する。この実施形態では、燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧、並びに吸気弁が閉じるタイミングおよび少なくともその他の一つのタイミングにおける燃焼室の容量に基づき、推定される。
図1は、内燃機関20を含むエンジンシステム10の全体を模式的に示している。図1に示されている内燃機関20は、4気筒のガソリンエンジンである。エンジンシステム10は、エンジンコントロールユニット(ECU)40及び種々のセンサーからなるエンジンマネジメントシステム、並びにこのECU40が接続されるエンジンシステム10の制御サブシステムにより制御されるものである。
電子制御装置からなるエンジンコントロールユニット(ECU)40は、プログラムされたロジックを実行する中央演算ユニット(CPU)141(従って、CPU141はプログラムされたロジック回路を形成する)、制御データ及び気筒圧推定ユニット54を形成するために必要となるプログラムされたロジックなどの制御プログラムを記憶するROM142、種々のデータを保存するRAM143、バッファーメモリ144、センサーからのデータ信号を通信するための入出力回路145、及びバスライン146から構成されている。
ECU40のCPU141は、例えば、図2に詳細に示されている気筒圧推定ユニット54のためのプログラムされたロジックの処理を実行するものであり、それにより、プログラムされたロジック回路を形成する。ECU40は、エンジンの吸気側におけるスロットル22の作動を制御する。吸気マニホールド32におけるマニホールド圧力センサー24は、ECU40にデータ信号を送信する。各気筒の燃料噴射弁28は、燃料供給ライン(燃料配管)27に接続されている。この実施形態において、燃料噴射弁28は、各気筒に燃料を直接噴射する直噴インジェクターとして示されている。プレッシャーレギュレーター30は、燃料供給ライン26から燃料供給ライン27への燃料圧を調節するために使用されるものである。個々の燃料噴射弁28は、燃料の噴射時間を制御するための制御信号をECU40から受けている。点火プラグ34は、ECU40から点火時期(IGT)信号を受けている。
ECU40は、エンジンのクランク軸の回転を示すクランクセンサー35から信号を得ている。エンジンコントロールユニット40は、吸気及び排気カムシャフト36及び42の回転タイミングをそれぞれ示すカムシャフトセンサー38及び44からの信号も得ている。吸気及び排気カムシャフト36及び42は、図示しない吸気弁及び排気弁をそれぞれ制御している。ECU40は、図示しないその他のセンサーからもその他の信号を取得して、従来からも行なっているように、エンジンスピード、エンジン負荷などの運転パラメータをモニターしている。
ECU40は、自在加熱式排ガス酸素濃度(UHEGO)センサー48及び別の加熱式排ガス酸素濃度(HEGO)センサー52からの信号も取得している。この実施形態において示されているUHEGOセンサー48及びHEGOセンサー52は、排気マニホールド46の下流において、触媒コンバーター50のいずれかの側に配設されている。しかし、その他の例において、UHEGOセンサー48及び/又はHEGOセンサー52の配置は、この例と異なっていてもよい。ECU40は、図2及至図4においてより詳細に説明する気筒圧推定ユニット54を有している。
図1においては、説明を容易にするために4気筒のエンジン示したが、本願発明は4気筒に限らずその他の数の気筒を有するエンジンも含むものである。例えば、4気筒を二つのグループ(列)に分けて配置した8気筒のエンジンであってもよい。その場合、4気筒の列のシリンダーヘッドは、図1に示されるようになる。但し、吸気マニホールドはそれぞれの列に対して設けられ、各々の列はスロットル22に接続される。また、排気マニホールドはそれぞれの列に対して設けられ、各々の排気マニホールドはそれぞれの排気システムあるいは共通の排気システムに接続される。
図2は、気筒圧推定ユニット54の部分的な一例を示す模式的なブロック図である。図2は、ECU40のCPU141により実行され、かつ気筒圧推定ユニット54の実施形態に含まれる種々のプログラムされたロジックのブロックの一例を示している。その中には、噴射弁28の動作を制御するための噴射量及び噴射パルス幅を決定するための種々のロジック要素が含まれている。図示及び説明の便宜上、図2においては1個の噴射弁28のみが示されているが、多気筒エンジンのそれぞれの噴射弁に対して、それぞれの信号が提供される。
始動時噴射量(SIQ)ロジック60は、始動時初期の噴射量のために使用される始動時噴射量値を提供する。始動後噴射量ロジック62は、始動時の初期段階経過後に作動して噴射量の計算を行なうものである。
始動後噴射量ロジック62は、エンジン負荷などに応じた噴射量の基本値を提供する基本噴射量(BIQ)ロジック64を含む種々のロジックユニットを有している。空燃比(AFR)ロジック66は、エンジンシステムにおいて測定される種々のパラメータに基づいて、AFRフィードバック制御を行なう。燃料圧の補正(FPC)ロジック68は、後に図3及び図4を参照してより詳細に説明する燃料圧の補正を行なう。その他の補正(OC)ロジック70は、例えば、噴射弁の温度補正、パージ制御補正、などの特別な実行に依存した補正要素を提供するものである。
始動時噴射量ロジック60及び始動後噴射量ロジック62のロジックユニットからの種々の出力は、最終噴射量(FIQ)ロジック72に提供される。この最終噴射量ロジック72は、前述したロジック要素60、62の出力信号の関数、例えば積として最終噴射量の値を算出する。この最終噴射量の値は、最終噴射パルス幅ロジック74に提供される。この最終噴射パルス幅ロジック74は、噴射弁28の特性に沿った噴射量が得られるように噴射弁28を制御するための信号を提供すべく、噴射制御信号を噴射弁28に出力する。
更に、図2には、燃料カットオフ(FCO)制御ロジック76が示されている。この燃料カットオフ制御ロジック76は、例えば、オーバーランの状態、オーバースピードの状態、失火の状態、着火抑制の状態、トルク減少の状態などに応じて、燃料カットオフ信号を発する。燃料カットオフ制御ロジック76は、その信号を、噴射時期(IT)制御ロジック78に与える。それにより、噴射時期制御ロジック78は、燃料カットオフ制御ロジック76からの出力に応じた一つ又は複数の所定の燃料カットオフ制御パターンに従って、それぞれの気筒における噴射をカット(中断)するための制御信号を、噴射弁28に出力する。
以下、気筒圧の推定について、図3及び図4を参照して更に詳細に説明する。
図3は、時間に対する、燃焼室(例えば、エンジンのある気筒における燃焼室)内の圧力(気筒圧)の変化を示す模式的な図である。太い実線80は、時間に対する気筒圧の推移を示している。即ち、ここでは、時間は左から右に進み、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91に対応する正のクランク角(CA)、噴射の開始(SOI)タイミング92に対応するクランク角、上死点(TDC)のタイミング94に対応するゼロクランク角、噴射の終了(EOI)タイミング96に対応するクランク角、そしてこのサイクルの終了タイミング97に対応する負のクランク角、のそれぞれに対する気筒圧の推移を示している。
エンジンの作動において、上死点のタイミング94は、気筒内におけるピストンの動きから決定する。吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91及びサイクルの終了タイミング97は、バルブタイミングに依存している。例えば、バルブタイミング可変装置を有するエンジンにおいて、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91及びサイクルの終了タイミング97は、バルブタイミング可変装置の作動により、ダイナミックに変化する。噴射開始のタイミング92及び噴射終了のタイミング96は、エンジンの運転状態、噴射される燃料量、空気圧及びその他の色々な要因(バルブタイミング可変装置を有するエンジンにおいては、その装置におけるその時々の状態を含む)に依存して、サイクル毎に変化する。
図3は、吸気弁の閉弁(IVC)のタイミング91において、燃焼室の圧力が「P」であり、またその燃焼室の容積が「V」であることを示している。噴射の開始(SOI)タイミング92では、図3において、燃焼室の圧力が「P」で、燃焼室の容積が「V」であることが示されている。上死点(TDC)のタイミング94では、燃焼室の圧力が「P」で、燃焼室の容積が「V」である。図3において示される噴射の終了(EOI)タイミング96では、燃焼室の圧力が「P」で、燃焼室の容積が「V」である。圧力変化の推移80から、燃焼室における圧力は、噴射の開始タイミング92から噴射の終了タイミング96の間において変化していることが分かる。それにより、噴射弁28が開弁している間、燃焼室の圧力に依存して噴射弁28における差圧が変化することも明らかである。
従って、噴射弁28が燃料を燃焼室に供給する時間幅である噴射パルス幅を正確に決定するために、燃焼室における圧力変化を考慮に入れる必要ある。前述の説明から分かるように、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91、噴射開始(SOI)タイミング92、及び噴射終了(EOI)タイミング96を含む種々のタイミングは、その時点その時点におけるエンジン運転パラメータに依存して、エンジンのサイクル毎に変化する。
そのため、本願発明の実施形態では、噴射開始(SOI)タイミング92、上死点(TDC)タイミング94及び噴射終了(EOI)タイミング96における圧力を推定して、燃焼室における平均圧力を決定しようとするものである。以下の説明から明らかとなるように、噴射の終了が上死点前に起こることもあり得る。その場合、燃焼室内の平均圧力の推定は、噴射開始のタイミングに対応するクランク角での圧力の推定値及び噴射終了のタイミングに対応するクラック角での圧力の推定値に基づき、行なわれる。
本願発明の実施形態では、ハッチングを施した領域82、84、86及び88に関する計算に基づき、気筒内の圧力を推定する。なお、このハッチング領域82、84、86及び88は、圧縮噴射期間における気筒内圧力の推定領域を形成する。本願発明の実施形態は、等エントロピーの等式(PVr=一定)を用いた。この単純な等式は、近似値の計算には充分であるが、噴射された燃料による質量の変化、燃料の蒸発(潜熱)のエンタルピー、理想気体の反応(理論空燃比)からの燃料/空気混合気の偏差などの他の要因を考慮することにより、その精度を高めることが可能である。
図3に示される燃焼サイクルの図示内容は、燃焼の事象(燃焼行程)を含んではいない。この例では、燃焼が起こったことによる大幅な圧力上昇の前に噴射工程が終了していることを前提にしている。
図4は、図2に示されている燃料圧補正(FPC)ロジック68、最終噴射量(FIQ)ロジック72、及び最終噴射パルス幅(FIPW)ロジック74などの種々の機能的な構成要素を示している。それぞれの構成要素は、ECU40のCPU141により実行される。
燃料圧補正(FPC)ロジック68は、圧力推定ロジック100、領域推定ロジック102、及び推定平均圧計算ロジック104を有している。
圧力推定ロジック100は、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91におけるマニホールド空気圧センサー24の圧力信号を取り込んで、燃焼室の圧力「P」とするP決定ロジック110を有している。吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91は、クランクセンサー35からのタイミング信号(現在のバルブタイミングに依存した補正を含んでいる信号)及び/又は吸気カムセンサー38からのタイミング信号に基づき、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング演算ロジック132により決定される。
また、圧力推定ロジック100は、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91、噴射開始(SOI)タイミング92、上死点(TDC)タイミング94及び噴射終了(EOI)タイミング96のそれぞれにおける燃焼室の容積を表す容積信号「V」、「V」、「V」、「V」を、気筒の幾何学データから算出する容積算出ロジック118を有している。
吸気弁の閉弁(IVC)タイミング91における、燃焼室の圧力「P」及び容積「V」は、第1の圧力推定ロジック112、第2の圧力推定ロジック114及び第3の圧力推定ロジック116に、入力信号として提供される。第1の圧力推定ロジック112は、更に別の第1の入力信号として、噴射開始(SOI)タイミング92における燃焼室の容積を表す容積信号「V1」を受け取る。容積算出ロジック118は、噴射開始(SOI)タイミング92における燃焼室の容積を表す容積信号「V」を算出するために、最終噴射量ロジック72から提供される推定噴射開始(推定SOI)タイミング92を示すタイミング信号を受け取る。
第2の圧力推定ロジック114は、更に別の第2の入力信号として、容積算出ロジック118から上死点(TDC)タイミング94における燃焼室の容積を表す容積信号「V」を受け取る。第3の圧力推定ロジック116は、更に別の第3の入力信号として、容積算出ロジック118から噴射終了(EOI)タイミング96における圧縮室の容積を表す容積信号「V」を受け取る。容積算出ロジック118は、噴射終了(EOI)タイミング96における燃焼室の容積を表す容積信号「V」を算出するために、噴射終了(EOI)要求ロジック130から出力された噴射終了(EOI)タイミング96を示すタイミング信号を受け取る。
「V」、「V」、「V」及び「V」の種々の値は、容積算出ロジック118において、それぞれのタイミング信号に応じてアクセス(入手)される容積の値を含むマップから取り出すことができる。この実施形態においては、噴射タイミングパルス幅は、基準点として噴射終了(EOI)タイミングを使用している。そして、噴射開始(SOI)タイミングが、適切なパルス幅を可能にするように計算される。噴射終了のタイミングは、点火タイミングを考慮する必要があり、かつ点火に先立ち要求された燃料の蓄積を行なうために燃料噴射が時間内に行なわれることが必要であるので、噴射終了(EOI)タイミングは基準点を形成するものである。
第1の圧力推定ロジック112は、噴射タイミングの推定スタート時点における圧力を表す第1の推定圧力「P」を、P(V/Vrの関数として計算すべく作動する。第2の圧力推定ロジック114は、上死点における第2の圧力推定値「P」を、P(V/Vrの関数として計算すべく作動する。第3の圧力推定ロジック116は、噴射タイミングの終了時点における推定圧力を表す第3の圧力推定値「P」を、P(V/Vrの関数として計算すべく作動する。第1の圧力推定ロジック112、第2の圧力推定ロジック114、及び第3の圧力推定ロジック116の出力信号は、領域推定ロジック102に入力される。
領域推定ロジック102は、噴射終了(EOI)タイミングが上死点(TDC)タイミングよりも前か後かに依存して、2つの異なる領域計算のうちいずれか一方の領域計算を、受領した信号に応じて行なう。領域推定ロジック102には、噴射終了(EOI)タイミング要求ロジック130から、直接、噴射終了(EOI)タイミングが入力されても良い。図4において示されるケース1は、上死点(TDC)タイミングが噴射終了(EOI)タイミングよりも先行する場合、即ち噴射終了が上死点よりも後になる場合である。この場合は、領域計算は下記の式1により行なわれる。
(数1)
面積=(P+P)/2×(SOI)+(P+P)/2×(EOI)
ケース2は、噴射終了(EOI)タイミングが上死点(TDC)タイミングよりも前となる場合であり、その場合は、領域計算ロジックは、下記の式2の計算により領域計算を行なう。
(数2)
面積=(P+P)/2×(SOI−EOI)
図より明らかなように、領域計算は、ケース1及びケース2において示されているように、それぞれハッチングされた領域全体を計算の対象にしている。領域推定ロジック102の出力信号は、下記の式3の計算により平均圧の推定を行なう推定平均圧計算ロジック104に入力される。
(数3)
av=面積/(SOI−EOI)
ここで、面積は、領域推定ロジック102により計算された面積である。
図4において別々のロジック演算要素が示されているが、符号100、102及び104により示されているロジック演算要素は、全部もしくはその一部がマップロジック(マップによる計算)に置き換えることも可能である。その場合、マップロジックに対する入力は、吸気弁の閉弁(IVC)タイミング、推定噴射開始(推定SOI)タイミング、及び噴射終了(EOI)タイミングとなる。マップロジックからの出力は、推定平均圧計算ロジック104の出力に対応するものであり、その出力は最終噴射量ロジック72に送信される。
図4に示されるように、最終噴射量ロジック72は、その入力として、空気量、空燃比及び燃料量のパラメータを受け取っている。これらの入力は、燃料供給管における燃料圧120およびその他の入力(例えば、Ne:エンジン回転数)を含む潜在的な他の値と共に、パルス幅の値を算出するために、計算ロジック126において使用される。ここで出力されるパルス幅の値は、最終噴射パルス幅ロジック74に送られる。そこにおいて補正パルス幅値が計算される。最終噴射パルス幅ロジック74は、CPU141の実行に際して、この補正パルス幅の値に基づき、噴射弁28に対する噴射制御信号を出力する。それにより、噴射弁28が所望の噴射量を供給するように制御される。
燃料供給管における燃料圧120の値は、ロジック回路104により出力される推定圧力値を使用して噴射弁28における圧力差を計算する差圧ロジック124にも送られる。この差圧ロジック124は、パルス幅演算ロジック126が次のパルス幅の値を計算するために、パルス幅演算ロジック126に提供される次のタイミングの圧力値を計算するものである。
つまり、パルス幅演算ロジック126は、パルス幅を計算する際に、初回は、燃料供給管の燃料圧120を用い、2回目以降は、計算されたパルス幅に基づいて計算された推定噴射開始(推定SOI)タイミングにおける圧力推定値などを用いて算出された差圧dPを用いるのである。
噴射開始ロジック128は、噴射終了タイミング要求ロジック130により要求されたタイミングとパルス幅演算ロジック126により出力されたパルス幅の値に対応して、圧力推定ロジック100に提供される推定噴射開始(推定SOI)タイミングを出力する。パルス幅演算ロジック126により出力されたパルス幅の値と、差圧ロジックにより算出された圧力差の値(燃料配管における燃料圧力から(燃焼室の)平均圧力の推定値を差し引いた値に相当)は、最終噴射パルス幅ロジック74に提供され、そこで補正パルス幅が、下記の式4の関数として計算される。
(数4)
補正パルス幅=パルス幅×√(A/(B−C))
ここで、Aは、実験などにより求めた噴射弁における基準圧(一定値)、Bは燃料供給ラインにおける燃料圧、Cは平均シリンダー圧である。
前述のように、複数気筒のエンジンにおけるそれぞれの噴射弁に対してそれぞれの信号が生成されることが理解されるものであるが、図示および説明の便宜上、一つの噴射弁に対するパルス幅信号の生成について説明したものである。
前述のように、本願発明の実施形態では、エンジンのマニホールドの圧力及びクランク角から、シリンダーの燃焼室内の圧力を予想するために、物理法則(PV=一定)を使用している。
図5は、上で説明したエンジンシステム10を搭載した自動車150を模式的に示す図である。
本願発明の実施形態では、エンジンコントロールユニット40のCPU141により実行され、コンピューターが読取り可能な記憶媒体(例えば、ECU40のROM142のようなROM、あるいはRAM)に具体的に記憶されるコンピューターが読取り可能なプログラムコードを使用している。プログラムコードは、燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を推定するために実行可能であり、その圧力は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールドの圧力と吸気弁が閉じるタイミング及び少なくともその他の一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、推定される。
上記の通り実施例を詳細に説明したが、上述の説明を充分に理解するならば、種々の変形や変更が当該技術者にとって容易である。本願における特許請求の範囲は、これら全ての変形や変更並びにそれらの均等物も含むように理解されることを意図しているものである。上述の図面及び記載内容は、特別な例として記載されている本願発明に制限する意図を有するものではなく、むしろ、特許請求の範囲により特定される本願発明の範囲に含まれる全ての変形例、均等物及び代替案を含むものである。
40 ECU
68 燃料圧補正ロジック
72 最終噴射量ロジック
74 最終噴射パルス幅ロジック
100 圧力推定ロジック
102 領域推定ロジック
104 平均圧推定ロジック

Claims (22)

  1. 噴射弁により燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を推定する方法において、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を推定することを特徴とする圧力推定方法。
  2. 燃焼室の圧力を推定するとき、少なくとも
    =P(V/Vは、所定のタイミングにおける燃焼室における圧力推定値、
    は、前記所定のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される圧力推定値を計算することを特徴とする請求項1に記載の圧力推定方法。
  3. 吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも二つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を予測し、予測された燃焼室の圧力から、所定の期間における内燃機関のあるシリンダーにおける燃焼室内の平均圧力Pavを推定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力推定方法。
  4. 燃焼室の圧力を推定するとき、少なくとも
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、第1の所定のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記第1の所定のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、第2の所定のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記第2の所定のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1及び第2の圧力推定値を計算することを特徴とする請求項3に記載の圧力推定方法。
  5. 燃焼室内の平均圧力Pavを、第1及び第2の圧力推定値P及びPから求めることを特徴とする請求項4に記載の圧力推定方法。
  6. 前記第1の圧力推定値Pは、噴射開始タイミングにおける燃焼室の推定圧力、前記燃焼室の容積Vは、前記噴射開始タイミングにおける燃焼室の容積、前記第2の推定圧力値Pは、上死点よりも前の噴射終了タイミングにおける燃焼室の推定圧力、前記燃焼室の容積Vは、上死点よりも前の噴射終了タイミングにおける燃焼室の容積、Pは、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、Vは、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の圧力推定方法。
  7. 吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも三つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を予測し、予測された燃焼室の圧力から、噴射弁が開弁している期間における内燃機関のあるシリンダーにおける燃焼室内の平均圧力Pavを推定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力推定方法。
  8. 燃焼室の圧力を推定するとき、
    =P(V/V
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、噴射開始のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記噴射開始のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記上死点のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室における第3の圧力推定値、
    は、前記上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1、第2及び第3の圧力推定値を計算することを特徴とする請求項7に記載の圧力推定方法。
  9. 噴射開始のタイミング、上死点のタイミング、及び噴射終了のタイミングにわたって、第1、第2及び第3の圧力推定値P、P、Pを平均化することにより、噴射弁が開弁している期間における内燃機関のあるシリンダーにおける燃焼室内の平均圧力Pavを求めることを特徴とする請求項8に記載の圧力推定方法。
  10. 内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するために燃料噴射弁が開弁する時間に相当する噴射パルス幅を補正する方法において、
    推定される燃焼室の圧力に基づき燃料供給圧力に対して圧力補正を加え、この補正された燃料供給圧力に基づいて噴射パルス幅を補正するものであって、
    前記推定される燃焼室の圧力は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、計算されることを特徴とする噴射パルス幅補正方法。
  11. 少なくとも、
    =P(V/V
    は、所定のタイミングにおける燃焼室における圧力推定値、
    は、前記所定のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    により表される圧力推定値が計算されることを特徴とする請求項10に記載の噴射パルス幅補正方法。
  12. 少なくとも、
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、噴射開始のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記噴射開始のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点前における噴射終了のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記上死点前における噴射終了のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1及び第2の圧力推定値を計算し、そして、
    推定した圧力値P及びPを平均化することにより、噴射弁が開弁している期間における燃焼室の平均圧力推定値を計算することを特徴とする請求項10に記載の噴射パルス幅補正方法。
  13. =P(V/V
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、噴射開始のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記噴射開始のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記上死点のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室における第3の圧力推定値、
    は、前記上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1、第2及び第2の圧力推定値を計算し、そして
    噴射開始のタイミング、上死点のタイミング、及び噴射終了のタイミングにわたって、第1、第2及び第3の圧力推定値P、P、Pを平均化することにより、噴射弁が開弁している期間における燃焼室の平均圧力推定値を計算することを特徴とする請求項10に記載の噴射パルス幅補正方法。
  14. 所定の燃焼サイクルにおいて燃料供給圧に加えられる圧力補正は、先行する燃焼サイクルにおける燃焼室圧力推定値の計算に基づく、噴射弁が開弁している期間にわたる燃焼室の圧力に基づいていることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の噴射パルス幅補正方法。
  15. 燃料が噴射される内燃機関のシリンダーの燃焼室における圧力を推定するための圧力推定ロジックを実行するプロセッサーを有し、
    前記圧力推定ロジックは、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を推定することを特徴とするエンジンコントロールユニット。
  16. 前記圧力推定ロジックは、前記プロセッサーの実行により、少なくとも
    =P(V/V
    は、所定のタイミングにおける燃焼室における圧力推定値、
    は、前記所定のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される圧力推定値を計算することを特徴とする請求項15に記載のエンジンコントロールユニット。
  17. 前記圧力推定ロジックは、前記プロセッサーの実行により、少なくとも
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、噴射開始のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記噴射開始のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点前における噴射終了のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記上死点前における噴射終了のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1及び第2の圧力推定値を計算し、そして
    推定した圧力値P及びPを平均化することにより、噴射弁が開弁している期間における燃焼室の平均圧力推定値を計算することを特徴とする請求項15に記載のエンジンコントロールユニット。
  18. 前記圧力推定ロジックは、前記プロセッサーの実行により、少なくとも
    =P(V/V
    =P(V/V
    =P(V/V
    は、噴射開始のタイミングにおける燃焼室における第1の圧力推定値、
    は、前記噴射開始のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点のタイミングにおける燃焼室における第2の圧力推定値、
    は、前記上死点のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室における第3の圧力推定値、
    は、前記上死点後の噴射終了のタイミングにおける燃焼室の容積、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける吸気マニホールド圧、
    は、吸気弁が閉じるタイミングにおける燃焼室の容積、
    で表される第1、第2及び第2の圧力推定値を計算し、そして
    噴射開始のタイミング、上死点のタイミング、及び噴射終了のタイミングにわたって、第1、第2及び第3の圧力推定値P、P、Pを平均化することにより、噴射弁が開弁している期間における燃焼室の平均圧力推定値を計算することを特徴とする請求項15に記載のエンジンコントロールユニット。
  19. 前記圧力推定ロジックに接続された噴射パルス幅補正ロジックを有し、
    前記噴射パルス幅補正ロジックは、前記プロセッサーの実行により、内燃機関に燃料を噴射するために燃料噴射弁が開弁する期間の調整を行なうと共に、前記圧力推定ロジックにより計算された燃焼室圧力推定値に基づき燃料供給圧に対する圧力補正を行なうことによって、噴射パルス幅の調整値を計算することを特徴とする請求項15に記載のエンジンコントロールユニット。
  20. 前記噴射パルス幅補正ロジックは、前記プロセッサーの実行により、先行する燃焼サイクルにおける燃焼室圧力推定値の計算に基づき、所定の燃焼サイクルにおける燃料供給圧に対して圧力補正を加えることにより、噴射パルス幅の調整値を計算することを特徴とする請求項19に記載のエンジンコントロールユニット。
  21. 少なくとも一つの燃焼室を有する内燃機関と、エンジンコントロールユニットとを有するエンジンシステムにおいて、
    前記エンジンコントロールユニットは、プロセッサーの実行により、燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を推定する圧力推定ロジックを有しており、
    前記圧力推定ロジックは、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づき、燃焼室の圧力を推定することを特徴とするエンジンシステム。
  22. コンピューターを作動させることにより、燃料が噴射される内燃機関の燃焼室における圧力を推定することを可能にするところのコンピューターが読取り可能なプログラムコードを記憶しており、
    圧力の推定は、吸気弁が閉じるタイミングにおけるマニホールド圧と、吸気弁が閉じるタイミング及びその他の少なくとも一つのタイミングにおける燃焼室の容積に基づいて行われることを特徴とするコンピューターが読取り可能な記憶媒体。
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