JP2010242220A - ヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に厚さ0.1〜30μmのSnめっき層を形成した後、リフロー処理又は加熱処理を行って、前記Ni,Sn含有合金層を形成するとともに前記Niめっき層を消滅させる。Snめっき及びその後のリフロー処理又は加熱処理の代わりに、溶融Snめっきを行うこともできる。銅合金基材1の表面にNi−Sn合金、Ni−Cu−Sn合金、又はその両者からなるNi,Sn含有合金層3が形成され、その上に最表層として純Sn層4が形成されたヒューズ用めっき付き銅合金材が得られる。
【選択図】 図1
Description
これらのヒューズ材の固有抵抗が大きければ、過電流時に発生するジュール熱が大きく、このジュール熱でヒューズ材が溶断し、電気回路が保護される。このヒューズの溶断にかかる時間や溶断温度は、使用する材料によって異なる。
しかし、適度な強度及び導電率を有する銅合金において、これまで十分な溶断特性が得られていない。そこで、溶融温度を低下させ、かつ溶断にかかる時間を短くするために、ヒューズ用銅合金材料の表面に溶融Snめっきを施したり、ヒューズ部にSnチップをかしめることがなされている(特許文献6参照)。
また、上記めっき付き銅合金材をヒューズとして利用するに際し、上記めっき付き銅合金材のヒューズ部の表面にさらにSnめっきをしてSn層全体の厚さを増すか、ヒューズ部にSnチップをかしめて、ヒューズ溶断温度を低下させ、かつ溶断にかかる時間を短縮することができる。
また、上記ヒューズ用めっき付き銅合金材は、銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に厚さ0.1〜30μmのSnめっき層を形成した後、リフロー処理又は加熱処理するか、Niめっき層の上に溶融Snめっきによるめっき層を形成することにより製造できる。この場合、生成するNi,Sn含有合金層中のNiはNiめっき層から供給され、その結果、Niめっき層が残留する場合と消滅する場合がある。本発明の方法ではNiめっき層を消滅させる。両方法において、Ni,Sn含有合金層は柱状結晶として成長する。
銅合金基材が引張強度400N/mm2以上及び導電率30%IACS以上であれば、ヒューズ部に要求される溶断特性の他に、端子部に要求される強度及び導電率をも満たし、ヒューズ端子用として好適に用いることができる。
図1に、本発明(参考例含む)に係るヒューズ用めっき付き銅合金材の断面の模式図を示す。(a)では、銅合金基材1の表面にNi層2が形成され、その上にNi,Sn含有合金層3が形成され、その上に最表層として純Sn層4が形成され、(b)では、銅合金基材1の表面にNi,Sn含有合金層3が形成され、その上に最表層として純Sn層4が形成されている。Ni,Sn含有合金層3は、Sn層に向かって成長した柱状結晶からなる。(a)は参考例である。
しかし、Ni,Sn含有合金層は、その厚さが30μmを超えると、銅合金基材と純Sn層の間でバリア層として働き、銅合金基材中のCuと純Sn層中のSnの拡散を起こし難くし、銅合金基材の減肉を抑えてしまうため、厚さが30μm以下である必要がある。一方、このNi,Sn含有合金層は、通常めっき処理後に直ちに厚さ0.01μm以上形成される。従って、Ni,Sn含有合金層の厚さは0.01〜30μmとする。
なお、Ni,Sn含有合金層は、Ni−Sn合金、Ni−Cu−Sn合金又はその両者からなり、Ni−Sn合金は主として金属間化合物のNi3Sn4又は/及びNi3Snを含み、Ni−Cu−Sn合金は主として金属間化合物の(Cu,Ni)6Sn5を含む。
Ni層は、Ni,Sn含有合金層が形成されるときに残留したもので、存在することが必須ではないが、過電流発生時に発生するジュール熱により、Niを銅合金基材から拡散するCu及びSn層から拡散するSnと合金化させてNi,Sn含有合金層を成長させ、銅合金基材をすばやく減肉させる役割を有する。Ni層の厚さが10μmを越えると、過電流発生に伴う温度上昇により拡散しきれず、バリア層となってCuとSnの拡散を抑制し、Ni,Sn含有合金層の成長及び銅合金基材の減肉を抑制する。従って、Ni層の厚さは10μm以下とする。
(1)0.1mass%以上のNiを含有する銅合金基材の表面に、厚さ0.1〜30μmのSnめっき層を形成した後、リフロー処理又は加熱処理する。
(2)0.1mass%以上のNiを含有する銅合金基材の表面に、溶融Snめっきによるめっき層を形成する。
(3)銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に厚さ0.1〜30μmのSnめっき層を形成した後、リフロー処理又は加熱処理する。
(4)銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に溶融Snめっきによるめっき層を形成する。
なお、上記(3)、(4)では、Ni層が残留する場合と消滅する場合(本発明は後者)の両方がある。
Ni,Sn含有合金層を構成する柱状結晶は、Niの影響により、図1に示すように、平均長さ(T)と平均断面径(R)の比(T/R)が1.0以上となる。
Niめっきを行わない場合において、Ni含有量が0.1mass%以上の銅合金基材を用いることが必須であるのは、0.1mass%未満であると、Snめっき層のリフロー処理又は加熱処理を施した後、あるいは溶融Snめっきを行った後でも、めっき付き銅合金材にNi含有量が0.02%以上で厚さが0.01μm以上のNi,Sn含有合金層を形成できないからである。
本発明の製造方法において、一般的に、Niめっき層の厚みが大きく、Niめっきがない場合は銅合金基材のNi含有量が高く、リフロー処理又は加熱処理の温度が高く処理時間が長く、あるいは溶融SnめっきのSn浴温度が高く処理時間が長いとき、Ni,Sn含有合金層のNi含有量が高く、又は/及びその厚みが大きくなる。また、めっき付き銅合金材のNi層及びSn層は、当初のNiめっき層又はSnめっき層が厚いほど厚く残留し、リフロー処理等による製造時のNi,Sn含有合金層の成長が大きいほど薄くなる。
また、ヒューズ端子の場合、引張強度及び導電率はそれぞれ400N/mm2以上、30%IACS以上必要であり、強度が上記未満であると端子としての十分な強度が得られず、導電率が上記未満であると電気的信頼性に劣る。
Niめっき及びSnめっきは表3の条件で行った。リフロー処理は240℃〜600℃×5〜30secで行い、加熱処理は80〜200℃、溶融Snめっきは280℃で行った。
銅合金板の種類は、Cu−3.2Ni−0.7Si−0.3Zn(CDA.No.C64710)、Cu−1.8Ni−0.4Si−0.1Sn−0.01Mg−1.1Zn(CDA.No.C64760)Cu−9Ni−2Sn(CDA.No.C72500)、Cu−0.1Fe−0.03P(CDA.No.C19210)及びCu−0.1Fe−0.03P−0.2Sn−0.2Mg−0.4Zn(CDA.No.C19800)であり(成分の前の数字はいずれもmass%を意味する)、表1,2のNo.1、No.5はC64710、No.6、No.17はC64760、No.23はC19210、No.24はC72500、その他はC19800を使用した。
[導電率]導電率は、JISH0505に基づいて測定した。
[Snめっき層の厚さ]Snめっき層の厚さは、蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社;型式SFT3200)を用いて測定した。
[Niめっき層の厚さ]Niめっき層の厚さは蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社;型式SFT3200)を用いて測定した。リフロー処理、加熱処理又は溶融Snめっき後のNi層の厚さも同じ方法で測定した。
[純Sn層の厚さ]純Sn層の厚さは、次の手順で測定した。まず、蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社;型式SFT3200)を用いてSn層全体(純Sn層とNi,Sn含有合金層)の厚さを測定する。その後、p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、純Sn層を剥離後、蛍光X線膜厚計を用いて、Ni,Sn含有合金層中のSn量を測定する。この測定値から求めた両者の層厚さの差から純Sn層の厚さを算出した。
[Ni,Sn含有合金層の合金種類の同定]合金の種類はX線回折実験により同定した。
[合金層中のNi量分析]合金層中のNi量の分析は、まず純Sn層をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、純Sn層を剥離させる。その後、さらにメルテックス社製メルストリップNH−844を用いて、合金層を剥離させ、得られた剥離液をHNO3条件下に保持し、原子吸光法にて測定した。
[溶断特性評価]各試料に対し、5V、30Aの定電圧条件下で溶断試験を行った。評価は切断に要する時間を測定し、溶断時間10sec以下を合格とした。
一方、表2に示すNo.13は、Snめっき層厚さが0.05μmと薄いため、リフロー処理後の純Sn層の厚さも薄く、溶断特性が劣っている。No.14,15は、Niめっき層厚さが25μmと厚いため、加熱処理又はリフロー処理後のNi層厚さが厚く、溶断時の素材減肉が抑制され、溶断特性が劣っている。No.16,17,18はめっきを施していないため、溶断時の素材減肉が抑制され溶断特性に劣る。このうちNo.18は、銅合金基材上に追加処理として溶融Snめっきを施しているため、No.16,17に比べると溶断特性は向上するが十分でない。No.19〜22はSnめっきの下地層にNiめっきを施していないため、形成される合金層中にNiを含まず、十分な溶断特性が得られていない。追加処理として溶融Snめっきを施し又はSnチップをかしめたNo.20,21についても不十分である。No.23は、引張強度が400N/mm2以下であり、No.24は導電率が30%IACS以下であるため、いずれも溶断特性は優れるが、ヒューズ端子材としては十分でない。
2 Ni層
3 Ni,Sn含有合金層
4 純Sn層
Claims (5)
- 銅合金基材の表面にNi−Sn合金、Ni−Cu−Sn合金、又はその両者からなるNi,Sn含有合金層が形成され、その上に最表層として純Sn層が形成され、前記Ni,Sn含有合金層はNi含有量が0.02〜75at%で厚さが0.01〜30μmであり、前記純Sn層は厚さが0.1〜30μmであるヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法であり、銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に厚さ0.1〜30μmのSnめっき層を形成した後、リフロー処理又は加熱処理を行って、前記Ni,Sn含有合金層を形成するとともに前記Niめっき層を消滅させることを特徴とするヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法。
- 銅合金基材の表面にNi−Sn合金、Ni−Cu−Sn合金、又はその両者からなるNi,Sn含有合金層が形成され、その上に最表層として純Sn層が形成され、前記Ni,Sn含有合金層はNi含有量が0.02〜75at%で厚さが0.01〜30μmであり、前記純Sn層は厚さが0.1〜30μmであるヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法であり、銅合金基材の表面に、厚さ0.01〜20μmのNiめっき層を形成し、その上に溶融Snめっきを行って、前記Ni,Sn含有合金層を形成するとともに前記Niめっき層を消滅させることを特徴とするヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法。
- Ni,Sn含有合金層が柱状結晶からなることを特徴とする請求項1又は2に記載されたヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法。
- 銅合金基材の導電率が30%IACS以上、かつ引張強度が400N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたヒューズ用めっき付き銅合金材の製造方法。
- 銅合金基材が板又は条であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたヒューズ用めっき付き銅合金材。
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