JP2010241916A - オレフィン類重合用触媒、及びこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用触媒、及びこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 Download PDF

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邦彦 田篠
Takashi Fujita
孝 藤田
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Abstract

【課題】高立体規則性重合体の収率を維持しつつ、対水素レスポンスが高いオレフィン類重合用触媒及び重合方法を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(D)を必須成分とするオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類を重合する。(A)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有するオレフィン類重合用固体触媒、(B)下記一般式(1);R AlQ3−p(1)で表される有機アルミニウム化合物、(C)下記の一般式(2);SiR(OR(2)または、下記の一般式(3);SiR(OR(3)で表わされる有機ケイ素化合物、(D)下記の一般式(4);SiR (OR)4−n(4)で表わされる有機ケイ素化合物。
【選択図】 図1

Description

本発明は、立体規則性が高く、しかも流動性が高いオレフィン重合体を高収率で得ることができるオレフィン類の重合用触媒、および該触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なう方法に関するものである。
従来、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒に有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物を接触させ、オレフィン類を重合もしくは共重合させる重合方法が数多く提案されている。
そして現在、上記触媒を用いて重合して得られるポリマーは、自動車或いは家電製品などの成形品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成形機により成形されるが、その中でも大型の射出成形品を製造するには、ポリマーの立体規則性が高く、溶融ポリマーの流動性(一般的にメルトフローレイト(以下MFRと略記)で表される)が高いことが要求されることが多い。従来、自動車材料向けのオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPO」という)であるブロック共重合体は、共重合反応器内で、TPOの生産に必要なだけの共重合体を生産し、製造後に新たに別途合成した共重合体を添加して製造していた。最近、TPOの製造コストの低減等のために、直接重合反応器内で単独重合および共重合を連続して行なう直重によるリアクターメイド法が実施されている。この方法では、射出成形をしやすくするためにポリマーの流動性を高くする必要がある。そして、TPO製造工程における単独重合終了段階で高いMFR値を求められる場合が多い。そのためには、ポリマーの高い立体規則性を維持しながらMFRを上げる必要がある。
ポリマー溶融流動性の尺度であるMFRは、ポリマーの分子量に大きく依存し、当業界においては水素が分子量調節剤としてオレフィン重合時に使用される。高MFRのポリマーを製造するには、通常水素を多く添加し、低分子量のポリマーを製造する。しかし、バルク重合装置においては特に、リアクターの耐圧にはその安全性から限界があり、添加し得る水素量にも制限がある。また、気相重合おいてもより多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧を下げざるを得ず、この場合、ポリマーの生産性が低下することになる。また水素を多量に使用することはコスト面での問題も生ずるため、より少ない水素量で高MFRのポリマーが生成できるような、いわゆる対水素レスポンスが高く、且つ高立体規則性ポリマーを高収率で得られる触媒の開発が望まれていた。この課題を解決するために、これまでに固体触媒成分中の電子供与体、及び重合時に添加する電子供与体を中心とし様々な改良が加えられてきたが、得られるポリマーの立体規則性が低下するなどの問題があり、十分に満足できるレベルではなかった。
そこで、特許文献1(特開平3−7703号公報)では、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および少なくとも2種以上の有機ケイ素化合物とから形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合させることが提案されている。
また、特許文献2(特開2005−320362号公報)では、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物として、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランから形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合させることが提案されている。
最近では、特許文献3(WO2004−16662号公報)に代表されるSi(OR)(NRR)で表わされる化合物をオレフィン類の重合の触媒成分として用いる技術が開示されている。
上記の触媒は、上記課題に対し、ある程度改善効果はみられたものの、依然として改善が望まれている。
特開平3−7703号公報 特開2005−320362号公報 WO2004−16662号公報
すなわち、本発明の目的は、高立体規則性重合体の収率を維持しつつ、対水素レスポンスが高いオレフィン類重合用触媒及び重合方法を提供することにある。
かかる事情において、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム化合物、チタンハロゲン化合物、電子供与性化合物を原料に用いた固体触媒、有機アルミニウム化合物、並びに特定の構造を有する2種の有機ケイ素化合物から形成される触媒成分を用いオレフィン類を重合することにより、高立体規則性を有し、且つ高流動性を有するオレフィン重合体を高収率で得られることを見出した。すなわち、下式(2)または(3)のケイ素化合物と(4)のケイ素化合物の混合モル比から予想される触媒性能を上回る触媒性能を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(D)を必須成分とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
(A)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有するオレフィン類重合用固体触媒、
(B)下記一般式(1);
AlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、同一または異なっていても良く、Qは水素原子、ハロゲン原子、あるいはアルコキシ基を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
(C)下記の一般式(2);
SiR(OR (2)
(式中、Rはケイ素に直接結合しているα−炭素が2級または3級である脂肪族炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、Rは炭素数1から3のアルキル基を示し同一または異なっていても良い。)
または、下記の一般式(3);
SiR(OR (3)
(式中、Rはケイ素に直接結合しているα−炭素が2級または3級である脂肪族炭化水素基を示し、Rは炭素数1から3のアルキル基を示し同一または異なっていても良い。)で表わされる有機ケイ素化合物、
(D)下記の一般式(4);
SiR (OR)4−n (4)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なっていても良く、nは0または1である。)で表わされる有機ケイ素化合物。
また、本発明は、上記のオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させることを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高立体規則性、高流動性を有するオレフィン重合体を高収率で得ることができる。
オレフィン触媒の構成 本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち固体触媒(A)は、マグネシウム化合物(a)、チタンハロゲン化合物(b)電子供与性化合物(c)を接触し得られる。固体生成物形成工程において用いられるマグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある。」としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
これらのマグネシウム化合物の中でもジハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、無水塩化マグネシウム、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。
また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
更に、固体生成物形成工程で好適に用いられるジハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状の無水塩化マグネシウム、あるいはジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
上記の球状無水塩化マグネシウム、及び球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
例えば上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
本発明における成分(A)の調製に用いられるチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、一般式Ti(OR)n4-n(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0≦n≦4の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物、あるいは、TiClXで表されル三塩化チタン化合物であり、1種あるいは2種以上である。
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(c)(以下、単に成分(c)またはIDということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合およびSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、イソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、ビス(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジエステル、フタル酸ジエステル誘導体等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合、(アルキルアミノ)アルキルシラン、(アルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン等のSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物を挙げることができる。
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステル及びフタル酸ジエステル誘導体が好適である。これらのフタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらのフタル酸ジエステルは1種あるいは2種以上が使用される。
またフタル酸ジエステル誘導体としては、上記のフタル酸ジエステルの2つのアルコキシカルボニル基が結合するベンゼン環の1または2個の水素原子が、炭素数1〜5のアルキル基、又は、塩素原子、臭素原子及びフッ素原子などのハロゲン原子に置換されたものが挙げられる。該フタル酸ジエステル誘導体を電子供与性化合物として用いて調製した固体触媒成分により、より一層対水素活性あるいは水素レスポンスを向上させることができ、重合時に添加する水素が同量あるいは少量でもポリマーのメルトフローレイトを向上することができる。具体的には、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジ−iso−ブチル、4−クロロフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4−クロロフタル酸ジ−iso−オクチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−ブチル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4−ブロモフタル酸ジ−iso−オクチル、4,5−ジクロロフタル酸ジエチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−iso−ヘキシル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−iso−オクチルが挙げられ、このうち、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル及び4−ブロモフタル酸ジ−iso−ブチルが好ましい。
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
本発明においては、上記成分(a)、(b)、及び(c)を、炭化水素溶媒(d)(以下、単に成分(d)ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、上記のハロゲン化チタン化合物を溶解しかつジアルコキシマグネシウムは溶解しないものであり、このとき使用する炭化水素溶媒となる炭化水素化合物としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどのアルカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのシクロアルカンなどの飽和炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの中でもトルエン、キシレンなどの室温で液体の芳香族炭化水素化合物およびヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの室温で液体の飽和炭化水素化合物が好ましく用いられる。これらの炭化水素化合物は単独で用いても、2種以上混合して使用しても良い。
本発明における固体生成物の特に好ましい調製方法としては、成分(a)と沸点50〜150℃の炭化水素化合物(d)とから懸濁液を形成し、成分(b)を該懸濁液に接触させ、成分(c)を得られた懸濁液に接触させ、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
本発明の固体触媒成分(A)の調製における固体生成物形成工程においては、上記成分の他、更に、ポリシロキサン(以下単に「成分(e)」ということがある。)を使用することが好ましく、ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
本発明では上記成分(a)、(b)及び(c)、また必要に応じて成分(d)または成分(e)を接触させ固体生成物を形成させるが、以下に、本発明の固体生成物の調製方法について述べる。具体的には、マグネシウム化合物(a)を、アルコール、チタン化合物(b)または炭化水素化合物(d)に懸濁または溶解させ、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)及び/またはチタン化合物(b)と接触させ、固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体生成物を得ることもできる。
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
本発明の好ましい固体生成物の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)を接触させ、反応させることにより固体生成物を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、反応させることにより固体生成物を調製する方法を挙げることができる。またこのように調製した固体生成物に再度または複数回成分(b)、または成分(b)及び成分(c)を接触させることにより、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。
本発明における固体生成物の好ましい調製方法としては、以下に示す方法も挙げることができる。上記成分(a)を成分(d)存在下、100℃以上でアルコールに溶解させ、無水フタル酸を添加する。この溶液を0℃以下の成分(b)中にゆっくりと滴下し、その後、100℃以上の温度までゆっくり昇温する。その後、成分(c)、及び必要に応じ成分(b)と接触させた後、炭化水素化合物(d)により得られた固形物を洗浄する。
本発明における固体生成物の好ましい調製方法としては、以下に示す方法も挙げることができる。金属マグネシウムにアルキルハライドのエーテル溶液を加え、グリニア溶液を合成する。成分(d)、成分(b)、及びSi(OR)中にこのグリニア溶液をゆっくり滴下し、成分(d)により得られた固形物を洗浄する。これに成分(d)、及び成分(c)を添加し、成分(d)により再度、固形物を洗浄する。次に成分(d)、成分(c)、成分(b)を加え反応させた後、成分(d)により洗浄する。この操作を2回以上繰り返し、固形物を得る。
本発明における固体生成物の好ましい調製方法としては、以下に示す方法を挙げることもできる。無水塩化マグネシウムに成分(d)、及び成分(b)としてテトラアルコキシチタンを加え、塩化マグネシウムを溶解させる。この溶液に成分(e)としてハイドロジェンポリシロキサンを加え、得られた固形物を成分(d)により洗浄する。次に成分(d)、四塩化珪素、ないし四塩化チタン、必要に応じ成分(c)を接触させた後、成分(d)を用い洗浄する。この操作を2回以上繰り返し、固形物を得る。
本発明における固体生成物の好ましい調製方法としては、以下に示す方法を挙げることもできる。無水塩化マグネシウムにアルコール、灯油を加え100℃以上に加熱し、融解させる。この溶液を冷却した灯油中に噴霧し、固形物を得る。これを成分(d)で洗浄して乾燥させた後、成分(b)、成分(c)に接触させ、得られた固形物を濾過する。再度、成分(b)、必要に応じ成分(c)と接触させた後、成分(d)により洗浄を行い、固形物を得る。
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モル当たり、チタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、必要に応じてポリシロキサン(e)を使用するときは、0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
また本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが1.0〜5.0重量%、好ましくは1.0〜4.0重量%、より好ましくは1.5〜3.5重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。上記の固体触媒成分の含有率だけでなく、チタン化合物と電子供与性化合物の割合が高立体特異性を示す触媒を合成するためには重要であり、チタン化合物と電子供与性化合物のモル比は0.5〜2.5、好ましくは、0.7〜2.0である。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)としては、下記一般式(1)で表される化合物であれば、特に制限されない。
AlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、同一または異なっていても良く、Qは水素原子、ハロゲン原子、あるいはアルコキシ基を示し、pは0<p≦3の実数である。)
具体的には、R1としては、エチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子、エトキシ基、n−ブトキシ基などのアルキコシ基が好ましく、pは、2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムブロマイドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、下記一般式(2)または(3)で表わされる有機ケイ素化合物が用いられる。
SiR(OR (2)
または
SiR(OR (3)
(式中、RおよびRはケイ素に直接結合しているα−炭素が2級または3級である脂肪族炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、RおよびRは炭素数1から3のアルキル基を示し同一または異なっていても良い。)。また、好ましくは、RおよびRがtert−ブチル基、テキシル基またはイソプロピル基である。
即ち、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジn−プロポキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジn−プロポキシラン、tert−ブチルn−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルn−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチルn−プロピルジn−プロポキシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジエトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジn−プロポキシシラン、tert−ブチルn−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルn−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルn−ブチルジn−プロポキシシラン、tert−ブチルイソブチルジメトキシシラン、tert−ブチルイソブチルジエトキシシラン、tert−ブチルイソブチルジn−プロポキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、ジtert−ブチルジメトキシシラン、ジtert−ブチルジエトキシシラン、テキシルメチルジメトキシシラン、テキシルメチルジエトキシシラン、テキシルメチルジn−プロポキシシラン、テキシルエチルジメトキシシラン、テキシルエチルジエトキシシラン、テキシルエチルジn−プロポキシシラン、テキシルn−プロピルジメトキシシラン、テキシルn−プロピルジエトキシシラン、テキシルn−プロピルジn−プロポキシシラン、テキシルイソプロピルジメトキシシラン、テキシルイソプロピルジエトキシシラン、テキシルイソプロピルジn−プロポキシシラン、テキシルn−ブチルジメトキシシラン、テキシルn−ブチルジエトキシシラン、テキシルn−ブチルジn−プロポキシシラン、テキシルイソブチルジメトキシシラン、テキシルイソブチルジエトキシシラン、テキシルイソブチルジn−プロポキシシラン、テキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テキシルシクロペンチルジエトキシシラン、テキシルシクロペンチルジn−プロポキシシラン、テキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、テキシルシクロヘキシルジエトキシシラン、テキシルシクロヘキシルジn−プロポキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、テキシルトリエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジn−プロポキシシランなどであり、2種以上混合して使用することもできる(テキシルは1,1,2−トリメチルプロピルである)。好ましくは、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルn−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、テキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テキシルシクロヘキシルジメトキシシランまたはジイソプロピルジメトキシシランが用いられる。触媒活性、立体規則性が良好となり、得られた共重合体の特性(特に流動性)も良好とすることができる。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(D)(以下単に「成分(D)」ということがある。)としては、下記一般式(4)で表される化合物であり、テトラアルコキシシラン、またはアルキルトリアルコキシシランである。
SiR (OR)4−n (4)
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なっていても良く、nは0または1である。)。
具体的な化合物としては、テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどであり、アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリn−プロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリn−プロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリn−プロポキシシラン、n−プロピルトリn−ブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリn−プロポキシシラン、イソプロピルトリn−ブトキシシランなどであり、これらを2種以上混合して使用することもできる。好ましくは、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシランまたはn−プロピルトリエトキシシランが用いられる。
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。プロピレンと他のオレフィン類との共重合としては、プロピレンと0.1〜7.0重量%の少量のエチレンをモノマーとして1段階で重合するランダム共重合と、第1段階(第1重合槽)でプロピレンのみの重合を行い第2段階(第1重合槽)で1〜50重量%のプロピレンエチレン共重合体が合成する共重合、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合が代表的である。このようなランダム共重合やブロック共重合においても、上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)からなる本発明の触媒は有効であり、触媒活性、立体規則性及び対水素活性が良好であるばかりでなく、共重合特性や得られた共重合体の特性(特に流動性)も良好である。
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(C)及び成分(D)は、各々、成分(B)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。また成分(C)及び成分(D)の使用量比であるが、成分(C):成分(D)のモル比率が1:99〜70:30、好ましくは1:99〜50:50、特に好ましくは5:95〜50:50、最も好ましくは20:80〜50:50の範囲で用いられる。この範囲とすると、触媒活性、立体規則性が良好であり、得られた共重合体の特性(特に流動性)も良好とすることができる。
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで、有機ケイ素化合物化合物(C)及び(D)を接触させる。有機化合物(C)と(D)は予め混合して重合系内に装入してもよく、また別々に装入してもよい。その後、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。あるいは重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、一方で成分(A)と、成分(C)及び成分(D)とを予め接触させ、接触させた成分(A)と、成分成分(C)及び成分(D)とを重合系内に装入接触させ触媒を形成することも好ましい態様である。このように予め成分(A)と、成分(C)及び成分(D)とを接触させて処理することによって、触媒の対水素活性及び生成ポリマーの結晶性をより向上させることが可能となる。
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は0〜200℃、好ましくは50〜150℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
更に、本発明において成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)から形成される触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。具体的には、オレフィン類の存在下に成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)及び成分(D)を接触させ、成分(A)1gあたり0.1〜100gのポリオレフィンを予備的に重合させ、さらに成分(B)及び/又は成分(C)及び成分(D)を接触させ触媒を形成する。
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、得られるオレフィン重合体の立体規則性を高度に維持したまま、分子量分布の広いオレフィン重合体を高収率で得ることができるという作用が確認された。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
[実施例1]
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン700mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量3000mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン600ml及びチタンテトラクロライド300mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を5℃で1時間反応させた。その後、フタル酸ジ−n−ブチル54mlを添加し100℃まで昇温後、環状ポリシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン、東芝シリコン社製TSF−405)30mlを添加し、105℃まで昇温し、撹拌しながら2時間反応処理を行った。反応終了後、生成物を100℃のトルエン1200mlで4回洗浄し、新たにトルエン1200ml及びチタンテトラクロライド300mlを加えて、撹拌しながら100℃で2時間の反応処理を行った。その後、新たにトルエン550ml、チタンテトラクロライド300mlを加え、80℃まで昇温し、フタル酸ジエチル8.1mlを添加した。続いて100℃まで昇温し、攪拌しながら2h反応処理を行った後、生成物を80℃のトルエン1000mlで5回洗浄した。更に40.0℃のヘプタン1000mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A1)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、1.3重量%であった。
<重合用触媒の形成及び重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0066mmol、テトラエトキシシラン0.1254mmol及び前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.2リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。得られた重合体について、重合活性、p−キシレン可溶分(XS)、メルトインデックス(MI)を測定した。その結果を表1に併載する。
固体触媒成分1g当たりの重合活性は下式により算出した。
重合活性=生成重合体(F)(g)/固体触媒成分(g)
重合体のキシレン溶解成分(XS:重量%)は以下の方法で測定した。
キシレン溶解成分の測定方法;4.0gの重合体を200mlのパラキシレン中に装入し、トルエンの沸点下(138℃)で2時間かけて重合体を溶解した。その後23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。その溶解成分の溶媒を留去、加熱乾燥し、得られた重合体をキシレン可溶成分とし、生成重合体(F)に対する相対値(XS、重量%)で示した。
重合体のメルトインデックスの値(MI)は、ASTM
D 1238 、JIS K 7210に準じて測定した。
[実施例2]
重合時における水素ガスを5.2リットルへ変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例3]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmol、テトラエトキシシラン0.1056mmol、重合時における水素ガスを2.7リットルへ変更した以外は、実施例1と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例4]
重合時における水素ガスを6.2リットルへ変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例5]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0396mmol、テトラエトキシシラン0.0924mmol、重合時における水素ガスを3.0リットルへ変更した以外は、実施例1と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例6]
重合時における水素ガスを7.4リットルへ変更した以外は、実施例5と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例7]
〈固体触媒成分の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン750mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量3000mlの丸底フラスコに予め装填されたトルエン300ml及びチタンテトラクロライド450mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を5℃で1時間反応させた。その後、フタル酸−n−ブチル54mlを添加して、90℃まで昇温した後、攪拌しながら3時間反応処理した。反応終了後、生成物を90℃のトルエン1300mlで4回洗浄し、新たにトルエン600ml及びチタンテトラクロライド450mlを加えて、攪拌しながら110℃で2時間の反応処理を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタン900mlで8回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体成分中のチタン含有量を測定したところ、2.8重量%であった。
<重合用触媒の形成及び重合>
前記固体触媒成分を装入し、重合時における水素ガスを1.1リットルへ変更した以外は、実施例1と同様の重合操作を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例8]
重合時における水素ガスを3.5リットルへ変更した以外は、実施例7と同様に実験を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例9]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0132mmol、テトラエトキシシラン0.1188mmol、重合時における水素ガスを1.2リットルへ変更した以外は、実施例7と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示した。
[実施例10]
重合時における水素ガスを3.9リットルへ変更した以外は、実施例9と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例11]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmol、テトラエトキシシラン0.1056mmol、重合時における水素ガスを1.5リットルへ変更した以外は、実施例7と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例12]
重合時における水素ガスを4.8リットルへ変更した以外は、実施例11と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例13]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0396mmol、テトラエトキシシラン0.0924mmol、重合時における水素ガスを1.8リットルに変更した以外は、実施例7と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例14]
重合時における水素ガスを5.7リットルへ変更した以外は、実施例13と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例15]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0660mmol、テトラエトキシシラン0.0660mmol、重合時における水素ガスを2.7リットルに変更した以外は、実施例7と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例16]
重合時における水素ガスを7.8リットルへ変更した以外は、実施例15と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例17]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmolの代わりに、tert−ブチルメチルジメトキシシラン0.0264mmol、重合時における水素ガスを1.5リットルへ変更した以外は実施例11と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
[実施例18]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmolの代わりに、tert−ブチルトリエトキシシラン0.0264mmol、重合時における水素ガスを1.7リットルへ変更した以外は実施例11と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
[実施例19]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmolの代わりに、テキシルシクロペンチルジメトキシシラン0.0264mmol、重合時における水素ガスを1.7リットルへ変更した以外は実施例11と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
[実施例20]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0264mmolの代わりに、ジイソプロピルジメトキシシラン0.0264mmol、重合時における水素ガスを2.0リットルへ変更した以外は実施例11と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
[実施例21]
テトラエトキシシラン0.1056mmolの代わりに、メチルトリエトキシシラン0.1056mmol、重合時における水素ガスを1.6リットルへ変更した以外は実施例11と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行なった。得られた結果を表2に示した。
[比較例1]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0066mmol、テトラエトキシシラン0.1254mmolの代わりに、tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.132mmol、重合時における水素ガスを4.0リットルへ変更した以外は実施例7と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表3に示した。
[比較例2]
重合時における水素ガスを11.0リットルへ変更した以外は、比較例1と同様に実験を行った。得られた結果を表3に示した。
[比較例3]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0066mmol、テトラエトキシシラン0.1254mmolの代わりに、テトラエトキシシラン0.132mmol、重合時における水素ガスを0.8リットルへ変更した以外は、実施例7と同様に固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表3に示した。
[比較例4]
重合時における水素ガスを3.0リットルへ変更した以外は、比較例3と同様に実験を行った。得られた結果を表3に示した。
[比較例5]
tert−ブチルエチルジメトキシシラン0.0066mmol、テトラエトキシシラン0.1254mmolの代わりに、シクロヘキシルメチルジメトキシラン0.132mmol、重合時における水素ガスを4.8リットルへ変更した実施例7と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表3に示した。
[比較例6]
重合時における水素ガスを12.0リットルへ変更した以外は、比較例5と同様に実験を行った。得られた結果を表3に示した。
Figure 2010241916
Figure 2010241916
Figure 2010241916
以上の結果から、重合時に本発明の触媒を用いると、立体規則性を高度に維持したまま、流動性の高いオレフィン重合体を高収率で得ることができることがわかる。また、より少ない水素量で、ほぼ同じMFR値のポリマーを得ることが出来る。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)〜(D)を必須成分とするオレフィン類重合用触媒、
    (A)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有するオレフィン類重合用固体触媒、
    (B)下記一般式(1);
    AlQ3−p (1)
    (式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、同一または異なっていても良く、Qは水素原子、ハロゲン原子、あるいはアルコキシ基を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
    (C)下記の一般式(2);
    SiR(OR (2)
    (式中、Rはケイ素に直接結合しているα−炭素が2級または3級である脂肪族炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、Rは炭素数1から3のアルキル基を示し同一または異なっていても良い。)
    または、下記の一般式(3);
    SiR(OR (3)
    (式中、Rはケイ素に直接結合しているα−炭素が2級または3級である脂肪族炭化水素基を示し、Rは炭素数1から3のアルキル基を示し同一または異なっていても良い。)で表わされる有機ケイ素化合物、
    (D)下記の一般式(4);
    SiR (OR)4−n (4)
    (式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、RおよびRは同一または異なっていても良く、nは0または1である。)で表わされる有機ケイ素化合物。
  2. 前記成分(C)のRおよびRがtert−ブチル基、テキシル基またはイソプロピル基で表わされる有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  3. 前記成分(A)が、ジアルコキシマグネシウム(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)を、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選択される1種単独または2種以上の混合物(d)中で接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  4. 前記成分(C)がtert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル(n−プロピル)ジメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、テキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシランより選ばれ、前記成分(D)がテトラエトキシシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシランまたはn−プロピルトリエトキシシランより選ばれることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
  5. 請求項1〜4に記載のオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させることを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022004205A1 (ja) * 2020-06-29 2022-01-06 東邦チタニウム株式会社 オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法

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