JP2010241911A - 水性白色プライマー塗料組成物および外装用プラスチック成型品への塗膜形成方法 - Google Patents

水性白色プライマー塗料組成物および外装用プラスチック成型品への塗膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な耐水性と耐黄変性を発揮する水性白色プライマー塗料組成物と、これを用いる外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の水性白色プライマー塗料組成物は、所定のエポキシ基含有アクリル樹脂を所定の割合で含有するものであり、本発明の塗膜形成方法は、外装用プラスチック成形品表面にプライマー塗料を塗装した上に、水性ベース塗料、クリヤー塗料を順次塗装し、これを同時焼付けする方法において、プライマー塗料として前記水性白色プライマー塗料組成物を用い、水性ベース塗料として白黒隠ぺい膜厚が20μm以上であるものを用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性白色プライマー塗料組成物および外装用プラスチック成型品への塗膜形成方法に関する。詳しくは、外装用プラスチック成型品の表面塗装に用いられる水性白色プライマー塗料組成物と、外装用プラスチック成型品の表面に水性白色プライマー塗料、水性ベース塗料、クリヤー塗料を順次塗装して一度に焼き付けることにより化粧塗膜を形成する方法に関する。
プラスチック成型品への塗膜形成方法では、ベース塗料からなるベース塗膜の上にクリヤー塗料からなるクリヤー塗膜を形成することが一般的であるが、近年、環境への影響を考慮して、前記ベース塗料としては、溶剤型ではなく水性のものを用いることが検討されている。また、前記ベース塗料とプラスチック成型品との密着性向上のため、プラスチック成型品の表面に予めプライマー塗膜を形成しておいてから、上記の2層塗膜を形成するようにするのが一般的であるが、このプライマー塗料もベース塗料と同様、水性のものが好ましく採用されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
また、プライマー塗膜のL値が低いと、プライマー塗膜の色がベース塗膜の色を変質させてしまい、所望の鮮やかな外観を得ることができない。そのため、従来、種々の白色プライマー塗料組成物が提案されてきた(例えば、特許文献5〜7参照。)。
特開平10−298490号公報 特開2001−139875号公報 特開2004−2801号公報 特開2004−307684号公報 特開2004−262988号公報 特開2006−88025号公報 特開2007−238719号公報
上に述べたように、従来、水性プライマー塗料組成物や、白色プライマー塗料組成物に関する技術は知られていたが、水性かつ白色のプライマー塗料組成物についての検討事例は少なく、特に、優れた耐水性と高い白色度を両立させることについては積極的な検討がなされてこなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、外装用プラスチック成型品の表面塗装に適用できるプライマー塗料組成物であって、環境に配慮した水性の塗料組成物でありながら、作業性が良好であり、かつ、十分な耐水性と耐黄変性を発揮する水性白色プライマー塗料組成物を提供することにあり、さらには、このような水性白色プライマー塗料組成物を用いて、その上に隠ぺい率の低い水性ベース塗料とクリヤー塗料を順次塗装し、前記水性ベース塗料に由来する色鮮やかな外観を失わせることなく発揮させる、外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。
その過程において、耐水性の高い水性白色プライマー塗料組成物を得るために、例えば、前記特許文献2、3でも例示されているノボラック型エポキシ樹脂を配合してみたところ、耐水性に優れた水性白色プライマー塗膜を形成させることができるものの、耐黄変性が低く、白色度が経時的に低下してしまうことが分かった。
そこで、さらなる検討を重ねた結果、水性白色プライマー塗料組成物の樹脂成分として、モノマー成分の35〜60重量%がグリシジル(メタ)アクリレートであるエポキシ基含有アクリル樹脂を特定の割合で含有させるようにすれば、耐水性と耐黄変性のいずれにも優れたものとなり、上記課題が解決されることを見出した。
さらに、水性白色プライマー塗料組成物において、顔料分散樹脂として、アルキッド樹脂と水溶性アクリル樹脂を特定の比率で含有させるとともに、会合型増粘剤をも含有させるようにすれば、上に述べた優れた耐水性を低下させることなく、顔料を良好に分散させることができるので、塗装装置内の塗料タンク中で撹拌下にある場合や塗装装置から吐出される時などの高シェアー時においては低粘度で、塗料が基材上に静置されたときの低シェアー時においては粘度が上昇し、タレが抑制される結果、良好な塗膜外観を確保できること、すなわち、前記2種の顔料分散樹脂と会合型増粘剤を配合することで、耐水性を低下させることなく良好な塗膜外観を有する水性白色プライマー塗膜が得られることを見出した。
すなわち、本発明にかかる水性白色プライマー塗料組成物は、外装用プラスチック成形品の表面塗装に用いられる水性白色プライマー塗料組成物において、モノマー成分の35〜60重量%がグリシジル(メタ)アクリレートであるエポキシ基含有アクリル樹脂を、樹脂固形分の重量基準で、5〜25重量%の割合で含有する、ことを特徴とする。
また、本発明の好ましい形態は、上記において、前記水性白色プライマー塗料が、顔料分散樹脂としてアルキッド樹脂と水溶性アクリル樹脂を含み、両樹脂の含有比率が、樹脂固形分の重量基準で、アルキッド樹脂:水溶性アクリル樹脂=95:5〜50:50であるとともに、会合型増粘剤をも含む、ことである。
さらに、本発明にかかる外装用プラスチック成形品の塗膜形成方法は、外装用プラスチック成形品の表面に、水性白色プライマー塗料を乾燥膜厚10〜30μmの厚みで、その上に水性ベース塗料を乾燥膜厚10〜30μmの厚みで、さらにその上にクリヤー塗料を乾燥膜厚10〜40μmの厚みで、未硬化のまま塗装したのち、一度に焼き付けることにより化粧塗膜を形成する、外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法において、前記水性白色プライマー塗料として、上記水性白色プライマー塗料組成物を用いるとともに、前記水性ベース塗料として、その白黒隠ぺい膜厚が20μm以上であるものを用いる、ことを特徴とする。
本発明にかかる水性白色プライマー塗料組成物は、水性であるために環境負荷が小さく、かつ、耐水性および耐黄変性をともに満足するものである。また、水性白色プライマー塗料における顔料分散樹脂として、アルキッド樹脂と水溶性アクリル樹脂を特定比率で併用するとともに会合型増粘剤を配合すれば、耐水性が高く塗膜外観も良好な水性白色プライマー塗膜を得ることができる。本発明にかかる外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法は、外装用プラスチック成型品に求められることのある色鮮やかな外観を有する水性ベース塗膜を得させる隠ぺい率の小さな水性ベース塗料を用いるが、水性白色プライマー塗料として、耐水性、耐黄変性に優れる前記本発明にかかる水性白色プライマー塗料組成物を用いることにより、耐水性の高い塗膜を得させるとともに、水性ベース塗膜の色鮮やかな外観を阻害することもない。
以下、本発明にかかる水性白色プライマー塗料組成物および外装用プラスチック成形品の塗膜形成方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
まず、本発明の水性白色プライマー塗料組成物および塗膜形成方法で用いられる、外装用プラスチック成型品、水性白色プライマー塗料組成物、水性ベース塗料およびクリヤー塗料について、詳しく説明する。
〔外装用プラスチック成型品〕
本発明で用いられる外装用プラスチック成型品は、特に限定されず、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外装品や、家庭電化製品の外板部などを挙げることができ、その素材としても、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ABS、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PPO、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
〔水性白色プライマー塗料組成物〕
本発明にかかる水性白色プライマー塗料組成物は、プライマー用樹脂、水および白色顔料を必須に含み、適宜、その他の原料を含んでいてもよい。
水性白色プライマー塗料組成物は、L,a,b色相空間でのL値が、80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。前記L値が80未満であると、ベース塗膜の鮮やかな色を阻害するおそれがある。なお、L値は、後述の白色顔料の種類や量によって適宜調整すれば良い。
前記プライマー用樹脂としては、以下に詳しく説明するエポキシ基含有アクリル樹脂を必須に含む。
<エポキシ基含有アクリル樹脂>
本発明の水性白色プライマー塗料組成物に含有されるエポキシ基含有アクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレートを必須のモノマー成分とするものであり、塗膜の耐水性を向上させる成分であるとともに、耐黄変性にも優れる成分でもある。その配合量としては、水性白色プライマー塗料に対して、樹脂固形分基準で、5〜25重量%の割合である。5重量%未満では十分な耐水性が得られず、25重量%を超えると他のプライマー用樹脂の配合が制限されるので密着性不良などを招く場合がある。
前記エポキシ基含有アクリル樹脂は、通常、例えば、平均粒径0.05〜0.5μmの微粒子状のアクリル樹脂エマルション粒子として用いられる。なお、本発明において、エポキシ基含有アクリル樹脂の平均粒径は、後述の実施例に記載の測定方法で測定された値である。
前記エポキシ基含有アクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレートを35〜60重量%含有するモノマー成分を重合して得られるものである。35重量%未満では十分な耐水性が得られず、60重量%を超えると製造時の変動が大きく、安定して量産することに懸念がある。
グリシジル(メタ)アクリレート以外のモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物などの官能基含有モノマー、さらには、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
<他のプライマー用樹脂成分>
他のプライマー用樹脂成分としては、酸変性塩素化ポリオレフィン、ポリウレタン樹脂、顔料分散樹脂などを用いることが好ましい。
前記酸変性塩素化ポリオレフィンは、例えば、プラスチック基材、特に、ポリオレフィン基材に対する密着性を向上させるものである。配合量としては、水性白色プライマー塗料組成物に対して、樹脂固形分基準で、20〜35重量%の割合であることが好ましい。20重量%未満ではポリオレフィン素材への密着性が不良となる傾向がある。
前記ポリウレタン樹脂は、塗膜の柔軟性を高める成分であり、配合量としては、水性白色プライマー塗料組成物に対して、樹脂固形分基準で、15〜35重量%の割合であることが好ましい。15重量%未満では十分な柔軟性を与えることができないおそれがある。
前記顔料分散樹脂は、水性白色プライマー塗料組成物中で顔料を良好に分散させるものであり、会合型増粘剤との併用により、塗装装置内の塗料タンク中で撹拌下にある場合や塗装装置から吐出される時などの高シェアー時においては低粘度で良好な流動状態にあり、均一な塗膜を得させるとともに、塗料が基材上に静置されたときの低シェアー時においては粘度が上昇し、タレが抑制される結果、良好な塗膜外観が確保できる。その配合量としては、水性白色プライマー塗料組成物に対して、樹脂固形分基準で、20〜35重量%の割合であることが好ましい。20重量%未満では顔料の分散安定性が不十分となって平滑な塗膜が得られないおそれがあり、35重量%を超えると耐水性、密着性を含む塗膜性能のバランスを損なうおそれがある。
以下、各樹脂について詳述する。
(酸変性塩素化ポリオレフィン)
前記酸変性塩素化ポリオレフィンは、塩素化ポリオレフィン部分と、この塩素化ポリオレフィン部分に結合した酸無水物部分とを含むポリオレフィン誘導体である。
塩素化ポリオレフィン部分は、塩素原子が置換したポリオレフィンからなる部分である。
また、酸無水物部分は、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの酸無水物に由来する基を含有し、グラフトして得られる変性された部分である。酸無水物部分は、1種または2種以上の酸無水物に由来する基からなる部分であってもよい。酸変性塩素化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを酸無水物および塩素と反応させて内部変性したものであり、例えば、ポリオレフィンに対して塩素および酸無水物を反応させて製造される。ここで、塩素および酸無水物はどちらを先に反応させてもよい。塩素との反応は、例えば、ポリオレフィンを含む溶液に塩素ガスを導入することによって行われる。また、酸無水物との反応は、例えば、過酸化物の存在下、ポリオレフィン(または塩素化ポリオレフィン)に酸無水物を反応させることによって行われる。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などの共重合体や、エチレン、プロピレンおよび炭素数8以下のアルケンから選ばれた少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体などを挙げることができ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリプロピレンを用いることが、入手のし易さ、密着性が高くなる点で好ましい。また、上記変性に用いられる酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
酸変性塩素化ポリオレフィンの塩素含有率は、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは18〜22重量%である。塩素含有率が10重量%未満であると、溶剤溶解性が低下し、その乳化が困難になる傾向がある。他方、塩素含有率が30重量%超であると、ポリプロピレンなどのプラスチック素材に対する密着性が低下し、不十分となるおそれがある。
酸変性塩素化ポリオレフィンの酸無水物含有率は、1〜10重量%の範囲にあることが好ましく、1.2〜5重量%の範囲にあることがさらに好ましい。酸無水物含有率が1重量%未満であると、乳化しにくくなるとともに水性白色プライマー塗料組成物の安定性が悪くなるおそれがある。他方、酸無水物含有率が、10重量%を超えると、酸無水物基が多くなりすぎ、耐水性が低下する傾向がある。
酸変性塩素化ポリオレフィンは、その重量平均分子量が20000〜200000の範囲にあることが好ましく、30000〜120000の範囲にあることがより好ましい。重量平均分子量が20000未満であると、この水性白色プライマー塗料組成物から得られる水性白色プライマー塗膜の強度が低下し、密着性も低くなる傾向がある。他方、重量平均分子量が200000を超えると、粘度が高くなり、乳化しにくい傾向がある。
前記酸変性塩素化ポリオレフィンは、疎水性が高く、水に安定的に分散させることが困難であるので、通常、乳化剤や中和剤を使用してエマルション化させ、エマルション樹脂として用いる。
乳化剤の配合割合は、酸変性塩素化ポリオレフィン、中和剤や水の配合割合によって適宜設定されるが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン100重量%に対して2〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。乳化剤が2重量%未満であると、エマルションの貯蔵安定性が低下するとともに、後述のエマルションの製造工程において、重合途中に凝集や沈降がおこり易くなる傾向がある。他方、50重量%を超えると、乳化剤が塗膜中に多量に残り、塗膜の耐水性や耐候性が低下する傾向がある。
乳化剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルや、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、アルキロールアミドなどのノニオン型乳化剤;アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン型乳化剤;ステアリルベタインやラウリルベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性乳化剤;ポリオキシエチレン基含有ウレタン樹脂、カルボン酸塩基含有ウレタン樹脂などの樹脂型乳化剤、イミダゾリンラウレート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルベタイン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン型乳化剤などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、ノニオン型乳化剤は、親水性の高いイオン性極性基を有しないため塗膜の耐水性を良好とさせ、好ましい。
中和剤の配合割合も、酸変性塩素化ポリオレフィン、乳化剤や水の配合割合によって設定され、特に、酸変性塩素化ポリオレフィンや乳化剤などに含まれる酸性官能基(例えば、酸無水物基やカルボキシル基)を十分に中和することを考慮して配合されるが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィンに含まれる酸性官能基1当量に対し、好ましくは0.2〜10当量、より好ましくは0.5〜4当量である。0.2当量未満では乳化が不十分となり、10当量を超えると残存した中和剤などが耐水性を低下させたり、脱塩素化を促進する傾向がある。
中和剤の配合によって定まるエマルションのpHは、好ましくは7〜11、さらに好ましくは7.5〜10.5、最も好ましくは8〜10である。エマルションのpHが7未満であると、中和が十分ではなく、エマルションの貯蔵安定性が低下する傾向がある。他方、エマルションのpHが11を超えると、遊離の中和剤がエマルション中に過剰に存在することとなり、中和剤臭が強くなり、使用しにくくなる傾向がある。
中和剤は、塩素化ポリオレフィン樹脂が有する酸無水物基および/またはカルボキシル基に付加するか、および/または、これらの基を中和して、変性塩素化ポリオレフィンの親水性を高め、エマルションの貯蔵安定性を向上させる働きをする。
中和剤としては、後述の有機系強塩基が必須であり、必要に応じて通常の有機系アミンやアンモニアを併用しても良い。
通常の有機系アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、N−メチルモルホリンなどのモノアミン類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどのアルカノールアミン類などを挙げることができる。
水の配合割合は、エマルション全体の50〜95重量%が好ましく、60〜85重量%がより好ましく、65〜80重量%が最も好ましい。水の配合割合が50重量%未満であると、エマルション中の不揮発分が多くなりすぎ、凝集などが生じ易く、エマルションの貯蔵安定性が低下する傾向がある。他方、水の配合割合が95重量%を超えると、後述のエマルションの製造工程において、生産効率が悪くなるほか、エマルションを水性白色プライマー塗料組成物に用いた場合に、その不揮発分が低くなり、塗布作業性が低下する傾向がある。エマルション中の酸変性塩素化ポリオレフィンを主成分とするポリマー粒子の平均粒径については、特に限定はないが、0.01〜1μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.5μmが最も好ましい。ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm未満であると、乳化剤が多量に必要となり、塗膜の耐水性や耐候性が低下する傾向がある。他方、ポリマー粒子の平均粒径が1μmを超えると、エマルションの貯蔵安定性が低下するとともに、ポリマー粒子の体積が大きすぎて、塗膜化するための溶融熱量や時間を多く必要となる。さらに、得られる塗膜の外観や耐水性、耐溶剤性などが低下する傾向がある。
酸変性塩素化ポリオレフィンの乳化方法は、公知の方法でよく、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、中和剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解し、市販の乳化機にて水中に乳化させたり、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解し、市販の乳化機にて中和剤を添加した水中に乳化させたりする。また、逆に、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、中和剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解した有機相に、水を攪拌下ゆっくりと添加して転相乳化させたり、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解した有機相に、中和剤を添加した水を攪拌下ゆっくりと添加して転相乳化させたりしてもよい。
上述の乳化方法に用いられる溶剤としては、例えば、キシレンおよびトルエン、ソルベッソ−100(エクソン社製)などの芳香族系溶剤や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコール−n−プロピルエーテルなどのエチレングリコール系またはプロピレングリコール系溶剤などが挙げられる。
(ポリウレタン樹脂)
前記ポリウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基とポリオールを反応させて鎖延長されたポリウレタン樹脂が好ましい。
前記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ポリオールの市販品としては、ユリアーノシリーズ(荒川化学社製)、オレスターシリーズ(三井化学社製)、アロタンシリーズ(日本触媒社製)などがある。
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール変性物をエマルション化したものやディスパージョン化したものが良い。例えば、乳化剤の存在下、あらかじめジオールとジイソシアネートを反応させて得られるプレポリマーを水中に分散させながら、強制または自己乳化して得られるディスパージョンが挙げられる。前記ディスパージョンにおいては、分散性を高めるために、カルボキシル基を有するジメチロールブタン酸などを含んでいても良い。
(顔料分散樹脂)
顔料分散樹脂としては、アルキッド樹脂および水溶性アクリル樹脂を含有するものを用いることが好ましい。両樹脂を併用することで、耐水性に優れ、かつ、顔料分散性、ひいては塗膜外観の良好な水性白色プライマー塗料組成物が得られる。両樹脂を併用する場合における両樹脂の配合比率は、樹脂固形分の重量基準で、アルキッド樹脂:水溶性アクリル樹脂=95:5〜50:50であることが好ましい。前記割合よりもアルキッド樹脂の割合が多くなると顔料の分散安定性が低下してしまうおそれがあり、前記割合よりもアルキッド樹脂の割合が少なくなると微粒化が不十分となったり、耐水性が低下したりするおそれがある。
前記アルキッド樹脂は、多価アルコールと、酸成分の一部が植物油の長鎖脂肪酸であってもよい多官能カルボン酸とのポリエステル化反応生成物である。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オレフィングリコール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジオレフィングリコール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。前記多官能カルボン酸としては、例えば、フタル酸無水物、アジピン酸、マレイン酸無水物、イソフタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、トリメリット酸無水物、リノール酸、リノレイン酸、安息香酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸などが挙げられる。
アルキッド樹脂は、各種オイルで変性することにより改質されたものであってもよい。変性に用いることのできるオイルとしては、例えば、桐油、アマニ油、大豆油、べにばな油、ヒマシ油、コーン油、綿種油、ペララ油、ゴマ油、ココナツ油、脱水ヒマシ油、トール油などが挙げられる。
アルキッド樹脂を水性型として用いる場合、その樹脂固形分酸価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、10〜40mgKOH/gであることがより好ましい。樹脂固形分酸価が5mgKOH/g未満であると、アルキッド樹脂の水への分散性が不充分で、安定な水溶性樹脂になりにくく、一方、100mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性や耐候性が低下する恐れがある。
アルキッド樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ社製ウォーターゾルシリーズのS118、S126、S346や、日本触媒社製アロロンシリーズの376、580や、日本触媒社製アクリセットシリーズのARL581、ARL580などが挙げられる。
つぎに、前記水溶性アクリル樹脂としては、例えば、親水性(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含む水溶性のアクリル樹脂を挙げることができる。前記親水性(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートやこれら(メタ)アクリレートとカプロラクトンやエチレンオキサイドなどが反応した開環付加物などの水酸基含有(メタ)アクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリルモノマー;アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミドモノマーなどを挙げることができ、1種のみ、または、2種以上を併用しても良い。
水溶性アクリル樹脂は、親水性(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位のほかに、適宜、他の(メタ)アクリルモノマーやスチレン系モノマーに由来する構造単位を含むものであっても良い。
水溶性アクリル樹脂は、親水性(メタ)アクリルモノマーを重合して得ることができるが、必要に応じて、上記他の(メタ)アクリルモノマーやスチレン系モノマーとともに共重合したり、酸やアルカリで水溶性化して得られるものでもよい。水溶性化については、例えば、親水性(メタ)アクリルモノマーがカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーである場合にはアミンやアンモニアを用いて中和することにより行うことができ、網の基含有(メタ)アクリルモノマーである場合には有機酸などを用いて中和することにより行うことができる。
<増粘剤>
本発明の水性白色プライマー塗料組成物は、増粘剤として、会合型増粘剤を含むことが好ましい。会合型増粘剤は、分子内に疎水基と親水基を有する非イオン性物質であり、その疎水基が、水性白色プライマー塗料組成物中の樹脂の疎水基と会合する。高シェアー時には前記会合が一部はずれることで低粘度となるが、低シェアー時においては再び会合が起こって粘度が上昇するという特異な性質をもつ。
この会合型増粘剤を、水分散性樹脂である上記アルキッド樹脂とともに用いることで、高シェアー時には良好な分散や微粒化が可能となり、低シェアー時にはタレを防止することができる。
前記会合型増粘剤としては、例えば、市販品として、アデカノールシリーズ(旭電化工業社製)、プライマールシリーズ(Rohm&Haas社製)などが挙げられる。
<白色顔料>
本発明の水性白色プライマー塗料組成物に用いられる白色顔料は、白色のプライマー塗料組成物を得させるためにプライマー塗料組成物中に配合される顔料である。
白色顔料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛などが挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
前記白色顔料の平均粒径は、特に制限はないが、分散性、塗膜の平滑性、密着性確保などの観点から、0.2〜0.3μmであることが好ましい。
また、その形状についても特に制限はなく、例えば、粒子状、フレーク状、ファイバー状などが挙げられる。
水性白色プライマー塗料組成物における白色顔料の含有量は、水性白色プライマー塗料組成物中の樹脂固形分100重量部に対し40〜75重量部の範囲内であることが好ましい。40重量部未満では塗膜の白色度が不十分となるおそれがあり、75重量部を超えると塗膜の平滑性や密着性が損なわれるおそれがある。
<溶剤>
水性白色プライマー塗料組成物中の水の配合割合は、水性白色プライマー塗料組成物全体に対して、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜80重量%である。水の配合割合が50重量%未満であると、塗料粘度が高くなり、貯蔵安定性や、塗装作業性が低下する。他方、水の配合割合が90重量%を超えると、水性白色プライマー塗料組成物中の不揮発分量の割合が低下し、塗装効率が悪くなり、タレ、ワキなどの外観異状が生じやすくなる。なお、水性白色プライマー塗料組成物は、有機溶剤をさらに含んでもよく、その配合割合は、通常、水性白色プライマー塗料組成物に含まれる水に対して40重量%以下である。
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル類;n−ブチルエーテル、イソブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−プロピレングリコール、イソプロピレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカービトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアセトンアルコールなどのその他の溶剤類などを挙げることができる。
<その他の成分>
本発明で用いられる水性白色プライマー塗料組成物には、必要に応じて、例えば、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤などの公知の補助配合剤を含有させることができる。
〔水性ベース塗料〕
本発明にかかる塗膜形成方法で用いられる水性ベース塗料は、水性白色プライマー塗料組成物を塗って形成した水性白色プライマー塗料組成物の未硬化膜上に塗り重ねられる塗料であり、クリヤー塗料に先立って使用される。
前記水性ベース塗料は、白黒隠ぺい膜厚が20μm以上のものである。白黒隠ぺい膜厚が20μm以上であることにより、外装用ブラスチック成形品表面に、色鮮やかな外観を与えることができる。なお、本発明における水性ベース塗料の白黒隠ぺい膜厚は、後述の実施例で説明する方法により測定される値である。
前記水性ベース塗料に含まれるベース用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、繊維素樹脂などが挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。硬化剤をさらに含むものであってもよい。
水性ベース塗料には、例えば、着色顔料や体質顔料が含まれている。
前記着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料などの有機顔料などが挙げられ、また、前記体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカなどが挙げられる。これらを、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
水性ベース塗料は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤などが挙げられる。
〔クリヤー塗料〕
本発明にかかる塗膜形成方法で用いられるクリヤー塗料は、水性ベース塗料の未硬化膜上に塗り重ねて、3層塗膜のトップ層(最上層)を形成させるのに用いられる塗料であり、優れた耐候性や耐溶剤性などの物性を硬化塗膜に付与する。
前記クリヤー塗料としては、特に限定されず、従来公知のものを用いればよいが、例えば、硬化剤がイソシアネートである2液クリアー塗料(例えば、2液硬化型ウレタン塗料)が好ましい。得られるクリヤー塗膜の外観が良好で、耐酸性にも優れたものとなるからである。
硬化剤として用いるイソシアネートとしては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する無黄変タイプの化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのアダクト体、ヌレート体、ビューレット体など)などを挙げることができる。市販の硬化剤としては、例えば、住化バイエル社製のディスモジュール3600やスミジュール3300、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、三井武田ケミカル社製のタケネートD−140NL、D−170N、旭化成社製のデュラネート24A−90PX、THA−100などを挙げることができる。
市販のクリヤー塗料としては、例えば、2液硬化型ウレタン塗料である日本ビー・ケミカル社製のR2500などを挙げることができる。
〔塗膜形成方法〕
次に、塗膜形成工程の操作について詳しく説明する。
塗膜形成工程は、各塗料を塗り重ねる塗装工程と焼付け工程とに分けられる。
<塗装工程>
塗装工程は、さらに細分化すると、水性白色プライマー塗料塗装工程と、水性ベース塗料塗装工程と、クリヤー塗料塗装工程とに分けられる。
まず、水性白色プライマー塗料塗装工程は、外装用プラスチック成型品の表面に水性白色プライマー塗料組成物を塗装する工程である。水性白色プライマー塗料組成物を塗るのに先立って、必要に応じて、外装用プラスチック成型品を洗浄、脱脂しておいてもよい。水性白色プライマー塗料組成物は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができる。
水性白色プライマー塗料組成物の塗布量(乾燥膜厚)は、10〜30μmである。10μm未満では隠ぺい性不足となり、30μmを超えるとワキやタレが発生し易くとなる。好ましくは15〜20μmである。
水性白色プライマー塗料塗装工程では、塗装後に焼き付けて硬化させずにそのままにしておき、次の水性ベース塗料塗装工程で水性ベース塗料が水性白色プライマー塗料組成物の未硬化膜上に塗り重ねられる。
外装用プラスチック成形品の表面に水性白色プライマー塗料組成物を塗布した後、通常、得られた水性白色プライマー塗料組成物の未硬化膜の乾燥が行われる。この乾燥は、自然乾燥および強制乾燥のいずれで行ってもよい。強制乾燥としては、例えば、温風乾燥や、近赤外線乾燥、電磁波乾燥などのいずれで行ってもよい。
次に、水性ベース塗料塗装工程は、水性白色プライマー塗料組成物の未硬化膜上に水性ベース塗料を塗装する工程である。水性ベース塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができる。
水性ベース塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、10〜30μmである。10μm未満では本来の色相が得られづらくなり、30μmを超えるとワキやタレが発生し易くなる。好ましくは15〜20μmである。
水性ベース塗料塗装工程では、水性白色プライマー塗料組成物の未硬化膜および水性ベース塗料の未硬化膜からなる複層膜は、焼き付けて硬化させずにそのままにしておく。
最後に、クリヤー塗料塗装工程は、水性ベース塗料塗装工程で得られた水性ベース塗料の未硬化膜上にクリヤー塗料を塗装する工程である。クリヤー塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができる。
クリヤー塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、10〜40μmである。10μm未満では仕上がり不良となり、40μmを超えるとワキやタレが発生し易くなる。好ましくは20〜30μmである。
以上のようにして、外装用プラスチック成型品の表面に、水性白色プライマー塗料組成物、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をこの順番に塗り重ねて、各塗料成分からなる3層の未硬化膜を外装用プラスチック成型品表面に形成し、次の焼き付け工程が行われる。
水性白色プライマー塗料組成物、水性ベース塗料およびクリヤー塗料の選択に当たっては、焼き付け工程で十分に硬化乾燥できる塗料を選択する必要がある。乾燥が不十分で水または溶剤が硬化塗膜内部に残存すると、硬化塗膜において、耐水性および耐溶剤性などの性能が低下し易くなる。
<焼き付け工程>
焼き付け工程は、前述の塗装工程で形成された、水性白色プライマー塗料組成物、水性ベース塗料およびクリヤー塗料からなる3層の未硬化膜を同時に焼き付けて、外装用プラスチック成型品の表面に、水性白色プライマー塗膜、水性ベース塗膜およびクリヤー塗膜の3層から構成される硬化塗膜を形成する工程である。
焼き付け温度は、迅速な硬化と外装用プラスチック成型品の変形防止との兼ね合いから、例えば、110〜130℃とすることが好ましい。好ましくは、120〜130℃である。
焼き付け時間は、通常10〜60分間であり、好ましくは15〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間である。焼き付け時間が10分間未満であると、塗膜の硬化が不十分であり、硬化塗膜において、耐水性および耐溶剤性などの性能が低下する。他方、焼き付け時間が60分間を超えると、硬化しすぎでリコートにおける密着性などが低下し、塗装工程の全時間が長くなり、エネルギーコストが大きくなる。なお、この焼付け時間は、外装用プラスチック成型品表面が実際に目的の焼付け温度を保持しつづけている時間を意味し、より具体的には、目的の焼付け温度に達するまでの時間は考慮せず、目的の温度に達してから該温度を保持しつづけているときの時間を意味する。
各塗料の未硬化膜を同時に焼き付けるのに用いる加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を利用した乾燥炉などが挙げられ、また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」、「重量%」を「%」と記すことがある。
〔製造例1:エポキシ基含有アクリル樹脂エマルションの製造〕
<製造例1−1>
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応容器に、イオン交換水37部を仕込み、80℃まで昇温した。昇温から反応完了まで全て内部液を撹拌しながら各作業を行った。一方、乳化機(T.K.ロボミックスRM型、プライミクス社製)に、イオン交換水21部、界面活性剤「Newcol710」1部および「Newcol740」1部(いずれも日本乳化剤社製)を仕込み、撹拌しながら均一に溶解した。続けて撹拌しながら、上記乳化機にn−ブチルアクリレート6部、エチルヘキシルメタクリレート8部、グリシジルメタクリレート14部からなる重合性モノマー混合溶液を徐々に滴下して、プレエマルション液を作製した。一方、イオン交換水7部およびアンモニウムパーサルフェート(乳化重合触媒)1.1部からなる重合触媒液を作製し、上記反応容器に、上記プレエマルション液と該重合触媒液とを別々の滴下ロートから3時間かけて滴下した。反応容器内温度を80℃に維持して撹拌しながらエマルション重合を行った。プレエマルション液は、乳化機で乳化状態を保持しながら、そこから直接反応容器につないで滴下する手法をとった。3時間後、さらに、イオン交換水4部およびアンモニウムパーサルフェート0.5部からなる重合触媒液だけを、内部温度を80℃に保持して、1時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間熟成したのち、冷却し、エポキシ基含有アクリル樹脂エマルションを得た。このものの不揮発分は30%であった。また、樹脂固形分中におけるグリシジルメタクリレートに由来する重量割合は50%であった。エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション粒子の平均粒径は、400nmであった。
<製造例1−2〜1−4>
プレエマルション液を作製する際の重合性モノマー混合溶液を、表1に示すとおりに変更する以外は製造例1−1と同様にして、製造例1−2〜1−4の各エポキシ基含有アクリル樹脂を得た。各エポキシ基含有アクリル樹脂エマルションの不揮発分と、樹脂固形分中におけるグリシジルメタクリレートに由来する重量割合を表1に合わせて示す。なお、製造例1−2〜1−4の各エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション粒子の平均粒径は、いずれも400nmであった。
Figure 2010241911
〔製造例2:酸無水物変性塩素化ポリオレフィンの製造〕
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応容器に、無水マレイン酸変性ポリオレフィン「スーパークロン892LS」(日本製紙社製、塩素含有率22%、重量平均分子量7万〜8万)288部、界面活性剤「エマルゲン920」(花王社製)62部、芳香族炭化水素溶剤「ソルベッソ100」(エクソン社製)74部、酢酸カービトール32部を仕込み、110℃まで昇温し、この温度で1時間加熱して樹脂などを溶解させたのち、100℃以下に冷却した。次いで、ジメチルエタノールアミン6部を溶解させたイオン交換水710部を撹拌しながら1時間かけて滴下し、転相乳化した。その後、室温(25℃)まで冷却し、400メッシュの金網でろ過して、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルションを得た。このエマルションの不揮発分は30重量%であった。
〔製造例3:ポリウレタンディスパージョンの製造〕
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管、サンプル採取管および冷却管付き還流装置を備えた耐圧反応容器に、窒素ガスを通じながらアジピン酸1100部と3−メチル−1,5−ペンタンジオール900部と、テトラブチルチタネート0.5部とを仕込み、容器内液の反応温度を170℃に設定し、脱水によるエステル化反応を行い、酸価が0.3mgKOH/g以下になるまで継続した。次いで、180℃、5kPa以下の減圧条件下で2時間反応を行い、水酸基価112mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/gのポリエステルを得た。次いで、上記反応容器と同じ装置のついた別の反応容器に、このポリエステルポリオール500部と、5−スルホソジウムイソフタル酸ジメチル134部およびテトラブチルチタネート2部を仕込み、上記と同じようにして、窒素ガスを通じながら、反応温度を180℃に設定してエステル化反応を行い、最終的に重量平均分子量2117、水酸基価53mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gのスルホン酸基含有ポリエステルを得た。
上記スルホン酸基含有ポリエステル280部、ポリブチレンアジペート200部、1,4−ブタンジオール35部、ヘキサメチレンジイソシアネート118部およびメチルエチルケトン400部を、撹拌羽根、温度計、温度制御装置、滴下装置、サンプル採取口および冷却管付き反応容器に窒素ガスを通じながら仕込み、撹拌しながら液温を75℃に保持してウレタン化反応を行い、NCO含有率が1%であるウレタンプレポリマーを得た。続いて、前記反応容器中の液温を40℃に下げて、十分撹拌しながらイオン交換水955部を均一に滴下して転相乳化を行った。次いで、内部温度を下げて、アジピン酸ヒドラジド13部とイオン交換水110部とを混合したアジピン酸ヒドラジド水溶液を添加してアミン伸長を行った。次いで、若干の減圧状態で60℃に温度をあげて脱溶剤を行い、終了した時点で、ポリウレタンディスパージョンの固形分が35%になるようにイオン交換水を追加して、スルホン酸基含有ポリウレタンディスパージョンを得た。ディスパージョン中のポリウレタン樹脂の酸価は、11mgKOH/gであった。
〔製造例4:顔料分散ペーストの製造〕
<顔料分散樹脂としての水溶性アクリル樹脂の製造>
撹拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル55部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌下120℃まで昇温した。つぎに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、メタクリル酸9部、イソブチルメタクリレート35部、n−ブチルアクリレート44部からなる重合性モノマー混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート1部をプロピレングリコール8部に溶解した溶液とを、内部撹拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート0.1部をプロピレングリコール4部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部撹拌状態と液温120℃を維持していた。その後、撹拌しながら、120℃で2時間熟成し、ついで、内部温度を70℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール9.5部を滴下して30分撹拌した。さらに内部温度を70℃に保持して撹拌しながら、イオン交換水167部をゆっくりと滴下し、室温(25℃)まで冷却し、水溶性アクリル樹脂溶液を得た。イオン交換水を用いて、不揮発分を30%に調整した。得られた顔料分散樹脂(水溶性アクリル樹脂溶液)のpHは8.2で、アクリル樹脂の重量平均分子量は42000であった。
<顔料分散ペーストの製造>
撹拌機のついたステンレス製の円筒撹拌槽に、顔料分散樹脂(上記水溶性アクリル樹脂溶液および/またはアルキッドディスパージョン樹脂「ウオーターゾールBCD−3090」(大日本インキ社製、不揮発分42%))28.0部を仕込み、撹拌しながら、イオン交換水20部を添加した。次いで、顔料の湿潤助剤「SURFYNOL GA」(エアープロダクツ社製、不揮発分78%)2.0部を撹拌しながら添加した。十分撹拌しながら、消泡剤「ノプコ8034−L」(サンノプコ社製、不揮発分100%)0.4部を添加した。ついで、撹拌を続けながら、白色顔料「チタンCR95」(石原産業社製)59部、イオン交換水2.6部、メラミン樹脂「サイメル701」(日本サイテック社製、不揮発分82%)3部を順次添加し、十分撹拌しながら、全体に均一になるまで15分間撹拌を続け、顔料ミルベースを得た。このミルベースをサンドグラインダーミルにより顔料分散し、プライマー用顔料分散ペーストを作製した。このものの不揮発分は64.6%であり、顔料濃度(PWC)73.7%であった。
〔実施例1〕
撹拌装置のついたステンレス製容器に製造例1−1にかかるエポキシ基含有アクリル樹脂エマルション4.8部を仕込み、撹拌しながら、顔料分散ペースト38.6部、酸無水物変性塩素化ポリオレフィンエマルション樹脂13.3部、ウレタンディスパージョン樹脂13.7部、「UH752」(ウレタン会合型増粘剤)1.6部、2−エチルヘキサノール(溶剤)3.0部、サーフィノール440(エアープロダクツ社製、表面調整剤)1.8部、イオン交換水23.2部を順次仕込み、実施例1にかかる水性白色プライマー塗料組成物を得た。
得られたプライマー塗料組成物のL値は85であった。
ここで、本発明において、プライマー塗料組成物のL値は、以下のようにして得られる値である。
<L値の測定>
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(TSOP、70mm×150mm×3mm)の表面に、プライマー塗料を、25℃/70%RHの環境下で、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で5分間乾燥したのち、塗膜の45°L値を「MA68II」(X−Rite社製)で測定した。
なお、下記実施例9のように、白黒隠ぺい膜厚が20μm以上のベース塗料を塗り重ねる場合に、その外観を損なわないために必要なプライマー塗膜のL値は、80以上である。
〔実施例2〜8、比較例1〜4〕
表2,3に示す配合で、実施例1と同様にして、実施例2〜8、比較例1〜4にかかる各水性白色プライマー塗料組成物を得た。
なお、実施例2〜8、比較例1〜4にかかる各水性白色プライマー塗料組成物は、実施例1にかかる水性白色プライマー塗料組成物と同様の白色顔料を同濃度で用いているので、そのL値は、すべて、実施例1にかかる水性白色プライマー塗料組成物と同様、85であった。
Figure 2010241911
Figure 2010241911
なお、比較例1において、実施例1のエポキシ基含有アクリル樹脂に代えて用いている「エピレッツ6006W70」(Shell Chemical社製)は、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドロリンを付加して得られるノボラック型エポキシ樹脂を乳化剤で強制的にエマルション化したノボラック型エポキシ樹脂である。
〔測定・評価方法〕
本実施例における耐水2次密着性、耐黄変性、ワキ、顔料分散性の項目は、以下の評価方法・測定方法に基づく。
<耐水2次密着性>
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に、実施例1〜8、比較例1〜4にかかる各プライマー塗料を、25℃/70RHの環境下において、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で3分間プレヒートした。次いで、水性ベース塗料「AR−2000」(日本ペイント社製、アクリルメラミン系)を、同じ環境下で、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で5分間プレヒートした。ついで、クリヤー塗料「R−2500−1」(日本ビー・ケミカル社製のアクリル系クリヤー主剤と日本ビー・ケミカル社製のイソシアネート硬化剤「H−2500−1」からなるもの)を「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚30μm)し、25℃/70%RHで10分間セッティングしたのち、120℃で35分間乾燥した。
上記のようにして得られた試験用塗板について、40℃の耐水試験槽に240時間浸漬させる。浸漬終了後に引き上げたのち、1時間以内にJIS K5600−5.6に準拠して、碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験を行う。具体的には、2mm角の100個の碁盤目を用意し、前記碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験を行って、剥がれなかった碁盤目の個数を数えることで以下の通り評価する。
○:1つも剥離しなかった場合
×:1つでも剥離があった場合
<耐黄変性>
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に、実施例1〜8、比較例1〜4にかかる各プライマー塗料を、25℃/70RHの環境下において、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、15秒セッティングした後、乾燥炉に入れて80℃で3分間プレヒートした。プレヒート後、乾燥炉から取り出し、25℃/70RHの環境下において10分間放置した後、クリヤー塗料「R−2500−1」(日本ビー・ケミカル社製のアクリル系クリヤー主剤と日本ビー・ケミカル社製のイソシアネート硬化剤「H−2500−1」からなるもの)を「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚20μm)し、25℃/70%RHで10分間セッティングしたのち、120℃で35分間乾燥した。
上記のようにして得られた各試験用塗板に対して、ウェザオメーター照射試験による劣化試験を100時間行い、劣化試験前の塗板と劣化試験後の塗板の色差(Δb)を測定し、その結果に基づき、耐黄変性を下記のとおり評価した。
○:Δbが1.0未満
×:Δbが1.0以上
<ワキ>
上記耐黄変性評価と同様の条件で各試験用塗板を作製し、その外観を目視することにより以下のとおり評価した。
○:ワキなし
△:ワキがわずかに見られる
×:ワキが多数見られる。
<顔料分散性>
撹拌機のついたステンレス製の円筒撹拌槽に、顔料分散樹脂として、上記水溶性アクリル樹脂溶液28.0部を仕込み、撹拌しながら、イオン交換水20部を添加した。次いで、顔料の湿潤助剤「SURFYNOL GA」(エアープロダクツ社製、不揮発分78%)2.0部を撹拌しながら添加する。十分撹拌しながら、消泡剤「ノプコ8034−L」(サンノプコ社製、不揮発分100%)0.4部を添加する。ついで、撹拌を続けながら、白色顔料「チタンCR95」(石原産業社製)59部、イオン交換水2.6部、「サイメル701」(日本サイテック社製、不揮発分82%)3部を順次添加し、十分撹拌しながら、全体に均一になるまで15分間撹拌を続け、顔料ミルベースを作製する。このミルベースをサンドグラインダーミルにより30分間顔料分散する。
上記のようにして得られた顔料分散ペーストの顔料粒度をグラインドゲージで測定し、以下のとおり評価した。
○:顔料粒度が10μm未満
△:顔料粒度が10μm以上20μm未満
×:顔料粒度が20μm以上
〔結果とその考察〕
上記各実施例、比較例について、プライマー塗料組成物の配合と樹脂固形分の配合比率の詳細、および、上述の基準に基づく評価項目の結果を表2,3に示す。
表2,3に示す結果から以下のことが分かる。
実施例1〜8の水性白色プライマー塗料組成物は、耐水性と耐黄変性をともに満足するものであり、特に、会合型増粘剤とともに顔料分散樹脂としてのアルキッド樹脂と水溶性アクリル樹脂を95:5〜50:50の割合で含有する、実施例1〜6の水性白色プライマー塗料組成物は、ワキを生じず、顔料分散性についても優れたものとなっていることが分かる。実施例7の水性白色プライマー塗料組成物は、水溶性アクリル樹脂が好適範囲よりも少ないため、顔料分散性が低くなってしまっており、実施例8の水性白色プライマー塗料組成物は、水溶性アクリル樹脂が好適範囲よりも多いため、高シェアー時の粘度が高くなってワキを生じてしまっている。
比較例1の水性白色プライマー塗料組成物は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いたものであり、耐黄変性が低く、経時的な白色度の低下を招くものであった。
比較例2の水性白色プライマー塗料組成物は、グリシジル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含むエポキシ基含有アクリル樹脂を用いているが、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が本発明所定の範囲よりも少ないため、耐水性が悪く、プライマー塗膜の凝集破壊が起こった。
比較例3の水性白色プライマー塗料組成物は、グリシジル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含むエポキシ基含有アクリル樹脂を用いているが、該樹脂の割合が本発明所定の範囲よりも少ないため、耐水性が悪く、プライマー塗膜の凝集破壊が起こった。
比較例4の水性白色プライマー塗料組成物は、グリシジル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含むエポキシ基含有アクリル樹脂を用いているが、該樹脂の割合が本発明所定の範囲よりも多いため、他の樹脂配合を減らす必要があり、この比較例4においては酸無水物変性塩素化ポリオレフィンの配合量を減らすようにしたため、密着性が低く、素材とプライマー塗膜間での剥離が起こった。
〔実施例9〕
上記実施例1〜8にかかる各水性白色プライマー塗料組成物を用い、下記のとおりの操作を行って、実際に、外装用プラスチック成型品上に複層塗膜を形成したところ、いずれにおいても、耐水性、耐黄変性にも優れ、色鮮やかな外観を有する複層塗膜であった。
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に、実施例1〜8にかかる各プライマー塗料を、25℃/70RHの環境下において、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で3分間プレヒートした。次いで、水性ベース塗料「AR−2000」(日本ペイント社製、アクリルメラミン系、白黒隠ぺい膜厚20μm)を、同じ環境下で、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で5分間プレヒートした。ついで、クリヤー塗料「R−2500−1」(日本ビー・ケミカル社製のアクリル系クリヤー主剤と日本ビー・ケミカル社製のイソシアネート硬化剤「H−2500−1」からなるもの)を「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装(乾燥膜厚30μm)し、25℃/70%RHで10分間セッティングしたのち、120℃で35分間乾燥し、外装用プラスチック成型品上に複層塗膜を形成した。
ここで、本発明において、ベース塗料の白黒隠ぺい膜厚は、以下のようにして得られる値である。
<白黒隠ぺい膜厚>
ベース塗料の白黒隠ぺい膜厚は、JIS−K 5600−4−1に規定される隠ぺい率試験方法に準じて、隠ぺい率試験紙法により測定した。具体的には以下のとおりである。
まず、ブリキ版の中央部に白黒隠ぺい紙を両面テープで貼り付けたのち、ブリキ板の両端をマスキングする。
白黒隠ぺい紙を6区画に分け、白黒隠ぺい紙の端の1区画以外は塗料がつかないように、別のブリキ板で覆い、ベース塗料を、25℃/70%RHの環境下で、「ワイダー71」(アネスト岩田社製)でスプレー塗装する。
つぎに、白黒隠ぺい紙を覆っているブリキ板を白黒隠ぺい紙の次の区画までずらしたのち、最初の区画と新たに現れた区画とに均等に3μmの乾燥膜厚で塗装する(最初から露出している区画は重ねて塗装されることとなり、その分だけ、新たに現れた区画より膜厚が厚くなる)。
1区画ずつずらして6区画全てが塗装されるように上記操作を繰り返す。その後、25℃/70%RHで10分間セッティングしたのち、80℃で5分間乾燥する。
得られた試験板を人工太陽灯の下で正面45°の角度で250mmの距離から見る。膜厚の厚いほうから順に見て、隠ぺい紙の黒と白との境界がかすかに透けている区画より、1区画上(膜厚が厚い方)の両端のブリキ部の膜厚を測定し、小さい方の値を白黒隠ぺい膜厚とする。
なお、上記塗装操作を終えたときに全ての部分が隠ぺいされていない場合(隠ぺい膜厚が18μmを超える場合)は、別の試験板を準備し、先に塗装した最後の膜厚から始めて、同様の手順で操作を行い、隠ぺい膜厚が得られたところで終了するようにする。
本発明にかかる外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法は、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外装品や、家庭電化製品の外板部などの表面に塗膜を形成する方法として好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 外装用プラスチック成形品の表面塗装に用いられる水性白色プライマー塗料組成物において、
    モノマー成分の35〜60重量%がグリシジル(メタ)アクリレートであるエポキシ基含有アクリル樹脂を、樹脂固形分の重量基準で、5〜25重量%の割合で含有する、
    ことを特徴とする、水性白色プライマー塗料組成物。
  2. 顔料分散樹脂としてアルキッド樹脂と水溶性アクリル樹脂を含み、両樹脂の含有比率が、樹脂固形分の重量基準で、アルキッド樹脂:水溶性アクリル樹脂=95:5〜50:50であるとともに、会合型増粘剤をも含む、請求項1に記載の水性白色プライマー塗料組成物。
  3. L,a,b色相空間でのL値が80以上である、請求項1または2に記載の水性白色プライマー塗料組成物。
  4. L,a,b色相空間でのL値が90以上である、請求項3に記載の水性白色プライマー塗料組成物。
  5. 外装用プラスチック成形品の表面に、水性白色プライマー塗料を乾燥膜厚10〜30μmの厚みで、その上に水性ベース塗料を乾燥膜厚10〜30μmの厚みで、さらにその上にクリヤー塗料を乾燥膜厚10〜40μmの厚みで、未硬化のまま塗装したのち、一度に焼き付けることにより化粧塗膜を形成する、外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法において、
    前記水性白色プライマー塗料として、請求項1から4までのいずれかに記載の水性白色プライマー塗料組成物を用いるとともに、
    前記水性ベース塗料として、その白黒隠ぺい膜厚が20μm以上であるものを用いる、
    ことを特徴とする、外装用プラスチック成型品の塗膜形成方法。
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