JP2010239590A - 分布定数構造部品及びその製造方法 - Google Patents

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太伸 阪
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信介 矢野
Kazuyoshi Shibata
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Abstract

【課題】λ/4線路の線路長を短くすることができ、λ/4線路の剥がれや崩れがなく、λ/4線路の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、導体損失の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる分布定数構造部品を提供する。
【解決手段】分布定数構造部品は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー14を、導体成形体16を被覆するように供給した後に硬化して得られる第1セラミック成形体18Aと、導体成形体16のない第2セラミック成形体18Bとを積層して第1セラミック積層体12Aを作製し、該第1セラミック積層体12Aを焼成することによって得られる。そして、内部に埋め込まれた導体成形体16がλ/4線路のストリップライン電極となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、内部に分布定数回路を構成するλ/4線路が埋設された分布定数構造部品及びその製造方法に関し、例えば高周波特性に優れた受動部品等を構成することができる分布定数構造部品及びその製造方法に関する。
方向性結合器やドハティ増幅器等のλ/4線路を有する分布定数回路として、例えば特許文献1〜3等に示す方向性結合器や、例えば特許文献4及び5に示すドハティ増幅器等がある。また、特許文献6にはドハティ増幅器用合成器について開示されている。
特許文献1〜5に示す分布定数回路は、プリント配線基板上にλ/4線路を形成するだけであるため、λ/4線路の線路長を短くする考えはなく、λ/4線路を形成するための占有面積を広くとる必要がある。また、他の伝送路から漏洩する電磁波の影響を受けやすいという問題もある。
そこで、特許文献6では、これらの問題を解決するために、λ/4線路を誘電体基板内に形成することで、λ/4線路をストリップラインとすると共に、分布定数回路自体をチップ状(チップ部品)に構成するようにしている。
ところで、誘電体基板内にλ/4線路を形成して受動部品等を作製する場合、セラミック粉末と樹脂を含むグリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、成形加工した後、焼成するようにしている(例えば特許文献7、8参照)。
この場合、導体パターンがグリーンシート上において凸形状に形成されるため、グリーンシートを積層する際に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じたり、導体パターンの端部がつぶれてしまい、導体パターンの電気的特性を劣化させる。また、これらの問題のために、導体パターンの厚みを厚くできないため、抵抗値を下げるのに限界があり、また、高周波特性の向上にも限界があった。
そこで、従来では、上述の欠点を解決するために、樹脂フィルムのような基体やグリーンシート上に、導体ペーストを印刷形成した後、セラミック粉末と樹脂からなるスラリーを塗布し、その後、カチオン性凝固浴に浸漬して前記スラリーをゲル化したグリーンシートにすることで、導体パターンをグリーンシート内に埋設する方法が提案されている(例えば特許文献7〜9参照)。
また、他の従来例では、導体パターンの変形を抑制するために、導体ペーストに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂を混入させる方法が提案されている(例えば特許文献10参照)。
さらに他の従来例では、鋳込み型内にコイル形状の金属線を設置し、さらに、鋳込み型内にセラミックスラリーを充填して、セラミックスラリーで金属線を内包させる。その後、乾燥することによって、セラミック成形体内に金属線によるコイルが内包された電子部品を得るようにしている(例えば特許文献11参照)。
特開2003−50256号公報 特開平10−190301号公報 特開平8−316709号公報 特開2006−173722号公報 特開2006−345341号公報 特開2008−252215号公報 特公昭40−19975号公報 特開平2−58816号公報 特開2005−1279号公報 特開平8−167537号公報 特開平11−126724号公報
ところで、特許文献7〜9に記載された提案例において、セラミック粉末と熱可塑性樹脂を含むスラリーと、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストとを使用した場合、スラリーが乾燥する際に生ずる大きな収縮により、セラミック成形体のうち、導体近傍に亀裂が発生したりして、セラミック成形体と導体との一体化に問題が生じたり、導体の凸形状の影響でグリーンシートが凹凸形状になったりする。また、導体ペーストに含まれる熱可塑性樹脂は溶剤に溶解し易いため、セラミック成形体とする際に、導体がセラミック中に溶けて導体のパターン形状が崩れるという問題がある。
また、特許文献9では、グリーンシート上への導体パターンの形成、スラリーの塗布、カチオン性凝固浴への浸漬、乾燥を1層ごとに行う必要があり、導体パターンの多層化に伴って工数が増加するという問題がある。
特許文献10では、グリーンシート上に導体パターンを印刷によって形成したものを積層一体化した後に、プレス加工するようにしているため、特許文献7や8と同様に、導体パターンの周縁近傍に圧力がかからず、積層した後に、剥がれが生じるおそれがある。
なお、特許文献11に記載された提案例は、抵抗やコイル等の素子をセラミック成形体に埋設するには好都合であるが、導体パターンの多層化には適用することができないという問題がある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、λ/4線路の線路長を短くすることができ、λ/4線路を形成するための占有面積を広くとる必要がなく、他の伝送路から漏洩する電磁波の影響を受けにくくすることができ、しかも、λ/4線路の剥がれや崩れがなく、λ/4線路の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、導体損失の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる分布定数構造部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
第1の本発明に係る分布定数構造部品は、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を、焼成することによって得られたセラミック焼成体を有し、該セラミック焼成体に前記導体成形体によるλ/4線路が形成されていることを特徴とする。
これにより、先ず、プリント配線基板上にλ/4線路を形成することによる問題を解消することができる。すなわち、λ/4線路の線路長を短くすることができ、λ/4線路を形成するための占有面積を広くとる必要がなく、他の伝送路から漏洩する電磁波の影響を受けにくくすることができる。さらに、この第1の本発明では、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を焼成するようにして得るようにしているため、導体パターン(導体成形体による導体パターン)の剥がれや崩れがなく、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、導体損失の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
そして、第1の本発明において、前記λ/4線路は、ストリップラインであってもよい。この場合、セラミック焼成体の内部にλ/4線路が形成され、セラミック焼成体の上部及び下部にアース電極が形成されることで、λ/4線路は、ストリップラインを構成することとなる。このストリップラインにて分布定数回路としての方向性結合器やドハティ増幅器用合成器、RFチョーク、インピーダンス整合回路等を構成することができる。
また、第2の本発明において、前記λ/4線路は、マイクロストリップラインであってもよい。この場合、セラミック焼成体の一主面に、導体成形体の一主面が露出した形態とすることで、λ/4線路は、マイクロストリップラインを構成することとなる。このマイクロストリップラインにて分布定数回路としての方向性結合器やドハティ増幅器用合成器、RFチョーク、インピーダンス整合回路等を構成することができる。
次に、第2の本発明に係る分布定数構造部品の製造方法は、導体成形体を形成する導体形成工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化して前記導体成形体を有するセラミック成形体を作製する成形体作製工程と、前記セラミック成形体を焼成して前記導体成形体が埋設されたセラミック焼成体を作製する焼成体作製工程とを有し、前記セラミック焼成体に前記導体成形体によるλ/4線路が形成された分布定数構造部品を製造することを特徴とする。
これにより、上述した第1の本発明に係る分布定数構造部品を容易に作製することができる。
そして、第2の本発明において、前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形体を形成し、前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記導体成形体を被覆するように前記基体上に塗布するようにしてもよい。
また、第2の本発明において、前記熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とからなるようにしてもよい。この場合、前記水酸基を有する高分子は、ブチラール樹脂、エチルセルロース系高分子、ポリエチレングリコール系高分子又はポリエーテル系高分子であってもよい。また、前記高分子は、前記ゲル化剤との反応に必要な量よりも多く添加されていてもよい。
また、第2の本発明において、前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形体を形成し、前記スラリー供給工程は、前記導体成形体が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むようにしてもよい。この場合、前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形体が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むようにしてもよい。また、前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なるようにしてもよい。
また、第2の本発明において、前記導体形成工程は、熱硬化性樹脂前駆体と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化することによって前記導体成形体を得るようにしてもよい。この場合、前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であってもよいし、自己反応性のレゾール樹脂であってもよい。
また、第2の本発明において、前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であってもよい。
以上説明したように、本発明に係る分布定数構造部品及びその製造方法によれば、λ/4線路の線路長を短くすることができ、λ/4線路を形成するための占有面積を広くとる必要がなく、他の伝送路から漏洩する電磁波の影響を受けにくくすることができ、しかも、導体パターンの剥がれや崩れがなく、導体パターンの厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、導体損失の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
第1分布定数構造部品を示す斜視図である。 第1分布定数構造部品を示す縦断面図である。 第1セラミック積層体を示す断面図である。 図4Aはフィルム上に導体ペーストによるパターンを形成した状態を示す断面図であり、図4Bは鋳込み型内にフィルムを設置し、鋳込み型内にスラリーを注入している状態を示す断面図であり、図4Cは鋳込み型内に注入したスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。 図5Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルムごと離型した状態を示す断面図であり、図5Bはフィルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。 図6Aは鋳込み型内にフィルムを設置し、鋳込み型内にスラリーを注入している状態を示す断面図であり、図6Bは鋳込み型内に注入したスラリーを硬化した状態を示す断面図であり、図6Cはフィルムから第2セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。 図7Aはフィルム上に導体ペーストによるパターンを形成した状態を示す断面図であり、図7Bは鋳込み型内にフィルムを他のフィルム及びスペーサと共に設置し、鋳込み型内にスラリーを注入している状態を示す断面図であり、図7Cは鋳込み型内に注入したスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。 図8Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフィルム、他のフィルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図8Bはフィルム、他のフィルム及びスペーサから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。 第1セラミック成形体を作製する場合に使用される鋳込み型を示す分解斜視図である。 第1セラミック成形体及び第1セラミック積層体を作製する手順を示す工程ブロック図である。 図10のステップS6〜ステップS10までの手順を示す説明図である。 図12Aは基体上に導体ペーストをパターン形成、硬化して導体成形体を形成した状態を示す工程図であり、図12Bは導体成形体を被覆するように基体上にスラリーを塗布した状態を示す工程図である。 図13Aは基体上にスラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図13Bはその側面図である。 図14Aは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す工程図であり、図14Bは基体を剥離して第1セラミック成形体とした状態を示す工程図である。 図15Aは基体上にスラリーを塗布した状態を示す工程図であり、図15Bは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す工程図であり、図15Cは基体を剥離して第2セラミック成形体とした状態を示す工程図である。 第2分布定数構造部品を示す斜視図である。 第2分布定数構造部品を示す縦断面図である。 第2セラミック積層体を示す断面図である。
以下、本発明に係る分布定数構造部品及びその製造方法の実施の形態例を図1〜図18を参照しながら説明する。
[第1の実施の形態]
先ず、第1の実施の形態に係る分布定数構造部品(以下、第1分布定数構造部品10Aと記す)の斜視図を図1に、縦断面図を図2に示し、その基となる第1セラミック積層体12Aの断面図を図3に示す。
この第1分布定数構造部品10Aは、図3に示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー14を、導体成形体16を被覆するように供給した後に硬化して得られる第1セラミック成形体18Aと、導体成形体16のない第2セラミック成形体18Bとを積層して第1セラミック積層体12Aを作製し、該第1セラミック積層体12Aを焼成することによって得られる。
すなわち、図1及び図2に示すように、第1セラミック積層体12Aを焼成することによって、導体成形体16による各種電極が埋め込まれたセラミック焼成体20を有する第1分布定数構造部品10Aが得られる。図1及び図2の例では、セラミック焼成体20の上面に、一主面が露出した導体成形体16による上部アース電極22aが埋め込まれ、セラミック焼成体20の下面に、一主面が露出した導体成形体16による下部アース電極22bが埋め込まれ、セラミック焼成体20の内部にλ/4線路の導体成形体16による2つのストリップライン電極(第1ストリップライン電極24a及び第2ストリップライン電極24b)が埋め込まれて、全体としてトリプレート型の方向性結合器が構成されている。そして、セラミック焼成体20の第1側面26aに第1ストリップライン電極24aに接続される入力端子28及び出力端子30が形成され、第2側面26b(第1側面26aと対向する側面)に第2ストリップライン電極24bに接続されるアイソレーテッド(isolated)端子32とカップルド(coupled)端子34が形成され、その他の第3側面26cと第4側面26dに上部アース電極22aと下部アース電極22bが接続されるアース端子36が形成されている。
ここで、第1分布定数構造部品10Aの2つの作製方法(第1作製方法及び第2作製方法)について図4A〜図15Cを参照しながら説明する。なお、導体成形体16の数やパターン形状は様々な態様が想定されるため、説明を簡単にするために、代表的に2つの導体成形体16が形成された場合を想定して説明する。
[第1作製方法]
第1作製方法は、先ず、図4Aに示すように、フィルム40上に導体ペースト42を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム40上に導体成形体16を形成する。フィルム40は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト42の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予めフィルム40に温度150℃で10分以上のアニール処理を施すことが好ましい。
その後、図4Bに示すように、フィルム40を鋳込み型44内に設置し、スラリー14を鋳込み型44内に鋳込んだ後に、硬化(室温硬化や乾燥硬化等)する。これによって、図4Cに示すように、第1セラミック成形体18Aが得られる。この場合、図5Aに示すように、フィルム40上に第1セラミック成形体18Aが設置された状態になっているため、第1セラミック成形体18Aをフィルム40から離型することによって、図5Bに示すように、導体成形体16が埋設された第1セラミック成形体18Aが得られる。
この場合、スラリー14に熱硬化性樹脂前駆体を含んでいるため、スラリー14の硬化時における乾燥収縮に伴う導体成形体16の周りの部分の変形は小さい。従って、第1セラミック成形体18Aのうち、導体成形体16の周りの部分の変形も小さく、第1セラミック成形体18Aの一主面(導体成形体16の一主面が露出された面)の平滑性も良好となる。
一方、図6Aに示すように、フィルム40を鋳込み型44内に設置し、スラリー14を鋳込み型44内に鋳込んだ後に、図6Bに示すように、スラリー14を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)する。その後、フィルム40を離型することによって、図6Cに示すように、第2セラミック成形体18Bが得られる。
なお、第1セラミック成形体18Aの鋳込み型44からの離型性を良好にするために、図7A〜図8Bに示すようにしてもよい。すなわち、図7Aに示すように、フィルム40上に導体ペースト42を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフィルム40上に導体成形体16を形成する。
その後、図7Bに示すように、導体成形体16が形成されたフィルム40を鋳込み型44内に設置する際に、フィルム40と他のフィルム46とを導体成形体16が形成された面と他のフィルム46とを対向させ、さらに、フィルム40と他のフィルム46の間にスペーサ48を挟んで設置する。そして、スペーサ48にて形成される空間内にスラリー14を流し込んだ後に硬化して、第1セラミック成形体18Aを得るようにしてもよい(図7C参照)。この場合、図8Aに示すように、第1セラミック成形体18Aがフィルム40、他のフィルム46及びスペーサ48にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体18Aが鋳込み型44に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型44から離型することができる。
さらに、導体成形体16が形成されるフィルム40の表面に塗布された剥離剤の剥離力と、他のフィルム46の表面に塗布された剥離剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフィルム40(又は46)が剥がれ易くなり、フィルム40(又は46)からの離型も容易になる。図8Bに、フィルム40、他のフィルム46及びスペーサ48から第1セラミック成形体18Aを離型した状態を示す。なお、第2セラミック成形体18Bについても、図7A〜図8Bの作製方法を採用してもよい。
そして、図3に示すように、例えば3つの第1セラミック成形体18Aと、1つの第2セラミック成形体18Bを積層して、第1セラミック積層体12Aとする。このとき、第1セラミック成形体18Aの一主面(導体成形体16の一主面が露出している面)の平滑性が良好となっていることから、第1セラミック積層体12Aにおける両主面(導体成形体16の一主面が露出された面)の平坦性も良好となる。
その後、図2に示すように、第1セラミック積層体12Aを焼成することによって、導体成形体16が埋め込まれたセラミック焼成体20を有する第1分布定数構造部品10A(図1参照)が完成する。
次に、上述した第1分布定数構造部品の製造方法の実施例について図9〜図11を参照しながら説明する。
この実施例では、図9に示す鋳込み型50が使用される。
鋳込み型50は、一度に複数枚(例えば3枚)の第1セラミック成形体18Aを作製することができるようになっている。
鋳込み型50は、図9に示すように、1つの基台52と、基台52上に載置される複数枚の板部材(第1板部材54a〜第4板部材54d)と、第4板部材54d上に載置される上板56とを有する。
さらに、基台52は、その上面のうち、第1側面52aに近接する部分と第2側面52b(第1側面52aと対向する側面)に近接する部分にそれぞれ数本(例えば3本)の棒部材58が設けられている。各棒部材58は、軸方向が基台52の上面の法線方向となるように基台52の上面に設けられている。
第1板部材54a〜第4板部材54d並びに上板56は、基台52の棒部材58と対応する部分にそれぞれ位置決め用の貫通孔(以下、位置決め孔60と記す)が設けられ、第1板部材54a〜第4板部材54d並びに上板56を基台52上に順番に載置した際に、各位置決め孔60を通じて基台52の棒部材58が挿通されるようになっている。
そして、第1板部材54aと第2板部材54b間、第2板部材54bと第3板部材54c間、第3板部材54cと第4板部材54d間に、第1フィルム40aと、スペーサ48と、第2フィルム40bの積層体が挿入される。第1フィルム40aには、その上面に導体ペースト42によって複数の導体成形体16が形成されている。
これら第1フィルム40a、第2フィルム40b及びスペーサ48は、鋳込み型50内で作製された第1セラミック成形体18Aが鋳込み型50の第1板部材54a〜第4板部材54d等に不要に付着するのを防止するためのものであり、特に、第1フィルム40aは、作製される第1セラミック成形体18Aの下面の形状を決定づけ、第2フィルム40bは、作製される第1セラミック成形体18Aの上面の形状を決定づけるようになっている。スペーサ48は、開口部を有するほぼ枠状に形成され、第1セラミック成形体18Aの面積と高さを決定づける。図9の例では、第1フィルム40a上に形成された導体成形体16の群を三方から囲むようにほぼ枠状に形成されている。このスペーサ48は、例えば第1フィルム40aや第2フィルム40bと同様の材質で構成してもよい。また、これら第1フィルム40a、第2フィルム40b及びスペーサ48は、各表面に、離型剤がコートされており、作製された第1セラミック成形体18Aが容易に離れるようになっている。
これら第1フィルム40a、第2フィルム40b及びスペーサ48には、基台52の棒部材58と対応する部分にそれぞれ位置決め孔62、66及び68が設けられている。
さらに、上板56には、スラリー14を注入するためのU字状の切欠き70が形成され、第2板部材54b〜第4板部材54dにも、それぞれU字状の切欠き70に対応した部分に、スラリー14を注入するための貫通孔(以下、注入孔72と記す)が形成されている。
第1フィルム40a、第2フィルム40b及びスペーサ48にも、第2板部材54b〜第4板部材54dの注入孔72に対応した部分にそれぞれ切欠き74や注入孔72が形成されている。
従って、鋳込み型50を組み立てる場合は、例えば以下のようにして行われる。
先ず、基台52の上面に第1板部材54aを載置する。このとき、基台52の棒部材58を第1板部材54aの位置決め孔60にそれぞれ挿通させて載置する。その後、第1板部材54a上に第1フィルム40a、スペーサ48、第2フィルム40bを重ねて載置する。このとき、第1フィルム40a、スペーサ48、第2フィルム40bの各位置決め孔62、68及び66にそれぞれ基台52の棒部材58を挿通させて載置する。以下、同様に、第2板部材54bを載置し、該第2板部材54b上に、第1フィルム40a、スペーサ48、第2フィルム40bを重ねて載置し、さらに、第3板部材54cを載置し、該第3板部材54c上に、第1フィルム40a、スペーサ48、第2フィルム40bを重ねて載置し、さらに、第4板部材54dを載置し、そして、最後に上板56を載置する。これによって、鋳込み型50が完成する。
鋳込み型50内には、第1板部材54aと第2板部材54b間、第2板部材54bと第3板部材54c間、第3板部材54cと第4板部材54d間に、それぞれ第1フィルム40a、スペーサ48及び第2フィルム40bによって囲まれた中空部が形成される。
次に、鋳込み型50を使用して第1分布定数構造部品10Aを作製する方法について図10及び図11を参照しながら説明する。
先ず、図10のステップS1において、第1フィルム40a上に導体ペースト42を印刷して複数の電極パターンを形成する。
具体的には、第1フィルム40aは、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト42の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予め第1フィルム40aに温度150℃で10分以上のアニール処理を施す。
その後、鋳込み型50への積層時の位置決めを行えるように、第1フィルム40aに位置決め孔62を形成する。次いで、第1フィルム40aの上面のうち、位置決め孔62を基準した所定領域に導体ペースト42を印刷して、複数の電極パターンを形成する。この導体ペースト42は、例えばレゾール型フェノール樹脂を含有した熱硬化型の銀(Ag)ペーストである。導体ペースト42中のAg粉末は、誘電体との同時焼成の際の焼成収縮温度特性を近づけるため、粒度調整された粉末を使用している。
次に、図10のステップS2において、第1フィルム40a上に形成された電極パターンを加熱硬化して導体成形体16とする。すなわち、熱硬化型のAgペーストを硬化させるために、120℃×1時間の熱処理を施す。
その後、図10のステップS3において、鋳込み型50を組み立てて、導体成形体16が形成された第1フィルム40aを第2フィルム40b及びスペーサ48と共に鋳込み型50内に設置する。図9の鋳込み型50では、第1板部材54aと第2板部材54b間、第2板部材54bと第3板部材54c間、第3板部材54cと第4板部材54d間にそれぞれ第1フィルム40aが設置される。もちろん、スペーサ48及び第2フィルム40bも第1フィルム40a上に積層されて設置される。
一方、図10のステップS4及びステップS5において、鋳込み型50に注入されるスラリー14を調製する。
先ず、ステップS4において、セラミックスラリーを調製する。セラミックスラリーは、酸化チタン、酸化バリウム系粉末と焼結助剤としてのボロシリケートガラスとを混合したセラミック粉末を有する。すなわち、セラミックスラリーは、上述のセラミック粉末を100重量部と、脂肪族二塩基酸エステルを27重量部、トリアセチンを3重量部及びポリカルボン酸共重合体を3重量部からなる有機分散媒(ポリカルボン酸は有機分散剤として作用)との混合物からなる。
その後、ステップS5において、上述のセラミックスラリーに、ゲル化剤としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの変性物1〜10重量部とエチレングリコール0.05〜2.7重量部、反応触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールを0.03〜0.3重量部添加した後、攪拌して、スラリー18、すなわち、ゲルキャスト用スラリーを調製する。
次に、ステップS6において、鋳込み型50内にスラリー14を注入(注型)する。具体的には、鋳込み型50における上板56のU字状の切欠き70から露出する第4板部材54dの注入孔72(図9、図11参照)を介してスラリー14を注入する。この注入によって、鋳込み型50内の複数の中空部にスラリー14がそれぞれ充填される。スラリー14は、ゲルキャスト用スラリーであることから、中空部に充填された状態でそのまま硬化される。これによって、鋳込み型50内に例えば3つの第1セラミック成形体18Aが作製されることになる。
その後、ステップS7において、鋳込み型50を分解し、第1フィルム40a、スペーサ48及び第2フィルム40bから第1セラミック成形体18Aを剥がす。これによって、第1セラミック成形体18A、すなわち、導体成形体16を埋設した第1セラミック成形体18A(第1セラミックテープ18Aとも記す)が完成する(図11参照)。
次に、図10のステップS8において、複数枚の第1セラミックテープ18Aを積層して第1セラミック積層体12Aを作製する(図11参照)。このとき、第1セラミックテープ18Aの反応性官能基が完全に反応しない状態(室温において、注型後、1時間〜48時間経過後)で、5〜100kgf/cm2の圧力で加圧積層する。加圧力は、第1セラミックテープ18Aの強度と許容される積層ずれに応じて適宜選択される。
積層時の加圧力が小さい場合は、積層ずれは小さいものの、積層時の接着不良による焼成体のデラミネーションが発生し易くなる一方、積層時の加圧力が大きい場合は、上述のデラミネーションの発生を抑制できるものの、第1セラミックテープ18Aの積層圧力による変形及び破損が発生し易くなる。しかし、上述した加圧力の範囲であれば、積層ずれとデラミネーションを抑制することができ、好ましい。また、必要に応じて、上記5〜100kgf/cm2の加圧に引き続き、50〜400kgf/cm2の加圧力で一体性を高めてもよい。
また、この際、隣り合う第1セラミックテープ18A中の未反応の反応硬化物同士を反応させることにより、第1セラミックテープ18A間の接着力が得られるが、より短時間で反応硬化させるために、60℃〜80℃に加温しながら積層することが好ましい。
より低圧で十分な第1積層体60を得るためには、積層時に各テープ界面に接着層として上記反応硬化スラリーのうち、反応触媒を除いたものを塗布、印刷することが好ましい。反応触媒を添加しなくても、第1セラミックテープ18Aに残存する反応触媒の影響で、実用的な時間で反応硬化が進行する。
あるいは、第1セラミックテープ18Aを十分に硬化したものや、さらに乾燥した後に、第1セラミックテープ18Aと同一の無機粉末、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ブチルカルビトールアセテート溶剤及び/又は脂肪族二塩基酸エステル等の有機溶剤を混合した接着ペーストを第1セラミックテープ18A上に塗布又は印刷した後、積層することも好ましい。
このようにすることで、第1セラミックテープ18A相互の接着性が向上し、上述のデラミネーションを抑制することができる。なお、接着ペーストを使用する場合は、反応硬化テープ中の溶剤が残っていてもよいし、60℃〜100℃の温度で予め溶剤を乾燥させてもよい。溶剤を乾燥させた反応硬化テープは可塑性が著しく低下し、ハンドリングに困難をきたすため、乾燥後の第1セラミックテープ18Aに可塑性を付与する目的で、反応硬化前のスラリーに可塑剤(DOPあるいはDBP)を1〜10重量部添加することがさらに好ましい。
次に、図10のステップS9において、第1セラミック積層体12Aを乾燥した後、ステップS10において、第1セラミック積層体12Aを複数のチップ76に分割する(図11参照)。
その後、ステップS11において、各チップ76の表面や側面に端子電極を印刷により形成する。
そして、ステップS12において、各チップ76を焼成することで、第1分布定数構造部品10Aが完成する。
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
[導体ペースト42:第1作製方法]
導体ペースト42としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト42中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
導体ペースト42は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第1の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
図4A〜図4C(及び図7A〜図7C)の例では、導体ペースト42による導体成形体16が形成されたフィルム40(この場合、PETフィルム)を鋳込み型44に設置するが、PETフィルムを鋳込み型44に設置する際、PETフィルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
[鋳込み型44(金型):第1作製方法]
型板は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数開けた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
図7A〜図7Cの例では、鋳込み型44は、内部にスラリー14が流通する経路を有し、鋳込み硬化後のスラリー14が所望の厚みの板状となるように、型板間に、導体成形体16が形成されたフィルム40、他のフィルム46及びスペーサ48を設置して、フィルム40及び他のフィルム46を平行に対向した形態を有し、且つ、フィルム40と他のフィルム46との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
フィルム40、他のフィルム46、スペーサ48は、PETフィルム、離型剤をコートした金属板・セラミック板、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。
そして、この鋳込み型44に、反応硬化する樹脂を含有するスラリー14を流し込み、硬化させる。
[スラリー14:第1作製方法]
スラリー14は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末を無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
このスラリー14は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてもよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリー14を固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリー14を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
ゲル化剤と化学結合し、スラリー14を固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
一方、注型が容易な高流動性のスラリー14を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリー14を固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリー14を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
スラリー14に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
[ゲル化剤:第1作製方法]
スラリー14中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリー14を固化することが好ましい。
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリー14を固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
但し、反応性ゲル化剤は、スラリー14の流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリー14が固化してしまう場合がある。
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー14を固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー14を固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリー14を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
第1セラミック成形体18Aの材料及び接合面に塗布されるスラリー14には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
上述したスラリー14は、以下のように作製することができる。
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリー14とした後、ゲル化剤を添加する。
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリー14を製造する。
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリー14の粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリー14の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー14の濃度(スラリー14全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
但し、スラリー14の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
[第2作製方法]
次に、第2作製方法について図12A〜図15Cを参照しながら説明する。
先ず、図12Aに示すように、基体80の上面に導体ペースト42を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト42を加熱硬化して、基体80上に導体成形体16を形成する。なお、基体80は、上述したフィルム40と同様に、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
その後、図12Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー14を、導体成形体16を被覆するように基体80上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図13A及び図13Bに示す方法やスピンコート法等がある。図13A及び図13Bに示す方法は、一対のガイド板82a及び82bの間に基体80(導体成形体16が形成された基体80)を設置し、その後、スラリー14を、導体成形体16を被覆するように基体80上に塗布した後、ブレード状の治具84を一対のガイド板82a及び82bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分なスラリー14を取り除く方法である。一対のガイド板82a及び82bの高さを調整することによって、スラリー14の厚みを容易に調整することができる。
その後、図14Aに示すように、基体80上に塗布されたスラリー14を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図14Bに示すように、基体80を剥離、除去することによって第1セラミック成形体18Aが完成する。この場合も、第1セラミック成形体18Aの一主面(導体成形体16の一主面が露出された面)の平滑性は良好となる。
一方、図15Aに示すように、導体成形体16が形成されていない基体80上に、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー14を塗布する。塗布方法は、上述したように、ディスペンサー法や、図13A及び図13Bに示す方法やスピンコート法等を用いることができる。
その後、図15Bに示すように、基体80上に塗布されたスラリー14を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図15Cに示すように、基体80を剥離、除去することによって第2セラミック成形体18Bが完成する。
そして、図3に示すように、例えば3つの第1セラミック成形体18Aと、1つの第2セラミック成形体18Bを積層して、第1セラミック積層体12Aとする。
その後、図2に示すように、第1セラミック積層体12Aを焼成することによって、導体成形体16が埋め込まれたセラミック焼成体20を有する第1分布定数構造部品10A(図1参照)が完成する。
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
[導体ペースト42:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法における導体ペースト42は、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む。導体ペースト42に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
導体ペースト42は、上述したように、印刷後、加熱硬化されるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第2作製方法で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、温度80〜150℃、時間10分〜60分で硬化させることができる。
[スラリー14:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法におけるスラリー14に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
スラリー14に含まれる熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とを有する。
上述した塗布方法のうち、ディスペンサー法や図13A及び図13Bに示す方法にてスラリー14を基体80上に塗布する場合、スラリー14の粘度は比較的高いことが好ましい。スラリー14の粘度は第1作製方法と同様でもよいが、スラリー14が低粘度だと、塗布した後の保形性が低く、流動による厚みバラつきが発生し易い。そのため、スラリー14の粘度は200cps〜2000cpsが好ましい。
そこで、水酸基を有する高分子として分子量の大きい樹脂を用いることで、スラリー14の粘度を高くできる。一例としてブチラール樹脂は分子量が大きいため、スラリー14の粘度を高くするには好適である。もちろん、高分子の分子量でスラリー14の粘度の制御が可能となることから、塗布方法に応じて、高分子として使用する樹脂を適宜選択すればよい。
上述したブチラール樹脂は、一般に、ポリビニルアセタール樹脂であるが、その中には原料のポリビニルアルコール樹脂に由来するOH基が残るので、このOH基がゲル化剤のイソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応するものと考えられる。
特に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応に必要な量を超えてブチラール樹脂を添加すると、反応後に残ったブチラール樹脂は熱可塑性樹脂として作用するので、熱硬化性樹脂の欠点である、硬化後の接着性が悪くなるという特性を改善することができる。その結果、例えば図3に示すように、第1セラミック成形体18Aを複数積層して第1セラミック積層体12Aを構成する場合に、各第1セラミック成形体18Aの接着性が良好となることから、製造過程において第1セラミック成形体18Aが剥離するという不都合を回避でき、複数の第1セラミック成形体18Aの第1セラミック積層体12Aによる第1分布定数構造部品10Aの歩留まりを向上させることができる。
水酸基を有する高分子としては、その他、エチルセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、あるいはポリエーテル系樹脂を好ましく用いることができる。
次に、第2の実施の形態に係る分布定数構造部品(以下、第2分布定数構造部品10Bと記す)について図16〜図18を参照しながら説明する。なお、第2分布定数構造部品10Bの斜視図を図16に、縦断面図を図17に示し、その基となる第2セラミック積層体12Bの断面図を図18に示す。
この第2分布定数構造部品10Bは、上述した第1分布定数構造部品10Aとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
すなわち、図17に示すように、セラミック焼成体20の下面に、一主面が露出した導体成形体16による下部アース電極22bが埋め込まれ、セラミック焼成体20の上面にλ/4線路の導体成形体16による2つのマイクロストリップライン電極(第1マイクロストリップライン電極86a及び第2マイクロストリップライン電極86b)が埋め込まれて、方向性結合器が構成されている。
図16に示すように、セラミック焼成体20の第1側面26aには、第1マイクロストリップライン電極86aに接続される入力端子28及び出力端子30が形成され、第2側面26b(第1側面26aと対向する側面)には、第2マイクロストリップライン電極86bに接続されるアイソレーテッド(isolated)端子32とカップルド(coupled)端子34が形成され、その他の第3側面26cと第4側面26dには、下部アース電極22bが接続されるアース端子36が形成されている。
この第2分布定数構造部品10Bを作製する場合は、上述した第1作製方法及び第2作製方法を採用することができ、導体成形体16が埋め込まれた第1セラミック成形体18Aと導体成形体16が埋め込まれていない第2セラミック成形体18Bを適宜組み合わせることで、図18に示すように、少なくとも上面と下面にそれぞれ導体成形体16が埋め込まれた第2セラミック積層体12Bとし、その後、図17に示すように、第2セラミック積層体12Bを焼成することによって、導体成形体16が埋め込まれたセラミック焼成体20を有する第2分布定数構造部品10Bが完成する。
[本実施の形態の利点]
次に、スラリーに含まれる樹脂として、熱可塑性樹脂前駆体を用いた従来の電子部品の問題点と、第1分布定数構造部品10A及び第2分布定数構造部品10B(以下、まとめて本実施の形態とも記す)による問題解決について説明する。
従来においては、熱可塑性樹脂を含むスラリーの乾燥収縮時に導体成形体との界面で隙間やクラックが発生したり、グリーンシートが凹凸形状になったりする。
一方、本実施の形態では、スラリー14に熱硬化性樹脂前駆体を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂前駆体を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで前記問題は解決される。
この場合、スラリー14に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂前駆体が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。
従来においては、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストが、スラリーを塗布する際に、スラリーの溶剤に溶解して、パターン形状が崩れる。
一方、本実施の形態においては、導体ペースト42に熱硬化性樹脂前駆体を含ませているため、耐溶剤性が向上し、パターン形状の崩れは生じない。
熱硬化性樹脂前駆体は、硬化後は三次元の網目構造となり、元に戻らないため、硬化後は、溶剤への再溶解性がなくなり、一般に、熱可塑性樹脂よりも耐溶剤性が高い。
熱硬化性樹脂前駆体の中では、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が硬化前プレポリマーの分子量の制御ができ、ペースト性状のコントロールが可能なため、好適である。なお、熱可塑性樹脂をペースト性状の制御のために、熱硬化性樹脂と一緒に含めるようにしてもよい。
特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂は、硬化剤が必要なく、加熱するだけで硬化するタイプがあり、導体ペースト42の効率的な使用に適する。つまり、硬化剤の添加が必要な他の熱硬化性樹脂前駆体は、導体ペースト42を印刷する前に、硬化剤を混合する必要があるが、混合すると保存がきかない。従って、印刷後に残った導体ペースト42を回収して保存する必要のある印刷法によって導体ペースト42を印刷する場合は、硬化剤を混合する必要がない熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型フェノール樹脂が好適である。
従来において、熱可塑性樹脂をバインダとするセラミック成形体は、該セラミック成形体の密度ばらつきが発生し易く、そのために、焼成後のセラミック焼成体の寸法ばらつきが大きく、埋設された導体成形体の焼成寸法のばらつきも大きくなる。
一方、本実施の形態においては、熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用して導体成形体16を埋設した第1セラミック成形体18Aを得ることにより、焼成ばらつきを小さくすることができる。
例えば第1セラミック成形体18Aの焼成後の寸法は、第1セラミック成形体18Aのうち、導体成形体16を除く部分の生密度により主に決まる。これは第1分布定数構造部品10A及び第2分布定数構造部品10Bのセラミック焼成体20の構造は空隙が非常に少ないのに対し、第1セラミック成形体18Aの上記部分は空隙が多いため、その空隙量の多少が、焼成中の収縮量を決めるからである。
従来の熱可塑性樹脂をバインダとして含むスラリーは、溶媒を乾燥してセラミック成形体を得るが、乾燥する際の塗工比(スラリー体積と成形後の成形体体積の比)が大きく、この大きな塗工比が成形体密度のばらつきの原因となる。
しかし、本実施の形態のように、熱硬化性樹脂前駆体をスラリー14のバインダとして使用した場合は、溶剤を含んだままでも硬化するため、塗工比を小さくすることができ、生密度のばらつきを小さくすることができる。その結果、焼成後の寸法ばらつきが小さくなり、埋設した導体成形体16の寸法ばらつきも小さくすることができる。
このように、第1分布定数構造部品10A及び第2分布定数構造部品10Bにおいては、先ず、プリント配線基板上にλ/4線路を形成することによる問題を解消することができる。すなわち、λ/4線路の線路長を短くすることができ、λ/4線路を形成するための占有面積を広くとる必要がなく、他の伝送路から漏洩する電磁波の影響を受けにくくすることができる。さらに、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー14を、導体成形体16を被覆するように供給した後に硬化して得られる第1セラミック成形体18Aを積層して、セラミック積層体とし、このセラミック積層体を焼成するようにして得るようにしているため、導体成形体16の剥がれや崩れがなく、導体成形体16の厚みを厚くでき、抵抗値の低減化、導体損失の低減化、高周波特性の向上を容易に図ることができる。
第1分布定数構造部品10Aにおいては、セラミック焼成体20の内部にλ/4線路を形成し、セラミック焼成体20の上部及び下部に上部アース電極22a及び下部アース電極22bを形成することで、λ/4線路が、ストリップライン電極を構成することとなる。このストリップライン電極にて分布定数回路としての方向性結合器やドハティ増幅器用合成器、RFチョーク、インピーダンス整合回路等を構成することができる。
一方、第2分布定数構造部品10Bにおいては、セラミック焼成体20の一主面に、導体成形体16の一主面を露出させた形態とすることで、λ/4線路が、マイクロストリップライン電極を構成することとなる。このマイクロストリップライン電極にて分布定数回路としての方向性結合器やドハティ増幅器用合成器、RFチョーク、インピーダンス整合回路等を構成することができる。
次に、第1分布定数構造部品10Aや第2分布定数構造部品10Bを作製するためのスラリー14の他の好ましい形態について説明する。
[スラリー14の第1の他の好ましい形態]
分散媒として、2以上のエステル基を有する多塩基酸エステル類を用いる。また、熱硬化性樹脂前駆体として、イソシアネート基もしくはイソチアシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子もしくは水酸基を有する分子を用いる。さらに、少量の水を添加してもよい。
イソシアネート基は、水と反応し、カルバミン酸を経てアミンと二酸化炭素となり、アミンは、別のイソシアネート基とさらに反応してウレア基となり、さらに、別のイソシアネート基とウレア基とが反応してビュウレットとして架橋する。水を添加する場合は、二酸化炭素(ガス)が発生するため、そのままスラリー14を硬化させるとガスが気孔として残るので、スラリー14を混合した後に、真空脱泡等により反応ガスをスラリー14から脱ガスすることが好ましい。
[スラリー14の第2の他の好ましい形態]
分散媒として、ゲル化剤と反応性の低い分散媒もしくは、ゲル化剤と反応しない分散媒を用いる。熱硬化性樹脂前駆体として、イソシアネート基もしくはイソチアシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子もしくは水酸基を有する分子を用いる。さらに、少量の水を添加してもよい。
[スラリー14の第3の他の好ましい形態]
分散媒として、ゲル化剤と反応性の低い分散媒もしくは、ゲル化剤と反応しない分散媒を用いる。熱硬化性樹脂前駆体として、イソシアネート基もしくはイソチアシアネート基を有するゲル化剤と、水を用いる。
[その他]
上述したスラリー14の各種形態(第1〜第3の他の好ましい形態を含む)において、イソシアネート基もしくはイソチアシアネート基と反応する水酸基の当量比を、イソシアネート基もしくはイソチアシアネート基が過剰になるような調合組成にしてもよい。
なお、本発明に係る分布定数構造部品及びその製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
10A…第1分布定数構造部品 10B…第2分布定数構造部品
12A…第1セラミック積層体 12B…第2セラミック積層体
14…スラリー 16…導体成形体
18A…第1セラミック成形体 18B…第2セラミック成形体
20…セラミック焼成体 22a…上部アース電極
22b…下部アース電極 24a…第1ストリップライン電極
24b…第2ストリップライン電極 40…フィルム
42…導体ペースト 44…鋳込み型
46…他のフィルム 48…スペーサ

Claims (15)

  1. 熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を、焼成することによって得られたセラミック焼成体を有し、該セラミック焼成体に前記導体成形体によるλ/4線路が形成された分布定数構造部品。
  2. 請求項1記載の分布定数構造部品において、
    前記λ/4線路は、ストリップラインであることを特徴とする分布定数構造部品。
  3. 請求項1記載の分布定数構造部品において、
    前記λ/4線路は、マイクロストリップラインであることを特徴とする分布定数構造部品。
  4. 導体成形体を形成する導体形成工程と、
    熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
    前記スラリーを硬化して前記導体成形体を有するセラミック成形体を作製する成形体作製工程と、
    前記セラミック成形体を焼成して前記導体成形体が埋設されたセラミック焼成体を作製する焼成体作製工程とを有し、
    前記セラミック焼成体に前記導体成形体によるλ/4線路が形成された分布定数構造部品を製造することを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  5. 請求項4記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記導体形成工程は、基体上に前記導体成形体を形成し、
    前記スラリー供給工程は、前記スラリーを、前記導体成形体を被覆するように前記基体上に塗布することを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  6. 請求項4又は5記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とからなることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  7. 請求項6記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記水酸基を有する高分子は、ブチラール樹脂、エチルセルロース系高分子、ポリエチレングリコール系高分子又はポリエーテル系高分子であることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  8. 請求項6又は7記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記高分子は、前記ゲル化剤との反応に必要な量よりも多く添加されていることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  9. 請求項4記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記導体形成工程は、フィルム上に導体成形体を形成し、
    前記スラリー供給工程は、前記導体成形体が形成された前記フィルムを鋳込み型内に設置し、前記スラリーを前記鋳込み型内に鋳込むことを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  10. 請求項9記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記スラリー供給工程は、前記フィルムを前記鋳込み型内に設置する際に、
    前記フィルムと他のフィルムとを前記導体成形体が形成された面と前記他のフィルムとを対向させ、さらに、前記フィルムと前記他のフィルムの間にスペーサを挟んで設置し、
    前記スペーサにて形成される空間内に前記スラリーを流し込むことを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  11. 請求項10記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記フィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力と、前記他のフィルムの表面に塗布された剥離剤の剥離力とが異なることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  12. 請求項4〜11のいずれか1項に記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記導体形成工程は、熱硬化性樹脂前駆体と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む導体ペーストをパターン形成し、その後、硬化することによって前記導体成形体を得ることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  13. 請求項12記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体がフェノール樹脂であることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  14. 請求項12記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記導体ペーストに含まれる前記熱硬化性樹脂前駆体が自己反応性のレゾール樹脂であることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
  15. 請求項4記載の分布定数構造部品の製造方法において、
    前記スラリーに使用される前記熱硬化性樹脂前駆体がポリウレタン樹脂前駆体であることを特徴とする分布定数構造部品の製造方法。
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