以下、本発明の露光装置及びデバイスの製造方法の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの構成を示す模式図である。
露光装置EXは、レチクルRとウエハWとを一次元方向に同期移動しつつ、レチクルRに形成されたパターンを投影光学系PLを介してウエハW上の各ショット領域に転写するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわち、いわゆるスキャニング・ステッパである。
露光装置EXは、露光装置本体10と、クリーンルーム内の床面F上に設置されると共に露光装置本体10を収容する本体チャンバ40と、本体チャンバ40に隣接して配置された機械室70とを備える。
露光装置本体10は、露光光ELによりレチクルRを照明する照明光学系12、レチクルRを保持して移動可能なレチクルステージRST、レチクルRから射出される露光光ELをウエハW上に投射する投影光学系PL、ウエハWを保持して移動可能なウエハステージWST1及びWST2と、投影光学系PL等を保持すると共にウエハステージWST1及びWST2が搭載される本体コラム30、露光装置EXを統括的に制御する不図示の制御装置等を備える。
本体コラム30は、本体チャンバ40の底面上に設置されたベースプレート38の上方に、複数の防振台32を介して支持されている。本体コラム30は、防振台32によって支持されたメインコラム34と、このメインコラム34上部に立設されたサポートコラム36とを有している。メインコラム34の天井部となるメインフレームには、投影光学系PLが支持されている。サポートコラム36には、レチクルステージRST、照明光学系12が支持されている。
本体チャンバ40は、環境条件(清浄度、温度、圧力等)がほぼ一定に維持された露光室42と、この露光室42の側部に配置された不図示のレチクルローダ室及びウエハローダ室とを有するように形成されている。露光室42は、その内部に露光装置本体10が配置される。
露光室42の上部側面には、本体チャンバ40内に温調した空気(気体)Aを供給する機械室70に接続される噴出口50が設けられる。機械室70から送気される温調された空気Aは、噴出口50からサイドフローにて露光室42の上部空間44に送り込まれるようになっている。
露光室42の底部には、リターン部52が設けられている。リターン部52の下方には、リターンダクト54の一端が接続されている。リターンダクト54の他端は、機械室70に接続されている。
メインコラム34の下端側面及び底面の複数箇所には、リターンダクト56が接続されている。リターンダクト56の他端は、機械室70に接続されている。図示は省略されているが、リターンダクト56は、複数の分岐路を備えており、それぞれの分岐路がメインコラム34の下端側面及び底面の複数箇所に接続された構成になっている。このため、露光室42内の空気Aは、リターン部52等からリターンダクト54、56を介して機械室70に戻されるようになっている。
露光室42の側面には、給気管路60が接続されている。給気管路60は、機械室70に接続されており、露光室42内に延設されている。給気管路60の内部には、ヒータ62、送風機64、ケミカルフィルタCF、フィルタボックスAFが順次配置されている。給気管路60は、2つの分岐路66a,66bに分岐されている。
分岐路66a、66bは、共にメインコラム34のステージ空間46に接続されている。このうち分岐路66aは、温度安定化流路装置80aを介してステージ空間46の+X側に接続されている。分岐路66bは、温度安定化流路装置80bを介してステージ空間46の−X側に接続されている。分岐路66a及び分岐路66bの端部は、ステージ空間46にダウンフローを供給する供給口81a、81bとなっている。
温度安定化流路装置80a,80bは、給気管路60から送気された空気Aとの間で熱交換を行うことにより、更に空気Aを高精度に温調する装置である。具体的には、特表2002−101804号公報に開示された温度安定化流路装置を用いられる。温度安定化流路装置80a,80bのそれぞれには、供給管92及び排出管94を介して温調装置90が接続されている。このように、温調装置90、供給管92、温度安定化流路装置80a,80b、排出管94によって、温調用媒体Cの循環経路が構成されている。
温調用媒体Cとしては、例えばフロリナート(登録商標)が用いられ、温調装置90により略一定温度に温度調整される。これにより、温度安定化流路装置80a,80bは、その温度が一定に維持される。温調用媒体Cとしては他に、ハイドロフルオロエーテル(HFE)や水を用いることもできる。
照明光学系12は、レチクルステージRSTに支持されているレチクルRを露光光ELで照明する光学系である。照明光学系12は、不図示の露光用光源から射出された露光光ELの照度を均一化するオプティカルインテグレータ、コンデンサレンズ、リレーレンズ系、レチクルR上の露光光ELによる照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等(いずれも不図示)を有している。
このような構成を有する照明光学系12は、レチクルR上の所定の照明領域を、より均一な照度分布の露光光ELで照明可能となっている。露光用光源から射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)等の紫外光が用いられる。
レチクルステージRSTは、レチクルRを支持しつつ、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内の2次元移動及び微小回転を行うステージである。レチクルRは、レチクルステージRSTに形成された矩形開口の周囲に設けられたレチクル吸着機構(不図示)により真空吸着等されるようになっている。
レチクルステージRST上のレチクルRの2次元方向の位置及び回転角は、不図示のレーザ干渉計によりリアルタイムで測定され、その測定結果は制御装置に出力される。制御装置がレーザ干渉計の測定結果に基づいてリニアモータ等を駆動することで、レチクルステージRSTに支持されているレチクルRの位置決めが行われるようになっている。レチクルステージRSTは、サポートコラム36により支持されている。
投影光学系PLは、レチクルRに形成されたパターンを所定の投影倍率でウエハWに投影露光する光学系である。投影光学系PLは、複数の光学素子によって構成されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。投影光学系PLは、メインコラム34の天板に設けられた穴部34aに、センサコラム35を介して挿入、支持される。なお、センサコラム35には、不図示のFAセンサ等が設置されている。
ウエハステージWSTは、ウエハWを保持して移動可能に設けられたステージである。ウエハステージWSTは、ステージ空間46内に例えば2台(WST1、WST2)配置されている。ウエハステージWST1及びWST2は、それぞれベースプレートBPの上面の上方に数μm程度のクリアランスを介してエアスライダによって浮上支持された構成になっている。
ステージ空間46には、駆動装置15、検出装置28及びチューブキャリアTCが設けられている。駆動装置15は、ウエハステージWST1及びWST2をXY面内で2次元方向に駆動する。駆動装置15は、ウエハステージWST1及びWST2をそれぞれ独立して駆動可能に形成されている。
検出装置28は、ウエハステージWST1、WST2のXY平面における位置を検出する。検出装置28は、例えばウエハステージWST1及びWST2のそれぞれに設けられた反射鏡29に対して干渉光を照射し、反射光に基づいてウエハステージWST1及びWST2のXY平面における位置を検出するようになっている。
チューブキャリアTCは、ウエハステージWST1及びWST2に接続される配管や配線などを保持する部分である。
図2は、ステージ空間46内の構成を示す平面図である。
同図に示すように、ベースプレートBPの−Y側端部は、ウエハWのローディングポジションである。露光処理を終えたウエハWをアンロードする場合や、未露光処理のウエハWをロードする場合には、ウエハステージWST1,WST2の何れか一方がこの位置に配置されるようになっている。
図2においてウエハステージWST1が配置されている位置は、露光ポジションである。露光処理を行うウエハWを保持しているウエハステージWST1,WST2の何れか一方が露光時にこの位置に配置されるようになっている。上述の通り、ウエハステージWST1,WST2は、個別にXY面内の任意の方向に移動することができるため、ローディングポジションと露光ポジションとを交互に入れ替わることができるようになっている。ローディングポジションにおいてウエハのフォーカシング情報を検出しておくように構成しても良い。
チューブキャリアTCは、ウエハステージWST1に対応して設けられるチューブキャリアTC1及びウエハステージWST2に対応して設けられるチューブキャリアTC2を有している。チューブキャリアTC1及びTC2は、それぞれステージ接続部71、X方向モータ72及びY方向モータ73を有している。
ステージ接続部71は、ウエハステージWST1及びWST2に近接した位置に設けられており、ウエハステージWST1及びWST2に接続させるチューブなどの配管や、配線などを保持している。ステージ接続部71は、X方向モータ72に移動可能に指示されている。X方向モータ72は、ステージ接続部71をX方向に移動させるアクチュエータである。X方向モータ72としては、例えばリニアモータ機構などが用いられている。
Y方向モータ73は、ベースプレートBPの+X側及び−X側にそれぞれ設けられている。Y方向モータ73は、X方向モータ72に接続されている。Y方向モータ73は、当該X方向モータ72ごとステージ接続部71をY方向に移動させるアクチュエータである。Y方向モータ73としては、例えばリニアモータ機構などが用いられている。
各ウエハステージWST1及びWST2には、それぞれ2つずつ検出装置28が設けられている。ウエハステージWST1に設けられる検出装置28は、ウエハステージWST1のX方向用の検出装置28Axと、ウエハステージWST1のY方向用の検出装置28Ayとを有している。同様に、ウエハステージWST2に設けられる検出装置28は、それぞれウエハステージWST2のX方向用の検出装置28Bxと、ウエハステージWST2のY方向用の検出装置28Byとを有している。
ウエハステージWST1及びウエハステージWST2には、上記の検出装置28Ax、28Ay、28Bx、28Byからの光Lに対応して、反射鏡29Ax、29Ay、29Bx、29Byが設けられている。
検出装置28Axからの光Lは、チューブキャリアTC1のステージ接続部71の+Z側を進行する。検出装置28Ayからの光Lは、チューブキャリアTC1のX方向モータ72の+Z側を進行する。検出装置28Bxからの光Lは、チューブキャリアTC2のステージ接続部71の+Z側を進行する。検出装置28Byからの光Lは、チューブキャリアTC2のX方向モータ72の+Z側を進行する。
ステージ空間46内には、排気装置121及び排気装置122が設けられている。
排気装置121は、Z方向視でベースプレートBPから外れた位置、例えばベースプレートBPの+X側に配置されている。排気装置121は、ベースプレートBPに沿ってY方向に長手になっている。排気装置121は、リターンダクト58を介してリターンダクト56に接続されている(図1参照)。
排気装置121は、ベースプレートBPに対向する面(+X側の面)に排気口121aを有している。排気口121aは、Z方向の位置がベースプレートBPの面上に重なるように形成されている。排気口121aは、例えばベースプレートBPの−X側の辺に沿って形成されている。排気口121aは、ベースプレートBP上におけるウエハステージWST1、WST2の移動領域をY方向にカバーする寸法に形成されている。
排気装置122は、Z方向視でベースプレートBPから外れた位置、例えばベースプレートBPの+X側に配置されている。排気装置122は、リターンダクト58を介してリターンダクト56に接続されている(図1参照)。排気装置122は、ベースプレートBPを基準として、排気装置121と対称となるように形成されている。したがって、排気装置122は、ベースプレートBPに対向する面(−X側の面)に排気口122aを有している。
本実施形態では、排気装置121がZ方向視でベースプレートBPとY方向モータ73(図中左側)とで挟まれた位置に配置されており、排気装置122がZ方向視でベースプレートBPとY方向モータ73(図中右側)とで挟まれた位置に配置された構成となっている。この配置により、各排気口121a、122aはベースプレートBPに近接した位置に配置されることになる。
図3は、駆動装置15の構成を説明するための図である。
図3に示すように、駆動装置15は、固定部16及び移動部17を有する平面モータ装置である。固定部16は、ベースプレートBPの上部に埋め込まれている。固定部16は、コア部材22及びコイル21を有している。コア部材22は、XY面内において所定のピッチで複数配列されている。このコア部材22は、例えばSS400相当の低炭素鋼、ステンレス等の磁性体により形成されており、頭部22aと支柱部22bとからなる。頭部22aはXY面内における断面形状が矩形形状であり、支柱部22bのXY面内における断面形状は円形形状である。頭部22aと支柱部22bは一体化されており、支柱部22bの周囲には上記コイル21が巻回されている。
図4は、コア部材22の拡大図である。図4に示す通り、コイル21は断熱材Tiを介してコア部材22の支柱部22bの周囲に巻回されている。これは、コイル21に電流を流したときに発生する熱がコア部材22に伝わることにより生ずるウエハステージWST1、WST2の位置決め誤差を防止するためである。尚、断熱材Tiとしては、断熱性及び耐熱性に優れた樹脂を用いることができる。
コア部材22は、頭部22aの先端部が略一面に含まれるように支持部材14上に配列されている。このとき、コア部材22は、支柱部22bが支持部材14に磁気的に接続される。コア部材22の頭部22aの間には、非磁性体からなるセパレータ23が設けられている。このセパレータ23は、例えばSUS、セラミックスから形成されており、隣接するコア部材22の間で磁気回路が形成されないようにするためのものである。
セパレータ23の上部の高さ位置は、コア部材22の頭部22aの先端部の高さ位置と同一になるように設定されているため、固定部16の上面(移動面)はほぼ平坦面になる。また、セパレータ23はコア部材22の頭部22aの間に設けられており、ガイド部材Gとコア部材22の頭部22a及びセパレータ23によって上下方向が挟まれた空間が形成されることになる。この空間に冷媒を導入することで、コイル21を冷却することが可能になる。
固定部16に設けられるコイル21には、U相、V相、及びW相からなる三相交流が供給される。XY面内で配列されたコイル21の各々に各相の電流を所定の順序で所定のタイミングで印加することにより、ウエハステージWST1、WST2を所望の方向に所望の速度で移動させることができる。
図5は、図4中のB−B線に沿った断面矢視図である。図5に示す通り、断面形状が矩形形状であるコア部材22の頭部22aがXY面内でマトリックス状に配列されており、頭部22aの間にセパレータ23が設けられている。図5においては、各コア部材22に巻回されたコイル21に印加される三相交流の各相を、コア部材22の頭部22aに対応付けて図示している。図5を参照すると、U相、V相、及びW相の各相がXY面内で規則的に配列されていることが分かる。
移動部17は、ウエハステージWST1、WST2の底部に固定され、固定部16上のガイド部材Gの上面(ガイド面)Gaに沿って移動する。移動部17は、支持部材25、永久磁石26及びエアパッド27を含んで構成される。支持部材25の底面には永久磁石26とエアパッド27とが規則的に配列されている。永久磁石26としては、ネオジウム・鉄・コバルト磁石、アルミニウム・ニッケル・コバルト(アルニコ)磁石、フェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石、又はネオジム・鉄・ボロン磁石等の希土類磁石を用いることが可能である。
図6は、図3中のC−C線に沿った断面矢視図である。図6に示す通り、永久磁石26は隣接するものが互いに異なる極となるようXY面内に所定の間隔で配列されている。かかる配列によって、X方向及びY方向の両方向に交番磁界が形成される。永久磁石26間には真空予圧型のエアパッド27が設けられている。エアパッド27は、ガイド部材Gに向かってエア(空気)を吹き付けることにより、固定部16(ガイド部材G)に対して移動部17を、例えば数ミクロン程度のクリアランスを介して浮上支持(非接触支持)させる。
図2に戻って、チューブキャリアTC1、TC2には、カウル機構100が設けられている。
チューブキャリアTC1に設けられるカウル機構100は、X方向モータ72の+Y側の外面に取り付けられている。チューブキャリアTC2に設けられるカウル機構100は、X方向モータ72の−Y側の外面に取り付けられている。各カウル機構100は、検出装置28Ay、28Byからの光Lの光路にZ方向視で重なる位置に配置されている。各カウル機構100は、チューブキャリアTC1及びTC2のX方向モータ72の移動に伴って一体的に移動するようになっている。
図7は、カウル機構100の構成を示す断面図である。
同図に示すように、カウル機構100は、エア吸入口101、エア流通路102及びエア放出口103(103A、103B)を有している。カウル機構100は、ウエハステージWST1、WST2の移動方向上の空気を移動させる気体移動装置である。
カウル機構100は、例えば長尺状に形成された箱形の形状を有している。カウル機構100は、長手方向の中央部に当該長手方向の直交方向に突出した部分を有している。この突出部分の先端には開口部が形成されており、当該開口部がエア吸入口101となっている。カウル機構100は、長手方向の端部にもそれぞれ開口部が形成されており、一方の開口部がエア放出口103A、他方の開口部がエア放出口103Bとなっている。
エア吸入口101とエア放出口103A及び103Bとの間は互いに連通されている。この連通部分がエア流通路102となっている。エア吸入口101の開口面積S1は、エア放出口103Aの開口面積S2及びエア放出口103Bの開口面積S3よりも大きくなるように形成されている。
図2に示すように、チューブキャリアTC1に設けられるカウル機構100は、エア吸入口101が+Y方向を向くように配置されており、エア放出口103が+X方向及び−X方向を向くように配置されている。チューブキャリアTC2に設けられるカウル機構100は、エア吸入口101が−Y方向を向くように配置されており、エア放出口103が+X方向及び−X方向を向くように配置されている。
図8は、ステージ空間46内のカウル機構100のZ方向上の位置を示す図である。
図8に示すように、カウル機構100は、ウエハステージWST1、WST2の底部に配置されるチューブキャリアTC1、TC2に固定されている。このため、カウル機構100のZ方向上の位置は、ウエハステージWST1、WST2の底部とほぼ等しい位置に配置されていることになる。
ウエハステージWST1、WST2の上部には反射鏡29が設けられている。この反射鏡29には、検出装置28からの光Lが入射されるようになっている。光Lは、反射鏡29の高さ位置と等しい位置から入射されるようになっている。このように、光Lの光路のZ方向上の位置と反射鏡29のZ方向上の位置とは等しくなっている。したがって、カウル機構100は、当該光Lの光路から−Z方向に外れた位置に配置されていることになる。一方、光Lの光路に対して+Z方向上には、ダウンフローの供給口81a及び81bが配置されている。したがって、カウル機構100は、当該供給口81a及び81bとの間でZ軸方向に光Lの光路を挟む位置に配置されていることになる。
次に、露光装置EXの作用、特に空調方法について説明する。
まず、制御装置により機械室70が作動され、温調された空気Aが、露光室42に向けて送気される。これにより、露光室42内では、噴出口50から露光室42の上部空間44に、温調された空気Aが均一なサイドフローにて送り込まれる。
また、分岐路66a,66bから供給口81a及び81bを介して、メインコラム34のステージ空間46に、温調された空気Aが送り込まれる。ステージ空間46に送り込まれた空気Aは、当該ステージ空間46内において略一定の圧力状態となり、よどみや揺らぎを発生させることなく、略下方に向けて円滑に流れる。これにより、レーザ干渉計28等の測定誤差の発生が防止される。
空気Aにより、ステージ空間46に配置されたウエハステージWST1、WST2が略均一に温調される。このため、ウエハステージWST1、WST2が高精度に機能(駆動)することになる。空気Aは、エアパッド27に設けられた排気口105や、ステージ空間46の底部に設けられた排気口から適宜排気される。このため、空気Aは、ステージ空間46内で流れが乱れてよどむことなく排気され、ステージ空間46に安定した空気Aの流れが発生する。排気された空気Aは、リターンダクト58、56に排気され、機械室70に戻される。一方、露光室42に送り込まれた空気Aは、リターンダクト54に排気され、機械室70に戻される。このようにして、露光室42及びメインコラム34のステージ空間46が空調される。
このような温調を行った状態で、露光装置本体10による露光処理が行われる。具体的には、不図示の露光用光源から射出された露光光ELが、各種レンズやミラー等からなる照明光学系12において、必要な大きさ及び照度均一性に整形された後にパターンが形成されたレチクルRを照明し、このレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLを介して、ウエハステージWST1、WST2上に保持されたウエハW上の各ショット領域に、縮小転写される。
検出装置28から光LをウエハステージWST1、WST2に向けて射出することで位置を検出する機構を有する露光装置EXにおいては、ウエハステージWST1、WST2の移動により、ダウンフローにより供給される空気Aが巻き上げられ、検出装置28から射出される光Lの光路上の空気に揺らぎが生じる原因となる場合もある。空気揺らぎが発生すると、ウエハステージWST1、WST2の位置決め精度が低下する虞があり、露光不良の原因となる虞がある。特に検出装置28側(光源側)にウエハステージWST1、WST2が移動する場合、空気揺らぎの影響はより大きくなる。
これに対して、本実施形態では、例えばウエハステージWST1に対して検出装置28Ay側にはカウル機構100が設けられている。このウエハステージWST1が+Y方向に移動する場合には、図9に示すように、ウエハステージWST1の移動による圧力を利用して移動方向上の空気をエア吸入口101からカウル機構100の内部に吸入することができる。吸入した空気は、エア吸入口101からの圧力によりカウル機構100のエア流通路102を流通してエア放出口103A、103Bから放出されることになる。エア放出口103A、103Bは、それぞれ+X方向及び−X方向に向けられているため、ウエハステージWST1の+Y方向上の空気がX方向側へ移動されることになる。図9では、ウエハステージWST1を例に挙げて説明したが、ウエハステージWST2についても同様の説明が可能である。
このようにウエハステージWST1、WST2が+Y方向に移動する際の圧力を利用してエア吸入口101に空気を吸入させ、エア放出口103から空気を放出させることで、ウエハステージWST1の移動方向上の空気を光Lの光路から外れた方向へ移動させることができる。これにより、ステージ空間46において光Lの光路上での空気の巻き上げを抑えることができるので、検出装置28による位置検出精度が低下するのを防ぐことができ、露光不良の発生を防ぐことができる。
ウエハステージWST1、WST2の移動により、ダウンフローによって供給される空気Aが巻き上げられると、ベースプレートBP上の空気の温度にも悪影響を及ぼしてしまう。ベースプレートBP上の空気の温度が変化すると、例えばベースプレートBPの温度や当該ベースプレートBPに沿って移動するウエハステージWST1、WST2の温度が変化してしまう虞があり、露光不良の原因につながる虞がある。
これに対して、本実施形態では、排気装置121及び122によってベースプレートBP上に気流を形成させることができるので、ベースプレートBP上の空気の揺らぎを抑えることができる。これにより、ベースプレートBPの温度を安定化させることができ、露光不良の発生を防ぐことができる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、カウル機構100の構成として、上記実施形態の構成とは異なる構成としても構わない。例えば図10に示すように、エア吸入口101に整流板104を配置する構成としても構わない。整流板104を配置することにより、カウル機構100内の空気の流通経路を区切ることができる。
例えば図10に示す構成においては、エア吸入口101が2つに区切られることになる(エア吸入口101A、101B)。このため、エア吸入口101Aからエア流通路102Aを介してエア放出口103Aに至る経路と、エア吸入口101Bからエア流通路102を介してエア放出部103Bに至る経路とが分割されることになる。このような構成により、エア流通路102内における空気の逆流あるいは対流を防ぐことができる。
また、上記実施形態では、カウル機構100をウエハステージWST1、WST2のY方向上に配置する構成としたが、これに限られることは無く、例えばウエハステージWST1、WST2のX方向上にカウル機構100を配置する構成としても構わない。この場合、排気装置121、122についても、カウル機構100のエア放出口103の向きに対応させるように、例えばベースプレートBPの+Y側及び−Y側に配置させる構成としても構わない。
また、上記実施形態では、カウル機構100がチューブキャリアTC1、TC2に取り付けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、カウル機構100をウエハステージWST1、WST2に直接取り付ける構成としても構わない。また、カウル機構100をウエハステージWST1、WST2の内部に埋め込んだ構成としても構わない。この場合、ウエハステージWST1、WST2にエア吸入口、エア流通路、エア放出部を直接形成する構成であっても構わない。
また、上記実施形態の基板としては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
また、本発明が適用される露光装置の光源には、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)等のみならず、g線(436nm)及びi線(365nm)を用いることができる。さらに、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでもよい。また、上記実施形態では、屈折型の投影光学系を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、反射屈折型や屈折型の光学系でもよい。
また、本発明の露光装置は、半導体素子の製造に用いられてデバイスパターンを半導体基板上へ転写する露光装置、液晶表示素子の製造に用いられて回路パターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウエハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等にも適用することができる。
また、本発明は、投影光学系と基板との間に局所的に液体を満たし、該液体を介して基板を露光する、所謂液浸露光装置に適用したが、液浸露光装置については、国際公開第99/49504号パンフレットに開示されている。さらに、本発明は、特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、ステージユニットが複数(2基)設けられる構成を例示したが、これに限定されるものではなく、単数で設けられる構成であってもよい。
また、ステージユニットが複数設けられるのではなく、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載して、露光に関する情報を計測する計測ステージとをそれぞれ備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
露光装置10としては、マスクとしてのレチクルRと、基板としてのウエハWとを同期移動してマスクのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクと基板とを静止した状態でマスクのパターンを一括露光し、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板上に転写した後、第2パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。このように投影光学系PLを用いない場合であっても、露光光はレンズ等の光学部材を介して基板に照射され、そのような光学部材と基板との間の所定空間に液浸空間が形成される。
露光装置10の種類としては、基板に半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスクとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いてもよい。
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板上に形成することによって、基板上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
また、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号)に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
次に、本発明の実施形態による露光装置及び露光方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図11は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
まず、ステップS10(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS11(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS12(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップS13(ウエハ処理ステップ)において、ステップS10〜ステップS12で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS14(デバイス組立ステップ)において、ステップS13で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップS14には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS15(検査ステップ)において、ステップS14で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
図12は、半導体デバイスの場合におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS21(酸化ステップ)おいては、ウエハの表面を酸化させる。ステップS22(CVDステップ)においては、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS23(電極形成ステップ)においては、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS24(イオン打込みステップ)においては、ウエハにイオンを打ち込む。以上のステップS21〜ステップS24のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS25(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS26(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップS27(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップS28(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS29(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
また、半導体素子等のマイクロデバイスだけではなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置等で使用されるレチクル又はマスクの製造にも本発明を適用できる。