JP2010236935A - 回転角度検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】主動歯車の回転角度を理論上検出可能とされる全範囲において正確に検出することができる回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】マイクロコンピュータは、周期数iを求めるに際して、関係式(e)が成立する場合には式(c)に基づき周期数iを算出する。関係式(f)が成立する場合には式(c)の「θab−θa」の値に最大制限値θabLimitを加算して、また関係式(g)が成立する場合には式(c)の「θab−θa」の値に最大制限値θabLimitを減算して周期数iを算出する。この算出される周期数iを式(d)に適用して絶対回転角度θrを算出する。
i=(θab−θa)/(mΩ/z)・・・(c)
θr=m(α+iΩ)/z・・・(d)
0≦θab−θa≦θabLimit・・・(e)
θab−θa<0・・・(f)
θab−θa>θabLimit・・・(g)
【選択図】図11

Description

本発明は、回転体の回転角度を絶対値で検出する回転角度検出装置に関する。
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。このため、例えば車両のステアリングコラムの内部には、ステアリングの操舵角を検出するための回転角度検出装置が設けられている。この種の回転角度検出装置としては、例えば特許文献1に示されるように、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車に歯数の異なる第1及び第2の従動歯車を噛合させて、これら従動歯車の回転角度に基づいて主動歯車、ひいてはステアリングシャフトの回転角度を求める構成がよく知られている。
この文献1の構成では、第1及び第2の従動歯車には磁石が一体回転可能に設けられるとともに、これら磁石に対応して磁気センサ(MRセンサ)が設けられている。第1及び第2の従動歯車の回転に伴い磁石から発せられる磁束の方向が変化するところ、当該磁気センサはこの磁束方向の変化に応じて正弦信号及び余弦信号を出力する。回転角度検出装置の制御装置は、これら正弦信号及び余弦信号に基づく逆正接値を第1及び第2の従動歯車の回転角度として算出し、これら回転角度に基づき主動歯車の回転角度を絶対値で算出する。
詳述すると、この文献1の装置では、次のような考えに基づき主動歯車の絶対回転角度を算出している。
まず、主動歯車の回転角度θは、当該主動歯車の歯数z及び第1の従動歯車の歯数mの比から、次式(A)で表される。「α′」は、主動歯車の回転角度θに対する第1の従動歯車の実際の回転角度である。
θ=mα′/z・・・(A)
また、この第1の従動歯車の回転角度α′は次式(B)で表される。ただし、「α」は、磁気センサ出力の1周期中における第1の従動歯車の回転角度、「i」は、磁気センサからの出力が何周期目のものなのかを示す周期数、「Ω」は、磁気センサの検出範囲(1周期)である。
α′=α+iΩ・・・(B)
そして、主動歯車の絶対回転角度θrは、前記式(A)の「α′」に前記式(B)を代入することにより、次式(C)で表される。
θr=m(α+iΩ)/z・・・(C)
特許文献1の装置は、この式(C)に基づき主動歯車の回転角度を絶対値で求める。すなわち、磁気センサ出力の周期数iが分かれば主動歯車の絶対回転角度θrを算出可能であることから、特許文献1のものでは、絶対回転角度θrを算出に際してはまず、この周期数iを算出する。この周期数iの算出手順は、以下の通りである。
当該装置はまず、磁気センサ出力の1周期中における第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βの差の関数として表される主動歯車の第1の仮絶対回転角度θabを次式(D)に基づき算出する。
θab=Δab・mn/z(n−m)・・・(D)
ただし、Δabの値は次のようにして算出される値が適用される。
・Δab=α−β (α−β≧0)
・Δab=α−β+Ω (α−β<0)
また、第1及び第2の従動歯車のうち歯数の少ない方の従動歯車、ここでは第1の従動歯車の回転角度αに対する主動歯車の第2の仮絶対回転角度θaを次式(E)に基づき算出する。
θa=mα/z・・・(E)
次に、前記式(D),(E)により算出される第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの値を使用して、第1の従動歯車に対応する磁気センサ出力の周期数iを次式(F)に基づき算出する。
i=(θab−θa)/(mΩ/z)・・・(F)
そして前記式(F)により算出される周期数iを使用して、主動歯車の絶対回転角度θrを前記式(C)に基づき算出する。そしてこうした絶対角検出方式の回転角度検出装置では、主動歯車の回転方向において設定される基準位置(絶対角0°)を原点とする主動歯車の回転態様を、回転検出対象であるステアリングシャフトの回転態様として、すなわち中立位置(ステアリング操作角度=0°)を基準として正逆両方向に複数回転されるステアリングホイールの回転情報として検出する。
ここで、主動歯車の実際の回転角度θに対する第1及び第2の回転角度α,β、並びに絶対回転角度θrの変化を図14のグラフを参照しつつ説明する。当該グラフにおいて、横軸は主動歯車の実際の回転角度θ(ステアリング操作角度)を、左の縦軸は絶対回転角度θrを、右の縦軸は第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βを示す。また、当該グラフでは、回転角度θが0°となるときにステアリングは中立位置(直進状態)にあるとし、この中立位置を基準として当該ステアリングの右操作方向をプラス、同じく左操作方向をマイナスとする。
当該グラフに示されるように、理論上、主動歯車の回転角度θが、当該主動歯車の歯数、並びに、第1及び第2の従動歯車の歯数により決まる所定角度±θ1だけ回転した際に、第1及び第2の従動歯車の位相差がなくなる。そして主動歯車の回転角度がこれら所定角度±θ1に達した時点で第1の従動歯車に対応する磁気センサの周期数iは、主動歯車の歯数、並びに第1及び第2の従動歯車の歯数により決まる絶対回転角度θrの検出範囲内において取り得る最大の周期数imaxから最小の周期数である0周期に変わる。すなわち、第1及び第2の従動歯車のいずれにも誤差がないとした場合には、絶対回転角度θrの検出範囲(回転角度θ=−θ1〜+θ1に対応する範囲)内において、周期数iが0〜imaxの間で変化する。そして、この周期数iを使用することにより、主動歯車の絶対回転角度θrを正確に求めることができる。
特開2007−127609号公報
ところが、特許文献1のものを含め、主動歯車に2つの従動歯車を噛み合わせた構成とされる従来の回転角度検出装置では、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシ等に起因する誤差により、第1及び第2の磁気センサの検出範囲、すなわち磁気センサ出力の1周期中の第1及び第2の従動歯車の回転角度の値が実際には理論値とずれる。
例えば、第1の従動歯車には+δの誤差があり、第2の従動歯車には誤差がない場合を想定する。この場合、図15のグラフに示されるように、主動歯車の回転角度θが所定角度+θ1に達する前に、すなわち回転角度θが+θ2(<+θ1)に達した時点で、第1の従動歯車の回転角度αは、第2の従動歯車の回転角度βを追い抜く。このため、計算上は、この時点で、第1の従動歯車に対応する磁気センサ出力の周期数iは、所定の周期数imaxから0周期に変わる。当該周期数iは前記式(F)に基づき算出しているところ、第1の従動歯車に誤差がある場合にはこれに起因してθab<θa、すなわちθab−θa<0となる。このため、当該周期数iは負の値となり正しく計算できない。したがって、この例では、主動歯車の回転角度θ(ステアリング操作角度)が+θ2〜+θ1の範囲内にあるときに算出される絶対回転角度θrは正しい値にならないので、これを車両の制御に使用することはできない。
また、第1の従動歯車には誤差がなく、第2の従動歯車には+δの誤差がある場合を想定する。この場合、図16のグラフに示されるように、主動歯車の回転角度θが−θ2(>−θ1)に達するまで第1の従動歯車の回転角度αの値は、第2の従動歯車の回転角度βの値に追いつかない。このため、計算上は、回転角度θが−θ1であるときの第1の従動歯車に対応する磁気センサ出力の周期数iは本来0(ゼロ)であるところ、所定の周期数imaxのまま維持される。すなわち、当該周期数iは前記式(F)に基づき算出しているところ、当該式におけるθab−θaの値は、理論上、第1の仮絶対回転角度θabの最大制限値θabLimit、すなわち第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βの差が最大となるときに上記式(D)に基づき算出される第1の仮絶対回転角度θabの値より大きくなることはない。しかし、第2の従動歯車に誤差がある場合には、これに起因してθab−θaの値が最大制限値θabLimitより大きな値になるため、周期数iが正しく計算できない。したがって、この例では、主動歯車の回転角度θが−θ1〜−θ2の範囲にあるときに算出される絶対回転角度θrは正しい値にならないので、これを車両の制御に使用することはできない。
このように、特許文献1の装置においては、実際のステアリング操作角度が一定の角度範囲(ここでは、±θ2)を外れた場合には正しい絶対回転角度θrが算出されないため、当該角度範囲を超えた際に算出される絶対回転角度θrは車両の制御に使用することができなかった。このため、従来の装置では、検出可能とされる角度範囲に制限を設けて使用する等の対策が講じられている実情がある。すなわち、理論上、絶対回転角度θrを検出可能とされる主動歯車の回転角度θの範囲(−θ1〜+θ1)よりも小さい範囲(−θ2〜+θ2)において算出される絶対回転角度θrのみしか車両の制御に使用することができなかった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、主動歯車と従動歯車との間のバックラッシ等に起因する検出誤差の影響を抑制し、主動歯車の回転角度を理論上検出可能とされる全範囲において正確に検出することができる回転角度検出装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、回転検出対象と一体回転する主動歯車に連動して回転する歯数の異なる第1及び第2の従動歯車に対応して設けられる第1及び第2のセンサからの出力に基づきこれらセンサの検出範囲Ω中の第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βを算出し、これら算出結果に基づき前記主動歯車の回転角度を絶対値で算出する演算手段を備え、前記演算手段は、下記式(a),(b)に基づき前記主動歯車の第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaを算出するとともに、下記式(c)に基づき前記第1のセンサからの出力の周期数iを算出し、下記式(d)に基づき前記主動歯車の絶対回転角度θrを最終的に算出する回転角度検出装置において、前記演算手段は、前記周期数iを求めるに際して、下記関係式(e)が成立する旨判断される場合には下記式(c)に基づき前記周期数iを算出し、下記関係式(f)が成立する旨判断される場合には下記式(c)における前記第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に下記の最大制限値θabLimitを加算して、また下記関係式(g)が成立する旨判断される場合には下記式(c)における前記第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に下記の最大制限値θabLimitを減算して前記周期数iを算出することをその要旨とする。
θab=Δab・mn/z(n−m)・・・(a)
{Δab=α−β (α−β≧0)、Δab=α−β+Ω (α−β<0)}
θa=mα/z・・・(b)
i=(θab−θa)/(mΩ/z)・・・(c)
θr=m(α+iΩ)/z・・・(d)
0≦θab−θa≦θabLimit・・・(e)
θab−θa<0・・・(f)
θab−θa>θabLimit・・・(g)
ただし、m,n,zは第1及び第2の従動歯車並びに主動歯車の歯数である。また、θabLimitは、第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βの差が最大となるとき、上記式(a)に基づき算出される第1の仮絶対回転角度θabの値(最大制限値)である。
さて、前述したように、第1の従動歯車に誤差がある場合には、主動歯車の実際の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の上限値に達する前に、第1の従動歯車の回転角度αの値が第2の従動歯車の回転角度βの値を追い越す。これに起因して、周期数iはその最大値から最小値である0周期に変わる。すなわち、本来、前述した周期数の最大値を使用して絶対回転角度θrが演算されるべきところ、周期数の最小値である0周期が使用されて絶対回転角度θrが演算される。このため、主動歯車の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の上限値に達する前の所定角度、すなわち第1の従動歯車の回転角度αの値が第2の従動歯車の回転角度βの値を追い抜く所定角度から、当該上限値に達するまでの間においては、正確な絶対回転角度θrを算出することができないことが懸念される。
この点、本発明によれば、第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値が0より小さい値である旨判断される場合には、当該第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に最大制限値θabLimitを加算した値を使用して周期数iを算出する(「i=(θab−θa+θabLimit)z/mΩ」)。これにより、第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値、ひいては周期数iの値が負の値になることはなく、当該周期数iは正しく演算される。すなわち、主動歯車の回転角度が理論上検出可能とされる角度範囲の上限値に達するまで、周期数iはその最大値に維持される。したがって、主動歯車の回転角度が理論上検出可能とされる角度範囲の上限値に達する前の所定角度から、当該上限値に達するまでの間においても、実際の主動歯車の回転角度に対応する正確な絶対回転角度θrを算出することができる。
また、第2の従動歯車に誤差がある場合には、主動歯車の回転角度が理論上検出可能とされる角度範囲の下限値を超えて所定値に達するまで、第1の従動歯車の回転角度αの値が第2の従動歯車の回転角度βの値に追いつかない。これに起因して、主動歯車の回転角度θが前記下限値を超えて前記所定値に達するまでの間、周期数iはその最大値に維持される。すなわち、本来、周期数の最小値である0周期を使用して絶対回転角度θrが演算されるべきところ、周期数の最大値が使用されて絶対回転角度θrが演算される。このため、主動歯車の回転角度が理論上検出可能とされる角度範囲の下限値から、これよりも大きな値となる前述した所定角度、すなわち第1の重度歯車の回転角度αの値が第2の従動歯車の回転角度βの値に追いつくまでの間においては、正確な絶対回転角度θrを算出することができないことが懸念される。
この点、本発明では、第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値が最大制限値θabLimitより大きい値である旨判断される場合には、当該第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に最大制限値θabLimitを減算した値を使用して周期数iを算出する(「i=(θab−θa−θabLimit)z/mΩ」)。これにより、第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値が最大制限値θabLimitの値よりも大きくなることはなく、周期数iは正しく演算される。すなわち、主動歯車の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の下限値にあるときには、周期数iは0周期とされる。したがって、主動歯車の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の下限値から、これよりも大きな値となる前述した所定角度までの間においても、実際の主動歯車の回転角度に対応する正確な絶対回転角度θrを算出することができる。
このように、従来、正確な絶対回転角度θrの算出が困難とされていた主動歯車の理論上検出可能とされる角度範囲の上限値及び下限値の近傍の角度範囲においても、前述した周期数iの補正処理を通じて、絶対回転角度θrを正確に算出することができるようになる。すなわち、理論上検出可能とされるすべての範囲において主動歯車の絶対回転角度θrを正確に算出することができる。
本発明によれば、主動歯車と従動歯車との間のバックラッシ等に起因する検出誤差の影響を抑制し、主動歯車の回転角度を理論上検出可能とされる全範囲において正確に検出することができる。
回転角度検出装置の概略構成を示すブロック図。 同じく回転角度の算出手順を示すフローチャート。 (a),(b)は、第1及び第2の磁気センサの検出範囲における第1及び第2の従動歯車の回転角度と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 (a)は、第1及び第2の磁気センサの検出範囲における第1及び第2の従動歯車の回転角度と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ、(b)は、第1及び第2の従動歯車の位相差と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ、(c)は、第1の仮絶対回転角度と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 第2の仮絶対回転角度と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 磁気センサ出力の周期数と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 最終的に算出される主動歯車の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 第1及び第2の従動歯車のいずれにも誤差がない場合の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 第1の従動歯車に誤差がある場合(第2の従動歯車は誤差なし)の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 第2の従動歯車に誤差がある場合(第1の従動歯車は誤差なし)の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 磁気センサ出力の周期数の算出手順を示すフローチャート。 第1の従動歯車に誤差がある場合(第2の従動歯車は誤差なし)において、補正処理された周期数iに基づき算出される絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 第2の従動歯車に誤差がある場合(第1の従動歯車は誤差なし)において、補正処理された周期数iに基づき算出される絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を示すグラフ。 従来の回転角度検出装置において、第1及び第2の従動歯車のいずれにも誤差がないとした場合の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を概略的に示すグラフ。 同じく、第1の従動歯車に誤差があるとした場合(第2の従動歯車は誤差なし)の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を概略的に示すグラフ。 同じく、第2の従動歯車に誤差があるとした場合(第2の従動歯車は誤差なし)の絶対舵角値と主動歯車の実際の回転角度との関係を概略的に示すグラフ。
以下、本発明を、ステアリングの操舵角を検出する回転角度検出装置に具体化した一実施の形態を説明する。
図1に示すように、回転角度検出装置10は、ステアリングホイールと操舵輪とを連結するステアリングシャフト11の周囲に配設される図示しないステアリングコラム等の構造体に固定される箱体状のハウジング12を備えている。このハウジング12内には、ステアリングシャフト11に一体回転可能に且つ同軸状に外嵌固定された主動歯車13が収容されるとともに、当該主動歯車13に噛合する第1及び第2の従動歯車14,15が回転可能に支持されている。
第1及び第2の従動歯車14,15はそれぞれ歯数が異なるように設けられている。このため、ステアリングシャフト11の回転に連動して主動歯車13が回転した場合、主動歯車13の回転角度θに対する第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α′,β′はそれぞれ異なった値となる。例えば主動歯車13の歯数をz、第1の従動歯車14の歯数をm、第2の従動歯車15の歯数をnとした場合(m<n<z)、主動歯車13が1回転したときには、第1の従動歯車14はz/m回転、第2の従動歯車15はz/n回転する。
図1に破線で示されるように、第1及び第2の従動歯車14,15には、第1及び第2の磁石(永久磁石)16,17が一体回転可能に設けられている。また、第1及び第2の磁石16,17の近傍(正確にはその直下)には、これらから発せられる磁界を検出する第1及び第2の磁気センサ18,19が配設されている。第1及び第2の磁気センサ18,19としては、例えば4つの磁気抵抗素子(MRE)がブリッジ状に接続されてなるいわゆるMRセンサが採用可能である。磁気抵抗素子の抵抗値は、与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、第1及び第2の磁気センサ18,19は、それらに与えられる磁界の変化(正確には、磁束の向きの変化)に応じて前述したブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。
第1の磁気センサ18は、第1の従動歯車14の回転に伴う第1の磁石16から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第1の従動歯車14の回転角度α′に応じて連続的に変化する2つのアナログ信号、すなわち第1の正弦信号Vs1及び第1の余弦信号Vc1をハウジング12内に配設されたマイクロコンピュータ21へ出力する。第1の正弦信号Vs1及び第1の余弦信号Vc1は、第1の従動歯車14が第1の磁気センサ18の検出範囲Ωだけ回転したときに、すなわち主動歯車13が(m/z)Ωだけ回転したときに1周期となる。第1の余弦信号Vc1の位相は、第1の正弦信号Vs1に対して1/4周期だけずれる。
第2の磁気センサ19は、第2の従動歯車15の回転に伴う第2の磁石17から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第2の従動歯車15の回転角度β′に応じて連続的に変化する2つのアナログ信号、すなわち第2の正弦信号Vs2及び第2の余弦信号Vc2をマイクロコンピュータ21へ出力する。第2の正弦信号Vs2及び第2の余弦信号Vc2は、第2の従動歯車15が第2の磁気センサ19の検出範囲Ωだけ回転したときに、すなわち主動歯車13が(n/z)Ωだけ回転したときに1周期となる。第2の余弦信号Vc2の位相は、第2の正弦信号Vs2に対して1/4周期だけずれる。
マイクロコンピュータ21は、CPU(中央演算装置)22、ROM(読み出し専用メモリ)23及びRAM(書き込み読み出しメモリ)24等を備えてなる。ROM23には、回転角度検出装置10の全体を統括的に制御するための各種の制御プログラムが格納されている。RAM24はROM23の制御プログラムを展開してCPU22が各種の処理を実行するためのデータ記憶領域、すなわち作業領域である。ROM23に格納される制御プログラムとしては、例えば回転角度算出プログラムがある。回転角度算出プログラムは、第1及び第2の磁気センサ18,19からの検出信号に基づいてステアリングシャフト11の回転角度θを絶対値で求めるためのプログラムである。
このマイクロコンピュータ21によるステアリングシャフト11の絶対回転角度θrの算出処理の概要は次の通りである。
ここでまず、主動歯車13の回転角度θと、当該回転角度θに対する第1の従動歯車14の回転角度α′との間には、それらの歯数z,mにより、次式(1)で示される関係が成立する。
θ=mα′/z・・・(1)
また、主動歯車13の回転角度θに対する第1の従動歯車14の回転角度α′は次式(2)のようにも表すことができる。
α′=α+iΩ・・・(2)
ただし、αは、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度である。iは、第1の磁気センサ18の検出範囲を何回繰り返しているのか、すなわち第1の正弦信号Vs1及び第1の余弦信号Vc1の何周期目かを示す整数値である。以下の説明では、当該整数値を第1の従動歯車14の周期数という。
そして、式(1)に式(2)を代入すると、次式(3)が得られる。
θ=m(α+iΩ)/z・・・(3)
当該式(3)を展開して整理すると、次式(4)が得られる。
θ=θa+(m/z)Ωi・・・(4)
ただし、θaは、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αに対する主動歯車13の回転角度(絶対値)である。なお、この回転角度(θa)は、次式で表される。
θa=mα/z
したがって、回転角度(θa)及び第1の従動歯車14の周期数iが分かれば、前記式(4)に基づき回転角度θが算出可能となる。マイクロコンピュータ21は、ROM23に格納された回転角度算出プログラムに基づき、回転角度(θa)、及び第1の従動歯車14の周期数iを求め、これらを前記式(4)に適用することにより、主動歯車13の絶対回転角度θrを算出する。
<1.絶対舵角値の演算処理>
次に、前述のように構成した回転角度検出装置10によるステアリングシャフト11、すなわち主動歯車13の回転角度θの検出方法として、前述したマイクロコンピュータ21による絶対回転角度θrの算出処理の手順を、図2のフローチャートに従って詳細に説明する。当該算出処理は、ROM23に格納された回転角度算出プログラムに従って実行される。
<1−1.従動歯車の回転角度算出処理>
図2に示されるように、マイクロコンピュータ21は、主動歯車13の絶対回転角度θrを求めるに際して、まず第1及び第2の磁気センサ18,19からの検出信号を図示しないA/D変換器を通じて取得する(ステップS101,S102)。そしてマイクロコンピュータ21は、この取得されるA/D変換後の検出信号に基づき、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βを求める(ステップS103,S104)。
すなわち、回転角度αは、第1の正弦信号Vs1及び第1の余弦信号Vc1に基づく逆正接(α=(Ω/360°)tan−1(Vs1/Vc1))として、マイクロコンピュータ21により算出され、RAM24に格納される。また、回転角度βは、第2の正弦信号Vs2及び第2の余弦信号Vc2に基づく逆正接(β=(Ω/360°)tan−1(Vs2/Vc2))として、マイクロコンピュータ21により算出され、RAM24に格納される。なお、これら回転角度α,βは、第1及び第2の磁気センサ18,19からの検出信号と、当該信号に対応する逆正接値との関係を規定するテーブルを予めROM23に格納し、当該ROM23に格納されるテーブルを参照することにより求めるようにしてもよい。
ちなみに、主動歯車13の実際の回転角度θの変化に対して、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは、図3(a),(b)のグラフに示されるように変化する。当該グラフにおいて、横軸は主動歯車13の回転角度θを、また縦軸は第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βを示す。
当該グラフに示されるように、主動歯車の回転角度θの増大に伴い第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは、第1及び第2の従動歯車14,15の歯数m,nの違いに応じて、所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す。すなわち、当該回転角度α,βは、第1及び第2の従動歯車14,15が第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲Ωだけ回転する毎に、換言すれば主動歯車13がmΩ/z、あるいはnΩ/zだけ回転する毎に、立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す。
例えばここで、主動歯車13の歯数zを60、第1の従動歯車14の歯数mを25、第2の従動歯車15の歯数nを26、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲Ωを180°とする。この場合、第1の従動歯車14の回転角度αは主動歯車13が75°だけ回転する毎に、また第2の従動歯車15の回転角度βは主動歯車13が78°だけ回転する毎に、立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す。
<1−2.主動歯車の仮回転角度算出処理>
次に、マイクロコンピュータ21は、ステップS103,S104で算出された第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βをRAM24から読み出し、これら回転角度α,βに基づき主動歯車13の第1の仮絶対回転角度θabを求める(ステップS105)。そしてマイクロコンピュータ21は、この算出される第1の仮絶対回転角度θabをRAM24に格納する。この第1の仮絶対回転角度θabは、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αと、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βとの差Δab(=α−β)に基づき求められる主動歯車13の回転角度である。そしてこの第1の仮絶対回転角度θabは、前記式(1),(2)、及び第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βについても同様に算出される次式(5),(6)に基づき、次式(7)のように表される。
θ=nβ′/z・・・(5)
β′=β+jΩ・・・(6)
ただし、βは、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度である。jは、第2の磁気センサ19の検出範囲を何回繰り返しているのか、すなわち第2の正弦信号Vs2及び第2の余弦信号Vc2の何周期目かを示す整数値である。
θab=Δab・mn/z(n−m) ・・・(7)
ただし、mは第1の従動歯車14の歯数、nは第2の従動歯車15の歯数、zは主動歯車13の歯数、Ωは第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(周期)である。
また、差Δabは第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの位相差を表すため、実際には当該位相差は当該検出範囲Ω当たりの正値に換算された値が使用される。すなわち、差Δabは、次のようにして求められる値が前記式(7)に適用される。
・α−β≧0のとき 差Δab=α−β
・α−β<0のとき 差Δab=(α−β)+Ω
ちなみに、前記式(7)は、次のようにして得られる。すなわちまず、前記式(1),(2),(5),(6)を使用してα−βを表すと次式のようになる。
α−β=(α′−iΩ)−(β′−jΩ)
=(z/m)θ−(z/n)θ−(i−j)Ω
そして当該関係式においてθ=θabとしてθabについて解くと次式が得られる。
θab=mn/z(n−m)・{(α−β)+(i−j)Ω}
ただし、α−β≧0のとき i=j
α−β<0のとき i=j+1
ここで、Δab=(α−β)+(i−j)Ωとすると、前記式(7)が得られる。
第1及び第2の従動歯車14,15の歯数は異なっていることから、図4(a)のグラフに示されるように、主動歯車13の回転角度θを横軸に、第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βを縦軸にプロットしたとき、当該主動歯車13の回転角度θに対する第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは異なる値となる。このため、図4(b)のグラフに示されるように、主動歯車13の回転角度θを横軸に、また、第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの差Δabを縦軸にプロットしたとき、当該主動歯車13の回転角度θの変化に対して、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの差Δabの値は直線的に変化する。すなわち、ステアリングシャフト11の回転角度θと、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの差Δabとは比例関係にあることから、当該回転角度α,βの差Δabは主動歯車13の回転角度θに対して固有の値となる。このため、当該回転角度α,βの差Δabに基づいて主動歯車13の回転角度θを絶対値で算出可能となる。
したがって、図4(c)のグラフに示されるように、主動歯車13の実際の回転角度θを横軸に、前記式(7)に基づき算出される主動歯車13の第1の仮絶対回転角度θabを縦軸にプロットしたとき、当該主動歯車13の回転角度θの変化に対して、当該第1の仮絶対回転角度θabの値も直線的に変化する。
なお、前述したように、主動歯車13の回転角度θに対する第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは、第1及び第2の従動歯車14,15の歯数m,nの違いに応じてそれぞれ異なる所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返すところ、これら第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの位相差は、主動歯車13の回転角度θが所定値に達したときに無くなる。このため、これら第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βに基づき算出される差Δab及び第1の仮絶対回転角度θabについても、それぞれ第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの位相差が無くなる回転角度θごとに立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す。すなわち、第1の仮絶対回転角度θabの算出範囲(周期)Ωx(=0°〜x°)も第1及び第2の従動歯車14,15並び主動歯車13の歯数比により決まり、当該算出範囲(周期)Ωxは、次式(8)で表される。
Ωx=mnΩ/z(n−m)・・・(8)
前述と同様に、主動歯車13の歯数zを60、第1の従動歯車14の歯数mを25、第2の従動歯車15の歯数nを26、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲Ωを180°としたとき、第1の仮絶対回転角度θabの算出範囲(周期)Ωxは、1950°となる。
<1−3.α→θa変換>
次に、マイクロコンピュータ21は、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αに対する主動歯車13の第2の仮絶対回転角度θaを次式(9)に基づき算出する(ステップS106)。そしてマイクロコンピュータ21は、この算出される第2の仮絶対回転角度θaをRAM24に格納する。
θa=mα/z・・・(9)
ちなみに、主動歯車13の実際の回転角度θの変化に対して第2の仮絶対回転角度θaは図5の下側のグラフに示されるように変化する。当該グラフにおいて、横軸は主動歯車13の回転角度θを、また縦軸は第2の仮絶対回転角度θaを示す。当該グラフに示されるように、主動歯車13の回転角度θの増大に伴い、第2の仮絶対回転角度θaは、第1の従動歯車14の歯数mに応じて、所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す。すなわち、第2の仮絶対回転角度θaの算出範囲(周期)Ωy(=0°〜y°)は、第1の従動歯車14及び主動歯車13の歯数比により決まるところ、この第2の仮絶対回転角度θaの算出範囲(周期)Ωyは、次式(10)で表される。
Ωy=mΩ/z・・・(10)
前述と同様に、主動歯車13の歯数zを60、第1の従動歯車14の歯数mを25、第2の従動歯車15の歯数nを26、第1の磁気センサ18の検出範囲Ωを180°としたとき、第2の仮絶対回転角度θaの算出範囲(周期)Ωyは、75°となる。
<1−4.周期数算出処理>
次に、マイクロコンピュータ21は、ステップS105,S106で算出された第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaをRAM24から読み出し、これら第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaに基づき、第1の従動歯車14の周期数iを算出する(ステップS107)。そしてマイクロコンピュータ21は、この算出される周期数iをRAM24に格納する。前述したように、この周期数iは、第1の磁気センサ18の検出範囲を何回繰り返しているのかを示す整数値であり、次式(11)により求められる。この式(11)は、前記式(4)においてθ=θabとして周期数iについて解くことにより得られる。
i=(θab−θa)/(mΩ/z)・・・(11)
ただし、mΩ/zは、第1の磁気センサ18の出力1周期当たりの主動歯車13の変化量(回転量)を示す。
図6の中央のグラフに示されるように、主動歯車13の実際の回転角度θを横軸に、また前記式(11)により算出される周期数iを縦軸にプロットしたとき、第1の従動歯車14が第1の磁気センサ18の検出範囲Ωと同じ角度だけ回転する毎に、すなわち主動歯車13がmΩ/zだけ回転する毎に、周期数iは増大する。そして、主動歯車13の第1の仮絶対回転角度θabの算出範囲(周期)Ωxが0°〜x°であるため、当該x°を超えて主動歯車13が回転したときには、当該周期数iは0(ゼロ)に戻り、再び周期数iのカウントが開始される。
<1−5.絶対回転角度算出処理>
最後に、マイクロコンピュータ21は、先のステップS106で算出した第2の仮絶対回転角度θa及びステップS107で算出した周期数iをRAM24から読み出し、これら第2の仮絶対回転角度θa及び周期数iに基づき主動歯車13の正式な絶対回転角度θrを算出する(ステップS108)。
具体的には、先に算出された第2の仮絶対回転角度θa及び周期数iを、前記式(4)、すなわち「θ=θa+(m/z)Ωi」に適用することにより、絶対回転角度θrを算出する。
主動歯車13の実際の回転角度θと、前記式(4)に基づき算出される主動歯車13の絶対回転角度θrとの関係は、図7の中央のグラフで示される。当該グラフにおいて、横軸は主動歯車13の実際の回転角度θ、縦軸は絶対回転角度θrをそれぞれ示す。当該グラフに示されるように、主動歯車13の絶対回転角度θrは、主動歯車13の実際の回転角度θの変化に伴い直線的に変化する。この絶対回転角度θrの値の変化を示す直線の傾きは、主動歯車13の実際の回転角度θと前記式(4)に基づき算出される絶対回転角度θrとの比の値である1により決まる。このように、主動歯車13の実際の回転角度θと、絶対回転角度θrとが比例関係にあることから、主動歯車13の実際の回転角度θと絶対回転角度θrとは1対1で対応する。すなわち、主動歯車13の絶対回転角度θr、換言すればステアリングの絶対舵角値の即時検出が可能となる。
なお、主動歯車13の絶対回転角度θrの算出範囲Ωrは、先のステップS105で算出される第1の仮絶対回転角度θabの算出範囲Ωxと同様であり、前記式(8)に基づき算出される。このため、前述と同様に、第1の従動歯車14の歯数mを25、第2の従動歯車15の歯数nを26、主動歯車13の歯数zを60、第1の磁気センサ18の検出範囲Ωを180°とした場合、絶対回転角度θrの算出範囲Ωrは、前記式(8)により1950°となる。すなわち、この場合には、0°〜1950°の範囲において主動歯車13の回転角度θを絶対値で即時に検出可能となる。これは、ステアリングシャフトの5回転強(±2.7回転強)に相当する。そして、マイクロコンピュータ21は、前述のようにして算出される主動歯車13の絶対回転角度θrをステアリング操舵角度(絶対舵角値)として車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)へ出力する。
<2.周期数iの補正>
ここで、本例の回転角度検出装置10では、前述したように、主動歯車13に第1及び第2の従動歯車14,15を噛み合わせた構成とされている。このため、実際には主動歯車13と第1及び第2の従動歯車14,15との間のバックラッシ等による誤差起因して、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの値が理論値とずれる。このため、これら第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βに基づき算出される絶対回転角度θrについても前記誤差の影響を受けたものとなることが懸念される。そこで、この点について、まず、第1及び第2の従動歯車14,15のいずれにも誤差がない場合について説明し、次いで第1及び第2の従動歯車14,15に誤差がある場合について説明する。なお、以下の説明では、主動歯車13の歯数zを60、第1の従動歯車14の歯数mを25、第2の従動歯車15の歯数nを26、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲Ωを180°とする。
<2−1.誤差がない場合>
まず、主動歯車13と第1及び第2の従動歯車14,15との間にバックラッシ等による誤差がないとした場合の第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βについて、図8のグラフを参照しつつ説明する。当該グラフにおいて、横軸は主動歯車13の実際の回転角度θ(ステアリング操作角度)を、左の縦軸は前記式(4)により算出される主動歯車13の絶対回転角度θrを、右の縦軸は第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βをそれぞれ示している。また、当該グラフでは、絶対回転角度θrの算出範囲Ωrの中点を原点(絶対回転角度0°)としている。ここでは、絶対回転角度θrの算出範囲Ωrが1950°となることから、当該グラフでは、算出範囲Ωrの上限値は+975°、下限値は−975°となる。すなわち、この例では、−975°〜+975°の範囲で絶対回転角度θrが算出される。また、絶対回転角度θrが0°となる原点は、主動歯車13の実際の回転角度θが0°となるステアリング中立位置に対応する。また、当該回転角度θは、ステアリングが左回転操作されたときには減少し、同じく右回転操作されたときには増大するものとする。
図8の右下に拡大して示されるように、理論上は、主動歯車13の実際の回転角度θ(ステアリング操作角度)が+975°に達したとき、換言すれば、図8の左下に拡大して示されるように、主動歯車13の実際の回転角度θが−975°に達したとき、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの位相差がなくなる。すなわち、理論上、回転角度θが+975°に達した時点、換言すれば、回転角度θが−975°に達した時点を境として、周期数iは、25周期から0周期に変わる。この周期数iを使用することにより、主動歯車13の絶対回転角度θrが正確に算出される。
<2−2.第1の従動歯車に誤差がある場合>
次に、第1の従動歯車14に誤差がある場合について説明する。例えば、主動歯車13と第1の従動歯車14との間には+5°の誤差があり、主動歯車13と第2の従動歯車15との間には誤差がない場合を想定する。このとき、実際のステアリング操作角度である回転角度θに対して、主動歯車13の絶対回転角度θr並びに第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは、図9のグラフに示されるように変化する。なお、この図9のグラフは、先の図8のグラフに対応するものである。
図9の下方に拡大して示されるように、回転角度θが+948°に達した時点を境として第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値は、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βの値より大きな値となる。すなわち、計算上、回転角度θが+948°に達した時点を境として、周期数iは、25回転から0回転に変わる。これは周期数iが負の値になることによる。すなわち、前述したように、第1の従動歯車14の周期数iは、前記式(11)、すなわち「i=(θab−θa)/(mΩ/z)」に基づき算出されるところ、第1の従動歯車14に誤差がある場合にはこれに起因して「θab<θa」、すなわち「θab−θa<0」となる。すなわち、この場合には、第1の従動歯車14の周期数iは負の値となり、正しい周期数iの値が得られない。したがって、この周期数iを使用して算出される主動歯車13の絶対回転角度θrについても正しい値とならない。本例では、実際のステアリング操作角度である回転角度θが948°〜975°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrは正しい値にならないので、これを車両の制御に使用することはできない。
<2−3.第2の従動歯車に誤差がある場合>
次に、第2の従動歯車15に誤差がある場合について説明する。例えば、主動歯車13と第1の従動歯車14との間には誤差がなく、主動歯車13と第2の従動歯車15との間には+5°の誤差がある場合を想定する。このとき、実際のステアリング操作角度である回転角度θに対して、主動歯車13の絶対回転角度θr並びに第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βは、図10のグラフに示されるように変化する。なお、この図10のグラフも、先の図8のグラフに対応するものである。
図10の下方に拡大して示されるように、回転角度θが−948°に達した時点を境として第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値は、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βの値より小さな値となる。すなわち、計算上、回転角度θが−948°に達した時点を境として周期数iは0周期から26周期となる。
これは、次の理由による。まず前述したように、第1の従動歯車14の回転に伴う第1の磁気センサ18の周期数iは、前記式(11)、すなわち「i=(θab−θa)/(mΩ/z)」に基づき算出されるところ、「θab−θa」の値は、理論上、第1の仮絶対回転角度θabの最大制限値θabLimitよりも大きくなることはない。この最大制限値θabLimitは、第1の仮絶対回転角度θabの演算式である前記式(7)、すなわち「θab=Δab・mn/z(n−m)」において、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βの差Δabの値が最大となるときの算出値である。差Δabの最大値は第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωであるため、最大制限値θabLimitは、次式(12)で表される。
θabLimit=Ωmn/{z(n−m)}・・・(12)
ちなみに、ここでは「z=60」、「m=25」、「n=26」、「Ω=180°」とされていることから、これら値を式(12)に代入することにより、最大制限値θabLimitは、1950°として算出される。
しかし、第2の従動歯車15に誤差がある場合にはこれに起因して、「θab−θa」の値が最大制限値θabLimitよりも大きな値になり、正しい周期数iの値が得られない。したがって、この周期数iを使用して算出される主動歯車13の絶対回転角度θrについても正しい値とならない。本例では、実際のステアリング操作角度である回転角度θが−975°〜−948°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrは正しい値にならないので、これを車両の制御に使用することはできない。
このように、主動歯車13と第1及び第2の従動歯車14,15との間にバックラッシ等による誤差がある場合には、主動歯車13の回転角度θが一定の角度範囲(前述の具体例における±948°)から外れる場合には、正しい絶対回転角度θrが算出されない。すなわち、理論上は±975°の範囲で絶対回転角度θrの算出が可能であるにもかかわらず、実際に正確な値が算出されるのは±948°の範囲内である。このため、当該絶対回転角度θrの算出値を車両の制御に使用する場合には、検出可能とする絶対回転角度θrの範囲を、理論上検出可能である範囲よりも小さい範囲、すなわち±948°の範囲内に制限せざるを得ないことが懸念される。
そこで、本例では、こうした懸念を解消するべく、すなわち回転角度検出装置10から出力される絶対回転角度θrを、理論上可能とされる全範囲で車両の各種制御に使用可能とするべく、次のような構成を採用している。すなわち、前述したように、第1及び第2の従動歯車14,15の誤差に起因して周期数iの値が理論値とずれることから、この周期数iを補正することにより当該誤差の絶対回転角度θrに対する影響の低減化を図る。具体的には、第1の従動歯車14に誤差がある場合であれ、主動歯車13の回転角度θが+975°に達する時点までは周期数iを25周期として演算できるように周期数iを補正する。また、第2の従動歯車15に誤差がある場合であれ、主動歯車13の回転角度θが−975°に達した時点から周期数iを0周期として演算できるように周期数iを補正する。
<2−4.i補正処理>
次に、周期数iの算出処理について、図11に示すフローチャートに従って詳細に説明する。このフローチャートは、主動歯車13の絶対回転角度θrの算出処理の過程において、図2のフローチャートにおけるステップS107へ処理を移行した際に、ROM23に格納された周期数算出プログラムに従って実行される。
さて、マイクロコンピュータ21は、周期数iを算出するに際しては、まずRAM24に格納された第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaを読み出して、これらの差の値が0°以上かつθabLimit以内の値か否か、すなわち「0°≦θab−θa≦θabLimit」で示される関係が成立するか否かを判断する(ステップS201)。
マイクロコンピュータ21は、「0°≦θab−θa≦θabLimit」で示される関係が成立する旨判断したとき(ステップS201でYES)には、ステップS202へ処理を移行する。そしてこのステップS202において、マイクロコンピュータ21は、前記式(11)、すなわち「i=(θab−θa)/(mΩ/z)」に基づき周期数iを算出し、この算出した周期数iの値を戻り値として図2のフローチャートで示されるメインルーチンへ返す(リターン)。
また、マイクロコンピュータ21は、ステップS201において、「0°≦θab−θa≦θabLimit」で示される関係が成立しない旨判断したとき(ステップS201でNO)には、ステップS203へ処理を移行する。このステップS203では、マイクロコンピュータ21は、「θab−θa<0°」の関係が成立するか否かを判断する。
マイクロコンピュータ21は、「θab−θa<0°」で示される関係が成立する旨判断したとき(ステップS203でYES)には、ステップS204へ処理を移行する。そしてこのステップS204において、マイクロコンピュータ21は、次式(13)に基づき周期数iを算出し、この算出した周期数iの値を戻り値として図2のフローチャートで示されるメインルーチンへ返す(リターン)。
i=(θab−θa+θabLimit)/(mΩ/z)」・・・(13)
また、マイクロコンピュータ21は、ステップS203において、「θab−θa<0°」で示される関係が成立しない旨判断したとき(ステップS203でNO)には、「θab−θa」の値はθabLimitよりも大きな値であるとして(ステップS205)、ステップS206へ処理を移行する。これは、「θab−θa」の値が、0°以上かつθabLimit以下の値でもなく、また0°よりも小さい値でもない場合には、「θab−θa」の値は必然的にθabLimitよりも大きな値であることが分かるからである。
そしてステップS206において、マイクロコンピュータ21は、次式(14)に基づき周期数iを算出し、この算出した周期数iの値を戻り値として図2のフローチャートで示されるメインルーチンへ返す(リターン)。
i=(θab−θa−θabLimit)/(mΩ/z)」・・・(14)
このようにして算出される周期数iを使用して絶対回転角度θrを演算することにより、理論上検出可能とされる全範囲(絶対回転角度θrの算出範囲Ωrの全範囲)において正確な絶対回転角度θrの算出が可能となる。ここでは、「z=60」、「m=25」、「n=26」、「Ω=180°」としているので、この場合の理論上検出可能とされる範囲である0°〜1950°(±975°)の全範囲にわたって正確な絶対回転角度θrが算出される。
詳述すると、従来、第1の従動歯車14に誤差がある場合には、主動歯車13の実際の回転角度θに対して正確な絶対回転角度θrが算出困難となる角度範囲が存在し、これは前記誤差により「θab−θa<0」となることに起因することについては前述の通りである。
この点、本例では、周期数iの算出に際して、マイクロコンピュータ21は「θab−θa<0」である旨判断した場合には、第1の従動歯車14が誤差を有する状況であるとして、「θab−θa」の値に最大制限値θabLimitを加算し、この加算結果を使用して周期数iを演算する(図11のステップS204を参照)。これにより、算出される周期数iが負の値になることはなく、主動歯車13の実際の回転角度θが+975°に達するまでは周期数iを25周期として演算することが可能となる。このため、周期数iを前記式(11)に基づき一律に算出する場合と異なり、実際の主動歯車13の回転角度θが+948°〜+975°の範囲内である場合であれ、正確な絶対回転角度θrを算出可能となる。
図12のグラフにも示されるように、実際に検出できる絶対回転角度θrの範囲の上限値が、従来の+948°から本来の+975°まで、すなわちプラス側に27°だけ拡大される。このため、主動歯車13の実際の回転角度θが+948°に達した時点を境として第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値が、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βの値を超えた以降についても、実際の回転角度θが+975°に達するまでは、絶対回転角度θrを正確に算出することができる。したがって、従来、主動歯車13の実際の回転角度θが−975°〜948°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrのみが使用可能とされていたところ、回転角度θが−975°〜+975°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrのすべてについて使用可能となる。
また、従来、第2の従動歯車15に誤差がある場合にも、主動歯車13の実際の回転角度θに対して正確な絶対回転角度θrが算出困難となる角度範囲が存在し、これは前記誤差により「θab−θa>θabLimit」となることに起因することについても前述の通りである。
この点、本例では、周期数iの算出に際して、マイクロコンピュータ21は「θab−θa>θabLimit」である旨判断した場合には、第2の従動歯車15が誤差を有する状況であるとして、「θab−θa」の値に最大制限値θabLimitを減算し、この減算された値を使用して周期数iを演算する(図11のステップS206を参照)。「θab−θa−θabLimit」の値が最大制限値θabLimitの値を超えることはないので、主動歯車13の実際の回転角度θが−975°となる時点において、周期数iを0周期として演算することが可能となる。このため、周期数iを前記式(11)に基づき一律に算出する場合と異なり、実際の主動歯車13の回転角度θが−975°〜−948°の範囲内である場合であれ、正確な絶対回転角度θrを算出可能となる。
図13のグラフにも示されるように、実際に検出できる絶対回転角度θrの範囲の下限値が、従来の−948°から本来の−975°まで、すなわちマイナス側に27°だけ拡大される。このため、主動歯車13の実際の回転角度θが−948°に達するまで第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値が、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βの値に追いつかない場合であれ、この実際の回転角度θが−975°〜−948°の範囲内にあるときに算出される絶対回転角度θrの値は正しいものとなる。したがって、従来、主動歯車13の実際の回転角度θが−948°〜975°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrのみが使用可能とされていたところ、回転角度θが−975°〜+975°の範囲内である場合に算出される絶対回転角度θrのすべてについて使用可能となる。
したがって、検出可能とされる絶対回転角度θrの範囲を例えば前述した±948°の範囲に制限する必要はなく、理論上検出可能とされる全範囲、すなわち実際の回転角度θが±975°の範囲にある場合に算出される絶対回転角度θrのすべてについて車両の各種制御に使用可能となる。すなわち、検出可能とされる絶対回転角度θrの範囲が±948°の範囲に制限された場合と比較して、プラス側へ27°、マイナス側へ27°、合計54°だけ検出可能とされる範囲が拡大する。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
・第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値が0より小さい値である旨判断される場合には、当該差の値に最大制限値θabLimitを加算した値を使用して周期数iを算出するようにした。これにより、当該差の値、ひいては周期数iの値が負の値になることはなく、周期数iは正しく演算される。すなわち、主動歯車13の回転角度θが、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値が、第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βの値を追い越す+948°から、理論上検出可能とされる角度範囲の上限値である+975°に達するまでの間においても、周期数iはその最大値である25周期に維持される。したがって、主動歯車13の実際の回転角度θが、第1の従動歯車14の回転角度αの値が第2の従動歯車15の回転角度βの値を追い越す+948°から、理論上検出可能とされる角度範囲の上限値である+975°に達するまでの間においても、正確な絶対回転角度θrを算出することができる。
また、第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値が最大制限値θabLimitより大きい値である旨判断される場合には、当該差の値に最大制限値θabLimitを減算した値を使用して周期数iを算出するようにした。これにより、当該差の値が最大制限値θabLimitの値よりも大きくなることはなく、当該周期数iは正しく演算される。すなわち、主動歯車13の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の下限値である−975°から、第1の磁気センサ18の検出範囲(1周期)Ωにおける第1の従動歯車14の回転角度αの値が第2の磁気センサ19の検出範囲(1周期)Ωにおける第2の従動歯車15の回転角度βに追いつく−948°までの間においても、周期数iはその最小値である0周期とされる。したがって、主動歯車13の実際の回転角度θが理論上検出可能とされる角度範囲の下限値である−975°から、第1の従動歯車14の回転角度αの値が第2の従動歯車15の回転角度βに追いつく−948°までの間においても、正確な絶対回転角度θrを算出することができる。
このように、従来、正確な絶対回転角度θrの算出が困難とされていた絶対回転角度θrの理論上検出可能とされる角度範囲の上限値である+975°及び下限値である−975°の近傍の角度範囲においても、前述した周期数iの補正処理を通じて、絶対回転角度θrを正確に算出することができるようになる。すなわち、理論上検出可能とされるすべての範囲において主動歯車13の絶対回転角度θrを正確に算出することができる。
・そして、本例のように、ステアリングシャフト11を回転検出対象とする舵角センサとして回転角度検出装置10を適用することにより、当該ステアリングシャフト11の回転角度、すなわちステアリング操作角度を、より広い範囲で検出することができるようになる。
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・ステップS105及びステップS106の処理順序は、逆にしてもよいし、並行して処理してもよい。
・主動歯車13の歯数z、並びに第1及び第2の従動歯車14,15の歯数m,nは適宜変更可能である。ただし、これらの歯数間において、次の関係を保つ必要がある。すなわち、「z>m,n」かつ「m>n」又は「m<n」という関係式が成立するように、歯数z,m,nを設定する。この場合、歯数の少ない従動歯車が本発明における第1の従動歯車に相当する。
・また、本例では、第1及び第2の従動歯車14,15の歯数差が1となるように歯数m,nを設定したが、この歯数差を2以上の自然数とすることも可能である。
・本例では、第1及び第2の磁気センサ18,19として、その検出範囲Ωが180°とされたものを採用したが、他の検出範囲を有するものを採用してもよい。例えば360°の検出範囲を有するものが考えられる。
・本例では、第1及び第2の磁気センサ18,19の検出範囲(1周期)Ωにおける第1及び第2の従動歯車14,15の回転角度α,βを、第1及び第2の磁気センサ18,19からの検出信号に基づき算出するようにしたが、こうした磁気センサに代えて、光学的なセンサを採用することも可能である。
・本例では、ステアリング操作角度を検出する絶対舵角センサに具体化したが、ステアリングシャフト11に相当する回転軸全般についてその回転態様を検出する回転検出装置として適用することも可能である。
・本例では、ステアリングシャフト11を主動歯車13に対して同軸上に嵌合することにより一体回転可能としたが、ステアリングシャフト11を主動歯車13の歯に噛み合わせることにより連動させるようにしてもよい。このようにしても、主動歯車13の回転角度をステアリングシャフト11の回転角度として算出することができる。これは、回転検出対象として、ステアリングシャフト11以外の回転軸を採用する場合も同様である。
10…回転角度検出装置、11…ステアリングシャフト(回転検出対象)、13…主動歯車、14…第1の従動歯車、15…第2の従動歯車、18…第1の磁気センサ、19…第2の磁気センサ、21…マイクロコンピュータ(演算手段)。

Claims (1)

  1. 回転検出対象と一体回転する主動歯車に連動して回転する歯数の異なる第1及び第2の従動歯車に対応して設けられる第1及び第2のセンサからの出力に基づきこれらセンサの検出範囲Ω中の第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βを算出し、これら算出結果に基づき前記主動歯車の回転角度を絶対値で算出する演算手段を備え、前記演算手段は、下記式(a),(b)に基づき前記主動歯車の第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaを算出するとともに、下記式(c)に基づき前記第1のセンサからの出力の周期数iを算出し、下記式(d)に基づき前記主動歯車の絶対回転角度θrを最終的に算出する回転角度検出装置において、
    前記演算手段は、前記周期数iを求めるに際して、下記関係式(e)が成立する旨判断される場合には下記式(c)に基づき前記周期数iを算出し、下記関係式(f)が成立する旨判断される場合には下記式(c)における前記第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に下記の最大制限値θabLimitを加算して、また下記関係式(g)が成立する旨判断される場合には下記式(c)における前記第1及び第2の仮絶対回転角度θab,θaの差の値に下記の最大制限値θabLimitを減算して前記周期数iを算出する回転角度検出装置。
    θab=Δab・mn/z(n−m)・・・(a)
    {Δab=α−β (α−β≧0)、Δab=α−β+Ω (α−β<0)}
    θa=mα/z・・・(b)
    i=(θab−θa)/(mΩ/z)・・・(c)
    θr=m(α+iΩ)/z・・・(d)
    0≦θab−θa≦θabLimit・・・(e)
    θab−θa<0・・・(f)
    θab−θa>θabLimit・・・(g)
    ただし、m,n,zは第1及び第2の従動歯車並びに主動歯車の歯数である。また、θabLimitは、第1及び第2の従動歯車の回転角度α,βの差が最大となるとき、上記式(a)に基づき算出される第1の仮絶対回転角度θabの値(最大制限値)である。
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