JP2010235407A - カーボンナノ構造物の製造方法及びカーボンナノ構造物の製造装置 - Google Patents

カーボンナノ構造物の製造方法及びカーボンナノ構造物の製造装置 Download PDF

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Shinji Okazaki
信治 岡崎
Yu Yamanaka
祐 山中
Yugo Azuma
勇吾 東
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Abstract

【課題】カーボンナノ構造物の成長段階を判定して、効率的にカーボンナノ構造物を製造するとともに、成長したカーボンナノ構造物の固着を防止する、カーボンナノ構造物の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法において、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含むカーボンナノ構造物の製造方法および製造装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンナノ構造物の製造方法及びカーボンナノ構造物の製造装置に関するものであり、特にカーボンナノコイルに好適に用いられる製造方法及び製造装置に関する。
カーボンナノコイル、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等のカーボンナノ構造物は、電子部品、ガス吸蔵材料、触媒、構造材料等への応用が期待されており、工業的な利用を目指して大量合成を可能とするための研究が重ねられている。
ここで、カーボンナノファイバーとはナノオーダーの直径を有する内部が中実の繊維状構造物をいい、カーボンナノチューブとはナノオーダーの直径を有する内部が中空の繊維状構造物をいう。また、カーボンナノコイルとは、炭素原子をらせん状に巻回成長させたカーボンコイルであり、そのコイル径が1000nm以下のものをいう。らせん状に巻回成長する炭素原子は、カーボンナノチューブであってもよいし、カーボンファイバーであってもよい。また、カーボンナノコイルは、複数のカーボンナノチューブやカーボンファイバーがらせん状に巻回して形成されているものであってもよい。
上記カーボンナノ構造物の製造方法としては、いろいろな技術があるが、炭素化合物を含んだ原料ガスを、高温の触媒上に流し、触媒上にカーボンナノ構造物を成長させるCVD法(化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)が、比較的低いコストと高収率の可能性を有する方法として主流となりつつある。
かかるCVD法の一つとして、流動床熱CVD法を用いて、流動する触媒粒子に原料ガスを流しカーボンナノ構造物を生成させることが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1等参照。)。
なお、カーボンナノ構造物の中でも、カーボンナノコイルは、導電性を有しかつコイル形状であることから高性能な電磁波吸収材料としての利用が期待されるとともに、ナノメートルオーダーの大きさであることから、マイクロマシンのスプリングやアクチュエーターの材料としても注目されている。
そのため、グラファイト構造からなる線状、曲線状、コイル状等の様々な形状のカーボンナノ構造物が生成する合成工程において、コイル状のカーボン生成物であるカーボンナノコイルの生成率を高めるとともに、工業的な利用を目指して大量合成を可能とするための研究が重ねられている。
特表2004−532180号公報(2004年10月21日公開)
Chemical Engineering Science 58(2003)4475-4482
上記従来の流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法では、カーボンナノ構造物の成長反応を停止するまでは、カーボンナノ構造物の成長段階を確認することができない。そのため、成長反応を停止させたところ、カーボンナノ構造物が成長していなかったり、カーボンナノ構造物の成長反応が進みすぎて成長したカーボンナノ構造物が固着していたりするという問題が生じる。カーボンナノ構造物の固着は、流動床の流動性劣化を引き起こすだけでなく、反応炉の破壊の原因ともなり、また固着により生成物の取り出しが困難になるという問題もある。
さらに、カーボンナノコイルについては、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーに比べて生成速度が顕著に遅いため、カーボンナノコイルを効率よく合成することは、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーの合成と比較して非常に困難であるという問題もあり、カーボンナノコイルの成長段階を確認することができれば、より効率的な製造を可能とすることができる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法において、カーボンナノ構造物の成長段階を判定して、効率的にカーボンナノ構造物を製造するとともに、成長したカーボンナノ構造物の固着を防止することにある。
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造方法は、上記課題を解決するために、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に置かれた粒子状触媒に、加熱下で、当該粒子状触媒の下方から原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給することによって、上記混合ガスで上記粒子状触媒を流動させながら、上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させて、粒子状触媒上にカーボンナノ構造物を成長させるカーボンナノ構造物の製造方法であって、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含むことを特徴としている。
上記構成により、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができるという効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときに、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定する工程を含むことが好ましい。
カーボンナノ構造物の成長が適正であるとの判定に基づき、カーボンナノ構造物の製造を継続すれば、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことが可能となるという効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、カーボンナノ構造物の成長が適正であるとの判定に基づいて、カーボンナノ構造物の製造を継続することが好ましい。
カーボンナノ構造物の成長が適正であるとの判定に基づき、カーボンナノ構造物の製造を継続すれば、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことが可能となる。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、i)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しないとき、または、ii)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときに、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定する工程を含むことが好ましい。
上記構成により、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定されたときには、カーボンナノ構造物を成長させるべく、反応条件を変更する等の手段を講じることができる。
上記構成により、無駄に反応を続けることを回避することができ、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことが可能となるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定し、ガス流入口とガス流出口との差圧が、下記の式(1)
で近似され、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下の範囲である、のこぎり波形状の変動を始めるときに、上記粒子状触媒の流動が劣化していると判定する工程を含むことが好ましい。
上記構成により、カーボンナノ構造物の成長反応が進みすぎて成長したカーボンナノ構造物が固着することを防止することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記粒子状触媒の流動が劣化しているとの判定に基づき、上記混合ガスの供給を停止することが好ましい。
上記構成により、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、および/または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点が検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定する工程を含むことが好ましい。
上記構成により、固着がさらに進んで反応炉が破壊されることを回避することができ、また、生成物の取り出しが困難になることを回避することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、成長したカーボンナノ構造物が固着しているとの判定に基づき、上記混合ガスの供給および反応炉の加熱を停止することが好ましい。
上記構成により、固着がさらに進んで反応炉が破壊されることを回避することができ、また、生成物の取り出しが困難になることを回避することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記粒子状触媒は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒が担持されてなることが好ましい。
上記構成により、粒子状担体が蓄熱機能を有するため、触媒の温度の低下を防止することができる。それゆえ、反応の温度条件を安定させることができ、カーボンナノ構造物を効率的に合成することができる。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法では、上記粒子状触媒として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の粒子状触媒を用いることが好ましい。
上記構成により、長時間反応炉内に粒子状触媒が滞在できるため好ましい。また、上記粒子状担体の平均粒子径が1mm以下であれば、安定な流動状態を保持できると同時に、カーボンナノ構造物を成長させるための表面積を十分に確保できるため好ましい。
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、上記課題を解決するために、粒子状触媒を載置する触媒支持体が設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉と、該反応炉の外周部に設置された加熱装置と、該反応炉の上記触媒支持体の下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、該触媒支持体を通して粒子状触媒に供給するためのガス供給装置と、反応炉内温度を測定するための温度測定器、ガス流入口とガス流出口との差圧を測定するための差圧計、および/または、反応炉の加熱量を測定するための測定器と、を備えるカーボンナノ構造物の製造装置であって、測定された反応炉内温度、ガス流入口とガス流出口との差圧、および/または、反応炉の加熱量の時間変化に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するための判定部を含むことを特徴としている。
上記構成により、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができるという効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法は、以上のように、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含むので、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができるという効果を奏する。
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、測定された反応炉内温度、ガス流入口とガス流出口との差圧、および/または、反応炉の加熱量の時間変化に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するための判定部を含む構成を備えているので、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができるという効果を奏する。
本発明の実施例1においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を示す図であり、(a)は粒子状触媒1を、(b)は粒子状触媒2を、(c)は粒子状触媒3をそれぞれ用いてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を示す図である。 本発明の実施例1においてカーボンナノ構造物を製造したときの、成長したカーボンナノ構造物を、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図であり、(a)は粒子状触媒1を、(b)は粒子状触媒2を、(c)は粒子状触媒3をそれぞれ用いてカーボンナノ構造物を製造したときの、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。 本発明の実施例2においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果、および、成長したカーボンナノ構造物を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。 本発明の実施例2においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果、および、成長したカーボンナノ構造物を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。 本発明の実施例3においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果、および、成長したカーボンナノ構造物を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図であり、(a)はカーボンナノコイルが十分に成長した場合、(b)はカーボンナノコイルが成長不足である場合の結果を示す図である。 本発明の実施例4においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化を測定した結果、および、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果を示す図であり、(a)は反応炉内温度の時間変化を測定した結果を、(b)はガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果を示す図である。 本発明の実施例5においてカーボンナノ構造物を製造したときの、加熱量の時間変化を測定した結果を示す図である。 本発明の実施例6においてカーボンナノ構造物を製造したときの、反応炉内温度の時間変化、加熱量の時間変化、および、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果を示す図であり、(a)は反応炉内温度の時間変化を測定した結果を、加熱量の時間変化ととも、(b)はガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果を、加熱量の時間変化とともに示す図である。 本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置の一例を模式的に示す図である。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、反応炉内温度の時間変化、反応炉のガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化が、カーボンナノ構造物の成長段階と関連していることを見出し、かかる知見に基づいて、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化から、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するカーボンナノ構造物の製造方法にかかる発明を完成させた。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。以下、本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造方法及びカーボンナノ構造物の製造装置について、(I)カーボンナノ構造物の製造方法、(II)カーボンナノ構造物の製造装置の順に説明する。
(I)カーボンナノ構造物の製造方法
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造方法は、流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法において、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含むものである。
以下に、本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造方法について、(I−1)流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法、(I−2)カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程、(I−3)粒子状触媒の順に説明する。
なお、本発明においてカーボンナノ構造物とは炭素原子から構成されるナノサイズの物質をいい、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、これらがらせん状に巻回して形成されているカーボンナノコイル、これらが撚れを有したカーボンナノツスト等を含む。
(I−1)流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法
本発明において、流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法とは、例えば図9に模式的に示すように、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に置かれた粒子状触媒に、加熱下で、当該粒子状触媒の下方から原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給することによって、上記混合ガスで上記粒子状触媒を流動させながら、上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させて、粒子状触媒上にカーボンナノ構造物を成長させる、カーボンナノ構造物の製造方法である。
ここで、上記粒子状触媒は、下方から上記混合ガスを供給することによって、当該混合ガスで上記粒子状触媒が流動するように上記反応炉に置かれればよい。従って、例えば、上記粒子状触媒を実質的に通さないが、キャリアガスおよび原料ガスを通すことができる触媒支持体を、上記反応炉に設置し、当該触媒支持体上に、上記粒子状触媒を置けばよい。
なお本発明において、粒子状触媒が流動するとは、粒子状触媒が静止している状態からガス流で空中に押し上げられて対流しているが、飛散してしまわない状態をいう。
上記反応炉に置かれた上記粒子状触媒の加熱下で、当該触媒支持体の下方から原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを、触媒支持体を通して供給することによって、触媒支持体を通る上記混合ガスで上記粒子状触媒を流動させながら、上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させて、粒子状触媒上にカーボンナノ構造物を成長させる。
なお、粒子状触媒の加熱は上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させるときに行えばよいが、上記原料ガスの供給前に、上記粒子状触媒を予め加熱しておくことがより好ましい。これにより、最初から好適な温度条件下でカーボンナノ構造物の合成を行うことができる。それゆえ、カーボンナノ構造物を効率的に合成することができる。
また、原料ガスとの反応を防止する観点からは、上記粒子状触媒を加熱する前に、反応炉中の酸素を除去しておくことがより好ましい。
ここで、上記粒子状触媒を加熱する方法も、特に限定されるものではないが、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、当該加熱装置によって上記粒子状触媒を加熱する方法を好適に用いることができる。また、かかる加熱装置も特に限定されるものはないが例えばマントルヒーター、電気炉、赤外線加熱炉等を好適に用いることができる。
なお、上記粒子状触媒を加熱するために加熱する反応炉の領域は、上記触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を流動させて上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させる領域であることが好ましい。なお、本明細書においては、上記触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を流動させて上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させる領域を反応領域と呼ぶ。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用いる場合には、当該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記反応領域を含むようにすればよい。このとき、触媒支持体の上に上記粒子状触媒を置く構成により、反応領域を容易に画定することができる。ゆえに、加熱領域を反応領域にあわせて設定することによって、好適に反応温度を制御することができる。また、粒子状触媒を反応領域内で長時間流動させて、熱容量を維持可能とすることにより、反応炉のスペースを有効利用して、カーボンナノ構造物を大量に合成することが可能となる。
さらに、上記反応領域を含む領域に加えて、触媒支持体を通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するためのガス予熱領域を加熱領域に含めることがより好ましい。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用いる場合には、当該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記反応領域と、上記ガス予熱領域を含むようにすればよい。触媒支持体を通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを予め加熱することにより、供給されるガスによる反応領域の温度低下を防ぐことができる。それゆえ、反応温度を一定に制御することができ、カーボンナノ構造物を効率よく合成することができる。
上記反応領域およびガス予熱領域の温度は、600℃以上850℃以下に制御されることが好ましく、650℃以上800℃以下に制御されることがより好ましい。反応領域の温度を上記範囲内に制御することにより、カーボンナノ構造物を好適に製造することができる。
上記混合ガスを、上記触媒支持体の下方から、触媒支持体を通して供給する方法は特に限定されるものではなく、例えば、反応炉の底部にガス流入口を設け、当該ガス流入口から、上記原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを導入すればよい。
ここで、上記原料ガスとしては、炭素源となる分子であれば特に限定されるものではないが、例えば、アセチレン、エチレン、メタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール等が用いられる。
上記キャリアガスとしては、不活性ガスであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を好適に用いることができる。
また、混合ガスに含まれる原料ガスの量は、混合ガスに対して、2体積%以上50体積%以下であることが好ましく、3体積%以上30体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましい。原料ガスの量が、混合ガスに対して、2体積%以上であることにより、カーボンナノ構造物を良好に合成することができる。また、原料ガスの量が、混合ガスに対して、50体積%以下であることにより、タール発生などによる原料ガスの浪費を抑えることが可能であるため好ましい。
また、上記混合ガスの線速度は、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することが好ましく、0.02m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがより好ましく、0.04m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがさらに好ましい。
上記混合ガスの線速度が0.01m・sec−1以上であることにより、上記触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を流動させることができ、カーボンナノ構造物の合成を良好に行うことができる。また、上記混合ガスの線速度が50m・sec−1以下であることにより上記触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を良好に流動させることができる。
上記粒子状触媒に供給された上記原料ガスおよび/またはキャリアガスは、上記粒子状触媒を流動させた後、反応炉の上端部に設けられたガス流出口から、反応炉の外部に出て排気される。
上記のようにして、触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノ構造物を成長させる。
成長したカーボンナノ構造物を回収する方法は特に限定されるものではないが、例えば、反応炉を室温まで冷却後、反応炉からカーボンナノ構造物が成長している粒子状触媒を取り出し、カーボンナノ構造物を分離すればよい。粒子状触媒からカーボンナノ構造物を分離する方法も特に限定されるものではなく、例えば、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム溶液等に粒子状触媒を浸漬し、粒子状担体を溶解してカーボンナノ構造物を取り出す方法、適当な溶媒中で超音波を照射することにより、カーボンナノ構造物を粒子状担体から剥離する方法等を用いることができる。
(I−2)カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造方法は、上述した流動床熱CVD法を用いたカーボンナノ構造物の製造方法において、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含んでいる。
なお、「カーボンナノ構造物の成長段階」とは、カーボンナノ構造物が成長している段階、カーボンナノ構造物の成長が進んで粒子状触媒の流動が劣化している段階、成長したカーボンナノ構造物が固着している段階等をいう。
ここで、反応炉内温度とは、より具体的には、上記反応領域、すなわち、上記触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を流動させて上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させる領域の温度またはその周辺の温度である。かかる反応炉内温度を測定する方法は、反応領域またはその周辺の温度を測定可能な方法であれば特に限定されるものではなく、反応領域またはその周辺の温度を測定可能な温度測定器を用いればよい。例えば、熱電対を用いて、熱電対シース先端が、上記反応領域内または反応領域周辺に位置するように調整して温度測定を行えばよい。
また、反応炉内温度の時間変化の測定は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0として反応炉内温度を経時的に測定することによって行えばよい。測定の時間間隔は特に限定されるものではないが、正確な温度変化を測定するために好ましくは1秒以下の間隔であることが好ましい。また得られた温度変化のデータは、ノイズ変動を除去するために平滑化処理を行うことが好ましい。かかる平滑化処理の方法としても特に限定されるものではなく、例えば、FFTフィルタリング、最小二乗法等の方法を用いればよい。
ガス流入口とガス流出口との差圧とは、原料ガスおよび/またはキャリアガスが反応炉に導入される入口であるガス流入口の圧力と、原料ガスおよび/またはキャリアガスが反応炉の外に出る出口であるガス流出口の圧力との差をいう。ガス流入口とガス流出口との差圧の測定方法も特に限定されるものではないが、例えば、ガス流入口とガス流出口との間に差圧計を接続することによって測定することができる。
ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化の測定は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0として上記差圧を経時的に測定することによって行えばよい。測定の時間間隔は特に限定されるものではないが、正確な差圧を測定するために好ましく1秒以下の間隔であることが好ましい。また得られた差圧の時間変化のデータは、ノイズ変動を除去するために平滑化処理を行うことが好ましい。かかる平滑化処理の方法としても特に限定されるものではなく、例えば、FFTフィルタリング、最小二乗法等の方法を用いればよい。
反応炉の加熱量とは、上記反応領域およびガス予熱領域の温度を所定の温度範囲内に制御するために、上記加熱装置に加えられる加熱量をいう。すなわち、ここで、反応炉の加熱量とは、反応炉内の温度変動が原因で加熱装置のヒーターの温度が変動するが、このヒーターの温度を所定温度に維持するためにヒーターに加えられた加熱量をいう。
また、反応炉の加熱量の時間変化の測定は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0として加熱量を経時的に測定することにより行えばよい。測定の時間間隔は特に限定されるものではないが、正確な加熱量を測定するために好ましくは1秒以下の間隔であることが好ましい。また得られた加熱量の時間変化のデータは、ノイズ変動を除去するために平滑化処理を行うことが好ましい。かかる平滑化処理の方法としても特に限定されるものではなく、例えば、FFTフィルタリング、最小二乗法等の方法を用いればよい。
以下に、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程について実施形態1〜5に基づいてより具体的に説明する。なお、上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、実施形態1〜5の工程をそれぞれ単独で含むものであってもよいし、2以上の組み合わせを含むものであってもよい。
<実施形態1>
上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、一実施形態として、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときに、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定する工程を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、反応初期期間とは、CVD開始直後から反応炉内温度が安定するまでの過渡期間をいう。例えば、図1の(a)、(b)および(c)に示すように、上記反応初期期間は反応炉内温度が大きく変動している。かかる反応初期期間は、反応条件によって変動するものであるので、反応条件に応じて予め設定すればよいが、通常は、CVD開始、すなわち、上記混合ガスの供給開始から10分〜30分程度である。
本明細書において、カーボンナノ構造物の成長が適正であるとは、カーボンナノ構造物が十分に成長している場合、すなわち、粒子状担体上のカーボンナノ構造物により、粒子状担体を含む生成物の嵩密度が0.6g/cm以下になった場合をいう。また、カーボンナノ構造物が成長不足であるとは上記範囲に該当しない場合をいう。
なお、ここで、嵩密度とは、実施例に記載の嵩密度の測定法によって測定される値をいい、嵩密度が小さいほど、カーボンナノ構造物がよく成長していることを示す。すなわち、カーボンナノ構造物が粒子状担体上の多くの領域に成長するほど、ナノ構造物の長さが長くなるほど嵩密度は低くなる。
本工程は、温度測定器を判定部の入力側と接続し、反応炉内温度を時間に対してプロットしたグラフとして出力し、かかるグラフを用いて行ってもよいし、判定部により判定を行いその結果を表示装置に出力することによって行ってもよい。
本工程では、CVD開始後すなわち上記混合ガスを供給し始めた後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に、反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点を検出する。ここで、反応炉内温度が上昇するとは、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点の反応炉内温度よりも上昇していればよく、その上昇の程度は問わない。また、上昇した反応炉内温度が下降に転じるとは、反応炉内温度が少しでも下降していればよくその程度は問わない。
例えば、図1の(c)に示されるような場合は、反応炉内温度が上昇しその後下降に転じている。また、上昇と下降は緩やかなものであってもよく、例えば図3では上昇は僅かであり、また緩やかである。
また、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在する場合には、さらに、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点を検出する。なお、本明細書において、下降の傾きが増大するとは、その増大した後の傾きが、増大する前の傾きの1倍よりも大きければよい。
また、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は、図6の(a)や図3のように、その点において連続的に傾きが増大する場合や、傾きが一旦平坦となったのち傾きが増大する場合を含む。また、ピークをはさんで傾きが増大する場合も含む。
本発明者らは、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときには、カーボンナノ構造物が十分に成長していることを見出した。かかる知見に基づいて、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときに、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定する。
そして、カーボンナノ構造物の成長が適正であるとの判定に基づき、カーボンナノ構造物の製造を継続すれば、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことが可能となる。
なお、本工程においては、CVD開始後すなわち上記混合ガスを供給し始めた後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に、反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点を検出すればよく、かかる点がない場合にどの時点まで検出を行うか、すなわち、検出を行う終点は特には限定されるものではなく、反応の条件等に応じて決定すればよい。一例として、検出の終点を、上記混合ガスの供給開始から240分経過する時点と決めてもよい。
<実施形態2>
上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、一実施形態として、i)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しないとき、または、ii)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときに、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定する工程を含んでいてもよい。例えば、図1の(a)に示されるような場合は、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定される。
本工程は、温度測定器を判定部の入力側と接続し、反応炉内温度を時間に対してプロットしたグラフとして出力し、かかるグラフを用いて行ってもよいし、判定部により判定を行いその結果を表示装置に出力することによって行ってもよい。
本工程では、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点を検出する。ここで、反応炉内温度が上昇するとは、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点の反応炉内温度よりも上昇していればよく、その上昇の程度は問わない。また、上昇した反応炉内温度が下降に転じるとは、反応炉内温度が少しでも下降していればよくその程度は問わない。
反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が検出されない場合は、カーボンナノ構造物が成長不足であるとの判定を行う。
また、上記混合ガスの供給開始後反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が検出される場合は、さらに、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点を検出する。そして、かかる点が検出されない場合にはカーボンナノ構造物が成長不足であるとの判定を行う。
本発明者らは、i)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しないとき、または、ii)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときに、カーボンナノ構造物が十分に成長していないことを見出した。かかる知見に基づいて、i)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しないとき、または、ii)反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときに、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定する。なお、検出の終点については実施形態1と同様である。
<実施形態3>
上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、一実施形態として、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定し、ガス流入口とガス流出口との差圧が、上記の式(1)で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下の範囲である変動を始めるときに、上記粒子状触媒の流動が劣化していると判定する工程を含んでいてもよい。
なお、ここで、CVD初期の差圧上昇速度とは、CVD開始直後の差圧の急激な上昇後差圧が安定した時点での差圧の上昇速度をいう。CVD初期とは、例えば、CVD開始、すなわち、上記混合ガスの供給開始から10分後と20分後との間の期間をいう。
例えば、図6の(b)に示されるような場合は、CVD開始後約90分後から観察される変動により、上記粒子状触媒の流動が劣化していると判定される。
なお、「粒子状触媒の流動が劣化している」とは、より具体的には、個々の粒子状担体上の生成物から生じる付着力により、個々の粒子状担体がガス流により分離し難くなる状態をいう。
ここで、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定する方法は上述したとおりである。本工程は、差圧計を判定部の入力側と接続し、ガス流入口とガス流出口との差圧を時間に対してプロットしたグラフとして出力し、かかるグラフを用いて行ってもよいし、判定部により判定を行いその結果を表示装置に出力することによって行ってもよい。
本工程では、ガス流入口とガス流出口との差圧が、式(1)で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下と定義された変動を始めるときを検出する。また、差圧変動の周期Tは、1分以上40分以下であればよいが、より好ましくは、1分以上30分以下である。
本発明者らは、ガス流入口とガス流出口との差圧が、式(1)で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40以下と定義された変動を始めるときには、成長したカーボンナノ構造物により上記粒子状触媒の流動が劣化していることを見出した。かかる知見に基づいて、ガス流入口とガス流出口との差圧が、式(1)で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下と定義された変動を始めるときに、上記粒子状触媒の流動が劣化していると判定することができる。
そして、上記粒子状触媒の流動が劣化しているとの判定に基づき、上記混合ガスの供給を停止することができる。これにより、カーボンナノ構造物の成長反応が進みすぎて成長したカーボンナノ構造物が固着することを防止することができる。それゆえ、反応炉の破壊を回避することができ、また、生成物を容易に取り出すことができる。
また、ガス流入口とガス流出口との差圧が、(1)で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下と定義された変動を始めるのは、カーボンナノ構造物の成長が進んだ段階であるので、本工程は、実施形態1に記載の工程と組み合わせて好適に用いることができる。すなわち、実施形態1に係る工程により、カーボンナノ構造物が十分に成長していることを確認して、製造を継続し、本実施形態3に係る工程で、上記粒子状触媒の流動が劣化しているとの判定に基づき上記混合ガスの供給を停止することができる。これにより、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができる。もちろん、本工程は単独で用いることもできる。
<実施形態4>
上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、一実施形態として、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、および/または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点が検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定する工程を含んでいてもよい。例えば、図8の(a)、(b)に示されるような場合は、CVD開始後約127分後に観察される変化により、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定される。
本工程は、反応炉内温度を測定するための温度測定器、ガス流入口とガス流出口との差圧を測定するための差圧計、および/または、上記反応炉の加熱量を測定するための測定器を判定部の入力側と接続し、これらの測定値を時間に対してプロットしたグラフとして出力し、かかるグラフを用いて行ってもよいし、判定部により判定を行いその結果を表示装置に出力することによって行ってもよい。
本工程では、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、および/または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点が検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定すればよい。
なお、上記反応炉の加熱量は、測定値のノイズ変動が大きい場合があるが、かかる場合は、上記反応炉の加熱量の減少割合は、上記反応炉の加熱量が急激に減少する直前5分間の加熱量の平均値と、上記反応炉の加熱量が急激に減少した後一定になった時の過熱量を用いて計算すればよい。
本発明者らは、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点が検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していることを見出した。かかる知見に基づいて、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、および/または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点のいずれかが検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定することができる。
かかる場合は、上記判定に基づき、上記混合ガスの供給および/または反応炉の加熱を停止する。これにより、固着がさらに進んで反応炉が破壊されることを回避することができ、また、生成物の取り出しが困難になることを回避することができる。
また、本工程は、実施形態1に記載の工程と組み合わせて好適に用いることができる。すなわち、実施形態1に係る工程により、カーボンナノ構造物が十分に成長していることを確認して、製造を継続し、本実施形態4に係る工程で、成長したカーボンナノ構造物が固着しているとの判定に基づき上記混合ガスの供給および反応炉の加熱を停止することができる。これにより、効率よくカーボンナノ構造物の製造を行うことができるとともに、固着の問題を解決することができる。
また、本実施形態4を、上記実施形態1を含めて/または含めずに、上記実施形態3と組み合わせれば、成長したカーボンナノ構造物の固着をより厳重に検知することができる。もちろん、本工程は単独で用いることもできる。
(I−3)粒子状触媒
本発明で用いる上記粒子状触媒は、カーボンナノ構造物の製造に用いることができる粒子状の触媒であれば特に限定されるものではないが、粒子状担体に遷移金属を含む触媒が担持されてなるものであることがより好ましい。
かかる粒子状触媒を用いることにより、担体に担持させない触媒粒子をそのまま用いる場合と比較して、粒子状担体が蓄熱機能を有するため、触媒の温度の低下を防止することができる。それゆえ、反応の温度条件を安定させることができ、カーボンナノ構造物を効率的に合成することができる。
本発明で用いる触媒としては、遷移金属を含む触媒を好適に用いることができる。かかる触媒を用いることにより高純度のカーボンナノ構造物を製造することができる。
ここで、上記遷移金属は、特に限定されるものではないが、例えば、Fe、Co、Ni、Mo、Cu等であることがより好ましい。上記触媒は遷移金属を1種類以上含んでいればよく、さらに、遷移金属以外の元素を含んでいてもよい。上記触媒としては、例えば、Fe−Sn系触媒、Fe−Sn−In系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−S系触媒、Ni−Cu系触媒、SUS触媒、Co、Ni等を好適に用いることができる。上記触媒は、上記遷移金属および上記元素を含んでいるものであればよいが、上記遷移金属および上記元素は、酸化物、カルボニル誘導体、有機化合物、金属塩等の種々の化合物として含まれうる。
中でも、本発明で用いる触媒としては、FeおよびSnを少なくとも含む触媒をより好適に用いることができる。かかる触媒を用いることによりさらに高純度のカーボンナノ構造物を製造することができる。
ここで、FeおよびSnを少なくとも含む触媒とは、FeとSnとを含んでいればその割合は特に限定されるものではないが、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であることが好ましく、3≦Fe/Sn≦10であることがより好ましく、5≦Fe/Sn≦10であることがさらに好ましい。FeとSnとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノ構造物をより効率よく製造することができる。
また、本発明では、FeとSnとに加えてさらにInを含む触媒も好適に用いることができる。Inを含む場合も、FeとSnとのモル比は、上記範囲であることが好ましく、かつ、InとSnとのモル比は、0≦In/Sn≦30であることが好ましく、1≦In/Sn≦10であることがより好ましく、1.2≦In/Sn≦4であることがさらに好ましい。FeとSnとInとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノ構造物をより効率よく製造することができる。
また、特に、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるという観点から、上記触媒として、(i)Fe:Inのモル比が3:1であり、かつ、SnがFeの10%以上33%以下のモル比である触媒、または(ii)Fe:Snのモル比が7.5:1であり、かつ、InがFeの33%以上66%以下のモル比である触媒を、特に好適に用いることができる。
本発明で用いられる触媒は特に好ましくは、Fe−Sn系触媒、すなわち、FeとSnとを含む2成分系触媒、または、Fe−Sn−In系触媒、すなわち、FeとSnとInとを含む3成分系触媒である。しかしながら、上記触媒は、FeおよびSn、または、Fe、SnおよびInの他に、カーボンナノ構造物の合成に悪影響を与えない範囲で他の金属を含んでいてもよい。他の金属としては、例えば、Al、Na等を挙げることができる。
上記触媒は、上記金属元素を含んでいるものであればよいが、上記金属元素は種々の金属化合物として含まれうる。例えば、Feは、Fe、Fe等の鉄酸化物;カルボン酸鉄、鉄カルボニル、鉄カルボニル誘導体、鉄ニトロシル、鉄ニトロシル誘導体等の鉄有機化合物;硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Inは、例えば、In等のインジウム酸化物;トリメチルインジウム、トリフェニルインジウム、オクチル酸インジウム、カルボン酸インジウム等のインジウム有機化合物;硝酸インジウム、塩化インジウム、硫酸インジウム等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Snは、例えば、SnO、SnO等のスズ酸化物;トリエチルスズ、テトラフェニルスズ、オクチル酸スズ、カルボン酸スズ等のスズ有機化合物;塩化スズ、硫酸スズ等の金属塩等として触媒に含まれうる。中でも、酸化物を用いることにより、触媒を空気中で使用してもそれ以上酸化せず、化学的に安定であるので、カーボンナノ構造物を安定して合成可能であるため、上記金属は酸化物として含まれていることがより好ましい。
上記触媒を担持する粒子状担体は、上記触媒を担持することができ、且つ、原料ガスと反応しないものであれば、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、セラミックス、ゼオライト、アルミノリン酸塩、シリカアルミノリン酸塩、樹脂、マグネシア、セリア、シリカ、ジルコニア等の粒子を好適に用いることができる。中でも、CVD反応中でも安定であるとの観点から、上記粒子状担体は、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミックスであることがより好ましい。
上記粒子状担体及び粒子状触媒の形状は、粒子状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、略球状、棒状、立方体状等を挙げることができる。中でも、安定な流動状態を作るという観点から、上記粒子状担体の形状は、球状であることがより好ましい。
また、上記粒子状担体及び粒子状触媒の平均粒子径は、10μm以上1mm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。上記粒子状担体の平均粒子径が10μm以上であれば、用いるガス線速度範囲内において長時間反応炉内に粒子状触媒が滞在できるため好ましい。また、上記粒子状担体の平均粒子径が1mm以下であれば、安定な流動状態を保持できると同時に、カーボンナノ構造物を成長させるための表面積を十分に確保できるため好ましい。
なお、本明細書において、平均粒子径とは、以下の方法で決定された値をいう。上記粒子状担体及び粒子状触媒について、走査型電子顕微鏡による観察を行い、得られる観察像内のそれぞれの粒子に対して、粒子1つの長軸径、すなわち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を、顕微鏡写真から計測する。計測した値を平均した値を本発明における平均粒子径とする。
また、上記粒子状担体及び粒子状触媒としては、単分散した上記粒子状担体及び粒子状触媒を用いることがより好ましい。ここで、「単分散した」とは、粒子状触媒の粒子径がそろっていれば特に限定されるものではないが、粒子径分布が狭く、粒子径の相対標準偏差が70%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。なお、粒子径の相対標準偏差は、粒子径の標準偏差を観測値の母集団の平均値を基準として百分率で表した値である。
単分散した粒子状触媒を用いることにより、粒子径分布の大きい粒子状触媒を用いる場合より粒子状触媒の粒子同士の衝突が起こりにくい。それゆえ、より長いカーボンナノ構造物を合成することが可能となる。また、単分散した粒子状触媒を用いる場合、触媒支持体を通って加熱領域外に移動したり、混合ガスにより飛散して加熱領域外に放出されたりするような粒子径の小さい粒子状触媒の量が少ないため、カーボンナノ構造物合成の歩留まりをよりよくすることができる。
また、上記粒子状触媒の触媒担持率は、0.01重量%以上0.6重量%以下の範囲であることが好ましい。ここで、上記粒子状触媒の触媒担持率とは、粒子状触媒全体の重量に対する、触媒の重量の割合をいい、以下の式で表される値である。ここで、触媒の重量は、触媒を担持させる前の粒子状担体の重量と、該粒子状担体に触媒を担持させて得られる粒子状触媒の重量との差から求められる。
触媒担持率(重量%)=(触媒の重量/粒子状触媒全体の重量)×100
上記触媒は、粒子状担体に担持されていればよく、担持の状態も特に限定されるものではない。上記触媒を粒子状担体に担持させる方法としても、特に限定されるものではなく、例えば、液相法、気相法、固相法等により担持させることができる。
液相法を用いる場合には、以下のようにして上記触媒を粒子状担体に担持させることができる。まず、触媒として用いる遷移金属およびその他の元素の化合物を、溶媒中に溶解させて触媒溶液を得る。かかる溶媒としては、特に限定されるものではなく、用いる化合物に応じて適宜選択すればよいが、例えば、アルコール、水等を挙げることができる。
次に、得られた触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法、粒子状担体に上記触媒溶液を公知の方法により塗布する方法等を用いて、得られた触媒溶液を粒子状担体に付着させる。上記触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法では、より効率的に触媒溶液を付着させるために、溶液を攪拌したり、超音波処理を行ってもよい。
触媒溶液を付着させた粒子状担体は、乾燥後焼成されて所望の触媒を含む粒子状触媒が得られる。ここで、焼成温度は、特に限定されるものではないが通常400℃〜1200℃である。また焼成時間は通常0.5時間〜48時間である。酸化雰囲気中で焼成することにより、金属化合物は金属酸化物に変化する。
また、反応炉に置かれる粒子状触媒の量は、触媒支持体を通る上記混合ガスで、当該粒子状触媒を流動させることができる量であれば特に限定されるものではない。かかる量としては、上記反応炉内の上記粒子状触媒が置かれた領域の上下の差圧が、触媒加熱前の静止状態において、1kPa以下となるような量であればよい。なお、「触媒加熱前」とは、粒子状触媒を加熱する前であればよいが、通常は室温下であり、例えば、−5℃以上40℃以下の温度下である。
(II)カーボンナノ構造物の製造装置
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、粒子状触媒を載置する触媒支持体が設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉と、該反応炉の外周部に設置された加熱装置と、該反応炉の上記触媒支持体の下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、該触媒支持体を通して粒子状触媒に供給するためのガス供給装置と、反応炉内温度を測定するための温度測定器、ガス流入口とガス流出口との差圧を測定するための差圧計、および/または、反応炉の加熱量を測定するための測定器と、を備えるカーボンナノ構造物の製造装置であって、測定された反応炉内温度、ガス流入口とガス流出口との差圧、および/または、反応炉の加熱量の時間変化に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するための判定部を含んでいる。
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置の一実施形態について図9に基づいて説明すると以下の通りである。図9は本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置を模式的に示す図である。
本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置100は、図9に示すように、鉛直方向に延びる筒状の反応炉1の内部に、粒子状触媒を載置する触媒支持体2が設置されており、反応炉の外周部に3ゾーン式の加熱装置4が反応炉1の鉛直長手方向に沿って設置されている。反応炉1は、石英管からなり、内部に石英製平板状の触媒支持体2が、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように固定されている。触媒支持体2は、複数の孔を有し、その上に置かれた粒子状触媒3を通さないが、下方から供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを通すようになっている。そして、触媒支持体2の上に粒子状触媒3を置くことにより、粒子状触媒3を保持し、触媒支持体2上で流動させることができるようになっている。これにより、触媒支持体の上に置かれた上記粒子状触媒を、触媒支持体を通る上記混合ガスで流動させながら、上記触媒と下方から供給される原料ガスとを接触させることが可能となる。
ここで反応炉1は石英管に限られるものではなく、他の材質からできているものであってもよい。他の材質としては、例えば、金属、セラミックス等を挙げることができる。
また、触媒支持体2も、石英製に限られるものではなく、原料ガスと反応しない材料であれば何でもよい。触媒支持体2としては、石英の他に例えば、金属、セラミックス、グラファイト等を好適に用いることができる。
また、触媒支持体2の、反応炉1への設置方法は、触媒支持体2を固定することができれば如何なる方法であってもよい。例えば、溶接により固定する方法、ネジ等により固定する方法、反応管に設置された溝にはめ込んで上部から押さえる方法等を用いることができる。また、触媒支持体2の形状も平板状に限られるものではなく、その上に粒子状触媒3を載置することができる形状であれば、かご状であってもよい。
触媒支持体2は、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように設置されていれば、その位置は特に限定されるものではない。触媒支持体2の上方に反応領域を確保し、粒子状触媒3に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するためのガス予熱領域を確保するという観点からは、反応炉1の底部から、反応炉1の長手方向の長さの20%〜80%の位置に設置することが好ましく、30%〜70%の位置に設置することがより好ましく、40%〜60%の位置に設置することがさらに好ましい。
触媒支持体2の孔径(ポアサイズ)は、粒子状触媒3の粒子径に応じて適宜選択すればよいが、通常10μm以上500μm以下である。
また、加熱装置4は3ゾーン式のものに限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。加熱装置4は、反応炉1の反応領域に該当する部分と、反応領域の直下に位置し、反応領域に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するガス予熱領域に該当する部分との外周に配置されている。これにより、触媒支持体2の上に置かれた粒子状触媒3を、加熱装置4によって予熱することができるとともに、上記粒子状触媒を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを反応させる間に反応領域を加熱することができる。
反応炉1には、図示しないガス供給装置から、ガス流入口5を介して、原料ガスおよび/またはキャリアガスが導入され、触媒支持体2を通して、触媒支持体2の上に置かれた粒子状触媒3に供給される。
触媒支持体2を通して、触媒支持体2の上に置かれた粒子状触媒3に供給された原料ガスおよび/またはキャリアガスは、ガス流出口6から反応炉の外に出て排気される。
本発明の反応炉1には、熱電対シース先端が、流動していない静止状態における粒子状触媒の最上面に触れる程度の高さになるように、温度計測器としての熱電対7が備えられており、データロガー10により、一定時間毎に温度測定を行うことができるようになっている。また、ガス流入口と、ガス流出口との間に、差圧計8を接続し、図示しないデータロガーにより一定時間毎に差圧を測定することができるようになっている。さらに、加熱装置4には温度コントローラ9が接続されており、3ゾーン式の加熱装置4の上部III、中心II、および、下部Iのヒーターへの加熱量が測定できるようになっている。
なお、反応炉内温度を測定するための温度測定器7は熱電対に限られるものではなく、反応領域の温度を測定できるものであればどのようなものであってもよい。また、反応炉の加熱量を測定するための測定器9も、加熱装置4の温度コントローラに限定されるものではなく、反応炉の加熱量を測定できるものであればどのようなものであってもよい。
また、本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、温度測定器7、差圧計8および加熱量を測定するための測定器9が備えられていてもよいし、これらの少なくともいずれかが備えられていてもよい。
そして、本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、測定された反応炉内温度、ガス流入口とガス流出口との差圧、および/または、反応炉の加熱量の時間変化に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するための判定部を含んでいる。
かかる判定部は、その入力側が、上記温度測定器7、差圧計8および/または加熱量を測定するための測定器9に接続されており、測定値に基づいて、情報を加工し、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するようになっている。
情報を加工する工程としては、例えば、得られた生データを測定値と時間との関係を示すグラフに加工する工程、ノイズ変動を除去するために平滑化処理を行う工程等を挙げることができる。
また、カーボンナノ構造物の成長段階の判定は、例えば、上記(I−2)に記載した実施形態1〜5の工程に沿ってカーボンナノ構造物の成長段階を判定するようになっている。
上記判定部は、例えば、コンピュータおよびその周辺機器により構成される。そして、測定値と時間との関係を示すグラフ、判定結果等がその表示画面に示される。かかる表示により、作業者は、効率的にカーボンナノ構造物を製造するとともに、成長したカーボンナノ構造物が固着することを回避することができる。
また、上記判定部は、カーボンナノ構造物の成長段階を判定した結果、混合ガスの供給および/または反応炉の加熱を停止する必要がある場合には、警告信号を出力するようになっていてもよい。
さらに、本発明にかかるカーボンナノ構造物の製造装置は、上記警告信号に応答して警報を出力する警報出力部を備えていてもよい。かかる警報出力部としては、ランプの点灯や点滅で示すもの、音声および/またはブザーによって示すもの等を挙げることができる。
本発明について、実施例、比較例および図1〜8に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
なお、実施例における嵩密度の測定法は次のとおりである。
<嵩密度>
嵩密度は、粒子状担体を含む生成物の重量を電子天秤にて測定し、粒子状担体を含む生成物の体積をメスシリンダーにて測定し、粒子状担体を含む生成物の重量を体積で割った値を算出することにより求めた。
〔実施例1〕
<粒子状触媒1の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:1となるように調製して、触媒溶液とした。
具体的には、硝酸鉄Fe(NO・9HO、塩化インジウムInClおよび塩化スズSnCl・5HOを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:1となるように、攪拌しながらエタノールに溶解し、Fe、InおよびSnの合計の濃度が0.33mol/Lの触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液20gと粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)120gとを混合した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。冷却後、得られた生成物を粒子状態に解して粒子状触媒1を得た。
<粒子状触媒2の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように調製して、触媒溶液とした。
具体的には、硝酸鉄Fe(NO・9HO、塩化インジウムInClおよび塩化スズSnCl・5HOを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように、攪拌しながらエタノールに溶解し、Fe、InおよびSnの合計の濃度が0.33mol/Lの触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液20gと粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)120gとを混合した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。冷却後、得られた生成物を粒子状態に解して粒子状触媒2を得た。
<粒子状触媒3の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように調製して、触媒溶液とした。
具体的には、硝酸鉄Fe(NO・9HO、塩化インジウムInClおよび塩化スズSnCl・5HOを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように、攪拌しながらエタノールに溶解し、Fe、InおよびSnの合計の濃度が0.66mol/Lの触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液20gと粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)120gを混合した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。冷却後、得られた生成物を粒子状態に解して粒子状触媒3を得た。
<カーボンナノ構造物の製造>
得られた粒子状触媒1、2および3を、それぞれ、反応炉内に導入して加熱し、原料ガスと接触させてCVD反応によりカーボンナノ構造物を製造した。
具体的には、反応炉として円筒状の石英管(内径:26mm、長さ1000mm、容積:約0.53L)を用い、この石英管を鉛直に配置し、当該石英管の長手方向中央部(端から500mmの位置)に、触媒支持体として石英フィルター(ポアサイズ:40μm)を設置した。そして、この石英管の長手方向中央部400mmの領域、すなわち、石英管の両端からそれぞれ300mmの領域を除く中央部(反応領域およびガス予熱領域)の外周部を、マントルヒーター(炉径:30mm、炉長:400mm)で覆った。このマントルヒーターは、3ゾーン式であり、その炉長に沿って上部、中心、および、下部に、それぞれ、ヒーター及びヒーター制御用の熱電対が備えられており、1ヒーターあたりの電力量は180W、マントルヒーター全体の電力量は540Wであった。
上記マントルヒーターには温度コントローラが接続されており、マントルヒーターの上部、中心、および、下部のヒーターの温度を測定して、それぞれのヒーターの温度に基づき加熱量が制御されるようになっている。
この反応炉は、上記触媒支持体の下方から原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給して、触媒支持体上に置かれた粒子状触媒を流動させることができる流動床炉である。
上記反応炉の触媒支持体上に、上記粒子状触媒20gを置き、反応炉下方のガス流入口より、Heを1.8slmで約15分間流通させ、触媒支持体上の粒子状触媒を流動させて反応炉内の酸素を除去した。
酸素除去終了後、Heを1.8slmで流通させた状態で、700℃まで昇温した後、700℃で保持して粒子状触媒を加熱した。700℃までの昇温に要した時間と保持時間との合計時間は30分であった。
その後、700℃に加熱装置を加熱保持した状態で、キャリアガスHeに、原料ガスCを混合させた混合ガスを、ガス流速6.27cm/sで、上記ガス流入口より流通させてCVDを実施し、触媒上にカーボンナノ構造物を成長させた。なお、混合ガス中の原料ガスC濃度は10体積%であった。
このとき成長したカーボンナノ構造物を、走査型電子顕微鏡により観察した結果を、図2の(a)、(b)および(c)に示す。図2の(a)は粒子状触媒1を用いてCVDを行ったときの結果を、(b)は粒子状触媒2を用いてCVDを行ったときの結果を、(c)は粒子状触媒3を用いてCVDを行ったときの結果を示す。
図2の(a)ではカーボンナノ構造物は成長していない。また、図2の(b)においては、粒子状担体を含む生成物の嵩密度が0.6g/cm以上であったため、カーボンナノ構造物の成長が適正であるとは判断されなかった。これに対して、図2の(c)では粒子状担体上のカーボンナノ構造物により粒子状担体を含む生成物の嵩密度が0.6g/cm以下であったのでカーボンナノ構造物の成長が適正であると判断された。また、図2の(b)では、カーボンナノファイバーが主に成長し、カーボンナノコイルは殆ど成長していないのに対し、図2の(c)ではカーボンナノコイルを高い割合で含むカーボンナノ構造物が成長している。
<反応炉内温度の時間変化>
上記粒子状触媒1、2および3をそれぞれ用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を図1の(a)、(b)および(c)に示す。図1の(a)、(b)および(c)に示されるグラフにおいて、縦軸は温度(単位:℃、図1中「Temperature(℃)」と記載)、横軸は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0(分)としたときの時間を示す(単位:分、図1中「CVD time(min.)」と記載)。
なお、反応炉内温度の測定は熱電対を用いて行った。熱電対は、岡崎製作所製のシース熱電対(シース径:3.2mm、シース材質:ホスキンス2000)を用い、熱電対シース先端が、流動していない静止状態における粒子状触媒の最上面に触れる程度の高さになるように調整し、データロガーにより、1秒毎に温度測定を行った。また、得られた温度プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いてFFTフィルタリングによりグラフ平滑化を行った。この操作は、まず「平滑化に用いるデータ数」を指定した後、FFTフィルタリングにより、グラフ中に存在する周期が「指定したデータ数×データ取得間隔」で規定される値よりも小さな変動成分をデータから取り除くことで、グラフの平滑化を行う。
本実施例においては、FFTフィルタリング(150データ点使用)により、反応炉内温度変動データに含まれる周期が150秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
図1の(a)は、図2中(a)のカーボンナノ構造物が生成しなかった場合の、反応炉内温度の時間変化を示す。図1の(a)では、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図1の(a)中、円Aで囲まれた部分)は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は存在しない。
このように、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときには、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定することができる。
図1の(b)は、図2中(b)のカーボンナノ構造物が成長不足である場合の、反応炉内温度の時間変化を示す。図1の(b)では、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図1の(b)中、円Aで囲まれた部分)は存在するが、反応炉内温度が下降に転じたあとで下降の傾きが増大する点は存在しない。また、図2(b)よりカーボンナノ構造物の成長は見られるが、粒子状担体を含む生成物の嵩密度を測定してみると0.69g/cmとなった。
このように、上記反応炉内温度の時間変化として、上記混合ガスの供給開始後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しても、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しない場合には、カーボンナノ構造物の成長が見られていても、全粒子状担体の表面積に占めるカーボンナノ構造物の成長している粒子状担体上の領域の割合が少ないなどの理由により粒子状担体を含む生成物の嵩密度が低くなっておらず、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定することが出来る。
図1の(c)は、図2中(c)のカーボンナノ構造物が十分に成長した場合、すなわち、カーボンナノ構造物の成長が適正である場合の、反応炉内温度の時間変化を示す。図1の(c)では、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図1の(c)中、円Aで囲まれた部分)が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点(図1の(c)中、円Bで囲まれた部分)が存在する。
このように、上記反応炉内温度の時間変化として、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときに、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定することができる。
〔実施例2〕
<粒子状触媒4の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように調製して、触媒溶液とした。
具体的には、硝酸鉄Fe(NO・9HO、塩化インジウムInClおよび塩化スズSnCl・5HOを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように、攪拌しながらエタノールに溶解し、Fe、InおよびSnの合計の濃度が0.33mol/Lの触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液に、粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)250gを添加した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。冷却後、得られた生成物を粒子状態に解して粒子状触媒4を得た。
<カーボンナノ構造物の製造>
得られた粒子状触媒4を、反応炉内に置いて加熱し、原料ガスと接触させてCVD反応によりカーボンナノ構造物を製造した。
実施例1と同じ反応炉を用い、石英管の長手方向中央部500mmの領域、すなわち、石英管の両端からそれぞれ250mmの領域を除く中央部(反応領域およびガス予熱領域)の外周部を、電気炉で覆った。この電気炉は、3ゾーン式であり、その炉長に沿って上部、中心、および、下部に、それぞれ、ヒーター及びヒーター制御用の熱電対が備えられている。ヒーター制御用の熱電対を、反応炉の炉壁から2〜3cm遠ざけ、下部ヒーターの最大加熱量を360W、中心ヒーターおよび上部ヒーターの最大加熱量を240Wに制限して用いた。さらに、反応炉内温度の変化に追随して電気炉の制御が行われないように調整を行った。但し、電気炉の温度は、後述するように700℃で一定となるように制御した。
上記加熱炉には温度コントローラが接続されており、加熱炉の上部、中心、および、下部のヒーターの温度を測定して、それぞれのヒーターの温度に基づき、加熱量が制御されるようになっている。本加熱炉の電力測定は専用トランスデューサー(富士電機製)を用いて行った。
上記反応炉の触媒支持体上に、上記粒子状触媒4を20g置き、反応炉下方のガス流入口より、Arを1.8slmで約15分間流通させ、触媒支持体上の粒子状触媒4を流動させて反応炉内の酸素を除去した。
酸素除去終了後、Arを1.8slmで流通させた状態で、700℃まで昇温した後、700℃で保持して粒子状触媒4を加熱した。700℃までの昇温に要した時間と保持時間との合計時間は50分であった。
その後、700℃に加熱装置を加熱保持した状態で、キャリアガスArに、原料ガスCを混合させた混合ガスを、ガス流速6.27cm/s(2slm)で、上記ガス流入口より流通させてCVDを実施し、触媒上にカーボンナノ構造物を成長させた。なお、混合ガス中の原料ガスC濃度は10体積%であった。
<反応炉内温度の時間変化>
上記粒子状触媒4を用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を図3に示す。図3に示すグラフにおいて、縦軸と横軸は、図1について説明したとおりである。また、反応炉内温度の測定は、実施例1と同様にして行った。また、得られた温度プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いFFTフィルタリング(50データ点使用)により、温度プロファイル内に含まれる周期が50秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
図3に示すグラフでは、上記混合ガスの供給開始後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図3中、円Aで囲まれた部分)が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点(図3中、円Bで囲まれた部分)が存在する。これにより、本実施例では、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定することができる。
そこで、実際にカーボンナノ構造物の成長段階における複数の時点で、成長したカーボンナノ構造物を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果を、図3および図4に示す。図3において、図3のグラフ中、1、2、3および4で示される各観察点での観察結果を、対応する番号を付したそれぞれの走査型電子顕微鏡像に示す。図3に示されるように、1から3までは、カーボンナノ構造物が成長するための触媒粒子形成過程であり、4の点においてはじめてカーボンナノ構造物が成長し始めている。
また、図4において、図4のグラフ中、5、6で示される各観察点での観察結果を、対応する番号を付したそれぞれの走査型電子顕微鏡像に示す。図4に示されるように、5と比較して6では、カーボンナノ構造物が急激に成長していることが判る。
また、図4中、高倍率での走査型電子顕微鏡像に示されるように、図4の5、6ではカーボンナノコイルを高い割合で含むカーボンナノ構造物が成長していた。
さらに、観察点5の時点における粒子状担体を含む生成物の嵩密度は0.80g/cmであるのに対し、観察点6の時点における粒子状担体を含む生成物の嵩密度は0.41g/cmであった。このように、嵩密度が小さいことは、観察点5と比較して観察点6ではカーボンナノ構造物が十分に成長していることを改めて示している。
〔実施例3〕
<カーボンナノ構造物の製造>
反応炉に置く触媒量を20gと40gとの2種類の量でそれぞれ行った以外は、実施例2と同様にして、カーボンナノ構造物を製造した。
<反応炉内温度の時間変化>
上記粒子状触媒4を、2種類の使用量で用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を図5に示す。図5に示すグラフにおいて、縦軸と横軸は、図1について説明したとおりである。また、反応炉内温度の測定は、実施例1と同様にして熱電対を用いて行った。また、得られた温度プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いFFTフィルタリング(50データ点使用)により、温度プロファイル内に含まれる周期が50秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
図5中、(a)で示されるグラフは、粒子状触媒4を20g用いてカーボンナノ構造物を製造したときの反応炉内温度の時間変化を測定した結果であり、(b)で示されるグラフは、粒子状触媒4を40g用いてカーボンナノ構造物を製造したときの反応炉内温度の時間変化を測定した結果である。
図5中、粒子状触媒4を20g用いたときの結果を示す(a)のグラフでは、上記混合ガスの供給後反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図5の(a)において、円Aで囲まれた部分)が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点(図5の(a)において、円Bで囲まれた部分)が存在する。これにより、(a)ではカーボンナノ構造物の成長が適正であると判定することができる。
これに対して、図5中、粒子状触媒4を40g用いたときの結果を示す(b)のグラフでは、上記混合ガスの供給開始後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図5の(b)において、円Aで囲まれた部分)は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は存在しないので、カーボンナノ構造物が成長不足であると判定することができる。
上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点と、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点とが存在する(a)の場合と、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は存在しない(b)の場合とにおいて、成長したカーボンナノ構造物を走査型電子顕微鏡により観察した結果をそれぞれのグラフとともに示す。走査型電子顕微鏡像に示されるように、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点と、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点とが存在する(a)の場合は、粒子状担体を含む生成物の嵩密度が0.6g/cm以下であり、カーボンナノ構造物が十分に成長していた。これに対して、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は存在しない(b)の場合は、粒子状担体を含む生成物の嵩密度が0.6g/cm以上であり、カーボンナノ構造物が殆ど成長していないことが確認された。
さらに、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点は存在しない(b)の場合における粒子状担体を含む生成物の嵩密度は1.88g/cmであるのに対し、上記反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点と、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点とが存在する(a)の場合における粒子状担体を含む生成物の嵩密度は0.34g/cmであった。このように、嵩密度が小さいことは、(b)と比較して(a)の場合はカーボンナノ構造物がよく成長していることを示している。
また、(a)の場合、図5中、高倍率での走査型電子顕微鏡像に示されるように、カーボンナノコイルを高い割合で含むカーボンナノ構造物が成長していた。
〔実施例4〕
<カーボンナノ構造物の製造>
実施例2と同様にして、カーボンナノ構造物を製造した。
<反応炉内温度の時間変化>
上記粒子状触媒4を用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、反応炉内温度の時間変化を測定した結果を図6の(a)に示す。図6の(a)に示すグラフにおいて、縦軸と横軸は、図1について説明したとおりである。また、反応炉内温度の測定は、実施例1と同様にして熱電対を用いて行った。また、得られた温度プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いFFTフィルタリング(50データ点使用)により、温度プロファイル内に含まれる周期が50秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
図6の(a)に示すグラフでは、上記混合ガスの供給開始後、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点(図6の(a)において、円Aで囲まれた部分)が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点(図6の(a)において、円Bで囲まれた部分)が存在するので、本実施例では、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定することができる。
<ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化>
上記粒子状触媒4を用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果を図6の(b)に示す。図6の(b)に示すグラフにおいて、縦軸はガス流入口とガス流出口との差圧(単位:kPa、図6の(b)中「Differential Pressure(kPa)」と記載)を示し、横軸は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0(分)としたときの時間を示す(単位:分、図6の(b)中「CVD time(min.)」と記載)。
ここで、ガス流入口とガス流出口との差圧の測定は、ガス流入口と、ガス流出口との間に、0〜10kPaの範囲の差圧計(横河電機製)と0〜50kPaの範囲の差圧計(長野計器製)とを並列接続し、データロガーにより1秒毎に差圧を測定することにより、行った。また、得られた差圧プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いFFTフィルタリング(50データ点使用)により、差圧プロファイル内に含まれる周期が50秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
図6の(b)に示すグラフにおいて、斜線で示される範囲では、ガス流入口とガス流出口との差圧が、周期性を持つ特徴的な変動をしていることが観察された。かかる変動は式(1)
で近似され(のこぎり波形状)、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下と定義された変動であることが判った。斜線で示される範囲でみられる差圧変動の上昇側の傾きの大きさはCVD初期の差圧上昇速度の約15倍で、斜線で示される範囲内に存在する複数の変動でほぼ同じ値であったが、周期については、様々のものが混ざり合っていた。さらに、差圧が下がりきらないうちに再び上昇に転じる場合もあった。かかる変動は、カーボンナノ構造物が粒子状担体上に急激に成長したことにより、カーボンナノ構造物の成長した粒子状担体同士の付着力が増加し、ガス流による粒子状担体同士の分離が困難になったため、カーボンナノ構造物が成長していない場合と比較して流動床の膨張と破裂とをゆっくりと大きく周期的に繰り返している状態を示すと考えられ、流動床の劣化を示している。変動が式(1)で近似されるような形状になるのは、流動床の膨張の速度と破裂の速度に大きな差があるためであると考えられる。
〔実施例5〕
<カーボンナノ構造物の製造>
粒子状触媒1、2および3の代わりに、粒子状触媒4を用いた以外は、実施例1と同様にして、カーボンナノ構造物を製造した。
<加熱量の時間変化>
このときの加熱量の時間変化を測定した結果を図7に示す。図7に示されるグラフにおいて、縦軸はマントルヒーターの上部、中心、および、下部のヒーターの加熱量を、それぞれ、各ヒーターの電力量で示した値(単位:W、図7中「Power input(W)」と記載)、横軸はCVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0(分)としたときの時間を示す(単位:分、図7中「CVD time(min.)」と記載)。また、図7中、「CVD開始」および「CVD終了」と記載されている時点は、それぞれ、上記混合ガス中の原料ガスを供給することによりCVDを開始した時点、および、上記混合ガス中の原料ガスの供給を停止しマントルヒーターからの加熱電力供給を停止することによりCVDを終了した時点を示す。また、図7中、Iはヒーター下部の加熱量を、IIはヒーター中心の加熱量を、IIIはヒーター上部の加熱量を示す。ここで、ヒーターに加えられた加熱量は、5秒毎に測定された。また、得られた電力量プロファイルは、グラフ描画ソフトOrigin(OriginLab社製)を用いFFTフィルタリング(20データ点使用)により、差圧プロファイル内に含まれる周期が100秒以下の変動成分を取り除きグラフ平滑化を行った。
なお、上記マントルヒーターには温度コントローラが接続されており、マントルヒーターの上部、中心、および、下部のヒーターの温度を測定して、それぞれのヒーターの温度に基づき加熱量が制御されるようになっている。ここで、加熱量とは、反応炉内の温度変動に伴い、ヒーターの温度が変動したことに伴い、ヒーターの温度を700℃に維持するためにヒーターに加えられた加熱量をいう。
図7に示されるように、ヒーター中心および上部の加熱量はカーボンナノ構造物の成長段階に応じて変動し、CVD開始時間から約85分後付近で急激に減少した。そして、この点の前である(1)の時点では流動床はよく流動しており、この点の後である(2)の時点では流動床は流動していなかった。
また、(1)の時点で上記混合ガスの供給を停止し、カーボンナノ構造物の成長を止めたところ、カーボンナノ構造物が得られたことが確認され、得られたカーボンナノ構造物には塊状の生成物は含まれていなかった。これに対して、(2)の時点で上記混合ガスの供給を停止し、カーボンナノ構造物の成長を止めたところ、カーボンナノ構造物が得られたことが確認され、得られたカーボンナノ構造物には大きな塊状の生成物が含まれていた。また、2時間CVDを行った場合は、得られたカーボンナノ構造物の全領域で塊状の生成物が存在していた。
これにより、流動床の流動が停止した後に、カーボンナノ構造物の生成を続けることにより、成長したカーボンナノ構造物同士の付着が起こり、生成物が塊状になることが判る。
〔実施例6〕
<カーボンナノ構造物の製造>
実施例2と同様にして、カーボンナノ構造物を製造した。
<加熱量の時間変化>
このときの、加熱量の1秒毎の時間変化を測定した結果を図8の(a)および(b)のIに示す。図8の(a)および(b)に示されるグラフにおいて、縦軸右側は電気炉の上部のヒーターの加熱量を各ヒーターの電力量で示した値(単位:W、図8の(a)および(b)中「Power input(Watt)」と記載)、横軸は、CVD開始時間すなわち上記混合ガスを供給し始めた時間を0(分)としたときの時間を示す(単位:分、図8中「CVD time(min.)」と記載)。本実施例では加熱量プロファイルの平滑化は行わなかった。
なお、上記電機炉には温度コントローラが接続されており、電気炉の上部、中心、および、下部のヒーターの温度を測定して、それぞれのヒーターの温度に基づき加熱量が制御されるようになっている。ここで、加熱量とは、反応炉内の温度変動に伴い、ヒーターの温度が変動したことに伴い、ヒーターの温度を700℃に維持するためにヒーターに加えられた加熱量をいう。
図8の(a)および(b)に示されるように、ヒーター上部の加熱量はカーボンナノ構造物の成長段階に応じて変動し、CVD timeが127.3分付近で急激に減少した。この時間は上記実施例5において、ヒーター中心および上部の加熱量が急激に減少した点に相当すると考えられる。
このときの上記反応炉の加熱量の減少割合は、上記反応炉の加熱量が急激に減少する直前5分間の加熱量の平均値である140ワットと、上記反応炉の加熱量が急激に減少した後一定になった時の過熱量105ワットとを用いて求められ、(140−105)/140=25%であった。
<反応炉内温度の時間変化>
上記粒子状触媒4を用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、反応炉内温度の時間変化を測定した結果(図8中、IIと表示)を、図8の(a)に、加熱量の時間変化とともに示す。図8の(a)に示すグラフにおいて、左側縦軸は図1について説明したとおりである。また、反応炉内温度の測定は、実施例1と同様にして熱電対を用いて行った。なお、本実施例では温度プロファイルの平滑化は行わなかった。
図8の(a)に示されるように、加熱量が急激に減少すると同時に、反応炉内温度の急激な上昇が観察された。このときの反応炉内温度の上昇割合は、反応炉内温度が急激に上昇する前の反応炉内温度である692.5℃と、反応炉内温度が急激に上昇した後の反応炉内温度である707.5℃とを用いて求められ、(707.5−692.5)/692.5=2、2%であった。本実施例においては、反応炉内温度の急上昇が現れた後に直ちにCVDを終了したが、このような温度の急上昇の後そのまま反応をしばらく継続した場合には、炉内温度は上昇した後の温度で一定値となる。他の現象による温度の上昇においてはその後温度が減少に転ずるが、炉内の固着による温度上昇の場合は、温度減少に転ずる点はなかった。これにより、固着の温度上昇とその他の温度上昇を区別することも可能である。
<ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化>
また、上記粒子状触媒4を用いてカーボンナノ構造物を製造したときに、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定した結果(図8中、IIIと表示)を、図8の(b)に、加熱量の時間変化とともに示す。図8の(b)に示すグラフにおいて、左側縦軸は図6の(b)について説明したとおりである。また、ガス流入口とガス流出口との差圧の測定は、実施例4と同様にして行った。なお、本実施例では差圧プロファイルの平滑化は行わなかった。
図8の(b)に示されるように、加熱量が急激に減少すると同時に、ガス流入口とガス流出口との差圧が急激に減少した。
このときのガス流入口とガス流出口との差圧は7.9kPa付近で細かく振動しながら少しずつ上昇しているが、上記の加熱量の落ち込みとほぼ同時に、細かな振動もすることなく7.5kPa付近で一定値を示すようになった。ただし、129分に見られる差圧の変動は、排気ガスラインのバルブ操作により生じたものである。
本実施例においては、反応炉内温度の0.2%以上の上昇、差圧が一定値になる、加熱量の20%以上の減少のいずれもが見られたが、これらの現象のうちのいずれか1つが見られれば、固着と判断することも可能である。
このように、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、温度が一定値になる、または、上記差圧が一定値となる、または、上記反応炉の加熱量の20%以上の減少のいずれかが検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定することができると言える。
本発明のカーボンナノ構造物の製造方法および製造装置を用いれば、カーボンナノ構造物の成長段階を確認して、効率的にカーボンナノ構造物を製造するとともに、成長したカーボンナノ構造物の固着を防止することができる。それゆえ、本発明は、カーボンナノ構造物の製造工業において利用可能であるのみならず、さらにはこれを組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業等においても利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
1 反応炉
2 触媒支持体
3 粒子状触媒
4 加熱装置
5 ガス流入口
6 ガス流出口
7 温度測定器(熱電対)
8 差圧計
9 加熱量を測定するための測定器(温度コントローラ)
10 データロガー
100カーボンナノ構造物の製造装置

Claims (11)

  1. 鉛直方向に延びる筒状の反応炉に置かれた粒子状触媒に、加熱下で、当該粒子状触媒の下方から原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給することによって、上記混合ガスで上記粒子状触媒を流動させながら、上記粒子状触媒と上記原料ガスとを接触させて、粒子状触媒上にカーボンナノ構造物を成長させる、カーボンナノ構造物の製造方法であって、
    反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、得られた測定値に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程を含むことを特徴とするカーボンナノ構造物の製造方法。
  2. 上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在し、且つ、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在するときに、カーボンナノ構造物の成長が適正であると判定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  3. カーボンナノ構造物の成長が適正であるとの判定に基づいて、カーボンナノ構造物の製造を継続することを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  4. 上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、
    i)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点が存在しないとき、または、
    ii)反応初期期間が過ぎて反応炉内温度が安定した時点以降に反応炉内温度が上昇しその後下降に転じる点は存在するが、反応炉内温度が下降に転じた後で下降の傾きが増大する点が存在しないときに、
    カーボンナノ構造物が成長不足であると判定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  5. 上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化を測定し、ガス流入口とガス流出口との差圧が、下記の式(1)
    で近似され、変動の上昇側の傾きA÷TがCVD初期の差圧上昇速度の10倍以上、周期Tが1分以上40分以下の範囲である、のこぎり波形状の変動を始めるときに、上記粒子状触媒の流動が劣化していると判定する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  6. 上記粒子状触媒の流動が劣化しているとの判定に基づき、上記混合ガスの供給を停止することを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  7. 上記カーボンナノ構造物の成長段階を判定する工程は、反応炉内温度の時間変化、ガス流入口とガス流出口との差圧の時間変化、および/または、反応炉の加熱量の時間変化を測定し、上記反応炉内温度の0.2%以上の上昇後、上記反応炉内温度が一定値になる点、上記差圧が一定値となる点、および/または、上記反応炉の加熱量が20%以上減少する点が検知されるときに、成長したカーボンナノ構造物が固着していると判定する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  8. 成長したカーボンナノ構造物が固着しているとの判定に基づき、上記混合ガスの供給および反応炉の加熱を停止することを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  9. 上記粒子状触媒は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒が担持されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  10. 上記粒子状触媒として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の粒子状触媒を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のカーボンナノ構造物の製造方法。
  11. 粒子状触媒を載置する触媒支持体が設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉と、
    該反応炉の外周部に設置された加熱装置と、
    該反応炉の上記触媒支持体の下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、該触媒支持体を通して粒子状触媒に供給するためのガス供給装置と、
    反応炉内温度を測定するための温度測定器、ガス流入口とガス流出口との差圧を測定するための差圧計、および/または、反応炉の加熱量を測定するための測定器と、を備えるカーボンナノ構造物の製造装置であって、
    測定された反応炉内温度、ガス流入口とガス流出口との差圧、および/または、反応炉の加熱量の時間変化に基づいて、カーボンナノ構造物の成長段階を判定するための判定部を含むことを特徴とするカーボンナノ構造物の製造装置。
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