JP2010234179A - 自動車車体の塗装方法およびその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成で自動車車体の外板面上に塗布された第1塗料のダストが、内板面の第3塗膜上に付着することに起因した美観の低下を効果的に防止する。
【解決手段】下地塗膜4が形成された自動車車体の外板面2上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜5を形成する第1塗膜形成工程K1と、この第1塗膜5の形成後にその上に、第2塗料を塗布して上記第1塗膜5よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該第2塗膜単独もしくは上記第1塗膜5とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜6を形成する第2塗膜形成工程K2とを備えた自動車車体の塗装方法であって、少なくとも上記第1塗膜形成工程K1よりも後に、第3塗料を内板面3上に塗布して外板2側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜7を形成する第3塗膜形成工程K3を備えた自動車車体の塗装方法およびその装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、下地塗膜が形成された自動車車体の外板面および内板面に塗料を塗布して塗装する自動車車体の塗装方法およびその装置に関するものである。
従来、下記特許文献1に示されるように、電着塗装面に形成する第1着色上塗り塗料、第2着色上塗り塗料およびクリヤ塗料を順次塗装してなる複数層上塗り塗膜の耐チッピング性および平滑性を向上させることを目的として、カチオン電着塗面に、第1着色上塗り塗料、第2着色上塗り塗料およびクリヤ塗料を順次塗装して複層の上塗り塗膜を形成する自動車外板部等の導電性金属製品の塗装方法において、上記第1着色上塗り塗料が、樹脂成分として(1)水酸基含有樹脂とメラミン樹脂とからなる混合物、または(2)カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂とからなる混合物を使用し、かつ、りん片状顔料を樹脂固形分100重量部あたり0.5重量部以上の比率で含有する着色塗料を使用したものが知られている。
特開2000−281962号公報
上記のようにカチオン電着塗面に、第1塗料(第1着色上塗り塗料)と、第2塗料(第2着色上塗り塗料)と、クリヤ塗料とを順次塗装した後、これらを同時に硬化させて複数層の上塗り塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、上記第1塗料にりん片状顔料を特定量含有させることにより、従来の中塗り塗料の塗装もしくはその乾燥工程を省略しても、塗膜の平滑性および耐チッピング性を向上させることが可能である。しかし、上記のように中塗り塗料の塗装を省略すると、この中塗り塗料が有していた紫外線遮断機能等が得られない。このため、上記上塗り塗料が、紫外線の遮断機能が弱い塗料、例えば青色、白色または赤色等の塗料である場合には、車体外板面上に形成された電着塗料からなる下地塗膜に紫外線が到達することが避けられず、その影響を受けて下地塗膜が早期に劣化し易いという問題があった。
上記の弊害を防止するために、紫外線等を反射し、あるいは吸収する機能を有する顔料を上記第1塗料に混入することにより、下地塗膜を隠蔽して保護することも考えられるが、この場合には、第1塗料に混入された顔料が、車体の内板面上に塗布された塗料に悪影響を与える可能性がある。すなわち、車体の外板面上に塗布される第2塗料は、車体の外観塗膜色を発色するものであるため、予め取り揃えられた多数種の色彩から選択されて使用され、かつ内板面上に塗布される第3塗料により形成される第3塗膜も、美観の観点から外板面上に塗布される上記第2塗料により形成される第2塗膜と同色または近似色とすることが一般的である。これに対して上記第2塗料により形成される第2塗膜の下方に塗布される第1塗料は、上層の塗膜が所望の外観塗膜色を発色し得るのであれば、その色彩を無彩色とすることができ、これにより上記第1塗料に汎用性を持たせることが可能である。しかし、このように構成した場合には、車体の外板面上に上記第1塗料を塗布する際に、そのダストが内板面の第3塗膜上に付着すると、内板面における塗膜の美観が低下するという問題がある。
なお、上記第1塗料により形成される塗膜の色彩を、外観塗膜色を発色する上記第2塗料からなる塗膜および内板面に塗布される第3塗料からなる塗膜と同色または近似色に設定した場合には、第1塗料のダストが内板面の第3塗膜上に付着しても、内板面における塗膜の美観が顕著に低下することはない。しかし、上記のように下地隠蔽性を有する顔料が混入された上記第1塗料により形成される塗膜を、外観塗膜色に対応させて各種の色彩にそれぞれ設定するためには、上記第1塗料の塗装に要する配管を多数取り揃えてこれを頻繁に交換する必要があり、塗装の作業性が悪化することが避けられない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で自動車車体の外板面上に塗布された第1塗料のダストが、内板面の第3塗膜上に付着することに起因した美観の低下を効果的に防止することができる自動車車体の塗装方法およびその装置を提供することを目的としたものである。
請求項1に係る発明は、下地塗膜が形成された自動車車体の外板面上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、この第1塗膜の形成後にその上に、第2塗料を塗布して上記第1塗膜よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該第2塗膜単独または上記第1塗膜とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程とを備えた自動車車体の塗装方法であって、少なくとも上記第1塗膜形成工程よりも後に、第3塗料を内板面上に塗布して外板側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜を形成する第3塗膜形成工程を備えたものである。
ここで、下地隠蔽性とは、明度≦60の塗色(照明角度−45°、受光角度0°)の場合に、紫外光(300〜400nm)の透過率0.05%以下と白黒隠蔽性を10μm以下で確保できることを意味し、かつ明度>60の塗色(照明角度−45°、受光角度0°)の場合に、紫外光(300〜400nm)の透過率0.05%以下と白黒隠蔽性を20μm以下で確保できることを意味する(JIS K 5400・7.2(2)f参照)。
また、近似色とは、色差≦2(照明角度−45°、受光角度0°)の関係にあるものを意味する(JIS Z 8730参照)。
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の自動車車体の塗装方法において、上記第1塗膜形成工程と第2塗膜形成工程との間に第3塗膜形成工程が設けられたものである。
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2記載の自動車車体の塗装方法において、上記第1塗膜形成工程で、第2塗膜よりも明度の低い第1塗膜を外板面上に形成するものである。
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車車体の塗装方法において、少なくとも外板面上に形成された上記第2塗膜上に、クリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成工程を備えたものである。
請求項5に係る発明は、下地塗膜が形成された自動車車体の外板面上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜を形成する第1塗膜形成部と、この第1塗膜上に第2塗料を塗布して上記第1塗膜よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該第2塗膜単独もしくは上記第1塗膜とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜を形成する第2塗膜形成部とを備えた自動車車体の塗装装置であって、少なくとも上記第1塗膜を形成した後に、その上に第3塗料を内板面上に塗布して上記外板側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜を形成する第3塗膜形成部を備えたものである。
請求項6に係る発明は、上記請求項5記載の自動車車体の塗装方法において、少なくとも上記外板面の第2塗膜上に、クリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成部を備えたものである。
請求項1および請求項5に係る発明では、少なくとも第1塗膜の形成後に、第3塗料を内板面上に塗布して外板側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜を形成するように構成したため、上記第1塗膜を形成する際に第1塗料のダストが内板面に付着することにより形成されたダスト塗膜を上記第3塗膜により隠蔽することにより、内板面の美観を良好状態に維持することができる。しかも、上記第2塗膜により覆われる第1塗膜の色彩を無彩色に設定する等により、当該第1塗膜用の第1塗料に汎用性を持たせることができるため、この第1塗料を塗布するために必要な配管を低減して塗装装置を効果的に簡略しつつ、自動車車体の外板面上に塗布された第1塗料のダストが、内板面の第3塗膜上に付着することに起因した美観の低下を効果的に防止できるとともに、第1塗膜を形成する第1塗料に下地隠蔽用の顔料を混入し、あるいは上記第1塗料に対する着色顔料の含有量を通常よりも多く設定することにより、上記第1塗膜が有する下地隠蔽性を効果的に向上させることができる。したがって、上記外板面に形成された下地塗膜上に中塗り塗料を塗装して乾燥させるという作業を省略して塗装作業の工程を簡略化しつつ、外板面に照射された可視光または紫外線等を、上記第1塗膜に配合された着色顔料等が反射または吸収して、下地塗膜に上記紫外線等が到達するのを抑制することができ、これにより簡単な構成で下地塗膜が早期に劣化するのを効果的に防止できるという利点がある。
請求項2に係る発明では、上記第1塗膜の形成後に第3塗膜を形成し、さらにその後に第2塗膜を形成するよう構成したため、第1塗膜用の第1塗料が第3塗膜上に付着することに起因した美観の低下を生じる可能性はなく、上記第3塗膜を形成する際に自動車車体の内板面に噴霧された第3塗料のダストが外板面の第1塗膜上に付着してダスト塗膜が形成されたとしても、その上に上記第2塗膜が形成されることにより上記ダスト塗膜を隠蔽できる。また、上記第2塗料と第3塗料との色彩が微妙に異なっている場合においても、この第3塗料が外板面上に露出して自動車車体の外板面における美観が低下するという事態の発生を防止することができる。
請求項3に係る発明では、第1塗料に対する着色顔料の含有量を通常よりも多く設定する等により、第1塗膜形成工程で自動車車体の外板面に形成される第1塗膜の明度が、第2塗膜形成工程で自動車車体の外板面に形成される第2塗膜よりも低くなるように構成したため、より簡単な構成で下地塗膜に紫外線が照射されること等に起因した下地塗膜の早期劣化を効果的に抑制できる等の利点がある。
請求項4および請求項6に係る発明では、自動車車体の外板面上に形成された上記第2塗膜上に、クリヤ塗膜を形成するように構成したため、このクリヤ塗膜により上記第2塗膜を保護してその耐候性および平滑性を効果的に維持することができ、上記第3塗膜を形成する際に内板面に向けて噴霧された第3塗料のダストが外板面の第2塗膜上に付着した場合においても、外板面の平滑性を充分に確保することができる。
本発明に係る自動車車体の塗装方法の第1実施形態を示す工程図である。 本発明の比較例により形成された塗膜形状を示す説明図である。 本発明の第1実施形態により形成された塗膜形状を示す説明図である。 本発明に係る塗装方法により形成された塗膜の光の反射状態を示す説明図である。 本発明に係る自動車車体の塗装方法の第2実施形態を示す工程図である。 本発明の第2実施形態により形成された塗膜形状を示す説明図である。
図1は、本発明に係る自動車車体1の塗装方法およびその装置の第1実施形態を示す塗装工程図である。この塗装工程は、自動車車体1の外板面2および内板面3上にそれぞれ下地塗膜4を形成する下地塗膜形成工程K0と、外板面2の下地塗膜4上に第1塗膜5を形成する第1塗膜形成工程K1と、この外板面2の第1塗膜5上に第2塗膜6を形成する第2塗膜形成工程K2と、上記内板面3の下地塗膜4上に第3塗膜7を形成する第3塗膜形成工程K3と、上記内板面3の第3塗膜7上にクリヤ塗膜8を形成する内板クリヤ塗膜形成工程K4と、上記外板面2の第2塗膜6上にクリヤ塗膜9を形成する外板クリヤ塗膜形成工程K5と、上記第1〜第3塗膜5〜7およびクリヤ塗膜8,9を焼付乾燥させる焼付乾燥工程(図示せず)とを備えている。
上記下地塗膜形成工程K0では、例えば自動車車体1を電着塗料の入ったタンク内に浸漬した状態で直流電流を通電して電着塗装を施した後、上記タンクから引き上げられた自動車車体1を乾燥炉内に搬送して焼付乾燥させることにより、自動車車体1の防錆機能等を有する下地塗膜4を形成する。上記電着塗装方法には、クロム酸塩等を防錆材として用いたアニオン形と、防錆力に優れたエポキシ樹脂等をアミンで変性したものを用いるカチオン形とがある。
上記第1塗膜形成工程K1では、エアスプレー、エアレススプレーまたは静電霧化塗装機等からなる静電塗装機11を有する第1塗膜形成部12において、自動車のサイドドア等からなる開閉体13を略閉止した状態で、上記自動車車体1の外板面2に対して第1塗料を噴霧塗装することにより、上記外板面2の下地塗膜4上に高い下地隠蔽性を有する第1塗膜5を形成する。上記第1塗料は、下地隠蔽性を有する第1塗膜5を形成するとともに、この第1塗膜5を所定色に発色させるための顔料と、樹脂成分等とを、有機溶剤もしくは水からなる溶媒に溶解または分散させることによって得られる液状塗料であり、必要に応じて体質顔料、沈降防止剤、塗面調整剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤および付着付与剤等を適宜含有させることができる。
上記第1塗料に含有される顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、アルミフレーク、およびそれらの組合せからなる群から選択されたものが使用される。また、必要に応じて、所定の着色顔料、例えば亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料等の着色顔料から選ばれた一種を使用し、または二種以上を混合して使用することもできる。
上記樹脂成分としては、熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。この熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤とからなる組成物、酸基含有樹脂およびエポキシ基含有樹脂を主成分とする酸・エポキシ架橋系樹脂組成物等を挙げることができる。なお、上記樹脂成分として、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂等の架橋剤とからなる熱硬化性樹脂組成物を使用することが、より好ましい。
上記第1塗料に含有される顔料として、例えばカーボンブラックや二酸化チタン等からなるグレー系の着色顔料を使用することにより、上記第1塗膜5上に形成される第2塗膜6に対応した明度を有する無彩色に、上記第1塗膜5の色彩が設定される。すなわち、この第1塗料の色彩は、例えばダークグレー、グレー、ライドグレー、スーパライトグレーおよびホワイトからなる5段階の明度を有し、かつ優れた下地隠蔽機能を有する無彩色に設定されるようになっている。なお、上記着色顔料の含有量を通常よりも多く設定した場合、つまり第2塗膜6に対応した明度よりも第1塗膜5の明度が低くなるように着色顔料の含有量を設定した場合には、上記第1塗膜5が有する下地隠蔽性を充分に確保することができる。
その後、上記第2塗膜形成工程K2では、エアスプレー、エアレススプレーまたは静電霧化塗装機等からなる静電塗装機14を有する第2塗膜形成部15において、上記サイドドア等からなる開閉体13を略閉止状態に維持しつつ、外板面2の第1塗膜5を硬化させずに未硬化の状態で、その上に第2塗料を噴霧塗装することにより第2塗膜6を形成する。上記第2塗料は、第2塗膜6を所定の外観塗膜色に発色させるための着色顔料と、樹脂成分等とを、有機溶剤もしくは水からなる溶媒に溶解または分散させることによって得られる液状塗料であり、必要に応じて体質顔料、沈降防止剤、塗面調整剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤および付着付与剤等を適宜含有させることができる。
上記第2塗料に含有される着色顔料としては、上記第1塗膜5よりも下地隠蔽性が低く、かつ予め設定された多数の外観塗膜色から選定された特定色に、当該第2塗膜6単独または上記第1塗膜5とともに第2塗膜6を発色させるものが使用される。具体的には、上記着色顔料として、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料等の着色顔料から選ばれた1種を使用し、または2種以上を混合して使用することができる。
次いで、第3塗膜形成工程K3では、エアスプレー、エアレススプレーまたは静電霧化塗装機等からなる静電塗装機16を有する第3塗膜形成部17において、上記開閉体13を大きく開放した状態で自動車車体1内に上記静電塗装機16を導入して上記内板面3に第3塗料を噴霧塗装することにより、内板面3の下地塗膜4上に内板面3の外観塗膜色を発色する第3塗膜7を形成する。上記第3塗料は、外観塗膜色を発色するための着色顔料と、樹脂成分等とを、有機溶剤もしくは水からなる溶媒に溶解または分散させることによって得られる液状塗料であり、必要に応じて体質顔料、沈降防止剤、塗面調整剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤および付着付与剤等を適宜含有させることができる。上記第3塗料に含有される顔料としては、外板面2の上記第2塗料に含有されるものと同様のものが使用されることにより、この第2塗料により形成される第2塗膜6と同色または近似色に設定された外観塗膜色に、上記第3塗料により形成される第3塗膜7が発色されるようになっている。
上記第1〜第3塗膜5〜7を形成する第1〜第3塗料として水溶性塗料を使用した場合には、その水分を気化させるためのプレヒートを行った後、内板クリヤ塗膜形成工程K4に移行して開閉体13を開放状態に維持しつつ、内板面3の第3塗膜7上にクリヤ塗膜用塗料をエアスプレー、エアレススプレー、静電方式等の噴霧塗装法により塗布することによりクリヤ塗膜8を形成する。このクリヤ塗膜用塗料としては、例えば熱硬化性樹脂組成物および溶媒を含有する液状塗料が使用され、さらに必要に応じて、光輝性顔料、着色顔料、沈降防止剤、塗面調整剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、付着付与剤等を適宜含有させることができる。上記光輝性顔料および着色顔料は、クリヤ塗膜8の透明性を損なわない程度に配合することが好ましい。
次いで、外板クリヤ塗膜形成工程K5に移行して開閉体13を略閉止した状態で、内板クリヤ塗膜形成工程K4と同様にして外板面2の第2塗膜6上にクリヤ塗膜用塗料をエアスプレー、エアレススプレー、静電方式等の噴霧塗装法により塗布することによりクリヤ塗膜9を形成した後、図外の焼付乾燥工程において140°C程度の温度で約30分間に亘り加熱して上記各塗膜を同時に硬化させる。
上記のように下地塗膜4が形成された自動車車体1の外板面2上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜5を形成する第1塗膜形成工程K1と、この第1塗膜5の形成後にその上に第2塗料を塗布して上記第1塗膜5よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該塗膜単独もしくは上記第1塗膜5とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜6を形成する第2塗膜形成工程K2とを備えた自動車車体1の塗装方法およびその装置において、少なくとも上記第1塗膜5の形成後に、第3塗料を内板面3上に塗布して外板2側の塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜7を形成する第3塗膜形成工程K3を備えた構成としたため、自動車車体1の外板面2上に塗布される第1塗料のダストが、内板面3の第3塗膜7上に付着することに起因した美観の低下を防止しつつ、第1塗料に汎用性を持たせて、設備コストを低減化できるとともに、塗装作業の手間を効果的に簡略化できるという利点がある。
すなわち、従来は、自動車車体1の内板面3上に第3塗膜7を形成する第3塗膜形成工程の終了後に、自動車車体1の外板面2上に第1塗膜5を形成する第1塗膜形成工程が設けられていた。しかし、この構成では、上記外板面2の下地塗膜4上に第1塗膜5を形成するために第1塗膜形成工程で噴霧された第1塗料のダストが車体内に入り込んで、図2に示すように、上記内板面3の周縁部等に付着することが避けられない。
そして、上記第1塗料により形成される第1塗膜5と、第3塗料により形成される第3塗膜7とが異なる色彩に設定されている場合、例えば上記第1塗膜5が無彩色に設定され、かつ第3塗膜7が上記第2塗膜6と同一また近似の有彩色に設定されている場合には、上記内板面3に付着した第1塗料のダスト塗膜20と、内板面3の外観塗膜色を発色する第3塗膜7とが異なる色合いを呈することにより美観が低下することが避けられなかった。なお、上記ダスト塗膜20および第3塗膜7の上層には、クリヤ塗膜8が形成されるが、このクリヤ塗膜8は下地隠蔽性を有していないので、上記色合いの変化を隠蔽することはできない。
これに対して本発明に係る第1実施形態のように第1塗膜5の形成後に上記第3塗膜形成部17を使用した第3塗膜形成工程K3を設け、この第3塗膜形成工程K3で、上記外板2側の塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜7を内板3側に形成するように構成した場合には、図3に示すように、上記第1塗料のダストが内板面3に付着することによりダスト塗膜21が形成されたとしても、これを上記第3塗膜7により隠蔽できるため、内板面3の美観を良好状態に維持することができる。
したがって、上記第1塗膜5の色彩を、例えばダークグレー、グレー、ライドグレー、スーパライトグレーおよびホワイトからなる5段階の明度を有する無彩色に設定するとともに、上記第2塗膜6単独で外観塗膜色を発色させ、または上記第1塗膜5と第2塗膜6との両方で外観塗膜色を発色させるように構成すれば、上記第1塗膜5用の第1塗料に汎用性を持たせることができる。このため、第1塗膜5を第2塗膜6と同色に設定するように構成した場合に比して、上記第1塗料を塗布するために必要な配管を低減して塗装装置の構造を効果的に簡略しつつ、自動車車体1の外板面2上に塗布される第1塗料のダストが、内板面3の第3塗膜7上に付着することに起因した美観の低下を効果的に防止できるという利点がある。しかも、各種の色彩を有する外観塗膜色を発色する上記第2,第3塗膜6,7を形成する塗料が変更される度に行われる配管の変更回数に比べ、上記第1塗膜5を形成する際に配管を変更する作業の回数を大幅に低減して塗装作業を効率化できるという利点もある。
そして、上記第1塗膜5を外観塗膜色と同一または近似色に発色させる必要がないので、図4に示すように、第1塗膜5を形成する第1塗料にカーボンブラック18等からなる下地隠蔽性を有する顔料を混入し、あるいは上記第1塗料に対する着色顔料19の含有量を通常よりも多く設定することにより、上記第1塗膜5が有する下地隠蔽性を効果的に向上させることができる。したがって、上記外板面2に形成された下地塗膜4上に中塗り塗料を塗布してこれを乾燥させるという作業を省略することにより、塗装作業の工程を簡略化しつつ、外板面2に照射された可視光または紫外線等を、上記第1塗膜5に配合されたカーボンブラック18もしくは着色顔料19により吸収または反射して下地塗膜4に上記紫外線等が到達するのを抑制することができる。このため、簡単な構成で下地塗膜4に紫外線が照射されることに起因した下地塗膜4の早期劣化を効果的に防止できるという利点がある。
特に、上記のように第1塗料に対する着色顔料19の含有量を通常よりも多く設定することにより、第1塗膜形成工程K1で形成される第1塗膜5の明度を、第2塗膜形成工程K2で形成される第2塗膜6よりも低くするように構成した場合には、上記カーボンブラック18等からなる下地隠蔽用の顔料を省略し、あるいはその含有量を低減しつつ、上記第1塗膜5の下地隠蔽性を確保することができるため、より簡単な構成で、下地塗膜4に紫外線が照射されることに起因した下地塗膜4の早期劣化を効果的に抑制できるという利点がある。
また、上記第1実施形態に示すように、自動車車体1の外板面2上に第1,第2塗膜5,6を形成する第1,第2塗膜形成部12,15を使用した第1塗膜形成工程K1および第2塗膜形成工程K2の終了後に、上記第3塗膜形成部17を使用した第3塗膜形成工程K3を設けた構成とした場合には、下記第2実施形態のように第1塗膜形成工程K1と第2塗膜形成工程K2との間に第3塗膜形成工程K3を設けた場合に比べて自動車のサイドドア等からなる開閉体13の開閉回数を低減することができるため、第2実施形態よりも塗装作業を簡略化することができる。しかも、上記開閉体13の開閉操作に伴って舞い上がった埃やゴミが塗膜に付着するという事態の発生を抑制し、塗膜の品質を効果的に向上できるという利点がある。
さらに、上記第1実施形態では、自動車車体1の外板面2上に形成された上記第2塗膜6上にクリヤ塗膜9を形成する外板クリヤ塗膜形成工程K5を設けたため、この外板クリヤ塗膜形成工程K5で形成されたクリヤ塗膜9により上記第2塗膜6を保護してその耐候性および平滑性を効果的に維持することができる。したがって、上記第3塗膜形成工程K3において内板面3に向けて噴霧された第3塗料のダストが外板面2の第2塗膜6上に付着した場合においても、外板面2の平滑性を充分に確保することができる。
図5は、本発明に係る自動車車体1の塗装方法およびその装置の第2実施形態を示している。この第2実施形態に係る自動車車体1の塗装方法では、第1実施形態と同様に、下地塗膜形成工程K0で自動車車体1の外板面2に形成された下地塗膜4上に第1塗膜5を形成する第1塗膜形成工程K1を設けている。この第1塗膜形成工程K1において、第1塗膜形成部12により第1塗膜5を形成した後に、略閉止状態にある開閉体13を開放状態として自動車車体1を第3塗膜形成部17に搬送してその内板面3上に第3塗膜7を形成する第3塗膜形成工程K3が設けられ、かつこの第3塗膜7の形成後に、開放状態にある開閉体13を略閉止状態として自動車車体1を第2塗膜形成部15に搬送してその外板面2上に第2塗膜6を形成する第2塗膜形成工程K2が設けられている点で、第1,第2塗膜形成工程K1,K2において自動車車体1の外板面2上に第1塗膜5と第2塗膜6とを連続して形成するように構成された上記第1実施形態とは相違している。
上記第2実施形態のように第1塗膜形成工程K1と第2塗膜形成工程K2との間に第3塗膜形成工程K3を設けた構成とした場合には、第1塗膜6用の第1塗料が第3塗膜7上に付着することに起因した美観の低下が生じる可能性はなく、上記第3塗膜形成工程K3で噴霧された第3塗料のダストが、図6に示すように、外板面2の第1塗膜5上に付着してダスト塗膜21が形成されたとしても、その上に上記第2塗膜6が形成されることにより上記ダスト塗膜21が隠蔽される。このため、上記第2塗膜6と第3塗膜7との色彩が微妙に異なっている場合においても、上記第3塗料のダストが外板面2上に露出して自動車車体1の外板面2における美観が低下するという事態の発生を確実に防止できるという利点がある。
なお、上記第2実施形態では、第2塗膜形成工程K2で外板面2に向けて噴霧された第2塗料のダストが内板面3の第3塗膜7上に付着する可能性があるが、この第3塗膜7用の第3塗料と上記第2塗料とは、同色または近似色に設定されているため、内板面3の美観が顕著に低下することはない。しかも、自動車車体1の内板面3の美観は、外板面2のように色合いの統一性および平滑性等が厳しく要求されることはないので、上記第2塗料が内板面3の第3塗膜6上に付着することに起因する弊害が顕著に現れることはない。
1 自動車車体
2 外板面
3 内板面
4 下地塗膜
5 第1塗膜
6 第2塗膜
7 第3塗膜
8 内板面のクリヤ塗膜
9 外板面のクリヤ塗膜
12 第1塗膜形成部
15 第2塗膜形成部
17 第3塗膜形成部

Claims (6)

  1. 下地塗膜が形成された自動車車体の外板面上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、この第1塗膜の形成後にその上に、第2塗料を塗布して上記第1塗膜よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該第2塗膜単独または上記第1塗膜とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程とを備えた自動車車体の塗装方法であって、少なくとも上記第1塗膜形成工程よりも後に、第3塗料を内板面上に塗布して外板側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜を形成する第3塗膜形成工程を備えたことを特徴とする自動車車体の塗装方法。
  2. 上記第1塗膜形成工程と第2塗膜形成工程との間に第3塗膜形成工程が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の塗装方法。
  3. 上記第1塗膜形成工程で、第2塗膜よりも明度の低い第1塗膜を外板面上に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車車体の塗装方法。
  4. 少なくとも外板面上に形成された上記第2塗膜上に、クリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成工程を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車車体の塗装方法。
  5. 下地塗膜が形成された自動車車体の外板面上に第1塗料を塗布して下地隠蔽性を有する第1塗膜を形成する第1塗膜形成部と、この第1塗膜上に第2塗料を塗布して上記第1塗膜よりも下地隠蔽性が低く、かつ当該第2塗膜単独もしくは上記第1塗膜とともに外観塗膜色を発色する第2塗膜を形成する第2塗膜形成部とを備えた自動車車体の塗装装置であって、少なくとも上記第1塗膜を形成した後に、第3塗料を内板面上に塗布して上記外板側の外観塗膜色と同色または近似色の外観塗膜色を発色する第3塗膜を形成する第3塗膜形成部を備えたことを特徴とする自動車車体の塗装装置。
  6. 少なくとも上記外板面の第2塗膜上に、クリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の自動車車体の塗装装置。
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