JP2010227801A - 固体状の陽イオン交換体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入して得られたことを特徴とする陽イオン交換体。前記重合性混合物が重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有することが好ましい。陽イオン交換体の形態としては、粒状、ペレット状、膜状の各種の形状とすることができる。
【選択図】図1
Description
実用的で有益な陽イオン交換膜として、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体と熱可塑性重合体の混合物からなる膜状重合物をスルホン化し、陽イオン交換基を導入した陽イオン交換膜が知られている。この膜は耐薬品性、耐熱性に加え、ジビニルベンゼンの含有量を変えることにより架橋の程度を調整することができ、イオン交換特性やイオン選択透過性を制御できることから、幅広い用途に用いられ、発展してきた。
また、本発明は、イオン選択透過性、機械的強度に優れた粒状、ペレット状又は膜状の陽イオン交換体を低コストで提供することを目的とする。
さらに、固体状のポリオレフィンの形態をフィルムとし、該フィルム内で重合することにより、上記したところと同様にして、構造的に一体化した膜状重合体が得られることを見出した。そして、得られた膜状重合体にクロロスルホン酸等でスルホン酸基を導入することにより、イオン交換樹脂相と基材とを一体化したイオン交換膜を形成させることができ、従来使用されているイオン交換膜と比較し、イオン選択透過性、機械的強度に優れた陽イオン交換膜を低コストで提供できることを見出した。この新しい知見を基礎として研究を進め、本発明を完成させた。
このような関係で、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルは、重合性混合物の全体の例えば1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%を含有することが好適である。
(1)固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入して得られたことを特徴とする陽イオン交換体。
(2)前記重合性混合物が重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有することを特徴とする前記(1)記載の陽イオン交換体。
(3)前記重合性混合物が膨潤溶媒を含有するものであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の陽イオン交換体。
(4)前記陽イオン交換基を導入可能な官能基自体が陽イオン交換基でない場合には、熱重合後に、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理したものであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の陽イオン交換体。
(5)前記陽イオン交換基を導入可能な官能基自体が、陽イオン交換基であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の陽イオン交換膜。
(6)前記ポリオレフィン体がフィルム状体であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項記載の陽イオン交換体。
(7)固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入することを特徴とする陽イオン交換体の製造方法。
(8)前記重合性混合物が重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有することを特徴とする前記(7)記載の陽イオン交換体の製造方法。
(9)前記固体状のポリオレフィンがフィルム状体であることを特徴とする前記(7)又は(8)記載の陽イオン交換体の製造方法。
(10)前記重合性混合物が膨潤溶媒を含有するものであることを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか1項記載の陽イオン交換膜の製造方法。
(a)固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入することを特徴とする陽イオン交換体の製造方法。
(b)前記(a)に記載の方法で得た固体状の陽イオン交換体である。
(c)各種ポリエチレンフィルムに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入することを特徴とする陽イオン交換体の製造方法である。
(d)前記(b)に記載の方法で得た陽イオン交換膜である。
本発明の製造方法により得られる陽イオン交換膜は、海水濃縮、かん水の脱塩、酸の濃縮または回収、有価金属の回収などを目的とする電気透析、及びアルカリ回収などを目的とする拡散透析に用いられる他、燃料電池や2次電池用の隔膜としても有用であり、且つ簡便な手段により低コストで製造される。
高分子基材から陽イオン交換樹脂相が剥離するなどの問題が生じない。
また、本発明の陽イオン交換膜及びその製造方法は、具体的に言えば、例えば、ポリオレフィンフィルムに、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含む、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体及び膨潤溶媒を含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、クロロスルホン酸等を用いてスルホン酸基を導入することが特徴である。
本発明で用いるポリエチレンペレットとしては、例えば旭化成ケミカルズ株式会社製、サンテックLDなどが挙げられる。
陽イオン交換膜の場合、高分子基材の形態は、イオン交換樹脂相と膜支持材料との親和性を向上させるため、フィルムの形態であることが好ましい。
本発明で用いる超高分子量ポリエチレンフィルムとしては、例えば作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム イノベート(製品名)や日東電工株式会社製、超高分子量ポリエチレンフィルム No.440などが挙げられる。
また、低密度ポリエチレンとしては大倉工業株式会社製、LDPEローデンポリ(製品名)、高密度ポリエチレンとしては大倉工業株式会社製、HDPEハイデンポリ(製品名)などが挙げられる。
(1)スルホン酸基が導入されやすい芳香族環を有する単量体。例えば、スチレン、ビニルトルエン等。
(2)カルボン酸基、又はニトリル基を有する単量体。例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル等。
本発明では、前記単量体とともに、架橋性単量体を用いて重合性混合物を形成して、塗布に用いる。
(3)架橋性単量体(架橋構造を導入できる単量体)。すなわちビニル基を少なくとも2個有するもの。例えばジビニルベンゼン(DVB)、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート。
熱重合した高分子基材には、次の段階としてスルホン酸基等の陽イオン交換基を導入する。スルホン酸基の導入は、従来行われている広範な方法が何の制限もなく使用できるが、具体例を以下に示す。
平均粒径3mmの粒状の低密度ポリエチレンペレット((旭化成ケミカルズ社製、サンテックLD(製品名))にモノマーとしてスチレンを98%、重合開始剤としてAIBN2%を混合した重合性混合物に24時間浸漬した後、ろ過によりペレットを回収した。回収したペレットは表面に混合物が塗布された状態のまま、機内温度を80℃とした乾燥機に所定時間入れた。重合後、得られたペレットを、メタノールで洗浄し、風乾した。重合率は8.5%であった。なお、重合前の試料重量に対する重合前後における重量増加量の割合を重合率とした。
重合温度、重合開始剤の種類などを第1表に示す。
モノマーとしてスチレンを95%、重合開始剤としてAIBN5%を用いた他は、実施例1と同様にして試験した。重合率は9.6%であった。イオン交換容量は0.062meq/gであった。
重合温度、重合開始剤の種類などを第1表に示す。
平均粒径3mmの粒状の低密度ポリエチレンペレット(旭化成ケミカルズ社製、サンテックLD(製品名))にモノマーとしてスチレン(重合開始剤を含有しない)を塗布し、ガラス皿に載せる。所定時間後、機内温度を80℃とした乾燥機に所定時間入れた。重合後、得られた粒状体を、メタノールで洗浄し、風乾した。重合率は0%であった。前記加熱重合後の粒状体は、表面にスチレンの重合体の被覆層を有するが、この被覆層はメタノール洗浄の際に剥がれて脱落しまったので、風乾して得られた粒状物は重量の増加がなかったので、重合率は0%となる。
重合温度、重合開始剤の種類などを第1表に示す。
モノマーとしてスチレンを99.8%、重合開始剤としてAIBN0.2%を用いた他は、比較例1と同様にして試験した。
測定結果を第1表に示す。
第1表に示したとおり、重合開始剤を適量利用し、ペレットを重合させることにより、重合開始剤を従来程度もしくは未添加とした場合と比較し、重合率およびイオン交換容量を増加させる効果が得られた。
分子量160万、膜厚20μmの膜状超高分子量ポリエチレン基材(作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム イノベート(製品名))にモノマーとしてスチレンを98%、重合開始剤としてAIBN2%を混合した重合性混合物に所定時間浸漬した後、フィルムを取り出し、膜表面に混合物が塗布された状態のまま、ガラス板に挟む。所定時間後、機内温度を80℃とした乾燥機に所定時間入れた。重合後、得られた膜を、メタノールで洗浄し、風乾した。重合率は27%であった。
測定結果を第2表に示す。
高分子基材の種類、膜厚、重合温度、モノマーのスチレンの濃度、添加剤の種類、重合開始剤のAIBNの濃度、クロロスルホン酸の濃度を第2表に示すように変えた他は、実施例3と同様にして試験した。
測定結果を第2表に示す。
分子量160万、膜厚50μmの超高分子量ポリエチレン基材(作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム イノベート(製品名))にモノマーとしてスチレン(重合開始剤を含有しない)を塗布し、ガラス板に挟む。所定時間後、機内温度を80℃とした乾燥機に所定時間入れた。重合後、得られた膜を、メタノールで洗浄し、風乾した。重合率は0%であった。
測定結果を第2表に示す。
モノマー中に重合開始剤としてAIBNを一般的な重合に利用される割合である0.2%混合した他は比較例3と同様にして試験した。
測定結果を第2表に示す。
市販の製塩用陽イオン交換膜(旭硝子(株)CSO)と市販の陰イオン交換膜(旭硝子(株)ASA)を小型電気透析装置(膜面積8cm2)に装着し、濃縮試験を実施した。脱塩室流速は6cm/s、電流密度3A/dm2の濃縮条件で、供給液は0.5Mの塩化ナトリウム水溶液を用いた。なお、前記の膜は、市販されているものであるが、その合成条件などは公表されていないため、不明である。
なお、実施例13で用いた基材は、特殊ポリエチレンリュブマー(商品名、三井石油化学工業(株)製)を含有した超高分子量ポリエチレンフィルムである。
第2表に示したとおり、本発明に従って製造したいずれの膜についても、市販されている製塩用陽イオン交換膜と比較し、高い破裂強度を示した。
また、膜抵抗も重合開始剤を従来程度もしくは未添加とした膜や市販膜と比較しほぼ同等か、それより低い値を示した。
さらに、図1に示したとおり、本発明に従って製造したいずれの陽イオン交換膜についても、市販されている陽イオン交換膜と比較し高い濃縮性能を示した。なお、図1中に示した直線は、市販イオン交換膜と同等の濃縮性能を示す直線であり、直線より上部に示される膜性能はすべて市販膜より高い濃縮性能であるといえる。
Claims (10)
- 固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入して得られたことを特徴とする陽イオン交換体。
- 前記重合性混合物が重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1記載の陽イオン交換体。
- 前記重合性混合物が膨潤溶媒を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の陽イオン交換体。
- 前記陽イオン交換基を導入可能な官能基自体が陽イオン交換基でない場合には、熱重合後に、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の陽イオン交換体。
- 前記陽イオン交換基を導入可能な官能基自体が、陽イオン交換基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の陽イオン交換体。
- 前記ポリオレフィン体がフィルム状体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の陽イオン交換体。
- 固体状のポリオレフィンに、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体を含有し、かつ重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを含有する重合性混合物を塗布し、加熱重合させた後、陽イオン交換基を付与できる化合物で処理することにより陽イオン交換基を導入することを特徴とする陽イオン交換体の製造方法。
- 前記重合性混合物が重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを全体の1〜10質量%含有することを特徴とする請求項7記載の陽イオン交換体の製造方法。
- 前記固体状のポリオレフィンがフィルム状体であることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の陽イオン交換体の製造方法。
- 前記重合性混合物が膨潤溶媒を含有するものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の陽イオン交換体の製造方法。
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20140610 |