JP2010225459A - 燃料電池システム及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間に亘って安定した発電を可能とする燃料電池システムを実現すること。
【解決手段】燃料電池システム101は、積層された複数のセルを有する発電部5と、セルに燃料を供給する、燃料供給量が調整可能な燃料供給部4と、複数のセルのうち少なくとも一つの特定セル51の出力電圧を監視する電圧監視部8と、特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部13と、電力が特定セルに供給された後に現れる出力電圧の最小値と、出力電圧が最小値となった後の出力電圧の応答値との電圧差を検知し、電圧差に応じて燃料供給量を制御する制御部9とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料電池システム101は、積層された複数のセルを有する発電部5と、セルに燃料を供給する、燃料供給量が調整可能な燃料供給部4と、複数のセルのうち少なくとも一つの特定セル51の出力電圧を監視する電圧監視部8と、特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部13と、電力が特定セルに供給された後に現れる出力電圧の最小値と、出力電圧が最小値となった後の出力電圧の応答値との電圧差を検知し、電圧差に応じて燃料供給量を制御する制御部9とを備える。
【選択図】 図1
Description
この発明は、液体を燃料とする固体高分子型燃料電池を制御する燃料電池システム及び燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、プロトン交換膜とも称呼されることもあるプロトン伝導性を有する高分子膜を電解質として用いる燃料電池として知られており、固体高分子型燃料電池(PEFC)の1つとして、液体燃料を利用する直接メタノール型燃料電池(DMFC)がある。この、直接メタノール型燃料電池では、アノード極(燃料極とも称せられる。)と、カソード極(空気極とも称せられる。)と、これらの間に挟持され、プロトンを透過させる固体高分子膜とを備え、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を形成する。そして、前記MEAを含むセルが複数重なることで、所定の発電量を有する発電部を形成する。
さらに直接メタノール型燃料電池では、アノード極に供給されたメタノール水溶液に含まれるメタノールの一部がアノード極からカソード極に直接移動するメタノールクロスオーバーが起こり、カソード極では、式(2)に示される反応に加えて下記の式(3)の反応が起こる。
ここで、発電部の発電効率は、電圧×燃料利用効率で定義される値であり、燃料利用効率は、式(1)のアノード極反応で使われるメタノール量に対する、式(3)のメタノールクロスオーバーで失われるメタノール量の割合で定義する。この時、発電効率を高めるためには、式(1)、式(2)の過電圧を低下させて電圧を向上させることと、式(3)のメタノールクロスオーバーを低減させ、燃料利用効率を高めることが必要となる。
また、発電量(電力)は、電圧×負荷電流で定義される値であり、発電量を高めるためには、負荷電流を増加させることが必要となる。
そこで、特許文献1では、上記メタノールクロスオーバーを所定の範囲におさめて燃料利用効率と発電効率の2つの効率を高める為に、発電部の負荷を閉回路から開回路に切り替え、切り替え後の一定時間後の出力電圧をもとにメタノール濃度を検出する手法が提案されている。この手法では、発電部の出力電圧値を評価値とする為、濃度センサーが不要となり、装置を小型化できるという利点がある。
複数のセルを積層して構成される発電部では、予め定められた濃度のメタノール水溶液を、各セルのアノード極に燃料供給部を通して供給する。発電部中央領域のセルと、端部領域のセルでは、外気温度等の環境因子の影響を受けてセル温度に差が生じることがある。このように、セル間で温度のバラツキが生じた場合、温度が高いセルでは、式(3)のメタノールクロスオーバーが高くなり、燃料利用効率が低下する。よって、発電効率は低下する。
一方、温度の高いセルと同一の濃度のメタノール水溶液が供給されるが、外部環境の要因等を受けて温度が低いセルでは、式(1)の過電圧が増加し、電圧が低下することから、発電効率は低下してしまう。また、温度の高いセルに比較し、温度の低いセルではアノードの燃料拡散性が低下するため、セルから取り出せる負荷は減少する。この場合、発電量が減少する問題が生じる。
例えば、発電部を低温環境にて起動させる場合、積層されたセルのうち、外気と隣接する端部のセルは外気温度の影響を受けて温度の上昇速度が遅いことがある。この時、他のセルに比較して温度の低い端部セルでは、前記燃料拡散性の低下によって取り出すことが可能な負荷電流が低下する。この場合、発電部から取り出すことが可能な最大負荷は端部セルの負荷で制限される。よって低温始動から、所定の発電量を得る定常状態までの間において、発電量および起動速度が低下する問題がある。
そこで、特許文献2では、発電部端部に断熱性を有する導電性のダミーセルを配置することで、端部領域の温度低下を抑制し、セル間の温度バラツキを抑制する工夫がなされている。また、特許文献3では、発電部の積層方向両端部のうち、少なくとも一方の端部領域に抵抗体を備え、端部領域の温度低下を抑制し、セル間の温度バラツキを抑制する工夫がなされている。さらには、特許文献4では、起動時に通常運転時よりも低熱容量の燃料をアノードに供給し、アノード出口の燃料を再びアノード入口に循環させることで、発電セルの起動を高速化させている。
第1の課題は、発電部の発電効率を高めるため、発電部のメタノールクロスオーバーを簡易的に検知し、メタノールクロスオーバーを所定の範囲内に納めることである。
また、第2の課題は、発電部のセル間の温度特性や出力(電圧)特性が異なる条件下において発電部の発電効率および発電量を高めることである。
この発明は上記2点の事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、長期間に亘って安定した発電を可能とする燃料電池システム及び燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するためにこの発明の第1の態様は、積層された複数のセルを有する発電部と、前記セルに燃料を供給する、燃料供給量が調整可能な燃料供給部と、前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの出力電圧を監視する電圧監視部と、前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、前記電力が前記特定セルに供給された後に現れる前記出力電圧の最小値と、前記出力電圧が最小値となった後の前記出力電圧の応答値との電圧差を検知し、前記電圧差に応じて前記燃料供給量を制御する制御部とを具備する燃料電池システムを提供する。
また、この発明の第2の態様は、積層された複数のセルを有する発電部と、前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの温度を監視する温度監視部と、前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、前記温度に応じて前記特定セルに前記電力を供給する制御部とを具備することを特徴とする燃料電池システムを提供する。
また、この発明の第3の態様は、積層された複数のセルを有する発電部と、前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの電圧を監視する電圧監視部と、前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、前記電圧に応じて前記特定セルに前記電力を供給する制御部とを具備することを特徴とする燃料電池システムを提供する。
また、この発明の第4の態様は、積層された複数のセルを有する発電部と、前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部とを具備することを特徴とする燃料電池を提供する。
したがってこの発明によれば、長期間に亘って安定した運用を可能とする燃料電池システム及び燃料電池を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、発電部に積層されるセルのうち特定セルに電力を一時的に供給し、特定セルでのみ負荷変動を引き起こすことによって、メタノールクロスオーバーを推定し、発電部への燃料供給量を制御するものである。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、発電部に積層されるセルのうち特定セルに電力を一時的に供給し、特定セルでのみ負荷変動を引き起こすことによって、メタノールクロスオーバーを推定し、発電部への燃料供給量を制御するものである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム101の構成例を示している。燃料電池システム101は、図2に示すようなセル積層構造50を有する発電部5と、高濃度メタノール、あるいはメタノール燃料と少量の水の混合溶液(メタノール水溶液)等の液体燃料を貯蔵する燃料タンク3と、発電部5における発電をサポートする補器類2と、発電部5で発電した電力を負荷電力11に送るにあたり、外部電源(例えばリチウムイオンバッテリー)と発電部5から取り出す電力を制御する電力調整部10とを備える。
補器類2は、燃料タンク3から燃料を発電部5に供給する燃料供給部4と、空気を発電部5に供給する空気供給部6と、発電部5から取り出される負荷電流を調整する負荷調整部7と、セル積層構造50の各セルの出力電圧を監視するセル電圧監視部8と、外部電力供給部13と、補器類2内の各部を制御するための制御部9とを備える。
制御部9は、上記補器類2の各部の状態を検知する検知処理部9aと、検知された情報に応じて各部を制御する為の制御情報が予め格納されたデータベース9bとを備える。制御部9は、発電部5及び補器類2の各部から必要な情報を検知し、検知した情報の処理または演算を行う。さらに、制御部9はこの処理または演算の結果に応じて、燃料供給部4、発電部5、負荷調整部7、外部電力供給部13、及び空気供給部6に制御信号を与える。後に説明するように、データベース9bは、セルから測定される値に基づき、補器類2の各部をどのように制御するかについて予め記述した各種データベースを含んでいる。
発電部5は、負荷調整部7および電力調整部10を介して負荷電力11に接続される。負荷電力11は、例えば、この燃料電池システム101で発生される電力で駆動される電子機器に相当する。電力調整部10は、発電部5で発生される電力を負荷電力11に供給している。電力の調整は、負荷調整部7により負荷電流の調整で行われる。電力調整部10は、負荷電力11で必要な電力に対し、発電部5で発電される電力が不足する場合、図には記載していないが、外部電源(例えば二次電池やコンデンサ)などから不足分の電力を補う。電力調整部10は、発電部5で発生される電力の負荷電力11への供給をオン或いはオフするスイッチング回路を含んでいる。電力調整部10は、オン状態で、負荷電力11に接続され閉回路状態となり、オフ状態で負荷電力11から切断されてその出力側が開回路状態となるように構成されている。
発電部5と補器類2との間は、流体配管系で接続されている。この流体配管系においては、燃料タンク3と燃料供給部4とは、燃料供給ラインL1で接続される。燃料供給部4と発電部5とは、燃料供給ラインL2で接続されている。燃料タンク3内の燃料は、燃料供給部4での調整により発電部5のアノード極に供給される。また、空気供給部6と発電部5とは空気供給ラインL3で接続され、空気供給部6での調整により発電部5のカソード極に空気が送り込まれる。
なお、上記図1に示すシステムでは、燃料タンク3内の燃料が発電部5に直接供給される方式となっているが、この方式に限らず、燃料タンク3内の燃料を、希釈した燃料を蓄える混合タンク内に供給し、発電部5での発電で残った燃料と混合させる方式にしても良い。また、空気供給部6に例えばファンを用いた場合、流体配管L3は空気導入経路とすることができる。また、ブリージング方式の場合、空気供給部6は不要となる。
発電部5と補器類2との間は、信号及び電流配線系で接続されている。制御部9は、信号ラインE1を介して燃料供給部4に接続される。発電部5と制御部9とは、信号ラインE2で接続される。負荷調整部7と制御部9とは信号ラインE3で接続される。セル電圧監視部8と制御部9とは、信号ラインE4で接続されている。空気供給部6と制御部9とは、信号ラインE5で接続されている。発電部5と負荷調整部7とは電流配線ラインE61で接続され、負荷調整部7と電力調整部10とは電流配線ラインE62で接続される。さらに、外部電力供給部13は、発電部5と電流供給ラインE7で接続され、制御部9と信号ラインE8で接続される。
負荷調整部7は、信号ラインE3を介して発電部5に負荷を与える。この負荷調整部7で検出された負荷電流の値は、負荷電流情報として信号ラインE3を介して制御部9に送られる。また、制御部9で設定された負荷制御信号は、信号ラインE3を介して制御部9から負荷調整部7に与えられる。従って、負荷調整部7は、負荷制御信号に従って定められた設定負荷に相当する負荷を発電部5に接続し、この設定負荷に流れる負荷電流が検出されて負荷電流情報として制御部9に送られる。
なお、負荷調整部7に電力調整部10の役割を持たせることで、電力調整部10を省略させることも可能である。この場合、負荷電力11は負荷調整部7に接続される。
なお、負荷調整部7に電力調整部10の役割を持たせることで、電力調整部10を省略させることも可能である。この場合、負荷電力11は負荷調整部7に接続される。
セル電圧監視部8は、予め定められた少なくとも1つの特定セル51で発生される電圧を検出するセル電圧検出回路(図示せず)を含み、信号ラインE4を介して発電部5内のセル積層構造50の上記特定セル51に接続される。ここで、特定セル51には、セル積層構造50に含まれるセルのうち、出力および温度が平均的なセルを選択することが好ましい。ここで平均的なセルとは、外部環境因子の影響を受けにくいセルをいう。例えば、セル積層方向で中央領域にあるセル、もしくは、セル温度分布を測定しその温度が平均に最も近いセルを平均的なセルとして採用することができる。特定セル51としてこのような平均的なセルを採用することにより、外部環境が変化しても、セルの特性を安定的に得ることができるという効果が得られる。この特定セル51で発生される電圧がセル電圧検出回路で計測され、計測されたセル電圧値が電圧情報として制御部9に送られる。ここで、上記特定セル51として、セル積層構造50に含まれるセルのうち1枚を選択する他、セル積層構造50のうち複数枚のセルを選択し、それらの電圧平均を計測し、電圧情報として制御部9に送るようにしても良い。
そして、上記セル電圧監視部8が接続された特定セル51に対し、外部電力供給部13が電気的に並列する形で電流供給ラインE7を介して接続される。外部電力供給部13は予め定められた大きさの電流を特定セル51に与える。
発電部5は、図2(a)及び2(b)に示されるようなセル積層構造50を備えている。図2(a)に示すように、セル積層構造50は、アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層された複数のセルを備え、各セルがアノード集電板12及びカソード集電板14に電気的に直列に接続されている。アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層されたセルは、一対の締め付け板18A、18B間に配置され、この締め付け板18A、18B間に固定具19A、19Bによって締め付け固定されている。アノード集電板12及びカソード集電板14は、それぞれ負荷調整部7に接続され、セル積層構造50で生成された電流がカソード集電板14で収集されて負荷調整部7に供給される。
また、図2(b)は、上記特定セル51の構成を示したものである。なお、特定セル51以外のセルは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)20と、アノード流路板22と、カソード流路板24と、ガスケット26とを備える。
MEA20の一方の側には、アノード流路板22が設けられ、他方の側にカソード流路板24が設けられている。MEA20は、アノード流路板22とカソード流路板24とに挟まれ、アノード流路板22とカソード流路板24とに接続されたガスケット26で密閉された構造に形成されている。アノード流路板22とカソード流路板24は、このガスケット26で絶縁され、しかも、このガスケット26によってMEA20から外部への燃料及び空気のリークが防止される。MEA20は、電解質膜の一方の側にアノード極が形成され、電解質膜の他方の側にカソード極が形成される。
特定セル51には、当該特定セル51の電圧を外部から監視する為にアノード流路板22及びカソード流路板24に出力端子22A,24Aが設けられている。この出力端子22A,24Aがセル電圧信号ラインE4を介してセル電圧監視部8の電圧検出回路に接続され、セル電圧監視部8により特定セル51の電圧がモニター(監視)されている。セル電圧監視部8からは、特定セル51で発生される電圧に相当する電圧値を表す電圧情報が信号ラインE4を介して制御部9の検知処理部9aに供給される。
さらに、上記特定セル51には、アノード流路板22及びカソード流路板24に入力端子22B,24Bが設けられている。この入力端子22B,24Bは、電流供給ラインE7を介して外部電力供給部13の電流回路に電気的に並列に接続される。外部電力供給部13は、上記特定セル51に対して電力を供給する信号を、制御部9から信号ラインE8を介して受け取る。
アノード流路板22は、MEA20のアノード極側に面し、メタノールおよびメタノール水溶液を供給する。カソード流路板24は、MEA20のカソード極側に面し、空気を供給する。アノード流路板22、カソード流路板24ともに、上記目的を果たす限り、任意の形状をとることができる。
次に、図1に示される燃料電池システム101の動作について説明する。
発電を始めるにあたり、燃料供給部4は、制御部9による制御の下で、燃料タンク3から所定の濃度のメタノール水溶液(燃料)を流路L1、流路L2を介してアノード流路板22に供給する。また、空気供給部6は、制御部9による制御の下で、空気を流路L3を介してカソード流路板24に供給する。
発電を始めるにあたり、燃料供給部4は、制御部9による制御の下で、燃料タンク3から所定の濃度のメタノール水溶液(燃料)を流路L1、流路L2を介してアノード流路板22に供給する。また、空気供給部6は、制御部9による制御の下で、空気を流路L3を介してカソード流路板24に供給する。
負荷調整部7によりセル積層構造50に接続される負荷が印加されると、アノード極、即ち、MEA20のアノード側では、式(1)に示したメタノール酸化反応が起こる。カソード極、即ち、MEA20のカソード側では、式(2)で示した酸素還元反応が起こる。電子(e−)は負荷調整部7へ流れる。
上記発電時、メタノールが固体高分子膜を通してカソード極へと流れるという問題がある(メタノールクロスオーバー)。メタノールクロスオーバー値の増加、或いはこれの極端な低下は発電効率および燃料利用効率を下げる原因となるため、メタノールクロスオーバー値を所定の範囲内に制御する処理を行う。
図3を参照して、メタノールクロスオーバーを推定し、その値が所定の範囲におさまるよう、発電部5へ供給するメタノール量を制御する流れについて説明する。
図3に示すグラフにおける、時点T=T0以前の期間においては、負荷調整部7で第1の負荷が選択されてセル積層構造50から負荷電流I=I0が取り出され、発電が行われている。この期間では、外部電力供給部13から特定セル51に電力(電流)の供給は行われていない。
次に、時点T=T0において、特定セル51に電気的に並列に接続された外部電力供給部13から特定セル51に所定の電流(I2)となる電力が供給される。よって、特定セル51から取り出されるセル電流Iは、負荷調整部7が発電部5全体から取り出す電流が一定(I0)の下で減少し、特定セル51から取り出されるセル電流はI1=I0−I2となる。
特定セル51はセル電流I1にて時点T=T1まで運転され、時点T=T1において、外部電力供給部13からの電力(電流)の供給を停止する。よって、時点T=T1において、特定セル51から取り出される電流IはI1からI0に増加する。
この負荷電流I1からI0への負荷変動に伴い、第2の負荷に切り替えた直後の時点T=T2では、セル電圧Vは、V=V2で最小電圧値(電圧の極小値)となり、その後、時点T=T3では、V=V3で最大電圧値(電圧の極大値)をとり、その後一定の電圧に収束する。
ここで、最小電圧値V2と最大電圧値V3との間の電圧差を第1の電圧差ΔV3(ΔV3=V3―V2)と定義する。また、最小電圧値V2と一定時間(例えばT=T4)経過後の定常電圧V4との間の電圧差を第2の電圧差ΔV4(ΔV4=V4―V2)と定義する。この第1の電圧差ΔV3及び第2の電圧差ΔV4を用いて特定セル51のメタノールクロスオーバーを推定する。
以下、セル電圧監視部8で特定セル51のセル電圧がモニターされ、最小電圧値V2と最小電圧後に出現する出力応値(出力電圧の応答値)とする最大電圧値V3と間の第1の電圧差ΔV3が検知処理部9aで求められ、この第1の電圧差ΔV3に基づいてメタノールクロスオーバーの推定、制御する処理の基本的原理について説明する。なお、以下のメタノールクロスオーバーの推定、制御方法は第2の電圧差ΔV4に基づいても同様である。
図4は、第1の実施形態におけるシステムの処理手順を示したものである。この図4を参照して、制御部9の制御動作について説明する。
制御部9において制御動作が開始されると(ステップS01)、検知処理部9aは外部電力供給部13に対し、所定の電力(電流I2)を供給する負荷変動処理の指示を与える(ステップS02)。この指示にしたがって、外部電力供給部13は、特定セル51に対し、電流(I2)を供給する(ステップS03)。そして一定時間経過後、外部電力供給部13から電力の供給を停止する。この時、同時に、セル電圧監視部8は、セル電圧監視部8内の電圧検出回路で特定セル51の電圧値を時刻と共に計測する(ステップS04)。これにより、検知処理部9aには、特定セル51に時刻と共に変動される電圧情報がセル電圧監視部8から入力される。
検知処理部9aは、入力されてくる電圧情報から最小電圧値V2とその後に現れる最大電圧値V3を検出し、上記検出された最小電圧値V2と最大電圧値V3との差を第1の電圧差ΔV3として検出する(ステップS05)。
上記得られた第1の電圧差ΔV3からメタノールクロスオーバー値を推定するには、データベース9b内に蓄えられたクロスオーバー換算データベース9b−1を用いる(ステップS06)。クロスオーバー換算データベース9b−1には、第1の電圧差ΔV3をメタノールクロスオーバー値に換算するための情報が予め記憶されている。検知処理部9aは、メタノールクロスオーバー値を推定した後、この値に基づいて燃料供給量を制御する指示を行う。ここで、推定したメタノールクロスオーバー値と燃料供給量との関係は、データベース9bに予め記憶されたクロスオーバー供給量制御データベース9b−2を用いる(ステップS07)。このクロスオーバー供給量制御データベース9b−2をもとに、制御部9は燃料供給部4に供給量制御信号を送り、燃料供給部4において燃料供給量の制御が行われる(ステップS08)。
以上述べたように、上記第1の実施形態では、外部電力供給部13からの電力供給によって特定セル51のみに対して負荷変動を引き起こし、メタノールクロスオーバーを推定する。したがって、発電部5全体の負荷を変動させる手法と比較し、発電部5全体の発電量を低下させる必要がなく、長期間にわたり発電効率を高めることが可能となる。また、負荷変動に伴う発電部5の非定常的な温度変動は、メタノールクロスオーバーを推定して燃料供給量を制御する過程での誤差を生じさせる原因となるが、本実施形態では、発電量が変化しない、すなわち発熱量が変化しない。このことにより、発電部5の温度変動が抑制され、上記影響を抑えることが可能となる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、発電部5を構成するセルのうちの特定セル51にのみ外部電力供給部13を電気的に並列に接続し、外部電力供給部13から特定セル51に供給する電力を制御することでメタノールクロスオーバーを推定することを特徴とした。ここで、外部電力供給部13は特定セル51に所定の時間、一定の電力を供給する目的を果たす限り、他の補器と併用することが可能である。
第1の実施形態では、発電部5を構成するセルのうちの特定セル51にのみ外部電力供給部13を電気的に並列に接続し、外部電力供給部13から特定セル51に供給する電力を制御することでメタノールクロスオーバーを推定することを特徴とした。ここで、外部電力供給部13は特定セル51に所定の時間、一定の電力を供給する目的を果たす限り、他の補器と併用することが可能である。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム102の構成例を示している。この燃料電池システム102は、上記図1に示した燃料電池システム1から外部電力供給部13を取り除いた構成である。また、電力調整部10と発電部5に含まれる特定セル51は、ラインE70を通して電気的に接続される。さらに、電力調整部10と制御部9はラインE80を通して接続されている。また、制御部9における検知処理部9aの動作が異なる。その他の構成は、上記図1と同様であるため、上記図1と同一の構成については同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
電力調整部10は、負荷電力11で必要な電力に対し、発電部5で発電される電力が不足する場合、図には記載していないが、外部電源(例えばリチウムイオンバッテリーやキャパシタ)などから不足分の電力を補う調整機能を有するため、図1に示した外部電力供給部13の機能を電力調整部10に持たせることで、システム構成を簡略化することが可能となる。なお、図5の燃料電池システム102の運転方法は、図1の外部電力供給部13の機能を電力調整部10で実行すれば、第1の実施形態と同様になるため、ここでは説明を省略する。
なお、上記第1及び第2の実施形態は、燃料循環部によって燃料タンク3内の燃料を、希釈した燃料を蓄える混合タンク内に供給し、発電部5での発電で残った燃料と混合させる方式にも適用できる。
(実施例1)
実施例1では、上記第1の実施形態の手法を用い、最小電圧値と出力応値(最大電圧値)との電圧差V3を評価値として得ることを試みた。
実施例1では、上記第1の実施形態の手法を用い、最小電圧値と出力応値(最大電圧値)との電圧差V3を評価値として得ることを試みた。
発電部5はセルを直列に20組積層したものを使用した。発電部5に含まれるセルのうち、アノード極側から数えて10組目のセルを予め定められた1組の特定セル51として、この特定セル51のみに電圧監視部8と外部電力供給部13を接続し、特定セル51のセル電圧の監視と、特定セル51への電力供給を可能とした。残りの19枚のセルは電圧監視部8と外部電力供給部13との接続は行っていない。発電部5への空気供給量は、空気ポンプによって行い、測定中は空気供給流量を固定とした。また、発電部5への燃料供給は燃料ポンプによって行い、所定の燃料濃度、燃料流量で固定した。発電部5の温度は別途温度調整手段で一定になるよう制御を行った。
図6(a)は、負荷電流と外部電力供給部13から特定セル51へ供給される電流とを示したグラフで、図6(b)は、発電部5の出力電圧と特定セル1のセル電圧とを示したグラフである。
上記運転条件にて、図6(a)に示すように、発電部5から取り出す負荷電流は、I0=1.07Aと固定し、外部電力供給部13が接続された特定セル51には、外部電力供給部13から、T=T0でI2=0.95A固定の電流が35秒間だけ供給されるようにし、35秒後のT=T1に外部電力供給部13からの電流供給を終了し、負荷変動を与える運転を行った。そして、T=T2にて観測される最小電圧と、T=T3にて観測される最大電圧との電圧差V3を求めた。
(比較例1)
実施例1と比較するために、比較例1は、発電部5全体の負荷を変動させるようにしたものである。図7(a)は、負荷電流を示したグラフで、図7(b)は、発電部5の出力電圧と各セルのセル電圧とを示したグラフである。
実施例1と比較するために、比較例1は、発電部5全体の負荷を変動させるようにしたものである。図7(a)は、負荷電流を示したグラフで、図7(b)は、発電部5の出力電圧と各セルのセル電圧とを示したグラフである。
図7(a)に示すように、発電部5から取り出す負荷電流を、T=T0でI0=1.07AからI0=0.12Aに切り替え、35秒間保持後、T=T1にて再びI0=1.07Aへ負荷変動を与える運転を行った。そして、T=T2にて観測される最小電圧と、T=T3にて観測される最大電圧との差を求めた。この結果を図7(a)、(b)に示す。
図6(a)、(b)では、発電部5から取り出す負荷電流I=I0で運転するため、特定セル51以外の19個のセルはI=I0での発電が可能となり、T=T0からT=T1までの期間で発電部5の発電出力を維持することが可能となった。一方、図7(a)、(b)では、T=T0からT=T1までの期間は、負荷電流を0.12Aに低下させるため、発電部5から取り出すことが可能な電力が低下してしまっている。
実施例1の手法で求めた電圧差V3は0.043Vであり、比較例1の手法で求めた電圧差V3も0.043Vであり、両者で電圧差V3に差はなかった。よって、実施例1の手法によれば、発電部5の発電出力を断続的に低下させることなく電圧差を測定することが可能となり、連続的に長時間に亘って高出力で安定した発電が可能となることを確認することができた。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、発電部5に積層されるセルのうち端部などの特定セルに外部電力供給部13を接続し、特定セルの温度に応じて外部電力供給部13を操作するようにしたものである。
本発明の第3の実施形態は、発電部5に積層されるセルのうち端部などの特定セルに外部電力供給部13を接続し、特定セルの温度に応じて外部電力供給部13を操作するようにしたものである。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム103の構成例を示している。この燃料電池システム103は、上記図1に示した燃料電池システム101のセル電圧監視部8の代わりにセル温度監視部81を備えたものである。また、制御部9における検知処理部9aの動作及びデータベース9bに格納される内容が異なる。その他の構成は、上記図1と同様であるため、同一の構成については同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
セル温度監視部81は、発電部5内のセル積層構造50に含まれるセルのうち予め定められた少なくとも1つのセルの温度を検出するセル温度検出回路(図示せず)を含み、信号ラインE40を介して上記セルに接続される。上記セルの温度がセル温度検出回路で計測され、セル温度情報として制御部9に送られる。ここでは、セル温度監視部81が接続されるセルは、セル積層構造50の中で最も温度が低下する端部のセルとする。以下、セル積層構造50の両端の2つのセルを特定セル511とし、セル温度監視部81を接続した発電部5の構成について説明する。
発電部5は、図9(a)及び9(b)に示されるようなセル積層構造50を備えている。図9(a)に示すように、セル積層構造50は、アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層された特定セル511と、特定セル511の内側に積層される複数のセル510を備え、特定セル511及びセル510がアノード集電板12及びカソード集電板14に電気的に直列に接続されている。アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層されたセル510、特定セル511は、一対の締め付け板18A、18B間に配置され、この締め付け板18A、18B間に固定具19A、19Bによって締め付け固定されている。アノード集電板12及びカソード集電板14は、それぞれ負荷調整部7に接続され、セル積層構造50で生成された電流がカソード集電板14で収集されて負荷調整部7に供給される。
また、特定セル511及びセル510は、図2(b)に示されるように膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)20を備えている。このMEA20の一方の側にアノード流路板22が設けられ、他方の側にカソード流路板24が設けられている。MEA20は、アノード流路板22とカソード流路板24とに挟まれ、アノード流路板22とカソード流路板24とに接続されたガスケット26で密閉された構造に形成されている。アノード流路板22とカソード流路板24は、このガスケット26で絶縁され、しかも、このガスケット26によってMEA20から外部への燃料及び空気のリークが防止される。MEA20は、電解質膜の一方の側にアノード極が形成され、電解質膜の他方の側にカソード極が形成される。
また、特定セル511には、セル温度を監視するためにアノード流路板22もしくはカソード流路板24にセル温度検知センサー22Cもしくは24Cが設けられている。この温度検知センサーの情報が信号ラインE40を介してセル温度監視部81の温度検出回路に送られる。セル温度監視部81からは、特定セル511の温度情報が信号ラインE40を介して制御部9の検知処理部9aに供給される。温度検知センサーとしては、例えば熱電対を用いることができる。
さらに、上記特定セル511には、アノード流路板22及びカソード流路板24に電気入力端子22B,24Bが設けられている。この入力端子22B,24Bが電流供給ラインE7を介して外部電力供給部13の電流回路に電気的に並列に接続される。
アノード流路板22は、MEA20のアノード極側に面し、メタノールおよびメタノール水溶液を供給する。カソード流路板24は、MEA20のカソード極側に面し、空気を供給する。アノード流路板22、カソード流路板24ともに、上記目的を果たす限り、任意の形状をとることができる。
次に、図8に示される燃料電池システム103の動作について説明する。
発電を始めるにあたり、燃料供給部4は、制御部9による制御の下で、燃料タンク3から所定の濃度のメタノール水溶液(燃料)を流路L1、流路L2を介してアノード流路板22に供給する。また、空気供給部6は、制御部9による制御の下で、空気を流路L3を介してカソード流路板24に供給する。
発電を始めるにあたり、燃料供給部4は、制御部9による制御の下で、燃料タンク3から所定の濃度のメタノール水溶液(燃料)を流路L1、流路L2を介してアノード流路板22に供給する。また、空気供給部6は、制御部9による制御の下で、空気を流路L3を介してカソード流路板24に供給する。
負荷調整部7によりセル積層構造50に接続される負荷が印加されると、アノード極、即ち、MEA20のアノード側では、式(1)に示したメタノール酸化反応が起こる。カソード極、即ち、MEA20のカソード側では、式(2)で示した酸素還元反応が起こる。電子(e−)は負荷調整部7へ流れる。
上記発電時、発電部の発電効率と発電量を所定の値に保つため、発電部は所定の温度で運転される。この時、外気温度等の影響で発電部の発電セル間には温度分布がつく。特に、外気の影響を最も受けやすい発電部5の端部の特定セル511の温度が最も低下する。この場合、特定セル511のアノード極での燃料拡散性が低下し、この特定セル511よりも温度が高い中央部のセル510と同じ負荷を取り出すことができなくなる問題がある。この場合、端部の特定セル511の温度で取り出すことが可能な負荷にて発電部5を発電すると、他のセル510もその特定セル511の負荷に合わせて低減して発電することになるため、発電部5全体の発電量は低下してしまう。また、特定セル511以外のセルでは、負荷の低減によってメタノールクロスオーバーが増加し、発電効率が低下するという問題がある。
そこで、第3の実施形態では、アノード集電板18Aおよびカソード集電板18Bと接する端部の特定セル511に対してセル温度監視部8および外部電力供給部13を接続し、上記問題を解決する手法を説明する。
図10を参照して、第3の実施形態に係る燃料電池システム103の運転方法について説明する。
図10は、外気温度をある範囲で変化させた場合の特定セル511の温度の経時変化を示している。外気温度が低下すると、それに伴い、上記特定セル511の温度は低下する。
図10は、外気温度をある範囲で変化させた場合の特定セル511の温度の経時変化を示している。外気温度が低下すると、それに伴い、上記特定セル511の温度は低下する。
ここで、制御部9は、セル温度監視部81から供給される温度情報をもとに、発電時間x=x1で特定セル511の温度が所定の下限温度Tlimよりも低下したと判定すると、特定セル511に対し、外部電力供給部13を電流供給ラインE7を介して電気的に並列に接続する。電流供給ラインE7を介して、特定セル511に外部電力供給部13が接続されると、外部電力供給部13は一定の電力(電流I2)を特定セル511へ供給する。これにより、発電部5の負荷電流が、発電時間中一定I=I0であっても、特定セル511から取り出す負荷電流I1は、I1=I0−I2で一定に減少する。その後、制御部9は、発電時間x=x2で特定セル511温度が下限温度Tlimよりも高くなったと判定すると、外部電力供給部13からの電力の供給を停止する。これにより、特定セル511から取り出す負荷電流I1は発電部負荷I0と同じ負荷I1=I0となる。
図11は、第3の実施形態におけるシステムの処理手順を示したものである。この図11を参照して、制御部9の制御動作について説明する。
制御部9において制御動作が開始されると(ステップS11)、検知処理部9aは特定セル511の温度を測定する(ステップS12)。この指示にしたがって、セル温度監視部81は、特定セル511の温度を検知する(ステップS13)。そして、データベース9b内に予め蓄えられたセル温度データベース9b−11をもとに、上記測定した特定セル511の温度が所定の範囲にあるか否かを判定する(ステップS14)。セル温度データベース9b−11には、セルが正常に発電可能な温度範囲(上限値及び下限値の少なくとも一方)を示した情報が予め記憶されている。特定セル511の温度が所定の範囲にある場合、検知処理部9aはステップS12に移行し、特定セル511の温度の測定を繰り返し行う(ステップS14:YES)。
一方、測定した特定セル511の温度が所定の範囲にない場合(ステップS14:NO)、検知処理部9aは、データベース9b内に予め蓄えられた外部電力供給量データベース9b−12に基づいて、外部電力供給部13に対して外部電力を供給する指示を与える(ステップS15)。外部電力供給量データベース9b−12には、測定されたセル温度を外部電力供給部13からの電力(電流)の供給量に換算するための情報が予め記憶されている。これにより、特定セル511に電気的に並列に接続した外部電力供給部13から特定セル511に電力供給が行われる(ステップS16)。
以上述べたように、上記第3の実施形態では、定常発電時に、外気温等の外部環境因子によって特定セル511の温度が所定の温度より低下し、特定セル511から取り出せる負荷電流が減少した場合でも、外部電力供給部13から特定セル511への電力(電流)供給により、発電部5全体の負荷電流を一定に保つことができる。したがって、燃料電池システムにおいて、発電部に含まれるセル間に温度のバラツキがある場合でも、発電効率と発電量の向上を図ることが可能となる。
また、上記第3の実施形態は、所定の電力量を発電する、定常発電時のみならず、起動時などにも適用できる。起動時は、セル温度が低い状態から所定の温度に達するまでの時間を早め、所定の発電量を得られるまでの時間を短縮することが好ましい。上記第3の実施形態の手法を応用して、燃料電池システムの起動時に、特定セル511が低温のために他のセルと同等の負荷電流が取り出せない場合は、特定セル511のみに外部電力供給部13を電気的に並列に接続し、特定セル511から取り出す負荷電流を低減させる。このようにすることで、特定セル511以外の他セルは所定の負荷で運転することができ、低温からの起動速度を高速化させることが可能となる。
(第4の実施形態)
上記第3の実施形態では、最も温度の低い特定セル511に対してセル温度監視部81と外部電力供給部13を接続し、セル温度に応じて外部電力供給部13を操作したが、第4の実施形態では、発電部5内の出力電圧の低いセルに対して外部電力供給部13を接続し、当該セル出力電圧に応じて外部電力供給部13を操作する。
上記第3の実施形態では、最も温度の低い特定セル511に対してセル温度監視部81と外部電力供給部13を接続し、セル温度に応じて外部電力供給部13を操作したが、第4の実施形態では、発電部5内の出力電圧の低いセルに対して外部電力供給部13を接続し、当該セル出力電圧に応じて外部電力供給部13を操作する。
第4の実施形態に係る燃料電池システムの構成は、上記図1に示した燃料電池システム101と同様であるため、上記図1を用いて説明を行う。ただし、第4の実施形態では、発電部5の構成、制御部9における検知処理部9aの動作及びデータベース9bに格納される内容が異なる。
発電部5は、図12(a)及び12(b)に示されるようなセル積層構造50を備えている。図12(a)に示すように、セル積層構造50は、アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層される、セル電圧監視部8に接続された特定セル521と、セル電圧監視部8が接続されていないセル520とを備え、特定セル521及びセル520がアノード集電板12及びカソード集電板14に電気的に直列に接続されている。特定セル521とセル520との割合は、特定セル521を1セル以上有すれば任意に設定することができる。図12(a)では1セル間隔で特定セル521とセル520とが積層されている例を示している。アノード集電板12とカソード集電板14との間に積層された特定セル521と、セル520とは、一対の締め付け板18A、18B間に配置され、この締め付け板18A、18B間に固定具19A、19Bによって締め付け固定されている。アノード集電板12及びカソード集電板14は、それぞれ負荷調整部7に接続され、セル積層構造50で生成された電流がカソード集電板14で収集されて負荷調整部7に供給される。
特定セル521及びセル520は、図12(b)に示されるように膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)20を備えている。このMEA20の一方の側にアノード流路板22が設けられ、他方の側にカソード流路板24が設けられている。MEA20は、アノード流路板22とカソード流路板24とに挟まれ、アノード流路板22とカソード流路板24とに接続されたガスケット26で密閉された構造に形成されている。アノード流路板22とカソード流路板24は、このガスケット26で絶縁され、しかも、このガスケット26によってMEA20から外部への燃料及び空気のリークが防止される。
また、特定セル521には、セル電圧を監視するためにアノード流路板22とカソード流路板24にセル電圧検知用の電気配線22D、24Dが設けられている。このセル電圧検知用の電気配線22D、24Dが信号ラインE4を介してセル電圧監視部8の電圧検出回路に接続されている。セル電圧監視部8からは、電圧検出回路で検出された特定セル521の電圧値を表す電圧情報が信号ラインE4を介して制御部9の検知処理部9aに供給される。
さらに、セル電圧監視部8の電圧検出回路が接続された特定セル521には、アノード流路板22及びカソード流路板24に入力端子22B,24Bが設けられている。この入力端子22B,24Bが電流供給ラインE7を介して外部電力供給部13の電流回路に電気的に並列に接続される。
図13は、第4の実施形態におけるシステムの処理手順を示したものである。この図13を参照して、制御部9の制御動作について説明する。
制御部9において制御動作が開始されると(ステップS21)、検知処理部9aは特定セル521のセル電圧を測定する(ステップS22)。この指示にしたがって、セル電圧監視部8は、特定セル521のセル電圧を個別に検知する(ステップS23)。そして、データベース9b内に予め蓄えられたセル電圧データベース9b−21をもとに、測定した各セルの電圧が所定の範囲にあるか否かを判定する(ステップS24)。セル電圧データベース9b−21には、セルが正常に発電していると判断される電圧範囲(上限値及び下限値の少なくとも一方)を示した情報が予め記憶されている。全ての特定セル521の電圧が所定の範囲にある場合、検知処理部9aはステップS12に移行し、特定セル521の電圧の測定を繰り返し行う(ステップS24:YES)。
一方、特定セル521の電圧が所定の範囲にない場合(ステップS24:NO)、検知処理部9aは、電圧が所定の値にない特定セル521のみに対して、データベース9b内に予め蓄えられた外部電力供給量データベース9b−22に基づいて、外部電力供給部13からの電力供給指示を与える(ステップS25)。外部電力供給量データベース9b−22には、測定されたセル電圧の値を外部電力供給部13からの電力(電流)の供給量に換算するための情報が予め記憶されている。これにより、特定セル521のうち、電圧が所定の範囲にない特定セル521のみに対して、電気的に並列に接続した外部電力供給部13から電力供給が行われる(ステップS28)。
通常、発電部50に含まれるセルは、全てが同じ特性を有するとは限らず、燃料、空気の供給状態、セル温度、その他劣化等によって、同一負荷の条件下でセル電圧にバラツキが生じる。セル電圧が極端に低下したセルがある場合、そのセル電圧に基づいて負荷電流を低下させてしまうと、発電量が低下する問題がある。
上記第4の実施形態の手法では、特定セル521の個別の電圧を検知し、その電圧値に応じて外部電力を供給するため、特定セル521のうち、セル電圧が極端に低下したセルから取り出す負荷を任意に調整可能となる。よって、セル電圧が極端に低下したセルのみ発電量が低下しても、発電部50全体の発電量を低下させることがない。
なお、この発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
101…第1の実施形態の燃料電池システム、2…補器類、3…燃料タンク、4…燃料供給部、5…発電部、6…空気供給部、7…負荷調整部、8…セル電圧監視部、9…制御部、9a…検知処理部、9b…データベース、10…電力調整部、11…負荷電力、50…セル積層構造、51…特定セル、12…アノード集電板、13…外部電力供給部、14…カソード集電板、18A,18B…締め付け板、19A,19B…固定具、20…膜電極接合体(MEA)、22…アノード流路板、24…カソード流路板、22A,24A…出力端子、26…ガスケット、L1,L2,L3…供給ライン、E1,E2,E3,E4,E5,E8…信号ライン、E61,E62…電流配線ライン、E7…電流供給ライン、9b−1…クロスオーバー換算データベース、9b−2…クロスオーバー供給量制御データベース、102…第2の実施形態の燃料電池システム、E70,E80…信号ライン、103…第3の実施形態の燃料電池システム、81…セル温度監視部、E40…信号ライン、9b−11…セル温度データベース、9b−12…外部電力供給量データベース、9b−21…セル電圧データベース、9b−22…外部電力供給量データベース。
Claims (11)
- 積層された複数のセルを有する発電部と、
前記セルに燃料を供給する、燃料供給量が調整可能な燃料供給部と、
前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの出力電圧を監視する電圧監視部と、
前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、
前記電力が前記特定セルに供給された後に現れる前記出力電圧の最小値と、前記出力電圧が最小値となった後の前記出力電圧の応答値との電圧差を検知し、前記電圧差に応じて前記燃料供給量を制御する制御部と
を具備することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記応答値は、前記出力電圧が最小値に達した後に略一定に維持される定常値に相当することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
- 前記応答値は、前記出力電圧が最小値に達した後に現れる最大値に相当することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記発電部から取り出す負荷を一定にした状態で、前記特定セルに前記電力を供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
- 前記電力供給部は、キャパシタ又は二次電池を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
- 積層された複数のセルを有する発電部と、
前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの温度を監視する温度監視部と、
前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、
前記温度に応じて前記特定セルに前記電力を供給する制御部と
を具備することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記特定セルは、前記発電部の端部のセルであることを特徴とする請求項6記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記温度が基準値以下の場合に前記電力供給部から前記特定セルに前記電力を供給することを特徴とする請求項6または7に記載の燃料電池システム。
- 積層された複数のセルを有する発電部と、
前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルの電圧を監視する電圧監視部と、
前記特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と、
前記電圧に応じて前記特定セルに前記電力を供給する制御部と
を具備することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記制御部は、前記電圧が基準値以下の場合に前記特定セルに前記電力を供給することを特徴とする請求項9記載の燃料電池システム。
- 積層された複数のセルを有する発電部と、
前記複数のセルのうち少なくとも一つの特定セルに電力を一時的に供給する電力供給部と
を具備することを特徴とする燃料電池。
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