JP2010223102A - ピストン型圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】シャフトの回転による遠心分離作用を効果的に行って圧縮機外へのオイルの流出を効果的に低減しつつ、クランク室に収容される内部部品の冷却を促進できるピストン型圧縮機を提供する。
【解決手段】吸入口30から流入された作動流体をクランク室7を経由せずに吸入室27a,27bへ直接導く第1の吸入経路と、吸入口30から流入された作動流体をクランク室7を経由して吸入室27a,27bへ導く第2の吸入経路とを有し、第2の吸入経路を、クランク室7からシャフト内に形成された孔を介して吸入室27a,27bに導くオイル分離通路32と、クランク室7からシャフト12を経由しないでシリンダブロック1,2を通して吸入室27a,27bへ導くバイパス通路33とを具備して構成する。
【選択図】図1

Description

この発明は、圧縮機内の作動流体経路上で作動流体中に混在するオイルを分離することが可能な構造を備えたピストン型圧縮機に関し、特に車両用空調装置に用いられ、吸入口から吸入した作動流体を、クランク室を経由して吸入室へ導き、ピストンで圧縮した後に吐出室を介して吐出口から吐出させる作動流体経路を備えた圧縮機に関する。
冷凍サイクルに用いられる圧縮機においては、圧縮機から外部サイクルにオイルが流出されると、圧縮機内のオイル不足を招くのみならず、オイルが冷媒と共にサイクルを循環することになり、冷凍効率が低下する不都合が生じる。
このような不都合を回避するために、本出願人は、先に、作動流体を吸入口からクランク室を経由して吸入室に導く圧縮機において、クランク室を貫通するシャフトに、シャフトの軸方向に沿って延びる軸孔と、この軸孔に連通し、シャフトの径方向に設けられてクランク室に開口する側孔とを少なくとも設け、クランク室に流入した作動流体を少なくともこの側孔及び軸孔を経由させて吸入室へ導くようにし、シャフトの回転による遠心分離作用を利用して、クランク室から吸入室へ流動しようとする作動流体中のオイルをクランク室に開口された側孔を流れる際に分離させるようにした構成を提案している(特許文献1参照)。
しかしながら、このような構成においては、吸入口から流入した作動流体の全量をシャフトに形成された側孔や軸孔を通過させて吸入室へ導こうとすると、シャフトの側孔入口で作動流体の流速が早くなり、遠心分離が有効に作用せずに作動流体中に混在するオイルが吸入室へ吸い出されてしまい、結果として圧縮機外へのオイル流出量を十分に抑えることができない。
そこで、本出願人は、クランク室に流入した作動流体をシャフトを通過させて吸入室へ導く吸入経路に加えて、吸入口から吸入された作動流体をクランク室を経由せずに吸入室へ導く別の吸入経路を設け、吸入された作動流体の一部をクランク室からシャフト内を通過させ、残りを直接吸入室へ導くようにした構成を提案している(特許文献2参照)。
これにより、シャフトの側孔から吸い込まれる作動流体の流速が遅くなり、十分なオイル分離機能が得られるようになっている。
特開2008−25476号公報 WO 2008/056533 A1
ところが、作動流体の一部のみをクランク室に導く上述の構成においては、クランク室に導入される作動流体の量が少なくなるため、クランク室内部の摺動部品を、クランク室に流入する作動流体により冷却する点において不利である。また、高温下のクランク室内において、摺動部位に摩耗が発生した場合、その摩耗粉が作動流体の流れによって除去されにくいという不都合がある。
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、シャフトの回転による遠心分離作用を効果的に行って圧縮機外へのオイルの流出を効果的に低減しつつ、クランク室に収容される内部部品の冷却を促進して軸受け等の摺動部品の摩耗を抑制することが可能なピストン型圧縮機を提供することを主たる課題としている。
また、クランク室内の摺動部位で摩耗が発生した場合の摩耗粉の除去を図り、摺動部品に摩耗粉が付着することによる悪影響を抑えることをも課題としている。
上記課題を達成するために、本発明者らは、シャフトの回転による遠心分離作用を効果的に行うようにするためには、クランク室からシャフト内を流入する作動流体の流量を低減すればよいが、クランク室に供給される作動流体量が少なくなるとクランク室内の冷却効果が損なわれることになるため、クランク室に供給される冷媒流量を確保しつつ、シャフト内に流入する作動流体の流量を低減することができる構成について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係るピストン型圧縮機は、クランク室に臨むシリンダボアが形成された少なくとも1つのシリンダブロックと、シリンダボア内を往復摺動するピストンと、吸入室及び吐出室が形成されてバルブプレートを介して前記シリンダブロックに接合される少なくとも1つのシリンダヘッドと、前記クランク室を貫通し、前記シリンダブロックに回転自在に支承されたシャフトと、前記クランク室に収容され、前記シャフトの回転により回転して前記ピストンを往復動させる斜板と、前記シリンダブロック又は前記シリンダヘッドに形成されて作動流体を吸入する吸入口及び吐出する吐出口とを有し、前記吸入口から吸入した作動流体を前記吸入室へ導き、前記ピストンにより圧縮した後に前記吐出室を介して前記吐出口から吐出させるピストン型圧縮機であって、前記シャフトに、軸方向に沿って設けられた軸孔と、この軸孔に連通し、前記シャフトの径方向に設けられて前記クランク室に開口する側孔とを少なくとも形成し、前記吸入口から流入された作動流体を前記クランク室を経由せずに前記吸入室へ直接導く第1の吸入経路と、前記吸入口から流入された作動流体を前記クランク室を経由して前記吸入室へ導く第2の吸入経路とを有し、前記第2の吸入経路は、前記クランク室から前記シャフトに形成された前記側孔及び前記軸孔を介して前記吸入室に導かれるオイル分離通路と、前記クランク室から前記シャフト内を経由せずに前記シリンダブロックを通して前記吸入室へ導かれるバイパス通路とを具備することを特徴としている。
したがって、クランク室から吸入室へ作動流体を導く第2の吸入経路が、バイパス通路とオイル分離通路とを並列に設けて構成されているので、クランク室に導かれた作動流体の全てをシャフトのみを介して(オイル分離通路のみを介して)吸入室へ導く従前の構成よりもクランク室へ流入する作動流体の量を多くすることができ、クランク室内の冷却を促進することが可能となる。また、クランク室に導かれた作動流体は、バイパス通路とオイル分離通路とに分かれて吸入室へ導かれるので、クランク室に導かれる作動流体量が多くなってもシャフトに形成された側孔を通過する作動流体量(作動流体の流速)を増加させることがなく、シャフトを通過する際のオイル分離機能が損なわれることはない。
このため、クランク室内の冷却を確保しつつ、シャフトの回転による遠心分離機能が維持されて、クランク室にオイルを残留させることが可能となる。
ここで、バイパス通路は、前記斜板を回転支持するスラスト軸受とこのスラスト軸受を受ける前記シリンダブロックに設けられたスラスト軸受受け面との間、より具体的には、スラスト軸受のスラストレースを受けるスラスト軸受受け面に設けられた溝を有して構成するとよい。
このような構成においては、特に冷却が不十分になりやすいスラスト軸受とシリンダブロックに設けられたスラスト軸受受け面との間に、クランク室から吸入室へ作動流体を流すバイパス通路の一部を構成する溝が形成されているので、スラスト軸受近傍を優先的に冷却することができ、スラスト軸受とこれを受けるスラスト軸受受け面の摩耗を低減することが可能となる。また、スラスト軸受近傍で発生し得る摩耗粉を、このバイパス通路を介してクランク室から排出させることが可能となる。
このようなバイパス通路の具体的構成としては、前記斜板を回転支持するスラスト軸受とシリンダブロックに設けられたスラスト軸受受け面との間に設けられた溝と、この溝に連通し、前記シャフトとこのシャフトを挿入するシャフト挿入孔との間の空間、及び前記シャフト挿入孔の内周面に開口するよう前記シリンダブロックに形成された通孔とにより構成するとよい。
このような構成においては、バイパス通路を入り組んだ構造にすることで、上述した作用効果に加えて、クランク室からのオイルの流出の懸念を回避することも可能となる。
さらに、特に、シャフトがハウジングに対してプレーンベアリングを介して回転自在に支承されている構成においては、前記バイパス通路をプレーンベアリングを迂回するようにシリンダブロックに設けるようにするとよい。
シャフトがプレーンベアリングを介してハウジングに支承されている構成においては、クランク室内の摺動部分で発生した摩耗粉がプレーンベアリングに付着すると、円滑なシャフトの回転が損なわれる不都合があるが、上述のような構成とすることで、クランク室内の摺動部分で発生した摩耗粉がバイパス通路を介して流れる作動流体によりプレーンベアリングに導かれることがなくなり、上述した不都合を回避することが可能となる。
また、前記通孔は、シャフトの軸心に対して作動流体が前記クランク室に流入される部位とは反対側に少なくとも1つ設けることが好ましい。このような構成とすることで、バイパス通路を構成する溝を複数設けた場合に、クランク室に流入した作動流体をその一部に偏ることなく導くことが可能となる。
以上述べたように、本発明によれば、圧縮機が吸入した作動流体をクランク室を経由せずに吸入室へ直接導く第1の吸入経路と、クランク室を経由して吸入室へ導く第2の吸入経路とを設け、この第2の吸入経路を、シャフトを経由して吸入室に導くオイル分離通路と、これと並列に設けられてシャフトを経由せずにシリンダブロックを通して吸入室に導くバイパス通路とを具備して構成したので、クランク室に導かれる作動流体を相対的に多くしつつ、シャフトを介して吸入室に導かれる作動流体の増加を抑えることができ、クランク室内の内部部品の冷却を確保することができると共に、シャフトのクランク室に開口する側孔を流れる作動流体の流速を抑えて、シャフトの回転に伴う遠心分離作用によるオイル分離を確保することが可能となる。
このため、クランク室内の摺動部品の信頼性を確保することができ、また、クランク室から吸い出されるオイルを低減することが可能となる。
特に、前記バイパス通路を、斜板を回転支持するスラスト軸受とこのスラスト軸受を受けるシリンダブロックに設けられたスラスト軸受受面との間に設けられる溝を有して構成することで、特に冷却が不十分になりやすいスラスト軸受近傍を優先的に冷却することが可能となり、その部分の摩耗を低減することが可能となる。
また、シャフトがハウジングに対してプレーンベアリングを介して回転自在に支承されている構成においては、バイパス通路をプレーンベアリングを迂回するようにハウジングに設けることにより、プレーンベアリング近傍の摩耗粉がバイパス通路を流れる作動流体に導かれて排出され、円滑なシャフトの回転を確保することが可能となる。
図1は、本発明に係るピストン型圧縮機の構成例を示す断面図である。 図2は、本発明に係るピストン型圧縮機のフロント側シリンダブロックと、リア側シリンダブロックとを示す斜視図である。 図3は、本発明に係るピストン型圧縮機のフロント側シリンダブロックとリア側シリンダブロックとをクランク室側から見た図である。 図4は、本発明に係るピストン型圧縮機のフロントヘッドとリアヘッドとをシリンダブロック側から見た図である。 図5は、バイパス通路を示す拡大断面図である。 図6は、バイパス通路をクランク室側から見た図であり、(a)はシャフトの軸方向から見た図、(b)は斜視図である。
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1において、冷媒を作動流体とする車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられる固定容量斜板式往復動型と称されるピストン型圧縮機が示されている。
車両用空調装置
この圧縮機は、フロント側シリンダブロック1と、このフロント側シリンダブロック1に組み付けられるリア側シリンダブロック2と、フロント側シリンダブロック1のフロント側(図中、左側)にバルブプレート3を介して組み付けられたフロントヘッド4と、リア側シリンダブロック2のリア側(図中、右側)にバルブプレート5を介して組み付けられたリアヘッド6とを有して構成されている。そして、これらフロントヘッド4、フロント側シリンダブロック1、リア側シリンダブロック2、及びリアヘッド6は、図示しない締結ボルトにより軸方向に締結され、圧縮機全体のハウジングを構成している。
フロント側シリンダブロック1とリア側シリンダブロック2とは、図2にも示すように、ガスケット16を介して組みつけられており、内部には、それぞれのシリンダブロックを組み付けることによって画成されたクランク室7が形成されている。このクランク室7には、フロント側シリンダブロック1及びリア側シリンダブロック2に形成されたシャフト挿入孔8,9にプレーンベアリング10,11からなる軸受けを介して回転自在に支持され、一端がフロントヘッド4から突出するシャフト12が配設されている。プレーンベアリング10,11は、後述するシャフト内通路の側孔の開口の妨げとならない位置に取り付けられている。また、シャフト12の先端部とフロントヘッド4との間には、冷媒の漏洩を防止するためのシール部材13が配され、フロントヘッド4から突出したシャフト12の先端には、電磁クラッチ14が取り付けられるようになっている。
それぞれのシリンダブロック1,2には、図3にも示されるように、シャフト挿入孔8,9に対して平行に、且つ、シャフトを中心とする円周上に等間隔に配された複数のシリンダボア15が形成されている。そして、それぞれのシリンダボア15内には、両端に頭部17bを有する両頭ピストン17が往復摺動可能に挿入され、この両頭ピストン17の頭部17bとバルブプレート3,5との間に圧縮室18が画成されている。
シャフト12には、クランク室7に収容され、このシャフト12と共に回転する斜板20がシャフト12と一体に形成されている。
この斜板20は、フロント側シリンダブロック1及びリア側シリンダブロック2に対してスラスト軸受21,22を介して回転自在に支持されており、周縁部分が前後を挟み込むように設けられた半球状の一対のシュー23a,23bを介して両頭ピストン17の中央部に形成された係留凹部17aに係留されている。したがって、シャフト12が回転して斜板20が回転すると、その回転運動がシュー23a,23bを介して両頭ピストン17の往復運動に変換され、圧縮室18の容積が変化するようになっている。
それぞれのバルブプレート3,5には、シリンダブロック側端面に設けられた吸入バルブによって開閉される吸入孔3a,5a,と、シリンダヘッド側端面に設けられた吐出バルブによって開閉される吐出孔3b,5bとがそれぞれのシリンダボアに対応して形成されている。また、フロントヘッド4とリアヘッド6とには、図4にも示されるように、圧縮室18に供給する冷媒を収容するための吸入室27a,27bと圧縮室18から吐出した冷媒を収容するための吐出室28a,28bとがそれぞれ形成されている。この例において、吸入室27a,27bはそれぞれのヘッド4,6の略中央に形成され、吐出室28a,28bは吸入室27a,27bの周囲に形成されている。
また、ハウジングを構成するリア側シリンダブロック2には、外部サイクルから冷媒を吸入するための吸入口30と、吐出室28a,28bに連通し、圧縮した冷媒を吐出するための吐出口31とが形成されている。
本構成例において、吸入口30から吸入室27a,27bに至る吸入経路は、吸入口30から流入された冷媒を前記クランク室7を経由せずに直接吸入室27a,27bへ導く第1の吸入経路と、吸入口30に連通するクランク室7を介して吸入室に導く第2の吸入経路とを有して構成されている。また、この第2の吸入経路は、さらに、クランク室7を貫通するシャフト12に形成されたシャフト内の通路を経由してフロントヘッド4及びリアヘッド6のそれぞれの吸入室27a,27bに至るオイル分離通路32と、このオイル分離通路32とは並列に設けられ、前記クランク室7からシャフト12をバイパスしてシリンダブロック1.2を通して吸入室27a,27bに至るバイパス通路33とを有して構成されている。
より具体的には、クランク室7の外側に吸入口30と接続する軸方向に延設された軸方向通路34を形成し、前記第1の吸入経路は、クランク室7の外側に形成された前記軸方向通路34をフロントヘッド4及びリアヘッド6にかけて延設して、バルブプレート3,5に形成された通孔3c,5cを介してフロントヘッド4とリアヘッド6とに形成された導入室35a,35bに連通し、また、フロントヘッド4及びリアヘッド6のそれぞれに吐出室28a,28bと干渉しないように径方向に穿設された径方向通路36a,36bを形成し、この径方向通路36a,36bにより導入室35a,35bと吸入室27a,27bとを接続して構成されており、吸入口30から吸入された冷媒の一部を、クランク室7を経由しないで圧縮機前後の吸入室27a,27bへ導くようにしている。
また、第2の吸入経路は、軸方向通路34の途中にクランク室7に連通する開口部39を設け、この開口部39からクランク室に作動流体を導き、その後、吸入室に導くもので、オイル分離通路32は、シャフト12内に、リア側先端からフロント側へ軸方向に沿って穿設されると共にリア側の開口端がリアヘッド6に設けられた吸入室27bに開口する軸孔32aと、この軸孔32aに連通し、シャフト12の径方向に設けられてクランク室7に開口する流入側側孔32bと、軸孔32aに連通し、シャフト12の径方向に設けられてフロントヘッド4に形成された吸入室27aに開口する流出側側孔32cとから構成されている。
これに対して、バイパス通路33は、図5にも示されるように、斜板20を回転支持するスラスト軸受21,22とこのスラスト軸受21,22を受けるシリンダブロック1,2に設けられたスラスト軸受受面40との間に設けられた溝41と、前記シャフト12とこれを挿入するシャフト挿入孔8,9との間の空間42と、シリンダブロック1,2に形成され、一端がシャフト挿入孔8,9の内壁面に開口し、他端がバルブプレート3,5に形成された通孔3d、5dを介して吸入室27a,27bに連通するブロック貫通孔43とから構成されている。
より具体的には、溝41は、スラスト軸受21,22のスラストレースが接触するシリンダブロック1,2のスラスト軸受受面40に、図6にも示されるように、放射状に溝を形成し、この放射状の溝41をスラスト軸受21,22のスラストレースが当接する部位よりも外側の部位からシャフト挿入孔8,9にかけて形成することにより構成されており、この例では、周方向に略等間隔に形成せれた5つのシリンダボア15のそれぞれの隣り合うシリンダボア間に形成されている。
また、ブロック貫通孔43は、シャフト12を回転可能に支持するプレーンベアリング10,11よりも手前側(クランク室側)で一端がシャフト挿入孔8,9の内周面に開口し、前記溝41を通ってシャフト12とシャフト挿入孔8,9との間の空間42を介して流出する作動流体をプレーンベアリング10,11を迂回させて吸入室27a,27bに導くようにしている。
この例では、シリンダブロック1,2の反クランク室側からシャフト12の軸心と略平行に穿設された複数の有底の平行穴(鋳抜き孔)43bと、シャフト挿入孔8の内周面にシャフトの軸心に対して所定の角度で穿設された傾斜孔43aとによってブロック貫通孔43を構成し、シャフト挿入孔8,9とシャフト12の間の空間42を傾斜孔43aを介して平行穴43bに連通させるようにしている。
また、この例では、ブロック貫通孔43(傾斜孔43a)が、シャフト12の軸心に対して作動流体がクランク室7に流入される開口部39とは反対側(開口部39から見てシャフト12の軸心より遠い側)に2つ設けられている(図6(b)参照)。図1においては、説明の便宜上、傾斜孔43aを設けた位置がシャフト12の上側に描かれているが、図6(b)に示されるように、シャフト12の軸心に対して開口部39と反対側に設けることにより、クランク室7に流入した作動流体をバイパス通路33を構成する複数の溝41の一部に偏ることなく導くことが可能となる。
ここで、吸入口30から流入した作動流体の分配割合は、例えば、以下のように設定されている。
先ず、吸入口30からクランク室7を経由せずに直接吸入室27a,27bへ導く流量を、フロント側、リア側のそれぞれについて全体の吸入量の約35%づつとし、クランク室7へ導く流用を全体の吸入量の約30%とするように通路断面を設定する。この例においては、吸入口30からフロント側又はリア側の吸入室27a,27bへ直接導く第1の吸入経路は、経路の最小通路断面が約φ12孔相当(直径約12mmの円相当)に設定されており、圧力損失が性能上許容できるレベルに大きく形成されている。
また、クランク室7に流入された流量のうち、オイル分離通路32(シャフト12の流入側側孔32b、軸孔32a、流出側側孔32c)を介して吸入室27a,27bに導かれる流量を約40%(全体の吸入流量の約12%)とし、バイパス通路33を介して吸入室27a,27bに導かれる流量を約60%(全体の吸入流量の約18%)としている。
したがって、上述の構成においては、吸入口30から直接吸入室27a,27bへ導かれる第1の吸入経路を設けて、クランク室7に流入される流量を減らしているが、クランク室7から吸入室27a,27bへ作動流体を導く第2の吸入経路は、バイパス通路33とオイル分離通路32とを並列に設けて構成されているので、第2の吸入経路をシャフト12内を通って吸入室27a,27bに導くオイル分離通路のみとしている従前の構成よりもクランク室に流入する作動流体の量を相対的に多くすることが可能となる。
また、クランク室に導かれた作動流体は、バイパス通路とオイル分離通路とに分かれて吸入室へ導かれるので、クランク室に導かれる作動流体量が多くなってもシャフト12に形成された流入側側孔32bを通過する作動流体量(作動流体の流速)を抑えることが可能になる。
このため、クランク室に流入する作動流体量を多くしてクランク室内の冷却を確保することができ、また、クランク室内に導かれた作動流体の一部をバイパス通路33を経由して吸入室に導くので、シャフト12の流入側側孔32bに流入する作動流体の流速が抑えられ、クランク室7内のオイル混じりの冷媒は、シャフト12の回転による遠心分離作用によりオイルが分離されることとなり、クランク室にオイルを残留させることが可能となる。
尚、吸入口30からクランク室7を経由せずに直接吸入室27a,27bへ吸入された冷媒は、オイルを含んだまま圧縮され、そのまま外部冷凍サイクルへ吐出されるが、冷凍サイクルを循環して再び圧縮機へ吸入される際に、その一部が第2の吸入経路に分配されてオイル分離されることとなるので、このプロセスが連続的に行われるうちに、冷凍回路を循環するオイルが確実に分離されクランク室内に保持されることとなる。
また、上述の構成によれば、バイパス通路33を構成する溝41が、斜板20を回転支持するスラスト軸受21,22とこのスラスト軸受を受けるシリンダブロック1,2に設けられたスラスト軸受受面40との間に設けられているので、スラスト軸受21,22を優先的に冷却することができ、スラスト軸受近傍の摩耗を低減することが可能になると共に、スラスト軸受の摩耗で発生した摩耗粉を、このバイパス通路を介してクランク室から排出させることが可能となる。
さらに、バイパス通路33は、プレーンベアリング10,11を迂回するように設けられているので、バイパス通路33を介して流れる作動流体中の摩耗粉がプレーンベアリングに導かれることがなくなり、シャフト12の円滑な回転を確保することが可能となり、また、上述のようにバイパス通路33を、溝41と、シャフト12とこれを挿入するシャフト挿入孔8,9との間の空間と、シャフト挿入孔8,9の内周面に開口するようシリンダブロック1,2に形成されたブロック貫通孔43とにより構成して、入り組んだ構造としているので、クランク室7からバイパス通路33を介して吸入室へ流出するオイルの流出も抑制することが可能となる。
尚、上述の実施例においては、両頭ピストンを備えたピストン型固定容量圧縮機に適用した場合について説明したが、シャフトに対する傾斜角度が固定された斜板によって片頭ピストンを往復摺動させる固定容量型圧縮機にも同様に適用することが可能である。
1 フロント側シリンダブロック
2 リア側シリンダブロック
4 フロントヘッド
6 リアヘッド
7 クランク室
8,9 シャフト挿入孔
10,11 プレーンベアリング
12 シャフト
15 シリンダボア
17 ピストン
20 斜板
21,22 スラスト軸受
27a,27b 吸入室
28a,28b 吐出室
30 吸入口
31 吐出口
32 オイル分離通路
32a 軸孔
32b 流入側側孔
32c 流出側側孔
33 バイパス通路
40 スラスト軸受受面
41 溝
42 空間
43 ブロック貫通孔

Claims (5)

  1. クランク室に臨むシリンダボアが形成された少なくとも1つのシリンダブロックと、シリンダボア内を往復摺動するピストンと、吸入室及び吐出室が形成されてバルブプレートを介して前記シリンダブロックに接合される少なくとも1つのシリンダヘッドと、前記クランク室を貫通し、前記シリンダブロックに回転自在に支承されたシャフトと、前記クランク室に収容され、前記シャフトの回転により回転して前記ピストンを往復動させる斜板と、前記シリンダブロック又は前記シリンダヘッドに形成されて作動流体を吸入する吸入口及び吐出する吐出口とを有し、前記吸入口から吸入した作動流体を前記吸入室へ導き、前記ピストンにより圧縮した後に前記吐出室を介して前記吐出口から吐出させるピストン型圧縮機であって、
    前記シャフトに、軸方向に沿って設けられた軸孔と、この軸孔に連通し、前記シャフトの径方向に設けられて前記クランク室に開口する側孔とを少なくとも形成し、
    前記吸入口から流入された作動流体を前記クランク室を経由せずに前記吸入室へ直接導く第1の吸入経路と、
    前記吸入口から流入された作動流体を前記クランク室を経由して前記吸入室へ導く第2の吸入経路とを有し、
    前記第2の吸入経路は、前記クランク室から前記シャフトに形成された前記側孔及び前記軸孔を介して前記吸入室に導かれるオイル分離通路と、前記クランク室から前記シャフト内を経由せずに前記シリンダブロックを通して前記吸入室へ導かれるバイパス通路とを具備する
    ことを特徴とするピストン型圧縮機。
  2. 前記バイパス通路は、前記斜板を回転支持するスラスト軸受とこのスラスト軸受を受ける前記シリンダブロックに設けられたスラスト軸受受面との間に設けられた溝を有して構成されることを特徴とする請求項1記載のピストン型圧縮機。
  3. 前記バイパス通路は、前記斜板を回転支持するスラスト軸受と前記シリンダブロックに設けられた前記スラスト軸受受け面との間に設けられた溝と、この溝に連通し、前記シャフトとこのシャフトを挿入するシャフト挿入孔との間の空間、及び前記シャフト挿入孔の内周面に開口するよう前記シリンダブロックに形成された通孔とにより構成されることを特徴とする請求項2記載のピストン型圧縮機。
  4. 前記シャフトは、前記ハウジングに対してプレーンベアリングを介して回転自在に支承され、
    前記バイパス通路は、前記プレーンベアリングを迂回するように前記シリンダブロックに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のピストン型圧縮機。
  5. 前記通孔は、前記シャフトの軸心に対して前記作動流体が前記クランク室に流入される部位とは反対側に少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項3記載のピストン型圧縮機。
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