JP2010220570A - 細胞積層方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単基材表面に形成した単層細胞層の上方に、第1物質である細胞接着ペプチドを構造中に有する水溶性ポリマーの層及び第2物質である水溶性ポリマーの層を構築させて、更に単層細胞層を形成することを特徴とする細胞積層方法であり、好ましくは第1物質の層及び第2物質の層が交互に複数構築され、単層細胞層が結合組織細胞又は表皮細胞であり、該細胞積層方法を繰り返して複数回行って、結合組織細胞及び/又は機能細胞を複数層積層する細胞積層方法。
【選択図】 図1
Description
こうした機能細胞の機能を保持するために種々の培養方法が開発された。代表的な培養方法として、細胞外マトリックを利用して三次元培養する方法がある。例えば、コラーゲンゲルの上や中で細胞を培養し細胞機能を維持させる方法があり、簡便に実施するためのキットなども市販されている。この技術は、生体内で細胞近傍に存在する細胞外マトリックスを処方し細胞の周辺環境を生体模倣する方法である。肝実質細胞や乳腺上皮細胞などで細胞機能の亢進が報告されている。
しかしながら、この方法はマトリックス成分のみに注目しており、実際は、同種細胞や異種細胞及び細胞外マトリックスが複雑に絡み合った構造をしており生体組織が構築できているわけではなく、一部を取り出して模倣しているだけである。それだけでも十分に価値はあるが、更に複雑な生体モデル系が必要とされている。
しかし、上記方法で作製された細胞層は、それ自体の機械的強度が極めて弱いため、培養されたシート状態を保ったまま剥離することがなかなか困難である。また、後者の方法では、機械的強度のあるフィブリンゲル層を使用することによって、細胞層が形成されたフィブリンゲル層の剥離を容易にしているが、層厚を厚くすることによってフィブリンゲル層の機械的強度を向上させた結果、重ね合わせた細胞層と細胞層との間に、厚いフィブリン層が存在し層間のシグナル伝達にタイムラグやばらつきが生じるおそれがある。
(1)基材表面に形成した単層細胞層の上方に、第1物質である細胞接着ペプチドを構造中に有する水溶性ポリマーの層及び第2物質である水溶性ポリマーの層を構築させて、更に単層細胞層を形成することを特徴とする細胞積層方法。
(2)第1物質の層及び第2物質の層が交互に複数構築されている(1)記載の細胞積層方法。
(3)前記単層細胞層が、結合組織細胞又は機能細胞である(1)又は(2)記載の細胞積層方法。
(4)前記結合組織細胞が、線維芽細胞、平滑筋細胞、及び間充織細胞から選ばれる少なくとも一つの細胞である(1)〜(3)いずれか記載の細胞積層方法。
(5)前記機能細胞が上皮系細胞、血管内皮細胞、及び表皮系細胞から選ばれる少なくとも一つの細胞である(1)〜(4)いずれか記載の細胞積層方法。
(6)(3)〜(5)いずれか記載の細胞積層方法を繰り返して複数回行って、結合組織細胞及び/又は機能細胞を複数層積層する細胞積層方法。
(7)前記基材が、無蛍光又は低蛍光な材質からなるプラスチックもしくはガラスである(1)〜(6)いずれか記載の細胞積層方法。
(1)基材表面上に単層細胞層を形成する工程、
(2)前記基材上の単層細胞層を、第1物質である細胞接着ペプチドを構造中に有する水溶性ポリマーを含有する溶液、及び第2物質である水溶性ポリマーの含有液に交互に接触させ、前記単層細胞層上に、第1物質と第2物質とが交互に積層された細胞接着層を形成する工程、
(3)細胞を培養して、細胞層を形成する工程
を含むことが好ましい。
プラスチックとしては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれの樹脂も使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ素樹脂またはポリカーボネート等が、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂またはシリコン樹脂等が例示されるが、特に透明性の高さからポリスチレン樹脂が好ましい。特に無蛍光又は低蛍光な材質であることが好ましく、自己蛍光の低さからフッ素樹脂も好適に用いることができる。
また、本発明の方法は、工程が単純であり、所望の領域に細胞層と接着層の形成ができることから、例えば、どのような形状の表面において細胞を積層でき、複雑な形状の三次元組織も製造可能である。例えば、血管のように中空形状の三次元組織の場合には、リング状の基材表面に、細胞層の形成と接着層の形成とを交互に繰り返すことで、中心軸方向に細胞層を連続的に積層できるため、従来のように細胞層の貼り合せ等を行うことなく、円筒状(中空形状)の三次元組織を得ることも可能である。つまり、細胞層の形成と接着層を形成する平面領域を設定することで、どのような断面形状(X-Y平面)の組織でも形成可能である。また、例えば、人工血管の内表面へ、第1物質含有液と第2物質含有液とを交互に流すことで、前記内表面へ細胞外マトリックスを形成し、さらに、細胞溶液を流しながら人工血管を回転させることで、細胞を接着させることができる。この工程を繰り返すことで、人工血管等の管状構造の内表面に細胞層を幾重にも形成できる。
《実施例1》
(1) ポリマー塗布
すべての操作は無菌操作を前提とする。遠沈管に10μg/mLでMAST−Fib(1)を水−エタノール溶媒(体積比1:1)に溶かした溶液を用意する。30mmφ細胞培養用シートであるセルデスク(住友ベークライト製MS−92302)を市販の滅菌済み35mmφシャーレに入れ、この溶液を0.5mL分注しセルデスクを浸漬させて、4時間静置した。その後、純水3mLを加えた35mmφシャーレにセルデスクを入れて洗浄した後、室温で乾燥させた。
フラスコで培養したNIH/3T3細胞(ラット由来線維芽細胞)を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、上記(1)のコートしたセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行った。
塗布のための溶液Aとして、35mmφシャーレに2mLの10μg/mLのMAST−Fib(1)の0.1mMトリス緩衝液(pH7.4)を準備。同じく溶液Bとして35mmφシャーレに2mLの10μg/mLのMASTの0.1mMトリス緩衝液(pH7.4)を入れたものを準備した。また、洗浄用に35φシャーレに0.01mMトリス緩衝液(pH7.4)を3mL入れたものを準備した。
(2)で細胞を培養したセルデスクを、洗浄用トリス緩衝液で洗浄した後、まずMAST−Fib(1)溶液に1分間浸漬させ細胞表面にMAST−Fib(1)の層を構築した。1分後、洗浄液にセルデスクを入れ1分間浸漬洗浄させた。次にMAST溶液に1分間浸漬しMAST層を構築させた。次に洗浄液に1分間浸漬させた。この操作を繰り返し、MAST−Fib(1)とMASTの交互に9層積層させた。(図1)
フラスコで培養したNIH/3T3細胞(ラット由来線維芽細胞、DSファーマバイオメディカル)を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、上記のセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行った。
(3)、(4)の作業を繰り返し、3日かけて、NIH/3T3細胞を3層積層したセルデスクを準備した。
NIH/3T3細胞を3層積層させたセルデスク上のNIH/3T3上に(3)に従って、MAST−FiB(1)とMASTの交互に9層積層させた。
フラスコでセミコンフレントまで培養したヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC、クラボウ、KE−4109)の培地を除去、血清無添加のD−MEMに細胞染色用蛍光色素CellTracker Orenge(LONZA製、PA―12)をジメチルスルホキシドで0.5μmoL/Lに調製したものを1000倍希釈した物を加え、37℃炭酸ガス培養器で45分培養し細胞染色する。
上記細胞を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、上記のセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行い、蛍光染色を行った。
(1)ポリマー塗布
すべての操作は無菌操作を前提とする。遠沈管に10μg/mLでMAst−Fib(1)を水−エタノール溶媒(体積比1:1)に溶かしたものを用意する。30mmφ細胞培養用シートであるセルデスク(住友ベークライト製MS−92302)を市販の滅菌済み35mmφシャーレにいれ、この溶液を0.5mL分注しセルデスクを浸漬させて、4時間静置した。その後、純水3mLを加えた35mmφシャーレにセルデスクを入れて洗浄した後、室温で乾燥させた。
フラスコで培養したNIH/3T3細胞(ラット由来線維芽細胞)を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、上記(1)のコートしたセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行った。
フラスコで培養したNIH/3T3細胞(ラット由来線維芽細胞、DSファーマバイオメディカル)を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、中間のポリマー層を形成させずに、直接(2)のセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行った。
(2)の操作を繰り返してNIH/3T3細胞を3層積層させる操作を繰り返した。
フラスコでセミコンフレントまで培養したヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC、クラボウ、KE−4109)の培地を除去、血清無添加のD−MEMに細胞染色用蛍光色素CellTracker Orenge(LONZA製、PA―12)をジメチルスルホキシドで0.5μmoL/Lに調製したものを1000倍希釈した物を加え、37℃炭酸ガス培養器で45分培養し細胞染色した。
上記細胞を0.25%トリプシン溶液で剥がし、回収した細胞を10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変イーグル培養液(D−MEM、Invitrogen製、11885−084)に分散し、遠心分離により細胞を洗浄、10%FBS含有D―MEMで再分散した。細胞分散液を2×105cells/mLに調製し、上記(3)のセルデスク上に1mL加え、37℃のCO2インキュベーターで24時間培養を行い、蛍光染色を行った。
実施例1では蛍光染色された細胞が観察されているのに対し、比較例1では蛍光を示す細胞が全く観察されていない。この結果より、本発明の方法によって細胞の積層が可能であることが証明された。
Claims (7)
- 基材表面に形成した単層細胞層の上方に、第1物質である細胞接着ペプチドを構造中に有する水溶性ポリマーの層及び第2物質である水溶性ポリマーの層を構築させて、更に単層細胞層を形成することを特徴とする細胞積層方法。
- 第1物質の層及び第2物質の層が交互に複数構築されている請求項1記載の細胞積層方法。
- 前記単層細胞層が、結合組織細胞又は機能細胞である請求項1又は2記載の細胞積層方法。
- 前記結合組織細胞が、線維芽細胞、平滑筋細胞、及び間充織細胞から選ばれる少なくとも一つの細胞である請求項1〜3いずれか記載の細胞積層方法。
- 前記機能細胞が上皮系細胞、血管内皮細胞、及び表皮系細胞から選ばれる少なくとも一つの細胞である請求項1〜4いずれか記載の細胞積層方法。
- 請求項3〜5いずれか記載の細胞積層方法を繰り返して複数回行って、結合組織細胞及び/又は機能細胞を複数層積層する細胞積層方法。
- 前記基材が、無蛍光又は低蛍光な材質からなるプラスチックもしくはガラスである請求項1〜6いずれか記載の細胞積層方法。
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