JP2010218901A - ガスクラスターイオンビーム照射装置 - Google Patents
ガスクラスターイオンビーム照射装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2010218901A JP2010218901A JP2009064647A JP2009064647A JP2010218901A JP 2010218901 A JP2010218901 A JP 2010218901A JP 2009064647 A JP2009064647 A JP 2009064647A JP 2009064647 A JP2009064647 A JP 2009064647A JP 2010218901 A JP2010218901 A JP 2010218901A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- plasma
- cluster
- gas
- ion beam
- beam irradiation
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Electron Sources, Ion Sources (AREA)
Abstract
【課題】装置の複雑化及び真空チャンバー内の真空度の低下を防ぎ、クラスターの崩壊を抑える。
【解決手段】ガスを噴出して断熱膨張させクラスターを生成するノズル5を、スキマー4で仕切られたクラスター生成室2に配置し、生成したクラスターをイオン化装置20にてイオン化させる。イオン化装置20は、ノズル5から噴出してクラスター生成室2に滞留するガスを用いて、プラズマ10を発生させるプラズマ発生部21を有する。そして、ノズル5により生成されたクラスターとプラズマ発生部21により発生させたプラズマ10とを衝突させてクラスターをイオン化させる。
【選択図】図1
【解決手段】ガスを噴出して断熱膨張させクラスターを生成するノズル5を、スキマー4で仕切られたクラスター生成室2に配置し、生成したクラスターをイオン化装置20にてイオン化させる。イオン化装置20は、ノズル5から噴出してクラスター生成室2に滞留するガスを用いて、プラズマ10を発生させるプラズマ発生部21を有する。そして、ノズル5により生成されたクラスターとプラズマ発生部21により発生させたプラズマ10とを衝突させてクラスターをイオン化させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガスからクラスターを生成してクラスターをイオン化させるガスクラスターイオンビーム照射装置に関する。
従来、常温常圧で気体状の物質をノズルから噴出させ、高速で断熱膨張させることにより原子又は分子が数個から1万個程度集まったクラスターを生成するガスクラスターイオンビーム照射装置が知られている。このガスクラスターイオンビーム照射装置では、噴出されたクラスターを含むガス流のうち一部がスキマーを通過し、スキマーを通過したクラスターがイオン化装置によってクラスターイオンとなる。
ここで、イオン化装置としては、電子線を照射するものが知られており、特に赤熱したフィラメントから放出される熱電子を照射する方法が広く使われている(特許文献1参照)。この方法では、まずフィラメントとそれに対向する電極を用意し、フィラメントには大電流を流して温度を上昇させ熱電子を放出しやすくする。ここで電極の電位をフィラメントに対して高くするとフィラメントから電極に向かって電子が放出される。この電子をクラスターに照射すると電子衝撃により電子が弾き出され、クラスターは正イオンとなる。こうしてできたクラスターイオンは電場により加速され、ターゲットに照射される。
また、フィラメントを用いずに電子を照射するものとして、プラズマを発生させ、プラズマから電子を引き出す装置が知られている(特許文献2参照)。これは誘電体製のプラズマ生成室に放電アンテナで放電させてプラズマを生成し、引き出し電極に電圧を印加して生じさせた電場の勾配によって電子を引き出すものである。このプラズマから引き出した電子をクラスターに照射すれば熱電子を用いる方法と同様に電子衝撃によってクラスターをイオン化することが可能である。
しかしながら、フィラメントから放出される熱電子によりガスクラスターをイオン化する方法では、熱電子を供給するフィラメントが経時変化により劣化する。また酸素やハロゲンなどの反応性があるガスを用いる場合には、高温のフィラメントとガスが反応し、より早くフィラメントが劣化する。このフィラメントの劣化により熱電子の放出量が変動するため、フィラメントを定期的に交換する必要があった。また、熱電子の放出量が変化することにより、クラスターをイオン化する効率も変動するため、イオンビーム電流値の精密な制御は困難であった。
これに対し、放電アンテナで放電させてプラズマを生成し、このプラズマから引き出した電子によりガスクラスターをイオン化する方法では、フィラメントを用いていないため、上述したような問題は発生しない。しかしながら、この方法では、クラスターの材料となるガス以外にプラズマを生成するための別のガスを導入する必要がある。そのため、装置が複雑化するという問題があった。また、プラズマを生成するためにクラスターの材料となるガス以外の別のガスを真空チャンバー内に導入することにより、クラスターの材料となるガスのみを導入する場合に比べて、真空チャンバー内の真空度が低下する。このように真空度が低下すると、クラスターとガス分子との衝突頻度が増え、クラスターの崩壊が増加するという問題があった。
そこで、本発明は、装置の複雑化及び真空チャンバー内の真空度の低下を防ぎ、クラスターの崩壊を抑えたガスクラスターイオンビーム照射装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、ガスを噴出して断熱膨張させクラスターを生成するノズルと、前記ノズルが設けられ、スキマーで仕切られた部屋を有する真空チャンバーと、生成したクラスターをイオン化させるイオン化装置と、を備えたガスクラスターイオンビーム照射装置であって、前記イオン化装置は、前記ノズルから噴出して前記部屋に滞留するガスを用いて、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を有し、前記ノズルにより生成されたクラスターと前記プラズマ発生手段により発生させたプラズマとを衝突させて前記クラスターをイオン化させることを特徴とするものである。
本発明によれば、ノズルから噴出したガスのうち、スキマーを通過せずにスキマーで仕切られた部屋に滞留するガスを用いてプラズマを発生させるため、クラスター材料以外のガスを真空チャンバー内に導入する必要がなくなり装置の複雑化を抑えることができる。さらに真空チャンバー内の真空度の低下を防ぐことができるため、ガス分子とクラスターとの衝突頻度が減り、クラスターの崩壊を減少させることができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るガスクラスターイオンビーム照射装置100の概略構成を示す説明図である。ガスクラスターイオンビーム照射装置100は、真空チャンバー1を備えており、真空チャンバー1の内部は、部屋としてのクラスター生成室2と、照射室3とに分かれている。具体的には、クラスター生成室2と照射室3とは、スキマー4の壁により仕切られており、スキマー4のアパーチャーによって、クラスター生成室2と照射室3とが連通している。各部屋2,3はそれぞれ不図示の真空ポンプにより常に排気されている。
図1は、本発明の第1実施形態に係るガスクラスターイオンビーム照射装置100の概略構成を示す説明図である。ガスクラスターイオンビーム照射装置100は、真空チャンバー1を備えており、真空チャンバー1の内部は、部屋としてのクラスター生成室2と、照射室3とに分かれている。具体的には、クラスター生成室2と照射室3とは、スキマー4の壁により仕切られており、スキマー4のアパーチャーによって、クラスター生成室2と照射室3とが連通している。各部屋2,3はそれぞれ不図示の真空ポンプにより常に排気されている。
クラスター生成室2を構成する真空チャンバー1の壁には、クラスター材料となるガスを噴出する噴出口5aを有するノズル5が設けられている。ノズル5の噴出口5aからは、常温常圧のガスが噴出され、そのガスが断熱膨張してクラスターが生成される。クラスターは、塊状原子集団又は塊状分子集団であり、複数の原子又は複数の分子がファンデルワールス力で結合されて構成されている。
また、ガスクラスターイオンビーム照射装置100は、生成したクラスターをイオン化させるイオン化装置20を備えている。ノズル5の噴出口5aには、クラスター進行方向にスキマー4のアパーチャーが対向しており、イオン化装置20でイオン化されたクラスター(クラスターイオン)は、スキマー4のアパーチャーを介して照射室3に導かれる。
照射室3の内部には、任意の電圧を印加できる電極群14と、質量分離磁石15と、ターゲット16とが配置されている。照射室3に導かれた多数のクラスターイオンは、電極群14を通過し、質量分離磁石15でモノマー及び小サイズのクラスター等の高速に通過するイオンの軌道が曲げられる。これにより、適正なサイズのクラスターイオンがターゲット16に照射される。
ここで、クラスター生成室2内には、ノズル5から噴出されたガスのうち、スキマー4を通過せずに滞留するガスが存在する。そこで、本第1実施形態では、イオン化装置20は、ノズル5から噴出してクラスター生成室2に滞留するガスを用いて、プラズマを発生させるプラズマ発生手段としてのプラズマ発生部21を有している。
このプラズマ発生部21は、不図示のマイクロ波発振器と、マイクロ波発振器により出力されたマイクロ波をクラスター生成室2に導く導波管8とを有し、導波管8のマイクロ波出力端8aがクラスター生成室2に誘電体からなる窓9を介して接続されている。本第1実施形態では、導波管8は、ノズル5が設けられる真空チャンバー1の壁と直交する壁に設けられている。
また、プラズマ発生部21は、クラスター生成室2の内部に配置され、マイクロ波によって規定される電子サイクロトロン共鳴条件(ECR条件)を満たす磁場を発生させる磁場発生手段としての磁場発生部6を備えている。この磁場発生部6は、クラスターの移動経路から離間した位置に配置されている。磁場発生部6は、一対の永久磁石6a,6bからなる。
具体的に説明すると、マイクロ波の周波数fとECR条件を満たす磁場の強さBとは、2πf=eB/mの関係にある。このときeは素電荷、mは電子の質量である。例えば工業用に一般的に用いられる2.45[GHz]のマイクロ波の場合、ECR条件を満たす磁場の強さは875[G(ガウス)]となる。なお、磁場発生手段として、永久磁石6a,6bの代わりに電磁石を用いても構わない。一対の永久磁石6a,6bは、環状に形成されている。そして、一対の永久磁石6a,6bは、マイクロ波の進行方向に沿って互いに所定間隔を空けて配置されている。また、一対の永久磁石6a,6bは、導波管8のマイクロ波出力端8a近傍に配置されている。これにより、導波管8を伝搬してきたマイクロ波が、一対の永久磁石6a,6bのうち、導波管8に近い方の一方の永久磁石6aの環状内側を通じて一対の永久磁石6a,6bの間の空間に放射される。ここで、図1に示すような磁力線7の分布をなすように、一対の永久磁石6a,6bが配置されている。そして、一対の永久磁石6a,6bにより、いわゆるミラー磁場を形成している。
以上、プラズマ発生部21の構成により、一対の永久磁石6a,6bの間には導波管8に導かれたマイクロ波が放射される。そして、一対の永久磁石6a,6bの間にはECR条件を満たす磁場が発生しており、マイクロ波の放射により一対の永久磁石6a,6bの間に存在するガスが電離し、プラズマ10が発生する。このようにして発生したプラズマ10は、一対の永久磁石6a,6bで形成されるミラー磁場により保持され、プラズマ10の拡散を抑制している。一対の永久磁石6a,6bのうち、導波管8から遠い方の他方の永久磁石6bの近傍、即ち、プラズマ10の近傍には、引き出し電極11a,11bが配置されている。この引き出し電極11a,11bにより、永久磁石6bの環状内側からプラズマ中の荷電粒子である正イオン又は電子が引き出される。
また、ノズル5の近傍であって、引き出し電極11bの近傍にはイオン化室12が配置されている。イオン化室12には、クラスターを導入するクラスター導入口12aと、クラスター導入口12aに対向し、イオン化したクラスターを導出するクラスターイオン導出口12bと、が形成されている。また、イオン化室12には、クラスターの進行方向と直交し、引き出し電極11bから引き出されたプラズマ10(正イオン又は電子)を導入するプラズマ導入口12cが形成されている。引き出し電極11aと引き出し電極11bとの間、及び引き出し電極11bとイオン化室12との間には電源装置13が接続されており、任意の電圧を印加して電場の勾配を発生させることができる。これにより、イオン化室12には、ノズル5により生成されたクラスターが導かれ、このクラスターの進行方向と直交する方向から、プラズマ10中の荷電粒子(正イオン又は電子)が引き出し電極11a,11bによって導かれる。つまり、引き出し電極11aを基準に引き出し電極11bに正電位を印加すればプラズマ中の電子が引き出され、引き出し電極11aを基準に引き出し電極11bに負電位を印加すればプラズマ中の正イオンが引き出される。
そして、引き出し電極11a,11bにより電子を引き出した場合には、イオン化室12内を進行するクラスターに電子が衝突し、電子衝撃により正イオンのクラスターが生成される。また、引き出し電極11a,11bにより正イオンを引き出した場合には、イオン化室12内を進行するクラスターに正イオンが衝突し、電荷交換により正イオンのクラスターが生成される。以上、一対の永久磁石6a,6b、導波管8、窓9、引き出し電極11a,11b、及びイオン化室12によりイオン化装置20が構成されている。
次に本第1実施形態によるガスクラスターイオンビーム照射装置100のガスクラスターイオンビーム発生方法について説明する。図2において、まず、ノズル5からクラスター生成室2にクラスターの材料となるガス(原料ガス)、例えばArガスを噴出する(S101)。このとき、ノズル5から噴出させるガスの圧力は、常圧、例えば0.1[MPa]〜10[MPa]とすることが望ましい。
次いで、ノズル5を噴出したガスは、急速に断熱膨張し、Arクラスターが生成される(S102)。これと並行して、クラスター生成室2の内部の一対の永久磁石6a,6bにより形成されたミラー磁場にマイクロ波を導くことで、一対の永久磁石6a,6bの間に滞留するガスからプラズマが発生する(S103)。このとき、磁場がECR条件を満たしているところでは、ECRにより効率よくプラズマが発生する。そして、発生したプラズマは、ミラー磁場により閉じ込められている。ここで、クラスター生成室2は、不図示の真空ポンプにより排気されており、クラスター生成室2内の圧力を0.1[Pa]〜10[Pa]程度に下げることで、プラズマを発生させることができる。
次に、プラズマ10から正イオン又は電子を引き出す(S104)。すなわち、電源装置13により引き出し電極11bを負電位又は正電位に印加することにより電場の勾配が生じ、プラズマから正イオン又は電子が引き出される。次に、工程S104にて正イオンを引き出した場合、イオン化室12において正イオンを工程S102により生成したクラスターを含むガス流に照射すると、正イオンとクラスターの間で電荷交換が起こり、クラスターイオンが生成される(S105)。また、工程S104にて電子を引き出した場合、イオン化室12において電子を工程S102により生成したクラスターを含むガス流に照射すると、電子衝撃によりクラスターイオンが生成される(S105)。このクラスターイオンは正イオンである。このとき、イオン化室12と引き出し電極11bとの間に生じさせた電位差により、任意の加速エネルギーを持った正イオン又は電子をクラスターに照射することができる。
次に、クラスターイオンを含むガス流は、一部がスキマー4を通過して照射室3に導入される(S106)。次に、クラスターイオンは任意に配置された電極群14によって加速・減速・集束し、任意の加速エネルギー及びプロファイルのビームを形成する。さらに質量分離磁石15によって質量分離が行われる(S107)。最後に、クラスターイオンがターゲット16に照射される(S108)。なお、所望する加速エネルギー及びサイズのクラスターをターゲット16に照射できれば他の方法でも構わない。
以上、本第1実施形態では、ノズル5から噴出したガスのうち、スキマー4を通過せずにスキマー4で仕切られたクラスター生成室2に滞留するガスを用いてプラズマ10を発生させている。したがって、クラスター材料以外のガスを真空チャンバー1内に導入する必要がなくなり、装置を簡略化することができ、装置の複雑化を抑えることができる。
さらに、クラスター材料以外のガスを真空チャンバー1内に導入する必要がなくなるので、真空チャンバー1内の真空度の低下を防ぐことができる。したがって、ガス分子とクラスターとの衝突頻度が減り、クラスターの崩壊を減少させることができる。
また、クラスター生成室2内に配置した一対の永久磁石6a,6bの間に存在するガスにマイクロ波を照射することにより、ECRが生じてプラズマ10が効率よく生成される。また、別途、プラズマを生成する部屋を設ける必要がないので、装置がコンパクトとなる。
また、一対の永久磁石6a,6bにより生成されたミラー磁場にプラズマ10が保持されるので、プラズマ10の拡散を抑制できる。そして、このように保持されたプラズマ10の近傍に引き出し電極11a,11bが配置されており、効率よくプラズマ10から荷電粒子である電子又は正イオンを引き出すことができる。また、イオン化装置20は、フィラメントのような定期的に交換が必要な部品を備えていないので、保守点検が容易となる。
ところで、プラズマ中の正イオンを原子(又は分子)に衝突させた際の電荷交換によるイオン化断面積は、プラズマ中の電子を原子(又は分子)に衝突させた際の電子衝撃によるイオン化断面積よりも高い。以下具体例を挙げて説明する。図3に示すAr原子について電子衝撃と電荷交換それぞれのイオン化断面積のエネルギー依存性についての実験結果を示すグラフは、2つの文献に記載されている数値に基づいて作成したものである。2つの文献のうち、一方の文献は、「“J.Chem Phys.” 43.1464(1965) D.Rapp and P.Englander−Golden」である。他方の文献は、「“Atomic data and nucl. data tables” 49,257−314 S.Sakabe and Y.Izawa」である。
この図3を参照すると、Ar原子の電子衝撃のイオン化断面積は、100[eV]程度で最大となり、数十[eV]以下では急激に小さくなる。また100[eV]より高いエネルギーでは緩やかに減少していく。これに対してAr原子の電荷交換によるイオン化断面積は、電子衝撃の場合の最大値より常に1桁程度大きい。しかも、エネルギーが変化してもイオン化断面積の変動が小さい。
このように、一原子(又は一分子)に対しては、電荷交換によるイオン化の方が電子衝撃によるイオン化よりも効率よくイオン化することができる。したがって、原子(又は分子)がファンデルワールス力等によりクラスター化したものについても、電子衝撃によるイオン化に比べて、電荷交換の方が低エネルギーでも効率よくイオン化することができる場合がある。この場合、正イオンの加速エネルギーを低くすることができるので、クラスターの崩壊をより効果的に抑制することができる。
しかし、正イオン又は電子の加速エネルギーが小さいほど、クラスターの崩壊を防ぐことができるが、正イオン又は電子の加速エネルギーが小さいほど、空間電荷効果によりプラズマ10から引き出した正イオンビーム又は電子ビームが発散してしまう。そのため、イオン化室12に到達する電流値に制限が生じるため注意が必要である。特に、正イオンの照射による電荷交換を用いたイオン化は、電子衝撃に比べてイオン化の効率が高いが、正イオンは電子に比べて質量が大きいため、空間電荷による発散が起こりやすい。
これにより、クラスターの崩壊を抑制するために正イオンの加速エネルギーを低くしてしまうと、クラスターに照射できる正イオンの数が少なくなるため、発散の程度によっては電子を照射する場合よりイオン化の効率が低くなる場合もある。したがって、ガスの種類に応じて、電荷交換と電子衝撃によるイオン化を選択する必要がある。例えば、ガス種がArの場合は、電荷交換によるイオン化を選択するとよい。
なお、電子衝撃によるイオン化の場合、電子によって与えられるエネルギーが少なくともクラスターを構成する原子の第一イオン化エネルギーを超える必要があるため、電子の加速エネルギーは少なくともこの第一イオン化エネルギー以上とする必要がある。ここで例えばArの第一イオン化エネルギーは約15.8[eV]であり、Arクラスターに電子を照射する場合、前述のようにイオン化断面積は電子のエネルギーが100[eV]程度で最大となりそれ以上では減少する。つまり100[eV]以上の電子を照射してもクラスターの崩壊を増加させるだけでイオン化効率を上げる効果はない。よって引き出した電子の加速電圧は100[V]以下とすることが好ましい。
また、工程S105において、電子の加速エネルギーをイオン化エネルギーより小さくすることで電子付着により負イオンクラスターを生成することが可能である。ただし、ガスの種類は、ハロゲンやハロゲン化物などの電子付着性の高いものに限られる。この方法では、照射する電子のエネルギーが低いため、先に示した電子衝撃によるイオン化に比べてクラスターの崩壊を低減することができる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態のガスクラスターイオンビーム照射装置について説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係るガスクラスターイオンビーム照射装置100Aの概略構成を示す説明図である。ガスクラスターイオンビーム照射装置100Aは、生成したクラスターをイオン化させるイオン化装置20’を備えている。照射室3の内部には任意の電圧を印加できる電極群14と、ターゲット16とが配置されている。
次に第2実施形態のガスクラスターイオンビーム照射装置について説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係るガスクラスターイオンビーム照射装置100Aの概略構成を示す説明図である。ガスクラスターイオンビーム照射装置100Aは、生成したクラスターをイオン化させるイオン化装置20’を備えている。照射室3の内部には任意の電圧を印加できる電極群14と、ターゲット16とが配置されている。
ここで、クラスター生成室2内には、ノズル5から噴出されたガスのうち、スキマー4を通過せずに滞留するガスが存在する。そこで、本第2実施形態では、イオン化装置20’は、ノズル5から噴出してクラスター生成室2に滞留するガスを用いて、プラズマを発生させるプラズマ発生手段としてのプラズマ発生部21’を有している。
このプラズマ発生部21’は、不図示のマイクロ波発振器と、マイクロ波発振器により出力されたマイクロ波をクラスター生成室2に導く導波管8とを有し、導波管8のマイクロ波出力端8aがクラスター生成室2に誘電体からなる窓9を介して接続されている。また、プラズマ発生部21’は、クラスター生成室2の内部に配置され、マイクロ波によって規定されるECR条件を満たす磁場を発生させる磁場発生手段としての磁場発生部6’を備えている。磁場発生部6’は、一対の永久磁石6a’,6b’からなる。なお、磁場発生手段として、永久磁石6a’,6b’の代わりに電磁石を用いても構わない。
一対の永久磁石6a’,6b’は、環状に形成されている。そして、一対の永久磁石6a’,6b’は、マイクロ波の進行方向に沿って互いに所定間隔を空けて配置されている。また、一対の永久磁石6a’,6b’は、導波管8のマイクロ波出力端8a近傍に配置されている。これにより、導波管8を伝搬してきたマイクロ波が、一対の永久磁石6a’,6b’のうち、導波管8に近い方の一方の永久磁石6a’の環状内側を通じて一対の永久磁石6a’,6b’の間の空間に放射される。また、一対の永久磁石6a’,6b’により、いわゆるミラー磁場を形成している。
以上、プラズマ発生部21’の構成により、一対の永久磁石6a’,6b’の間には導波管8に導かれたマイクロ波が放射される。そして、一対の永久磁石6a’,6b’の間にはECR条件を満たす磁場が発生しており、マイクロ波の放射により一対の永久磁石6a’,6b’の間に存在するガスが電離し、プラズマ10’が発生する。このようにして発生したプラズマ10’は、一対の永久磁石6a’,6b’で形成されるミラー磁場により保持され、プラズマ10’の拡散を抑制している。
本第2実施形態では、プラズマ発生部21’は、プラズマ10’をクラスターの移動経路上に発生させている。具体的に説明すると、一対の永久磁石6a’,6b’が、ノズル5の噴出口5aからスキマー4に至るクラスターの移動経路を挟んで互いに対向して配置されている。一対の永久磁石6a’,6b’の間には発生したプラズマ10’がミラー磁場により保持されている。すなわち、クラスターの移動経路にプラズマ10’が発生し、発生したプラズマ10’がミラー磁場で保持されている。
ノズル5の噴出口5aからスキマー4のアパーチャーに向かって移動するクラスターは、プラズマ10’中を通過し、荷電粒子である正イオン及び電子と衝突することとなる。そして、プラズマ10’中の正イオン及び電子の運動エネルギー(速度)が大きく、クラスターが正イオンとの電荷交換、及び電子衝撃によりイオン化される。なお、一対の永久磁石6a’,6b’の近傍には、引き出し・集束電極群17が配置され、引き出し・集束電極群17の下流に質量分離用永久磁石18を配置されている。これにより、一対の永久磁石6a’,6b’を通過したクラスターのうち、モノマー及び小サイズのクラスターが除去される。
以上、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、プラズマ中の電子又は正イオンを引き出す引き出し電極が必要なくなるため、装置構成を簡略化できるという効果を奏する。
1 真空チャンバー
2 クラスター生成室(部屋)
4 スキマー
5 ノズル
8 導波管
20,20’ イオン化装置
21,21’ プラズマ発生部(プラズマ発生手段)
100,100A ガスクラスターイオンビーム照射装置
2 クラスター生成室(部屋)
4 スキマー
5 ノズル
8 導波管
20,20’ イオン化装置
21,21’ プラズマ発生部(プラズマ発生手段)
100,100A ガスクラスターイオンビーム照射装置
Claims (6)
- ガスを噴出して断熱膨張させクラスターを生成するノズルと、前記ノズルが設けられ、スキマーで仕切られた部屋を有する真空チャンバーと、生成したクラスターをイオン化させるイオン化装置と、を備えたガスクラスターイオンビーム照射装置であって、
前記イオン化装置は、前記ノズルから噴出して前記部屋に滞留するガスを用いて、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を有し、
前記ノズルにより生成されたクラスターと前記プラズマ発生手段により発生させたプラズマの荷電粒子とを衝突させて前記クラスターをイオン化させることを特徴とするガスクラスターイオンビーム照射装置。 - 前記プラズマ発生手段は、前記部屋にマイクロ波を導く導波管と、前記部屋に配置され、前記マイクロ波によって規定される電子サイクロトロン共鳴条件を満たす磁場を発生させる磁場発生手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガスクラスターイオンビーム照射装置。
- 前記磁場発生手段によりミラー磁場を形成し、前記ミラー磁場により前記プラズマを保持することを特徴とする請求項2に記載のガスクラスターイオンビーム照射装置。
- 前記イオン化装置は、前記プラズマ中のイオンを引き出して前記クラスターに衝突させる引き出し電極を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスクラスターイオンビーム照射装置。
- 前記イオン化装置は、前記プラズマ中の電子を引き出して前記クラスターに衝突させる引き出し電極を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスクラスターイオンビーム照射装置。
- 前記プラズマ発生手段は、前記プラズマを前記クラスターの移動経路上に発生させ、
前記プラズマ中のイオン及び電子と移動する前記クラスターとを衝突させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスクラスターイオンビーム照射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009064647A JP2010218901A (ja) | 2009-03-17 | 2009-03-17 | ガスクラスターイオンビーム照射装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009064647A JP2010218901A (ja) | 2009-03-17 | 2009-03-17 | ガスクラスターイオンビーム照射装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010218901A true JP2010218901A (ja) | 2010-09-30 |
Family
ID=42977503
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009064647A Pending JP2010218901A (ja) | 2009-03-17 | 2009-03-17 | ガスクラスターイオンビーム照射装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010218901A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016027615A (ja) * | 2014-07-02 | 2016-02-18 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板洗浄方法および基板洗浄装置 |
-
2009
- 2009-03-17 JP JP2009064647A patent/JP2010218901A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016027615A (ja) * | 2014-07-02 | 2016-02-18 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板洗浄方法および基板洗浄装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1667198A2 (en) | Gas cluster ion beam emitting apparatus and method for ionization of gas cluster | |
JPH09223598A (ja) | 高速原子線源 | |
US9224580B2 (en) | Plasma generator | |
RU2480858C2 (ru) | Сильноточный источник многозарядных ионов на основе плазмы электронно-циклотронного резонансного разряда, удерживаемой в открытой магнитной ловушке | |
TWI757620B (zh) | 利用中性原子束之工件處理之系統及方法 | |
JP2008234874A (ja) | 集束イオンビーム装置 | |
JP4371215B2 (ja) | 荷電粒子ビーム輸送装置及びこれを備えた線形加速器システム | |
US20090166555A1 (en) | RF electron source for ionizing gas clusters | |
JP2010218901A (ja) | ガスクラスターイオンビーム照射装置 | |
JP3366402B2 (ja) | 電子ビーム励起負イオン源及び負イオン発生方法 | |
JP3064214B2 (ja) | 高速原子線源 | |
JP4571003B2 (ja) | クラスターイオンビーム装置 | |
JP2007164987A (ja) | ガスクラスターイオンビーム照射装置 | |
JP6632937B2 (ja) | ガスクラスタービーム装置 | |
CN116018654A (zh) | 带电粒子束的入射装置及其入射方法 | |
RU2353017C1 (ru) | Источник низкоэнергетичных ионных пучков для технологий наноэлектроники | |
TW202018779A (zh) | 產生鍺離子束以及氬離子束的方法 | |
CN113841216A (zh) | 离子源和中子发生器 | |
JP4587766B2 (ja) | クラスターイオンビーム装置 | |
JP2024086413A (ja) | イオン発生装置、およびイオン取り出し方法 | |
JP2007317491A (ja) | クラスターのイオン化方法及びイオン化装置 | |
JP3039985B2 (ja) | 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置 | |
RU2496283C1 (ru) | Генератор широкоаппертурного потока газоразрядной плазмы | |
JP2018004455A (ja) | 重イオンビーム生成装置及び方法 | |
Naik et al. | Design of a “two-ion source” Charge Breeder using ECR ion source in two frequency mode |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20120203 |