JP3039985B2 - 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置 - Google Patents

多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置

Info

Publication number
JP3039985B2
JP3039985B2 JP2322899A JP32289990A JP3039985B2 JP 3039985 B2 JP3039985 B2 JP 3039985B2 JP 2322899 A JP2322899 A JP 2322899A JP 32289990 A JP32289990 A JP 32289990A JP 3039985 B2 JP3039985 B2 JP 3039985B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ion
multimer
microwave
ion beam
plasma chamber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2322899A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04196032A (ja
Inventor
克己 登木口
純孝 後藤
健介 雨宮
好美 袴田
訓之 作道
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2322899A priority Critical patent/JP3039985B2/ja
Publication of JPH04196032A publication Critical patent/JPH04196032A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3039985B2 publication Critical patent/JP3039985B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electron Sources, Ion Sources (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の属する技術分野〕 本発明は、多量体イオン発生用マイクロ波イオン源及
びこれを用いた多量体イオンビーム照射装置に係り、特
に同種の原子が二個以上結合した多量体分子の大電流イ
オンビームを発生するに好適な多量体イオン発生用マイ
クロ波イオン源及びこのイオン源を用いた多量体イオン
ビーム照射装置に関する。
〔従来の技術〕
従来の磁場中のマイクロ波(周波数2.45GHz)放電で
高密度プラズマを生成し、このプラズマからイオンビー
ムを引出すマイクロ波イオン源におけるプラズマ室の構
造は、特公昭57−11093号公報,特公昭57−41059号公報
に記載のように、マイクロ波導入部からイオンビーム引
出し部に到るまでプラズマ室の外径寸法に変化がなく、
一様な高温・高密度プラズマを発生させていた。また、
原子の一価イオン、或いは多価イオンのビーム電流を高
めるようにイオン源の運転条件(マイクロ波電力,磁場
の強さ,ガス圧力など)が最適化されている。第2図に
は、これら従来例のプラズマ室構造の代表的なものを示
している。第2図(A)は円筒型、第2図(B)は同軸
型を示す。
一方、テーパ型のプラズマ室外周に永久磁石を配置
し、この永久磁石の作る磁場中でマイクロ波放電してプ
ラズマを作り、このプラズマからイオンビームを引出す
イオン源も利用されている。この構造の概略を第2図
(C),(D)に示す。第2図(C),(D)に示す構
造におけるプラズマ発生により、半径方向に均一な大口
径ビーム4を引出せる利点が生れる。しかし、軸方向磁
場が印加されていないため、マイクロ波電力が効率良く
プラズマに吸引されない。周知のように、マイクロ波の
進行方向とプラズマに印加する磁場の方向が同じ時、マ
イクロ波電力は効率良くプラズマ内に浸漬して吸収され
る。第2図(C),(D)では磁場の方向(周方向)と
マイクロ波の伝播方向が直交しているため吸収効率は悪
くなる。このため、プラズマの均一性は良好なもののプ
ラズマ密度や電子温度が低く、引出される最大イオンビ
ーム電流密度は、通常のイオン源より低い1mA/cm2程度
である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、第2図(A),(B),(C),(D)に示
すイオン源のプラズマ室から引出されるイオンビーム4
は、原子の一価あるいは多価イオンが主であり、原子が
複数個結合した多量体のイオン生成は僅かである。この
ため、これら微量の多量体イオンを除去し、原子状イオ
ンのみを選択するフィルタをイオン源に結合していた。
即ち、多量体イオンを工業的に利用するためのイオン源
の工夫は従来特に払われていなかった。
本発明の第1の目的は、同一原子が2ケ以上結合した
多量体イオンを効率良く発生することのできる多量体イ
オン発生用マイクロ波イオン源を提供するにある。又、
本発明の第2の目的は、このイオン源を用い高純度の粒
子堆積や材料改質を高速に行うことのできる多量体イオ
ンビーム照射装置を提供するにある。
〔課題を解決するための手段〕
多量体イオンの発生の一例として水素原子が三個結合
したイオンH3 +イオンの生成を考える。H3 +イオンはいわ
ゆるイオン−分子反応によって効率良く生成され、主と
して下記の反応式による。
H2 ++H2→H3 ++H 従って、H3 +イオンを効率良く生成するには、H2 +の生
成と共にこのイオンが壁等に衝突せずにプラズマ内に長
時間存在しH2分子と十分衝突させる機会を与える必要が
ある。しかし、従来の第2図(A),(B)に示したマ
イクロ波イオン源では、プラズマ電子温度が高いため、
イオン化に際してほとんどがH+になり、H2 +イオン量は
少なかった。H2 +/H+の生成比は高々1で、通常は0.1以
下である。また、プラズマ室周辺に永久磁石がないた
め、プラズマ閉じ込み効果が弱く、H2 +イオンはH2 +分子
に遭遇する前に壁等に衝突する割合が多かった。このた
めH3 +イオンの生成効率は通常H+イオンの一桁以下でそ
の絶対量も僅かであった。
一方、第2図(C),(D)に示す従来例では、閉じ
込め効果が高い(体積が大きく周辺に磁石が配置されて
いるため)が、H2 +の生成量そのものが少なくH3 +の生成
も僅かであった。
そこで本発明は、多量体イオンの発生メカニズムと従
来のマイクロ波イオン源の特性検討から、多量体イオン
を効率良く発生するために、プラズマ室の周囲に複数配
置され、かつ、マイクロ波の伝播方向に一致する磁場を
発生せしめ、磁場中のマイクロ波放電により前記プラズ
マ室内に高密度プラズマを生成する空心コイルと、前記
プラズマ室内のプラズマからイオンビームを引出すイオ
ン引出し電極を備え、前記プラズマ室をマイクロ波導入
側からイオン引出し電極に到る軸方向に沿って半径が増
大するテーパ構造とすると共に、該テーパ構造のプラズ
マ室の外周に複数の永久磁石を極性が交互になる様に配
置し、かつ、前記プラズマ室へガスを導入するガス導入
パイプを、前記プラズマ室のマイクロ波導入側近傍に取
付けた多量体イオン発生用マイクロ波イオン源としたこ
とを特徴とする。
また、上記記載の多量体イオン発生用マイクロ波イオ
ン源に、該多量体イオン発生用マイクロ波イオン源から
引出された多量体イオンビームを多量体の質量数と電荷
比に応じて選択・分離する質量分離器を結合し、かつ該
質量分離器に、該質量分離器で質量分離されたイオンビ
ームを基板に照射する照射室を結合すると共に、前記多
量体イオン発生用マイクロ波イオン源と質量分離器、及
び該質量分離器と照射室の結合部に差動排気系を設けた
多量体イオンビーム照射装置としたことを特徴とする。
〔作用〕
多量体イオンを効率良く発生するには、イオン分子反
応の担い手であるイオン(H3 +イオン生成の場合にはH2 +
イオンが相手)を、まず、大量に発生するプラズマを作
り、次いで閉じ込め効果の高いプラズマ中で充分に相当
の分子と衝突する様にすれば良い。この他、多量体イオ
ンを効率良く発生可能なプラズマ室に、中性の多量体粒
子を、直接、ガス状にして導入すれば、中性の多量体粒
子がイオン化され、効率良く多量体イオンを引出し可能
となる。
〔実施例〕
第1図は本発明の多量体イオン発生用マイクロ波イオ
ン源の一実施例を示す図である。該図において、プラズ
マ室8は外周部に複数の永久磁石9を配置したマイクロ
波導入側であるマイクロ波導入窓5から引出し電極3に
至る軸方向に沿って半径が増大するテーパ型であり、且
つ、これに軸方向の磁場を発生するコイル2を複数個設
けている。また、ガス導入口(例えばH2ガスを流入)
は、プラズマ室8のマイクロ波導入窓5の近傍に設けて
いる。
コイル2により軸方向磁場が印加されているため、マ
イクロ波は従来例の第2図(C)に比べて効率良くプラ
ズマに吸収され、マイクロ波導入窓5の近くではH2 +
オンが大量に生産される。プラズマ中のイオンは、プラ
ズマ閉じ込み効果の高いテーパ部分に拡散する。また、
引出し電極3のスリットに到るまでの間に、同時に拡散
して流れている中性のH2ガス分子と衝突反応を起こす。
従って、イオン分子反応が効率良く行われる多量体イオ
ンが十分に発生する。
第3図は本発明の多量体イオン発生用マイクロ波イオ
ン源の他の実施例を示す図である。
第3図では、効率良く多量体イオンを発生するプラズ
マ室8に電気的に中性のクラスタ粒子を導入可能なよう
にクラスタ粒子発生装置を設けたものである。クラスタ
粒子は同一原子が数個ないし一千個結合した粒子であ
る。クラスタ粒子発生装置は、具体的には固体の試料を
加熱するるつぼ10とノズル11で構成されている。固体蒸
気が狭い空間から、ノズル11を通してプラズマ室8の広
い空間に急激に放出されると、断熱膨張により原子が集
まりクラスタ粒子が形成される。クラスタ粒子を構成す
る原子の数は、ノズル11の開口径,長さ,るつぼ10内の
固体蒸気圧により制御できる。第3図では、クラスタ粒
子発生装置から放出されるクラスタ粒子だけを試料とし
てプラズマ生成を行っても良く、また、別のガスでプラ
ズマをあらかじめ生成しておき、このプラズマのクラス
タ粒子を導入して多量体イオンビームを引出しても良
い。
第1図及び第3図の実施例から分るように、第1図は
主としてガスの多量体イオン発生に好適であり、第3図
は金属等の固体試料原子で構成される多量体イオンビー
ム発生に好適である。
次に、本発明の更に他の実施例を第4図により説明す
る。第4図(A)は、引出し電極以外の構成は、第3図
の実施例で用いた多量体イオン発生用マイクロ波イオン
源の構造図であり、第4図(B)はこの多量体イオン発
生用マイクロ波イオン源12を搭載したイオンビーム照射
装置の構成図である。
実際の実験では、多量体イオン発生用マイクロ波イオ
ン源12の単体性能(例えば、引出しビーム全電流,動作
条件等)のみならず、イオンビーム照射装置全体として
試料基板17に照射され、実質的に利用可能なビーム電流
値(試料照射電流)も評価対象とした。
まず、第4図(A)のイオン源について述べる。構成
は引出し電極3′以外は第3図に示した実施例とほぼ同
様であり、使用マイクロ波の周波数は2.45GHz、投入電
力は100W〜2kWで可変である。プラズマ室8の寸法はマ
イクロ波導入窓5付近で直径約90mm,引出し電極3′付
近で約170mmとした。プラズマ室8の長さは約200mmであ
る。このプラズマ室8にコイル2による軸方向磁場を印
加した。軸方向磁場の強度は、コイル2に流すコイル電
流を調節することにより変化でき、通常は、中心軸での
値として0.05〜0.15T(テスラー)である。プラズマ室
8には、放電用のガスとしてガス単体を導入できる。ま
た、ノズル11が付いた固体蒸気用のるつぼ10を取付けて
クラスタ粒子発生装置として、クラスタ粒子も導入可能
としている。
引出し電極3′は、図中に示した形状の電極を用い
た。即ち、三枚の電極のうち、中間の電極を両側に凸に
膨らませた構造としている。これは、引出し電圧が10kV
以下、特に1kV以下でも効果良くイオンビームを引き出
すための電極である。
本発明による多量体イオンビームの利用は、1keV以
下、特に100eV以下のエネルギのイオンを使って、試料
基板に多量体イオンビーム物質を堆積し、高機能薄膜作
製を行うことにある。更に、この様な低エネルギイオン
ビームを試料基板に埋込み、試料表面部の物理的、或い
は、化学的特性を変化させることも重要な応用対象であ
る。イオン源の引出し電圧をEとし、多量体イオンの構
成原子数をnとすれば、試料基板(例えば、第4図
(B)の7)に衝突する構成原子一個当りのエネルギ
は、多量体イオン電荷数が1の時、E/nである。従っ
て、衝突エネルギを下げるには、多量体イオン(n
2)を使うと同時に、引出し電圧Eを下げる必要があ
る。しかるに、一般にEを下げるとイオン源から引出さ
れるイオン電流が減少してしまう。第4図(A)の引出
し電極3′の形状は、この様な背景から低エネルギイオ
ンビームを引出しに適した形状を用いている。
イオン源の引出し電圧としては、100V〜10kVの範囲で
実験が行われた。
次に、第4図(B)に示すイオンビーム照射装置を説
明する。該図に示すイオンビーム照射装置、第4図
(A)に示した多量体イオン発生用マイクロ波イオン源
12と、この多量体イオン発生用マイクロ波イオン源12か
ら引出された多量体イオンビームを多量体の質量数と電
荷比に応じて選択・分離する扇形磁場型の質量分離器13
と、この質量分離器13で質量分離されたイオンビームが
照射される。試料基板17を内蔵した超高真空のビーム照
射室16とで構成されている。更に、これら各部分の結合
部には、小孔15を有する差動排気室15′が設けられてい
る。一般に、多量体イオンビームを得るイオン源の動作
ガス圧力は、通常の電荷数一価の原子状イオンビームを
得る時の圧力に比べ高くなる。このため、本発明の多量
体イオン発生用マイクロ波イオン源12を、通常のイオン
ビーム照射装置に適用すると、イオンと残留ガスとの衝
突によるビーム損失が大きくなる。また、ビーム照射室
16の圧力が高くなり、超高真空下でのビーム照射は不可
能となる。このため、本実施例では図中に示した様に小
孔15を持つ差動排気室15′を設け、多量体イオン発生用
マイクロ波イオン源12からのガスが質量分離器13や超高
真空のビーム照射室16に流れ込まない様にした。
この装置構成で実験を行った。まず、H2ガスをプラズ
マ室8に導入し、引出し電圧3〜10kVで引出し全電流と
して約10mAを得た。この値は、従来の大電流イオン源と
同等の電流量に対応する。プラズマ室内圧力は10-1〜10
-2Paの桁である。第6図は、この時、質量分離器13を動
作させて得た質量スペクトルである。これは引出された
イオンビームの成分量を示すものである。図から、イオ
ン分子反応で形成されたH3イオンが効率良く生成されて
いることが分り、それはH+,H2 +イオン量の約十倍であ
る。また、導入ガスの圧力を下げ、マイクロ波電力を増
加させると相対的にH+,H2 +が増え、H3 +イオンが減少す
ることが観測されたが、H3 +イオンがH+,H2イオン量より
減ることはなかった。通常のイオン源では、一価の原子
状イオンが大量に引出され、H3 +イオンはH+やH2 +イオン
量より少なく1/10以下であることを考えると、本発明に
よるイオン源では極めて効率良く多量体イオンが発生す
ることが明らかである。なお、本実施例の場合、引出し
イオンビームの形状は、引出し電極のプラズマ開口部を
変えることにより円形(直径1cm以下)、あるいはスリ
ット状(幅2mm×40mm程度)で得られた。
次に、第4図(B)の試料基板17に照射されるH3 +
オン量を測定したところ、引出し電極300V〜100Vで0.4m
Aを超えるH3 +ビーム電流が得られた。従って、原子数で
換算すると、1.2mAに相当するHイオンが照射されたこ
とになる。また、そのエネルギは、原子一個当り100eV
以下になっていることに対応する。従来の一価の原子状
イオンを大量に引出すイオン源を使い(例えば熱陰極
型,冷陰極型等)、引出されたイオンビームを減速して
も100eV以下では数100μAのH+イオン量しか得られてい
ない。
この事からも、本発明による多量体イオン発生用マイ
クロ波イオン源の有効性が確認された。なお、本実施例
では、第4図(B)の差動排気構造が採用されるため、
数百μAのビーム照射時でもビーム照射室16の残留ガス
圧は、10-8Pa台に維持できた。なお、従来のイオンビー
ム照射装置や、第4図(B)の差動排気ポンプ14を動作
させない場合では、その残留ガス圧力は10-4〜10-6Pa台
である。
次に、第4図(A)において、ガスの代りにクラスタ
ビーム発生装置(るつぼ10とノズル11で構成される)の
動作させ、クラスタ中性ビームのみをプラズマ室8に導
入した。まず、るつぼ10に燐(P)を入れ加熱したとこ
ろ、ノズル形状(開口径,長さ,型)を最適化すること
により、燐の中性クラスタビームが導入され、これを放
電ガスとしてプラズマが点火し、クラスタプラズマが生
成された。このプラズマから第4図(A)に示した引出
し電極3′を使いイオンビームを引出したところ、P2 +,
P3 +,P4 +,…のイオンが大量に含まれていることが分かっ
た。引出し電極1kV以下の時、同図(B)の試料基板17
で測定したP3 +イオン,P4 +イオン電流は、それぞれ1mA以
上であった。P2 +,P3 +,P4 +,…の成分比は、るつぼ温度,
ノズル形状,マイクロ波電力により変化するが、これら
を固定しておけば、成分量はほぼ一定に維持されること
が分かった。
次に、るつぼ10内の燐の代りにアルミニウム,シリコ
ンの固定試料を入れて加熱すれば、同様にアルミニウ
ム,シリコンについて2〜10量体の100〜1000eVのイオ
ンエネルギを持つ多量体イオンビームが得られ、そのう
ちP2 +,P3 +電流量はいずれも0.5〜1mA以上であった。更
に、クラスタ装置の運転条件の変化により、数100個〜1
000個の原子数を持つイオンが観測された。この他、ク
ラスタビーム発生装置と共に気体の試料ガスを同時に導
入させた実験でも1keV以下の大電流多量体イオンビーム
が得られた。
さて、前述した様にイオン源から大電流ビームを効率
良く引出すには、引出し電圧Eが高い程良い。そこで別
の実施例として、引出し電圧を1kVより高い数kV〜数十k
Vに上げ、引出された後に、このイオンビームエネルギ
を別のエネルギ減速器に通した。これにより、100eV〜1
keVの領域で更に大電流の多量体イオンビーム取得を試
みた。第5図はイオンビーム照射装置の別の実施例を説
明する図である。該図に示す実施例では、扇形磁場型の
質量分離器13の後に、ビーム断面形状を変えるレンズ
(三段の磁気四重極レンズ18)を設けている。これは、
その後のイオンビーム減速器19の入射部に適したビーム
断面にするために設けている。更に、イオンビーム減速
器19としては、高周波電界を使ってイオンビームを減速
する方式のものを採用した。具体的には四本の波打った
高周波電極19′を向いあわせ、その中心軸に沿ってイオ
ンビームを通して減速するものである。この高周波電界
を使った方式では、イオンビームの発散効果が強く抑え
られるため、発散効果の大きい多量体イオンに対し、ビ
ーム減速中のビーム損失を少なくできる。
本実施例により、イオン源引出し電圧を30kVとし、イ
オンビーム減速器19の高周波電界の周波数13.56MHz,高
周波電極19′の長さとして60cmのものを用いた。これに
より、100〜800eV以下で数mAを超える多量体イオンが得
られた。ビーム電流の増加比は、イオンビーム減速器19
を用いない場合に比べ二倍以上もあった。
なお、本実施例では、イオン源引出し電圧を高めるた
めにイオンビーム減速器を用いたが、数kVの引出し条件
では、100eVより低いエネルギに多量体イオンが減速さ
れるが、原子一個当りとして数十eV以下の極低エネルギ
の大電流粒子堆積が可能になることは、発明の本質から
して明らかである。
また、本実施例では、クラスタ粒子として特定の物質
で示したが、他の種類の固体試料(化合物も含む)の使
用により所望とする種々の多量体イオンビームが得られ
ることは明らかである。
更に、本実施例ではH2ガスの導入によるH3 +イオンの
例を示したが、ガスとして化合物ズスを導入し、この化
合物の構成原子の多量体イオンビームを得る場合も有効
である。この他、イオンビーム減速器として高周波電界
を利用する方式を実施例で示したが、従来の直流電界を
利用したイオンビーム減速器を用いても良いことは明ら
かである。
〔発明の効果〕
以上説明した本発明によれば、原子が数個ないし一千
個結合した質量分離された多量体イオンビームを、1keV
以下の低エネルギ領域で効率良く得ることができる。そ
のビーム電流は、従来よりの原子状一価イオンを減速す
る方法に比べ、一桁以上高い値であることから、百eV以
下の低エネルギイオンを使い、高純度の粒子堆積や材料
改質が高速に行うことが初めて可能となり、実用に供し
その効果は著しく大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による多量体イオン発生用マイクロ波イ
オン源の一実施例を示す図、第2図(A),(B),
(C),(D)は従来のマイクロ波イオン源を示す図、
第3図は本発明の多量体イオン発生用マイクロ波イオン
源の別の実施例を示す図、第4図(A)は本発明の多量
体イオン発生用マイクロ波イオン源の更に別の実施例を
示す図、第4図(B)はそのイオン源を用いたイオンビ
ーム照射装置の一実施例を示す図、第5図は本発明のイ
オンビーム照射装置の別の実施例を示す図、第6図は本
発明のイオン源を動作して得られた実験データのうち、
H2ガスを導入して得られた質量スペクトルの説明図であ
る。 1……円筒型プラズマ室、2……コイル、3……引出し
電極、4……イオンビーム、4′……多量体イオンビー
ム、5……マイクロ波導入窓、6……同軸型プラズマ
室、7……中心導体、8……プラズマ室、9……永久磁
石、10……るつぼ、11……ノズル、12……多量体イオン
発生用マイクロ波イオン源、13……質量分離器、14……
差動排気ポンプ、15……小孔、15′……差動排気室、16
……ビーム照射室、17……試料基板。
フロントページの続き (72)発明者 袴田 好美 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 作道 訓之 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (56)参考文献 特開 平2−253543(JP,A) 特開 昭63−276853(JP,A) 実開 平2−92646(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 27/00 - 27/26 H01J 37/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラズマ室と、該プラズマ室の周囲に複数
    配置され、かつ、マイクロ波の伝播方向に一致する磁場
    を発生せしめ、磁場中のマイクロ波放電により前記プラ
    ズマ室内に高密度プラズマを生成する空心コイルと、前
    記プラズマ室内のプラズマからイオンビームを引出すイ
    オン引出し電極を備え、 前記プラズマ室をマイクロ波導入側からイオン引出し電
    極に到る軸方向に沿って半径が増大するテーパ構造とす
    ると共に、該テーパ構造のプラズマ室の外周に複数の永
    久磁石を極性が交互になる様に配置し、かつ、前記プラ
    ズマ室へガスを導入するガス導入パイプを、前記プラズ
    マ室のマイクロ波導入側近傍に取付けたことを特徴とす
    る多量体イオン発生用マイクロ波イオン源。
  2. 【請求項2】請求項1記載の多量体イオン発生用マイク
    ロ波イオン源において、前記プラズマ室に、中性クラス
    タビームを発生するクラスタ発生装置を取付け、該クラ
    スタ発生装置で発生する中性のクラスタ粒子を前記プラ
    ズマ室に導入せしめるようにしたことを特徴とする多量
    体イオン発生用マイクロ波イオン源。
  3. 【請求項3】請求項1記載の多量体イオン発生用マイク
    ロ波イオン源に、該多量体イオン発生用マイクロ波イオ
    ン源から引出された多量体イオンビームを多量体の質量
    数と電荷比に応じて選択・分離する質量分離器を結合
    し、かつ該質量分離器に、該質量分離器で質量分離され
    たイオンビームを基板に照射する照射室を結合すると共
    に、前記多量体イオン発生用マイクロ波イオン源と質量
    分離器、及び該質量分離器と照射室の結合部に差動排気
    系を設けたことを特徴とする多量体イオンビーム照射装
    置。
  4. 【請求項4】請求項3記載の多量体イオンビーム照射装
    置において、前記質量分離器と照射室の中間に、高周波
    電圧が印加された電極によりイオンビームエネルギーを
    減速するイオンビーム減速器を備えていることを特徴と
    する多量体イオンビーム照射装置。
JP2322899A 1990-11-28 1990-11-28 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置 Expired - Fee Related JP3039985B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2322899A JP3039985B2 (ja) 1990-11-28 1990-11-28 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2322899A JP3039985B2 (ja) 1990-11-28 1990-11-28 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04196032A JPH04196032A (ja) 1992-07-15
JP3039985B2 true JP3039985B2 (ja) 2000-05-08

Family

ID=18148862

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2322899A Expired - Fee Related JP3039985B2 (ja) 1990-11-28 1990-11-28 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3039985B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4134312B2 (ja) * 2002-04-23 2008-08-20 独立行政法人産業技術総合研究所 分子ビーム装置
JP4289837B2 (ja) 2002-07-15 2009-07-01 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド イオン注入方法及びsoiウエハの製造方法
JP4328067B2 (ja) 2002-07-31 2009-09-09 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド イオン注入方法及びsoiウエハの製造方法、並びにイオン注入装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04196032A (ja) 1992-07-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5859428A (en) Beam generator
US6441569B1 (en) Particle accelerator for inducing contained particle collisions
US5198677A (en) Production of N+ ions from a multicusp ion beam apparatus
JP2886978B2 (ja) 電子サイクロトロン共鳴プラズマ源及び操作方法
US6768120B2 (en) Focused electron and ion beam systems
Oks Plasma cathode electron sources: physics, technology, applications
US5022977A (en) Ion generation apparatus and thin film forming apparatus and ion source utilizing the ion generation apparatus
JP2648235B2 (ja) イオン銃
US3030543A (en) Method and apparatus for trapping ions in a magnetic field
JP3039985B2 (ja) 多量体イオン発生用マイクロ波イオン源、及びこのイオン源を用いたイオンビーム照射装置
JP2010277871A (ja) 電子サイクロトロン共鳴イオン源装置
Liehr et al. Investigations of the new Giessen 10 GHz electron-cyclotron-resonance ion source
Rahman Ion sources for use in research and low energy accelerators
CN114540783B (zh) 一种高效离化的离子注入方法
Kohlhase et al. Pulsed metastable atomic beam source for time‐of‐flight applications
CN114540777B (zh) 一种结合磁控溅射的离子注入方法
JP3504290B2 (ja) 低エネルギー中性粒子線発生方法及び装置
Abdelrahman Factors enhancing production of multicharged ion sources and their applications
Ivanov Jr et al. H− ion production in electron cyclotron resonance driven multicusp volume source
JP3064214B2 (ja) 高速原子線源
JP2000012293A (ja) 中性ビーム発生装置
Scrivens Classification of ion sources
JP2001296398A (ja) 中性ビーム処理装置及びその方法
JPS61177728A (ja) 低エネルギイオン化粒子照射装置
CN217062007U (zh) 一种离子注入设备的高效离化离子发生装置

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees