以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学補償フィルムは、透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償フィルムにおいて前記光学異方性層が実質的に垂直配向した棒状液晶の配向を固定化した液晶層であり、該液晶層中に下記一般式(1)又は(2)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも一種から導かれる繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有ポリマーの少なくとも一種を含有し、且つ該透明支持体と光学異方性層の間に中間層を有し、該中間層を形成する中間層塗布組成物が炭素数1〜10である低級〜中級アルコール類から選択されるアルコールを溶剤の30体積%以上含有することを特徴とする中間層を設けた構成により、該光学異方性層を形成するのに配向欠陥や液晶層のはじきがなく、該光学補償フィルムを液晶セルに粘着剤を用いて貼合した場合のリワーク性に優れるという効果を奏するものである。
実質的に垂直配向した棒状液晶の配向を固定化した層を配向欠陥や液晶層のはじきなく精度よく形成することは、円盤状液晶の配向を固定化した層を形成したり、液晶を垂直配向せずに固定化した層を形成したりするのに比較して非常に困難性を伴う。その原因として液晶材料の問題や液晶を垂直に配向する配向膜等の問題以外に、可塑剤、溶媒等の支持体表面側からの溶出成分が液晶分子の並びに影響することを見出した。従来用いられている配向膜は、液晶分子の並び方を制御するためのものであり、そもそも支持体からの溶出成分を遮断するという機能はなく、本発明に係る中間層を設けることによって格段に精度よく層形成できることを見出したものである。
また、従来の光学異方性層を有する光学補償フィルムを液晶セルに粘着剤を介して接着した場合、リワーク時に光学異方性層と支持体の間で剥がれが生じ、液晶セル面に光学異方性層が残余してしまうことが多かった。本発明に係る中間層を設けることで支持体と光学異方性層間での剥がれがなく、かつ一般式(1)または(2)で表される化合物は棒状液晶を垂直配向させやすいという効果以外にも、該化合物が光学異方性層から粘着剤側に溶出することにより、粘着剤と光学異方性層の間で剥離がし易くなるため、リワーク性が格段に改善されるという効果も同時に達成できたものである。
<中間層>
透明支持体と棒状液晶を実質的に垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層の間に中間層を有し、該中間層を形成する中間層塗布組成物が炭素数1〜10である低級〜中級アルコール類から選択されるアルコールを溶剤の30体積%以上含有することが、本発明の効果を得る為の特徴的な構成である。透明支持体と光学異方性層の間には中間層以外に下引き層や、液晶配向膜等を適宜設けることは本発明の効果を阻害しない範囲で実施可能である。
また、好ましい中間層の膜厚は0.1〜15μmでありその範囲で本発明の効果を得ることができる。上記膜厚とは乾燥膜厚をいい、光学補償フィルムの切片を電子顕微鏡で撮影した写真を計測して測定することができる。膜厚は0.1μm未満では透明支持体の影響を遮断することができず、15μmを越えると光学補償フィルムの可堯性が低下するためリワーク性改善の効果が低下する。好ましい膜厚は更に0.5〜10μmの範囲であり、特に好ましくは1〜5μmの範囲である。
本発明の中間層は、透明樹脂で構成される。透明樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。
特に好ましくは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂、あるいは架橋剤と反応部位を有する樹脂との混合組成物である。架橋反応を経て硬化する樹脂を用いることで、支持体からの溶出成分を遮蔽する効果がより向上する。
硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物をさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。
例えば、特開昭59−151110号号公報に記載のものを用いることができる。例えば、紫光UV−7510B(日本合成化学(株)製)、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインおよびその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等およびこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜25質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
架橋剤と反応部位を有する樹脂の混合組成物としては、例えばポリビニルアルコールとグリオキザール、ゼラチンとグリオキザール等が挙げられる。
また、中間層には、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
また、中感層には後述する支持体に用いられる粒子を含有することもできる。
本発明の中間層は、2層以上であってもよい。
〈中間層の製造方法〉
中間層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、中間層を形成する塗布組成物(中間層塗布組成物)を塗布し、支持体上に塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することが好ましい。
上記UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅手方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅手方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
中間層塗布組成物には支持体からの溶出物を遮断する上で、炭素数1〜10である低級〜中級アルコール類から選択されるアルコールを溶剤の30体積%以上含有することが必要である。
炭素数1〜10である低級〜中級アルコール類から選択されるアルコールは、具体的には、一価脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(例えば、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(例えば、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)等が挙げられる。用いる有機溶媒は、単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
上記低級〜中級アルコール類は、好ましくは炭素数2〜8のアルコール類であり、より好ましくは一価脂肪族アルコール類である。中でも、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが好ましく、特に好ましくはエタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールである。
上記低級〜中級アルコール類は、中間層を形成する中間層塗布組成物に用いられる溶剤の30体積%以上の範囲で使用し、より好ましくは50体積%以上、更に好ましくは70体積%以上、特には90体積%以上であることが好ましい。
中間層塗布組成物は、上記アルコール類以外の他の溶剤を用いることもでき、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、が挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
また、更に他の溶剤を用いることもでき、その具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸エチル、アセト酢酸メチル等のエステル類、ジオキソラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル類、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等の多価アルコールエステル類、テトラヒドロフラン、フルフラール等のフラン類、氷酢酸等の酸類、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、テトラクロロエタン等のハロゲン炭化水素類、ニトロメタン、ニトロエタン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等の窒素化合物、ジメチルスルホキサイド等のスルホン酸類等が挙げられる。
<棒状液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層>
本発明の光学異方性層は、棒状液晶材料もしくは棒状液晶の溶液を透明支持体上に設けた中間層上に塗布し、乾燥と熱処理(配向処理ともいう)を行い紫外線硬化もしくは熱重合などで液晶配向の固定化を行い、実質的に垂直方向に配向した棒状液晶による位相差層である。
ここで実質的に垂直方向に配向するとは、棒状液晶が透明支持体面に対して70〜90°(垂直方向を90°とする)の範囲内にあることをいう。
棒状液晶は、斜め配向しても、配向角を徐々に変化していてもよい。好ましくは80〜90°の範囲である。
棒状液晶を配向させて光学異方性層を形成する際には、いわゆる液晶材料が垂直方向に配列するような垂直配向剤を塗布した配向膜を用い液晶材料を垂直配向したのち固定する方法をとることもできるが、液晶材料自身が空気界面で垂直方向に配向する場合には、その配向規制力が空気界面と反対の界面までおよび、上記配向膜は特に必要ではなく構成が簡素化できる観点からもその方が好ましい。
液晶材料を垂直に配向する具体的な方法としては、特開2005−148473号公報などに記載されている(メタ)アクリル系ブロックポリマーを含有するブロックポリマー組成物の架橋体からなる配向膜等を用いる方法、同2005−265889号公報に記載されている垂直配向膜を使用する方法、空気界面垂直配向剤を使用する方法等公知の方法を使用することができる。
これらの中で空気界面垂直配向剤を使用する方法が好ましく、本発明に係る一般式(1)または(2)で表される化合物は空気界面垂直配向剤として作用する為、上述の如く配向膜は必ずしも必要ではない。
光学異方性層中の配向角を上記範囲とするためには、棒状液晶層の配向、膜厚制御、紫外線硬化時の温度、チルト角制御、および支持体と空気界面でのプレチルト角の制御を行うことが好ましい。
光学異方性層は、所定の温度で液晶相となり得る液晶材料が、所定の液晶規則性を有して硬化することにより形成されたものである。液晶相を示す温度の上限は、例えば透明支持体がダメージを受けない温度であれば特に限定されるものはない。
具体的には、プロセス温度のコントロールの容易性と寸法精度維持の観点から120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下の温度で液晶相となる液晶材料が好適に用いられる。一方、液晶相を示す温度の下限は、偏光板として用いる際に、液晶材料が配向状態を保持し得る温度であるといえる。
光学異方性層に用いられる液晶材料としては、重合性液晶材料を用いることが好ましい。重合性液晶材料は、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いることができ、重合させた状態で垂直の配向状態は固定化される。
重合性液晶化合物としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができ、相互に混合して用いることもできる。
重合性液晶化合物としては、上記のうちでも、配向に際しての感度が高く垂直に配向させることが容易であることから重合性液晶モノマーが好適に用いられる。
具体的な重合性液晶モノマーとしては、下記の一般式(x)で表される棒状液晶性化合物(I)、および下記の一般式(y)で表される棒状液晶性化合物(II)を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(x)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもでき、同様に、化合物(II)としては、一般式(y)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもできる。また、化合物(I)を1種以上と化合物(II)を1種以上を混合して使用することもできる。
化合物(I)を表す一般式(x)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1およびR2は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、もしくはニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(x)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、aおよびbがそれぞれ13以上である一般式(x)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
化合物(I)は任意の方法で合成することができる。例えば、Xがメチル基である化合物(I)は、1当量のメチルヒドロキノンと2当量の4−(m−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により得ることができる。エステル化反応は、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これとメチルヒドロキノンとを反応させるのが通例である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて、カルボン酸単位とメチルヒドロキノンを直接反応させることもできる。これ以外の方法としては、1当量のメチルヒドロキノンと、2当量の4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応をまず行い、次いで得られたエステルを水素添加反応等により脱ベンジル化した後、分子末端をアクリロイル化する方法によっても、化合物(I)を合成することができる。メチルヒドロキノンと4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応を行うに際しては、メチルヒドロキノンをジアセテートに導入した後、上記の安息香酸と溶融状態で反応させ、直接エステル体を得ることも可能である。一般式(x)のXがメチル基でない場合の化合物(I)も、対応する置換基を有するヒドロキノンを、メチルヒドロキノンの代わりに用いて上と同様の反応を行うことにより得ることができる。
化合物(II)を表す一般式(y)において、R3は水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR3は水素であることが好ましい。アルキレン基の鎖長を示すcに関して言えば、この値が2〜12である化合物(II)は液晶性を示さない。しかしながら、液晶性を持つ化合物(I)との相溶性を考慮すると、cは4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがより好ましい。化合物(II)も任意の方法で合成可能であり、例えば、1当量の4−シアノフェノールと1当量の4−(n−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により化合物(II)を合成することができる。このエステル化反応は化合物(I)を合成する場合と同様に、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これと4−シアノフェノールとを反応させるのが一般的である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて上記安息香酸と4−シアノフェノールを反応させてもよい。
以上の他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとして、従来提案されている公知の材料を適宜選択して用いることが可能である。
例えば、重合性棒状液晶化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
市販の化合物としてはUCL−018(大日本インキ化学工業(株)製)、パリオカラーLC242(BASF(株)製)等を使用することができる。
本発明においては、重合性液晶化合物に加え、必要に応じて光重合開始剤を使用する。電子線照射により重合性液晶化合物を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられる。
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。
光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、もっと好ましくは0.5%〜5%の範囲で、重合性液晶材料に添加することができる。
尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
本発明における光学異方性層の膜厚は0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜5μmの範囲内であることがより好ましい。
重合性液晶化合物は、必要に応じて光重合開始剤、増感剤等を配合して光学異方性層形成用組成物を調製して用い、支持体/中間層上に塗工し、光学異方性層を形成する。
液晶の配向を固定した層を形成する方法としては、例えばドライフィルム等をあらかじめ形成してこれを液晶の配向を固定した層としたものを支持体/中間層上に積層する方法や、液晶組成物を溶解あるいは融解させて支持体/中間層上に塗工する方法等をとることも可能であるが、本発明においては、液晶組成物としては溶媒を加えて、その他の成分を溶解した塗工用組成物を用いて支持体/中間層上に塗工し、溶媒を除去することにより液晶の配向を固定した層を形成することが好ましい。これは、他の方法と比較して工程上簡便である。
ここで本発明の特徴である一般式(1)または(2)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも1種から導かれる繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有ポリマーについて説明する。
本発明では、下記一般式(1)及び(2)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも一種から導かれる繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族含有ポリマー(以下、「フッ素系ポリマー」という場合もある)を棒状液晶を垂直配向する光学異方性層形成用組成物(以降簡単に液晶塗布液ともいう)中に添加する。前記フルオロ脂肪族含有ポリマーを添加することにより、塗布液の塗布性が改善され、塗布ムラの軽減が図れる。また、前記フルオロ脂肪族含有ポリマーを添加することにより、液晶化合物の分子の配向、特に空気界面における配向が促進される。更に、光学異方性層と粘着層の界面で剥離し易いような作用を付与することができる。
一般式(1)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、Xは好ましくは酸素原子である。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R12は水素原子又はメチル基であるのが好ましい。Zは水素原子またはフッ素原子を表し、好ましくは水素原子である。mは1〜6の整数を表し、−(CH2)m−中の一つのCH2基もしくは隣接していない2つ以上のCH2基は、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。mは好ましくは1または2である。nは2〜4の整数を表し、好ましくは3または4である。
一般式(2)中、Aは下記の連結基群Aから選ばれる2価(q=1)もしくは3価(q=2)の連結基、または、下記の連結基群Aから選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価(q=1)もしくは3価(q=2)の連結基を表し、また、連結基同士は酸素原子を介して結合してもよく、Z1は水素原子またはフッ素原子を表し、pは3〜8の整数、qは1または2を表す。
(連結基群A)
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C6H4−および−C6H3< 前記連結基群A中、−C6H4−および−C6H3<のベンゼン環上の置換位置は任意の位置でよい。
連結基群A中、−C6H4−はフェニレン基を意味し、−C6H3<は、ベンゼン環から3つの水素原子を取り去ってできる基を意図している。従って、「ベンゼン環上の置換位置は任意の位置でよい。」とは、−(CF2)p−Z1がベンゼン環上のいずれの位置で置換されていてもよいことを意図している。
以下に、本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能な、前記一般式(1)で表されるモノマーの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、下記モノマーのうち、−CH2CH2CH2−の全部もしくは一部が、−CH2CH2O−や−CH2CH2S−に置き換わった化合物も、前記一般式(1)で表されるモノマーの具体例含まれる。
さらに、前記一般式(1)で表されるモノマーから導かれる構成単位の具体例も列挙するが、これらに限定されるものではない。
また、本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能な、前記一般式(2)で表されるモノマーの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
前記フッ素系ポリマーは、前記フルオロ脂肪族基を有する繰り返し単位とともに、下記式(A)で表される繰り返し単位の少なくとも一種を含んでいるのが好ましい。
一般式(A)中、Mpはポリマー主鎖の一部を構成する3価の基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の芳香族縮合環官能基を表す。
前記式(A)中、Mpは、3価の基であり、ポリマーの主鎖の一部を構成する。Mpは、好ましくは、炭素原子数2〜20(置換基の炭素原子数は含まない、以下、Mp中のものについて同じ)の置換もしくは無置換の長鎖又は分岐のアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等)、炭素原子数3〜10の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等)、置換もしくは無置換のビニレン基、置換もしくは無置換の環状ビニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、酸素原子を含む基(例えば、エーテル基、アセタール基、エステル基、カルボネート基等を含む基)、窒素原子を含む基(例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、イミド基、イミダゾール基、オキサゾール基、ピロール基、アニリド基、マレインイミド基等を含む基)、硫黄原子を含む基(例えば、スルフィド基、スルホン基、チオフェン基等を含む基)、リン原子を含む基(例えば、ホスフィン基、リン酸エステル基等を含む基)、珪素原子を含む基(例えば、シロキサン基等を含む基)の基、及びこれらの基を二つ以上連結して形成される基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基が好ましく、より好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のシクロヘキシレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、さらに好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、特に好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、具体的には、後述する、Mp−1及びMp−2が好ましい。
以下に、Mpの好ましい具体例を示すが、Mpはこれに限定されるものではない。また、Mp中の*で表される部位はLと連結する部位を表す。
前記一般式(A)中のLで表される2価の連結基としては、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基など)、炭素原子数2〜20のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、ブテン基等)、−O−、−NRa1−、−S−、−PRa2−、−Si(Ra3)(Ra4)−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NRa5−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRa6−、−NRa7C(=O)NRa8−、−(−O)2CH−ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。
ここで、上記Ra1〜Ra8は置換可能な置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(1以上の環構造を含むモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を除く)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられ、水素原子及びアルキル基が好ましい。
前記一般式(A)中のLとしてより好ましくは、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、及び、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基であり、特に、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)O(CH2)mO−、−(CH2)m−、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基が好ましい。
ここで、mは1〜20の整数を表す。mは、Xの自由度を適切に調整するために、好ましくは1〜16、より好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜6である。Xの自由度を適切に調整することにより、配向させる液晶との相互作用が増し、かつ、Xの方位をより制御でき、より効果的に平均チルト角度を制御できる。
また、上記連結基を2つ以上連結させて形成される、以下に示すような連結基も好ましい。また、L中の*で表される部位はMpと連結する部位を表す。下記式中、mは1〜20の整数を表し、上記「m」と同義であり、好ましい範囲も同義である。
さらに、一般式(A)中のMpが前記Mp−1又はMp−2を表す場合には、Lは、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、及び、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましく、−O−、−C(=O)O−、及び、−C(=O)NH−、ならびに、これらの1以上とアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基から選択される基がより好ましい。例えば、前記L−1、L−2、及び、L−3、L−6等である。
前記一般式(A)中のXで表される置換もしくは無置換の芳香族縮合環官能基の環数については特に制限はないが、1〜4個の環が縮合した基であるのが好ましい。環を構成している原子が炭素原子のみである炭化水素系の芳香族縮合環のみならず、ヘテロ原子を環構成原子とするヘテロ環が縮合した芳香族縮合環であってもよい。Xは、炭素原子数5〜30の置換もしくは無置換のインデニル基(メチルインデニル基、メドキシインデニル基、或いはヘテロ原子で置換されたインインデニル基、例え、ベンゾフラニル基、チオナフテニル基、インドールニル基、インダゾールニル基、ベンズイミダゾールニル基、ベンゾトリアゾールニル基、1−ピラゾールピラジニル基等)、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のナフチル基(メチルナフチル基、シアノナフチル基、フルオロナフチル基、ブロモナフチル基、或いはヘテロ原子で置換されたナフチル基、例え、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、6,7−ピリドピリダジニル基、ベンゾテトラジニル基、プテリル基等)、炭素原子数12〜30の置換もしくは無置換のフルオレニル基(2,7−ジメチルフルオレニル基、或いはヘテロ原子で置換されたフルオレニル基、例え、カルバゾリル基、ジベンゾフラリル基、ジベンゾチオフェニル基等)、アントリル基(5−メチルアントリル基、或いはヘテロ原子で置換されたアントリル基、例え、キサンテニル基、アクリジニル基、フェナジニル基等)、ピレニル基、ペリレニル基、フェナントレニル基などであるのが好ましい。
前記一般式(A)中、Xとしてより好ましくは、炭素原子数5〜30の置換もしくは無置換のインデニル基、又は、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のナフチル基であり、さらに好ましくは、炭素原子数10〜30の置換もしくは無置換のナフチル基であり、特に好ましくは炭素原子数10〜20置換もしくは無置換のナフチル基である。
特に、Lが単結合又は、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基)、−S−、−C(=O)−、及び、−S(=O)2−、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基の場合には、Xが置換もしくは無置換のナフチル基を表すことが好ましい。
以下に、一般式(A)として好ましい構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、前記フッ素系ポリマーは、前記フルオロ脂肪族基含有モノマー(一般式(1)又は(2)で表されるモノマー)より誘導される構成単位の他、これらの構成単位を形成するモノマーと共重合可能なモノマーより誘導される構成単位を含有してもよい。
共重合可能なモノマーとしては、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限はない。好ましいモノマーとしては、例えば、炭化水素系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリマレインイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアニリド等)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリウレタン及びポリウレイドを構成するモノマーでなどが、溶媒への溶解度を向上させたり、ポリマーの凝集を防止する観点で好ましく用いることができる。
さらに、主鎖構造が、前記前記フルオロ脂肪族基含有モノマーから誘導される構成単位と、同一となる構成単位が好ましい。
以下に共重合可能な構成単位の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。特に、C−2、C−3、C−10、C−11、C−12、C−19が好ましく、C−11、C−19がさらに好ましい。
前記フッ素系ポリマー中の、前記一般式(1)又は(2)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位の含有率としては、5〜90質量%が好ましく、10〜80%がより好ましい。
また、前記フッ素系ポリマーは、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を含有しているのが好ましく、その含有率としては、1〜90質量%が好ましく、3〜80質量%がより好ましい。
また、前記フッ素系ポリマーは、上記2種以外の構成単位を含有していてもよいが、その含有率は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
また、前記フッ素系ポリマーは、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであってもよく、同一の構成成分を2度以上用いてもよい。
また、一般式(1)又は(2)で表されるモノマーから誘導される構成単位は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上の場合、上記含有率は、合計含有率である。
さらに、前記フッ素系ポリマーの分子量範囲は、数平均分子量(Mn)で、好ましくは1000〜100万であり、より好ましくは3000〜20万であり、さらに好ましくは5000〜10万である。また、本発明で用いるポリマーの分子量分布(Mw/Mn、Mwは重量平均分子量)は、1〜4であることが好ましく、1.5〜4であることがより好ましい。
前記フッ素系ポリマーの添加量範囲は、液晶化合物に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは、0.1〜5.0質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜2.5質量%である。
前記フッ素系ポリマーの好ましい具体例を以下の表1に示す。
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、あるいは、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合法については例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
液晶塗布液に用いられる溶媒としては、上述した重合性液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、もしくは2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、もしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、もしくはオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、もしくはブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
溶液の濃度は、重合性液晶材料等の溶解性や製造しようとする光学異方性層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
本発明に用いられる液晶塗布液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。
添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、またはアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。
本発明の液晶塗布液に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶塗布液の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。
これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる光学異方性層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
また、溶剤を配合した液晶塗布液には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることができる。
添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、さらには溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶材料の10ppm〜10%が好ましく、より好ましくは100ppm〜5%であり、もっとも好ましくは0.1〜1%の範囲である。
液晶塗布液を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、もしくは押し出しコート法等が挙げられる。
液晶塗布液を塗工した後、溶媒を除去する方法としては、例えば、風乾、加熱除去、もしくは減圧除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。溶媒が除去されることにより、液晶の配向を固定した層が形成される。
重合性液晶材料を硬化させる工程では、重合性液晶材料を硬化させるためのエネルギーが与えられ、熱エネルギーでもよいが、通常は、重合を起こさせる能力がある電離放射線の照射によって行う。
必要であれば重合性液晶材料内に重合開始剤が含まれていてもよい。電離放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nmの光が好ましく、より好ましくは250〜450nmであり、より好ましくは300〜400nmの波長の紫外線である。
この紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、もしくはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を挙げることができる。
なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。照射強度は、液晶の配向を固定した層の形成に用いられる重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜に調整すればよい。
光学異方性層は、下記リターデーション(位相差)の特性を有することが好ましい。
0≦Ro≦10(nm)
−500≦Rt≦−100(nm)
ここで、Roは面内リターデーション、Rtは厚み方向リターデーション(Rt)であり、光学異方性層の主屈折率をnx(遅相軸)、主屈折率に直交する方向の屈折率をny(進相軸)とし、該層の厚さ方向の屈折率をnzとし、該層の厚さをd(nm)とした際に、Ro=(nx−ny)×d、Rt=((nx+ny)/2−nz)×dで示される値である。
本発明の光学異方性層はRoが0〜10nm、Rtが−500〜−100nmの範囲にある垂直方向に配向した棒状液晶による位相差層であることが好ましいが、さらにRoは0〜5nmの範囲にすることがより好ましい。これらの支持体上の液晶配向を固定化した層の位相差測定は、株式会社オプトサイエンス社製AxoScanを用いて測定することができる。
<透明支持体>
本発明に用いられる透明支持体は、製造が容易であること、光学的に等方性であること、光学的に透明であること等の他に、可堯性があること、長尺であること等が偏光板用部材として好ましい要件として挙げられ、透明フィルム支持体であることが好ましい。
ここでいう透明とは、可視光透過率が60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。例えば、日立製作所製U−4000型分光光度計を使用して、JIS R5759に基づいて透過スペクトルを測定して可視光透過率(%)を算出できる。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製))、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製)、ポリビニルアセタール、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。
中でも、セルロースエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましい。
特に、フィルム支持体としては、セルロースエステル系フィルム(以下セルロースエステルフィルムともいう)を用いることが好ましい。セルローストリアセテートフィルムは、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
市販品のセルローストリアセテートフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が挙げられる。
また、セルロースエステルとして、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートを用いることも好ましい。
特に、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースエステルフィルムを用いるのが、好ましい。
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦2.0
特に、
2.5≦X+Y≦2.9
0.1≦Y≦1.2
であることが好ましい。
なお、アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量は、50000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80000〜150000である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
(アクリル樹脂)
また、セルロースエステルフィルムは、フィルム中での保留性のよいアクリル樹脂を可塑剤の一種として含有することも好ましい。
アクリル樹脂としては、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
アクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は上記の高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。
アクリル樹脂(A)の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、或いは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いてもよい。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。更に、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
更にアクリル粒子を含有することがフィルム支持体の耐脆性や表面硬度の点から、好ましい。
次に、アクリル粒子について説明する。アクリル粒子は、例えば、作製したアクリル樹脂含有フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、十分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、アクリル樹脂含有フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、及び最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を言う。
アクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
アクリル粒子はセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の総質量に対して、0.5〜45質量%のアクリル粒子を含有することが好ましい。
セルロースエステルフィルムやセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、溶液流延法で製造されたものでも、溶融流延法で製造されたものでもよい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出し法が好ましい。
また、本発明では、フィルム形成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラム上またはエンドレスベルト上に押し出し製膜する方法も溶融流延製膜法として含まれる。
また、フィルム支持体の製膜において、少なくとも幅方向(TD)に延伸するのが好ましく、特に溶液流延工程では、剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅方向に1.01〜1.5倍に延伸するのが好ましい。より好ましくは幅方向と製膜方向(MD)に2軸延伸することであり、剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅方向及び製膜方向に、各々1.01〜1.5倍に延伸することである。
特にリターデーションを調整するのに上記延伸操作を用いることが好ましい。
フィルム支持体の膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmの範囲のものが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜80μmである。
また、フィルム支持体の長さは100m〜5000m、幅は1.2m以上が好ましく、更に好ましくは1.4〜4mである。フィルム支持体の長さ及び幅を前記範囲とすることで、取り扱い性や生産性に優れる。
フィルム支持体に用いることのできる可塑剤は、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を挙げることができる。
フィルム支持体に用いることのできる紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
フィルム支持体に用いることのできる粒子は、二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。支持体に添加する粒子の平均粒子径は0.3〜1μmが好ましく、0.4〜0.7μmが更に好ましい。
セルロースエステルフィルムを溶液流延法によって作製する場合、ドープには製膜性や生産性の点から、有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、セルロースエステル、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。これら有機溶媒の中でも塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく用いられる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜40質量%、ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
<偏光板>
本発明の光学補償フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる偏光板を作製することが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明の光学補償フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成することができる。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
<液晶表示装置>
前記偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、視野角の拡大したコントラストの高い液晶表示装置を作製することができる。
液晶表示装置としては、反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられるが、特にIPS型液晶表意装置で好適に用いられる。
〈IPS横電界スイッチングモード型液晶表示装置〉
上記本発明の光学補償フィルムを用いた偏光板を市販のIPS(In Plane Switching)モード型液晶表示装置に組み込むことによって、視認性に優れ、優れたカラーシフト、コーナームラ、正面コントラスト特性を有する液晶表示装置を作製することができる。
IPSモードとは、フリンジ電場スイッチング(FFS:Fringe−Field Switching)モードも含み、IPSモードと同様に上記偏光板を組み込むことができ、同様の効果をもつ液晶表示装置を作製することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<セルロースエステルフィルム1の作製>
(セルロースエステルの合成)
特表平6−501040号公報の例Bを参考にして、プロピオン酸、酢酸の添加量を調整して、アセチル基置換度1.8、プロピオニル基置換度0.9のセルロースエステルAを合成した。得られたセルロースエステルの置換度は、ASTM−D817−96に基づいて算出した。
(ドープ液Aの調製)
下記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルロースエステルを完全に溶解した。酸化ケイ素微粒子は予め添加する溶媒と少量のセルロースエステルの溶液中に分散して添加した。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープ液Aを得た。
(ドープ液Aの調製)
セルロースエステルA 100質量部
モノペットSB(糖エステル化合物:(第一工業製薬(株)製)) 9質量部
アクリル系重合体X1 3質量部
酸化ケイ素微粒子 0.1質量部
(アエロジルR972V、日本アエロジル株式会社製)
メチレンクロライド 400質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
(アクリル系重合体X1の合成)
特開2000−344823号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。すなわち、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口及び環流冷却管を備えたフラスコに下記メチルアクリレートとルテノセンを導入しながら内容物を70℃に加熱した。
次いで、充分に窒素ガス置換した下記β−メルカプトプロピオン酸の半分を攪拌下フラスコ内に添加した。β−メルカプトプロピオン酸添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物を70℃に維持し2時間重合を行った。
更に、窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸の残りの半分を追加添加後、更に攪拌中の内容物の温度が70℃に維持し重合を4時間行った。反応物の温度を室温に戻し、反応物に5質量%ベンゾキノンのテトラヒドロフラン溶液を20質量部添加して重合を停止させた。
重合物をエバポレーターで減圧下80℃まで徐々に加熱しながらテトラヒドロフラン、残存モノマー及び残存チオール化合物を除去してアクリル系重合体X1を得た。重量平均分子量Mwは1000であった。
メチルアクリレート 100質量部
ルテノセン(金属触媒) 0.05質量部
β−メルカプトプロピオン酸 12質量部
上記の材料を混合してドープ液Aを調製し、得られたドープ液Aを、温度35℃に保温した流延ダイを通より、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる温度35℃の支持体上に流延して、ウェブを形成した。
ついで、ウェブを支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80質量%になった段階で、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
ついで、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で120℃の乾燥風にて乾燥させながら搬送し、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、170℃で幅方向(TD)に延伸前の1.4倍となるように延伸した。テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で170℃の乾燥風にて乾燥させた。室温まで冷却して、平均高さ10μmのナーリング加工を施して巻き取り、幅1.5m、膜厚40μm、長さ4000m、長尺のセルロースエステルフィルム1を作製した。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のウェブ搬送方向(MD)の延伸倍率は、1.1倍であった。
セルロースエステルフィルム1のリターデーションはRo=69nm、Rt=170nmであった。リターデーションは、23℃55%RHに調湿後、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて、波長590nmの測定した値である。
<光学補償フィルム1の作製>:(比較例)
上記作製したセルロースエステルフィルム1上に、下記の重合性液晶化合物である棒状液晶化合物塗布液をダイコートでウェット8μmの厚みで塗布した。塗布後、100℃で2分間過熱し、棒状液晶化合物を配向させ光学異方性層1を設け、更に光学異方性層1を酸素濃度0.2%、温度28℃にて180mJ/cm2、照度200mW/cm2で照射して硬化して、光学補償フィルム1を得た。光学異方性層1の厚みは、1.2μmであった。
(棒状液晶化合物塗布液)
紫外線重合性液晶材料 20質量部
(UCL−018 大日本インキ化学工業(株)製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80質量部
<光学補償フィルム2の作製>:(比較例)
上記作製したセルロースエステルフィルム1上に、下記中間層塗布液を、コロナ放電後、ダイコートで塗布し、80℃で30秒乾燥後、紫外線を120mJ/cm2、照度200mW/cm2で照射して硬化した。硬化後の中間層の膜厚は、2μmであった。次いで、この中間層上に光学補償フィルム1と同様の方法で重合性液晶化合物である棒状液晶化合物塗布液をダイコートでウェット8μmの厚みで塗布した。
(中間層塗布液)
ポリエステルアクリレート 25質量部
(ラロマーLR8800 BASFジャパン(株)製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 975質量部
光重合開始剤 0.05質量部
(イルガキュア184 チバ・ジャパン(株)製)
<光学補償フィルム3の作製>:(実施例)
光学補償フィルム2の棒状液晶化合物塗布液のUCL−018に対して1質量%の表1記載のAD−6を添加し、中間層塗布液の溶剤組成を以下のように変更した以外は同様の方法で光学補償フィルム3を作製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 290質量部
イソプロピルアルコール(i−PA) 705質量部
<光学補償フィルム4の作製>:(実施例)
光学補償フィルム2の棒状液晶化合物塗布液のUCL−018に対して1質量%のAD−6を添加し、中間層塗布液の溶剤組成を以下のように変更した以外は同様の方法で光学補償フィルム4を作製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 98質量部
n−プロピルアルコール(n−PA) 877質量部
<光学補償フィルム5の作製>:(実施例)
光学補償フィルム2の棒状液晶化合物塗布液のUCL−018に対して1質量%のAD−5を添加し、中間層塗布液の溶剤組成を以下のように変更した以外は同様の方法で光学補償フィルム4を作製した。
n−プロピルアルコール(n−PA) 975質量部
得られた光学異方性層を塗設した光学補償フィルム1〜5を、偏光顕微鏡を用いて評価したところ、クロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で該光学補償フィルムを傾けた場合に白色に観察された。従って、前記光学異方性層は垂直配向していることが確認できた。
《評価》
(配向欠陥)
作製した光学補償フィルムを偏光顕微鏡下で観察し、配向状態及び配向欠陥の評価を行い、光学異方性層中に生じた配向欠陥の数を光学顕微鏡で観察して調べた結果、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)を数えた。
◎:0〜1個
○:2〜3個
△:4〜10個
×:10個以上
(液晶層はじき)
作製した光学補償フィルムを偏光顕微鏡下で観察し、光学異方性層中に生じ液晶層はじき個数(10cm2範囲の平均値)を数えた。
◎:0〜1個
○:2〜3個
△:4〜10個
×:10個以上
(光学異方性層の剥離評価:リワーク性)
(剥離試験サンプル作製方法)
上記作製した光学補償フィルムを、幅4cm、長さ15cmに裁断し、表面をメタノールでふき取り、表面の汚れを取った後、温度25℃湿度60%の条件下で2時間サンプルを保存した。その後、長さ方向に、NTカッターを用いて、45度に刃を傾けた状態で、支持体を切断しないように、サンプルの幅方向の両端1cm、長さ方向の両端4cmずつ空け、幅方向5mm間隔で、長さ方向に6cmの切り込みを入れた。
SUS板(30cm×30cm、厚さ8mm)1枚につき、総研化学社製粘着シート(PET製剥離シートが両側に付着している)を幅5cm、長さ24cmに裁断し、剥離シートの片方を剥離し、SUS板の端から上5cm、下5cm、左右3cm隙間が開くように2枚貼り付け、もう片方の剥離シートを剥離した。その後、前記切り込みの入った光学補償フィルム6枚を並べて、該フィルムの長手方向の中心部5cmの光学異方性層側を、SUS板上の粘着剤に、気泡が入らないように貼り付け、さらに、該フィルムの支持体を市販のプラスチック定規でこすりつけた。
前記のような状態で、温度25℃湿度60%の条件下で、一晩(約15時間)保存した後、さらに温度90℃湿度0%の恒温槽で5時間保存した後SUS板を取り出し、さらに温度25℃湿度60%の条件下で2時間保存した。
(剥離試験)
光学補償フィルム1枚の塗布長手方向の端を手で持ち、SUS板に対して可能な限り90度方向に光学補償フィルムを傾け、上方向に5秒間で引っ張り、粘着シートと光学補償フィルムの粘着部を剥離した。
(光学異方性層剥離評価)
剥離後のサンプルについて、光学補償フィルムと粘着シートの粘着部中の光学異方性層の剥離面積によって、5段階評価した。光学異方性層が全く剥離していない場合を5点、剥離面積が〜5%未満の場合を4点、〜10%未満の場合を3点、〜25%未満の場合を2点、〜50%未満の場合を1点、50%以上剥離している場合を0点とした。
以上の評価の結果を表2に示した。
表2より、本発明の光学補償フィルム3〜5は配向欠陥、液晶層はじき、リワーク性に優れる結果であった。
実施例2
実施例1の光学補償フィルム4において、中間層の膜厚を0.1、1μm、5μm、10μm、15μm、17μmと変化させて塗設し光学補償フィルム6〜11を作製したところ、本発明の光学補償フィルム6〜11は本発明の効果を再現し、配向欠陥、液晶層はじき、リワーク性に優れる結果を再現した。中でも、膜厚が1〜5μmの範囲では配向欠陥、液晶層はじき、リワーク性が総合的に優れる結果であった。