JP2010215674A - 補体成分c5に対する抗体を使用する喘息の処置の方法 - Google Patents

補体成分c5に対する抗体を使用する喘息の処置の方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1種類以上の補体成分に結合するか、あるいは1種類以上の補体成分の生成および/または活性を阻止する、例えば、補体阻害抗体等の化合物を用いて喘息を処置する方法を提供すること。
【解決手段】1種類以上の補体成分に結合するか、あるいはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/または活性を阻止する、例えば、補体阻害抗体等の化合物で喘息を処置する方法。該化合物を、既知の喘息個体での喘息発作を予防するために予防的に投与するか、または喘息発作の間の治療措置として投与することができる。補体阻害抗体を既知の喘息個体(気道炎症を有する個体または既往の喘息症状を経験した被験体等の)に予防的に投与して、喘息発作を予防するか、または予防するのを助けることができる。静脈内、エアロゾル、皮下、または筋肉内経路を介して、この予防的療法を投与することができる。
【選択図】なし

Description

(背景)
(技術分野)
この開示は、1種類以上の補体成分に結合するか、あるいはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/または活性を阻止する、例えば、補体阻害抗体等の化合物を用いて喘息を処置する方法に関する。
(関連技術の説明)
喘息、気管支炎、および肺気腫は、慢性閉塞性肺疾患と総称されている。これらの疾患は、慢性的な気管支炎、喘息、および肺気腫の様々な程度の症状に関連する一般化された(generalized)気道閉塞(特に、末梢気道の)として特徴付けられる。これらの疾患は、しばしば、個体に共存することがあり、気道閉塞の主因を決定することが難しい場合がある。気道閉塞は、努力呼気の間の気流への抵抗の増加として定義される。太い気道の閉塞もこれらの疾患、特に喘息で生じうる。
喘息は、特異的および/または非特異的な刺激に対する気道応答性亢進によって引き起こされる可逆的な閉塞性肺疾患である。喘息性の気道閉塞は、通常、気管支痙攣に起因する。喘息は、アレルギー反応、感染への2次応答、産業または職業曝露、特定の化学物質または薬物の摂取、運動、および脈管炎等の種々の原因によって誘発されうる。喘息の病状の多くは、マスト細胞の脱顆粒に起因しうる。マスト細胞は、例えば、古典的IgE抗原刺激等の様々な状態に反応して脱顆粒する。喘息ヒトまたは動物がアレルギー物質を吸い込むと、感作IgE抗体は、肺間質中でマスト細胞脱顆粒を誘発すると考えられている。マスト細胞脱顆粒によって、ヒスタミン、ブラジキニン、ならびにロイコトリエン(C、D、およびE)、プロスタグランジン(PGF、PGF2α、およびPGDを含む)、およびトロンボキサンAを含むアナフィラキシーの遅反応性物質(SRS−A)が遊離する。その後、ヒスタミンは、より大きい気管支中の受容体部位に結合し、過敏、炎症、および浮腫を引き起こす。SRS−Aは、より小さい気管支中の受容体部位に結合し、浮腫を引き起こし、肺中のヒスタミン作用を増強させるプロスタグランジンを誘引する。プロスタグランジンと組み合わさったヒスタミンは、過剰な粘液分泌を促し、気管支内腔をさらに狭めることもする。喘息個体が吸息すると、狭められた気管支内腔は、それでもわずかに拡張し、空気を肺胞に到達させる。しかし、呼息労作事に、増加した胸部圧力は、気管支内腔を完全に塞ぐ。そのため、空気は、肺に入ることができるが、喘息発作の間は出ていくことが可能ではない。その後、肺胞中の換気は、肺底部中に集まる粘液によって阻害される。低下した肺胞の換気を埋め合わせようとして、血液が他の肺胞に流される。医療行為がなされないと、低酸素症、および極端な場合は呼吸性アシドーシスが生じうる。多くの場合、アレルギー性喘息発作へ2つの段階、すなわち、早期と、気管支刺激後の4〜6時間後に起こる後期とがある。早期は、即時の炎症反応を含み、該炎症反応は、マスト細胞からの細胞メディエーター(すなわち、ヒスタミン)の遊離によって引き起こされる反応を含む。後期反応は、ある期間にわたって生じ、多形核白血球の早期流入およびフィブリン沈着、その後に生じる好酸球の湿潤によって組織学的に特徴付けられる。血漿およびBALで好酸球由来炎症メディエーター(好酸球カチオン性タンパク質および主要な塩基性タンパク質を含む)の濃度増加が後期反応中に観察された。アレルゲン・チャレンジ後に生じるTH2型サイトカイン(IL4、IL5、およびIL13)の上方制御が後期中に観察された。したがって、気管支粘膜中の遊離した炎症誘発メディエーター(例えば、mmp9)および局所的に産生されたサイトカインと組み合わさった細胞炎症反応は、後期アレルギー炎症および気管支収縮で中心的な役割を果たす。後期反応は、気道反応性を増加させ、複数の被験体では数時間から数日、さらには数ヶ月まで続く可能性がある長期の喘息増悪に至る。喘息反応の後遺症作用は、非特異的な刺激への気道のこの応答性亢進である。
現在、喘息に対する処置は、必ずしも十分とは限らず、多くが深刻な副作用を持つ。喘息に対する薬物療法の一般的な目的は、気管支痙攣の予防と、気道炎症の表示である気道の反応性亢進または応答性亢進の制御とである。喘息発作を誘発するアレルゲン全てへの曝露を除去または予防することは非常に難しい。これらの発作を予防するために、大部分の喘息患者は、種々の薬剤で処置され、その多くが副作用を持つ。
Lukacs他(Lukacs et al, Am. J. Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2001)に報告された研究では、抗C5a抗体は、免疫複合体媒介肺炎症の誘導の間に、抗BSA抗体とともに気管内投与された。具体的には、Lukacsの研究は、メタコリンの静脈内チャレンジへの短期のAHRを持つ、皮膚の逆受身アルサス反応に類似する急性免疫複合体媒介組織肺炎症のモデルを用いる。動物は、本発明で実証されるように、アレルゲンへの曝露後に、好酸球増加症が特徴となる慢性気道炎症を生じず、既往の重篤度の喘息発作も経験しなかった。Lukacsの研究の鍵となる特徴は、抗BSA抗体を動物に気管内注入した後に、補体カスケードを活性化し、終末補体成分の量を有意に生成した、気道に沿った局所的なBSAおよび抗BSAの免疫複合体の形成であった。メタコリンへのAHRのその後の発生は、BSA−抗BSAが肺炎症を誘導した急性期の間4時間まで続き、これは、喘息に罹患している患者で見られる重篤度かつ長期に続くAHRとは有意に対照的である。Lukacsの研究にもとづいて、抗C5aは、気道で局所的に産生されるC5aを中和するため、C5aによって媒介される有害な下流事象(例えば、メディエーターの遊離および血管漏出症候群を促す炎症細胞の漸増および活性化)の発生を予防すると考えることが妥当である。動物がIVメタコリンでチャレンジされた際、炎症細胞のC5a媒介漸増、ヒスタミン等のメディエーターの遊離、および気道の浮腫の発生を阻止する組み合わせ効果は、気道抵抗の低減およびAHRの発生の予防に至る。この研究は、免疫複合体媒介肺炎症のAHRの発生でのC5aの重要性を示唆するだろう。しかし、この研究は、持続中の喘息発作またはアレルゲンに対する後期気道応答の間のC5阻害剤による気管支拡張の任意の直接的かつ即時の効果があるかを予測するための根拠を提供しない。また、この研究は、気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体の処置も含まない。
(要旨)
本開示は、1種類以上の補体成分に結合するか、またはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/もしくは活性を阻止するか、あるいは、例えば、C5a受容体等の補体成分受容体の結合を阻止する化合物を用いた喘息に対する処置に関する。処置療法は、少なくとも1種類の補体成分の生成および/または活性を阻害する化合物の投与を含む。適当な化合物としては、例えば、1種類以上の補体成分に結合するか、あるいはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/または活性を阻止する、例えば、補体成分C5に特異的な抗体等の抗体が挙げられる。
補体阻害抗体を既知の喘息個体(気道炎症を有する個体または既往の喘息症状を経験した被験体等の)に予防的に投与して、喘息発作を予防するか、または予防するのを助けることができる。静脈内、エアロゾル、皮下、または筋肉内経路を介して、この予防的療法を投与することができる。
補体阻害化合物を、喘息発作を経験する個体に治療措置として投与することができる。静脈内、エアロゾル、皮下、または筋肉内経路を介して、該措置を投与することができる。
例えば、ステロイド、抗IgE抗体、抗IL−4抗体、抗IL−5抗体、β2受容体アゴニスト、ロイコトリエン阻害剤、5リポキシゲナーゼ阻害剤、b2アドレナリン受容体アゴニスト、PDE阻害剤、IL5アンタゴニスト、CD23アンタゴニスト、IL13アンタゴニスト、サイトカイン遊離阻害剤、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、抗ヒスタミン、およびヒスタミン遊離阻害剤等の既知の喘息療法の措置と組み合わせて補体阻害化合物を含む多剤併用療法も用いることが可能である。上記に列挙した各クラスの適当な化合物と、他の喘息処置とについては、Asthma Therapeutic: New Treatment Options and Emerging Drug Discovery Tasrgerts, Barnes, April 2003, Lead Discovery, http://www.leaddiscovery.co.uk/target−discovery/abstracts/dossier−asthma.htmlに列挙される。
別の態様では、喘息患者の肺中の炎症を低減する方法を本明細書で開示する。該方法は、喘息に罹患しているか、または罹患しやすい被験体に、該被験体の気道中の炎症メディエーター(例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ9(mmp9、92kDaIV型コラゲナーゼ/ゼラチナーゼまたはゼラチナーゼBとしても知られる)、TGFβ、好酸性顆粒等の)の遊離または生成を低減する化合物を投与する工程を含む。該化合物は、細胞レベルで作用して、炎症メディエーターの生成または遊離を低減することができるか、炎症メディエーターの活性に干渉する(例えば、83kDa活性形態へのプロmmp−9の変換を予防することによって)ような様式で炎症メディエーターと相互作用するか、あるいは炎症メディエーターの活性形態と相互作用して、該炎症メディエーターに関連する炎症効果を予防することができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体において喘息を処置する方法であって、喘息に罹患しやすいか、または罹患している被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目2)
喘息発作を予防する方法であって、気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体に、抗C5抗体を予防的に投与することを包含する、方法。
(項目3)
喘息発作の重篤度を低減する方法であって、喘息発作を有する被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目4)
被験体において気道閉塞を低減する方法であって、該被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目5)
被験体において気流を増加する方法であって、該被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目6)
被験体において気管支痙攣を低減する方法であって、該被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目7)
被験体において慢性閉塞性肺疾患を処置する方法であって、慢性閉塞性肺疾患に罹患している前記被験体に抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目8)
被験体において炎症を低減する方法であって、気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体に、抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目9)
気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体を処置する方法であって、効果的な気管支拡張量の抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目10)
前記投与する工程が、喘息発作の間に前記抗C5抗体を投与することを包含する、項目8または9記載の方法。
(項目11)
前記被験体がヒトである、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記抗C5抗体を投与する工程が、C5aおよびC5bへの補体成分C5の変換を阻害する抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記抗C5抗体を投与する工程が、ヒト補体成分C5aに結合する抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目14)
ヒト補体成分C5b9に対する抗C5抗体を投与する工程を包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記抗C5抗体を投与する工程が、h5G1.1、h5G1.1−scFv、およびh5G1.1の機能的フラグメントからなる群から選択される抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記抗C5抗体を投与する工程が、ヒト補体成分C5のα鎖への特異的な結合を示し、かつ少なくとも1つの抗体抗原結合部位を含む抗体である抗C5抗体を投与することを含み、該抗体が、1)ヒト体液中の補体活性化を阻害し、かつ2)C5コンベルターゼへの精製ヒト補体成分C5の結合を阻害する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記抗C5抗体を投与する工程が、エアロゾルとして抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記抗C5抗体を投与する工程が、注射による静脈内注入および皮下注射からなる群から選択される方法を介して、抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記抗C5抗体を投与する工程が、ステロイド、抗IgE抗体、抗IL−4抗体、抗IL−5抗体、β2アドレナリン受容体アゴニスト、ロイコトリエン阻害剤、5リポキシゲナーゼ阻害剤、β2アドレナリン受容体アゴニスト、PDE阻害剤、CD23アンタゴニスト、IL13アンタゴニスト、サイトカイン遊離阻害剤、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、抗ヒスタミン、およびヒスタミン遊離阻害剤からなる群から選択されるメンバーと組み合わせて、抗C5抗体を投与することを包含する、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目20)
喘息を罹患しているか、または罹患しやすい被験体を処置するための方法であって、抗C5抗体と組み合わせて、ステロイド、抗IgE抗体、抗IL−4抗体、抗IL−5抗体、β2アドレナリン受容体アゴニスト、ロイコトリエン阻害剤、5リポキシゲナーゼ阻害剤、β2アドレナリン受容体アゴニスト、PDE阻害剤、CD23アンタゴニスト、IL13アンタゴニスト、サイトカイン遊離阻害剤、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、抗ヒスタミン、およびヒスタミン遊離阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のメンバーを投与することを包含する、方法。
(項目21)
喘息を処置する方法であって、被験体の肺に、該被験体において全身的補体活性を実質的に低減することなしに抗C5抗体を投与することを包含する、方法。
(項目22)
被験体において喘息を処置する方法であって、1種類以上の補体成分と結合する化合物、1種類以上の補体成分の生成を阻止する化合物、1種類以上の補体成分の活性を阻止する化合物、および補体成分受容体の結合を阻止する化合物からなる群から選択される化合物を該被験体に投与することを包含する、方法。
(項目23)
前記投与する工程が、抗C5a受容体抗体を投与することを包含する、項目22記載の方法。
(項目24)
被験体において炎症を低減する方法であって、1種類以上の補体成分と結合する化合物、1種類以上の補体成分の生成を阻止する化合物、1種類以上の補体成分の活性を阻止する化合物、および補体成分受容体の結合を阻止する化合物からなる群から選択される化合物を該被験体に投与することを包含する、方法。
(項目25)
前記投与する工程が、喘息発作の間に抗C5抗体を投与することを包含する、項目24記載の方法。
(項目26)
前記投与する工程が、抗C5a受容体抗体を投与することを包含する、項目24記載の方法。
(項目27)
気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体を処置する方法であって、1種類以上の補体成分と結合する化合物、1種類以上の補体成分の生成を阻止する化合物、1種類以上の補体成分の活性を阻止する化合物、および補体成分受容体の結合を阻止する化合物からなる群から選択される化合物を該被験体に投与することを包含する、方法。
(項目28)
前記投与する工程が、喘息発作の間に抗C5抗体を投与することを包含する、項目27記載の方法。
(項目29)
前記投与する工程が、抗C5a受容体抗体を投与することを包含する、項目27記載の方法。
(項目30)
前記化合物を投与する工程が、補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、第D因子、第B因子、第P因子、MBL、MASP−1、およびMASP−2からなる群から選択される化合物に向けられる1種類以上の抗体を投与することを包含する、項目22、24、または27のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記化合物を投与する工程が、可溶性CR1、可溶性LEX−CR1、可溶性MCP、可溶性DAF、可溶性CD59、第H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプリスタチン(complestatin)、およびK76 COOHからなる群から選択される1種類以上の化合物を投与することを包含する、項目22、24、または27のいずれかに記載の方法。
(項目32)
喘息発作を予防する方法であって、1種類以上の補体成分と結合する化合物、1種類以上の補体成分の生成を阻止する化合物、1種類以上の補体成分の活性を阻止する化合物、および補体成分受容体の結合を阻止する化合物からなる群から選択される化合物を、気道炎症を樹立した被験体または既往の喘息症状を経験した被験体に予防的に投与することを包含する、方法。
(項目33)
前記投与する工程が、抗C5a受容体抗体を投与することを包含する、項目32記載の方法。
(項目34)
喘息発作の重篤度を低減する方法であって、1種類以上の補体成分と結合する化合物、1種類以上の補体成分の生成を阻止する化合物、1種類以上の補体成分の活性を阻止する化合物、および補体成分受容体の結合を阻止する化合物からなる群から選択される化合物を、喘息発作に罹患している被験体に投与することを包含する、方法。
(項目35)
前記投与する工程が、抗C5a受容体抗体を投与することを包含する、項目34記載の方法。
(項目36)
喘息患者の肺において炎症を低減する方法であって、可溶性CR1、可溶性LEX−CR1、可溶性MCP、可溶性DAF、可溶性CD59、第H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプリスタチン(complestatin)、およびK76 COOHからなる群から選択される1種類以上の化合物と、補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、第D因子、第B因子、第P因子、MBL、MASP−1、およびMASP−2からなる群から選択される化合物に向けられる抗体とを、喘息に罹患しているか、または罹患しやすい被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目37)
投与される前記化合物が、前記被験体の気道中の1種類以上の炎症メディエーターの遊離または生成を低減する、項目36記載の方法。
(項目38)
前記投与する工程が、細胞レベルで作用して炎症メディエーターの生成または遊離を低減する化合物を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目39)
前記投与する工程が、前記炎症メディエーターの活性形態と相互作用して該炎症メディエーターに関連する炎症効果を予防することができる化合物を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目40)
前記化合物を投与する工程が、補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、第D因子、第B因子、第P因子、MBL、MASP−1、およびMASP−2からなる群から選択される化合物に向けられる1種類以上の抗体を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目41)
前記化合物を投与する工程が、CR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、第H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプリスタチン(complestatin)、およびK76 COOHからなる群から選択される1種類以上の化合物を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目42)
前記化合物を投与する工程が、ステロイド、抗IgE抗体、抗IL−4抗体、抗IL−5抗体、β2受容体アゴニスト、ロイコトリエン阻害剤、5リポキシゲナーゼ阻害剤、β2アドレナリン受容体アゴニスト、PDE阻害剤、CD23アンタゴニスト、IL13アンタゴニスト、サイトカイン遊離阻害剤、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、抗ヒスタミン、およびヒスタミン遊離阻害剤からなる群から選択されるメンバーと組み合わせて、前記化合物を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目43)
前記化合物を投与する工程が、抗C5抗体を投与することを包含する、項目36記載の方法。
(項目44)
前記投与する工程が、抗C5受容体抗体を投与することを包含する、項目34記載の方法。
図1は、正常BALB/cマウス中のOVA誘導喘息反応をグラフで示す。 図2aは、正常BALB/cマウス中の抗原チャレンジおよび予防的処置のスケジュールおよび性質を示す。 図2bは、正常BALB/cマウス中の抗原チャレンジおよび予防的処置のスケジュールを示す。 図3は、図2aおよび2bに示される処置の効果をグラフで概説する。 図4aは、喘息発作の間の正常BALB/cマウス中の抗原チャレンジおよびIVまたはエアロゾル処置のスケジュールおよび性質を示す。 図4bは、BALB/cマウス中の喘息発作の誘導のプロトコールおよび結果を示す。 図5aは、図4aに示されるエアロゾル処置の効果をグラフで概説する。 図5bは、図4aに示されるエアロゾル処置の効果をグラフで概説する。 図6aは、図4aに示される静脈内処置の効果をグラフで概説する。 図6bは、図4aに示される静脈内処置の効果をグラフで概説する。 図7は、図4aに示される処置に対するC5活性への種々の処置の全身的効果をグラフで示す。 図8は、BALでの全WBC数への種々の静脈内処置の効果をグラフで示す。 図9および10は、好酸球がBALでの最も多数を占める炎症細胞であると判明したことを示す。 図9および10は、好酸球がBALでの最も多数を占める炎症細胞であると判明したことを示す。 図11は、BALでのヒスタミンへの種々の静脈内処置の効果をグラフで示す。 図12は、BALでのMMP−9濃度への種々の静脈内処置の効果をグラフで示す。 図13は、BALでのTGFβの濃度への種々の静脈内処置の効果をグラフで示す。 図14は、喘息発作の間の正常BALB/cマウスの抗原チャレンジならびにカニューレ挿入およびエアロゾル処置のスケジュールおよび性質を示す。 図15は、抗C5、β2受容体アゴニスト、またはその組合せで喘息発作の間に処置された喘息マウスでの肺抵抗を示す。
(詳細な説明)
本開示は、ほ乳類の喘息を処置する方法に向けられる。具体的には、本明細書に記載される喘息を処置する方法は、1種類以上の補体成分に結合するか、あるいはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/または活性を阻止する化合物を用いることを含む。補体成分の生成の阻害または阻止は、喘息での気管支収縮応答に関与する複数の因子を阻害する。特に有用なそのような化合物の特定のクラスは、ヒト補体成分に特異的な抗体、特に抗C5抗体である。
補体系は、身体の免疫系と協調して作用し、細胞病原体およびウイルス病原体の侵入から防御する。少なくとも25種類の補体タンパク質があり、血漿タンパク質および膜補因子の複合集団として見出される。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を占める。補体成分は、一連の複雑であるが正確な酵素切断および膜結合事象で相互作用することによってそれらの免疫防御機能を達成する。その結果生じる補体カスケードは、オプソニン機能、免疫調節機能、および溶解機能を有する産物の生成に至る。補体活性化に関連する生物学的活性の簡潔な概要については、例えば、The Merck Manual, 16th Editionに提供される。
補体カスケードは、通常、古典的経路または代替経路を介して進行する。これらの経路は、多くの成分を共有しており、それらの初期の段階で異なる一方で、該経路は、相似しており、標的細胞の活性化および破壊を担う同じ「終末補体(terminal complement)」成分(C5からC9まで全て)を共有する。
古典的補体経路は、標的細胞上の抗原部位の抗体認識および抗体結合によって開始される。代替経路は、通常、抗体は関与せず、病原体表面上の特定の分子によって開始されうる。さらに、レクチン経路は、通常、高マンノース基質へのマンノース結合レクチン(MBL)の結合で開始される。これらの経路は、補体成分C3が活性プロテアーゼ(各経路で異なる)によって切断されて、C3aおよびC3bを産生する点で相似する。その後に、補体攻撃を活性化する他の経路は、補体機能の様々な態様に至る一連の事象で作用することができる。
C3aは、アナフィラトキシンである。C3bは、細菌細胞および他の細胞に結合するとともに、特定のウイルスおよび免疫複合体に結合し、循環からの除去のためにそれらを捕まえる(この役割でのC3bはオプソニンとして知られる)。C3bのオプソニン機能は、一般に、補体系の最も重要な抗感染作用であると考えられている。C3b機能を阻止する遺伝的病変を有する患者は、幅広い種類の病原生物による感染を被りやすく、一方で、補体カスケード順序の後期に病変を有する患者、すなわち、C5機能を阻止する病変を有する患者は、ナイセリア属(Neisseria)感染をより被りやすくなるに過ぎず、より後期では、若干より被りやすくなるに過ぎないことが判明している。
C3bは、各経路に固有の他の成分との複合体も形成し、C5をC5aおよびC5bに切断する古典的または代替C5コンベルターゼを形成する。したがって、C3は、代替経路および古典的経路両方に不可欠であるので、補体反応順序で中心的なタンパク質とみなされる。C3bのこの特性は、血清プロテアーゼ第I因子によって調節されており、該血清プロテアーゼ第I因子は、C3bに作用して、iC3bを生成する。オプソニンとして依然として機能できる一方で、iC3bは、活性C5コンベルターゼを形成できない。
C5は、約75μg/ml(0.4μM)での正常血清で見出される190kDaβ・グロブリンである。C5は、グリコシル化されており、その質量の約1.5〜3%が糖質に属する。成熟C5は、656アミノ酸75kDaβ鎖にジスルフィド結合する999アミノ酸115kDaα鎖のヘテロダイマーである。C5は、単一コピー遺伝子の一本鎖前駆体タンパク質産物として合成される(Haviland et al. J. Immunol. 1991,146:362−368)。この遺伝子の転写物のcDNA配列は、18アミノ酸リーダー配列を伴った1659個のアミノ酸の分泌プロC5前駆体を予測する(米国特許第6,355,245号を参照せよ)。
プロC5前駆体は、アミノ酸655および659の後で切断され、アミノ末端フラグメント(上記配列のアミノ酸残基+1〜655)としてβ鎖を、かつカルボキシル末端フラグメント(上記配列のアミノ酸残基660〜1658)としてα鎖を産生し、この2つ鎖間で4個のアミノ酸(上記配列のアミノ酸残基656〜659)が欠失されている。
C5aは、代替または古典的C5コンベルターゼによって、α鎖の最初の74個のアミノ酸を含むアミノ末端フラグメント(すなわち、上記配列のアミノ酸残基660〜733)としてC5のα鎖から切断される。C5aの11kDa質量の約20%は、糖質に属する。コンベルターゼ作用に対する切断部位は、上記配列のアミノ酸残基733にあるか、または該アミノ酸残基733のすぐ側に隣接する。この切断部位で結合するか、またはこの切断部位に隣接する化合物は、該切断部位へのC5コンベルターゼ酵素のアクセスを阻止することによって、補体阻害剤として作用する潜在能力を有する。
C5は、C5コンベルターゼ活性以外の手段によっても活性化されうる。限定トリプシン消化(Minta and Man, J. Immunol. 1977, 119:1597−1602; Wetsel and Kolb, J. Immunol. 1982,128:2209−2216)および酸処理(Yammamoto and Gewurz, J. Immunol. 1978, 120:2008; Damerau et al., Molec. Immunol. 1989, 26:1133−1142)もC5を切断し、活性C5bを生成することができる。
C5の切断は、強力なアナフィラトキシンおよび走化因子であるC5aを遊離し、溶解性終末補体複合体、すなわち、C5b−9の形成に至る。C5aおよびC5b−9も、加水分解酵素、反応性酸素種アラキドン酸代謝産物、および種々のサイトカイン等の下流炎症因子の遊離を増幅することによって、多面発現性細胞活性化特性を有する。
C5bは、C6、C7、およびC8と組み合わさって、標的細胞の表面でC5b−8複合体を形成する。複数のC9分子が結合すると、膜攻撃複合体(MAC、C5b−9、終末補体複合体TCC)が形成される。十分な数のMACが標的細胞膜中に挿入すると、該MACが形成する開口部(MAC孔)は、標的細胞の急速な浸透溶解を媒介する。MACのより低い非溶解性濃度は、他の効果を生じることができる。具体的には、内皮細胞および血小板への少数のC5b−9複合体の膜挿入は、有害な細胞活性化を引き起こすことができる。いくつかの場合で、活性化は細胞溶解より前に起こることがある。
上述のように、C3aおよびC5aは、アナフィラトキシンである。これらの活性化された補体成分は、マスト細胞脱顆粒を誘発することができ、それによって、好塩基球およびマスト細胞からヒスタミンが遊離され、炎症の他のメディエーターが遊離され、平滑筋収縮、血管透過性の増加、白血球活性化、および他の炎症現象(細胞過形成を生じる細胞増殖を含む)が生じる。C5aは、補体活性化部位へ炎症誘発顆粒球を誘引するために作用する走化性ペプチドとしても機能する。
C5a受容体は、気管支および肺胞上皮細胞ならびに気管支平滑筋細胞の表面上に見出される。C5a受容体は、好酸球、マスト細胞、単球、好中球、および活性化された白血球上でも見出された。したがって、補体成分の受容体の結合を阻止する化合物は、本明細書で有用である。
任意のヒト補体成分に結合するか、あるいはさもなければ該ヒト補体成分の生成および/または活性を阻止する、例えば、ヒト補体成分に特異的な抗体等の任意の化合物が本明細書で有用である。いくつかの化合物は、補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、第D因子、第B因子、第P因子、MBL、MASP−1、およびMASP−2に向けられる抗体を含むので、C5aに関連するアナフィラトキシン活性の生成を予防し、C5bに関連する膜攻撃複合体の集合を予防する。CR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、第H因子、コブラ毒因子、FUT−175、y結合タンパク質、コンプリスタチン(complestatin)、およびK76 COOH等の補体阻害化合物の天然発生形態または可溶性形態も本方法で有用である。
本明細書での使用に特に有用な化合物は、補体成分C5aおよびC5bへの補体成分C5の変換を直接的または間接的に低減する抗体である。有用な抗体の一クラスは、少なくとも1つの抗体抗原結合部位を有し、かつヒト補体成分C5への特異的結合を示すものであり、この際、該特異的結合は、ヒト補体成分C5のα鎖を標的にする。より詳細には、モノクローナル抗体(mAb)を用いることが可能である。そのような抗体は、1)ヒト体液中の補体活性化を阻害し、2)ヒト補体成分C3またはヒト補体成分C4への精製ヒト補体成分C5の結合を阻害し、かつ3)C5aに対するヒト補体活性化産物へ特異的に結合しない。特に有用な補体阻害剤は、C5aおよび/またはC5b−9の生成を約30%を越えて低減する化合物である。C5aの生成を阻止する望ましい能力を有する抗C5抗体は、遅くとも1982年以来、当該技術分野で公知である(Moongkarndi et al. Immunobiol. 1982, 162:397; Moongkarndi et al. Immunobiol. 1983, 165:323)。C5またはC5フラグメントに対して免疫反応性であることが当該技術分野で公知の抗体としては、C5β鎖に対する抗体(Moongkarndi et al. Immunobiol. 1982, 162:397; Moongkarndi et al. Immunobiol. 1983,165:323; Wurzner et al. 1991(上掲); Mollnes et al, Scand. J. Immunol. 1988, 28:307−312)、C5aに対する抗体(例えば、Ames et al. J. Immunol. 1994, 152:4572−4581、米国特許第4,686,100号、および欧州特許公開第0 411 306号を参照せよ)、および非ヒトC5に対する抗体(例えば、Giclas et al. J. Immunol. Meth. 1987, 105:201−209を参照せよ)が挙げられる。特に有用な抗C5抗体は、h5G1.1、h5G1.1−scFv、およびh5G1.1の機能的フラグメントである。h5G1.1、h5G1.1−scFv、およびh5G1.1の機能的フラグメントの調製方法については、米国特許第6,355,245号および“Inhibition of Complement Activity by Humanized Anti−C5 Antibody and Single Chain FV”, Thomas et al., Molecular Immunology, Vol. 33, No. 17/18, pages 1389−1401,1996(それらの開示全体を本明細書に援用する)に記載されている。
機能的には、適当な抗体は、C5の切断を阻害し、それによって、強力な炎症誘発分子C5aおよびC5b−9(終末補体複合体)の生成を阻止する。好ましくは、該抗体は、オプソニン作用および免疫複合体クリアランスの重要な免疫防御機能を助成するC3bの形成を予防しない。
これらの炎症誘発終末補体成分の生成を予防する一方で、C5での補体カスケードの抗体媒介阻害は、多くの病原微生物のオプソニン作用と、免疫複合体可溶化およびクリアランスとに重要なC3bを生成する能力を保存する。C3bを生成する能力を保有することは、感染への感受性の増加および免疫複合体のクリアランスの減衰が疾患過程の既存の臨床的特徴である炎症疾患に対する補体阻害での治療的因子として特に重要であると思われる。
抗ヒトC5抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体であるが、所望であれば、従来の技術によって生成およびスクリーニングされるポリクローナル抗体も用いることができる。
本開示にしたがって喘息を処置するために用いられる好ましい抗C5抗体は、C5またはそのフラグメント、例えば、C5aまたはC5bに結合する。好ましくは、抗C5抗体は、精製ヒト補体成分C5のα鎖上のエピトープに対して免疫反応性であり、C5コンベルターゼによるC5aおよびC5bへのC5の変換を阻止することが可能である。Wurzner, et al. Complement Inflamm 8:328−340, 1991に記載されている技術を用いて、この能力を測定することができる。
特に有用な実施形態では、抗C5抗体は、精製ヒト補体成分C5のβ鎖上のエピトープに対して免疫反応性ではないが、逆に該精製ヒト補体成分C5のα鎖内のエピトープに対しては免疫反応性である。この実施形態では、該抗体は、C5コンベルターゼによるC5aおよびC5bへのC5の変換を阻止することも可能である。α鎖内では、最も好ましい抗体は、アミノ末端領域に結合するが、該抗体は、遊離C5aには結合しない。
Sims他、米国特許第5,135,916号の教示にしたがって、補体成分C5に反応性があるモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを得ることができる。既知の方法にしたがって、免疫原として補体膜攻撃複合体の精製成分を用いて、抗体を調製する。この開示にしたがって、補体成分C5またはC5bを免疫原として好適に用いる。特に好ましい有用な実施形態にしたがって、免疫原は、C5のα鎖である。
特に有用な抗体は、前述のパラグラフに論じられる必要な機能的特性を共有し、以下の特性を有する。すなわち、
(1)該抗体は、C5の部分、すなわちC5α鎖への結合に競合することと、
(2)該抗体は、C5α鎖に特異的に結合することと(表面プラズモン共鳴法(Johne et al., J. Immunol. Meth. 1993, 160:191−198)を含む当該技術分野で公知の様々な方法によって、そのような特異的結合および結合への競合を測定することができる)と、
(3)該抗体は、C3またはC4(C5コンベルターゼの補体)へのC5の結合を阻止することとである。
別の態様では、喘息患者の肺中の炎症を低減する方法を提供する。該方法は、喘息に罹患しているか、または罹患しやすい被験体に、該被験体の気道中の炎症メディエーターの生成または遊離を低減する化合物を投与する工程を含む。この開示にしたがって低減されうる炎症メディエーターの非限定的な例としては、TGFβ、好酸性顆粒タンパク質、およびマトリックス・メタロプロテアーゼ9(mmp9、92kDaIV型コラゲナーゼ/ゼラチナーゼまたはゼラチナーゼBとしても知られる)が挙げられる。該化合物は、任意の種々の機構によって炎症を低減することができる。例えば、炎症メディエーターがMMP9である場合、該化合物は、細胞レベルで作用して、プロmmp−9の生成または遊離を低減することができるか、83kDa活性形態へのプロmmp−9の変換を予防するような様式でプロmmp−9と相互作用することができるか、またはmmp9の活性形態と相互作用して、該酵素に関連する炎症効果(例えば、TGF−βの生成等の)を予防することができる。適当な化合物としては、限定はされないが、1種類以上の補体成分に結合するか、またはさもなければ該1種類以上の補体成分の生成および/もしくは遊離および/または活性を阻止するか、あるいは補体成分の受容体の結合を阻止する上述の化合物が挙げられる。
当技術で認識される種々の手順にしたがって、MMP−9活性を検出することができる。例えば、定量的ザイモグラフィー法は、この酵素の活性の比較的に改良された評価を提供する。この方法は、MMP−9に対する天然の基質である変性コラーゲン、すなわちゼラチンを加水分解する酵素の能力にもとづいて、MMP−9活性の検出を可能にする。ゼラチンは、ポリアクリルアミド等のゲルに組み込まれる。Hibbs et al., J. Biol. Chem, 260:2493−2500 (1985)およびMoll et al., Cancer Res. 50:6162−70 (1990)を参照せよ。試験試料と平行して分析される精製MMP−9調製物を用いて、該アッセイを標準化することが可能である。当該技術分野で公知の方法によって、精製MMP−9を調製することができる。例えば、Okada et al.(上掲)およびMorodomi et al., Biochem J. 285:603:11 (1992)を参照せよ。ゼラチンの加水分解の程度は、試料中のMMP−9の活性に直接関連し、活性MMP−9形態を、それらの特徴的な分子量によって同定することができる。ゼラチン・ザイモグラフィーでは、電気泳動およびその後インキュベーションの間に生じる触媒作用活性化のためにプロMMP−9種を検出することができる。しかし、作業着手の前に存在するMMP−9形態は、この種の活性化を受けることができない、すなわち、該MMP−9形態は、潜伏性である。
標準的な免疫学的技術、例えば、ELISA、免疫蛍光アッセイ、またはラジオイムノアッセイを用いて、MMP−9活性を検出することもできる。好ましい実施形態では、MMP−9に特異的な抗体の使用を必要とするELISAを用いて、MMP−9活性を検出する。David他、米国特許第4,376,110号(およびその明細書に引用される参考文献)を参照せよ。MMP−9に特異的なモノクローナル抗体は、部分的に精製された酵素調製物を用いて調製されている。例えば、Moll et al.(上掲); Ramos−DeSimone et al., HYBRIDOMA 12(4):349−63 (1993)、およびGoldberg et al.を参照せよ。標準的な手順にしたがって、MMP−9に特異的なポリクローナル抗体を調製することもできる。好ましい実施形態では、巨大分子担体と結合させた非保存ペプチドを用いて、ポリクローナル抗体を調製する。MMPのメンバー間での金属結合ドメイン等の特異的な非保存ペプチドの選択は、当該技術分野の通常の技術レベル内にあると考えられる。WoessnerおよびGoldberg et al.(上掲)を参照せよ。ピコグラムまたはナノグラム量でMMP−9を検出することができる酵素アッセイについても、Manicourt et al., Anal. Biochem. 215(2):171−9 (1993)に開示されている。
さらに、ウエスタン・ブロット分析によって、MMP−9活性を試料中で検出することができ、該ウエスタン・ブロット分析は、ゲル中の試験材料の電気泳動分離後に、ニトロセルロース膜への分離タンパク質の転写と、特異的な抗体および抗原固定抗体に反応する試薬を用いたMMP−9抗原の検出とを必要とする。Towbin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76(9):4350−4354 (1979)を参照せよ。
mmp9の検出のための適当なアッセイは、様々なソース、例えば、Boehringer Manheim Biochemicals(Manheim, Germany)およびR&D Systems(Minneapolis, MN)等のソースから市販されている。
少なくとも1種類の補体成分の生成および/または活性を阻害する化合物を、種々の単位投与量形式で投与することができる。投与量は、使用する特定の化合物に応じて変わるだろう。例えば、異なる抗体は、異なる質量および/または親和性を有することが可能であるの、異なる投与量レベルを必要とする。Fab′フラグメントとして調製される抗体も、インタクトな免疫グロブリンよりかなり小さい質量であるため患者中の血液で同じモル濃度レベルに達するまでにより少ない投与量を必要するので、該抗体は、等価なインタクトな免疫グロブリンと比べて異なる投与量を必要とするだろう。
投与量は、投与様式、処置されている患者の特定の症状、患者の全体的な健康、状態、寸法、および年齢、ならびに処方する医師の判断に応じても変わるだろう。
少なくとも1種類の補体成分の生成および/または活性を阻害する化合物の投与は、一般に、注射による静脈内注入または皮下注射を介した適当な医薬担体とのエアロゾル形態であるだろう。所望であれば、他の投与経路を用いることが可能である。エアロゾル投与は、補体阻害化合物の全身的効果を避け、一方で、この開示にしたがって達成されるべき所望の喘息処置効果を提供するので、該エアロゾル投与が好ましい。
注射に適する配合物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985)に見出される。そのような配合物は、無菌かつ非発熱性でなければならず、一般に、食塩水、緩衝(例えば、リン酸緩衝)食塩水、ハンクス溶液、リンガー溶液、デキストロース/食塩水、グルコース溶液等の医薬的に効果的な担体を含むだろう。配合物は、必要に応じて、張性調整剤、湿潤剤、殺菌剤、防腐剤、安定剤等の医薬的に許容される補助物質を含有することが可能である。
(実施例1 喘息を処置するためのC5阻害に対する予防法としての抗C5抗体の使用)
図4bに示される投与量およびスケジュールにしたがって、正常BALB/cマウスを卵白アルブミン抗原(「OVA」)およびミョウバンに曝露することによって、該正常BALB/cマウス中で喘息を誘導した。これらの曝露は、発作の間の標準的な喘息応答を誘導した。曝露されたマウスは、早期反応および後期反応両方を示した。図1に見られるように、早期反応は、曝露後15分以内の特異的な気道抵抗であった。特異的な気道抵抗のより重篤度の後期反応は、曝露後約5時間目に生じた。呼吸気流計を装着した二重チャンバ・プレチスモグラフ(Buxo Corporationから市販)によって、特異的な気道抵抗を測定した。
補体成分阻害化合物の予防的利点を実証するために、図2aおよび2bに示される投与量のスケジュールにしたがって、マウスの群に3種類の異なる処置のうちの1種類を施した。40mg/kgの投与量での対照抗体(ハイブリドーマ135.8)で陽性対照群を処置した。40mg/kgの投与量での抗C5抗体BB5.1でマウスの第2の群を処置した。デキサメタゾン(「DEX」)でマウスの第3の群を処置した。図2aのスケジュールに示されるように、陰性対照群を最初にPBS(リン酸緩衝食塩水)およびミョウバンに曝露し、後にPBSを施した。この対照群は、ベースライン空気抵抗測定値を提供した。
公知の方法にしたがって、BB5.1抗体を作製した(Frei,Y., Lambris,J.D., Stockinger, B. Mol. Cell. Probes. 1: 141−149(1987)を参照せよ)。BB5.1抗体およびアイソタイプ適合対照135.8ハイブリドーマ抗体両方を無胸腺マウス中で腹水として増殖させ、プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィー後に、ImmunoPure IgG溶出緩衝液(Pierce)を用いた溶出およびPBS緩衝食塩水に対する透析をおこなうことによって、該抗体を腹水から精製した(Wang et al. 1996)。
図3に示すように、抗C5抗体で予防的に皮下処置した群は、ステロイド処置のチャレンジされたマウスおよび陰性対照と同様に応答することが判明した。抗C5処置は、カスケード中の補体成分C5の生成を阻害し、マウスが経験した気道収縮は、C5精製の阻害によって、有意に少なかった。対照抗体で処置された陽性対照は、喘息発作によって引き起こされる特異的な気道抵抗の増加を示した。
(実施例2 喘息を処置するための治療法としての静脈内投与を介した抗C5抗体の使用)
喘息発作の間にC5補体成分阻害剤を静脈内投与することの治療的利点を実証するために、図4aに示される投与量のスケジュールにしたがって、マウスの群に3種類の異なる処置のうちの1種類を施した。陽性対照群にOVAでチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、静脈内投与する対照抗体(135.8ハイブリドーマ)で処置した。マウスの第2の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目目に、抗C5抗体BB5.1で静脈内処置した。マウスの第3の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、DEXで静脈内処置した。偽手術されたマウスは、図4aに示されるスケジュールにしたがって、マウスの一群にリン酸緩衝食塩水(PBS)およびミョウバンを投与してPBSのエアロゾル投与量を投与することによって提供されるベースライン空気抵抗測定値を提供した。
このチャレンジの結果(図6aおよび6bに示される)によって、抗C5で治療的に静脈内処置されたマウスの群は、非常に少ない特異的な気道収縮を示し、これらのマウスは、ステロイド(DEX)で処置された群と同様に処置に応答したことが判明した。図6aに示されるように、対照抗体で処置された陽性対照群は、特異的な気道抵抗の有意な増加を示した。抗C5抗体は、補体成分の炎症反応を阻害し、マウスでの喘息発作の間により大きな空気の通路を可能にした。
(実施例3 喘息を処置するための治療法としてのエアロゾル投与を介した抗C5抗体の使用)
喘息発作の間にC5補体成分阻害剤をエアロゾルを介して投与することの治療的利点を実証するために、図4aに示される投与量のスケジュールにしたがって、マウスの群に3種類の異なる処置のうちの1種類を施した。陽性対照群にOVAでチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、エアロゾルによって投与する対照抗体(135.8ハイブリドーマ)で処置した。マウスの第2の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目目に、抗C5抗体BB5.1のエアロゾル投与を介して処置した。マウスの第3の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、DEXでエアロゾルによって処置した。図4aに示されるスケジュールにしたがって、マウスの一群にリン酸緩衝食塩水(PBS)およびミョウバンを投与して、PBSのエアロゾル投与量を投与することによって、ベースライン空気抵抗測定値を提供した。
喘息発作の間の抗C5抗体BB5.1でのマウスの治療的エアロゾル処置は、特異的な気道抵抗を有意に低下させ、これらのマウスは、ステロイド処置マウスと同様に、かつより迅速に応答したことが判明した。エアロゾル処置の結果を図5aおよび5bに示す。図5bに示されるように、対照抗体で処置された陽性対照群は、抗C5抗体で処置されたマウスよりも何倍も多く特異的な気道抵抗を経験した。
抗C5抗体BB5.1を、効果的な投与法であることが判明している噴霧を介しても試験動物に投与した。噴霧後の血清試験の結果は、BB5.1がC5部位に結合していたために、噴霧を介した送達の間もインタクトなままであったことを示す。
溶血活性に対するWurzner, et al., Complement Inflamm 8:328−340, 1991に記載される技術を用いて、実施例2および3で施した各処置の全身的効果を測定した。これらの試験の結果を図7に示す。図中で見られるように、対照抗体およびステロイドは、投与法に関係なく、全身的C5活性を実質的に低減しなかった。しかし、抗C5抗体BB5.1を用いた投与法は、全身的C5活性に直接的に影響を及ぼした。具体的には、エアロゾル投与および静脈内投与両方が、喘息発作の重篤度を低減する上で効果的であったが、エアロゾル投与は、全身的C5活性を実質的に低減することなしに、喘息発作の重篤度を低減した。図7に見られるように、抗C5抗体の静脈内投与は、全身的C5活性をほぼ80%低減した。
(実施例4 炎症メディエーターの存在を低減するための抗C5抗体の使用)
喘息発作の間に炎症メディエーターの存在を低減する上で、C5補体成分阻害剤を投与することの治療的利点を実証するために、図4aに示される投与量のスケジュールにしたがって、マウスの群に3種類の異なる処置のうちの1種類を施した。陽性対照群にOVAでチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、静脈内投与する対照抗体(135.8ハイブリドーマ)で処置した。マウスの第2の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目目に、抗C5抗体BB5.1で静脈内処置した。マウスの第3の群に同様にチャレンジし、初期喘息発作を誘発した後15分目に、DEXで静脈内処置した。偽手術されたマウスは、図4aに示されるスケジュールにしたがって、マウスの一群にリン酸緩衝食塩水(PBS)およびミョウバンを投与してPBSのエアロゾル投与量を投与することによって提供されるベースライン空気抵抗測定値を提供した。5時間後に、従来の技術を用いて、マウスを安楽死させ、肺を洗浄した。概して、PBI食塩水1ccを肺に導入して、回収した。このプロセスを3回繰り返した。該液体を回収して、遠心した。結果として生じるペレットに含有される細胞を検査した。ヒスタミン、IL−5、IL−4、IL−13、好酸性顆粒タンパク質、TGFβ、および/またはmmp−9の存在に関して上清を試験した。市販の試験キットを用いて、アッセイ全てをおこなった。結果を図8〜13に示す。これらの気管支肺胞洗浄(BAL)の結果は、肺組織自体中のそのような成分の存在よりもむしろ、肺構造細胞または炎症細胞によって生成または遊離されるタンパク質の存在または不在を示す。
抗C5抗体でのマウスの処置およびDEXでのマウスの処置両方は、全WBC数を低減することが判明した(図8を参照せよ)。好酸球は、BALでの最も多数を占める炎症細胞であることが判明した(図9A〜9Dおよび図10を参照せよ)。
図11は、抗C5抗体がヒスタミン濃度にほとんど効果を及ぼさないこと、すなわち、ステロイドDEXを用いて得られた結果と同様の結果を示す。しかし、図12に示されるように、抗C5抗体は、ステロイドでの処置と比べて、BALで検出されるmmp−9の濃度を有意に低減した。したがって、抗C5抗体およびDEX両方がより低い検出可能な量のTGF−βを生じた(図13を参照せよ)一方で、抗C5抗体のみが、mmp−9の生成または遊離の低減を含む機構を介して、より低い検出可能な量のTGF−βを生じた。
(実施例5 気管支拡張薬としての抗C5抗体の使用)
喘息発作の間にC5補体成分阻害剤を投与すること(単独で、またはβ2アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて)の直接的かつ即時の気管支拡張効果を実証するために、図14および15に示される投与量のスケジュールにしたがって、マウスの群に抗原でチャレンジして、4種類の異なる処置のうちの1種類を施した。陽性対照群にOVAでチャレンジし、第2の喘息発作を誘発した後に、カニューレ挿入し、エアロゾルを介して投与する対照抗体(マウスIgG1)で処置した。マウスの第2の群に同様にチャレンジし、第2の喘息発作を誘発した後に、抗C5抗体BB5.1で処置した。マウスの第3の群に同様にチャレンジし、第2の喘息発作を誘発した後に、サルブタモール(Sigmaから市販されるβ2アドレナリン受容体アゴニスト)で処置した。マウスの第4の群に同様にチャレンジし、第2の喘息発作を誘発した後に、抗C5抗体とサルブタモールとの組合せで処置した。偽手術されたマウスは、図14および15に示されるスケジュールにしたがって、マウスの一群にリン酸緩衝食塩水(PBS)およびミョウバンを投与してPBSのエアロゾル投与量を投与することによって提供されるベースライン空気抵抗測定値を提供した。
その後、侵襲的方法によって、気道応答性を気道機能の変化として評価し、この際、Buxco Biosystemソフトウェアおよび全身プレチスモグラフを用いることによって、肺抵抗の変化を測定した。マウスに、i.p.注射によってアベルチン(160mg/kg)で麻酔をかけ、Harvard Apparatus Inspira換気装置によって換気した。気管カニューレ後に、パンクロニウム(0.3mg/kg)を腹腔内注入して、麻痺を誘導し、自発呼吸を阻害した。マウスは、体重のプログラムによって一回呼吸気量および呼吸数に設定した換気装置によって呼吸し続けた。5%OVA誘発後5時間目に、特異的な抗原に対するRLの測定をおこなった。図15に報告される結果は、抗C5抗体での処置が4匹のマウスのうち3匹で有意な気管支拡張効果を及ぼしたことと、β2アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせた抗C5抗体の処置から相乗効果が観察されることとを示す。
本発明の好ましい実施形態および他の実施形態を本明細書に記載してきたが、更なる実施形態は、本発明の範囲から逸脱せずに、当業者によって認識されうる。

Claims (1)

  1. 明細書中に記載の発明。
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