以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、ポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物のコアにて形成されるものである。具体的には、前記コアは、次の(a)〜(c)成分、
(a)下記のように定義される応力緩和時間(T80)が3.5以下のポリブタジエン(以下、「BR1」と略記することがある。)が含まれる基材ゴム、
(b)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物
を配合したゴム組成物の加熱成形物にて形成される。
[応力緩和時間(T80)]
ML1+4(100℃)値(ASTM D−1646−96に準じて測定される、100℃におけるムーニー粘度測定値)測定直後にローター回転を停止させてからML1+4の値が80%低下するまでに要する時間(秒)。
なお、本発明にいうムーニー粘度とは、回転可塑度計の一種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。Mはムーニー粘度、Lは大ローター(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定した値であることを意味する。
本発明において、前記(a)成分に含まれるポリブタジエンには、応力緩和時間(T80)が3.5以下のポリブタジエン(BR1)が含まれるが、T80値として好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下、特に2.5以下が好ましく、下限としては1以上、好ましくは1.5以上である。T80値が3.5を超えると本発明の目的が達成されない。一方、T80値が小さすぎると作業性に問題が発生する場合がある。
前記BR1のムーニー粘度(ML1+4(100℃))としては20以上80以下が好ましいが、特に限定するものではない。
また、前記BR1のシス1,4結合含有率としては60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であり、1,2ビニル結合含有率としては2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.3%以下であることが推奨される。シス1,4結合含有率や1,2ビニル結合含有率が前記範囲を逸脱すると、反発性が低下する場合がある。
本発明における前記BR1としては、希土類元素系触媒を用いて形成されたポリブタジエンであることが、反発性の観点から好適である。
ここで、希土類元素系触媒としては公知のものを使用することができ、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基の組合せよりなる触媒を使用することができる。
前記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR1R2R3(ここで、R1、R2及びR3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示されるものを用いることができる。
前記アルモキサンとしては、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23, (9), 5 (1994)、J. Am. Chem. Soc., 115, 4971 (1993)、J. Am. Chem. Soc., 117, 6465 (1995) で示されるアルモキサンの会合体を用いてもよい。
(式中、R
4は、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、nは2以上の整数である。)
前記ハロゲン含有化合物としては、AlXnR3-n(ここで、Xはハロゲンを示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3を示す)で示されるアルミニウムハライド、Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3等のストロンチウムハライド、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタン等の金属ハライドなどが用いられる。
前記ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコール等を挙げることができる。
なお、本発明においては特にランタン系列希土類元素化合物の使用、中でもネオジウム化合物を用いたネオジウム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得る観点から好ましく、これら希土類元素系触媒の具体例としては、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
ここで、希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合には溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよい。重合温度は好ましくは−30℃〜150℃、より好ましくは10〜100℃とすることができる。
また、本発明における前記BR1については、前記の希土類元素系触媒による重合に引き続いてポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させて、末端変性ポリブタジエンとして得られるものであることが、安定した品質のゴルフボールを製造する観点から好適である。
末端変性剤としては公知のものを使用することができるが、例えば、下記(1)〜(6)に記載した化合物等を使用することができる。
(1)R5 nM’X4-n、M’X4、M’X3、R5 nM’(−R6−COOR7)4-n又はR5 nM’(−R6−COR7)4-n(式中、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数を示す。)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物)
(2)分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)を含有するヘテロクムレン化合物
(3)分子中に下記結合を含有するヘテロ3員環化合物
(式中、Yは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)
(4)ハロゲン化イソシアノ化合物
(5)R8−(COOH)m、R9(COX)m、R10−(COO−R11)、R12−OCOO−R13、R14−(COOCO−R15)m、又は下記式で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物
(式中、R
8〜R
16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1〜5の整数を示す。)
(6)R17 lM”(OCOR18)4-l、R19 lM”(OCO−R20−COOR21)4-l、又は下記式で示されるカルボン酸の金属塩
(式中、R
17〜R
23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M”はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、lは0〜3の整数を示す。)
以上の(1)〜(6)に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法については、例えば特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報等に記載されているもの及び方法を挙げることができる。
本発明において前記BR1は、前記基材ゴム中に含まれるものであるが、同BR1が前記基材ゴム中に占める割合としては、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、100質量%であってもよい。当該割合が小さすぎると反発性が低下する場合がある。
なお、前記BR1以外に前記基材ゴム中に配合してもよいゴム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば応力緩和時間T80が3.5を超えるポリブタジエンゴムを配合してもよいし、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
ここで、このような配合用ゴムのムーニー粘度としては、好ましくは80以下20以上であるが、特に限定するものではない。
また、このような配合用ゴムについては、VIII族触媒で合成されたものを用いることができる。VIII族触媒として具体的には、下記のニッケル系触媒、コバルト系触媒を挙げることができる。
即ち、ニッケル系触媒としては、例えば、ニッケルケイソウ土のような1成分系、ラネーニッケル/四塩化チタンのような2成分系、ニッケル化合物/有機金属/三フッ化ホウ素エーテラートのような3成分系のもの等を挙げることができる。なお、ニッケル化合物としては、担体付還元ニッケル、ラネーニッケル、酸化ニッケル、カルボン酸ニッケル、有機ニッケル錯塩等が用いられる。また、有機金属としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,4−ジリチウムブタン等のアルキルリチウム、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等のジアルキル亜鉛等を挙げることができる。
また、コバルト系触媒としては、コバルト及びその化合物として、ラネーコバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、リン酸コバルト、フタル酸コバルト、コバルトカルボニル、コバルトアセチルアセトネート、コバルトジエチルジチオカルバメート、コバルトアニリニウムナイトライト、コバルトジニトロシルクロリド等を挙げることができ、特にこれらの化合物とジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド等のジアルキルアルミニウムモノクロリド、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルミニウムアルキルセスキクロリド、塩化アルミニウム等との組み合わせを好適に挙げることができる。
前記VIII族系触媒、特にニッケル系触媒又はコバルト系触媒を用いて重合する場合は、通常、溶剤、ブタジエンモノマーと併せて連続的に反応機にチャージさせ、例えば、反応温度を5〜60℃、反応圧力を大気圧から70数気圧の範囲で適宜選択して、前記ムーニー粘度のものが得られるように操作する方法を挙げることができる。
前記(b)成分として、不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸を好適に用いることができる。また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩等を挙げることができ、特にアクリル酸亜鉛を好適に用いることができる。
前記(b)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、上限として、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下であることが推奨される。(b)成分の配合量が多すぎるとゴム組成物の加熱成形物が硬くなって耐え難い打感となる場合があり、少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
前記(c)成分としては、市販品を用いることができ、例えばパークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサC(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を使用可能である。必要に応じて2種以上の異なる有機過酸化物を混合して用いてもよい。
前記(c)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下であることが推奨される。配合量が多すぎたり少なすぎたりすると、好適な硬度分布、すなわち打感、耐久性及び反発性に劣る場合がある。
本発明におけるゴム組成物には、更に反発性を向上させる観点から、次の(d)成分、
(d)有機硫黄化合物
を配合することが好適である。
このような有機硫黄化合物としては、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができ、更に具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
前記(d)成分の配合量としては、前記基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下であることが推奨される。配合量が多すぎるとゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
本発明におけるゴム組成物には、更に無機充填剤や老化防止剤といった添加剤を配合することができる。無機充填剤としては、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合量は、前記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、最も好ましくは13質量部以上、上限として、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下であることが推奨される。配合量が多すぎたり少なすぎたりすると、適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
なお、反発性を上げるという点から無機充填剤中に酸化亜鉛が50質量%以上含有されているものが好ましく、更に好ましくは75質量%以上含有されているもの、特に100質量%(無機充填剤として酸化亜鉛が100%)であるものが好ましい。
また、酸化亜鉛の平均粒径(空気透過法による)は、好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、特に0.1μm以上、上限として好ましくは2μm以下、更に1μm以下が好ましく用いられる。
また、老化防止剤としては市販品として2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(ノクラックNS−6、大内新興化学工業社製)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(ノクラックNS−5、大内新興化学工業社製)等が挙げられる。その配合量は、前記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、最も好ましくは0.2質量部以上、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とすることが、好適な反発性、耐久性を得る観点から推奨される。
本発明におけるコアは、上述したゴム組成物を、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって得ることができる。加硫条件としては、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施する条件が挙げられる。
なお、本発明におけるコア(加硫成形物)について、加熱成形物表面のJIS−C硬度から加熱成形物中心のJIS−C硬度を引いた硬度差としては、好ましくは15以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは17以上、最も好ましくは18以上であり、上限として、好ましくは50以下、より好ましくは40以下であることが推奨される。このように硬度を調整することが、軟らかい打感と良好な反発性、耐久性を兼ね備えたゴルフボールを実現する観点から好適である。
また、本発明におけるコア(加熱成形物)は、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時のたわみ量が、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは2.8mm以上、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下、最も好ましくは4.5mm以下であることが推奨される。変形量が少なすぎると打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、一方、軟らかすぎると打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
また、マルチピースソリッドゴルフボールのソリッドコアの直径としては、好ましくは30.0mm以上、より好ましくは32.0mm以上、更に好ましくは34.0mm以上、最も好ましくは35.0mm以上、上限として、好ましくは40.0mm以下、より好ましくは39.5mm以下、更に好ましくは39.0mm以下とすることが推奨される。
前記コアの比重としては、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
本発明のゴルフボールは、内層カバーと外層カバーとを具備してなる2層以上のカバーが形成されたマルチピースソリッドゴルフボールである。本発明では、内層カバーについては、
(A−I)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩 100〜30質量%、及び(A−II)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩 0〜70質量%のベース樹脂100質量部に対して、
(B)分子量280〜1,500の脂肪酸又はその誘導体 5〜170質量部、
(C)上記(A)、(B)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物 0.1〜10質量部
を混合した樹脂組成物を主材として形成されるものである。以下、この樹脂混合物について説明する。
(A−I)成分を構成するオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩の重量平均分子量(Mw)については、好ましくは100,000以上、より好ましくは110,000以上、さらに好ましくは120,000以上であり、上限として、好ましくは200,000以下、より好ましくは190,000以下、さらに好ましくは170,000以下である。また、上記共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限値として、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下である。
この場合、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミェションクロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算にて算出されるものである。GPC分子量測定に関して述べると、2元共重合体及び3元共重合体は、分子中の不飽和カルボン酸基により、その分子がGPCのカラムに吸着されるため、そのままではGPC測定ができない。通常、不飽和カルボン酸基をエステル化後にGPC測定を行い、ポリスチレン換算した平均分子量Mw及びMnを算出する。
上記(A−I)成分及び(A−II)成分はオレフィンを含む共重合体であり、これらのオレフィンとして、例えば、炭素数2以上、上限として8以下、特に6以下のものを挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。
また、(A−I)成分及び(A−II)成分中の不飽和カルボン酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
更に、(A−I)成分中の不飽和カルボン酸エステルとして、例えば、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル等が挙げられ、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)が好ましい。
(A−I)成分のランダム共重合体は、上記成分を公知の方法に従ってランダム共重合させることにより得ることができる。ここで、ランダム共重合体中に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、通常2質量%以上、好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、上限としては25質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少ないと反発性が低下する可能性があり、多いと材料の加工性が低下する可能性がある。
(A−I)成分の共重合体がベース樹脂全体に占める割合は100〜30質量%であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限値として、好ましくは92質量%以下、より好ましくは89質量%以下、さらに好ましくは86質量%以下である。
(A−I),(A−II)成分の共重合体の金属塩は、上述した(A−I),(A−II)成分のランダム共重合体中の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。
ここで、酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられるが、好ましくはNa+、Li+、Zn++、Mg++、Ca++等が好適に用いられ、更に好ましくはZn++、Mg++であることが推奨される。
また、(A−I),(A−II)成分において金属中和物を使用する場合、即ち、アイオノマーを使用する場合には、その金属中和物の種類や中和度については特に制限はない。その一例として具体的には、60モル%Zn(亜鉛中和度)のエチレン−アクリル酸共重合体、40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−アクリル酸共重合体、及び40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−メタクリル酸−イソブチレンアクリレート三元共重合体、60モル%Zn(亜鉛中和度)のエチレン−メタクリル酸−イソブチレンアクリレート三元共重合体等が挙げられる。
(A−I)成分を構成するオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体として具体的には、商品名「ニュクレルAN4318」、「同AN4319」、「同AN4311」「同N035C」、「同N0200H」(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。また、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属塩として具体的には、商品名「ハイミランAM7316」、「同AM7331」、「同1855」、「同1856」(三井・デュポンポリケミカル社製)や商品名「サーリン6320」、「同8120」(米国デュポン社製)等が挙げられる。
また、(A−II)成分を構成するオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩の重量平均分子量(Mw)については、好ましくは150,000以上、より好ましくは160,000以上、さらに好ましくは170,000以上であり、上限値としては、好ましくは200,000以下、より好ましくは190,000以下、さらに好ましくは180,000以下である。また、上記共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限値として、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下である。
(A−II)成分の共重合体がベース樹脂全体に占める割合は0〜70質量%であり、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは11質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上であり、上限値として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
(A−II)成分を構成するオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の具体例としては、商品名「ニュクレル1560」、「同1525」、「同1035」(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属塩として、具体的には、商品名「ハイミラン1605」、「同1601」、「同1557」、「同1705」、「同1706」(三井・デュポンポリケミカル社製)や商品名「サーリン7930」、「同7920」(米国デュポン社製)、更には、商品名「エスコール5100」、「エスコール5200」(ExxonMobil Chemical社製)等が挙げられる。
さらに、良好な反発性を得るために、上記(A−I),(A−II)成分に以下の(B),(C)成分を加熱混合することで中和度を向上させた高中和アイオノマーを使用することができる。
本発明では、上記の高中和なアイオノマー樹脂組成物において、(A−I)及び(A−II)成分から成る上記ベース樹脂100質量部に対して、
(B)分子量280〜1,500の脂肪酸又はその誘導体 5〜170質量部、
(C)上記(A)、(B)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物 0.1〜10質量部
を混合する。
(B)成分は、分子量280以上1,500以下の脂肪酸又はその誘導体であり、加熱混合物の流動性の向上に寄与する成分で、上記(A)成分と比較して分子量が極めて小さく、混合物の溶融粘度の著しい減少に寄与するものである。また、(B)成分中の脂肪酸(誘導体)は、分子量が280以上1,500以下で高含量の酸基(誘導体)を含むため、添加による反発性の損失が少ないものである。
(B)成分の脂肪酸又はその誘導体は、アルキル基中に二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪酸(誘導体)であっても、アルキル基中の結合が単結合のみにより構成される飽和脂肪酸(誘導体)であってもよいが、1分子中の炭素数は、通常18以上、上限として80以下、特に40以下であることが推奨される。炭素数が少ないと、耐熱性が劣り、酸基の含量が多すぎてベース樹脂中に含まれる酸基との相互作用により所望の流動性が得られなくなり、炭素数が多い場合には、分子量が大きくなるため流動性が低下する場合があり、材料として使用困難になるおそれがある。
(B)成分の脂肪酸として、具体的には、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、べヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、特に、ステアリン酸、アラキジン酸、べヘニン酸、リグノセリン酸、オレイン酸を好適に用いることができる。
また、(B)成分の脂肪酸誘導体は、脂肪酸の酸基に含まれるプロトンを置換したものが挙げられ、このような脂肪酸誘導体としては、金属イオンにより置換した金属せっけんが例示できる。金属せっけんに用いられる金属イオンとしては、例えば、Li+、Ca++、Mg++、Zn++、Mn++、Al+++、Ni++、Fe++、Fe+++、Cu++、Sn++、Pb++、Co++等が挙げられ、特にCa++、Mg++、Zn++が好ましい。
(B)成分の脂肪酸誘導体として、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等が挙げられ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛を好適に使用することができる。
本発明の(B)成分は、上記ベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは80質量部以上であり、上限として170質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは110質量部以下である。
なお、上述した(A)成分の使用に際し、公知の金属せっけん変性アイオノマー(USP5312857,USP5306760,WO98/46671公報等)を使用することもできる。
(C)成分は、上記(A),(B)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物である。従来例でも挙げたように、(A),(B)成分のみ、特に金属変性アイオノマー樹脂のみ(例えば、上記特許公報に記載された金属せっけん変性アイオノマー樹脂のみ)を加熱混合すると、下記に示すように金属せっけんとアイオノマーに含まれる未中和の酸基との交換反応により脂肪酸が発生する。この発生した脂肪酸は熱的安定性が低く、成形時に容易に気化するため、成形不良の原因となるばかりでなく、発生した脂肪酸が成形物の表面に付着した場合、塗膜密着性が著しく低下する原因になる。(C)成分は、このような問題を解決するために配合する。
本発明で使用する加熱混合物は、上述したように(C)成分として、上記(A),(B)成分中に含まれる酸基を中和する塩基性無機金属化合物を必須成分として配合する。(C)成分の配合で、上記(A),(B)成分中の酸基が中和され、これら各成分配合による相乗効果により、加熱混合物の熱安定性が高まると同時に、良好な成形性が付与され、ゴルフボールとしての反発性に寄与する。
本発明の(C)成分は、上記(A),(B)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物であり、好ましくは一酸化物又は水酸化物であることが推奨され、アイオノマー樹脂との反応性が高く、反応副生成物に有機物を含まないため、熱安定性を損なうことなく、加熱混合物の中和度を上げることができるものである。
ここで、塩基性無機金属化合物に使われる金属イオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、Ca++、Mg++、Zn++、Al+++、Ni+、Fe++、Fe+++、Cu++、Mn++、Sn++、Pb++、Co++等が挙げられ、無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む塩基性無機充填剤、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、上述したように一酸化物又は水酸化物が好適であり、好ましくはアイオノマー樹脂との反応性の高い酸化マグネシウムや水酸化カルシウムを好適に使用できる。
上記(C)塩基性無機金属化合物は、上記(A),(B)成分中の酸基を中和するための成分であり、その配合量を上記(A),(B)成分中の酸基に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、最も好ましくは70モル%以上であり、上限値としては、好ましくは130モル%以下、より好ましくは110モル%以下、さらに好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下、最も好ましくは85モル%以下である。この場合、(C)成分である塩基性無機金属化合物については、所望の中和度を得るためにその配合量を適宜選定することができる。また、本発明の(C)成分の配合量は、質量ベースで表現すれば、上記ベース樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上、最も好ましくは1質量部以上であり、上限として、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
上記樹脂組成物のメルトフローレート(JIS−K6760(試験温度190℃、試験荷重21N(2.16kgf)にて測定))については、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは2g/10min以上、さらに好ましくは3g/10min以上であり、上限値して、好ましくは30g/10min以下、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下、最も好ましくは10g/10min以下である。この樹脂混合物のメルトインデックスが少ないと加工性が著しく低下してしまう。
上記の樹脂混合物の製造方法としては、特に制限はないが、(A−I),(A−II)成分中としてのアイオノマーまたは未中和のポリマーと(B)成分と(C)成分とを一緒にホッパーに投入し、所望の条件で押出す方法を採用することができ、また、(B)については、別のフィーダーから投入しても良い。この場合、上記の(C)成分である金属カチオン源による(A−I),(A−II)及び(B)成分中のカルボン酸への中和反応を各種の押出機によって行うことができる。その押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらでも良く、2軸押出機がより好ましい。また、これら押出機の連結型でも良く、例えば、単軸押出機−2軸押出機、2軸押出機−2軸押出機等の連結タイプが挙げられる。これらの装置の構成は特別なものではなく、既存の押出機で十分である。
次に、外層カバーの材料については、特に制限はなく、公知のカバー材を使用して製造することができ、主材として、具体的には、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂、比較的中和度を高くしたアイオノマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー又はこれらの混合物等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、特に、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、アイオノマー樹脂、比較的中和度を高くしたアイオノマー樹脂を好適に挙げることができる。
上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298,同T7295,同T7890,同TR3080,同T8290,同T8295,同T1188(DIC・バイエルポリマー社製)等のジイソシアネートが脂肪族又は芳香族であるもの等が挙げられる。また、アイオノマー樹脂の市販品としては、サーリン6320,同8945,同9945,同8120(米国デュポン社製)、ハイミラン1706,同1605,同1855,同1557,同1601,同AM7316(三井・デュポンポリケミカル社製)等を例示できる。
更に、上記カバーの主材に対しては、任意成分として、上記以外の熱可塑性エラストマー等のポリマーを配合することができる。任意成分のポリマーとして、具体的には、ポリアミド系エラストマー、スチレン系ブロックエラストマー、水添ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体等を配合し得る。
なお、本発明のゴルフボールは、公知の方法で製造することができ、特に制限されるものではないが、上記ソリッドコアを所定の成形用金型内に配備し、上記中間層材、カバー材の順に所定の方法に従って射出したり、これらカバー材で一対のハーフカップを作り、上記ソリッドコアを被包して加圧圧縮する方法等を好適に採用できる。
本発明のゴルフボールは、上記外層カバーの硬度が、内層カバーのショアD硬度より低いことが必要である。
ここで、内層カバーのショアD硬度は、50以上、好ましくは51以上、更に好ましくは52以上、最も好ましくは53以上、上限として80以下、好ましくは75以下、更に好ましくは70以下、最も好ましくは65以下であることが推奨される。
また、外層カバーのショアD硬度は、35以上、好ましくは40以上、更に好ましくは45以上、最も好ましくは48以上、上限として60以下、好ましくは58以下、更に好ましくは56以下、最も好ましくは54以下であることが推奨される。
本発明において、上記外層カバー及び内層カバーのショアD硬度は、外層カバーが内層カバーのショアD硬度より低いことが必要であり、外層カバーの硬度と内層カバーの硬度のショアD硬度差は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは7以上、特に好ましくは9以上、上限として、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下であることが推奨される。
なお、本発明の内層カバー及び外層カバーの厚さは、それぞれ好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上、上限として、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、最も好ましくは1.8mm以下であることが推奨される。
本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。直径の上限として好ましくは44.0mm以下、更に好ましくは43.5mm以下、最も好ましくは43.0mm以下、重量の下限として好ましくは44.5g以上、特に好ましくは45.0g以上、更に好ましくは45.1g以上、最も好ましくは45.2g以上であることが推奨される。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〜3、比較例1〜6〕
下記表1に示す配合にて各原料をニーダーにて混練してゴム組成物を調製し、球状金型内で160℃×20分間の加硫を行なうことにより、直径36.4mm、重量29gのコア(球状成形物)を作製した。
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「EC140」(ファイアストンポリマー社製)Nd系触媒により重合/ムーニー粘度「43」/T80値:2.3
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR51」(JSR社製)Nd系触媒により重合/ムーニー粘度「39」/T80値:5.0
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR60」(POLIMERI Srl社製)Nd系触媒により重合/ムーニー粘度「57」/T80値:4.6
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR11」(JSR社製)Ni系触媒により重合/ムーニー粘度「44」/T80値:4.9
・有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド 商品名「パークミルD」(日本油脂社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学社製)、平均粒径0.6μm(空気透過法)
・老化防止剤:商品名「ノクラックNS−30」(大内新興化学工業社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN−DA85S」(日本触媒社製)
得られたコアに対し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時のたわみ量を調べた。結果を表3に示す。
次に、得られたコアを所定の金型内に配備し、表2で示す樹脂(A,B,C,X,Y,Z)を射出成形し、直径約39.7mmの内層被覆コアを製造した後、所定の金型に移して表2で示す樹脂(D,E,F)を射出成形し、直径約42.7mm、重量約45.3gのスリーピースソリッドゴルフボールを製造した。なお、主な商品名は以下の通りである。
ハイミラン:三井・デュポンポリケミカル株式会社製、アイオノマー樹脂
サーリン:デュポン社製、アイオノマー樹脂
ダイナロン:JSR社製、ブロックコポリマー、ブタジエン−スチレン共重合体水素添加物
パンデックス:DIC・バイエルポリマー社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
得られたゴルフボールに対して、性能を下記の通り調べた。結果を表3に示す。
材料物性
内層、外層カバーのショアD硬度は、ASTM D2240試験法により硬度計測した材料表面硬度を示す。
ゴルフボール物性
打撃マシンにて、ドライバー(W#1)にて、ヘッドスピード50m/sで打撃したときのキャリー、トータルを測定した。
フィーリング
プロ、トップアマ各5人のゴルファーによる1番ウッド(ドライバー)及びパターでの実打テストにより、「硬すぎる/良好/軟らか過ぎる」の3段階で評価し、最も多かった評価を各ボールの評価とした。
アプローチスピン
スイングロボットを用い、ゴルフボールをサンドウエッジ(SW)によりヘッドスピード(HS)20m/sで打撃した場合におけるスピン量を測定した。
表3に示されるように、比較例1〜6のゴルフボールは、実施例と比較して十分な飛距離が得られず、また打感が劣ることがわかる。