JP2010213628A - ポリ−ガンマ−グルタミン酸の調整方法 - Google Patents

ポリ−ガンマ−グルタミン酸の調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法及び/又はポリ−ガンマ−グルタミン酸のL‐体比率調整方法の提供。
【解決手段】微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する方法において、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法及び/又はポリ−ガンマ−グルタミン酸のL‐体比率調整方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、pgsBCA遺伝子が発現してなる微生物によるポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法及びL‐体比率調整方法に関する。
ポリ−ガンマ−グルタミン酸は、グルタミン酸のγ−位のカルボシキル基とα−位のアミノ基がペプチド結合によって結合した高分子化合物である。また、ポリ−ガンマ−グルタミン酸はγ−ポリグルタミン酸と呼称される場合もある。ポリ−ガンマ−グルタミン酸は、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)が産生する粘性物質として知られており、種々の性質から近年新たな高分子素材として注目されている。以下の説明においてポリ−ガンマ−グルタミン酸をPGAと略称する。
PGAを生産する微生物としては、納豆菌を含む一部のBacillus属細菌とその近縁種(Bacillus subtilis var.chungkookjangBacillus licheniformisBacillus megateriumBacillus anthracisBacillus halodurans)や、Natrialba aegyptiacaHydra等を挙げることができる(非特許文献1参照)。上記微生物の中でPGA生産性を有する納豆菌は分類学上はPGA非生産性である枯草菌の亜種とされるが、納豆菌を含む多くのBacillus属細菌においてPGA合成酵素をコードするpgsBpgsC及びpgsA遺伝子は同一の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域の下流に存在し、クラスター構造(オペロン)を有していることが明らかにされている(例えば、非特許文献3、6及び8参照)。さらに、納豆菌のPGA産生制御機構は、枯草菌の形質転換能獲得機構とともに細胞内の多くの制御因子が関与する複雑な制御を受けていると推察されている(例えば、非特許文献9及び10参照)。上記のような野生型でPGAを生産する微生物種の育種により、PGAの生産性を高めることは可能であるが、これら安定な生産性を得るための最適化には、野生株の複雑な栄養要求性を解消したり、PGA合成系が受ける厳密な制御を解除するなど、多大な労力を要することから効率的なPGA生産法ではないと判断される。さらに、クラスター構造を有しているPGA合成系は細胞内で同一の制御系により発現調節を受けることが予測されるため、変異育種などの方法では個々の遺伝子機能の発現量を厳密に調節することは難しいと考えられる。このため、野生株の育種に代わる効率的な手法として遺伝子組換え技術を用いた高生産化法が検討されていると考えられる。これまでに知られている遺伝子組換え技術を用いたPGA生産の例としては、プラスミドにて遺伝子導入された組換え枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214株)において約9g/L/5日(非特許文献2参照)、プラスミドにて遺伝子導入された組換え大腸菌において約4g/L/1.5日(非特許文献7参照)、あるいは2.5mg/40mg-乾燥菌体(特許文献1及び非特許文献6参照)の生産性が得られることが開示されている。しかしながら、これら開示されている生産法では充分な生産性に達していないものと判断される。またさらに、上記のような遺伝子組換え技術を用いた生産法において、PGA合成に関与するタンパク質群(PgsBCA)のなかから選ばれる1つを、単独あるいは組み合わせて発現させることで生産性を向上させたとの報告はなされていない。
PGAは、枯草菌においてPgsBCAと称される膜結合型酵素系によってリボソーム非依存的に生産されることが示されている(非特許文献4)。これらPGA合成酵素系PgsBCAのなかで、PgsB(YwsCと別称)はグルタミン酸におけるγ−位のカルボシキル基に作用するアミドリガーゼ反応に関与していることが知られている(非特許文献3及び5)。一方で、非特許文献3によれば、PgsC(YwtAと別称)は膜結合型タンパク質でPGAの細胞外への排出に関与すると推察されているが、非特許文献4及び5によればPgsCはPgsBと共存してグルタミン酸の結合反応に関わるとされ、PgsCの機能は現在のところ明確にはなっていない。また、非特許文献4及び5においてPgsA(YwtBと別称)はPGAの排出に関わると推察されているが現在までのところその機能は明らかにされていない。
さらに、非特許文献2において、染色体上のpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を欠損した枯草菌に、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子から選ばれる1つの遺伝子を単独若しくは複数を組み合わせて発現するベクターを導入し、PGAの生産性を検討した結果が開示されている。非特許文献2によれば、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を全て発現しなければPGAが生産できないと結論されている。また、非特許文献3には、PGA生産能を有する納豆菌(IFO16449株)において、pgsB遺伝子(ywsC遺伝子と別称)欠損株、pgsC遺伝子(ywtA遺伝子と別称)欠損株及びpgsA遺伝子(ywtB遺伝子と別称)欠損株を構築し、それぞれの欠損株におけるPGA生産能を検証している。このなかで非特許文献3によれば、PGA生産能を有する納豆菌において、PGA生産にはpgsB遺伝子及びpgsC遺伝子が必須であり、さらに最大のPGA生産性をえるためにはpgsA遺伝子が必要であると推論されている。
またさらに、特許文献1においては、pgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子をこの順で導入したベクターを用いて大腸菌を形質転換することにより、本来、PGA生産能を有していない大腸菌においてPGA生産能が付与できることが開示されているが、非特許文献6によれば、組換え大腸菌においてpgsBCA遺伝子を導入した条件ではPGAの生産が認められるが、pgsBC遺伝子を導入した条件ではPGAが生産されないことが明示されている。以上のことから、PGA生産においてPgsBCAは必須であり、PgsAを必要としないとは一般的に考えられていない。
特許文献2〜5においては、納豆菌等のPGA産生微生物を用いてPGAを生産させる方法が開示されている。これらによれば、納豆菌等を種々の栄養塩培地で培養することにより、分子量数千〜200万のPGAが生産できるとされている。また、特許文献6においては納豆菌に外的ストレスを与えることによって分子量300万以上のPGAが生産できることが開示されている。
一方、非特許文献11、特許文献7及び8においては、微生物によりL‐体比率の高いPGAが生産できることが開示されている。特許文献7においては、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)株を用いて、L-グルタミン酸含有量が90%以上のPGAを約10g/L/5日で生産できることが示され、特許文献8においてはナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)の変異株が分子量130万以上のポリ−ガンマ−L−グルタミン酸を約5g/L/6日で生産できることが開示されている。
以上のことから、これまでに知られている遺伝子組換えを用いたPGA生産法においては、充分な生産性が得られておらず(非特許文献2、6、7及び特許文献1参照)、さらには、遺伝子工学的手法を用いて、PGA合成に関与するタンパク質群(PgsBCA)のなかから選ばれる1つを、単独あるいは組み合わせて発現させることにより、PGAの生産性向上、分子量調整及びL-体比率の調整を行なうといった試みは報告されていない。
Ashiuchi, M., et al.: Appl. Microbiol. Biotechnol., 59, 9-14 (2002) Ashiuchi, M., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1794-1797 (2006) Urushibata, Y., et al.: J. Bacteriol., 184, 337-343 (2002) 芦内ほか: 未来材料,3,44-50(2003) Ashiuchi, M., et al.: Eur. J. Biochem., 268, 5321-5328 (2001) Ashiuchi, M., et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 263, 6-12 (1999) Jiang, H., et al.: Biotechnol. Lett., 28, 1241-1246 (2006) Presecan,E., et al.: Microbiology, 143, 3313-3328 (1997) Itaya,M., et al.: Biosci.Biotechnol.Biochem., 63, 2034-2037 (1999) 今中忠行ほか: 微生物利用の大展開, 第1章4節,657-663 (2002) Shimizu, K., et al.: Appl. Environ. Microbiol., 73, 2378-2
特開2001−17182号公報 特公昭43−24472号公報 特開平1−174397号公報 特開平3−47087号公報 特許第3081901号明細書 特開2006−42617号公報 特開2007−228957号公報 特開2007−314434号公報
本発明は、組換え微生物、当該組換え微生物を用いたPGAの分子量調整方法及び/又はL‐体比率の調整方法、PGAの製造方法に関する。
本発明者は、微生物を用いたPGAの分子量などの調整について鋭意検討した結果、PGA合成に関与する遺伝子群であるpgsBCA遺伝子が発現してなる微生物において、当該微生物にpgsBCA遺伝子群のなかの特定の遺伝子を単独で又は組み合わせて導入することによって、PGAの分子量調整及び/又はL-体比率調整が可能であることを見い出した。
ここで、「PGAの分子量調整」とは、本発明の遺伝子導入によって、導入前の微生物が生産するPGAの分子量に比較して、導入後の微生物が生産するPGAを高分子化又は低分子化して、その分子量を調整することである。なお、ここで分子量と重量平均分子量は同義である。
また、「PGAのL-体比率調整」とは、本発明の遺伝子導入によって、導入前の微生物が生産するPGA中の総グルタミン酸量に対するL-体グルタミン酸量の比率に比較して、導入後の微生物が生産するPGA中のL-体グルタミン酸量の比率を高めたり減らしたりすることである。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に係るものである。尚、当該発明において、相当する遺伝子とは対象となる遺伝子がコードする特定の機能を有するタンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を意味する。
(1) 微生物を用いてPGAを生産する方法において、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することを特徴とするPGAの分子量調整方法。
(2) 上記微生物を用いてPGAを生産する方法において、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又はpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入し、PGAを高分子化する、上記(1)のPGAの分子量調整方法。
(3) 上記微生物を用いてPGAを生産する方法において、枯草菌における枯草菌におけるpgsC若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又はpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入し、PGAを低分子化する、上記(1)のPGAの分子量調整方法。
(4) 微生物を用いてPGAを生産する方法において、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することを特徴とするPGAのL‐体比率調整方法。
(5) 上記組換え微生物を培養し、生成されたPGAを取得することを特徴とするPGAの製造方法。
(6) 上記PGAの分子量調整方法及び/又はPGAのL‐体比率調整方法を用いて、生成されたPGAを取得することを特徴とするPGAの製造方法。
(7) PGA合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られる組換え微生物。
本発明を用いれば、目的に応じて種々の分子量のPGA及び/又は種々のL‐体比率のPGAを得ることができる。
PGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示したものである。 SOE−PCR法による遺伝子欠失用DNA断片の調製、及び当該DNA断片を用いて標的遺伝子を欠失する(薬剤耐性遺伝子と置換)方法を模式的に示したものである。 枯草菌変異株(1cp-P_rapA/pgsBCAcm)の作製方法を模式的に示したものである。 枯草菌変異株(1cp-P_rapA/pgsBCAcm)の作製方法を模式的に示したものである。
本発明においてアミノ酸配列及び塩基配列の同一性はLipman-Pearson法[Lipman,DJ., Pearson,WR.:Science, 227, 1435-1441, (1985)]によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本発明において、遺伝子の上流/下流とは、翻訳開始点からの位置ではなく、上流とは対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示し、一方、下流とは対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
本明細書において、転写開始制御領域はプロモーター及び転写開始点を含む領域であり、翻訳開始制御領域は開始コドンと共にリボソーム結合部位を形成するShine-Dalgarno(SD)配列[Shine,J.,Dalgarno,L.:Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 71, 1342-1346, (1974)]に相当する部位である。
本明細書に記載の枯草菌の各遺伝子及び遺伝子領域の名称は、国際コンソーシアムの成果として報告され[Kunst,F., et al.:Nature, 390, 249-256 (1997)]、JAFAN: Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis (BSORF DB)でインターネット公開(http://bacillus.genome.ad.jp/、2006年1月18日更新)された枯草菌ゲノムデータに基づいて記載している。
ここで、PGA合成に関与する遺伝子群とは、枯草菌において、pgsB遺伝子(BG12531:ywsC遺伝子、またはcapB遺伝子と別称される)、pgsC遺伝子(BG12532:ywtA遺伝子、またはcapC遺伝子と別称される)及びpgsA遺伝子(BG12533:ywtB遺伝子、またはcapA遺伝子と別称される)から構成されている。遺伝子組換えの宿主微生物として広く利用されているBacillus subtilis Marburg No.168系統株は、これらpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を染色体上に有しているが、PGA生産能を有していない。同じく、納豆菌(Bacillus subtilis var.natto)は、これらpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子を染色体(ゲノム)上に有しているが、PGA生産能を有している。
pgsB遺伝子の塩基配列を配列番号1に示し、pgsB遺伝子によってコードされるPgsBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
本発明において、pgsB遺伝子とは、配列番号1で示される塩基配列からなる遺伝子に限定されず、以下の(a)〜(e)のものも含まれる。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子。
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列には、例えば1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
また、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質とは、PGA合成に関与する膜結合型酵素系の関与によって、グルタミン酸を重合してPGAを合成する酵素であり、当該アミドリガーゼ活性は、グルタミン酸及びATP又はGTPを基質とし、これに当該酵素及び塩化マンガンを加えたものを反応溶液として用いた場合に、反応溶液中にPGAの生成を確認することにより測定することができる[Urushibata, Y., et al.: J. Bacteriol., 184, 337-343 (2002)]。
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(d)配列番号1で示される塩基配列と60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(e)配列番号1で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
ここで、「ストリンジェントな条件下」としては、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION [Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の条件が挙げられ、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハート及び100mg/mL ニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。尚、後述する「ストリンジェントな条件下」についてはこれと同義である。
pgsC遺伝子の塩基配列を配列番号3に示し、pgsC遺伝子によってコードされるPgsCタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。
本発明におけるpgsC遺伝子には、配列番号3に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されず、以下の(f)〜(j)のものも含まれる。
(f)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子。
(g)配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
ここで、配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列には、例えば1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
また、前述の「PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する」といったPgsCタンパク質の機能とは、宿主微生物にてpgsB遺伝子とともにpgsC遺伝子を発現させた際に菌体外にPGAを生産する能力を意味する。これは、pgsB遺伝子を単独で発現させた宿主微生物ではPGAが生産されず、pgsB遺伝子とともにpgsC遺伝子を発現させた場合に、PGAが生産されるといった本発明者らが見出した知見に基づいている。
(h)配列番号4で示されるアミノ酸配列と50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するミノ酸配列からなり、PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(i)配列番号3で示される塩基配列と55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(j)配列番号3で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
pgsA遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、pgsA遺伝子によりコードされるPgsAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示す。
本発明におけるpgsA遺伝子には、配列番号5に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されず、以下の(k)〜(o)のものも含まれる。
(k)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子。
(l)配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、PgsB及びPgsCとの共存下でPGA合成能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
ここで、配列番号6で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列には、例えば1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
また、上記「PgsB及びPgsCタンパク質との共存下でPGA合成能を有するタンパク質」は、PgsB及びPgsCタンパク質との共存下でPGA合成能があるものであり、PGAの菌体外排出に関与するタンパク質であることが示唆されているが[例えば、Ashiuchi, M., et al.: Eur. J. Biochem.,268, 5321-5328 (2001)]、現在までにその機能は明確にはされていない。
(m)配列番号6で示されるアミノ酸配列と30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、PgsB及びPgsCタンパク質との共存下でPGA合成能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(n)配列番号5で示される塩基配列と30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、PgsB及びPgsCとの共存下でPGA合成能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(o)配列番号5で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PgsB及びPgsCタンパク質との共存下でPGA合成能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
また、宿主微生物に導入する遺伝子は、前述したような枯草菌由来のpgsB遺伝子、pgsC遺伝子及びpgsA遺伝子に限定されず、例えば枯草菌以外の微生物に由来するPGA合成関連遺伝子を構成する遺伝子群のうち、pgsB遺伝子に相当する遺伝子、pgsC遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子に相当する遺伝子であっても良い。
尚、pgsB遺伝子に相当する遺伝子、pgsC遺伝子に相当する遺伝子、又はpgsA遺伝子に相当する遺伝子は、PGAを生産することが知られている微生物から常法に従って単離/同定することができる。PGA生産能を有する微生物としては、Bacillus subtilisの他に、Bacillus amyloliquefaciensBacillus pumilusBacillus licheniformisBacillus megateriumBacillus anthracisBacillus haloduransNatrialba aegyptiacaHydra等を挙げることができ、これら微生物からpgsB遺伝子に相当する遺伝子、pgsC遺伝子に相当する遺伝子又はpgsA遺伝子に相当する遺伝子を単離/同定することができる。
上記遺伝子を単離/同定する方法としては、例えば、上記の微生物からゲノムDNAを抽出し、前述した配列番号1、3又は5などに示した塩基配列からなるポリヌクレオチドをプローブとしたサザンハイブリダイゼーションによってpgsB遺伝子に相当する遺伝子、pgsC遺伝子に相当する遺伝子又はpgsA遺伝子に相当する遺伝子について単離することができる。さらに、近年の急速なゲノム解読の進展によりPGA非生産微生物であってもそのゲノム配列情報を基に、Oceanobacillus iheyensis等から前述のように定義した枯草菌pgsB遺伝子に相当する遺伝子、pgsC遺伝子に相当する遺伝子又はpgsA遺伝子に相当する遺伝子を単離/同定することができる。
前述の枯草菌のpgsB遺伝子と同等の機能を有する遺伝子のアミノ酸配列と50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の100%未満の同一性を有する、又は、pgsB遺伝子の塩基配列と塩基配列において60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の100%未満の同一性を有する、他の微生物(好ましくはBacillus属細菌及びOceanobacillus属細菌、より好ましくはBacillus属細菌)由来の遺伝子は、pgsB遺伝子に相当する遺伝子と考えられる。
前述の枯草菌のpgsC遺伝子と同等の機能を有する遺伝子のアミノ酸配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上100%未満の同一性を有する、又は、pgsC遺伝子の塩基配列と塩基配列において55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上100%未満の同一性を有する、他の微生物(好ましくはBacillus属細菌及びOceanobacillus属細菌、より好ましくはBacillus属細菌)由来の遺伝子は、pgsC遺伝子に相当する遺伝子と考えられる。
前述の枯草菌のpgsA遺伝子と同等の機能を有する遺伝子のアミノ酸配列と30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上100%未満の同一性を有する、又は、pgsA遺伝子の塩基配列と塩基配列において45%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上100%未満の同一性を有する、他の微生物(好ましくはBacillus属細菌及びOceanobacillus属細菌、より好ましくはBacillus属細菌)由来の遺伝子は、pgsA遺伝子に相当する遺伝子と考えられる。
これら各遺伝子に相当する遺伝子の好適なものとして、表1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子や塩基配列からなる遺伝子などが挙げられる。
具体的には、pgsB遺伝子に相当する遺伝子としては、配列番号13、19、25又は31に示すアミノ酸配列又はそれぞれの配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、グルタミン酸を基質とするアミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(例えば、配列番号12、18、24又は30など)が挙げられる。
また、pgsC遺伝子に相当する遺伝子としては、配列番号15,21、27又は33に示すアミノ酸配列又はそれぞれの配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、前述のPgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子(例えば、配列番号14,20、26又は3など)が挙げられる。
また、pgsA遺伝子に相当する遺伝子としては、配列番号17、23、29又は35に示すアミノ酸配列又はそれぞれの配列において数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、PgsB及びPgsCと共存下、PGA合成活性を有すると推定されるタンパク質をコードする遺伝子(例えば、配列番号16、22、28又は34など)が挙げられる。
宿主微生物へ導入されるべき、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子は、その上流に結合した下流遺伝子を構成的に発現させ、当該遺伝子の発現を宿主細胞内において高めることができる転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域が結合されたものであることが好ましい。
このような制御領域として、Bacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の上流0.4〜1.0kb領域(制御領域)、Bacillus属細菌のrapA遺伝子の制御領域、Bacillus属細菌のspoVG遺伝子の制御領域などが例示されるが特に限定されない。
前述したBacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子に由来する当該制御領域の塩基配列は配列番号7の塩基番号1〜572で示され、また、Bacillus属細菌のrapA遺伝子(BG10652)の塩基配列の制御領域は配列番号8で、Bacillus属細菌由来のspoVG遺伝子(BG10112)の塩基配列の制御領域は配列番号9で示されるが、これらの各塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有し、且つ同等の機能を有する塩基配列からなる領域も包含される。ここでの塩基配列の同一性とは前述と同じ定義を用いる。
当該遺伝子を宿主微生物に導入する際は、従来公知のプラスミド(ベクター)を使用することができる。また、プラスミドは遺伝子導入対象の宿主微生物の種類に応じて適宜選択することができる。枯草菌を宿主とする場合、例えば、pT181、pC194、pUB110、pE194、pSN2、pHY300PLK等を例示することができる。選択されるプラスミドは、宿主細胞内で自己複製可能なプラスミドであることが好ましく、そのプラスミドが多コピーであることがより好ましい。
さらに、係る断片は1細胞当たり1コピーの導入で目的のタンパク質の生産に対し充分な効果を発揮すると予測されることから、プラスミドによって導入した場合、生産培養中に一部のプラスミドが脱落しても、その影響は受け難いので、そのプラスミドのコピー数が宿主ゲノム(染色体)に対し、2以上100コピー以下であれば良く、好ましくは2以上50コピー以下、より好ましくは2以上30コピー以下であれば良い。また、発現ベクターを用いた形質転換には、従来公知の手法、例えばプロトプラスト法[Chamg, S., Cohen, SH.: Mol. Gen. Genet., 168, 111-115 (1979)]やコンピテントセル法[Young, FE., Spizizen, J.: J. Bacteriol., 86, 392-400 (1965)]を適用することができる。
本発明において用いられる宿主微生物としては、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現し、PGAを生産する微生物であれば、特に限定されず、野生型のものでも変異を施したものでも良い。すなわち、pgsBCA遺伝子を染色体(ゲノム)上に有し、且つPGA生産能を有する野生型の微生物、またはpgsBCA遺伝子を染色体(ゲノム)上に有し、且つそのPGA生産能が高められた変異型の微生物、さらにはpgsBCA遺伝子が染色体上に導入され、PGA生産能が付与された変異型の微生物の何れでも良い。
ここで上記宿主微生物は特に限定されないが、具体的には、野生型でPGA生産能を有するBacillus amyloliquefaciensBacillus pumilusBacillus licheniformisBacillus megateriumBacillus anthracisBacillus haloduransBacillus subtilis 等のバチルス(Bacillus)属細菌や、遺伝子組み換えによりPGA生産能を付与したクロストリジウム(Clostridium)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、大腸菌(Escherichia coli)或いは酵母等が挙げられる。なかでも、全ゲノム情報が明らかにされ、遺伝子工学、ゲノム工学技術が確立されている点、宿主微生物として安全かつ且つ優良と認められた微生物菌株として開発されている点から、Bacillus属細菌のなかでも特に枯草菌(Bacillus subtilis)が好ましい。
ゲノム上にpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子は有しているがPGA生産能を発現していない宿主微生物においてPGA生産能を宿主微生物に付与する方法としては、ゲノム上の枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に、当該微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域(以下、単に「制御領域」ともいう。)を導入することなどによってなすことができる。また、本発明の微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域としては、これらが適正な形で結合されていることが望ましく、転写開始制御領域の下流に翻訳開始領域が結合されていることが好ましい。当該制御領域は、結合した下流遺伝子を構成的に発現させ、当該遺伝子の発現を宿主細胞内において高めることができるものであることがより好ましい。本発明微生物を構築するための宿主微生物として枯草菌を用いる場合、このような制御領域としてはBacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域、Bacillus属細菌由来のrapA遺伝子の制御領域、同spoVG遺伝子の制御領域等が挙げられ、Bacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域を用いた場合には、高分子(例えば、分子量6,000,000〜9,000,000程度)のPGAを生産することができ、Bacillus属細菌由来のrapA遺伝子の制御領域を用いた場合には、中分子(例えば、分子量300,000〜900,000程度)のPGAを生産することができる。
ゲノム上のpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流領域に当該制御領域を導入するには、pgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流領域へ当該制御領域を挿入するだけでなく、本来の制御領域の一部又は全部を置換しても良い。当該制御領域の挿入/置換は、本発明微生物を構築するための宿主微生物に枯草菌を用いる場合、相同組換えにより標的遺伝子を欠失又は不活性化する方法について報告例があり[Itaya, M., Tanaka, T.: Mol. Gen. Genet., 223, 268-272 (1990)]、このような方法を用いて、目的の宿主微生物を得ることができる。
例えば、まず、係る制御領域を含むDNA断片の上流にpgsBCA遺伝子の本来の翻訳開始制御領域及び/又は転写開始制御領域を含む薬剤耐性遺伝子断片を作製し、さらにこの下流にpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片をSOE(splicing by overlap extension)−PCR法[Horton, RM., et al.: Gene, 77, 61-68 (1989)]などの公知の方法により結合させる。この様にして、pgsBCA遺伝子の本来の制御領域とその上流領域を含む薬剤耐性遺伝子断片、目的とする当該制御領域断片、pgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片、の順に結合したDNA断片を得る。
次に、係るDNA断片を、公知の方法により宿主微生物細胞内に取り込ませることにより、宿主微生物ゲノムのpgsBCA遺伝子の本来の転写開始制御領域とその上流領域、及びpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の2箇所において、二回交差の相同組換えが起こる。その結果、上記薬剤耐性遺伝子を指標として、本来の制御領域が目的とする当該制御領域に置換された形質転換体を分離することができる。これにより、ゲノム上のpgsBCA遺伝子上流へ導入された制御領域は、遺伝的に安定に保持されることとなる。
また、ゲノム上に枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を有していない場合は、宿主微生物において機能を有する制御領域が適正な形で結合された枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を前述と同様の方法を用い、任意の宿主微生物ゲノム上の位置に導入すれば良い。例えば、まず初めに、下流に結合させた遺伝子の発現を可能とする制御領域とこの制御領域の下流にpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部を含むDNA断片、さらに薬剤耐性遺伝子をSOE-PCR法により結合させる。次に、任意のゲノム上の上記DNA断片を導入する位置の上流及び下流領域のDNA断片を作製し、前述のSOE-PCR法にて調製した薬剤耐性遺伝子を含み、制御領域が上流に結合したpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部からなるDNA断片を、(上流領域)−(薬剤耐性遺伝子を含み、制御領域が上流に結合したpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部からなるDNA断片)−(下流領域)の順番となるようにSOE-PCR法にて結合させる。この後、得られた上記DNA断片を公知の方法により宿主微生物細胞内に取り込ませることにより、宿主微生物ゲノム上の任意の位置における上流領域、及び下流領域の2箇所において、二回交差の相同組換えが起こる。その結果、標的とするゲノム領域に制御領域が上流に結合したpgsBCA遺伝子の構造遺伝子領域の一部又は全部が導入された形質転換体を薬剤耐性を指標として分離することができる。これにより、ゲノム上の任意の位置に枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が遺伝的に安定に保持させることが可能となる。
また、選択される宿主微生物は、野生型の微生物、あるいは野生型に対して所定の変異を導入した変異株のいずれも使用することができる。さらに、変異株のなかでも、特にPGA分解酵素をコードする遺伝子(PGA分解酵素遺伝子)を欠失させた変異株を宿主として使用することで、より良好な効果が期待できる。枯草菌におけるPGA分解酵素遺伝子としては、ggt遺伝子が知られている[Kimura,K.,et al.: Microbiology, 150, pp4115-4123 (2004)]。
枯草菌のggt遺伝子の塩基配列を配列番号10に示し、ggt遺伝子によりコードされるPGA分解酵素GGTのアミノ酸配列を配列番号11に示す。
また、枯草菌以外の微生物を宿主微生物として使用する場合にも、ggt遺伝子に相当する遺伝子を欠失させた変異株を使用することが好ましい。
枯草菌のggt遺伝子と同じ機能を有する、及び/又はこの遺伝子の塩基配列と塩基配列において90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する、他の微生物(好ましくはBacillus属細菌)由来の遺伝子は、これら遺伝子に相当する遺伝子と考えられ、本発明において欠失、不活性化すべき遺伝子に含まれる。
尚、本発明においてggt遺伝子は、配列番号10に示す塩基配列からなる遺伝子に限定されず、配列番号10に示す塩基配列に対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を含み、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。ここでの「塩基配列の同一性」とは前述と同じ定義である。
また、ggt遺伝子は、配列番号11に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたPGA分解能を有するアミノ酸配列を含む。ここで、「1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列」には、例えば1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
また、ggt遺伝子は、配列番号11で示されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。
さらに、本発明においてggt遺伝子とは、配列番号10に示す塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PGA分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む意味である。
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは前述と同じ定義を用いる。ggt遺伝子或いはその遺伝子に相当する遺伝子を欠失させる方法としては、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、ggt遺伝子の一部を含むDNA断片を適当なプラスミド(ベクター)にクローニングして得られる環状の組換えプラスミドを宿主微生物細胞内に取り込ませ、標的遺伝子の一部領域に於ける相同組換えによって宿主微生物ゲノム上の標的遺伝子を分断して欠失又は不活性化することが可能である[Leenhouts, K., et al.: Mol. Gen. Genet., 253, 217-224 (1996)]。
特に、本発明微生物を構築するための宿主微生物として枯草菌を用いる場合、相同組換えにより標的遺伝子を欠失又は不活性化する方法については、前述のように既にいくつかの報告例があり、こうした方法を繰り返すことによって、目的の宿主微生物を得ることができる。また、ランダムな遺伝子の不活性化方法としては、変異誘発剤の使用や宿主微生物への紫外線、γ線等の照射によっても実施可能である。
この場合、ggt構造遺伝子内への塩基置換、塩基挿入或いは一部欠失といった変異導入の他に、プロモーター領域等の制御領域への同様の変異導入、またはggt遺伝子の発現制御に関連する遺伝子への同様の変異導入によっても同等の効果が期待できる。
さらに、より効率的な手法として、ggt遺伝子の上流、下流領域を含むがggt遺伝子を含まない直鎖状のDNA断片を前述のSOE-PCR法によって構築し、これを宿主微生物細胞内に取り込ませて宿主微生物ゲノム上のggt遺伝子の外側の2ヶ所で二回交差の相同組換えを起こさせることにより、ゲノム上のggt遺伝子を欠失させるといった手法も実施可能である(図2参照)。
後述の実施例に示すように、PGA生産能を付与した宿主微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することによりPGAが高分子化できる。一方で、PGA生産能を付与した宿主微生物に、枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することによりPGAが低分子化できる。このことから、PGA生産能を付与した宿主微生物にこれらの各遺伝子を導入すればPGAの分子量を調整することができ、更に得られた組換え微生物を用いれば所望の分子量のPGAを効率良く製造することができる。
特に、pgsBCA遺伝子上流の制御領域にBacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域を挿入させた枯草菌株では、分子量6,000,000〜9,000,000程度のPGAを生産することができ、当該微生物を宿主微生物に用いた場合には、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することで、そのPGAの分子量を7,500,000〜15,000,000程度まで高分子化することができる。また、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、そのPGAの分子量を6,500,000〜12,000,000程度まで高分子化できる。また、一方で、上記同様の宿主微生物に、枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、そのPGAの分子量を3,000,000〜8,000,000、特に3,000,000〜6,000,000程度まで低分子化することができる。
更に、pgsBCA遺伝子上流の制御領域にBacillus sp. KSM-S237株のセルラーゼ遺伝子の制御領域を挿入させた枯草菌変異株を宿主微生物として用い、生産するPGA中の総グルタミン酸量に対するL-グルタミン酸量(L-体比率)を100%とした場合、当該宿主微生物に枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することで、PGA中のL-体比率を105〜120%に増加させることができる。また、上記同様の宿主微生物に、枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、PGA中のL-体比率を105〜130%に増加させることができる。
また、pgsBCA遺伝子上流の制御領域にBacillus属細菌由来のrapA遺伝子の制御領域を挿入させた枯草菌株では、分子量300,000〜900,000程度のPGAを生産することができ、当該微生物を宿主微生物に用いた場合には、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することで、そのPGAの分子量を900,000〜8,000,000程度まで高分子化することができる。また、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、そのPGAの分子量を5,000,000〜9,00,000程度まで高分子化することができる。一方で、上記同様の宿主微生物に、枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、そのPGAの分子量を200,000〜700,000程度まで低分子化することができる。
更に、pgsBCA遺伝子上流の制御領域にBacillus属細菌由来のrapA遺伝子の制御領域を挿入させた枯草菌変異株を宿主微生物として用い、生産するPGA中の総グルタミン酸量に対するL-グルタミン酸量(L-体比率)を100%とした場合、当該宿主微生物に枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することで、PGA中のL-体比率を85〜95%に低下させることができる。また、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、PGA中のL-体比率を70〜90%に低下させることができる。一方で、上記同様の宿主微生物に、枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、PGA中のL-体比率を105〜120%に増加させることができ、また枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入すれば、PGA中のL-体比率を105〜130%に増加させることができる。
従って、本発明を用いれば、目的用途に応じた分子量及び/又はグルタミン酸のL-体比率の異なるPGAを適宜生産することができ、また様々な用途で利用される分子量及び/又はグルタミン酸のL-体比率の異なるPGAを工業的に生産することができる。さらに、本発明を用いて製造されたPGAは、化粧品、医薬品、食品、水質浄化剤、保水材料、増粘剤等の様々な用途に使用することができる。
また、本発明の組換え微生物を用いてPGAを製造する際には、先ず、適切な培地において当該組換え微生物を培養し、菌体外に生産されたPGAを培地から取得する。培地としては、デンプン、マルトオリゴ糖、マルトース、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、グリセロール、各種有機酸等の炭素源、各種アミノ酸、ポリペプトン、トリプトン、硫酸アンモニウムや尿素等の窒素源、ナトリウム塩等の無機塩類及びその他必要な栄養源、微量金属塩等を含有する組成の培地を使用できる。また、培地としては合成培地でも良いし、天然培地でも良い。
特に、PGAの生産性を向上させるには、培養対象の組換え微生物が生育に必要とするグルタミン酸量よりも過剰量のグルタミン酸が添加された培地を使用することが好ましい。具体的には培地中へはナトリウム塩(グルタミン酸ナトリウム)として添加することが好ましいが、その濃度は、例えば0.005〜600g/L、好ましくは0.05〜500g/L、より好ましくは0.1〜400g/L、より好ましくは0.5〜300g/Lである。
培養条件として、至適温度は、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは30〜40℃である。至適pHは、好ましくはpH4〜8であり、より好ましくは5〜8である。また、培養日数は、種菌接種後、好ましくは1〜10日間であり、より好ましくは2〜5日間である。培養は、特に限定されないが、振とう培養、攪拌培養、通気培養、静置培養などが挙げられる。
培地中に蓄積されたPGAを取得する際には、PGAを生産させた宿主微生物の菌体を除去する必要があるが、これには遠心分離による方法、限外濾過膜を用いる方法、電気透析法、pHをPGAの等電点付近に維持することで沈殿として取得する方法等が挙げられ、さらに上記手法を組み合わせて用いることも可能である。
尚、微生物におけるPGA生産能の評価は、例えば、前述したアミドリガーゼ活性による方法、グルタミン酸又はその塩を含有するPGA生産寒天培地に培養したときにコロニー周辺に形成される半透明の粘性物質を目視によって観察する方法、SDS-PAGEによってPGAを検出する方法[Yamaguchi, F., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem. 60, 255-258 (1996)]、或いは酸加水分解後にアミノ酸分析装置を用いて定量する方法[Ogawa, Y., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 61, 1684-1687 (1997)]、培養液から精製し乾燥重量を求める定量法[Ashiuchi,M., et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 263: 6-12 (1999)]、ゲルろ過カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量/定性法[Kubota, H., et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 57, 1212-1213 (1993)]によって行なうことができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔製造例1〕PGA合成関連遺伝子のクローニング(1)
本製造例には、PGA合成に関与する遺伝子群のクローニング方法を示した(図1参照)。Bacillus属細菌 KSM-366株(FERM BP-6262)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表2に示したP-S237/BSpgsB atg FW(配列番号38)及びHindIII_BSpgsBCA RV(配列番号43)のプライマーセットを用いて、2.9kbのpgsBCA遺伝子DNA断片(BCA)を調製した(図1参照)。同様に、P-S237_BSpgsC FW(配列番号40)及びHindIII_BSpgsBCA RV(配列番号43)のプライマーセットを用い1.7kbのpgsCA遺伝子DNA断片(CA)、P-S237/BSpgsB atg FW(配列番号38)及びHindIII_BSpgsB RV(配列番号45)のプライマーセットを用い1.2kbのpgsB遺伝子DNA断片(B)、P-S237_BSpgsC FW(配列番号40)及びHindIII_BSpgsBC RV(配列番号44)のプライマーセットを用い0.5kbのpgsC遺伝子DNA断片(C)、P-S237_BSpgsA FW(配列番号39)及びHindIII_BSpgsBCA RV(配列番号43)のプライマーセットを用い1.2kbのpgsA遺伝子DNA断片(A)を調製した。また、P-S237/BSpgsB atg FW(配列番号38)及びpgsC FW(配列番号42)のプライマーセットを用い1.2kbのpgsB遺伝子DNA断片(b)、comp_pgsA/pgsC RV(配列番号41)及びHindIII_BSpgsBCA RV(配列番号43)のプライマーセットを用い1.2kbのpgsA遺伝子DNA断片(a)を予め調製し、これら断片(b及びa)を鋳型として配列番号38及び43のプライマーセットを用い、SOE−PCR法にてpgsBA遺伝子2.4kbのDNA断片(BA)を調製した。さらに、Bacillus属細菌 KSM-S237株(FERM BP-7875)から調製した染色体DNAを鋳型とし、表2に示したCm_S237 FW(配列番号36)及びP-S237 RV(配列番号37)のプライマーセットを用いて、Bacillus属細菌 KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のS237セルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の0.6kbのプロモーター領域DNA断片(P_S237)を調製した。次に、得られた断片(P_S237)及び(BCA)と配列番号36及び43のプライマーセットを用いて、SOE−PCR法にて断片(P_S237)と(BCA)を一断片化した3.5kbのDNA断片(P_BCA)を得た(図1参照)。同様に、断片(P_S237)及び(BA)と配列番号36及び43のプライマーセットを用い3.0kbのDNA断片(P_BA)、断片(P_S237)及び(CA)と配列番号36及び43のプライマーセットを用い2.3kbのDNA断片(P_CA)、断片(P_S237)及び(B)と配列番号36及び45のプライマーセットを用い1.8kbのDNA断片(P_B)、断片(P_S237)及び(C)と配列番号36及び44のプライマーセットを用い1.1kbのDNA断片(P_C)、断片(P_S237)及び(A)と配列番号36及び43のプライマーセットを用い1.8kbのDNA断片(P_A)を得た。尚、PCR反応にはGeneAmp9700(PE Applied Biosystems)とTaKaRa LA Taq(Takara)を用い、キット添付のプロトコールに従い実施した。
〔製造例2〕ベクターの構築(1)
製造例1にて調製したDNA断片をそれぞれ制限酵素BamHI及びHindIIIにて制限酵素処理し、同様の制限酵素処理を施したプラスミドベクターpHY300PLK(Takara)とDNA Ligation kit Ver.2(Takara)を用いてライゲーション反応(結合化)を行なった。上記ライゲーション試料にて、コンピテントセル法にて大腸菌(HB101株)を形質転換し、テトラサイクリン-塩酸塩(SIGMA)を15ppm添加したLB寒天培地(LBTc寒天培地)上に出現したコロニーを形質転換体とした。得られた形質転換体を再度LBTc寒天培地にて生育させ、得られた菌体からハイピュア プラスミドアイソレーションキット(ロッシュ・ダイアグノスティックス)を用い組換えプラスミドを調製した。これらを制限酵素BamHI及びHindIIIにて制限酵素処理し、電気泳動法にてプラスミドベクター上のマルチクローニングサイトに、製造例1に示した目的とするDNA断片(P_BCA)、(P_BA)、(P_CA)、(P_B)、(P_C)及び(P_A)が挿入されていることを確認した。本製造例において、DNA断片(P_BCA)の挿入を確認した組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsBCA、DNA断片(P_BA)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsBA、DNA断片(P_CA)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsCA、DNA断片(P_B)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsB、DNA断片(P_C)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsC、DNA断片(P_A)の挿入が確認できた組換えプラスミドをPGA組換え生産用ベクター pHY-P_S237/pgsAとした。
〔製造例3〕枯草菌改変体の作製(1)
本製造例には、製造例2で得られたベクターを導入するための枯草菌変異株の作製方法を示した(図3参照)。
製造例2において調製したpHY-P_S237/pgsBCAを鋳型とし、表2に示したHindIII_BSpgsB RV(配列番号45)及びTET4-1 F(配列番号46)のプライマーセットを用いて、プラスミド上のテトラサイクリン耐性遺伝子(Tetr)を含むS237セルラーゼプロモーター配列の結合した3.3kbのpgsB遺伝子断片(tet-P_B)を調製した。また、Bacillus subtilis Marburg No.168株(枯草菌168株)から調製した染色体DNAを鋳型とし、tet4-1_comp/pgsB FW(配列番号47)及びpgsB RV(配列番号48)のプライマーセットを用いて、枯草菌ゲノム上のPGA合成関連pgsBCA遺伝子の上流1.0kbのDNA断片(pgsB-UP)を調製した。これら断片(tet-P_B、pgsB-UP)を鋳型として配列番号45及び48のプライマーセットを用い、SOE−PCR法にて枯草菌ゲノム上のpgsBCA遺伝子オペロンの上流プロモーター置換用DNA断片(tet-P_S237)を得た。続いて、得られたDNA断片(tet-P_S237)を用いコンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBTc寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。さらに、得られた形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型とするPCRによってpgsBCA遺伝子オペロンの上流にS237セルラーゼプロモーターが導入された枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAtet)であることを確認した。続いて、製造例1にて調製したS237セルラーゼプロモーター領域0.6kbのDNA断片(P_S237)、Staphylococcus aureus由来のpC194プラスミド(Horinouchi,S., Weisblum,B.,J.Bacteriol.,150,815,1982)を鋳型として、P-S237F_comp/Cm FW(配列番号49)及びpC194Cm RV(配列番号50)のプライマーセットで調製したクロラムフェニコール耐性遺伝子0.9kbのDNA断片(Cmr)、枯草菌168株の染色体DNAを鋳型として、pgsB RV(配列番号48)及びpgsB/Cm F(配列番号51)のプライマーセットを用いて、pgsBCA遺伝子オペロンの上流プロモーターを含む1.0kbのDNA断片(pgsB-UP2)を調製した。さらに、これらDNA断片(P_S237、Cm、pgsB-UP2)を鋳型として、P-S237 RV(配列番号37)及びpgsB RV(配列番号48)のプライマーセットを用い、SOE−PCR法にて一断片化した2.5kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片を用いて、コンピテントセル法により枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAtet)の形質転換を行ない、10ppmクロラムフェニコール(SIGMA)を添加したLB寒天培地上(LBCm寒天培地)に生育したコロニーを形質転換体とし、得られた形質転換体を枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAcm)とした。
〔製造例4〕枯草菌改変体の作製(2)
本製造例には、製造例2で得られたベクターを導入するための枯草菌変異株の作製方法を示した(図4参照)。枯草菌168株から調製した染色体DNAを鋳型とし、rapA FW(配列番号52)及びP_rapA/Cm R(配列番号53)のプライマーセットを用いて、枯草菌ゲノム上のrapA遺伝子(BG10652)の構造遺伝子(ORF)より0.5kb上流にクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入するための上流側0.5kbのDNA断片(rapA-UP)、同様にP_rapA/Cm F(配列番号54)及びP_rapA RV(配列番号55)のプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入するための下流側0.5kbのDNA断片(rapA-DW)を調製した(尚、この際に配列番号55のプライマーはrapA遺伝子のORF開始コドンttgをatgに変更するようにデザインした)。また、プラスミドpC194を鋳型として、Cm_comp FW(配列番号56)及びCm_comp RV(配列番号57)のプライマーセットを用いて、クロラムフェニコール耐性遺伝子0.9kbのDNA断片(Cm2)を作製した。さらに、これらDNA断片(rapA-UP、Cm2、rapA-DW)を鋳型として、配列番号52及び55のプライマーセットを用い、SOE−PCR法にて一断片化した1.9kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片を用いて、コンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体とし、得られた形質転換体を枯草菌変異株(P-rapA/Cm)とした。続いて、上記枯草菌変異株(P-rapA/Cm)から調製した染色体DNAを鋳型とし、P_rapA RV(配列番号55)及びpC194Cm FW(配列番号58)のプライマーセットを用いて、0.9kbのクロラムフェニコール耐性遺伝子と枯草菌ゲノム上の0.5kb rapA遺伝子上流のプロモーター領域(P_rapA)からなる1.4kbのDNA断片(Cm-P_rapA)を調製した。また、枯草菌168株から調製した染色体DNAを鋳型とし、pgsC FW(配列番号42)及びcomp_P-rapA R/BSpgsBatg FW(配列番号60)のプライマーセットを用いて、枯草菌ゲノム上のpgsBCA遺伝子のORF開始コドンatgから下流までの1.2kbのDNA断片(pgsBatg)、pgsB RV(配列番号48)及びCmFW_comp/pgsB F(配列番号59)のプライマーセットを用いて、枯草菌ゲノム上のpgsBCA遺伝子上流1.0kbのDNA断片(pgsB-UP3)を調製した。さらに、これらDNA断片(Cm-P_rapA、pgsBatg、pgsB-UP3)を鋳型として、配列番号42及び48のプライマーセットを用い、SOE−PCR法にて一断片化した3.6kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片を用いて、コンピテントセル法により枯草菌168株の形質転換を行ない、LBCm寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体とし、得られた形質転換体を枯草菌変異株(1cp-P_rapA/pgsBCAcm)とした。
〔製造例5〕プラスミド導入による形質転換
本製造例には、枯草菌及びその改変株の形質転換方法を示した。
製造例3で作製した枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAcm)及び製造例4で作製した枯草菌変異株(1cp-P_rapA/pgsBCAcm)を遺伝子導入の元株として、組換え生産の対照となる組換えDNA断片導入前のプラスミド(pHY300PLK)及び製造例2で作製したPGA合成関連遺伝子発現ベクター(pHY-P_S237/pgsBCA、pHY-P_S237/pgsBA、pHY-P_S237/pgsCA、pHY-P_S237/pgsB、pHY-P_S237/pgsC、pHY-P_S237/pgsA)を用い、プロトプラスト法にて形質転換を行なった。30ppmテトラサイクリン-塩酸塩を添加したDM3プロトプラスト再生培地(DM3培地)上に生育したコロニーをプラスミドが導入された目的とする枯草菌形質転換体として選抜した。
〔実施例1〕 生産性評価−1
製造例5で得られた枯草菌形質転換体のうち、1cp-P_S237/pgsBCAcm株を遺伝子導入の元株として、pHY300 PLKを対照に、pHY-P_S237/pgsBCA、pHY-P_S237/pgsBA、pHY-P_S237/pgsBを導入した形質転換体をLBTc寒天培地上に接種し、30℃で一晩静置培養を行なった。この後、LBTc寒天培地上に生育した上記形質転換体を、予め滅菌した2.0mL容微量遠心チューブ内で0.8〜1.6mLの改変2xL/Maltose+MSG培地(以下2xL/Mal+MSG培地、2.0%トリプトン、1.0%酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、8.0%グルタミン酸ナトリウム1水和物、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン-塩酸塩)中で攪拌/懸濁し、静置した後の上清液を種培養液とした。この種培養液を新たな2xL/Mal+MSG培地に1%(v/v)接種し、坂口フラスコにて、37℃、120rpm、1日間の往復振盪培養(TB-20R-3F、高崎科学機器)に供した。
評価培養終了後、後述の測定例に示した分析条件にてPGAの分子量を測定し、評価結果を表3に示した。表3に示すように、対照となるpHY300PLKベクターの導入株に対して、pHY-P_S237/pgsBA及びpHY-P_S237/pgsB導入株において、生産されるPGAが高分子化することが明らかとなった。また、その効果はpHY-P_S237/pgsBCA導入株に比べて顕著であった。
〔実施例2〕 生産性評価−2
製造例5で得られた枯草菌形質転換体のうち、1cp-P_rapA/pgsBCAcm株を遺伝子導入の元株として、pHY300 PLKを対照に、pHY-P_S237/pgsBCA、pHY-P_S237/pgsBA、pHY-P_S237/pgsBを導入した形質転換体を前述の実施例1と同様の生産性評価に供した。
評価培養終了後、実施例1と同様に測定例に示した条件にて分析を行ない、評価結果を表4に示した。表4に示すように、対照となるpHY300PLKベクターの導入株に対して、pHY-P_S237/pgsBA及びpHY-P_S237/pgsB導入株において、生産されるPGAが高分子化することが明らかとなった。また、その効果はpHY-P_S237/pgsBCA導入株に比べて顕著であった。
〔実施例3〕 生産性評価−3
製造例5で得られた枯草菌形質転換体のうち、1cp-P_S237/pgsBCAcm株を遺伝子導入の元株として、pHY300 PLKを対照に、pHY-P_S237/pgsCA、pHY-P_S237/pgsC、pHY-P_S237/pgsAを導入した形質転換体を前述の実施例1と同様の生産性評価に供した。
評価培養終了後、実施例1と同様に測定例に示した条件にて分析を行ない、評価結果を表5に示した。表5に示すように、対照となるpHY300PLKベクターの導入株に対して、pHY-P_S237/pgsCA、pHY-P_S237/pgsC及びpHY-P_S237/pgsA導入株において、生産されるPGAが低分子化することが明らかとなった。
〔実施例4〕 生産性評価−4
製造例5で得られた枯草菌形質転換体のうち、1cp-P_rapA/pgsBCAcm株を遺伝子導入の元株として、pHY300 PLKを対照に、pHY-P_S237/pgsCA、pHY-P_S237/pgsC、pHY-P_S237/pgsAを導入した形質転換体を前述の実施例1と同様の生産性評価に供した。
評価培養終了後、実施例1と同様に測定例に示した条件にて分析を行ない、評価結果を表6に示した。表6に示すように、対照となるpHY300PLKベクターの導入株に対して、pHY-P_S237/pgsCA、pHY-P_S237/pgsC及びpHY-P_S237/pgsA導入株において、生産されるPGAが低分子化することが明らかとなった。
〔測定例〕PGAの定量及び分子量測定法
実施例1〜4に示した評価培養終了後の培養液試料を、室温にて14,800rpmで30分間遠心分離(himacCF15RX、日立工機)に供し、遠心分離にて得られた培養液上清中の組換えPGA生産量の測定を行なった。TSKGel G4000PWXL及びTSKGel G6000PWXLゲルろ過カラム(東ソー)を用いたHPLC分析を実施した。尚、分析条件は溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速1.0mL/分、カラム温度50℃、UV検出波長を210nmとした。また、濃度検定には分子量80万のPGA(明治フードマテリアル)を用いて検量線を作成した。さらに、分子量検定にはプルラン Shodex STANDRD P-82(昭和電工)を用いて予め重量平均分子量を求めた各種分子量の異なるポリグルタミン酸[和光純薬工業(162-21411、162-21401)、SIGMA-ALDRICH(P-4886、P-4761)、明治フードマテリアル(分子量88万)]を用いた。
〔実施例5〕 生産性評価-5及び6
実施例1〜4(表3〜表6参照)に示した評価終了後の各培養液を、後述の測定例2に示した分析条件にてPGA中の全グルタミン酸量(D-体及びL-体の総和)を求め、これを100%とするL-グルタミン酸量(L-体比率)を測定し、評価結果を表7及び8に示した。
1cp-P_S237/pgsBCAcm株を宿主として、対照となるPGA生産に係わる遺伝子を全く導入していないプラスミドを形質転換にて導入した条件において、PGA生産させた場合のPGAのL-体比率を100%とし、PGA生産に係わる遺伝子を各組み合わせにて組換えたプラスミドを形質転換にて導入した形質転換体が生産するPGAが87%から125%まで変化したことから、PGA生産に係わる遺伝子を種々の組合せにて当該宿主に形質転換により導入することでL‐体比率を調整できることが明らかとなった。
1cp-P_rapA/pgsBCAcm株を宿主として、対照となるPGA生産に係わる遺伝子を全く導入していないプラスミドを形質転換にて導入した条件において、PGA生産させた場合のPGAのL-体比率を100%とし、PGA生産に係わる遺伝子を各組み合わせにて組換えたプラスミドを形質転換体にて導入した形質転換体が生産するPGAが82%から123%まで変化したことから、PGA生産に係わる遺伝子を種々組合せにて当該宿主に形質転換により導入することでL‐体比率を調整できることが明らかとなった。
〔測定例〕 PGA組成のL‐体比率測定
実施例1〜4(表3〜表6参照)に示した評価終了後の各培養液上清に等量の蒸留水を加え、さらにこれに2倍量のエタノールを添加し、4℃にて冷却後、4℃にて3,000rpmで30分間遠心分離(himacCF7D2、日立工機)に供し、遠心分離にて生成した沈殿を回収した。続いて、回収した沈殿生成物を乾固させ、これに6N塩酸を加えて窒素封入し、115〜120℃にて24時間の加熱処理を行なった。加熱処理後、窒素ガス気流下で塩酸及び水分を留去し、これを加水分解物試料とした。続いて、全自動アミノ酸分析計L-8500(商品名、日立計測機器)及びL-グルタミン酸測定キット(ヤマサ醤油)を用いて、上記加水分解物試料のグルタミン酸量(D-体及びL-体の総量)とL-グルタミン酸の定量分析を行なった。全自動アミノ酸分析計による分析において光学活性異性体総量が定量結果として得られ、これよりL-体測定キットから得られた定量結果を差し引いた差分をD-体量とした。
尚、前述の製造例記載の方法に準じて、配列番号37及び配列番号61〜71のプライマーを用いれば、枯草菌変異株(1cp-P_S237/pgsBCAcm株及び1cp-P_rapA/pgsBCAcm株)を宿主として、枯草菌におけるpgsBC遺伝子に相当する遺伝子を導入した枯草菌形質転換体を得ることができる。

Claims (15)

  1. 微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する方法において、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  2. 上記微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する方法において、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又はpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入し、ポリ−ガンマ−グルタミン酸を高分子化する、請求項1記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  3. 上記微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する方法において、枯草菌における枯草菌におけるpgsC若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又はpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入し、ポリ−ガンマ−グルタミン酸を低分子化する、請求項1記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  4. pgsB遺伝子が以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする遺伝子である請求項1又は2記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と50%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、アミドリガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  5. pgsC遺伝子が以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする遺伝子である請求項1、3又は4記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
    (a)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、PgsBタンパク質の共存下でポリ−ガンマ−グルタミン酸を生成する機能を有するタンパク質
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列と50%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、PgsBタンパク質の共存下でPGAを生成する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子
  6. pgsA遺伝子が以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする遺伝子である請求項1〜5の何れか1項記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
    (a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、PgsB及びPgsCタンパク質との共存下でポリ−ガンマ−グルタミン酸合成能を有するタンパク質
    (c)配列番号6で示されるアミノ酸配列と30%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、PgsB及びPgsCとの共存下でPGA合成能を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  7. 上記導入される遺伝子が、上記微生物の宿主細胞内で自己複製可能なプラスミド(ベクター)に組み込まれている請求項1〜6の何れか1項記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  8. 上記導入される遺伝子が、その上流に、微生物において機能を有する転写開始制御領域及び/又は翻訳開始制御領域を有する請求項1〜7の何れか1項記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  9. 微生物がバチルス(Bacillus)属細菌である請求項1〜8の何れか1項記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  10. バチルス(Bacillus)属細菌が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項9記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法。
  11. 微生物を用いてポリ−ガンマ−グルタミン酸を生産する方法において、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子及びpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsB遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsC遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、又は枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を導入することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸のL‐体比率調整方法。
  12. 請求項1〜10の何れか1項記載の微生物を用いることを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸のL‐体比率調整方法。
  13. 請求項1〜10の何れか1項記載の微生物を培養し、生成されたポリ−ガンマ−グルタミン酸を取得することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
  14. 請求項1〜10の何れか1項記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸の分子量調整方法又は請求項11又は12記載のポリ−ガンマ−グルタミン酸のL‐体比率調整方法を用いて、生成されたポリ−ガンマ−グルタミン酸を取得することを特徴とするポリ−ガンマ−グルタミン酸の製造方法。
  15. ポリ−ガンマ−グルタミン酸合成に関与する遺伝子群のなかで、枯草菌におけるpgsBCA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子が発現してなる微生物に、枯草菌におけるpgsA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を宿主微生物に導入して得られる組換え微生物。
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