JP2010213548A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】仮想回転座標系であるγδ座標系のγ軸電流Iγでモータが駆動される。γδ座標系は、制御上の回転角である制御角θCに従う座標系である。制御角θCとロータ角θMとの差(負荷角θL)に応じたアシストトルクが発生する。一方、検出操舵トルクTがフィードバックされ、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に近づけるように、位置型PI演算によって、加算角αが生成される。加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に加算されることにより、制御角θCの今回値θC(n)が求められる。異常監視部25は、加算角αおよび検出操舵トルクTを監視することによって、制御異常の有無を監視する。制御異常のときには、位置型PI制御部23の積分項が初期化される。
【選択図】図1
Description
請求項4記載の発明は、前記加算角演算手段は、前記トルク偏差の演算周期間変分に比例ゲインを乗じて比例要素を求める比例要素演算部(62)と、前記トルク偏差に積分ゲインを乗じて積分要素を求める積分要素演算部(63)と、前記比例要素および積分要素を加算する加算部(64)と、前記加算部の加算結果を複数の演算周期に渡って積算する積分演算を行う積分処理部(65)とを有する速度型比例積分演算手段(60)を含むものであり、制御異常の有無を判断する異常監視手段(25)と、前記異常監視手段によって制御異常が生じていると判断された異常時に、前記積分処理部の積算値を、前記トルク偏差に前記比例ゲインを乗じた値にリセットする積算値リセット手段(70)とをさらに含む、請求項1記載のモータ制御装置である。
たとえば、必要なモータトルクに比較して軸電流値が小さい場合などには、加算角の絶対値が大きくなり、制限値に達する。このとき、制御角は制限値ごとの離散的な値で変化し、有限個の値を循環的にとる状態となるおそれがあり、制御角を適値に収束させることが困難な状況に陥る可能性がある。そこで、たとえば、加算角が制限値をとり続ける場合のように加算角に異常が生じたときに、積分項の初期化(請求項2)、速度型比例積分演算から位置型比例積分演算への切り換え(請求項3)、または速度型比例積分演算における積算値のリセット(請求項4)のような異常処理を実行するとよい。これにより、制御異常の状態から脱することができ、制御角の適値への収束を効果的に促すことができる。
制限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
図1は、この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、位置型PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、異常監視部25と、制御角演算部26と、初期化部27と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36とが含まれている。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θCの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θCの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxとすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
異常監視部25は、加算角αの異常を監視し、加算角αに異常が生じると、そのことを初期化部27に通知する。たとえば、異常監視部25は、PI制御部23によって求められる加算角αの絶対値をしきい値αthと比較し、|α|≧αthの状態が所定数の演算周期だけ継続しているかどうかを判断する。この判断が肯定されると、異常監視部25は加算角αに異常が発生していると判断する。前記判断が否定されれば、加算角αは正常であると判断される。
異常監視部25は、また、検出操舵トルクTが飽和値+Tmaxまたは−Tmaxであるかどうか、すなわち飽和状態かどうかを監視する。検出操舵トルクTが飽和状態である場合、異常監視部25は、制御異常が発生しているものとして、このことを初期化部27に通知する。
γδ/UVW変換部34は、二相指示電圧Vγδ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角リミッタ24の機能は省略してある。
図7は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、位置型PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θCに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図9は、異常監視部25および初期化部27による処理を説明するためのフローチャートである。異常監視部25は、位置型PI制御部23によって求められる加算角αの絶対値をしきい値αthと比較する(ステップS11)。加算角αの絶対値がしきい値αth以上のときは(ステップS11:YES)、異常監視部25は、さらに、|α|≧αthの状態が所定数の演算周期だけ継続しているかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、制御異常が発生していると判断され、異常監視部25は、初期化部27に対して異常発生を通知する(ステップS13)。これを受けて、初期化部27は、位置型PI制御部23における積分項Σの前回値Σ(n-1)を零にリセット(初期化)する(ステップS14)。
前記しきい値αthは、前記所定の制限値ωmax以下の値とすることが好ましく、たとえば、制限値ωmaxに等しい値としておけばよい。
加算角αの絶対値がしきい値αth以上である状態が継続しているときとは、加算角αが加算角リミッタ24による制限処理を受ける状態が継続している場合である。この場合、演算周期毎に制御角θCが制限値ωmaxだけ変化することになるから、変化量が大きい。また、検出操舵トルクTが飽和状態のときとは、運転者がステアリングホイール10に加える操舵トルクの大きさが大きいときである。つまり、指示操舵トルクT*に対してシステムが追従できず、制御異常に至っているか、または制御異常の兆候が現れているときである。このとき、トルク偏差ΔTの絶対値は大きくなっており、それに応じて加算角αの絶対値が大きな値となっていて、位置型PI制御部23によって演算される加算角αの絶対値が制限値ωmaxを超えていると考えられる。
この実施形態では、加算角演算部30は、トルク偏差演算部22と、位置型PI制御部23と、加算角リミッタ24と、速度型PI制御部60と、切換え部61とを備えている。また、マイクロコンピュータ11の機能処理部として、異常監視部25による制御異常の判定結果に応じて加算角演算部30を制御する加算角演算制御部28が備えられている。加算角演算制御部28は、速度型PI制御部60および位置型PI制御部23のうちの一方の演算を有効化し他方を無効化するために切換え部61を制御する。また、加算角演算制御部28は、位置型PI制御部23における積分項の初期化、速度型PI制御部60における初期値の設定等の動作を必要時に実行する。
加算角演算制御部28は、加算角αに異常が生じていない通常時には速度型PI制御部60によって求められた加算角αを選択し、加算角αに異常が生じているときには位置型PI制御部23等によって求められた加算角αを選択するように、切換え部61を制御する。また、加算角演算制御部28は、速度型PI制御部60側から位置型PI制御部23側への切換えに際して、位置型PI制御部23の積分項を初期化(零にリセット)する。さらに、加算角演算制御部28は、位置型PI制御部23側から速度型PI制御部60側への切換えに際して、位置型PI制御部23により演算され加算角リミッタ24による処理を経た加算角(つまり現在の加算角)αを積分処理部65における前回値α(n-1)として設定する。
この実施形態では、加算角演算部30は、トルク偏差演算部22および速度型PI制御部60を備えており、位置型PI制御部23および加算角リミッタ24は備えられていない。つまり、加算角αの演算には、速度型PI演算のみが適用される。そして、マイクロコンピュータ11の機能処理部として、加算角αに異常が生じたときに加算角αの前回値α(n-1)を適正値に設定するための積分値設定部70が備えられている。
積分値設定部70は、トルク偏差演算部22によって求められるトルク偏差ΔTに比例ゲインKPを乗じる乗算器71を備えている。異常監視部25によって制御異常が生じていると判断されると、これに応答して、積分値設定部70は、積分処理部65において用いられる前回値α(n-1)として、乗算器71の演算結果を設定する。乗算器71の演算結果は、位置型PI制御において積分項を零にリセットしたときの値に等しい。したがって、積分値設定部70による前述の動作によって、制御異常が生じたときに、位置型PI制御に切り換えてその積分項を初期化した場合と同じ結果を得ることができる。しかも、位置型PI制御部を備える必要がないので、マイクロコンピュータ11の演算処理を簡素化することができ、その演算負荷も軽減される。
また、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
43…加算部、50…ロータ、51,52,52…ステータ巻線、55…ステータ、61…切換え部、62…比例要素演算部、63…積分要素演算部、64…加算部、65…積分処理部
Claims (4)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
所定の演算周期毎に、制御角の前回値に加算角を加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に基づく比例積分制御によって、前記制御角に加算すべき前記加算角を演算する加算角演算手段と
を含む、モータ制御装置。 - 前記加算角演算手段は、前記トルク偏差に比例ゲインを乗じて比例項を求める比例項演算部と、前記トルク偏差に積分ゲインを乗じ、その乗算値を複数の演算周期に渡って積算することにより積分項を求める積分項演算部と、前記比例項および積分項を加算する加算部とを有する位置型比例積分演算手段を含むものであり、
制御異常の有無を判断する異常監視手段と、
前記異常監視手段によって制御異常が生じていると判断された異常時に前記積分項を初期化する初期化手段とをさらに含む、請求項1記載のモータ制御装置。 - 制御異常の有無を判断する異常監視手段をさらに含み、
前記加算角演算手段は、
前記トルク偏差に比例ゲインを乗じて比例項を求める比例項演算部と、前記トルク偏差に積分ゲインを乗じ、その乗算値を複数の演算周期に渡って積算することにより積分項を求める積分項演算部と、前記比例項および積分項を加算する加算部とを有する位置型比例積分演算手段と、
前記トルク偏差の演算周期間変分に比例ゲインを乗じて比例要素を求める比例要素演算部と、前記トルク偏差に積分ゲインを乗じて積分要素を求める積分要素演算部と、前記比例要素および積分要素を加算する加算部と、前記加算部の加算結果を複数の演算周期に渡って積算する積分演算を行う積分処理部とを有する速度型比例積分演算手段と、
前記異常監視手段によって制御異常が生じていないと判断されている通常時には前記速度型比例積分演算手段を有効化し、前記異常監視手段によって制御異常が生じていると判断された異常時に前記積分項を初期化するとともに前記位置型比例積分演算手段を有効化する、演算制御手段とを含むものである、請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記加算角演算手段は、前記トルク偏差の演算周期間変分に比例ゲインを乗じて比例要素を求める比例要素演算部と、前記トルク偏差に積分ゲインを乗じて積分要素を求める積分要素演算部と、前記比例要素および積分要素を加算する加算部と、前記加算部の加算結果を複数の演算周期に渡って積算する積分演算を行う積分処理部とを有する速度型比例積分演算手段を含むものであり、
制御異常の有無を判断する異常監視手段と、
前記異常監視手段によって制御異常が生じていると判断された異常時に、前記積分処理部の積算値を、前記トルク偏差に前記比例ゲインを乗じた値にリセットする積算値リセット手段とをさらに含む、請求項1記載のモータ制御装置。
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