JP2010212171A - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

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卓司 辻田
Shinji Goto
真志 後藤
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Abstract

【課題】高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力プラズマディスプレイパネルを実現する。
【解決手段】保護層9は下地膜91と下地膜91上に付着させたMgOの結晶粒子92aが複数個凝集したMgO凝集粒子92とを備え、下地膜91をMgO、CaO、SrO、およびBaOから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により、下地膜面のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するように形成し、かつ下地膜91を形成した後、下地膜91面に水または水酸化物の水被膜を形成し、その後、下地膜91上にMgO凝集粒子92を付着させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPもしくはパネルと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPにおいては、従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上の高精細テレビへの適用が進められており、エネルギー問題に対応してさらなる消費電力低減への取り組みや、環境問題に配慮した鉛成分を含まないPDPへの要求なども高まっている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法により製造された硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。
一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にネオン(Ne)−キセノン(Xe)の放電ガスが5.3×104Pa〜8.0×104Paの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
また、このようなPDPの駆動方法としては、書込みをしやすい状態に壁電荷を調整する初期化期間と、入力画像信号に応じて書込み放電を行う書込み期間と、書込みが行われた放電空間で維持放電を生じさせることによって表示を行う維持期間を有する駆動方法が一般的に用いられている。これらの各期間を組み合わせた期間(サブフィールド)が、画像の1コマに相当する期間(1フィールド)内で複数回繰り返されることによってPDPの階調表示を行っている。
このようなPDPにおいて、前面板の誘電体層上に形成される保護層の役割としては、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することなどがあげられる。イオン衝撃から誘電体層を保護することは、放電電圧の上昇を防ぐ重要な役割であり、またアドレス放電を発生させるための初期電子を放出することは、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐ重要な役割である。
保護層からの初期電子の放出数を増加させて画像のちらつきを低減するために、例えば、酸化マグネシウム(MgO)で形成された保護層に不純物を添加する例や、酸化マグネシウム(MgO)粒子を酸化マグネシウム(MgO)薄膜で構成する下地膜上に形成した例が開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5など参照)。
特開2002−260535号公報 特開平11−339665号公報 特開2006−59779号公報 特開平8−236028号公報 特開平10−334809号公報
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。保護層からの電子放出特性はPDPの画質を決定するため、電子放出特性を制御することが非常に重要である。
すなわち、高精細化された画像を表示するためには、1フィールドの時間が一定にもかかわらず書込みを行う画素の数が増えるため、サブフィールド中の書込み期間において、アドレス電極へ印加するパルスの幅を狭くする必要が生じる。しかしながら、電圧パルスの立ち上がりから放電空間内で放電が発生するまでには「放電遅れ」と呼ばれるタイムラグの存在がある。そのため、パルスの幅が狭くなれば書込み期間内で放電が終了できる確率が低くなってしまう。その結果、点灯不良が生じ、ちらつきといった画質性能の低下という問題も生じてしまう。
また、消費電力低減のために放電による発光効率を向上させることを目的として、蛍光体の発光に寄与する放電ガスの一成分であるキセノン(Xe)の放電ガス全体における含有率をあげると、やはり放電電圧が高くなるとともに、「放電遅れ」が大きくなって点灯不良などの画質低下が発生するという問題が生じてしまう。
このようにPDPの高精細化や低消費電力化を進めるにあたっては、放電電圧が高くならないようにすることと、さらに、点灯不良を低減して画質を向上させることを、同時に実現させなければならないという課題があった。
保護層に不純物を混在させることで電子放出特性を改善しようとする試みが行われている。しかしながら、保護層に不純物を混在させて電子放出特性を改善した場合には、保護層表面に電荷を蓄積させてメモリー機能として使用しようとする際に、電荷が時間とともに減少する減衰率が大きくなってしまうため、これを抑えるために印加電圧を大きくする必要があるなどの対策が必要になる。
一方、PDPのさらなる発光効率向上のために、保護層を構成する下地膜に二次電子放出係数が大きい酸化カルシウム(以下、CaOと記す)、酸化ストロンチウム(以下、SrOと記す)、酸化バリウム(以下、BaOと記す)と、酸化マグネシウム(以下、MgOと記す)との混成膜を用いることが検討されている。
特許文献1および2では、下地膜にMgOを用いた時の製造方法は開示されているが、表面活性の高いCaO、SrO、BaOを下地膜に含んだ時の課題については、検討されていない。CaO、SrO、BaOは大気に含まれる二酸化炭素と反応して、その表面が容易に変質層を形成し、二次電子放出能力が減少するといった課題を有している。
従来は、このような変質層を加熱処理などによって除去して表面を清浄化していた。しかしながら、下地膜にMgO粒子を形成した保護層の場合には、下地膜の変質層を除去する過程でMgO粒子が剥がれやすくなるなどの課題を有していた。
本発明は、このような課題を解決して、CaO、SrO、BaOを含む下地膜上にMgO粒子を密着性良く付着させることができ、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐことが可能なPDPの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のPDPの製造方法は、基板上に形成した表示電極を覆うように誘電体層を形成するとともに誘電体層上に保護層を形成した第1基板と、第1基板に放電ガスが充填された放電空間を形成するように対向配置され、かつ表示電極と交差する方向にアドレス電極を形成するとともに放電空間を区画する隔壁を設けた第2基板とを有するPDPの製造方法であって、第1基板の保護層は下地膜と下地膜上に付着させたMgOの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子とを備え、下地膜をMgO、CaO、SrO、およびBaOから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により、下地膜面のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するように形成し、かつ下地膜を形成した後、下地膜面に水または水酸化物の被膜を形成し、その後、下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集したMgO凝集粒子を付着させている。
このような方法によれば、表面活性の高いCaO、SrO、BaOを含む下地膜面への二酸化炭素の吸着を抑制して変質層の形成を防止し、さらに、下地膜上へMgO凝集粒子を密着性良く付着させることができる。その結果、保護層における二次電子放出特性を向上させて放電開始電圧を低減し、さらに、放電遅れを低減して表示性能に優れたPDPを実現することができる。
さらに、下地膜を形成した後に下地膜面を清浄化し、その後、連続して下地膜面に水または水酸化物の膜を形成することが望ましい。このような方法によれば、下地膜を形成した後の保管中などに、大気に含まれる二酸化炭素(CO)などが下地膜面へ吸着し下地膜が変質しても、表面を清浄化した後でMgO凝集粒子を付着させることができる。その結果、MgO凝集粒子付着後には変質層の除去工程が不要となり、MgO凝集粒子を下地膜に密着性良く付着させることができる。したがって、放電遅れを低減して表示性能に優れたPDPを実現することができる。
さらに、下地膜を、真空中または窒素ガスを含む雰囲気中で焼成して下地膜面を清浄化することが望ましい。このような方法によれば、簡単な方法で下地膜面を正常化することができる。
以上のように、本発明によれば、保護層における二次電子放出特性を向上させて放電開始電圧を低減し、さらに、放電遅れを低減して表示性能に優れたPDPを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法を用いて作製したPDPの構造を示す斜視図である。PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、キセノン(Xe)とネオン(Ne)などの放電ガスが5.3×104Pa〜8.0×104Paの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うように、電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護層9が形成されている。
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝ごとに、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
図2は、本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法を用いて作製したPDP1の前面板2の構成を示す断面図であり、図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3上に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆って設けた第1誘電体層81と、第1誘電体層81上に形成された第2誘電体層82の少なくとも2層構成とし、さらに第2誘電体層82上に保護層9が形成されている。
保護層9は、誘電体層8に形成した下地膜91と、下地膜91上にMgO結晶粒子92aを複数個凝集させたMgO凝集粒子92とにより構成している。下地膜91は、MgO、CaO、SrO、およびBaOから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により形成されている。
次に、本発明の特徴である下地膜91の形成工程から、前面板2と背面板10とを封着し放電ガスを導入するパネル組立工程までの詳細について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるPDP1の製造方法を示すフローチャートであり、誘電体層8までが形成された前面ガラス基板3に、保護層9と水または水酸化物の水被膜21を形成する工程よりなる下地膜形成工程と、下地膜91上にMgO凝集粒子92を形成するMgO凝集粒子形成工程と、前面板2と背面板10とを対向配置して組み立てるパネル組立工程とを示している。
まず、下地膜形成工程の詳細について述べる。図4は、本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法において、下地膜91と水被膜21とを形成するための下地膜形成装置300の構成を示す図である。下地膜形成装置300は基板投入室30、基板の予備加熱室31 、真空蒸着室となる成膜室32、基板冷却室33、水被膜形成室34、基板取出室35より構成されている。
基板投入室30には、表示電極6と誘電体層8が形成された前面ガラス基板3が誘電体層8を下面にして、PDP1の表示領域に相当する領域が開口した基板トレイ36に載せられた状態で搬入される。予備加熱室31には、ヒーター(図示せず)が備えられ、搬送された前面ガラス基板3を基板トレイ36ごと予備加熱する。成膜室32の下部の蒸着ハース321内には、CaO、およびMgOのペレットが蒸着材料320として、それぞれ所定の組成比で設置されている。
また、成膜室32には、電子ビーム322を発生させるための電子銃323、成膜室32内部を高真空に排気するための真空ポンプ324、成膜中の各種のガス成分を測定するためのガス分析手段である四重極質量分析器などの質量分析計325、酸素ガスを導入するためのガス導入口326および成膜室32内の圧力を測定する圧力計327などが備えられている。基板冷却室33には、内部を減圧状態に保つ真空ポンプ(図示せず)が設けられている。
また、水被膜形成室34には、内部を真空に減圧する真空ポンプ340、および水分を含む窒素ガスを導入する加湿ガス導入口341が設けられている。基板取出室35には、下地膜91上に水または水酸化物の水被膜21が形成された前面ガラス基板3を取り出すための機構(図示せず)が設けられている。
図5は本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法によって下地膜91に水被膜21を形成する工程における前面板2の状態を示す断面図である。図5(a)は下地膜91形成後の状態、図5(b)は下地膜91表面に水分子20が吸着する状態、図5(c)は下地膜91表面に水被膜21が形成された状態を示す。なお理解を容易にするために、下地膜91、水分子20、水または水酸化物の水被膜21の断面縦方向を拡大して記載している。
次に、本発明の実施の形態1として、下地膜91としてCaOとMgOの金属酸化物よりなる下地膜91を形成し、その上に、水または水酸化物の水被膜21を形成する下地膜形成工程の詳細を、図3、図4および図5を参照しながら説明する。
まず、図3に示す下地膜91を真空蒸着法によって形成する下地膜蒸着ステップ(ST11)について説明する。図4に示すように、表示電極6および誘電体層8までが形成された前面ガラス基板3を、基板トレイ36に載せて基板投入室30に投入する。次に予備加熱室31に搬送し、そこで真空に排気しながら前面ガラス基板3を加熱ヒータによって約280℃に加熱する。その後、成膜室32内に矢印Aのように搬送する。成膜室32内は真空ポンプ324によって圧力が10−4Pa程度まで減圧された後に、ガス導入口326から酸素ガスを供給し、酸素ガスの分圧が3×10−2Pa程度になるように制御する。続いて、酸素ガスの分圧および前面ガラス基板3の温度を調節しながら、電子銃323から蒸着材料320であるCaO、およびMgOのペレットに向けて電子ビーム322を照射し、CaOおよびMgOを蒸発させる。CaOおよびMgOの蒸気流が、シャッター328上を一定の速度で搬送される前面ガラス基板3上に堆積して下地膜91が形成される。
また、このとき、成膜速度は蒸着材料320に照射される電子ビーム322のパワー、成膜室32圧力などの複数のパラメータで決定され、これらを調整することにより図5(a)に示すように前面ガラス基板3上に膜厚800nmのCaOとMgOからなる下地膜91が形成される(ST11)。
なお、上記では、CaOとMgOの酸化物よりなる金属酸化物としての下地膜91を形成する場合について述べた。しかしながら、蒸着ハース321に設置する蒸着材料320の種類および体積比を変更することで、MgO、CaO、SrO、およびBaOから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる組成比の異なる金属酸化物よりなる下地膜91を形成することが可能である。
本発明の実施の形態1においては、図2に示すように、保護層9は、誘電体層8に形成した下地膜91と、下地膜91上に付着させたMgO結晶粒子92aが複数個凝集したMgO凝集粒子92とにより構成されている。また、下地膜91を、MgO、CaO、SrO、およびBaOから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により形成し、金属酸化物は下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。
図6は、本発明の実施の形態1におけるPDP1の保護層9を構成する下地膜91面におけるX線回折結果を、下地膜91を構成する単体成分が2成分の場合について示している。また、図6中には、MgO単体、CaO単体、SrO単体、およびBaO単体のX線回折分析の結果も示す。
図6において、横軸はブラッグの回折角(2θ)であり、縦軸はX線回折波の強度である。回折角の単位は1周を360度とする度で示し、強度は任意単位(arbitrary unit)で示している。図中には特定方位面である結晶方位面を括弧付けで示している。図6に示すように、結晶方位面の(111)では、CaO単体では回折角32.2度、MgO単体では回折角36.9度、CaO単体では回折角30.0度、BaO単体では回折角27.9度にピークを有していることがわかる。
すなわち、図6に示すように、MgOとCaOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果をA点、MgOとSrOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果をB点、さらに、MgOとBaOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果をC点で示している。A点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、単体の酸化物の最大回折角となるMgO単体の回折角36.9度と、最小回折角となるCaO単体の回折角32.2度との間である回折角36.1度にピークが存在している。同様に、B点、C点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の35.7度、35.4度にピークが存在している。
また、図7には、図6と同様に、下地膜91を構成する単体成分が3成分以上の場合のX線回折結果を示している。すなわち、図7には、単体成分としてMgO、CaOおよびSrOを用いた場合の結果をD点、MgO、CaOおよびBaOを用いた場合の結果をE点、CaO、SrOおよびBaOを用いた場合の結果をF点で示している。
すなわち、D点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、単体の酸化物の最大回折角となるMgO単体の回折角36.9度と、最小回折角となるSrO単体の回折角30.0度との間である回折角33.4度にピークが存在している。同様に、E点、F点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の32.8度、30.2度にピークが存在している。
したがって、本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法による下地膜91は、単体成分として2成分であれ、3成分であれ、下地膜91を構成する金属酸化物の下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生するピークの最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。
なお、上記の説明では特定方位面としての結晶方位面として(111)を対象として説明したが、他の結晶方位面を対象とした場合も金属酸化物のピークの位置が上記と同様である。
CaO、SrO、およびBaOの真空準位からの深さはMgOと比較して浅い領域に存在する。そのため、PDP1を駆動する場合において、CaO、SrO、BaOのエネルギー準位に存在する電子がキセノン(Xe)イオンの基底状態に遷移する際に、オージェ効果により放出される電子数が、MgOのエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。したがって、下地膜91のエネルギー準位も単体の酸化物の間に存在し、オージェ効果により他の電子が獲得するエネルギー量が真空準位を超えて放出されるに十分な量とすることができる。
その結果、下地膜91では、MgO単体と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮することができ、結果として、放電維持電圧を低減することができる。そのため、特に輝度を高めるために放電ガスとしてのキセノン(Xe)分圧を高めた場合に、放電電圧を低減し、低電圧でなおかつ高輝度のPDPを実現することが可能となる。
このようにして、下地膜91が形成された前面ガラス基板3は、基板トレイ36とともに基板冷却室33に搬送され、真空中で例えば室温まで冷却される。
次に、水または水酸化物の水被膜21を形成する水被膜形成ステップ(ST12)について詳細に説明する。水被膜形成室34内は真空ポンプ340によって1×10−2Pa程度まで減圧排気される(ST121)。その後、基板冷却室33との間のゲート(図示せず)が開かれ、基板トレイ36に載せられた前面ガラス基板3が水被膜形成室34まで搬送される。
水被膜形成室34では、基板冷却室33との間のゲート(図示せず)を閉じた後に、真空ポンプ340と水被膜形成室34との間のバルブ(図示せず)を閉じる。その後、加湿ガス導入口341から、25℃の純水中をバブリングすることで露点温度が、例えば15℃になるまで水分を含ませた25℃の窒素(N)ガスを、例えば流量5SLMで水被膜形成室34内に導入し、水被膜形成室34の内圧を0.1MPa程度まで増圧させる(ST122)。その後、前面ガラス基板3を例えば5分間程度、水被膜形成室34内で保持する。その結果、図5(b)に示すように、下地膜91表面へ、窒素ガス(N)中に含まれる水分子20の吸着が始まり(ST123)、図5(c)に示すように下地膜91全体を覆うように水分子20が液相化して水または水酸化物の水被膜21が形成される(ST124)。これらの工程を経て、下地膜91上への水または水酸化物の水被膜21の形成工程が完了する。
次に、水被膜21が形成された前面ガラス基板3は、基板取出室35に搬送されて取り出され(ST13)、次のMgO凝集粒子形成工程に移送される。
図8は、本発明の実施の形態1におけるPDP1の製造方法におけるMgO凝集粒子形成装置500の構成図である。MgO凝集粒子形成装置500はMgO凝集粒子92を含んだ溶液の塗布装置50、乾燥装置51および塗布装置50から乾燥装置51へ前面ガラス基板3を搬送するコンベアローラー52により構成される。
また、図9はMgO凝集粒子92を塗布付着させた状態を示す前面板2の断面図であり、図9(a)はMgO凝集粒子92を含む溶液を塗布した状態を示す図、図9(b)は塗布後に希釈溶剤93を真空乾燥し除去した状態を示す図である。
塗布装置50は前面ガラス基板3を設置するテーブル501、スリットダイヘッド502からなる。塗布溶液としては、平均粒子径が1.2μmのMgO凝集粒子92を0.2体積%となるように希釈溶剤93中に分散させた溶液を準備した。ここで希釈溶剤93としては3メチルー3メトキシブタノール95体積%、α−ターピネオール5体積%を使用し、粘度は10cpに調整した。
テーブル501上に設置された前面ガラス基板3は、テーブル501上に真空チャックされ、固定される。レーザー変位計(図示せず)によりスリットダイヘッド502と前面ガラス基板3間の距離(ギャップ)hを測定し、その距離が100μmになるように、スリットダイヘッド502の高さを調節しつつ、50mm/sの等速度で矢印Bの方向へ移動させる。溶液タンク(図示せず)から送液ポンプ(図示せず)によってスリットダイヘッド502に送られたMgO凝集粒子92を含む塗布溶液が、膜厚15μmで前面ガラス基板3の下地膜91上に均一に塗布される(ST21)。ここで下地膜91上に形成された水被膜21のため、塗布溶液の濡れ性が向上し疎密なく溶液を塗布することができる。その結果、図9(a)に示すように、MgO凝集粒子92が希釈溶剤93中に分散した塗膜が下地膜91上に形成される。当然ながら、時間とともにMgO凝集粒子92は沈降し、水被膜21が形成された下地膜91上に付着する。
次に、前面ガラス基板3はコンベアローラー52によって、乾燥装置51へ移送される。乾燥装置51は真空チャンバー511、ヒータブロック512、テーブル513、真空ポンプ514、圧力計515から構成される。
乾燥装置51では、大気圧に調整された真空チャンバー511内の、ヒータブロック512により予め所定の温度に保持されたテーブル513上に前面ガラス基板3を設置する。その後、真空ポンプ514により、真空チャンバー511内部を所定の圧力まで排気し、希釈溶剤93を乾燥除去する(ST22)。
なお、この溶剤乾燥除去工程(ST22)では、希釈溶剤93のみを乾燥・脱離させ、水または水酸化物の水被膜21は残留させるようにしている。本発明の実施の形態では、真空チャンバー511の温度が0℃〜100℃、圧力が0.1Pa〜10Pa、処理時間が5分の条件では、下地膜91から希釈溶剤93のみを除去することができることを確認している。この溶剤乾燥除去工程の終了後には、図9(b)に示すように、希釈溶剤93は除去されて、下地膜91上に形成した水または水酸化物の水被膜21は残留し、さらに、MgO凝集粒子92が水被膜21に付着した状態となる。この状態では、MgO凝集粒子92は下地膜91との面積比で5〜10%の被覆率になっている。
なお、このような乾燥除去条件は、使用する希釈溶剤の種類や塗布溶液の塗膜の膜厚などによっても変動するため、適宜変更し得る。
この状態では、下地膜91上に形成した水または水酸化物の水被膜21によって下地膜91を構成する金属酸化物が保護されている。そのため、下地膜91と希釈溶剤93とが直接接触することはなく、下地膜91の金属酸化物に悪影響を及ぼすことがない。
次に、この状態の前面ガラス基板3を乾燥装置51から取り出し(ST23)、次の、パネル組立工程に移行する 。図3、図10を参照しながら、パネル組立工程について説明する。
なお、下地膜91上に形成した水または水酸化物の水被膜21がパネル内に残留すると、放電電圧を変動させ、下地膜91の耐スパッタ性能を劣化させるなどの不具合が生じる。そこで、水被膜21をこのパネル組立工程中で放電ガスを封入する前に除去する必要がある。
図10は、本発明の実施の形態1におけるパネル組立工程の封着装置700を示す図である。封着装置700では、前面板2と背面板10とを封着し、排気、放電ガス導入を行う。封着炉70は、ヒータブロック71および温度調整機構(図示せず)から構成され、前面板2および背面板10の加熱温度を調整する。炉内排気装置72は、排気ポンプ(図示せず)と圧力計(図示せず)から構成され、封着炉70の内部を排気する。パネル内排気装置73は排気ポンプ(図示せず)と圧力計(図示せず)から構成され、前面板2と背面板10との間の放電空間16を排気する。放電ガス導入装置74は、放電ガスとしてネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスのガスボンベ(図示せず)と圧力計(図示せず)から構成され、放電空間16に放電ガスを導入するものである。なお、切換バルブ75によって排気ライン、およびガス導入ラインのライン切換えを行う。
また、図11は、パネル組立工程でのPDP1の状態を示す断面図である。図11(a)には、前面板2と背面板10とを対向配置して、下地膜91上に水被膜21が残留している状態を示し、図11(b)には、水被膜21が除去されてPDP1の組み立てが完成した状態を示す。
図3、図10に示すように、下地膜91上に水被膜21が形成された前面板2と背面板10とは、大気圧下においてアライメント装置(図示せず)によって適正な位置にアライメント(位置決め)される(ST31)。このとき、基板周辺部に設けられた封着材であるシール部材17を挟んで対向配置され、例えばクリップなどで仮固定されて封着炉70内にパネル設置される(ST32)。背面板10には、排気孔18を通じて放電空間16と導通できる、例えばガラス材料からなる排気管19が配置されている。排気管19は、パネル内排気装置73および放電ガス導入装置74に接続されている。シール部材17としては、例えば軟化点温度が380℃の低融点ガラスを用いている。このパネル設置ステップ(ST32)の状態では、図11(a)に示すように、前面板2の下地膜91上には、水被膜21とMgO凝集粒子92が形成されている。
次に、封着炉70の内部を炉内排気装置72によって1×10−2Pa程度まで減圧排気する炉内排気ステップ(ST33)に入る。このとき、背面板10と前面板2とは未だ封着がなされていないため、パネル内部と封着炉70内は同一圧力となる。
炉内排気装置72により排気を継続したまま、パネル温度がシール部材17の軟化点温度380℃以下で、水被膜21の脱離に必要な、例えば330℃程度になるまでヒータブロック71を昇温させ、その温度で10分間保持する水被膜除去ステップ(ST34)に入る。この水被膜除去ステップ(ST34)により、下地膜91上に形成された水被膜21が、HO分子として下地膜91の表面から脱離してパネル外へ排気される。したがって、この水被膜除去ステップ(ST34)の後には、図11(b)に示すように、前面板2の下地膜91面には、MgO凝集粒子92のみが露出している。
次に、排気を継続したまま、パネルがシール部材17の軟化点温度380℃を超える温度、例えば420℃程度になるまでヒータブロック71を昇温し、その温度で10分間程度保持する。この工程によって、シール部材17を十分に溶融させ、次に、シール部材17の軟化点温度以下の例えば300℃まで降温させることによって、前面板2と背面板10とを封着する封着・排気ステップ(ST35)を行う。
さらに、パネル内排気装置73によって1×10−4Pa程度となるまで排気を継続した後、切換バルブ75によってラインをガス導入ライン側に切換え、放電ガス導入装置74によって放電空間16に放電ガスを導入する放電ガス導入ステップ(ST36)を行う。放電ガスとしては、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスを圧力66.5kPaで導入して排気管19を封止し、封着装置700からパネルを取り出す(ST37)。
以上の工程によって、前面板2と背面板10を貼り合わせた、パネル組立工程が完了しPDP1が完成する。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるPDPの製造方法について説明する。本発明の実施の形態2においては、PDPの構造および構成要素は実施の形態1と同様であるためその詳細な説明については省略する。
図12は、本発明の実施の形態2におけるPDPの製造方法における製造工程フローチャートであり、図3に示す実施の形態1と異なるのは、下地膜形成工程に下地膜面を清浄化する変質層除去ステップ(ST14)を付加したことである。
すなわち、本発明の実施の形態2におけるPDPの製造方法の製造工程フローチャートにおいては、変質層除去ステップ(ST14)以外の工程は実施の形態1と同様であるので、説明は変質層除去ステップ(ST14)を主に説明する。
図13は、本発明の実施の形態2におけるPDPの製造方法に用いた変質層除去装置800の構成を示す図である。変質層除去装置800では、下地膜91面を清浄化するための変質層除去と、下地膜91面に水被膜21を形成するための水被膜形成とを行う。なお、図4に示す実施の形態1では、水被膜形成室を成膜室32、基板冷却室33に連続して設けているが、本発明の実施の形態2では、下地膜91を形成した前面ガラス基板3を成膜室32から取り出した場合について説明する。すなわち、下地膜91を成膜後に、所定環境で保管した状態の前面ガラス基板3の下地膜91面に形成された変質層を除去するようにしている。
したがって、図13に示すように、変質層除去装置800は次のように構成されている。すなわち、基板投入室100、基板の予備加熱室110、変質層除去室120、基板冷却室130、水被膜形成室140、基板取出室150により構成されている。
基板搬入室100には、下地膜91形成済みの前面ガラス基板3が下地膜91を上面にして、結晶化ガラスのセッター160に載せられて搬入され、各室に設けられたセッター160搬送用のローラー170によって装置内を搬送される。予備加熱室110には、ヒーター(図示せず)が備えられ、搬送された前面ガラス基板3を予備加熱する。
変質層除去室120には、内部を高真空に排気するための真空ポンプ121、各種のガス成分を測定するためのガス分析手段である四重極質量分析器などの質量分析計122、圧力計123などが備えられている。
前面ガラス基板3に真空蒸着などの一般的な方法で形成された下地膜91の表面には、大気中における搬送、保管などにより、大気中の炭酸ガスおよび水分が下地膜91の表面に吸着・反応して変質層が形成されている。特に、本願発明では下地膜91を、MgOと表面活性の高いCaO、SrO、BaOなどの酸化物からなる金属酸化物で形成している。CaO、SrO、BaOは大気に含まれる二酸化炭素などと反応して、その表面に容易に変質層を形成し、その結果、保護層9の二次電子放出能力を低下させる。
例えば、MgOとCaOの酸化物により形成された下地膜91面には、大気中の二酸化炭素と反応して、炭酸化物(CaCO、MgCO)と水酸化物(Ca(OH)、Mg(OH))および水和物の複合酸化物などの変質層が生成される。
図13に示すように、基板投入室100に、前面ガラス基板3を160に載せて投入する。次に予備加熱室110にローラー搬送し、そこで真空に排気しながら前面ガラス基板3を加熱ヒータ(図示せず)によって280℃程度に加熱される、前面ガラス基板3はセッター160に載ったまま真空ポンプ121によって1×10−4Pa程度まで減圧された変質層除去室120内に搬送される。変質層除去室120に搬送された前面ガラス基板3が、加熱ヒータ(図示せず)によって500℃程度まで昇温され、そのまま約10分間保持される。
変質層除去室120における変質層除去ステップ(ST14)によって、下地膜91の表面に生成した炭酸化物および水酸化物の炭酸基および水酸基は、COおよびHOとして下地膜91の表面から脱離、除去され、下地膜91の表面が清浄化される。
下地膜91の表面から変質層が除去された、いわゆる清浄化が終了した前面ガラス基板3は160に載せられたまま基板冷却室130に搬送され、真空中で室温まで冷却される。
次に、水被膜形成室140に搬送され、実施の形態1と同様な方法で水被膜形成ステップ(ST12)において、加湿ガス導入口142から加湿ガスを導入して、水または水酸化物の水被膜21を下地膜91面に形成するようにする。その後、図3に示す実施の形態1と同様に、MgO凝集粒子形成工程およびパネル組立工程を経て、PDP1が完成される。
次に、本発明の実施の形態1および実施の形態2の製造方法でPDPを試作し、それらの性能評価を行った結果について述べる。
(性能評価実験)
性能評価は、PDPの書込み放電時の「放電遅れ」のために、ちらつきが発生する走査パルス印加時間で評価した。ここで「放電遅れ」とは、走査パルスの立ち上がりから遅れて発生する放電の遅れ時間を意味し、「放電遅れ」は、放電が発生する際にトリガーとなる下地膜91およびMgO凝集粒子92から放出される初期電子の放出量によって変動することが主要因として考えられる。
図14は、PDPの性能評価に用いた電圧波形図である。図14に示す駆動波形を走査電極4、維持電極5、アドレス電極12の各端子に印加した状態で、走査パルス印加時間(走査パルス幅)を1.5μsから0.1μs間隔で0.4μsまで変化させた。
走査パルス印加時間が十分長いと、走査電極4とアドレス電極12との間で発生させる書込み放電が遅れても、走査電極4と維持電極5との間で維持放電を発生し得るだけの壁電荷を下地膜91上に蓄積することができる。しかしながら、走査パルス印加時間を短縮すると、書込み放電中に走査パルスが立ち下がり、下地膜91への壁電荷の蓄積が不十分となる。このような壁電荷蓄積が不十分な放電セルにおいては、維持パルスを印加しても、安定した維持放電が発生するだけの壁電荷が蓄積されていないためにちらつきが発生する。
したがって、PDPの点灯性能評価として、正常点灯している時の走査パルス印加時間から順次短縮していき、ちらつきが発生し始めた時の走査パルス印加時間を求めることで、PDPの「放電遅れ」特性を評価することができる。
なお、この性能評価実験でPDPに印加する電圧の実験条件は以下のとおりである。
初期化電圧(固定):330V
走査電圧(固定):−140V、パルス幅(可変)0.4μs〜1.5μs
書込み電圧(固定):70V
維持電圧(固定):200V、維持周期0.5μs
また、試作したPDPはいずれも対角42インチのPDPであり、保護層9以外は全て同様の構成、材料で作製して、保護層9のみを実施の形態1および実施の形態2で述べた方法で作製した。
試作したPDPサンプルの作製条件を表1に示す。
Figure 2010212171
表1に示す各PDPサンプルは、保護層9としては下地膜91とMgO凝集粒子92とを備え、下地膜91を構成する酸化物の材料成分と、下地膜91の表面清浄工程の有無、さらには下地膜91面への水被膜21の有無とその形成過程が異なる。
すなわち、比較例1〜3は、下地膜91を形成後に水被膜21を形成せずにMgO凝集粒子92を付着させ、その後下地膜91の表面清浄処理を行った保護層9を形成したPDPサンプルであり、下地膜91を構成する材料組成を異ならせている。一方、実施例1〜3は、本発明の実施の形態1で述べたように、下地膜91を形成後に連続して水被膜21を形成し、その後、MgO凝集粒子92を付着させ、さらにその後に、水被膜21を除去した場合のPDPサンプルである。また、実施例4〜6は、本発明の実施の形態2で述べたように、下地膜91を形成後に保管状態のものを、下地膜921表面の変質層を除去する表面清浄を行い、その後、水被膜21を形成してMgO凝集粒子92を付着させ、その後、水被膜21を除去したPDPサンプルである。なお、比較例1〜3の表面清浄化条件は実施例4〜6と同様である。また、全てのPDPサンプルは、ガラス基板の工程投入時より同一ロットとして誘電体層形成、下地膜形成、MgO凝集粒子形成を行っているので製造工程上のバラツキは排除されている。なお、上記いずれのPDPサンプルも封着工程は真空中で実施している。
図15は、本発明の実施の形態におけるPDPサンプルの、ちらつきが発生し始める走査パルス印加時間を示す図である。実施例1〜6は、それぞれ0.5μsないし0.7μsでちらつきが発生し始めた。これは、保護層9上に形成した水被膜21が変質層の生成を効果的に抑制することで、MgO凝集粒子92が下地膜91上に密着性良く付着して、走査パルス印加時に十分な量の初期電子を放出しするために「放電遅れ」時間が短縮されたためである。
一方、比較例1〜3においては、それぞれ1.0μsないし1.1μsでちらつきが発生し始めた。これは、下地膜91にMgO凝集粒子92を付着させた後の封着前に表面清浄化すると、下地膜91からMgO凝集粒子92の一部が剥がれ落ち、MgO凝集粒子92による初期電子放出量が減少して「放電遅れ」時間が増大したためである。
これらの結果から、比較例1〜3と本発明の実施例1〜6とを比較すると、走査パルス印加時間の差は概ね0.4μsである。すなわち、比較例1〜3の製造工程で生産したPDPをちらつきなく点灯させるためには、実施例1〜6よりも、少なくとも垂直方向1画素あたり0.4μs以上の走査パルス印加時間を余分に必要とすることになる。したがって、1フィールドに配分されている時間は固定されているので、走査パルス印加時間を増加させると、必然的に維持パルス印加時間を減らすか、サブフィールド数を減らす対策を取ることになる。前者の対策ではPDPの輝度が減少し、後者の対策では表現できる階調数が減少して、いずれにしてもPDPの表示品質劣化を招くことになる。この結果より、本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法によれば、書込み放電時の「放電遅れ」の問題を解決し、表示品質を向上させるPDPを実現することが可能となる。
なお、本発明の実施の形態においては、下地膜上の凝集粒子としてMgO結晶粒子を用いて説明したが、この他の高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Alなどの金属酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができるため、粒子種としてはMgOに限定されるものではない。
また、本発明の実施の形態においては、下地膜を真空蒸着法によって形成したが、スパッタ法、イオンプレーティング法でも真空中で下地膜を形成できるので、同様の効果を得ることができる。
また、下地膜上に水被膜を形成するために、下地膜表面を水分子を含んだ窒素ガスに晒しているが、例えば超音波式の噴霧器やインジェクターを用いて水を散布する方法などでも可能である。
さらに、下地膜状上へのMgO凝集粒子の形成方法は、スクリーン印刷方法や、オフセット印刷法、さらにはスプレイ法などによっても可能である。
さらに、本発明の実施の形態では、下地膜層の表面に生成された変質層を除去するために、真空焼成を施しているが、例えば炭酸ガスを含まないN雰囲気やAr等の不活性ガス雰囲気において焼成することも可能である。
同様に、パネル組立工程においても、例えば加熱炉内を二酸化炭素および一酸化炭素を含まないNガスやNとOとの混合ガスあるいはAr等の不活性ガスでパネル内をパージしつつ水被膜を脱離除去させてもかまわない。
さらに、本発明の実施の形態においては、下地膜をCaOあるいはSrOあるいはBaOとMgOとの金属酸化物としているが、下地膜上の水被膜の形成および除去は物理的な作用であるため下地膜の組成による影響は軽微なものである。すなわちMgOの代わりにAlやSiOなどを使用することもでき、また、CaOあるいはSrOあるいはBaO同士を用いた金属酸化物とすることも可能である。
以上のように本発明は、高画質の表示性能を備え、かつ、低消費電力のPDPを実現する上で有用である。
本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法を用いて作製したPDPの構造を示す斜視図 同PDPの前面板の構成を示す断面図 本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法における下地膜形成装置の構成を示す図 同製造方法における下地膜に水被膜を形成する工程の前面板の状態を示す断面図 同PDPの下地膜面におけるX線回折結果を示す図 同下地膜を構成する単体成分が3成分以上の場合のX線回折結果を示す図 同製造方法におけるMgO凝集粒子形成装置の構成を示す図 同製造方法におけるMgO凝集粒子を塗布付着させた前面板の状態を示す断面図 同製造方法におけるパネル組立工程の封着装置の構成を示す図 同パネル組立工程でのPDPの状態を示す断面図 本発明の実施の形態1におけるPDPの製造方法を示すフローチャート 同製造方法に用いた変質層除去装置の構成を示す図 PDPの特性評価に用いた電圧波形図 本発明の実施の形態におけるPDPサンプルの、ちらつきが発生し始める走査パルス印加時間を示す図
1 プラズマディスプレイパネル(PDP、パネル)
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
17 シール部材
18 排気孔
19 排気管
20 水分子
21 水被膜
30,100 基板投入室
31,110 予備加熱室
32 成膜室
33,130 基板冷却室
34,140 水被膜形成室
35,150 基板取出室
36 基板トレイ
50 塗布装置
51 乾燥装置
52 コンベアローラー
70 封着炉
71,512 ヒータブロック
72 炉内排気装置
73 パネル内排気装置
74 放電ガス導入装置
75 切換バルブ
81 第1誘電体層
82 第2誘電体層
91 下地膜
92 MgO凝集粒子
92a MgO結晶粒子
93 希釈溶剤
120 変質層除去室
121,141,324,340,514 真空ポンプ
122,325 質量分析計
123,327,515 圧力計
142,341 加湿ガス導入口
160 セッター
170 ローラー
300 下地膜形成装置
320 蒸着材料
321 蒸着ハース
322 電子ビーム
323 電子銃
326 ガス導入口
328 シャッター
500 MgO凝集粒子形成装置
501,513 テーブル
502 スリットダイヘッド
511 真空チャンバー
700 封着装置
800 変質層除去装置

Claims (3)

  1. 基板上に形成した表示電極を覆うように誘電体層を形成するとともに前記誘電体層の上に保護層を形成した第1基板と、前記第1基板に放電ガスが充填された放電空間を形成するように対向配置され、かつ前記表示電極と交差する方向にアドレス電極を形成するとともに前記放電空間を区画する隔壁を設けた第2基板とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    前記第1基板の前記保護層は下地膜と前記下地膜の上に付着させた酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子とを備え、
    前記下地膜を、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、および酸化バリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により、前記下地膜面のX線回折分析において、特定方位面の前記金属酸化物を構成する前記酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するように形成し、
    かつ前記下地膜を形成した後、前記下地膜面に水または水酸化物の被膜を形成し、その後、前記下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を付着させることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  2. 前記下地膜を形成した後に前記下地膜面を清浄化し、
    その後、連続して前記下地膜面に水または水酸化物の膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  3. 前記下地膜を、真空中または窒素ガスを含む雰囲気中で焼成して前記下地膜面を清浄化することを特徴とする請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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